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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】親綱支柱
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20221014BHJP
   A62B 35/00 20060101ALN20221014BHJP
   E04G 5/00 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
E04G21/32 D
A62B35/00 H
E04G5/00 301B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019118428
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021003307
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000136170
【氏名又は名称】株式会社ピカコーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】阿部 史日呼
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 徹
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06173809(US,B1)
【文献】米国特許第04171032(US,A)
【文献】実公昭39-029856(JP,Y1)
【文献】実開昭64-023542(JP,U)
【文献】特開2011-196036(JP,A)
【文献】特開2007-117246(JP,A)
【文献】特開2009-293185(JP,A)
【文献】特開2018-042701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00
E04G 21/32
E04G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦向きH型鋼(H)の垂直フランジ(Hf)に沿って上下方向に配置される支柱本体(3)と、この支柱本体(3)の上部に設けられていて親綱(P)が挿通される掛合部材(4)と、支柱本体(3)の中途部に設けられていて垂直フランジ(Hf)の上縁に係合する固定フック(5)と、この固定フック(5)の下側で支柱本体(3)に固定されていて垂直フランジ(Hf)の上縁に沿って配置された上支持材(6)と、この上支持材(6)の下方でかつ平行に支柱本体(3)に固定された下支持材(7)と、前記固定フック(5)を挟む両側で前記上下支持材(6、7)を上下に貫通するジャッキネジ棒(8)と、前記下支持材(7)の下方で各ジャッキネジ棒(8)に螺合されていて垂直フランジ(Hf)の下縁に係脱自在に係合する移動フック(9)とを有することを特徴とする親綱支柱。
【請求項2】
前記2つの移動フック(9)は固定フック(5)から略等距離に位置しており、
前記支柱本体(3)の下部と各移動フック(9)との間に、移動フック(9)の上下移動を許容しながらジャッキネジ棒(8)廻りの廻り止めをする廻り止め手段(12)を設けていることを特徴とする請求項1に記載の親綱支柱。
【請求項3】
前記移動フック(9)は、垂直フランジ(Hf)の下縁に係合する下係合部(9a)を形成したフック板(9b)と、このフック板(9b)の側面に添接されかつジャッキネジ棒(8)と直行する方向の角穴を有する角筒材(9c)と、この角筒材(9c)内に配置されていてジャッキネジ棒(8)と螺合するナット材(9d)とを設けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の親綱支柱。
【請求項4】
前記支柱本体(3)は垂直フランジ(Hf)に対向する前面(3a)を有する角筒材で形成されており、
前記上下各支持材(6、7)は支柱本体(3)の前面(3a)に面接しかつ垂直フランジ(Hf)と面接する角筒材(6a、7a)で形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の親綱支柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H型鋼に立設される親綱支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
土木、建設作業現場においては、鉄骨のH型鋼に親綱支柱を立設して、仮設通路上に親綱を張って、安全帯のランヤードを掛けるようにしている。鉄骨のH型鋼は、ウェブが垂直でフランジが水平な横向きH型鋼と、ウェブが水平でフランジが垂直な縦向きH型鋼とがあり、親綱の代わりに単管製手摺を装着するものであるが、特許文献1において、縦向きH型鋼に立設可能な仮設通路用支材が開示されている。
【0003】
この仮設通路用支材は、先端に手摺支柱を立上げた水平べ一スフレームの反対側端に中パイプをスライド自在に嵌装して全体が長さ方向に伸縮可能なものとし、該水平べ一スフレームの途中下方に垂直短尺フレームを突設し、その突設個所の近傍で前記中パイプと同一線上に固定フックを設け、一方、前記垂直短尺フレームを用いてネジジャッキを形成し、その可動ロッドの突出端に移動フックを前記固定フックに対向させて設け、手摺支柱の下端を水平べ一スフレーム下方に曲成延設して前記垂直短尺フレーム下端に交差連結し、かつその先を垂直短尺フレーム側方に突出させて当接部を形成している(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平5-32589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術は、ネジジャッキを作動して可動ロッドを介して移動フックを固定フックに対向移動することにより、縦向きH型鋼の垂直フランジを挟持して、手摺支柱を縦向きH型鋼に立設させることができるが、移動フックは固定フックに対向するものがひとつであるため、垂直フランジに沿う方向の力に対しては対抗し難く、ネジジャッキのネジ棒はその上端が垂直短尺フレームの上端に支持されているだけであるため、安定的な支持が困難になっている。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした親綱支柱を提供することを目的とする。
本発明は、垂直フランジの上縁に係合する固定フックに対して、垂直フランジの下縁に係合する移動フックを2つ配置し、2つの移動フックをそれぞれ昇降するジャッキネジ棒を上下一対の支持材で支持して、縦向きH型鋼に強固にかつ安定的に固定しておくことのできる親綱支柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、縦向きH型鋼Hの垂直フランジHfに沿って上下方向に配置される支柱本体3と、この支柱本体3の上部に設けられていて親綱Pが挿通される掛合部材4と、支柱本体3の中途部に設けられていて垂直フランジHfの上縁に係合する固定フック5と、この固定フック5の下側で支柱本体3に固定されていて垂直フランジHfの上縁に沿って配置された上支持材6と、この上支持材6の下方でかつ平行に支柱本体3に固定された下支持材7と、前記固定フック5を挟む両側で前記上下支持材6、7を上下に貫通するジャッキネジ棒8と、前記下支持材7の下方で各ジャッキネジ棒8に螺合されていて垂直フランジHfの下縁に係脱自在に係合する移動フック9とを有することを特徴とする。
【0008】
第2に、前記2つの移動フック9は固定フック5から略等距離に位置しており、
前記支柱本体3の下部と各移動フック9との間に、移動フック9の上下移動を許容しながらジャッキネジ棒8廻りの廻り止めをする廻り止め手段12を設けていることを特徴とする。
第3に、前記移動フック9は、垂直フランジHfの下縁に係合する下係合部9aを形成したフック板9bと、このフック板9bの側面に添接されかつジャッキネジ棒8と直行する方向の角穴を有する角筒材9cと、この角筒材9c内に配置されていてジャッキネジ棒8と螺合するナット材9dとを設けていることを特徴とする。
【0009】
第4に、前記支柱本体3は垂直フランジHfに対向する前面3aを有する角筒材で形成されており、
前記上下各支持材6、7は支柱本体3の前面3aに面接しかつ垂直フランジHfと面接する角筒材6a、7aで形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、親綱支柱を縦向きH型鋼に強固にかつ安定的に立設しておくことができる。
即ち、請求項1に係る発明は、固定フック5を挟む両側で上下支持材6、7を上下に貫通するジャッキネジ棒8を設け、各ジャッキネジ棒8で各移動フック9を垂直フランジHfの下縁に係合させているので、親綱支柱1を縦向きH型鋼Hに強固にかつ安定的に立設しておくことができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、2つの移動フック9は固定フック5から略等距離に位置しかつ支柱本体3の下部と各移動フック9との間に廻り止め手段12を設けているので、固定フック5に対して2つの移動フック9は略等分の力でかつ同一姿勢で垂直フランジHfを挟持することができ、親綱支柱1を縦向きH型鋼Hに強固にかつ安定的固定することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、移動フック9は、下係合部9aを形成したフック板9bと、このフック板9bの側面に添接された角筒材9cと、ナット材9dとを設けているので、簡単かつ強固な構造にすることができる。
請求項4に係る発明は、上下各支持材6、7は支柱本体3の前面3aに面接しかつ垂直フランジHfと面接する角筒材6a、7aで形成されているので、親綱支柱1を垂直フランジHfに密接して、垂直フランジHfと直交する方向の倒れを阻止しながら、強固に固定しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態を示す大縦向きH型鋼に装着した全体側面図である。
図2】同全体正面図である。
図3図1のX-X線断面図である。
図4図1のY-Y線断面図である。
図5】小縦向きH型鋼に装着した断面側面図である。
図6】小縦向きH型鋼に装着した断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
土木、建設作業現場においては、鉄骨のH型鋼の上に仮設の通路を形成し、その通路上に作業員の安全帯を係合する親綱Pが張架される。この親綱Pを張架するために、H型鋼に親綱支柱1が装着される。
鉄骨のH型鋼には、ウェブが垂直でフランジが水平な横向きH型鋼と、ウェブが水平でフランジが垂直な縦向きH型鋼とがあり、実施形態の親綱支柱1は、縦向きH型鋼装着用であり、図1~4には大縦向きH型鋼(垂直フランジHfの上下寸法が大)に装着した状態を示し、図5、6には小縦向きH型鋼(垂直フランジHfの上下寸法が小)に装着した状態を示している。
【0015】
親綱支柱1は、大別して、上下に長い支柱本体3と、この支柱本体3の上部に設けられた掛合部材4と、支柱本体3の中途部に固定された固定フック5及び上支持材6と、この上支持材6の下方で支柱本体3に固定された下支持材7と、前記上下支持材6、7を上下に貫通するジャッキネジ棒8と、各ジャッキネジ棒8に螺合された移動フック9とを有する。
【0016】
前記支柱本体3は前面3a、背面及び左右側面を有する四角筒で形成され、縦向きH型鋼Hの垂直フランジHfに沿って上下方向(垂直方向)に配置され、上下方向の重心近くに持ち運び用のハンドル15が設けられている。支柱本体3は前面3aが垂直フランジHfに対向する。
前記掛合部材4は、左右方向中心から一側方へ偏位したL字状掛け部4aを有していて、一対を対向配置して支柱本体3の上端に挿入してボルト等の締結具で固定しており、一対の掛合部材4はL字状掛け部4aが左右にずれて配置され、親綱Pを縫うようにL字状掛け部4a内に挿入することにより、親綱Pを掛合部材4に掛合できる。
【0017】
前記固定フック5は、垂直フランジHfの上縁に係合する上係合部5aを有する左右一対のフック板5bと、両フック板5b間に配置された角筒材製のスペーサ5cとを有しており、両フック板5bが支柱本体3の左右側面にボルト等の締結具を介して固定されている。
上支持材6は、支柱本体3の前面3aと直交する水平方向に長くかつ垂直フランジHfの上縁に沿って配置される四角形の角筒材6aを有し、角筒材6aの上面が固定フック5の下側に近接され、背面が支柱本体3の前面3aに面接して固定され、前面が垂直フランジHfと面接可能になっている。
【0018】
前記上支持材6は四角形の角筒材6aの両端面に固着された端面板6cと、左右2箇所位置で角筒材6aを上下に貫通して固着された上パイプ材6dとを有している。
上支持材6の一対の上パイプ材6dは、支柱本体3の左右両側で支柱本体3から略等距離の位置にあり、ジャッキネジ棒8の挿通孔を形成している。
下支持材7は、前記上支持材6と実質的に同一構造であり、角筒材7aの両端面を端面板7cで閉鎖し、左右2箇所に下パイプ材7dを上下貫通配置しており、上支持材6と平行であって、背面が支柱本体3の前面3aに直交状に固着され、前面が垂直フランジHfと面接可能になっている。
【0019】
下支持材7の一対の下パイプ材7dは上支持材6の各上パイプ材6dと同一軸線上に配置され、ジャッキネジ棒8の下部側及びジャッキネジ棒8に螺合された移動フック9がずれ動かないように支持する。
前記移動フック9は、垂直フランジHfの下縁に係合する下係合部9aを形成したフック板9bと、このフック板9bの側面に添接されかつジャッキネジ棒8と直行する方向の角穴を有する角筒材9cと、この角筒材9c内に配置されていてジャッキネジ棒8と螺合するナット材9dとを有する。
【0020】
前記2本のジャッキネジ棒8は独立して回動して移動フック9を個別に昇降する。垂直フランジHfの下縁に係合した2つの移動フック9は、支柱本体3及び固定フック5からの距離が略等しくなり、概ね固定フック5を頂点とする2等辺三角形の底2角の位置に配置される。
移動フック9にはナット材9dの後方にボルトで形成された係合ピン19が水平に貫通して固定されており、この係合ピン19の先端は支柱本体3の下部に形成した上下方向の長孔20に係合しており、移動フック9の上下移動を許容しながらジャッキネジ棒8廻りの廻り止めをする廻り止め手段12が構成されている。
【0021】
ジャッキネジ棒8は上端に頭部8aを有し、上下パイプ材6d、7dを貫通していて、少なくとも下パイプ材7dから下方にネジ部が形成され、このネジ部に移動フック9のナット材9dが螺合されている。
ジャッキネジ棒8は上端の頭部8aを上方からスパナ等の工具で回動可能であって、回動することにより、移動フック9を上下移動することができる。
【0022】
親綱支柱1を大縦向きH型鋼の一側の垂直フランジHfに装着する場合(図1、2)は、移動フック9を最下位(垂直フランジHfの下縁より下方)まで移動しておいて、固定フック5を垂直フランジHfの上縁に係合し、上下支持材6、7を垂直フランジHfに面接し、その後にジャッキネジ棒8を回動して移動フック9を上昇させ、移動フック9を垂直フランジHfの下縁に係合する。
【0023】
親綱支柱1を小縦向きH型鋼の一側の垂直フランジHfに装着する場合(図5、6)も上記と同様に、移動フック9を垂直フランジHfの下縁より下方まで移動しておいて、固定フック5を垂直フランジHfの上縁に係合し、ジャッキネジ棒8を回動して移動フック9を上昇させ、移動フック9の下係合部9aを垂直フランジHfの下縁に係合する。
親綱支柱1は垂直フランジHfに装着した状態において、垂直フランジHfの上縁に固定フック5が係合し、固定フック5を挟む両側の下方で一対の移動フック9が垂直フランジHfの下縁に係合し、ひとつの固定フック5と2つの移動フック9とで垂直フランジHfを挟持することになり、2つの移動フック9が垂直フランジHfに沿った左右方向の離れた位置でかつ固定フック5から略等距離の位置で垂直フランジHfの下縁と係合することにより、垂直フランジHfに沿う方向の傾きを強固に阻止し、上下支持材6、7が垂直フランジHfに当接し、ジャッキネジ棒8が上下パイプ材6d、7dを介して上下支持材6、7によって支持される。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、部材の形状、構成及び組み合わせ等を変更したりすることもできる。
例えば、固定フック5は、ジャッキネジ棒8に略対応する位置(2箇所)にそれぞれ配置してもよく、フック板5bとスペーサ5cとを一体物で形成してもよい。また、固定フック5は、スペーサ5cを割愛してもよい。
【0025】
上下支持材6、7は、貫通する上下パイプ材6d、7dを連続した1本のパイプで形成したり、円筒材6b、7b、端面板6c、7c及び上下パイプ材6d、7d等を割愛して、角筒材6a、7aのみで形成したりしてもよい。また、前記角筒材6a、7aの代わりにチャンネル材にしてもよい。
親綱Pとしては、一般的にはワイヤロープが使用されるが、代わりに単管製手摺が装着される場合もあり、掛合部材4は単管に係脱自在に係合する構造にしてもよい。
【0026】
また、廻り止め手段12としては、係合ピン19と長孔20とに代えて、支柱本体3よりひとまわり大きなチャンネル材を移動フック9に取り付け、このチャンネル材を支柱本体3に上下移動可能に嵌合させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 親綱支柱
3 支柱本体
3a 前面
4 掛合部材
4a L字状掛け部
5 固定フック
5a 上係合部
5b フック板
5c スペーサ
6 上支持材
7 下支持材
8 ジャッキネジ棒
9 移動フック
9a 下係合部
9b フック板
12 廻り止め手段
19 係合ピン
20 長孔
H 縦向きH形鋼
Hf 垂直フランジ
P 親綱
図1
図2
図3
図4
図5
図6