(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】原木ピーラーマシン
(51)【国際特許分類】
A22C 13/00 20060101AFI20221014BHJP
B26D 3/08 20060101ALI20221014BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A22C13/00 Z
B26D3/08 A
B26D7/18 E
(21)【出願番号】P 2020101321
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503049427
【氏名又は名称】匠技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】今浦 博士
(72)【発明者】
【氏名】栩野 登久
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-127767(JP,A)
【文献】特開平11-137165(JP,A)
【文献】特開2003-319770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟シートからなる筒状のケーシング内に食品本体を収容すると共に、ケーシングの開口を封止部で封止した食品原木のケーシングを除去する原木ピーラーマシンであって、
切込みが入れられ、一部が食品本体から剥がされたケーシングを掴み、前記食品原木に対して引っ張ることで、当該ケーシングを食品本体から除去する引張手段と、
前記引張手段によって前記食品原木から除去されたケーシングを、負圧によって発生する風を利用してダクト内を搬送して、回収ボックスに収納するケーシング回収手段と、を備え、
前記引張手段は、
ケーシングを挟んで前記食品原木から剥す一対の引張ローラと、
当該一対の引張ローラで剥されたケーシングを収容する収容ボックスと、で構成され、
更に、前記引張手段の一対の引張ローラのうち一方の変位を検出するセンサを備え、前記一対の引張ローラの間を前記ケーシングの封止部が通過することによって前記センサが前記一方の引張ローラの変位を検出したとき、前記ケーシングの食品原木からの除去が完了したと判定することを特徴とする原木ピーラーマシン。
【請求項2】
柔軟シートからなる筒状のケーシング内に食品本体を収容すると共に、ケーシングの開口を封止部で封止した食品原木のケーシングを除去する原木ピーラーマシンであって、
切込みが入れられ、一部が食品本体から剥がされたケーシングを掴み、前記食品原木に対して引っ張ることで、当該ケーシングを食品本体から除去する引張手段と、
前記引張手段によって前記食品原木から除去されたケーシングを、負圧によって発生する風を利用してダクト内を搬送して、回収ボックスに収納するケーシング回収手段と、を備え、
前記引張手段は、
ケーシングを挟んで前記食品原木から剥す一対の引張ローラと、
当該一対の引張ローラで剥されたケーシングを収容する収容ボックスと、で構成され、
更に、前記収容ボックスの開口部近傍に金属センサが設置され、当該金属センサによって、前記ケーシングの封止部の通過を検出したとき、前記ケーシングの食品原木からの除去が完了したと判定することを特徴とする原木ピーラーマシン。
【請求項3】
前記ケーシングの封止部を把持し、切込みが入れられた箇所から前記ケーシングを剥す把持手段を更に備え、
当該把持手段は、剥されたケーシングを前記引張手段に引き渡す、請求項1
または2に記載の原木ピーラーマシン。
【請求項4】
前記食品原木を載置した状態で、軸を中心に回転させることが可能な原木回転手段を更に備え、
当該原木回転手段で食品原木を回転させると共に、前記ケーシングを前記引張手段で引張り、ケーシングに螺旋状の切れ目を入れながら食品本体から剥す、請求項1または2に記載の原木ピーラーマシン。
【請求項5】
前記引張手段は、前記原木回転手段に載置された食品原木に沿って移動可能であり、前記ケーシングを食品原木から剥ぎ取る際には、食品原木に沿って後方に移動する、請求項
4に記載の原木ピーラーマシン。
【請求項6】
前記ケーシング回収手段は、
ケーシングを収納する回収ボックスと、
前記引張手段の収容ボックスと前記回収ボックスとをつなぎ、風によって前記ケーシングを搬送するダクトと、で構成される、請求項1
または2に記載の原木ピーラーマシン。
【請求項7】
前記原木回転手段は、回転の方向を変えることおよび回転を停止させることが可能であり、前記引張手段によってケーシングを引っ張っている途中で回転を停止し、または逆転させることにより、ケーシングに対する切れ目の位置を変更できる、請求項
4に記載の原木ピーラーマシン。
【請求項8】
一方の端部にスペーサが付着した食品原木から当該スペーサを除去するスペーサ除去手段を更に備え、当該スペーサ除去手段は、
ケーシングが除去された前記食品原木を搬送するコンベアと、
垂直面内で旋回可能なアームの先端に取り付けられたローラと、で構成され、
前記食品原木の搬送に伴って前記ローラが押し当てられた食品原木が変形し、当該変形によって前記スペーサが食品原木から引き剥がされる、請求項1
または2に記載の原木ピーラーマシン。
【請求項9】
前記コンベアは、前記食品原木の搬送方向に沿って設置された2台の小コンベアで構成され、かつ当該2台の小コンベア間には隙間が設けられており、
前記ローラによって前記食品原木から引き剥がされたスペーサは、当該隙間を通って落下した後トレイに収容される、請求項
8に記載の原木ピーラーマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品原木からケーシングを除去する際に用いられる原木ピーラーマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハムの食品原木では、紙や合成樹脂等の柔軟シートで作製された筒状のケーシング内に食品本体を収容すると共に、ケーシングの開口を封止具で封止している。
【0003】
そして径の大きい原木については、ケーシングを除去した後、原木本体を薄いスライス片にスライスすると共に、合成樹脂製の袋にスライス片を所定枚数(通常数枚から10数枚)密閉し、その状態で販売している。
【0004】
食品原木からケーシングを除去するためにピーラーマシンが用いられている。特許文献1に記載のピーラーマシンでは、一方の封止具近傍の径の小さいケーシングに切れ目を入れた後、チャックで封止具を把持した状態で原木を回転させ、ケーシングに切れ目を入れながら剥がしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のピーラーマシンでは、ケーシングに螺旋状の切れ目を入れて食品原木から剥がすようにしており、ケーシングの除去作業を自動的にかつ効率よく行なうことができる。
【0007】
その反面、引張手段によって食品原木から引き剥がされたケーシングは、引張手段の下方に設置された容器に収納しているため、ピーラーマシンの下にケーシング収納容器を設置するスペースを確保する必要があり、ピーラーマシンのレイアウトが制約される要因となっていた。更にその制約から、大容量のケーシングを収納できる容器を設置することが難しかった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、マシン本体のレイアウトを制約することなく、しかも大容量のケーシングを回収容器に収納できる原木ピーラーマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明に係る原木ピーラーマシンは、柔軟シートからなる筒状のケーシング内に食品本体を収容すると共に、ケーシングの開口を封止部で封止した食品原木のケーシングを除去する原木ピーラーマシンであって、
切込みが入れられ、一部が食品本体から剥がされたケーシングを掴み、前記食品原木に対して引っ張ることで、当該ケーシングを食品本体から除去する引張手段と、
前記引張手段によって前記食品原木から除去されたケーシングを、負圧によって発生する風を利用してダクト内を搬送して、回収ボックスに収納するケーシング回収手段と、を備え、
前記引張手段は、
ケーシングを挟んで前記食品原木から剥す一対の引張ローラと、
当該一対の引張ローラで剥されたケーシングを収容する収容ボックスと、で構成され、
更に、前記引張手段の一対の引張ローラのうち一方の変位を検出するセンサを備え、前記一対の引張ローラの間を前記ケーシングの封止部が通過することによって前記センサが前記一方の引張ローラの変位を検出したとき、前記ケーシングの食品原木からの除去が完了したと判定することを特徴とする。
もしくは、本発明に係る原木ピーラーマシンは、柔軟シートからなる筒状のケーシング内に食品本体を収容すると共に、ケーシングの開口を封止部で封止した食品原木のケーシングを除去する原木ピーラーマシンであって、
切込みが入れられ、一部が食品本体から剥がされたケーシングを掴み、前記食品原木に対して引っ張ることで、当該ケーシングを食品本体から除去する引張手段と、
前記引張手段によって前記食品原木から除去されたケーシングを、負圧によって発生する風を利用してダクト内を搬送して、回収ボックスに収納するケーシング回収手段と、を備え、
前記引張手段は、
ケーシングを挟んで前記食品原木から剥す一対の引張ローラと、
当該一対の引張ローラで剥されたケーシングを収容する収容ボックスと、で構成され、
更に、前記収容ボックスの開口部近傍に金属センサが設置され、当該金属センサによって、前記ケーシングの封止部の通過を検出したとき、前記ケーシングの食品原木からの除去が完了したと判定することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る原木ピーラーマシンは、前記ケーシングの封止部を把持し、切込みが入れられた箇所から前記ケーシングを剥す把持手段を更に備え、当該把持手段は、剥されたケーシングを前記引張手段に引き渡すことが好ましい。
【0011】
また前記食品原木を載置した状態で、軸を中心に回転させることが可能な原木回転手段を更に備え、当該原木回転手段で食品原木を回転させると共に、前記ケーシングを前記引張手段で引張り、ケーシングに螺旋状の切れ目を入れながら食品本体から剥すことが好ましい。
【0014】
ここで、前記引張手段は、前記原木回転手段に載置された食品原木に沿って移動可能であり、前記ケーシングを食品原木から剥ぎ取る際には、食品原木に沿って後方に移動することが好ましい。
【0017】
また前記ケーシング回収手段は、ケーシングを収納する回収ボックスと、前記引張手段の収容ボックスと前記回収ボックスとをつなぎ、風によって前記ケーシングを搬送するダクトと、で構成されることが好ましい。
【0018】
前記原木回転手段は、回転の方向を変えることおよび回転を停止させることが可能であり、前記引張手段によってケーシングを引っ張っている途中で回転を停止し、または逆転させることにより、ケーシングに対する切れ目の位置を変更できることが好ましい。
【0019】
本発明に係る原木ピーラーマシンは、一方の端部にスペーサが付着した食品原木から当該スペーサを除去するスペーサ除去手段を更に備え、当該スペーサ除去手段は、ケーシングが除去された前記食品原木を搬送するコンベアと、垂直面内で旋回可能なアームの先端に取り付けられたローラと、で構成され、
前記食品原木の搬送に伴って前記ローラが押し当てられた食品原木が変形し、当該変形によって前記スペーサが食品原木から引き剥がされることが好ましい。
【0020】
ここで、前記コンベアは、前記食品原木の搬送方向に沿って設置された2台の小コンベアで構成され、かつ当該2台の小コンベア間には隙間が設けられており、
前記ローラによって前記食品原木から引き剥がされたスペーサは、当該隙間を通って落下した後、トレイに収容されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る原木ピーラーマシンによれば、ケーシングの収納ボックスを、マシン本体から離れた位置に設置することができることから、ピーラーマシンのレイアウトを制約することがない。しかも回収ボックスの容量を自由に設定できることから、複数本の食品原木からのケーシング除去を連続して行うことによって、ピーラーマシンの稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る原木ピーラーマシンの構成を示す平面図である。
【
図2】
図1(b)のA-A線で切断した断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る引張手段の構成を示す正面図である。
【
図5】実施の形態1に係るケーシング回収手段の構成を示す正面図である。
【
図6】実施の形態1に係る原木ピーラーマシンの制御系の構成を示すブロック図である。
【
図7】ピーラーマシンによるケーシング除去のステップを説明する図(その1)である。
【
図8】同ケーシング除去のステップを説明する図(その2)である。
【
図9】同ケーシング除去のステップを説明する図(その3)である。
【
図10】同ケーシング除去のステップを説明する図(その4)である。
【
図11】同ケーシング除去のステップを説明する図(その5)である。
【
図12】同ケーシング除去のステップを説明する図(その6)である。
【
図13】食品原木の回転と除去されたケーシングの形状との関係を示す図である。
【
図14】実施の形態2に係る原木ピーラーマシンのスペーサ除去手段の動作を説明する図である。
【
図15】食品原木のケーシングを除去する作業の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る原木ピーラーマシンについて、図面を参照して説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る原木ピーラーマシン1の平面図であり、
図1(a)は、食品原木(以降、「原木」と略す)Wが置かれていない状態を示し、
図1(b)は、原木Wが各処理手段に置かれた状態を示している。
【0025】
<原木ピーラーマシンの構成と各部の機能の説明>
図1に示すように、原木ピーラーマシン1は、把持手段2、原木供給手段3、原木回転手段4、押出手段5、引張手段6、ケーシング回収手段7(
図5参照)、移送手段8、検査手段9およびコントローラ10で構成されている。大半の構成手段は、格子状のフレーム101上に分散して配置され、把持手段2およびコントローラ10は、フレーム101に隣接して配置された基台102上に設置されている。ただし、ケーシング回収手段7は、ケーシングの収納スペースを確保するため、フレーム101から離れた位置に設置されている。
【0026】
原木ピーラーマシン1の理解を助けるため、マシンの構成手段について説明する前に、
図15を参照して、原木Wのケーシングを除去する作業の概要を説明する。
【0027】
前述したように、原木Wは、筒状のケーシングCa内にハム等の食品本体を収容すると共に、ケーシングCa両端の開口を紐やクリップ等の封止具(図ではクリップClを使用)で封止したものである。以降、クリップ近傍の原木の径が小さい部分を「小径部」、それ以外の円柱状の部分を「大径部」という。後述するように、最近では一方の端にスペーサを挿入して、端部近傍まで径が変わらないようにした原木もある。
【0028】
原木WからケーシングCaを除去する際には、
図1(b)に示すように、原木Wを、原木回転手段4の一対のローラ41a、41b上に載置した後、原木Wの一方のクリップCl近傍の小径部に、切込み手段(図示せず)を用いて切込みSlを入れる。
【0029】
次に、切込みSlが入った側のクリップClを把持手段2の先端に取り付けられた第1のチャック23で把持し、原木Wを静止させたままケーシングCaを引っ張り、ケーシングCaに破線に沿って切れ目を入れ、食品本体から引き剥がす。
【0030】
更に、第1のチャック23で剥されたケーシングCaの上部を把持手段2の第2のチャック24で把持し、原木Wを回転させながら小径部から大径部にかけてケーシングCaを剥がす。
【0031】
続いて、剥されたケーシングCaを把持手段2のチャックから引張手段6に引き渡すと共に、ケーシングCaを引張手段6の一対のローラ62a、62b(
図3参照)で挟んで引っ張る。そして、原木Wを回転させながら、引張手段6を原木Wに沿って後方(
図1(b)の紙面に向かって左側)に移動させることにより、
図15に破線で示すように、ケーシングCaに螺旋状の切れ目を入れながら食品本体から剥す。
【0032】
最後に、原木Wの他方の封止部(紙面に向かって左側)のクリップClを原木本体から剥してケーシングCaの除去を終了する。
【0033】
次に、原木ピーラーマシン1の構成と各部の機能について説明する。最初に、把持手段2について説明する。
【0034】
図1(a)に示すように、把持手段2は、多関節ロボット21のアーム先端に一対のチャック23および24を取り付けたものである。多関節ロボット21は、互いに関節接合された複数のアームで構成され、それぞれの関節内に収容されたサーボモータを回転することによって、チャック23、24を、三次元空間において任意の軌跡に沿って移動、回転および旋回させることができる。
【0035】
切込みSlを入れたケーシングCaを、2つのチャック23、24を用いて食品本体から引き剥がす。多関節ロボット21によって、チャックの動きを、原木の径や小径部の外曲面に合わせて変えることにより、原木Wの径が変わっても、ケーシングCaが途中でちぎれることなく円滑に除去できる。チャックによるケーシングの剥ぎ取りについては、後に、図面を用いて詳述する。
【0036】
次に、
図2を参照して、原木Wの流れに沿って、関連する各部材の構成と機能を説明する。
図2は、
図1(b)のA-A線で切断した断面のうち、原木供給手段3、原木回転手段4、移送手段8および検査手段9に関連する部材を示したものである。図では、見易さを考慮し、断面に施す斜線は省略している。
【0037】
原木供給手段3は、ケーシングCaが除去される前の複数本の原木Wを保管すると共に、原木回転手段4においてケーシングCaの除去作業が終了する毎に、新たな原木Wを原木回転手段4に供給するものである。図では、3本の原木Wが原木供給手段3に保管されている。
【0038】
原木回転手段4は、把持手段2、押出手段5および引張手段6と連携して、原木WからケーシングCaを除去するものである。把持手段2を用いて原木小径部のケーシングCaを剥いだ後、原木回転手段4によって原木Wを回転させながらケーシングCaの除去を進め、その後、剥いだケーシングCaが引き渡された引張手段6の動きに合わせて原木Wを回転させ、ケーシングCaの除去を完了する。
【0039】
移送手段8は、ケーシングCaの除去が完了した原木Wを原木回転手段4から取出し、検査手段9まで移送するものである。
【0040】
検査手段9は、ケーシングCaが除去された原木Wの表面に傷等がないかどうかを、作業者が目視によって確認するための手段であり、原木Wは一対のローラ91a、91b上に載置され、作業者が手によって原木Wを回転させ、ケーシングCaが除去された食品本体の表面に傷等がないか確認する。
【0041】
次に、原木Wの移送について説明する。原木供給手段3、原木回転手段4および検査手段9は、それぞれ高低差をもって配置されており、これらの手段間の移送は、原木の自重を利用して行われる。
【0042】
原木回転手段4におけるケーシングCaの除去が終了して、原木回転手段4から原木Wが排出された後、原木供給手段3に保管された3本の原木Wのうち、原木回転手段4に近い箇所にある原木Wが原木回転手段4に移送される。
【0043】
原木供給手段3のステージ31には、複数のストッパ32が設置されており、ストッパ32は、ステージ31内に収納されたエアーシリンダ(図示せず)により開閉できるように構成されている。通常の状態では、ストッパ32は、
図2に示すように立った状態に保持されている。
【0044】
ステージ31は、原木回転手段4に向けて若干傾いているため、作業者がコントローラ10に指示して原木回転手段4に近いストッパ32を倒すと、原木Wが自重により回転して原木回転手段4の一対のローラ41a、41b上に移送される。
【0045】
その後、ストッパ32を起立状態に戻し、上流側のストッパ32を倒せば、次の原木Wが下流側に移送され、ストッパ32によって保持される。このような動作を繰り返すことにより、原木回転手段4に原木Wが供給される。
【0046】
図1(a)に示すように、原木回転手段4は、長尺の回転軸42の外周に一定の間隔を隔てて巻き付けられた一対のローラ41a、41b(以降、総称して「ローラ41」ともいう)で構成され、ローラ41a、41bを同方向に回転させることにより、ローラ上に載置された原木Wを回転させることができる。図示しないが、ローラ41の軸42を回転するモータは、後述する押出手段5の筐体51内に収容されている。
【0047】
ケーシングCaの除去が終了した原木Wは、移送手段8により原木回転手段4から排出され、その後、検査手段9まで移送される。原木回転手段4の下方には、一対のローラ41a、41bに載置された原木Wを取り出してスロープ82まで移送するトラフ81が設置されている。
【0048】
トラフ81は金属板をプレス加工したもので、断面がV字状をしており、ローラ41に対向する箇所には切り欠きが設けられている。
図2に示すように、トラフ81の一方の端には旋回用の柄が取り付けられており、柄の先端は回転アーム83に固定されている。フレーム101に固定されたエアーシリンダ84のピストンロッド841を伸長・短縮してアーム83を回転させると、アーム83に取り付けられたトラフ81はアーム83の軸回りに旋回する。
【0049】
トラフ81は、原木回転手段4のローラ41に原木Wが載置されているときは、
図2に実線で示すように、原木Wの回転に支障がないよう、V字状に折り曲げられた箇所がローラ41a、41bの隙間に挿入された状態で保持される。上述したように、トラフ81のうちローラ41a、41bに対向する箇所には切欠きが形成されているため、この状態では、ローラ41a、41bの回転に影響を及ぼすことはない。
【0050】
一方、ケーシングCaの除去が終了し、原木Wを原木回転手段4から排出する際には、作業者がコントローラ10に指示してエアーシリンダ84を駆動し、トラフ81を実線で示す位置から二点鎖線で示す位置まで旋回させると、原木Wがトラフ81によって持ち上げられ、スロープ82上に落下する。
【0051】
スロープ82は検査手段9に向かって傾斜しているため、スロープ82上に落下した原木Wは、自重によって回転して検査手段9の一対のローラ91a、91b上まで移送される。
【0052】
その後、ローラ91a、91b上で作業者の目視による検査が行われる。ローラ91aは、矢印で示すように前方に移動できるため、検査終了後、作業者がローラ91aを押して前方に移動させると、原木Wはコンベア92上に落下し、その後コンベア92で搬送される。
【0053】
次に、押出手段5および切込み手段(図示せず)について、ケーシング除去の手順に沿って説明する。最初に、押出手段5について説明する。
図1(b)に示したように、原木回転手段4の一対のローラ41a、41bの上に載置された原木Wは、ケーシングCaを除去するため、押出手段5により、紙面に向かって右方向に押し出される。
【0054】
原木WのケーシングCaを除去する際には、多関節ロボット21のアーム先端に取り付けられた2つのチャック23、24で原木WのクリップClおよびケーシングCaを把持すると共に、チャック23、24を三次元空間において任意の軌跡に沿って移動、回転および旋回する。その際、原木Wがローラ41の上に乗っていると、チャック23、24を任意の軌跡に沿って移動・回転・旋回させることができない。このため、原木Wの先端とその近傍を、V字状の溝を有する支持プレート(図示せず)から前方に押し出して空中に浮かせ、チャック23、24が作業できる空間を確保している。
【0055】
次に、切込み手段(図示せず)について説明する。前述したように、チャック23、24による原木Wのケーシング除去作業を開始する前に、原木Wの小径部に切込みSlを入れる必要がある。切込み手段は、原木WのケーシングCaに切込みを入れるカッターを備えている。
【0056】
カッターは、ケーシング除去作業の開始前は、原木Wから離れた位置に保持されており、ケーシング除去の準備が完了した時点でカッターが移動し、原木Wの小径部に切込みSl(
図15参照)を入れる。
【0057】
次に、
図3および
図4を参照して、引張手段6の構成と機能について説明する。
図3は引張手段6を正面から見た図、
図4は同手段6を斜め上方から見た図である。
【0058】
引張手段6は、原木Wの大径部以降のケーシングCaを除去する際に用いられ、後述するように、チャック23および24によって剥された小径部のケーシングCaを受け取り、一対のローラ62aおよび62bで挟んで引っ張って原木WからケーシングCaを除去する。その後、収容ボックス65およびダクト74を通してケーング回収手段7(
図5参照)まで搬送する。
【0059】
引張手段6は、
図15に破線で示したように、原木回転手段2と連携して、ケーシングCaを螺旋状の線に沿って剥し、最後に、原木Wの他方の端部のクリップClを原木本体から剥してケーシングCaの除去を完了する。
【0060】
前述した特許文献1に記載のピーラーマシンでは、引張手段を固定し、原木Wの大径部のケーシングを除去する際には、原木を前進させていたが、このような構成を採用した場合、ピーラーマシンの全長が長くなるため、設置場所に広い面積が必要になる。
【0061】
これに対し、本実施の形態では、基本的に、原木Wを同じ位置で回転させ、引張手段6を原木Wに沿って移動させる形態を採用しているため、特許文献1記載のマシンと比較し、ピーラーマシンの全長を大幅に短くすることができる。
【0062】
引張手段6は、ピーラーマシン1のフレーム101に取り付けられ移送部材61(
図1(a)参照)、一対のローラ62aおよび62b、アーム63、エアーシリンダ64、ケーシング収容ボックス65、筐体66、回転伝達軸67、ギアボックス68、ならびにこれらの部材を支持するフレームで構成されている。引張手段6のフレームは、上下のプレート691、692を支柱693、694で接続した構造を採用している。
【0063】
図1(a)に示すように、引張手段6は、原木回転手段4のローラ41bと移送手段8のスロープ82との間の隙間を通って左右に移動できるように構成されている。そのための部材として、マシンのフレーム101上に、一対の長尺のシャフト611、612が平行に配置されている。
【0064】
図3に示すように、引張手段6のプレート692の下部には、一対のリニアーブッシュ613、614が取り付けられており、それぞれの中空部に上述したシャフト611、612が挿入される。図示しないが、プレート692の上面にはエンドレスベルトの一部が取り付けられ、エンドレスベルトの両端はプーリによって支持されている。移送部材61の筐体内に収容されたモータを駆動して一方のプーリを回転させると、引張手段6は原木回転手段4に沿って左右に移動する。
【0065】
引張手段6の一方の支柱694に取り付けられた筐体66には、ローラ62bを回転させるモータ(図示せず)が収容されており、モータの回転は、回転伝達軸67およびギアボックス68を介してローラ62bに伝達される。一方、上側のプレート691には、エアーシリンダ64とケーシング収容ボックス65が取り付けられている。
【0066】
引張手段6の上部には、原木Wから剥されたケーシングCaの先端を挟むと共に、ケーシング収容ボックス65内に引き込む一対のローラ62a、62bが配置されている。下方のローラ62bは、筐体66内に収容されたモータ(図示せず)によって回転する。上方のローラ62aは、アーム63によって旋回可能であり、動作時にはアーム63が下方に旋回してローラ62bと共にケーシングCaを挟み、非動作時には、アーム63が上方に旋回してケーシング収容ボックス65の開口の上部に位置する。
【0067】
一対のローラ62aおよび62bの外周面には、ケーシングCaを挟んで巻き取った時に滑らないように、等間隔に溝が形成されている。ケーシング収容ボックス65の前面および背面には開口が形成され、背面側の開口には、負圧により発生した風によってケーシングCaを搬送するケーシング回収手段7(
図5参照)のダクト74が取り付けられている。一対のローラ62a、62bによって原木Wから剥され、ケーシング収容ボックス65に収容されたケーシングCaは、ダクト74内を流れる風によってケーシング回収手段7まで搬送される。
【0068】
図4に示すように、引張手段6の上下方向の中央部には、支柱693、694および回転駆動軸67だけが配置されている。これは、原木回転手段4のローラ41bと移送手段8のスロープ82との間の狭いスペース(
図2参照)を利用して引張手段6を移動させるためである。引張手段6は、非動作時には、
図1(b)に実線で示す位置で待機し、動作開始時には、エンドレスベルト(図示せず)によって二点鎖線で示す位置まで移送される。
【0069】
次に、
図5を参照してケーシング回収手段7の構成と機能を説明する。ケーシング回収手段7は、回収ボックス71、ブロワ72、回収ボックス71とブロワ72を結ぶダクト73、および引張手段6のケーシング収納ボックス65と回収ボックス71との間を結ぶダクト74で構成されている。
【0070】
ブロワ72のファンを回転させることにより生じる負圧によって、ダクト74からダクト73に向かう風が生じ、この風によって引張手段6によって食品原木Wから剥されたケーシングCaが、ケーシング収容ボックス65から回収ボックス71まで搬送され、回収ボックス71内の容器710に収納される。容器710は側面がメッシュで形成されているため、ダクト73に向かって流れる風の動きを妨げることはない。
【0071】
図5に示す構成のケーシング回収手段7を用いれば、回収ボックス71およびブロワ72を、ピーラーマシン1の本体から離れた位置に設置できるため、マシンを構成する部材のレイアウトに影響を及ぼすことはない。また、多数の食品原木Wから剥されたケーシングCaを、回収ボックス71に連続して回収したい場合には、回収ボックス71の容量を大きくすることで対応できる。
【0072】
更に、引張手段6とケーシング回収手段7との間は、長尺の柔軟なダクト74で結ばれ、ダクト74は、ピーラーマシン1が設置された建物の天井と床の間の空間を利用して立体的に配置できるため、空いた空間を有効に活用できる。
【0073】
なお、ダクト74の配置については、引張手段6の移動に伴ってダクト74も移動するため、それを考慮する必要がある。具体的には、複数本の棒を水平方向に移動可能に設置し、物干し竿のように、それらにダクトを掛ける方法や、ジャバラのように伸縮自在なダクトを用いる方法が考えられる。いずれの方法を採用するかは、ダクトが設置される空間の広さや、設置にかかる費用等を考慮して決定すればよい。
【0074】
<原木ピーラーマシンの制御系の構成>
次に、
図6を参照して、本実施の形態に係る原木ピーラーマシン1の制御系の構成について説明する。
【0075】
原木ピーラーマシン1の制御系は、基本的に多関節ロボット21の動作を制御するロボットコントローラ11と、それ以外の構成手段の動作を制御するマシンコントローラ15とで構成されており、ロボットコントローラ11とマシンコントローラ15はI/Oケーブルで接続されている。
【0076】
ロボットコントローラ11は、制御部12、入力表示部13および記憶部14で構成されている。制御部12は、CPU、ROM、RAM等で構成され、ROMに多関節ロボット21の動作を制御するプログラムが格納されており、入力表示部13に入力されたデータに基づいて関節部に内蔵された複数のサーボモータを駆動し、アーム22の先端に取り付けられた2つのチャック23、24が所定の軌跡を辿るように制御する。
【0077】
入力表示部13はタッチパネル式の液晶ディスプレイで構成され、多関節ロボット21の制御に必要なデータの入力と表示に用いられる。記憶部14は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成され、学習により取得したアームの軌跡に関するデータを記憶する。
【0078】
一方、マシンコントローラ15は、多関節ロボット21以外のマシン構成手段の動作を制御するものであり、制御部16、入力表示部17および記憶部18で構成されている。
【0079】
制御部16に接続された第1チャック23、第2チャック24等の各手段には、モータやエアーシリンダ等のアクチュエータや、これらアクチュエータの位置や状態を検知するセンサが内蔵されている。
【0080】
制御部16は、CPU、ROM、RAM等で構成され、ROMに格納されたプログラムに基づいて、各手段に設けられたセンサから、アクチュエータの現在の位置・状態を検出すると共に、アクチュエータを駆動して所定の動作を実現する。
【0081】
入力表示部17は、ロボットコントローラ11と同様にタッチパネル式の液晶ディスプレイで構成され、各手段の制御に必要なデータの入力と表示に用いられる。記憶部18も、ロボットコントローラ11と同様にフラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成され、マシンの各手段を動作させるのに必要なデータを記憶する。
【0082】
ロボットコントローラ11の制御部12とマシンコントローラ15の制御部16は、相互にタイミング信号を送受し、予め定められたタイミングで多関節ロボット21や他の構成手段を動作させ、予定された機能や動作を実現する。
【0083】
<ケーシング除去のステップ>
次に、前述の図面および新たな
図7~
図12を参照して、本実施の形態に係る原木ピーラーマシン1によるケーシング除去方法について説明する。
図7~
図12は、ケーシング除去の各ステップを説明する図である。
【0084】
図7(a)、
図9(a)、
図10および
図11は、原木Wの軸と直交する方向から見た図、
図7(b)、
図8(a)(b)および
図9(b)は、原木Wを軸方向から見た図、
図12(a)(b)は、引張ローラ62a、62bを横から見た図である。これらの図では、見易さを考慮し、チャック23、24の先端部またはチャック片231、241だけを表示している。
【0085】
ケーシング除去の各ステップは、作業者がコントローラ10に指示して各手段を駆動することによって行われるが、以後の説明では、煩雑さを避けるため、コントローラ10への指示については逐一説明しない。
【0086】
ケーシング除去の準備作業として、一対のローラ41a、41b上に載置された原木Wのケーシング除去が終了し、移送手段8によって検査手段9に移送された後、ケーシング除去をセンサ(図示せず)が検知して原木供給手段3の下流側のストッパ32が倒れ、原木Wは自重により移動し、一対のローラ41上に載置される(
図1(b)参照)。
【0087】
具体的には、作業者は、原木供給手段3のステージ31に保管された原木Wのうち最も下流にある原木Wのストッパ32を倒して、原木Wを原木回転手段4まで移送し、ローラ41上に載置する(
図2参照)。
【0088】
次に、押出手段5のプッシュロッド52を前進させて、原木Wの前端部を
図1(b)に示す位置まで押し出す。引き続いて、切込み手段のカッター(図示せず)を前進させて、原木Wの小径部に切込みSlを入れる。
【0089】
準備作業が終了した後、ケーシング除去の本作業を開始する。最初に、把持手段2の多関節ロボット21を操作して、第1チャック23を原木Wの前方に移動させ、原木のクリップClを第1チャック23のチャック片231で水平方向から把持する。この段階では、原木回転手段4の一対のローラ41は回転せず、原木Wはローラ上に載置されているだけである。
【0090】
次に、
図7に示すように、第1チャック23を原木Wの小径部の外曲面に沿って、略水平面内で、かつ切込みSlを設けた側とは反対方向に移動させ、クリップClおよびその周辺のケーシングCaを原木Wから剥す。
【0091】
次に、
図8に示すように、第1チャック23を回転させながら(細線の矢印で示す)、原木Wの軸に対してスパイラル状に移動させ(白抜きの矢印で示す)、小径部から大径部にかけてケーシングCaに切れ目を入れながら原木Wから剥していく。
【0092】
次に、
図9に示すように、第1チャック23が原木Wの上方に移動し、かつ略水平方向を向いた時点でチャックの動作を止める。その後、ケーシングCaの切れ目の先端と第1チャック23で把持されたケーシングCaとの間を第2チャック24のチャック片241で把持する。
【0093】
その後、原木回転手段4の一対のローラ41a、41bを同一方向に回転させることによって、ローラに載置された原木を回転させ、原木本体からケーシングCaを剥ぎ取る作業を引き続き行う。
【0094】
剥れたケーシングCaの先端を第2チャック24のチャック片241で把持した後、
図9に示すように、原木Wを回転させながら、多関節ロボット21によって第1、第2チャック23、24を原木Wの軸に対して斜め後方かつ斜め上方に移動させ、原木Wの小径部から大径部に掛けて、ケーシングCaに螺旋状の切れ目を入れながら原木本体から剥す。
【0095】
従って、引張手段6によるケーシング除去について説明する。
図1(b)に示したように、原木回転手段4の近傍には引張手段6が配置され、ローラ41bに沿って移動できるように構成されている。
【0096】
引張手段6は非動作時には、
図1(b)に実線で示す位置で待機し、ケーシング除去作業が開始される前に、2点鎖線で示す位置まで移動する。
図10に示すように、把持手段2によるケーシング除去が進み、第2チャック24によって原木Wの小径部から大径部にかけてケーシングCaが除去された状態において、ケーシングCaを把持した第1、第2チャック23、24は、引張手段6のローラ62bの上方に位置する。
【0097】
この状態では、ローラ62aはケーシング収容ボックス65の上方に位置し、開口が広く開いているため(
図2参照)、多関節ロボット21によって第1、第2チャック23、24を開口の奥まで挿入し、その位置でチャックを開いてケーシングCaの先端をローラ62bに載せる。その後、チャック23、24を待機位置まで後退させる。
【0098】
次に、
図11に示すように、アーム63を下方に旋回してケーシングCaを2つのローラ62a、62bで挟んだ後、ローラ62bを回転させてケーシングCaをケーシング収容ボックス65内に引き込む。
【0099】
図11に示すように、原木Wの後半(左側)のケーシングCaについては、原木回転手段4によって原木Wを回転させた状態において、引張手段6を後方(紙面に向かって左)に移動させ、ローラ62a、62bによってケーシングCaに螺旋状の切れ目を付けながら食品本体から剥がす。その動作を原木Wの左端のクリップClが剥されるまで続ける。
【0100】
図示しないが、引張ローラ62aを支持するアーム63の付け根には、角度の変化を検出する変位センサが取り付けられている。
図12(a)に示すようにケーシングCaを引張っている状態では、アーム62の角度に変化はないが、ケーシングの端部に取り付けられたクリップClがローラ62a、62b間を通過するとき、
図12(b)に示すようにアーム63が上方に変位し、角度の変化を検出する。
【0101】
コントローラ10は、変位センサからの変位の信号を受信したとき、ケーシングCaの除去が完了したと判断して、引張ローラ62bを駆動するモータの回転を停止する。
【0102】
なお、引張ローラ62aの変位検出には、角度の変化を検出するセンサ以外に、アーム62の位置ずれや先端の上下動を検出するセンサ、クリップClが通過した際のアームの衝撃を検出するセンサを用いてもよい。
【0103】
更に、クリップClが、アルミニウム合金等の金属で作製されていることから、ケーシング収容ボックス65の開口部近傍に金属センサを設置し、その金属センサでクリップClの通過を検出するようにしてもよい。
【0104】
引張手段6の2つのローラ62a、62bによって剥ぎ取られ、ケーシング収容ボックス65に収容されたケーシングCaは、ケーシング回収手段7のブロワ72を駆動してダクト74内を負圧にすることによって生じる風に乗って回収ボックス71まで搬送され、容器710に回収される。その後、回収ボックス71の扉を開いて容器710を取り出す。
【0105】
次に、
図13を参照して、原木Wの回転と除去されたケーシングCaの形状との関係について説明する。
図13に、原木Wから除去されたケーシングCaの後端部近傍を展開した状態を示す。
【0106】
図13(a)は、
図15に示した破線に従って原木から剥されたケーシングCaの状態を示し、クリップClの近傍では、ケーシングCaの幅が狭くなっている。そのため、場合によっては、2点鎖線Brで示すように、クリップClの手前で切断され、クリップ部分が原木Wに付着したままとなる場合がある。その場合、作業者が原木WからクリップClを取り外すことになり、ケーシング除去作業の効率が低下する。
【0107】
このような場合、ケーシング除去作業の後半において、原木回転手段4による原木Wの回転を停止させるか、逆転させると、ケーシングCaがクリップCl手前で切断されるのを防止できる。
【0108】
図13(b)に、一点鎖線で示す位置で原木Wの回転を停止させたときのケーシングCaの展開図、
図13(c)に、一点鎖線で示す位置で、原木Wの回転を逆転させたときのケーシングCaの展開図を示す。
図13(b)(c)に示すように、ケーシング除去の途中で原木Wの回転を停止させ、または逆転することにより、ケーシング除去作業の途中で、ケーシングCaが切断されるのを防止できる。
【0109】
上述した各ステップによってケーシングCaが除去された原木Wは、
図2に示すように、移送手段8のトラフ81を上方に旋回させることによってローラ41a、41bから押し出され、スロープ82上を移送された後、検査手段9の一対のローラ91a、91b上に載置される。
【0110】
作業者は、ローラ91a、91b上に載置された、ケーシング除去後の原木Wの食品本体表面を目視で検査し、傷等がないかどうか確認する。目視検査が終了した原木Wは、一方のローラ91aを軸と直交する方向に移動させ、ローラ間を拡げることによってコンベア92上に落下し、取出し位置まで搬送される。
【0111】
以上説明したように、本実施の形態に係るピーラーマシンを用いれば、ケーシングが途中でちぎれることなく、円滑なケーシングの除去を実現できる。更に、原木から除去されたケーシングを回収するボックスをケーシングマシン本体から離れた位置に設置できることから、ピーラーマシンのレイアウトを制約することもない。
【0112】
(実施の形態2)
実施の形態1では、
図15に記載された、左右両端部がクリップClで封止された食品原木Wを対象としてケーシングCaの除去を行った。これに対し、本実施の形態では、一方の端に円板状のスペーサが挿入され、端部近傍まで径が変わらない食品原木を対象としてケーシングCaの除去を行う場合について説明する。
【0113】
ケーシングCaを除去する工程は、基本的に実施の形態1で説明した内容と変わらないが、ケーシングCaが除去された後、後端部にスペーサが付着したままとなる。そのため従来は、検査手段9においてケーシングCaの検査が終了した原木から、作業者がスペーサを除去していた。
【0114】
これに対し、本実施の形態では、検査が終了した原木からスペーサを自動的に除去している。以下、
図14を参照して、原木からスペーサを除去する工程について説明する。
【0115】
図14(a)に、検査が終了した後、コンベア92に落下した原木Wを示す。原木Wの後端部にはスペーサSpが付着している。本実施の形態では、コンベア92は
図1(a)に示したものと異なり、2つの小コンベア92aと92bに分割され、その間に、スペーサSpが通過可能な隙間Gaが設けられている。小コンベア92aと92bは連動して動作することにより、原木Wを左右方向に搬送する。
【0116】
図14(a)に示すように、作業員による検査が終了した原木Wは、ローラ91a、91bの間を通って、コンベア92aと92bを跨ぐ位置に落下する。
【0117】
その後、
図14(b)に示すように、スペーサ除去手段110が原木Wの上方に設置される。スペーサ除去手段110は、軸112を中心に、原木Wの軸を含む鉛直面内で旋回可能なアーム111と、アーム111の先端に取り付けられたローラ113とで構成され、ローラ113は、自重によって原木Wの上部に接触している。
【0118】
図14(c)に示すように、この状態でコンベア92aおよび92bを駆動して原木Wを右方向に搬送すると、ローラ113が原木Wに押し当てられることによって原木Wが変形し、変形によってスペーサSpが原木Wから引き剥がされる。引き剥がされたスペーサSpはコンベア間の隙間Gaを通って落下し、トレイ114に収容される。
【0119】
図14(d)に示すように、スペーサSpが引き剥がされた原木Wは、コンベア92aおよび92bを逆転させることによって左方向に搬送され、ピーラーマシン1から搬出される。その際、スペーサ除去手段110は、次の原木Wがコンベア92aおよび92bに載置される際に邪魔にならないよう、水平方向に退避する。
【0120】
上述したように、コンベア92を分割してその間に隙間Gaを形成し、また旋回可能なローラ113を原木Wの上部に置くという、簡単な構成を付加するだけで、原木Wの端部に付着したスペーサSpを確実に除去することができる。
【0121】
なお、上述した各実施の形態では、ケーシングに螺旋状の切れ目を入れながら原木から剥す場合について説明したが、原木からのケーシングの剥し方は、これに限定されない。例えば、原木の軸に沿ってケーシングに切れ目を入れようにしてもよい。
【符号の説明】
【0122】
W 原木
Ca ケーシング
Cl クリップ
Ga 隙間
Sl スリット
Sp スペーサ
1 原木ピーラーマシン
2 把持手段
3 原木供給手段
4 原木回転手段
5 押出手段
6 引張手段
7 ケーシング回収手段
8 移送手段
9 検査手段
10 コントローラ
11 ロボットコントローラ
12、16 制御部
13、17 入力表示部
14、18 記憶部
15 マシンコントローラ
21 多関節ロボット
23、24 チャック
31 ステージ
32 ストッパ
41a、41b、62a、62b、91a、91b、113 ローラ
51、66 筐体
61 移送部材
63、111 アーム
64 エアーシリンダ
65 ケーシング収容ボックス
67 回転伝達軸
71 回収ボックス
72 ブロワ
73、74 ダクト
68 ギアボックス
81 トラフ
82 スロープ
92、92a、92b コンベア
110 スペーサ除去手段
114 トレイ