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特許7158075GD2に基づくキメラ抗原受容体及びその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】GD2に基づくキメラ抗原受容体及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221014BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221014BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221014BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20221014BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221014BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20221014BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221014BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20221014BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20221014BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K35/17 Z
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P37/04
C07K16/30
C07K19/00
C12N5/0783
C12N5/10
C12N7/01
C12N15/867 Z
C12N15/13
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021503089
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 CN2019097402
(87)【国際公開番号】W WO2020020194
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】201810821559.9
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520319705
【氏名又は名称】ベイジン・メイカン・ジーノ-イミューン・バイオテクノロジー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJING MEIKANG GENO-IMMUNE BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room B104, 1st Floor, No. 5,Kaituo Road, Haidian District, Beijing 100085, China
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ユ・チェン
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/027291(WO,A1)
【文献】特表2017-508466(JP,A)
【文献】特表2016-515519(JP,A)
【文献】特表2007-537719(JP,A)
【文献】特表2017-501212(JP,A)
【文献】特表2016-520569(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107245107(CN,A)
【文献】特表2018-517407(JP,A)
【文献】特表2017-518053(JP,A)
【文献】特表2015-521607(JP,A)
【文献】特表2006-521085(JP,A)
【文献】特開2014-062107(JP,A)
【文献】特開2017-019812(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0255363(US,A1)
【文献】JASON E. COLEMAN et al.,Efficient large-scale production and concentration of HIV-1-based lentiviral vectors for use in vivo,Physiol Genomics,2002年,Vol.12,pp.221-228
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体であって、前記キメラ抗原受容体は、タンデム配置での、分泌シグナルペプチド、GD2抗原結合ドメイン、CD8α及び/又はCD28膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、4-1BBシグナル伝達ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、2A配列、並びにカスパーゼ9ドメインであり、
記キメラ抗原受容体は、分泌-GD2-CD28-4-1BB-CD3ζ-2A-FBKP.Casp9であり、
泌-GD2-CD28-4-1BB-CD3ζ-2A-FBKP.Casp9の前記キメラ抗原受容体は、配列番号12~配列番号14に示されるアミノ酸配列を有する、キメラ抗原受容体。
【請求項2】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸を含むウイルスベクター。
【請求項3】
前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター及び/又はレトロウイルスベクターである、請求項に記載のウイルスベクター。
【請求項4】
前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである、請求項3に記載のウイルスベクター。
【請求項5】
発現のための請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸配列でトランスフェクションされているT細胞。
【請求項6】
前記T細胞は、ウイルスベクター及び/又は真核性発現プラスミドを介してトランスフェクションされている、請求項に記載のT細胞。
【請求項7】
前記T細胞は、ウイルスベクターを介してトランスフェクションされている、請求項6に記載のT細胞。
【請求項8】
求項2に記載のウイルスベクターを含む組換えレンチウイルス。
【請求項9】
93細胞、293T細胞及びTE671細胞からなる群から選択される哺乳動物細胞のうちのいずれか1つ、又はそれらの少なくとも2つの組み合わせを用いて、請求項8に記載の組換えレンチウイルスを得る方法。
【請求項10】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体及び/又は請求項8に記載の組換えレンチウイルスを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、腫瘍のための細胞性免疫療法の分野に関し、特に、GD2に基づくキメラ抗原受容体及びその利用、詳細には、腫瘍特異的標的GD2に基づくキメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞技術を構築する方法、及び抗腫瘍療法におけるその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍に関する免疫学理論及び臨床技術の発達により、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)免疫療法は、癌治療のための最も有望な免疫療法の1つとなった。キメラ抗原受容体(CAR)は、典型的には、腫瘍関連抗原結合領域と、細胞外ヒンジ領域と、膜貫通領域と、細胞内シグナル伝達領域とからなる。CARは一般に、ヒンジ領域及び膜貫通領域を介してT細胞シグナル伝達分子の細胞質ドメインに結合された、腫瘍関連抗原(TAA)に特異的な抗体の一本鎖フラグメント可変(scFv)領域又は結合ドメインを含む。最も一般的なリンパ球活性化部には、T細胞エフェクター機能誘発(例えばCD3ζ)部とタンデムにT細胞共刺激ドメインが含まれる。CARを媒介する養子免疫療法により、CAR移植T細胞は、HLAに制限されずに標的腫瘍細胞上のTAAを直接認識することが可能となる。
【0003】
神経芽細胞腫は、小児で最も一般的な頭蓋外固形悪性腫瘍である。その中の小児の50%は腫瘍の大規模な広がり及び転移を有することが判明している。従来の手術、化学療法、放射線療法、及び自家幹細胞移植は、この患者群に対しては限られた治療効果しか有しない。病状が緩和するように管理されている場合でも、患者の80%より多くが1年以内に再燃して死亡することとなる。これらの患者を治療するための1つのアプローチは、CARの発現によって腫瘍細胞上に発現される抗原を標的とするようにT細胞を遺伝子改変することである。CARは、ヒト白血球抗原(HLA)に依存しない様式で細胞表面抗原を認識するように設計された抗原受容体である。CARを発現する遺伝子改変細胞を使用してこれらの種類の患者を治療する試みは有望な成功を収めている。
【0004】
GD2は神経芽細胞腫及び黒色腫等の腫瘍で広く発現されているが、正常組織でのGD2の発現は少量であり制限されている。したがって、GD2は免疫療法にとって理想的な腫瘍抗原である。抗GD2抗体を使用する療法は、神経芽細胞腫のための現在の免疫療法で十分に発達した治療であり、初期の臨床的成果を収めている。しかしながら、抗体療法には以下の制限がある。投与された抗体は末梢血中に存在し、腫瘍組織又は微小残存腫瘍を伴う部位に浸透しにくい。さらに、投与された抗体は、体内に長期間存続することができない。さらに、抗GD2抗体はヒト-マウスキメラ抗体の構造を有するため、該抗体に対する抵抗性を誘導する可能性があり、それにより再治療の困難性が高まる。
【0005】
特許文献1では、ジシアロガングリオシド(GD2)結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、GD2結合ドメインは、a)相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH)と、b)CDRを有する軽鎖可変領域(VL)とを含む、キメラ抗原受容体、及び幾つかの癌の治療におけるそのようなCARを発現するT細胞の使用が開示された。この特許のキメラ抗原受容体とGD2との間の結合効果を改善する必要があり、免疫エフェクタードメインを更に改善することができる。
【0006】
抗体療法の利点に加えて、完全ヒト化キメラ抗原受容体GD2-CART細胞は、T細胞自体の特性により腫瘍組織に的確に浸透し、体内に長期間存続することができるため、再燃性及び難治性の神経芽細胞腫又は他のGD2陽性腫瘍に対してより有効な治療をもたらし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許出願公開第106536563号
【発明の概要】
【0008】
CAR-Tによる腫瘍の治療における不十分な標的化及びCAR-T技術の治療効果に対する腫瘍微小環境の影響を踏まえて、本出願は、GD2に基づくレンチウイルスキメラ抗原受容体及びその利用を提供する。本出願で作製されるキメラ抗原受容体は、CAR-T細胞の長期的な免疫及び安全性を高め、GD2-CARコンストラクトのシグナル伝達ドメインを遺伝子改変することによりCAR-T細胞の治療効果を増強する。
【0009】
この目的を達成するために、本出願は以下の技術的な解決手段を採用する。
【0010】
1つの態様において、本出願は、抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインと、自己破壊性ドメインとをタンデム配置で含むGD2に基づくキメラ抗原受容体であって、
抗原結合ドメインは、腫瘍表面抗原に結合し、腫瘍表面抗原は、GD2であり、かつ抗原結合ドメインは、腫瘍表面抗原GD2に対する一本鎖抗体であり、腫瘍表面抗原GD2に対する一本鎖抗体は、
(a)配列番号1~配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は、
(b)配列番号1~配列番号3に示されるアミノ酸配列から1つ以上のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失によって誘導される、キメラ抗原受容体に特異的に結合し、GD2に結合してT細胞シグナル伝達を誘導する機能を有するアミノ酸配列、
から選択されるアミノ酸配列を有する、キメラ抗原受容体を提供する。
【0011】
本出願では、抗原結合ドメインの一本鎖抗体及びCARの遺伝子構造は、遺伝子改変されたCAR-T細胞が腫瘍上のGD抗原に特異的に結合することができるように特異的に改変され、それにより比較的穏やかなシグナル刺激を得ることが可能であり、効果的な殺傷効果を発揮し得るが、一方で、免疫サイトカインはゆっくりと放出されるため、サイトカイン放出症候群の危険性は低減される。他のキメラ抗原受容体及び他の腫瘍抗原と比較して、本出願のCARは、より優れた効果を有し、より安全である。
【0012】
腫瘍表面抗原GD2に対する一本鎖抗体のアミノ酸配列(配列番号1~配列番号3)の一覧は以下の通りである。
【0013】
配列番号1に示されるアミノ酸配列:
HPAFLLIPQVQLVESGPGVVQPGRSLRISCAVSGFSVTNYGVHWVRQPPGKGLEWLGVIWAGGITNYNSAFMSRLTISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAMYYCASRGGHYGYALDYWGQGTLVTVSSGSTSGSGKPGSSEGSTKGEIVMTQTPATLSVSAGERVTITCKASQSVSNDVTWYQQKPGQAPRLLIYSASNRYSGVPARFSGSGYGTEFTFTISSVQSEDFAVYFCQQDYSSFGQGTKLEIK。
【0014】
配列番号2に示されるアミノ酸配列:
EVQLVQSGAEVEKPGASVKISCKASGSSFTGYNMNWVRQNIGKSLEWIGAIDPYYGGTSYNQKFKGRATLTVDKSTSTAYMHLKSLRSEDTAVYYCVSGMEYWGQGTSVTVSSGSTSGSGKPGSSEGSTKGDVVMTQTPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLVHRNGNTYLHWYLQKPGQSPKLLIHKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHVPPLTFGAGTKLELK。
【0015】
配列番号3に示されるアミノ酸配列:
AFLLIPEVKLVESGGGLVLPGDSLRLSCATSEFTFTDYYMTWVRQPPRKALEWLGFIRNRANGYTTEYNPSVKGRFTISRDNSQSILYLQMNTLRTEDSATYYCARVSNWAFDYWGQGTTLTVSSGSTSGSGKPGSSEGSTKGDVVMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSLLKNNGNTFLHWYLQKSGQSPKLLIYKVSNRLSGVPDRFSGSGSGTYFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHIPYTFGGGTKLEIK。
【0016】
本出願において、腫瘍表面抗原GD2に対するCARのシグナル構造は、種々の抗GD2一本鎖抗体の代替scFv遺伝子を使用することによって、改変されたCARがより強力な免疫刺激能力を示すように特異的に改変され、また迅速に改変され得る。
【0017】
本発明によれば、配列番号1~配列番号3に示されるアミノ酸配列から1つ以上のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失によって誘導されるアミノ酸配列は、配列番号1~配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性、好ましくは95%の同一性を有する。改変されたアミノ酸配列は、依然としてキメラ抗原受容体に特異的に結合することができ、GD2に結合してT細胞シグナル伝達を誘導する機能を有している。
【0018】
90%の同一性は、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性であり得る。
【0019】
本出願によれば、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメイン(CD28細胞外シグナル伝達ドメイン及びCD28細胞膜シグナル伝達ドメイン)及び/又はCD8α膜貫通ドメインである。幾つかの特定の実施の形態では、膜貫通ドメインは選択され得るか、又はアミノ酸置換によって改変され得る。
【0020】
本出願によれば、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28シグナル伝達ドメインと4-1BB細胞内シグナル伝達ドメインとの組み合わせである。CD28の細胞外シグナル伝達ドメイン、細胞膜シグナル伝達ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを組み合わせると、完全長のCD28シグナル伝達ドメインとなる。完全長のCD28シグナル伝達ドメイン及び4-1BBシグナル伝達ドメインの配置は、必要に応じて当業者によって調整され得る。完全長のCD28シグナル伝達ドメイン及び4-1BBシグナル伝達ドメインの種々の配置によっても、キメラ抗原受容体に影響は及ぼされない。本出願では、CD28-4-1BBの配置を使用する。共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有し、該配列は、具体的には以下の通りである:
IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSASGGGGSGGGGSVVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL。
【0021】
この中のリンカー配列は、複数のGGGGSの反復配列である。
【0022】
本出願によれば、完全長のCD28シグナル伝達ドメインは、CD28細胞外シグナル、CD28細胞膜シグナル、及びCD28細胞内シグナルを含む。CD28細胞外シグナルは、具体的には以下の通り:IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPである配列番号5に示される配列を有し、CD28細胞膜シグナルは、具体的には以下の通り:FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVである配列番号6に示される配列を有し、CD28細胞内シグナルは、具体的には以下の通り:RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSASである配列番号7に示される配列を有する。
【0023】
本出願によれば、4-1BB細胞内シグナルは、具体的には以下の通り:VVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELである配列番号8に示される配列を有する。
【0024】
本出願によれば、自己破壊性ドメインは、誘導性カスパーゼ9ドメインを含む。誘導性カスパーゼ9ドメインは、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有し、該配列は以下の通りである:
GSGATNFSLLKQAGDVEENPGPMGVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLEGGGGSGGGGSGAMVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELARQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLDAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEDLQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTSAS。
【0025】
本出願によれば、自己破壊性ドメインは、2A配列を介してCD3ζシグナル伝達ドメインとタンデムに連結されている。2A配列は、自己破壊性ドメインにより発現されたタンパク質をキメラ抗原受容体タンパク質から破断し、それによりキメラ抗原受容体はその機能を発揮することが可能となる。しかしながら、アクチベーターを注入することによって自己破壊性ドメインが活性化され得ると、細胞死が誘導され、それによりキメラ抗原受容体はその機能を失う。
【0026】
本出願によれば、キメラ抗原受容体は、キメラ抗原受容体の膜貫通輸送を指揮することができる任意のシグナルペプチドであり得るシグナルペプチドを更に含む。当該技術分野で慣用のシグナルペプチドは、必要に応じて当業者によって選択され得る。シグナルペプチドは、配列番号10又は配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する分泌シグナルペプチドである。分泌シグナルペプチドは、以下の通り:MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPのアミノ酸配列(配列番号10)を有する、又は分泌シグナルペプチドは、以下の通り:MALPVTALLLPLALLLHAARPのアミノ酸配列(配列番号11)を有する。
【0027】
本出願のキメラ抗原受容体は、ヒンジ領域を更に含み得る。ヒンジ領域は、実際の状況に応じて当業者により選択され得て、本明細書では特に限定されない。ヒンジ領域が存在することにより、本出願のキメラ抗原受容体の性能に影響は及ぼされない。
【0028】
本出願のキメラ抗原受容体は、EF1a又は高発現されるプロモーターのいずれか1つであり得るプロモーターを更に含み得る。プロモーターは、実際の状況に応じて当業者により選択され得て、本明細書では特に限定されない。プロモーターが存在することにより、本出願のキメラ抗原受容体の性能に影響は及ぼされない。
【0029】
本出願によれば、キメラ抗原受容体は、シグナルペプチドと、抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインと、2A配列と、自己破壊性ドメインとをタンデム配置で含む。
【0030】
好ましい技術的な解決手段としては、キメラ抗原受容体は、タンデム配置での、分泌シグナルペプチド、GD2抗原結合ドメイン、CD8α及び/又はCD28膜貫通ドメイン、完全長のCD28シグナル伝達ドメイン、4-1BB細胞内シグナル伝達ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、2A配列、並びにカスパーゼ9ドメインである。具体的には、その配置は以下の通りである:
分泌-GD2scFv-CD28-4-1BB-CD3ζ-2A-FBKP.Casp9。
【0031】
本出願によれば、分泌-GD2scFv-CD28-4-1BB-CD3ζ-2A-FBKP.Casp9のキメラ抗原受容体は、配列番号12~配列番号14に示されるアミノ酸配列を有し、該配列の一覧は、具体的には以下の通りである。
【0032】
配列番号12に示されるアミノ酸配列:
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPQVQLVESGPGVVQPGRSLRISCAVSGFSVTNYGVHWVRQPPGKGLEWLGVIWAGGITNYNSAFMSRLTISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAMYYCASRGGHYGYALDYWGQGTLVTVSSGSTSGSGKPGSSEGSTKGEIVMTQTPATLSVSAGERVTITCKASQSVSNDVTWYQQKPGQAPRLLIYSASNRYSGVPARFSGSGYGTEFTFTISSVQSEDFAVYFCQQDYSSFGQGTKLEIKAAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSASGGGGSGGGGSVVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELGGGGSGGGGSGGGGSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRTSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPMGVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLEGGGGSGGGGSGAMVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELARQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLDAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEDLQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTSAS。
【0033】
配列番号13に示されるアミノ酸配列:
MLLLVTSLLLCELPEVQLVQSGAEVEKPGASVKISCKASGSSFTGYNMNWVRQNIGKSLEWIGAIDPYYGGTSYNQKFKGRATLTVDKSTSTAYMHLKSLRSEDTAVYYCVSGMEYWGQGTSVTVSSGSTSGSGKPGSSEGSTKGDVVMTQTPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLVHRNGNTYLHWYLQKPGQSPKLLIHKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHVPPLTFGAGTKLELKAAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSASGGGGSGGGGSVVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELGGGGSGGGGSGGGGSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRTSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPMGVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLEGGGGSGGGGSGAMVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELARQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLDAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEDLQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTSAS。
【0034】
配列番号14に示されるアミノ酸配列:
MLLLVTSLLLCELPAFLLIPEVKLVESGGGLVLPGDSLRLSCATSEFTFTDYYMTWVRQPPRKALEWLGFIRNRANGYTTEYNPSVKGRFTISRDNSQSILYLQMNTLRTEDSATYYCARVSNWAFDYWGQGTTLTVSSGSTSGSGKPGSSEGSTKGDVVMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSLLKNNGNTFLHWYLQKSGQSPKLLIYKVSNRLSGVPDRFSGSGSGTYFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHIPYTFGGGTKLEIKAAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSASGGGGSGGGGSVVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELGGGGSGGGGSGGGGSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRTSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPMGVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLEGGGGSGGGGSGAMVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELARQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLDAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEDLQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTSAS。
【0035】
第2の態様において、本出願は、第1の態様に記載のキメラ抗原受容体を含むウイルスベクターを提供する。
【0036】
本出願によれば、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター及び/又はレトロウイルスベクター、好ましくはレンチウイルスベクターである。
【0037】
第3の態様において、本出願は、発現のための第1の態様に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸配列でウイルス形質導入されているT細胞を提供する。
【0038】
本出願によれば、T細胞は、ウイルスベクター及び/又は真核性発現プラスミド、好ましくはウイルスベクターを介して形質導入されている。
【0039】
本出願では、T細胞は優れた標的化された殺傷効果を有し、低用量の免疫因子を放出することができ、低毒性及び高免疫殺傷応答の特性を有する。
【0040】
第4の態様において、本出願は、哺乳動物細胞を、第1の態様に記載のウイルスベクターとパッケージングヘルパープラスミドpNHP及びpHEF-VSVGとで同時トランスフェクションすることによって得られる組換えレンチウイルスを提供する。
【0041】
本出願によれば、哺乳動物細胞は、293細胞、293T細胞及びTE671細胞からなる群のうちのいずれか1つ、又はそれらの少なくとも2つの組み合わせである。
【0042】
第5の態様において、本出願は、第1の態様に記載のキメラ抗原受容体及び/又は第4の態様に記載の組換えレンチウイルスを含む組成物を提供する。
【0043】
第6の態様において、本出願は、キメラ抗原受容体T細胞及び腫瘍治療薬の作製のための、第1の態様に記載のキメラ抗原受容体、第2の態様に記載のウイルスベクター、第3の態様に記載のT細胞、第4の態様に記載の組換えレンチウイルス、又は第5の態様に記載の組成物の使用を提供する。
【0044】
好ましくは、腫瘍は、GD2抗原が特異的に発現されている腫瘍疾患であり、GD2抗原が特異的に発現されている腫瘍疾患は、神経芽細胞腫である。
【0045】
従来技術と比較して、本出願は、以下の有益な効果を有する。
【0046】
(1)本出願では、腫瘍表面抗原GD2に対するキメラ抗原受容体のT細胞の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインが特異的に遺伝子改変されている。改変されたキメラ抗原受容体は、GD2に特異的に結合した後により良好な応答効果を引き起こし、CAR-T細胞は腫瘍に対してより強力な免疫応答を生ずる。
【0047】
(2)本出願を実際に人体に投与した場合に、本出願のCAR-T細胞は、他のGD2に基づくキメラ抗原受容体T細胞と比較してより高い安全性を示す。有害反応が起こっても、本出願のCAR-T細胞はアポトーシスを誘導するシグナルを含むため、アポトーシスを誘導する薬物によって本出願のCAR-T細胞を除去することもできる。
【0048】
(3)本出願のCAR-T細胞の再注入後に、in vivoでCAR-Tの存在を長期間検出することができ、これがその長期的な効果を証明し、患者に長期の寛解をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本出願のキメラ抗原受容体の合成遺伝子配列マップを示す図である。
図2】安全かつ有効なレンチウイルスCARベクターの適用を示す図であり、ここで、タイプ1は実施例1で作製されたキメラ抗原受容体であり、タイプ2は実施例2で作製されたキメラ抗原受容体であり、タイプ3は実施例3で作製されたキメラ抗原受容体である。
図3】3つのタイプのGD2ScFv CAR T細胞のin vitro殺傷結果を示す図であり、ここで、タイプ1は実施例1で作製されたキメラ抗原受容体であり、タイプ2は実施例2で作製されたキメラ抗原受容体であり、タイプ3は実施例3で作製されたキメラ抗原受容体である。
図4】神経芽細胞腫を伴う患者からの腫瘍切片の免疫組織化学的染色の結果を示す図であり、ここで、図4(a)は腫瘍切片のネガティブコントロールであり、図4(b)は陽性のGD2発現を示す。
図5】GD2-CART再注入後の神経芽細胞腫を伴う患者における毒性を示すグラフである。
図6】GD2-CART再注入後のin vivoでのCARのコピー数の曲線を示すグラフである。
図7】GD2-CART再注入後に神経芽細胞腫を伴う患者においてB-スキャン超音波検査法によって検出された腫瘍体積の変化の曲線を示すグラフである。
図8】GD2-CART再注入の前(図8(a))及び後(図8(b))に神経芽細胞腫を伴う患者において増強CTによって検出された腹部腫瘤を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本出願により採用された技術的手段及びその効果を更に説明するために、本出願の技術的な解決手段を、添付の図面及び具体的な実施形態を参照して以下で更に説明するが、本出願はそれらの実施形態の範囲に限定されない。
【0051】
実施例において、具体的に示されていない技術又は条件は、当該技術分野の文献に記載される技術若しくは条件に従って又は製品の使用説明書に従って行われる。製造業者により示されていない使用される試薬又は機器は、多くの供給元から市販されている慣例的な製品である。
【実施例
【0052】
実施例1:キメラ抗原受容体の構築(I)
(1)図1に示される、分泌シグナルペプチド、GD2抗原結合ドメイン、CD28細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、CD28細胞内シグナル伝達ドメイン及び4-1BBシグナル伝達ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、2A配列、並びにカスパーゼ9ドメイン、すなわち、分泌-GD2scFv-CD28-4-1BB-CD3ζ-2A-FBKP.Casp9を、全遺伝子合成によって合成した。
【0053】
キメラ抗原受容体のアミノ酸配列(配列番号12)は、以下の通りである:
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPQVQLVESGPGVVQPGRSLRISCAVSGFSVTNYGVHWVRQPPGKGLEWLGVIWAGGITNYNSAFMSRLTISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAMYYCASRGGHYGYALDYWGQGTLVTVSSGSTSGSGKPGSSEGSTKGEIVMTQTPATLSVSAGERVTITCKASQSVSNDVTWYQQKPGQAPRLLIYSASNRYSGVPARFSGSGYGTEFTFTISSVQSEDFAVYFCQQDYSSFGQGTKLEIKAAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSASGGGGSGGGGSVVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELGGGGSGGGGSGGGGSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRTSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPMGVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLEGGGGSGGGGSGAMVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELARQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLDAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEDLQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTSAS。
【0054】
実施例2:キメラ抗原受容体の構築(II)
(1)分泌シグナルペプチド、GD2抗原結合ドメイン、CD28細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン及び4-1BBシグナル伝達ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、2A配列、並びにカスパーゼ9ドメイン、すなわち、分泌-GD2scFv-CD28-4-1BB-CD3ζ-2A-FBKP.Casp9を、全遺伝子合成によって合成した。
【0055】
キメラ抗原受容体のアミノ酸配列(配列番号13)は、以下の通りである:
MLLLVTSLLLCELPEVQLVQSGAEVEKPGASVKISCKASGSSFTGYNMNWVRQNIGKSLEWIGAIDPYYGGTSYNQKFKGRATLTVDKSTSTAYMHLKSLRSEDTAVYYCVSGMEYWGQGTSVTVSSGSTSGSGKPGSSEGSTKGDVVMTQTPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLVHRNGNTYLHWYLQKPGQSPKLLIHKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHVPPLTFGAGTKLELKAAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSASGGGGSGGGGSVVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELGGGGSGGGGSGGGGSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRTSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPMGVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLEGGGGSGGGGSGAMVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELARQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLDAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEDLQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTSAS。
【0056】
実施例3:キメラ抗原受容体の構築(III)
(1)分泌シグナルペプチド、GD2抗原結合ドメイン、CD28細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン及び4-1BBシグナル伝達ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、2A配列、並びにカスパーゼ9ドメイン、すなわち、分泌-GD2scFv-CD28-4-1BB-CD3ζ-2A-FBKP.Casp9を、全遺伝子合成によって合成した。
【0057】
キメラ抗原受容体のアミノ酸配列(配列番号14)は、以下の通りである:
MLLLVTSLLLCELPAFLLIPEVKLVESGGGLVLPGDSLRLSCATSEFTFTDYYMTWVRQPPRKALEWLGFIRNRANGYTTEYNPSVKGRFTISRDNSQSILYLQMNTLRTEDSATYYCARVSNWAFDYWGQGTTLTVSSGSTSGSGKPGSSEGSTKGDVVMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSLLKNNGNTFLHWYLQKSGQSPKLLIYKVSNRLSGVPDRFSGSGSGTYFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHIPYTFGGGTKLEIKAAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSASGGGGSGGGGSVVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELGGGGSGGGGSGGGGSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRTSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPMGVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLEGGGGSGGGGSGAMVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELARQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLDAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEDLQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTSAS。
【0058】
実施例4:レンチウイルスのパッケージング
(1)293T細胞を、6ウェルプレートにおいて1×10細胞/ウェルの密度で17時間~18時間培養することができる。
(2)10%FBSを含有する600μL/ウェルの新たな(fresh)DMEMを添加した。
(3)滅菌遠心チューブに以下の試薬:各ウェルから収集した75μLのDMEM、ヘルパーDNAミックス(pNHP、pHEF-VSV-G)、GFPレポータープラスミド、及びpTYF CAR DNAベクター(実施例1、実施例2又は実施例3より)を添加した後に、ボルテックスした。
(4)各ウェルの中心から7μLのSuperfectを取り、遠心チューブに加え、上下に5回ピペッティングすることにより混合し、室温で7分間~10分間放置した。
(5)各培養ウェルに、遠心チューブ内のDNA-Superfect混合物を滴加し、ボルテックスにより混合した。
(6)3%のCOを含む37℃のインキュベーター中で4時間~5時間インキュベートした。
(7)培地を除去し、細胞を1.5mLの培養培地ですすいだ後に、1.5mLの培地を添加して、更にインキュベートした。
(8)プレートを5%のCOを含むインキュベーター中に戻し入れ、一晩インキュベートした。翌朝に、蛍光顕微鏡を用いてGFP発現に基づきトランスフェクション効率を観察した。
【0059】
実施例5:レンチウイルスの精製及び濃縮
1)ウイルスの精製
細胞片を1000gで5分間の遠心分離により除去して、ウイルス上清を得た。ウイルス上清を低タンパク質結合フィルターで濾過した後に、ウイルスを小分けにして、-80℃で貯蔵した。
【0060】
典型的には、培地1ml当たり10~10形質導入単位の力価のレンチウイルスベクターが、トランスフェクトされた細胞によって産生され得る。
【0061】
2)フィルターを用いたレンチウイルスの濃縮
(1)バイオセーフティキャビネット内で、フィルターチューブをアルコールで消毒した後に、滅菌PBSで洗浄した。
(2)ウイルス上清をフィルターチューブに添加した後に、2500gで30分間にわたって又はウイルス容積が20分の1~50分の1に減少するまで遠心分離した。
(3)フィルターチューブを振盪した後に、400gで2分間遠心分離し、濃縮されたウイルスを収集カップ中に収集し、最終的に全てのチューブ内のウイルスを1つの遠心チューブに収集した。
【0062】
実施例6:CAR-T細胞の形質導入
活性化させたT細胞を成長因子IL-2、IL-7及びIL-15を含むAIM-V培地で接種し、10μg/mLのポリブレンを添加した。CAR遺伝子を含む濃縮されたレンチウイルスを添加し、100gの遠心力にて室温で100分間遠心分離した後に、37℃で24時間インキュベートした。次いで、培養培地を添加し、4日間インキュベートした。次いで、細胞を採取し、計数し、患者に注入する前に2日間培養した。
【0063】
図2に示される腫瘍の治療に対する効果により、CAR-T細胞が腫瘍を効果的に減少させ、安全であることが示された。これらの効果をin vitroアッセイ及びin vivoアッセイによって具体的に検証した。
【0064】
実施例7:CAR-T細胞を用いたin vitro殺傷アッセイ
(1)GD2陽性腫瘍細胞系統に緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するレンチウイルスベクターを形質導入し、GFPを安定的に発現させた。
(2)GD2 scFvとは異なる非特異的T細胞又はCAR-T細胞を上記腫瘍細胞と一緒に37℃、5%のCOのインキュベーター中で24時間~72時間共培養した。
(3)腫瘍細胞の生存を蛍光顕微鏡法により観察した。死滅した腫瘍細胞が緑色蛍光タンパク質を発現しないという事実に基づいて、種々のGD2-CAR-T細胞のin vitro殺傷効率を評価した。これらの結果を図3に示した。
【0065】
図3から、コントロールT細胞と比較して、3つのタイプのScFv GD2-CAR-T細胞が明らかな殺傷効果を有し、タイプ3のscFvが最良の効果を示すことが分かり、こうして、本出願で使用されるベクター物質により、その後の臨床使用のために有効なCAR構造物が迅速にスクリーニングされることが確認された。
【0066】
実施例8:CAR-T細胞の治療効果
(1)神経芽細胞腫を伴う患者からの非染色の腫瘍切片を、免疫組織化学的染色によりGD2発現が陽性であることを確認した。これらの結果は図4に示される通りであった。高いGD2発現を伴う腫瘍は、図4(a)と図4(b)との間で区別され得る。
(2)患者から白血球細胞を収集した。Ficollを用いた勾配密度遠心分離によって白血球細胞から末梢血単核リンパ球を分離し、T細胞をCD3磁性ビーズでスクリーニングした。そのT細胞に抗CD28抗体を添加して、T細胞を活性化させた。その後のGD2-CARTの作製は、1×10個のCART細胞/kg(体重)で実施した。
(3)患者を低用量化学療法で前治療した。前治療レジメンは、シクロホスファミド250mg/mを3日間及びフルダラビン25mg/mを3日間の投与であった。前治療をCART注入の24時間前に行い、3日間継続した(化学療法レジメンは患者の病状に応じて変更することができ、この例は列挙としてのみ使用される)。
(4)静脈内注射を介してCAR T細胞を再注入した。
(5)注入後に、臨床医が患者を監視し、毒性応答を評価した。これらの結果を図5に示した。
【0067】
GD2-CAR T細胞の安全性は図5における統計結果から分かり、GD2-CAR T細胞は安全であった。注入後に、患者の24%は有害反応を有さず、50%がグレード1の有害反応を有し、26%がグレード2の有害反応を有した。これらの有害反応には、発熱、倦怠感、発疹及び低血圧等が含まれ、これらは臨床において効果的に管理され得る。
【0068】
(6)注入後に、患者から少量の末梢血を取得し、末梢血単核リンパ球を調製して、染色体DNA(gDNA)を抽出した。末梢血中のCARコピー数を、特異的なプライマーを使用したqPCRによって定量化した。これらの結果は図6に示される。
【0069】
図6から分かるように、CAR値はin vivoで患者において注入の約20日後にピークを迎え、約半年間体内で維持された。
【0070】
(7)GD2-CART注入後の画像診断により腫瘍サイズを評価し、それらの結果を図7及び図8に示した。
【0071】
図7から分かるように、GD2-CART注入28日後に、B-スキャン超音波検査法によって検出された患者における腹部腫瘤及び縦隔腫瘤は、注入前と比較して約95%減少し、半年間維持された。ここまで、患者の病状は依然として安定している。図8(a)-図8(b)から分かるように、別の患者における腹部腫瘤を、注入の2ヶ月後に増強CTでスキャンしたところ、腫瘤は、図8(a)に示される1.9cmの長さ及び4.9cmの幅の当初のサイズから、図8(b)に示される1.9cmの長さ及び3.2cmの幅のサイズにまで減少した。
【0072】
まとめると、本出願のGD2-CAR T細胞は、他のキメラ抗原受容体及び他の腫瘍抗原よりも優れた効果を有すると共に、安全性及び長期的な効果を有し、再燃及び難治性のステージIVの神経芽細胞腫を伴う患者において優れた効果を達成した。
【0073】
本出願人は、本出願の詳細な方法が上記実施例を通して説明されたと言明するが、本出願は上記の詳細な方法に限定されない。すなわち、本出願の実施が上記の詳細な方法によるものでなければならないことを意味するものではない。当業者は、原材料の同等物による置き換え又は本出願の生成物への補助成分の追加及び特定の方法の選択等を含む本出願のあらゆる改善が、本出願の保護範囲及び開示範囲に含まれるものと理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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