IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アガタの特許一覧

<>
  • 特許-消火装置 図1
  • 特許-消火装置 図2
  • 特許-消火装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】消火装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/00 20060101AFI20221014BHJP
   A62C 35/10 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A62C3/00 A
A62C35/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019174025
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021049128
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519346136
【氏名又は名称】株式会社アガタ
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】田賀 俊行
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/032918(WO,A1)
【文献】中国実用新案第205055288(CN,U)
【文献】中国実用新案第204972818(CN,U)
【文献】中国実用新案第204373019(CN,U)
【文献】中国実用新案第204337992(CN,U)
【文献】中国実用新案第204106894(CN,U)
【文献】中国実用新案第202777515(CN,U)
【文献】中国実用新案第202479171(CN,U)
【文献】中国実用新案第202227137(CN,U)
【文献】中国実用新案第202028088(CN,U)
【文献】中国実用新案第202000119(CN,U)
【文献】中国実用新案第201695201(CN,U)
【文献】登録実用新案第3072177(JP,U)
【文献】特開平08-107943(JP,A)
【文献】国際公開第2007/077919(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/00
A62C 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉空間内に設けた挿入孔に挿入し筒状の密閉体である噴出部と、前記閉空間外に配置し前記噴出部に連結した消火ガス収納部とから成る消火装置であって、
前記噴出部は、耐熱部材から成り噴出孔を有する本体部と、熱によって溶融する熱溶融部材から成り前記噴出孔を封止する封止体とから構成されることを特徴とする消火装置。
【請求項2】
前記噴出部内には、前記消火ガス収納部から所定のガス圧の消火ガスが充填されていることを特徴とする請求項1に記載の消火装置。
【請求項3】
前記噴出孔は前記閉空間内の気流の風下側に向けて配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の消火装置。
【請求項4】
前記噴出部の噴出孔の中央は、前記閉空間の断面に対して中央位置に配置されることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の消火装置。
【請求項5】
前記消火ガス収納部内の消火ガス収納体は、横置きであることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の消火装置。
【請求項6】
前記噴出孔はテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の消火装置。
【請求項7】
前記閉空間は、給気、排気用ダクトであることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災の発生が予測される閉空間である、例えば工場等の給気・排気ダクトに取り付け、ダクト内で発生した火災を消火する消火装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排煙ダクト内の火災に対する消火装置が開示されている。この消火装置では、排煙ダクト内に設置した熱感知器一体型ノズルのヒューズメタルが、熱によって溶融することで、排煙ダクト内に霧状の水を噴霧して排煙ダクト内の火災を消火する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-107943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1では、霧状の水を熱感知器一体型ノズルをダクト内の上方に配置する必要があり、配置個所が制限される。また、水貯蔵ボンベを配管を介して適所に設置する必要があり、設置場所も制限されるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、設置が容易であり、火災発生個所に対して消火ガスを噴出することで確実に消火を行うことができる消火装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る消火装置は、閉空間に設けた挿入孔に挿入し、筒状の密閉体である噴出部と、前記閉空間外に配置し、前記噴出部の底部に連結した消火ガス収納部とから成る消火装置であって、前記噴出部は、耐熱部材から成り噴出孔を有する本体部と、熱によって溶融する熱溶融部材から成り前記噴出孔を封止する封止体とから構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る消火装置によれば、閉空間に対して、任意の個所に設置することが可能であると共に設置が容易であり、火災発生個所に対して消火ガスが噴出されることで確実に消火を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】消火装置の斜視図である。
図2】ダクト内に消火装置を設置した状態の構成図である。
図3】ダクト内に火災が発生した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を本実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施例の消火装置の斜視図であり、図2はダクトDに消火装置を設置した状態の構成図である。
【0010】
消火装置1は、ダクトDの底面に穿設した挿入孔D1に挿入する面状の噴出部2と、この噴出部2の底部に連結した消火ガス収納部3とから構成されている。
【0011】
噴出部2は頂部を閉塞した筒状の本体部2aと、この本体部2aの側面に設けられ上下方向に長細状の噴出孔2bと、噴出孔2bを閉塞し封止する封止体2cとから構成されている。
【0012】
本体部2aは厚み1~2mm程度のアルミニウムや鉄等の金属、或いは耐熱性樹脂体等の耐熱部材から構成され、例えば円筒状とされている。本体部2aの大きさは、例えば直径2cm、高さ20cm程度であり、設置するダクトDの大きさに応じて、適宜の大きさのものを採用できる。
【0013】
また、本体部2aの下端は、図示していないが例えば外ねじが設けられており、消火ガス収納部3に設けられたねじ孔に螺合し、消火ガス収納部3と連結可能な構造とされている。
【0014】
本体部2aの噴出孔2bは、横0.5cm、縦2cm程度の大きさであり、封止体2cは例えば厚さ2mmで噴出孔2bに嵌合する大きさであり、例えば80℃程度の熱によって溶融する樹脂体である熱溶融部材から成る。なお、溶融温度は80℃程度以外に、120℃、150℃等の設置場所に応じて、溶融温度の異なる適宜の熱溶融部材を採用することもできる。
【0015】
噴出孔2bを封止する封止体2cは、本体部2a内の消火ガスGのガス圧に耐えれるように、封止体2cの外縁部を噴出孔2bに溶着、接着させて保持されている。或いは、封止体2cの外縁部に溝部を設けて、この溝部に噴出孔2bの縁部を嵌合させて保持するようにしてもよく、更にこの嵌合個所を接着してもよい。
【0016】
また、噴出孔2bの縁部は、外側に向けて噴出する消火ガスGが拡散し易いように、内周面から外周面に向けて拡開するテーパ状とされており、この縁部と同様なテーパ面を有する封止体2cによって、噴出孔2bは封止されている。
【0017】
なお、噴出孔2bの中心位置は、後述するダクトD内に噴出部2を設置した場合にダクトDの断面に対して中央位置に配置されることが好ましいので、噴出部2の高さはダクトDの大きさに応じて、適宜の高さのものを採用することになる。
【0018】
また、最小の断面のダクトDに対応した噴出部2を製造し、ダクトDの大きさに対応した円筒状のスペーサを用意し、噴出部2の下端に適宜のスペーサを連結することで、噴出部2の高さを調整してもよい。このスペーサは、例えば下端に収納箱3aと連結可能な外ねじを有し、上端に噴出部2と連結可能な内ねじを有する構造をしている。
【0019】
噴出部2と連結し、ダクトDの外側下部にフレーム等により固定されている消火ガス収納部3には、収納箱3a内に窒素等の不燃性の消火ガスGが高圧状態で充填されたボンベである消火ガス収納体3bが横置き状態で収納されている。この消火ガス収納体3bは消火ガス収納部3内で移動しないように図示しない固定具により固定されており、固定具を解除することで、消火ガス収納部3を交換できる。
【0020】
そして、消火ガス収納体3bは、先端の出口部である減圧バルブ3cを介して、直角状に連結された噴出部2内に常時、1500Pa程度のガス圧を有する消火ガスGが充填されている。
【0021】
噴出部2は密閉構造であるので、噴出部2内に加圧した気体を充填しても、封止体2cの溶融以外では、噴出孔2bから気体が漏れない構造とされている。従って、通常時では噴出部2に充填された消火ガスGが噴出部2から外部に漏れ出すことはない。
【0022】
また、噴出部2は下端は、消火ガス収納部3の収納箱3aと螺合等により連結されており、収納箱3aを側面等を開口し減圧バルブ3cを閉止することで、前述のスペーサ等を使用して適宜の長さの噴出部2と交換、調整することが可能である。同様に、減圧バルブ3cを閉止し、固定具を開放することで、消火ガス収納体3bを交換することもできる。
【0023】
消火装置1を設置する際には、図2に示すようにダクトDに設けた挿入孔D1を介して、消火装置1の噴出部2をダクトD内に挿入し、ダクトDの外側下部に消火ガス収納部3を配置する。また、ダクトD内の気体が挿入孔D1から漏れることがないように、挿入孔D1と噴出部2との間はシール体等により密封する。
【0024】
消火装置1を設置するダクトDは、例えば工場等に設置した給気、排気ダクトであり、排気ダクトでは油分や粉塵等を含む空気を外部に排気したりする。また、ダクトDとして、調理場の調理により発生する排煙を外部に排気するため排煙ダクトを用いてもよい。
【0025】
更には、外部と仕切られた閉空間であれば、消火装置1を設置することが可能であり、例えば業務用の無停電電源装置に消火装置1を設置することもできる。このような場合は、閉空間である箱形状の無停電電源装置の筐体内に噴出部2を配置し、バッテリの発熱等により発生した火災を速やかに消火することが可能である。
【0026】
封止体2cを取り付けた噴出孔2bは、図2の矢印で示すダクトD内の気流に対して、風下に向けて配置されており、横置き状態の消火ガス収納体3bを収納した収納箱3aは、ダクトDの長手方向に沿って配置されている。なお、消火ガス収納部3は設置場所に応じて、噴出部2に対して適宜に回動できるようにしてもよい。
【0027】
噴出孔2bを風下に向けて配置する理由として、風上から火災発生個所に対して、効率的に消火ガスGを噴出させることが可能な点が挙げられる。また、噴出孔2bを風上に向けて配置すると、油分や粉塵が封止体2cに付着してしまうことになる。これにより、火災発生によって封止体2cが溶融する温度に達しても、封止体2cが溶融しなかったり、或いは一部しか溶融しないような不具合が発生する。これに対して、噴出孔2bを風下に向けて配置することで、油分や粉塵が封止体2cに付着することは少ない。
【0028】
ダクトD内で火災が発生し易い場所として、建物壁面の排気部Hの近傍に設けた排気ファンFが挙げられる。モータにより排気ファンFの羽根体F1が回転することで、矢印方向に気流が発生し、熱せられた空気や粉塵、オイルミストを含む空気等を排気部Hを介して、外部に排出させている。
【0029】
排気ファンFのモータの近傍には、長期間の使用に伴って油分や粉塵が付着し、モータの発熱と油分や粉塵による電気スパークが発生して、発火し易い。従って、噴出部2はダクトD内において、排気ファンFの上流側に配置することが好ましい。
【0030】
例えば、図3に示すように排気ファンFが電気スパークにより発火すると、ダクトD内の温度は上昇する。火災により上昇した温度によって、封止体2cの所定の溶融温度以上となると、噴出部2を封止していた封止体2cは溶融し、噴出孔2bから消火ガスGが噴出される。
【0031】
噴出部2内で加圧されている消火ガスGは、勢い良く噴出孔2bから噴出され、噴出孔2bがテーパ状に形成されていることにより、ダクトD内を効率的に拡がりながら下流方向に噴出し、排気ファンFの発火を消火する。なお、一度、噴出孔2bから消火ガスGの噴出が開始されると、消火ガス収納体3b内の消火ガスGがなくなるまで、消火ガスGの噴出は継続される。
【0032】
このようにして、本実施例に係る消火装置1は、ダクトD内で発火が生じた場合でも、火災が大きくならないうちに、消火ガスGを発生させて消火することができる。
【0033】
消火装置1による消火の終了後に、ダクトDの使用を再開するためには、消火装置1を新品と交換する。又は、消火ガス収納体3bを新たに消火ガスを充填したものと交換したり、封止体2cが溶融した噴出部2を新品に交換したりし、封止体2cを詰め直して再使用してもよい。
【0034】
なお、消火装置1の噴出部2は、実施例のようにダクトDの下部から挿入するのではなく、周囲の状況によってはダクトDの側部や上部から挿入してもよく、その挿入方向もダクトDの角部からダクトDに平行に挿入することもできる。なお、ダクトDと平行にした場合には、噴出孔2bは噴出部2の先端や周囲に設ける必要がある。
【0035】
また、1個のダクトDに対して、1個の消火装置1を配置するとは限らず、図3に示すように1個の長いダクトDに対して、間隔をおいて複数個の消火装置1を設けるようにしてもよい。
【0036】
更には、複数個のダクトDにそれぞれ噴出部2を取り付け、消火ガス収納部3を単数として、複数の噴出部2と消火ガス収納部3との間の配管を共通化し、消火ガス収納部3の数を削減することもできる。
【0037】
なお実施例においては、消火装置1はダクトD内に配置することについて説明したが、必ずしもダクトDとは限らず、ダクト形状ではない閉空間についても適用できる。この場合は、閉空間に噴出部2を配置し、閉空間外に消火ガス収納部3を配置することになる。
【0038】
本発明に係る消火装置によれば、ダクトD等の閉空間に対して、電源や配線、配管等を必要としないため、任意個所に設置することが可能であると共に設置が容易である。また、火災発生個所に対して消火ガスが勢い良く噴出されることで火災発生個所が燃え広がる前に確実に消火を行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
1 消火装置
2 噴出部
2a 本体部
2b 噴出孔
2c 封止体
3 消火ガス収納部
3a 収納箱
3b 消火ガス収納体
D ダクト
D1 挿入孔
F 排気ファン
H 排気部
図1
図2
図3