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特許7158020自転車用前側子供乗せ及びこの自転車用前側子供乗せが装着される自転車のハンドル構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】自転車用前側子供乗せ及びこの自転車用前側子供乗せが装着される自転車のハンドル構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 1/00 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
B62J1/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018216380
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2020082844
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000205292
【氏名又は名称】オージーケー技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】森元 善之
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-067125(JP,A)
【文献】特開2005-125922(JP,A)
【文献】特開2015-217834(JP,A)
【文献】実開昭59-091987(JP,U)
【文献】特開2007-203874(JP,A)
【文献】特開2011-088536(JP,A)
【文献】米国特許第07044541(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方を向いた子供が着座する座部と前記座部の後端に設けられた背もたれ部とを有する座席本体と、前記座部の下面に形成され、且つ自転車のステムからオフセットするように延設されてなる延設部に取り付くことを可能とする取付部と、前記座席本体の側方に上下方向を向くように設けられた側板と、前記側板の上方に設けられて、前記側板に対して上下方向へ移動自在とされたヘッドレストと、を有し、
前記側板は、第一側板と第二側板とを有し、前記座席本体の側方に垂下状に設けられた前記第一側板と、前記側板の下端に設けられ、前記座部に座った子供の足を乗せることが可能な足乗せと、前記側板の上端から上方へ延設された第二側板と、前記第二側板に対してスライド自在に上下方向へ移動するヘッドレストと、を有し、
前記第一側板は、前記座部の左右両側のそれぞれに設けられており、前記左右の第一側板のそれぞれから、前記第二側板が上方へ延設され、前記ヘッドレストは、左右に配設され且つ前記第二側板に対して上下方向に延設されたヘッドレスト側板と、前記ヘッドレスト側板から連続的に延び且つ前記ヘッドレスト側板の上端を左右方向につなぐヘッドレスト板と、から構成とされている
ことを特徴とする自転車用前側子供乗せ。
【請求項2】
前記ヘッドレスト側板と前記ヘッドレスト板とが一体になるように形成されている
ことを特徴とする請求項に記載の自転車用前側子供乗せ。
【請求項3】
前記ヘッドレスト側板は前記第二側板に対して上下方向に移動自在となっており、前記ヘッドレスト側板が前記第二側板に対して上下に移動することで、前記ヘッドレストの上下方向位置が可変とされる構造となっている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自転車用前側子供乗せ。
【請求項4】
前記第二側板には係合歯が上下方向に形成されており、
前記ヘッドレスト側板には、前記係合歯に係合することで前記ヘッドレストの上下位置を固定可能とする係合片が設けられている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の自転車用前側子供乗せ。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載された自転車用前側子供乗せが取り付けられる自転車のハンドル構造であって、
前記自転車の前輪を回転自在に支持するフロントフォークの上部に設けられたステムと、
前記ステムからオフセットするように延設されてなる延設部と、
前記延設部から上方へ伸びるハンドルポールと、
前記ハンドルポールの上端部から左右方向に伸び、前記子供乗せの側方を通るように伸びるハンドルバーと、を有し、
前記延設部に、前記座部の下面に形成された取付部が取り付けられることで、前記子供乗せが前記ステムと一体となる構成とされたことを特徴とする自転車のハンドル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車の前側であってハンドルに取り付けられた自転車用前側子供乗せ、及びこの自転車用前側子供乗せが好適に搭載される自転車のハンドル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車を用いて、子供と共に外出する場合、自転車前部または後部荷台に取り付けた子供乗せに、子供を着座させて移動することが一般的となっている。
このような自転車用子供乗せ(子供乗せ、チャイルドシート、子供用座席、幼児用座席等ともいう)の技術としては、特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1が開示する自転車用子供乗せは、自転車の前側であって自転車ハンドルに取り付ける座席であって、この座席は、左右に立上がり部を備えた自転車のハンドルバーの左右立上り部の間に配置され、座席の底部が自転車にボルト等によって取り付けられるタイプである。この座席は、座席本体と、座席本体の前部の下部側に設けられた脚載せ部材と、座席本体の後端側に設けられたヘッドレストと、座席本体の前上部に設けられたグリップバーとを備えている。
【0003】
この座席に子供を乗せる場合には、たとえば、自転車の運転者(大人)が子供を抱き上げて上方へ持ち上げ、その高さ位置のまま自転車用子供乗せの鉛直上方に子供が来るように運転者が自転車へ近づいて、運転者が子供を下方へ下ろして、子供を座席本体に座らせるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-88536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に開示される自転車用前側子供乗せは、子供を安全且つ快適に搭載することができ、大人はその状態で自転車を操作することができるものとなっている。
しかしながら、自転車用前側子供乗せに乗る子供は、その体重が10kg前後あることが多く、比較的重い対象が自転車のハンドル近傍に搭載されることとなり、自転車の漕ぎ始めにおけるフラつきや走行時における操舵性の低下につながることが懸念されるものとなっていた。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、子供を安全、快適に搭乗させることができ且つ自転車の操作性を損なうことのない自転車用前側子供乗せを提供する。合わせて、この自転車用前側子供乗せが好適に搭載される自転車のハンドル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、自転車用前側子供乗せは以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の自転車用前側子供乗せは、前方を向いた子供が着座する座部と前記座部の後端に設けられた背もたれ部とを有する座席本体と、前記座部の下面に形成され、且つ自転車のステムからオフセットするように延設されてなる延設部に取り付くことを可能とする取付部と、前記座席本体の側方に上下方向を向くように設けられた側板と、前記側板の上方に設けられて、前記側板に対して上下方向へ移動自在とされたヘッドレストと、を有し、前記側板は、第一側板と第二側板とを有し、前記座席本体の側方に垂下状に設けられた前記第一側板と、前記側板の下端に設けられ、前記座部に座った子供の足を乗せることが可能な足乗せと、前記側板の上端から上方へ延設された第二側板と、前記第二側板に対してスライド自在に上下方向へ移動するヘッドレストと、を有し、前記第一側板は、前記座部の左右両側のそれぞれに設けられており、前記左右の第一側板のそれぞれから、前記第二側板が上方へ延設され、前記ヘッドレストは、左右に配設され且つ前記第二側板に対して上下方向に延設されたヘッドレスト側板と、前記ヘッドレスト側板から連続的に延び且つ前記ヘッドレスト側板の上端を左右方向につなぐヘッドレスト板と、から構成とされていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記ヘッドレスト側板とヘッドレスト板とが一体になるように形成されているとよい。
好ましくは、前記ヘッドレスト側板は第二側板に対して上下方向に移動自在となっており、前記ヘッドレスト側板が第二側板に対して上下に移動することで、前記ヘッドレストの上下方向位置が可変とされる構造となっているとよい。
【0010】
好ましくは、前記第二側板には係合歯が上下方向に形成されており、前記ヘッドレスト側板には、前記係合歯に係合することで前記ヘッドレストの上下位置を固定可能とする係合片が設けられているとよい。
上記課題を解決するため、自転車のハンドル構造は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の自転車のハンドル構造は、上記した自転車用前側子供乗せが取り付けられる自転車のハンドル構造であって、前記自転車の前輪を回転自在に支持するフロントフォークの上部に設けられたステムと、前記ステムからオフセットするように延設されてなる延設部と、前記延設部から上方へ伸びるハンドルポールと、前記ハンドルポールの上端部から左右方向に伸び、前記子供乗せの側方を通るように伸びるハンドルバーと、を有し、前記延設部に、前記座部の下面に形成された取付部が取り付けられることで、前記子供乗せが前記ステムと一体となる構成とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自転車用前側子供乗せ及び自転車のハンドル構造によれば、子供を安全、快適に搭乗させることができ、且つ自転車の操作性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】自転車用前側子供乗せの外観を示すを前方斜視図である。
図2】自転車用前側子供乗せの外観を示すを側面図である。
図3】自転車用前側子供乗せの断面側面図である。
図4】自転車用前側子供乗せの外観を示すを後方斜視図である。
図5】ヘッドレストを上方に引き上げる態様を示す斜視図である。
図6】ヘッドレストを上方に引き上げる態様を示す拡大斜視図である。
図7】ヘッドレストに備えられた位置決め機構を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる自転車用前側子供乗せ1、及びハンドル構造を図面に基づき詳しく説明する。
なお、説明において、前後方向は自転車の進行方向と同じ方向とし、左右方向、上下方向は自転車の搭乗者から見た左右方向、上下方向とする。自転車用前側子供乗せ1を単に「子供乗せ」と表現することもある。
【0014】
また、自転車用前側子供乗せ1に乗る使用者を「子供」と表現し、自転車用前側子供乗せ1が装着された自転車に乗る使用者を「大人」と表現する。
図1図3などに示すように、子供乗せ1は、自転車のハンドル4の間であってステム5(スレッドステム)のほぼ上方に配備され、子供乗せを自転車本体と一体とし、子供乗せに子供を乗せた状態で自転車を走行可能とするものである。
【0015】
なお、本実施の形態にかかる子供乗せ1が好適に使用される自転車は、そのハンドル4の構造(詳細は後述)以外は、一般的な自転車であって、前輪37と後輪とが自転車フレームの前後にそれぞれ回転自在に取り付けられており、自転車フレームの前後方向略中央には、自転車を操作する大人が腰掛けるためのサドルが設けられている。サドルの下方に位置するフレーム部分には、ペダルとギアが設けられ、ペダルを回すことで発生する回転駆動力はチェーンなどにより後輪に伝達され、自転車の推進力となる。なお自転車には、電動アシスト機能が備えられていても何ら問題はない。
【0016】
本発明の子供乗せ1は、子供が座る座席本体10を有している。座席本体10は、前方を向いた子供が着座可能なように前方を向け開放状とされた形状を有している。座席本体10は、前方に向けて着座する子供の臀部が載置する座部11と、座部11の後端から立ち上がるように設けられた背もたれ部12から構成され、着座した子供の左右両側を囲むように座部11の左右両側に立ち上がるように設けられた座席側壁13も配備されている。これら座部11、背もたれ部12、座席側壁13の内面側(子供に対面する側)には、ウレタン等で構成されたクッション材が配置されている。
【0017】
図3に示すごとく、座席本体10の底部、詳しくは、座部11の底面前部であって左右方向の中央部には、ステム5に第一延設部14Aを介して設けられた第二延設部14B(詳細は後述)に対して、上方から嵌まり込むように取付可能とされた取付部15が形成されている。
この取付部15は、下方が開口とされた逆凹状形状とされており、第二延設部14Bに上方からは隙間なく嵌まり込むようになっている。この取付部15を第二延設部14Bに上方から嵌め込み、取付部15と第二延設部14Bとが一体となるように、ボルト等の締結具で両者を締め付けることで、自転車と子供乗せ1とが一体となる。
【0018】
さらに、図1などに示すように、子供乗せ1においては、座席本体10の側方に下方に垂下状に設けられた第一側板16が配備されている。具体的には、左右両側に設けられた座席側壁13のそれぞれで、当該座席側壁13の外側から下方且つ前方に傾斜しつつ延びるように、帯状とされた第一側板16が設けられている。第一側板16の前後幅は、座席側壁13の前後長さの略半分とされており、上下長さは、第一側板16の上下長さの上側約1/3が第一側板16と重なり合っており、第一側板16の上下長さの下側約2/3が座部11よりも下方に延びるものとなっている。第一側板16の前方傾斜角は上下垂直ラインより前方へ約20°程度である。
【0019】
さて、第一側板16の下端部は、左右方向で内側を向くように水平に屈曲しており、この屈曲した部位は、座部11に着座した子供の足を載置することが可能な足乗せ部17となっている。詳しくは、座部11の右側に位置する第一側板16(右側の第一側板16R)の下端は、左側を向くように水平に折り曲げられており、その上に子供の右足を載置可能になっている。座部11の左側に位置する第一側板16(左側の第一側板16L)の下端は、右側を向くように水平に折り曲げられており、その上に子供の左足を載置可能になっている。
【0020】
加えて、図4に示すように、右側の足乗せ部17Rと左側の足乗せ部17Lは、水平方向に延設された支持側板18により連結されている。この支持側板18は、第一側板16の下端部かつ後縁端に取り付けられており、左右に位置する第一側板16の下端同士を連結するようになっている。この支持側板18により、第一側板16の剛性を増すことができ第一側板16の下端がふらつくなどの不都合を防ぐことができる。また、支持側板18は、足乗せ部17の後端側を閉鎖する邪魔板の作用も有しているため、子供の足部が後方へ移動し、足乗せ部17から足部が外れるといった不都合を防ぐものとなっている。
【0021】
なお、本実施形態の支持側板18は、左右方向の中央部で前方へ凸状に屈曲するようになっており、これにより、支持側板18の剛性が上がるようになっていると共に、足乗せ部17の側方も包み込むようになっている。
一方で、第一側板16の上端部からは、第一側板16を延長するような形で第一側板16の傾きと同じ傾きをもって第二側板19が延設されている。
【0022】
第二側板19の前後幅は、第一側板16よりやや小さいものとなっており、本実施形態では、第一側板16の端部からその内部に第二側板19が嵌まり込むような構成となっている。第二側板19の上端は、座席本体10の背もたれ部12の上端をやや超えた位置まで延びるものとなっている。
なお、第一側板16と第二側板19とは、別体に作られた部材が接合される構成となっていてもよいが、一体成形されていてもよい。一体成形の場合、側板の下部側が第一側板16であり、側板の上部側が第二側板19に対応する。
【0023】
さらに、第二側板19の上端には、子供の頭部を外部からの衝撃から守るためのヘッドレスト20が設けられている。
詳しくは、ヘッドレスト20は、座部11に座った子供の後頭部を保護するヘッドレスト板21と、座部11に座った子供の側頭部乃至はその近傍を保護するヘッドレスト側板22とから構成される。このヘッドレスト板21とヘッドレスト側板22とは連続するように一体に形成されている。
【0024】
詳しくは、図2などに示すように、第二側板19の上端部からは、第二側板19を上方へ延長し、その後、側面視で後方へ円弧状に湾曲するような形状を有するヘッドレスト側板22が設けられている。このヘッドレスト側板22は座部11の左右両側にそれぞれ配備されている。ヘッドレスト側板22の下端は第二側板19の上端部に外套状に嵌まり込むようになっており、第二側板19に対してヘッドレスト側板22は上下にスライド自在となっている。すなわち、ヘッドレスト側板22は第二側板19に対してテレスコピック状に嵌まり込んでおり、上下移動が可能となっている。
【0025】
ヘッドレスト側板22の上端(後方を向く端)からは、ヘッドレスト板21が水平方向に延びている。詳しくは、図3に示すように左側のヘッドレスト側板22の上端からは、右側へ向けてヘッドレスト板21が延び、右側に位置するヘッドレスト側板22の上端につながるようになっている。ヘッドレスト板21はヘッドレスト側板22と略同幅の帯状板であり、平面となっている部分が前後を向くように配備されている。
【0026】
左右のヘッドレスト側板22とヘッドレスト板21とは、連続の帯状となるように一体形成されヘッドレスト20とされ、このヘッドレスト20は上面視でU字型形状を呈するものとなっている。また、ヘッドレスト板21の後壁の傾きと第一側板16の傾きは略同じであり、背もたれ部12の傾きとも同じである。言い換えれば、背もたれ部12を傾きそのままで上方へ延長した位置にヘッドレスト板21の後壁が位置することとなっており、コンパクトでシンプルな外観を呈する座席本体10が実現されるものとなっている。
【0027】
U字型形状のヘッドレスト20の内面(子供に面する側)には、ウレタンや発泡スチロールでなどで形成された緩衝材23が設けられており、ヘッドレスト20の効果を高めるものとされている。このように、ヘッドレスト板21を左右2つのヘッドレスト側板22で連結する構成を採用することで、強固なヘッドレスト20を実現できると共に、使用者の左右両側から後頭部にかけてを包み込むような安心感を与えることができるヘッドレスト20を実現できる。
【0028】
以上述べた座椅子本体、第一側板16、第二側板19、ヘッドレスト20は、プラスチックで構成されることが好ましいが、他の材料で形成されていても問題はない。
さて、上記したヘッドレスト20は、子供の体格や頭の位置に応じて、上下方向の位置を調整可能となっている。
詳しくは、前述した如く、ヘッドレスト側板22の下端は、第二側板19の上端に外套状に嵌まり込んでおり、ヘッドレスト側板22は、第二側板19に対してスライドし、上下方向に位置変更自在となっている。このため、ヘッドレスト側板22を第二側板19に対して上方にスライドさせることでヘッドレスト板21が上方に移動し、逆に、ヘッドレスト側板22を第二側板19に対して下方にスライドさせることでヘッドレスト板21が下方に移動して、使用者の体格や頭の位置に応じて、適切な位置にヘッドレスト20を配置させることが可能となる。
【0029】
本実施形態では、第二側板19に対するヘッドレスト20の位置決めをし固定する位置決め機構を備えるものとなっている。この位置決め機構は、操作レバー25とこの操作レバー25が係合する係合歯26とを有する。
図6図7に示すように、左右に配備されたヘッドレスト側板22の下部側面(外側面)には、ヘッドレスト20のスライドを許容する乃至はヘッドレスト20の位置を固定する操作レバー25が設けられている。
【0030】
この操作レバー25は、前後に長い板状の操作片27と、この操作片27の上辺から略直交するように延びる係合片28とを有している。操作片27と係合片28とはプラスチックなどで一体成形されており、左右方向の断面でL字型形状となっている。操作片27と係合片28との接合部(接合辺)が前後方向を向くようにヘッドレスト側板22の下部側面に取り付け、この接合辺を貫通するような軸心を設け回動させることで、操作片27をヘッドレスト側板22の下部側面に面一の状態から下部側面から突き出た状態へと変更できる。
【0031】
操作片27をヘッドレスト側板22の下部側面に面一の状態とした際には、係合片28は第二側板19の方を向く。第二側板19の外側面には、前後方向を向く係合歯26が上下方向に複数個形成されており、係合歯26は梯子状となっている。この係合歯26に係合片28が噛み合うことで、ヘッドレスト側板22が第二側板19に対してスライド不可(固定状態)となる。そのため、この位置でヘッドレスト20の上下方向の位置が固定され、ヘッドレスト20の高さ調整が可能となる。
【0032】
逆に、操作片27をヘッドレスト側板22の下部側面から張り出すように引き出した際には、係合片28は第二側板19から離れ下方を向くようになる。この状態では、第二側板19に形成された係合歯26から係合片28が外れることで、ヘッドレスト側板22が第二側板19に対して上下方向にスライド自在となる。この状態で、図5に示すように、例えば、ヘッドレスト20を上方へ引き出すことが可能となる。引き出す際には、ヘッドレスト20の後方側(座席本体10の後方側)に立ち、その位置から大人の右手及び左手で、右側のヘッドレスト側板22の操作片27及び左側のヘッドレスト側板22の操作片27をそれぞれ持ち、ヘッドレスト20をスライドさせるようにするとヘッドレスト20の位置変更が容易となる。
【0033】
図1などに示すように、以上述べた座席本体10、ヘッドレスト20は装着される自転車のハンドル4の後方に位置することになる。それに対し、本実施形態では、ハンドル4の前方に荷物入れカゴ(荷カゴ30)を取り付けたものとされている。
荷カゴ30は、後述する第一延設部14Aの先端に取り付けられるものとなっている。具体的には、第一延設部14Aの上部前側から、取付板39が前方に延設されていて、延設された取付板39の先端に、荷カゴ30の後壁31が取り付けられている。
【0034】
荷カゴ30は略立方体形状を有しており、上面が開放状とされている。この開放側(開口)を通して荷カゴ30の中から荷物を出し入れ可能となっている。
荷カゴ30の後壁31の左右方向の略中心であって上下方向の略中心の部分が、取付板39の先端にボルト等の締結具を介して取り付けることで、荷カゴ30と自転車とは一体となる。なお、荷カゴ30の後壁31の下部側は、前方傾斜するように切り取られており、第一側板16に干渉することを防ぐような構造となっている。荷カゴ30の前壁32や側壁33には、複数の開口38が形成されており、荷カゴ30自体の重量軽減や走行時における風抵抗の減少に寄与するものとなっている。
【0035】
以上述べた子供乗せ1は、一般の自転車に取り付けることも可能であるが、好ましくは、以下に述べるハンドル構造を有する自転車に取り付けるとよい。
子供乗せ1に好適な自転車は、そのハンドル構造に特徴があり、他の構造は通常の自転車と同様であってよい。すなわち、前輪37と後輪とが自転車フレームの前後にそれぞれ回転自在に取り付けられており、自転車フレームの前後方向略中央には、自転車を操作する大人が腰掛けるためのサドルが設けられている。サドルの下方に位置するフレーム部分には、ペダルとギアが設けられ、ペダルを回すことで発生する回転駆動力はチェーンなどにより後輪に伝達され、自転車の推進力となる。なお自転車には、電動アシスト機能が備えられていても何ら問題はない。
【0036】
一方で、好適とされるハンドル構造であるが、まず、前輪37を回転自在に支持するフロントフォーク24の上端部に略上方を向くステム5(スレッドステム)が配設されている。このステム5からは、前方やや上側を向くように延設された第一延設部14Aが取り付けられている。この第一延設部14Aは断面矩形で外形が直方体形状を呈しており、ダウンチューブ40の前端をそのまま延長した形状を有しているが、それにはこだわらない。この第一延設部14Aの上面先端からは、上方を向くように設けられたハンドルポール34が設けられている。ハンドルポール34の上端は、座席本体10の前面開口部であって、側面視で背もたれ部12の前方に達するものとなっている。
【0037】
ハンドルポール34の基端側であって、第一延設部14Aの上方には、ハンドルポール34から後側へ向くように延設された第二延設部14B(延設部)が設けられている。第二延設部14Bは断面矩形で外形が直方体形状を呈しており、ステム5の上方を通り越すように後方へ延びている。すなわち、ステム5の直上に第二延設部14Bが配備されるものとなっている。
【0038】
この第二延設部14Bに、上方から取付部15を嵌め込み、取付部15と第二延設部14Bとが一体となるように、ボルト等の締結具で両者を締め付けることで、自転車と子供乗せ1とが一体となる。
このように第二延設部14Bの上側に座部11が配備される、言い換えれば、ステム5の略上方に座席本体10が位置することで、子供乗せに子供(体重が10kg前後)を載せたとしても、その重心が自転車のハンドル4近傍に搭載されることとなり、自転車の漕ぎ始めにおけるフラつきを防止でき、走行時における操舵性の低下を可及的に防止できるようになる。
【0039】
一方、ハンドルポール34の上端からは左右方向に延びるようにハンドルバー35が取り付けられている。具体的には、ハンドルポール34の上端から左右にハンドルバー35が延び、このハンドルバー35はヘッドレスト側板22の外側を、ヘッドレスト側板22の外側面に沿うように後方側へ延び、ヘッドレスト側板22を通り過ぎた位置で終端するようになっている。この終端部には、大人によるハンドル4の握り感を向上させるため、ゴムやプラスチックで形成されたグリップ36が設けられている。
【0040】
ハンドルバー35であって、ハンドルポール34の上端から左右方向に延びる部位には、座席本体10に着座した子供が把持可能となるようなグリップ41が設けられており、子供用の把持部となっている。つまり、ハンドルバー35が子供用の把持部としての作用を奏するようになっている。
またハンドルバー35の水平部は、座席本体10の前面開口部の前に配備されることになるため、万が一の際に、子供が前側へ飛び出ることを防止する安全バーとしての役割も有するものとなっている。
【0041】
このように延設部(第二延設部14B)の上側に座部11が配備される、言い換えれば、ステム5の略上方に座席本体10が位置することで、子供乗せに子供(体重が10kg前後)を載せたとしても、その重心が自転車のハンドル4近傍に搭載されることとなり、自転車の漕ぎ始めにおけるフラつきを防止でき、走行時における操舵性の低下を可及的に防止できるようになる。なお、第二延設部14Bを廃し、第一延設部14Aに取付部15を取り付けることでも、自転車と子供乗せ1とを一体とすることができ、前述した作用効果と略同様を奏することが可能となる。
【0042】
以上述べたように、本発明の自転車用前側子供乗せ1と、この子供乗せ1を設置可能なハンドル構造を備えることで、子供を載せた場合であっても子供を安全に搭乗させることができ、且つ自転車の操作性を損なうことがないといった作用効果を奏することが可能となる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、操作条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0043】
1 自転車用前側子供乗せ
4 ハンドル
5 ステム
10 座席本体
11 座部
12 背もたれ部
13 座席側壁
14A 第一延設部
14B 第二延設部
15 取付部
16 第一側板
17 足乗せ部
18 支持側板
19 第二側板
20 ヘッドレスト
21 ヘッドレスト板
22 ヘッドレスト側板
23 緩衝材
24 フロントフォーク
25 操作レバー
26 係合歯
27 操作片
28 係合片
30 荷カゴ
31 後壁
32 前壁
33 側壁
34 ハンドルポール
35 ハンドルバー
36 グリップ(大人用)
37 前輪
38 複数の開口
39 取付板
40 ダウンチューブ
41 グリップ(子供用)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7