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特許7158036食品保存用容器およびそれを用いた食品の風味改良方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】食品保存用容器およびそれを用いた食品の風味改良方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/14 20060101AFI20221014BHJP
   B65D 25/34 20060101ALI20221014BHJP
   A23L 3/00 20060101ALI20221014BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20221014BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20221014BHJP
   C12H 1/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B65D25/14 Z
B65D25/34 B
A23L3/00 101A
A23L3/00 101B
A23L2/00 N
A23L2/00 B
C12H1/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019525625
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2018023294
(87)【国際公開番号】W WO2018235815
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2017119617
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503302115
【氏名又は名称】株式会社リーフ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 勇幸
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-008715(JP,U)
【文献】実開平02-131883(JP,U)
【文献】特開2009-073247(JP,A)
【文献】登録実用新案第3129145(JP,U)
【文献】特開昭64-055173(JP,A)
【文献】特開2013-211551(JP,A)
【文献】特開2002-112759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/14
B65D 25/34
A23L 3/00
A23L 2/42
A23L 2/00
C12H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空セラミックを含有する断熱セラミック塗料でコーティングされたことを特徴とする食品保存用容器であって、食品保存用容器が、プラスチックボトル、ガラス瓶、金属缶、液体用タンク、樽またはワインセラーであり、食品が非アルコール飲料またはアルコール飲料である、食品保存用容器
【請求項2】
食品が、アルコール飲料である、請求項1に記載の食品保存用容器。
【請求項3】
食品を食品保存用容器に入れる前または入れた後に、前記食品保存用容器を中空セラミックを含有する断熱セラミック塗料でコーティングし、食品が入った前記食品保存用容器を保存することを特徴とする、食品の製造方法であって、食品保存用容器が、プラスチックボトル、ガラス瓶、金属缶、液体用タンク、樽またはワインセラーであり、食品が、非アルコール飲料またはアルコール飲料である、方法
【請求項4】
食品を食品保存用容器に入れる前または入れた後に、前記食品保存用容器を中空セラミックを含有する断熱セラミック塗料でコーティングし、食品が入った前記食品保存用容器を保存することを特徴とする、食品の風味改良方法であって、食品保存用容器が、プラスチックボトル、ガラス瓶、金属缶、液体用タンク、樽またはワインセラーであり、食品が、非アルコール飲料またはアルコール飲料である、方法
【請求項5】
食品が、アルコール飲料である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
保存が、0℃~40℃で15日間~5年間行われることを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、平成29年6月19日に日本国特許庁に出願された出願番号2017-119617号の優先権の利益を主張する。優先権基礎出願はその全体について、出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、食品保存用容器、およびそれを用いた食品の風味改良方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、酒類を含む飲料、肉等の食品では、これらを一定期間保存することにより、新たな食感、風味とすること、いわゆる熟成、が広く行われている。しかしながら、このような熟成は一般的に厳格な温度管理、長期間の保存を必要とし、製造に高コストを要する。
【0004】
特許文献1には、0℃から被熟成処理物の氷結点前までの温度範囲内の低温下で、波長1~100μmの遠赤外線を照射して熟成させる、食品の熟成方法が開示されているが、厳格な温度管理と遠赤外線照射を組み合わせる煩雑なものである。特許文献2には、容器内に収容された酒類の液層に対して磁場を印加する第1の磁場発生機構と、前記容器内で前記液層上に存在する気層に対して磁場を印加する第2の磁場発生機構と、を有することを特徴とする酒類熟成器が開示されているが、特殊な装置を必要とする。特許文献3には、木材と未熟成蒸留酒とを加熱条件下で接触させること、および、得られた加熱処理済蒸留酒を作用光と接触させること、を含む蒸留酒の成熟を早める方法が開示されているが、加温と光照射を組み合わせる煩雑なものである。
【0005】
特許文献4には、断熱塗料素材を用いた、薄い断熱層を備えた保温食器が開示されているが、高温の食品が冷めにくく、また断熱により手に触れる部分が高温とならないことを特徴とする、喫食時に用いる食器に関する発明であり、食品を保存する容器を開示するものではない。
【0006】
上記文献および本明細書内に示される文献は、出典明示により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5-49415号公報
【文献】特開2006-174761号公報
【文献】特表2017-501750号公報
【文献】特開2005-342227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、短期間の保存によって食品の風味を改良することが可能な食品保存用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、容器を断熱セラミック塗料(遮熱・断熱塗装に用いられるセラミック含有塗料)でコーティングすることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)断熱セラミック塗料でコーティングされたことを特徴とする食品保存用容器、
(2)プラスチックボトル、ガラス瓶、金属缶、液体用タンク、樽またはワインセラーである、(1)の容器、
(3)食品が、非アルコール飲料またはアルコール飲料である、(1)または(2)の容器、
(4)食品を食品保存用容器に入れる前または入れた後に、前記食品保存用容器を断熱セラミック塗料でコーティングし、食品が入った前記食品保存用容器を保存することを特徴とする、食品の製造方法、
(5)食品を食品保存用容器に入れる前または入れた後に、前記食品保存用容器を断熱セラミック塗料でコーティングし、食品が入った前記食品保存用容器を保存することを特徴とする、食品の風味改良方法、
(6)食品保存用容器が、プラスチックボトル、ガラス瓶、金属缶、液体用タンク、樽またはワインセラーである、(4)または(5)の方法、
(7)食品が、非アルコール飲料またはアルコール飲料である、(4)~(6)のいずれかの方法、
(8)保存が、0℃~40℃で15日間~5年間行われることを特徴とする、(4)~(7)のいずれかの方法、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保存用容器を用いることにより、広く食品一般の風味を改良できる。より具体的には、本発明の保存用容器を用いることにより、食品のいわゆる熟成を促進させ、短期間で風味を改良できる。さらに具体的には、本発明により、茶、紹興酒、ワイン、ウイスキーといった長期熟成が行われる食品の熟成期間を短縮することができる。特に、日本酒は熟成を促進しようとすると風味劣化が起きやすいところ、本発明によれば、本発明の容器を用いて保存するだけという簡単な作業で風味を改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ガラス瓶に耐熱セラミック塗料をコーティングした容器を示す図である。
図2】ガラス瓶に耐熱セラミック塗料をコーティングした後、遮光処理した容器を示す図である。
図3】PETボトルに耐熱セラミック塗料をコーティングした後、遮光処理した容器を示す図である。
図4】ホーローライニングタンクに耐熱セラミック塗料をコーティングした容器を示す図である。
図5】通常のステンレスボトル(右側)、および耐熱セラミック塗料をコーティングしたステンレスボトル(左側)を示す図である。
図6】左:市販の家庭用ワインセラー、右:市販の家庭用ワインセラーの外側に耐熱セラミック塗料を塗布したもの、を示す図である。
図7】市販の家庭用ワインセラーの内側に耐熱セラミック塗料を塗布した様子を示す図である。
図8】実施例7に基づく分析結果を示す図である。
図9】実施例8に基づく分析結果を示す図である。
図10】実施例9に基づく分析結果を示す図である。
図11】実施例10に基づく分析結果を示す図である。
図12】実施例11に基づく分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。ある態様において、本発明は、断熱セラミック塗料でコーティングされた食品保存用容器を提供する。
【0014】
本明細書における「断熱セラミック塗料」とは、セラミックを含有し、遮熱・断熱塗装に用いられる塗料をいう。具体的な例として、GAINA(株式会社日進産業)、クールサーム(株式会社大高商会)、パラサーモ(日本特殊塗料株式会社)、ヒートカット(有限会社東亜システムクリエイト)、アドグリーンコート(日本中央研究所株式会社)、アステック(株式会社アステックペイントジャパン)、ミラクール(株式会社ミラクール)、セラミック・カバー(エンヴァイロトロール社)、サーモシールド(SPMサーモシールド社)等が挙げられる。これらは、中空セラミックを含有し、高い遮熱・断熱効果を発揮するものである。好ましくは、断熱セラミック塗料はGAINAである。
【0015】
本態様における容器は、断熱セラミック塗料で直接コーティングされていてもよいし、断熱セラミック塗料が塗布または練り込まれたテープを貼る等により実質的にコーティングされたものでもよい。また、あらかじめ断熱セラミック塗料が含まれた原料から容器を作成してもよい。
【0016】
本態様における容器の断熱セラミック塗料のコーティング厚は特に限定されない。コーティング厚の例として、0.1mm以上、0.1~10mm、0.2~5mm、0.5~3mm等が挙げられる。また、一部コーティングされていない部分があっても良い。例えば、塗りムラによるものや、別蓋や覗き窓のためにコーティングされない部分があってもよい。好ましくは、本態様の容器は、容器の表面積の70%以上、例えば、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、がコーティングされる。より好ましくは、容器全体が断熱セラミック塗料でコーティングされる。
【0017】
ある実施形態において、本態様の容器は、直接食品をいれて保存するものである。また他の実施形態において、本態様の容器は、食品が充填された他の容器を入れて保存するためのものでもよい。この場合、コーティングは容器の外側または内側のいずれに施してもよいし、両方に施してもよい。
【0018】
本態様における容器の種類は、食品に用いられるものであれば、特に限定されない。容器の材質の例として、アルミ、鉄などの金属、PETなどのプラスチック、ガラス、陶器、磁器、ホーロー、木、紙、発泡スチロール等が挙げられる。また、容器の種類の例として、瓶、ボトル、樽、パウチ、袋、箱、ワインセラー、冷蔵庫等が挙げられる。本態様の容器に直接食品を充填する場合は、液体が漏れ出さないもの、密封できるものが好ましい。より具体的な容器の例として、アルミ缶、スチール缶などの金属缶、PETボトルなどのプラスチックボトル、ガラス瓶、紙容器、木樽、ポリタンク、ステンレスタンク、ホーロータンクなどの液体用タンク、プラスチック袋等が挙げられる。
【0019】
本態様における容器の大きさは、特に限定されない。例えば、180ml、300ml、350ml、500ml、633ml、720ml、750ml、1L、1.5L、1.8L、2L、2.5L、3L、3.6L、5L、10L、18L、20L、45L、60L、80L、180L、450L、500L、1000L、2000L、4000L、5000L、10000L、15000L、20000L、50000L等が挙げられる。例えば、これらのいずれかを上限または下限とする任意の範囲とすることができる。
【0020】
本態様における食品の種類は特に限定されない。例として、牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉等の肉類;キャベツ、レタス、セロリ、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモ等の野菜;オレンジ、メロン、いちご、柿等の果物;米、麦、大豆、小豆などの穀物;緑茶、紅茶、ウーロン茶等の茶葉;コーヒー、ココアなどの嗜好品;野菜汁、果汁、清涼飲料水等の非アルコール飲料;日本酒、ワイン、ビール、紹興酒などの醸造酒、焼酎、白酒、ウイスキー、ブランデーなどの蒸留酒、リキュール、カクテル等を含むアルコール飲料;調味料;および加工食品等が挙げられる。好ましくは、本態様における食品は非アルコール飲料またはアルコール飲料である。より好ましくは、本態様における食品はアルコール飲料である。
【0021】
本態様における食品の形態は特に限定されない。例として、ブロック、カット品、薄片、粉末、顆粒、ペレット等の固体、ペースト等の半固体、および溶液、懸濁液、エマルジョン等の液体が挙げられる。
【0022】
本態様における容器が、どのような作用機序で短時間の保存により風味の改良を実現するかは不明であるが、断熱セラミック塗料より放射される遠赤外線が作用している可能性が考えられる。
【0023】
ある態様において、本発明は上記態様の食品保存用容器を用いた食品の製造方法または風味改良方法を提供する。本態様において使用できる断熱セラミック塗料、容器、食品についての詳細は、上述したとおりである。より具体的な実施形態において、本態様の食品の風味改良方法は、食品の熟成期間の短縮方法である。
【0024】
本態様の方法は、食品を入れる前、または入れた後に、容器を断熱セラミック塗料でコーティングする工程を含む。コーティングの方法は、特に限定されず、任意の方法でコーティングできる。コーティング方法の例として、刷毛、ローラー等での塗布、浸漬、吹き付け、静電塗装等が挙げられる。また、断熱セラミック塗料が塗布または練り込まれたテープ等を巻き付ける等して実質的なコーティングを施してもよい。より具体的な実施形態において、本態様の方法では、食品が入った容器そのものが断熱セラミック塗料によりコーティングされる。本実施形態の具体例として、例えば、断熱セラミック塗料がコーティングされたガラス瓶、樽、タンク等に直接飲料を入れて保存することが挙げられる。他の具体的な実施形態において、本態様の方法では、断熱セラミック塗料によりコーティングされていない容器に充填された食品が、断熱セラミック塗料によりコーティングされた容器に入れられる。本実施形態の具体例として、例えば、飲料缶や瓶を、断熱セラミック塗料でコーティングされた木箱、発泡スチロール容器等に入れて保存することが挙げられる。この場合、コーティングは容器の外側または内側のいずれに施してもよいし、両方に施してもよい。
【0025】
保存条件は、対象となる食品、付与する風味の程度に応じて調整できる。本態様の方法は、特に温度管理を行わずに、屋外あるいは室内で保存してもよいし、温度管理を行ってもよい。保存温度の例として、-5℃、-2℃、-1℃、0℃、5℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃等が挙げられる。例えば、これらのいずれかを上限または下限とする任意の範囲とすることができる。保存期間の例として、1日間、3日間、5日間、10日間、15日間、20日間、25日間、30日間、35日間、40日間、45日間、50日間、55日間、60日間、75日間、90日間、120日間、150日間、180日間、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間等が挙げられる。例えば、これらのいずれかを上限または下限とする任意の範囲とすることができる。例えば、ワイン類の場合、ワインセラーで10℃~15℃、好ましくは13℃~14℃に保存する等が挙げられる。
【0026】
本態様の方法では、温度、湿度、酸素量、光量等の厳格な条件管理をせずとも、食品の風味を改良できるが、これらのいずれか1つ以上を実施してもよい。例えば、保存室内の雰囲気を窒素で置換する、断熱セラミック塗料中に遮光性のある原料を加える、等を行ってもよい。
【0027】
本発明の方法により、先味を増加または減少させる、後味を増加または減少させる、苦味を減らす、旨味コクを増大させる、味をまろやかにする、味をさわやかにする、等の効果が得られる。ここでいう先味、後味、とは、食品を喫食した際の時間経過に応じて感じられる味覚のことをいい、喫食直後に感じられる味を「先味」、食品を飲み込んだ後に残る味を「後味」、その中間を「中味」と称する。
【0028】
食品の風味の評価は、官能評価、または味覚センサーによる評価を用いることが出来る。味覚センサーの例として、味覚認識装置、TS-5000Z(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)が挙げられる。
【0029】
以下に実施例を記載するが、本発明が実施例により必ずしも限定されるものではない。
【実施例
【0030】
実施例1:市販の日本酒の保存試験
清酒「稜線」純米吟醸酒(銀海酒造(有))、720mLガラス瓶、について、容器全体にGAINA(株式会社日進産業)を刷毛にて塗布したものと、GAINAによる処理をしなかったものについて、部屋の中で約2ヶ月間保存した。部屋は遮光、温度コントロールはしていない。保存後、全国新酒鑑評会の審査員のメンバー1名による比較試飲を行った。
【0031】
結果として、処理をしていないものは若干酸が浮く感じがあるのに対し、処理をしたものはマイルドになっていた。滑らかな風味になっており、熟成がうまく進んでいるとの評価であった。
【0032】
実施例2:市販の日本酒の保存試験
実施例1と同様に処理、保存した清酒「稜線」純米吟醸酒について、保存後、32歳から55歳の男性12名による比較試飲を行った。未処理品を3点とし、処理品について、難点あり:1点、少し難点あり:2点、変化なし:3点、少し良く感じた:4点、明らかに良かった:5点の5段階評価で評価した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
全てのパネルで、未処理品と同等以上との評価であり、評点の平均も4.3点と高かった。風味の感想をまとめると、処理品は、まろやか、カドが取れた味、さわやかな味、まったりとした感じ、舌にひろがる感じ、高級な味がしたというものであった。
【0035】
実施例3:日本酒の大容量スケールでの保存試験
清酒約450Lを、GAINAでコーティングされた約600L容量のホーローライニングタンク(図4参照)に入れ、木蓋をして20日間保存した。保存品を試飲したところ、実施例2と同様、まろやかで、カドが取れた風味となっていた。本発明は、蓋部分にコーティングされていない部分がある場合、および大容量スケールの場合でも効果が得られることが確認された。
【0036】
実施例4:市販の中国酒の保存試験
中国広東省にて、白酒をGAINA塗布処理、および未処理の1800ml容量ステンレスクリップボトル(図5参照)にて約2ヶ月間保存した後、23歳から44歳の男女10名による比較試飲を行った。未処理品を3点とし、処理品について、難点あり:1点、少し難点あり:2点、変化なし:3点、少し良く感じた:4点、明らかに良かった:5点の5段階評価で評価した。結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
全てのパネルで、未処理品と同等以上との評価であり、評点の平均も4.0点と高かった。風味の感想をまとめると、処理品は、まろやか、カドが取れた、雑味が減った、グレードがアップしたというものであった。
【0039】
実施例5:市販の各種飲料の保存試験
表3に記載の各種飲料について、容器全体にGAINAを刷毛にて塗布したものと、処理をしなかったものについて、部屋の中で約2ヶ月保存した。遮光、温度コントロールは特にしていない。未処理品、処理品について、まろやかさ、カドが取れているか、飲みやすさ、香り、旨みについて、良い:5点、やや良い:4点、普通:3点、やや悪い:2点、悪い:1点で評価した。結果を表4に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
いずれの飲料についても、処理品が未処理品よりも優れた結果を示した。日本酒、ワイン、ウイスキー、ブランデーについて特に良好な結果が得られた。
【0043】
実施例6:市販のワインセラーの処理
市販のワインセラーの外側および内側にGAINAを塗布し(図6、7参照)、ワインを1ヶ月間保存した。保存品を試飲したところ、まろやかで、カドが取れた風味となっていた。本発明は、断熱セラミック塗料でコーティングされた容器に、コーティングされているまたはされていない容器に入った食品を保存する場合でも効果が得られることが確認された。
【0044】
実施例7:市販の各種飲料の保存試験(味覚センサーによる分析)
表5に記載の各種飲料について、容器全体にGAINAを刷毛にて塗布したものと、処理をしなかったものについて、部屋の中で約1年間保存した。遮光、温度コントロールは特にしていない。
【0045】
【表5】
【0046】
上記の試料について、処理品および未処理品を、(株)キューサイ分析研究所(福岡県宗像市)への受託分析により、分析した。分析は、味覚認識装置、TS-5000Z(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)を用いて実施した。各試料を水で2倍に希釈して味覚認識装置に導入して分析した。味覚の差は、酸味、苦味雑味(苦味の先味)、渋味刺激(渋味の先味)、旨味(旨味の先味)、塩味、苦味(苦味の後味)、渋味(苦味の後味)、旨味コク(旨味の後味)の8種の味を比較することにより判定した。基本的に、先味が強く、後味が弱いものはスッキリとした風味であり、後味が強いものはしっかりとした風味となる。未処理品を対照品(全ての数値を0とみなす)として、判定した。結果を表6、図8に示す。
【0047】
【表6】
【0048】
スッキリ感の必要な炭酸飲料である試料4は、先味に相当する苦味雑味、酸味刺激が増加し、他の比較的しっかりした風味の飲料については、先味が減少し、旨味コクが増加する傾向を示した。これらの中では、ワインの試料2が大きな変化を示した。試料2については、酸味が減少し、渋味を維持したまま旨味、旨味コクが増強されるという、非常に良好な結果を示した。
【0049】
実施例8:市販の日本酒の保存試験(味覚センサーによる分析)
試料5として、「菊正宗」香醸(上撰)、720ml瓶について、容器全体にGAINAを刷毛にて塗布したものと、GAINAによる処理をしなかったものについて、部屋の中で約1年間保存した。部屋は遮光、温度コントロールはしていない。「料理のための清酒」、500mL(寶酒造(株))を対照品(全ての数値を0とみなす)として、試料の処理品、未処理品を判定する以外は、実施例7と同様の方法で分析した。結果を表7、図7に示す。
【0050】
【表7】
【0051】
すっきりと消える先味の一つである「苦味雑味」が処理により低下しており、後ひく味の一つである「苦味」もかなり低くなっている。従って、処理により苦味性が低下し、マイルド化し、まろやかになり飲みやすくなっていると考えられた。
【0052】
実施例9:市販の日本酒の保存試験(味覚センサーによる分析)
表8に記載の清酒について、容器全体にGAINAを刷毛にて塗布したものと、GAINAによる処理をしなかったものについて、部屋の中で約2ヶ月間保存した。部屋は遮光、温度コントロールはしていない。
【0053】
【表8】
【0054】
試料6~8を、実施例7と同様の方法で分析した。結果を表9、図10に示す。
【0055】
【表9】
【0056】
いずれも、大きな傾向に変化はないものの、処理により旨味コクが増大した。特に、純米吟醸酒について高い効果が得られた。
【0057】
実施例10:市販の焼酎の保存試験(味覚センサーによる分析)
試料9として、「さつま黒奉行」萬世酒造(株)、900ml瓶について、容器全体にGAINAを刷毛にて塗布したもの、GAINAを塗布した後、茶色の粘着テープで全体を被覆し遮光したもの、GAINAによる処理をしなかったものについて、部屋の中で約1年間保存した。部屋は遮光、温度コントロールはしていない。これらを実施例7と同様の方法で分析した。結果を表10、図11に示す。
【0058】
【表10】
【0059】
芋焼酎では、すっきりと消える先味の一つである「苦味雑味」が処理により高くなっており、「渋味刺激」も高くなっていた。同様に、後ひく味の一つである「苦味」も強くなっていた。遮光したものの方がこの傾向を助長しているように見受けられた。
【0060】
実施例11:市販のウイスキーの保存試験(味覚センサーによる分析)
試料10として、サントリーオールドウイスキー、モルト、グレーン、サントリースピリッツ(株)ブリュワリー、700ml瓶について、容器全体にGAINAを刷毛にて塗布した後、茶色の粘着テープで全体を被覆し遮光したもの、GAINAによる処理をしなかったものについて、部屋の中で約1年間保存した。部屋は遮光、温度コントロールはしていない。これらを、水で4倍希釈する以外は、実施例7と同様の方法で分析した。結果を表9、図12に示す。
【0061】
【表11】
【0062】
ウイスキーでは、「苦味雑味」の他「酸味」が高くなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の保存用容器を用いることにより、広く食品一般の風味を改良できる。本発明は、飲食品製造、外食産業の分野等で利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12