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  • 特許-スポット溶接の接合点の評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】スポット溶接の接合点の評価方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20221014BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B23K11/24 338
B23K31/00 K
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018142667
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020019028
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】木許 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知嗣
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-110613(JP,A)
【文献】特開平4-178275(JP,A)
【文献】特開平9-168867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/24
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせた複数の金属板に一対の電極を当接させた状態で、前記一対の電極間に通電することにより前記複数の金属板を接合するスポット溶接を行うにあたり、
前記一対の電極間を流れる電流値をI、前記一対の電極間の電圧をV、前記複数の金属板の接合予定部における接触面積をSとしたとき、D=I・V/Sで表される発熱密度Dに、前記一対の電極間を流れる全電流のうち、溶接に寄与する有効電流の流れやすさを表す指標である有効電流率Kを乗じた実質発熱密度D’(=K・D)を用いて接合点の品質を評価するスポット溶接の接合点の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接により形成された接合点の品質を評価するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポット溶接により形成された接合点(ナゲット)の品質を評価する方法として、たがね試験が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、断面ハット形状の金属板で覆われた袋構造(図1参照)に溶接を施す場合、たがねを挿入することが不可能な場所にナゲットが形成されることがある。このような場所に形成されたナゲットには、たがね試験を適用することができないため、他の評価方法として、例えば超音波検査が適用される(例えば、特許文献2参照)。超音波検査は、ナゲットに向けて超音波を発振し、その反射波を受信することにより、ナゲットの大きさを測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-047738号公報
【文献】特開2008-203082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スポット溶接では、金属板が電極で加圧されるため、金属板に凹状の打痕が形成される。特に、インダイレクトスポット溶接では、電極で加圧される金属板が反対側から支持されていないため、打痕が深くなる。このような深い凹状の打痕に超音波を発振すると、超音波が打痕の表面を通過する際に分散してしまい、反射した超音波を正常に受信することができず、ナゲットの大きさの正確な測定ができない恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、たがね試験や超音波検査では評価できない接合点であっても、品質を正確に評価できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、重ね合わせた複数の金属板に一対の電極を当接させた状態で、前記一対の電極間に通電することにより前記複数の金属板を接合するスポット溶接を行うにあたり、前記一対の電極間を流れる電流値をI、前記一対の電極間の電圧をV、前記複数の金属板の接合予定部における接触面積をSとしたとき、D=I・V/Sで表される発熱密度Dを用いて接合点の品質を評価するスポット溶接の接合点の評価方法を提供する。
【0008】
スポット溶接(抵抗溶接)は、金属板同士の接触部における電流密度(電流値I/金属板同士の接触面積S)と抵抗値との関係によって、この接触部を抵抗発熱させて溶接する工法である。本発明では、上記の抵抗溶接の原理原則を考慮して、電流値Iと、温度によって変化する抵抗値Rと、溶接の進行に伴って変化する金属板同士の接触面積Sとの関係から、D=I・V/S(=I・R/S)で表される発熱密度Dを定義した。この発熱密度Dを用いて接合点の品質を評価することで、金属板同士の接触部の実際の発熱状態を把握することができるため、接合点の品質を正確に評価することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、たがね試験や超音波検査を適用することができない接合点であっても、接合点の品質を正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ワークに対してインダイレクトスポット溶接を施す様子を示す断面図である。
図2】上記インダイレクトスポット溶接の溶接中の電流値、加圧力、及び発熱密度を示すグラフである。
図3】(A)~(E)は、図2の各ステップS1~S5終了時におけるワークの接合予定部周辺の断面図である。
図4】溶接電極の変位量と金属板同士の接触面積との関係を示すグラフである。
図5】ワークの無効電流経路の抵抗値を測定する様子を示す断面図である。
図6】ワークの有効電流経路の抵抗値を測定する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
本実施形態では、自動車の車体の組立工程において行われるインダイレクトスポット溶接方法を示し、具体的には、図1に示すようなワーク100(車体の骨格部品)を溶接する場合を示す。ワーク100は、紙面直交方向に延びるフレーム状の部品であり、略平板状を成した第1の金属板1と、断面ハット形状を成した第2の金属板2と、第1の金属板1と第2の金属板2とで構成される中空部に配された断面ハット形状を成した第3の金属板3とで構成される。金属板1~3としては、例えば鋼板が使用され、具体的には軟鋼板、高張力鋼板(引張強度490MPa以上)、超高張力鋼板(引張強度980MPa以上)等が使用される。
【0013】
第1の金属板1と第2の金属板2のフランジ部2aとは、ダイレクトスポット溶接により予め溶接された既接合点Q1を介して接合されている。第2の金属板2の底部2bと第3の金属板3のフランジ部3aとは、ダイレクトスポット溶接により予め溶接された既接合点Q2を介して接合されている。
【0014】
そして、第1の金属板1と第3の金属板3の天板部3bとの接合予定部Pを、インダイレクトスポット溶接により接合する。インダイレクトスポット溶接装置は、溶接電極10及びアース電極20と、溶接電極10を軸線方向に駆動して金属板を加圧する加圧手段(エアシリンダや電動シリンダ等)と、加圧手段による溶接電極10の加圧力及び両電極10,20間の電流値を制御する制御部(図示省略)とを備える。
【0015】
接合予定部Pに対するインダイレクトスポット溶接は、以下の手順で行われる。まず、ワーク100のうち、接合予定部Pと異なる部位にアース電極20を当接させる。図示例では、第2の金属板2の底部2b、特に、第2の金属板2の底部2bと第3の金属板3のフランジ部3aとの既接合点Q2に、アース電極20を下方から当接させている。この状態で、第1の金属板1と第3の金属板3の天板部3bとの接合予定部Pを厚さ方向一方側(図中上側)から溶接電極10で加圧しながら、両電極10,20間に通電することにより、接合予定部Pを溶接する。
【0016】
本実施形態では、溶接電極10による加圧力及び両電極10,20間の電流値の一方又は双方を変化させながら、溶接が行われる。具体的には、図2に示す加圧通電パターンに従って溶接が行われる。以下、この加圧通電パターンを詳しく説明する。
【0017】
[第1のステップS1]
第1のステップS1では、溶接電極10で接合予定部Pを、相対的に高い第1の加圧力F1で加圧する。これにより、金属板1,3間の隙間を詰めて両金属板1,3を確実に接触させると共に、溶接電極10と第1の金属板1との接触面積、及び、第1の金属板1と第3の金属板3との接触面積を確保することができる。この状態で、電極10,20間に、相対的に低い第1の電流値I1を通電することにより、電流密度を抑えて金属板1,3表面の溶融飛散を防止しながら、金属板1を軟化させて、溶接電極10と第1の金属板1との接触面積、及び、第1の金属板1と第3の金属板3との接触面積を拡大することができる{図3(A)参照}。尚、図3に散点で示す領域は、熱影響部である。
【0018】
[第2のステップS2]
第2のステップS2では、始めに、溶接電極10に加圧力を付与する加圧手段に対して加圧力低下の指令を出す(図2参照)。このとき、加圧手段の構造上、指令を受けると同時に実際の加圧力がF1からF2まで瞬時に降下するのではなく、F1からF2まで徐々に低下する移行期間が必然的に設けられる。こうして加圧力をF1からF2まで徐々に降下させながら、第1のステップの電流値I1よりも低い電流値I2で通電する。このように、加圧力が不安定な状態での投入熱量を抑えることで、溶接電極10及び金属板1,3を適度に冷却あるいは保温してヒートバランスを調整することができる。この第2のステップS2では、金属板1,3の接合予定部P周辺の状態はほとんど変化しない{図3(B)参照}。
【0019】
[第3のステップS3]
その後、加圧手段の加圧力を検知する加圧力検知部(図示省略)が、加圧力がF2まで降下したことを検知したら、電流値を上昇させる。本実施形態では、加圧力がF2まで降下すると同時に、電流値を上昇させる(図2参照)。このとき、第2のステップS2の低電流値I2から、ナゲットを形成する本通電の電流値(次の第4のステップS4の電流値I4)まで一気に高めると、スパッタが発生する恐れがある。そこで、第3のステップS3において、低加圧力F2で加圧しながら、まずは本通電の電流値I4よりも低い電流値I3で通電することにより、金属板1,3を軟化させてこれらの接触面積を拡大することができる{図3(C)参照}。
【0020】
[第4のステップS4]
こうして金属板1,3同士の接触面積を確保した状態で、続く第4のステップS4で本通電の電流値I4まで上昇させて通電する(図2参照)。これにより、スパッタを発生させることなくナゲットの種(所望の大きさには至らないナゲット)を確実に形成することができる{図3(D)参照}。図示例では、第4のステップS4で、両金属板1,3の接合予定部Pに環状のナゲットNが形成される。
【0021】
[第5のステップS5]
上記のステップS4でナゲットの種を形成した後、第5のステップS5で、溶接電極10により第2の加圧力F2で加圧しながら、両電極10,20間に、第4の電流値I4よりも低い第5の電流値I5を通電する(図2参照)。これにより、金属板1,3への投入熱量を抑えながら、第4のステップS4で加熱した金属板1,3の予熱を利用して、ナゲットの状態を安定化させることができる{図3(E)参照}。図示例では、第4のステップS4で形成された環状のナゲットNが第5のステップS5で内径側に成長し、中空部が埋められて略円盤状となる。
【0022】
以上により、金属板1と金属板3の天板部3bとの接合予定部Pに、所望の大きさ及び形状を有する接合点としてのナゲットNが形成され、このナゲットNを介して両金属板1,3が接合される。
【0023】
上記のインダイレクトスポット溶接により形成された接合点の品質を、溶接中の発熱密度Dを用いて評価する。具体的には、両電極10,20間に通電を開始してから終了するまでの間、両電極10,20間を流れる電流値Iと、両電極10,20間の電圧Vと、金属板1,3同士の接触面積Sとを測定する。
【0024】
このとき、金属板1,3同士の接触面積Sを直接測定することは困難であるため、溶接電極10の変位量xで代替する。本実施形態では、通電開始時における溶接電極10の位置を基準とし、ここからの溶接電極10の軸方向(加圧方向)移動量を変位量xとする。溶接中の接触面積Sの具体的な取得方法は以下の通りである。まず、予め、溶接電極10の変位量xと金属板1,3の接触面積Sとの相関関係を取得する。例えば、上記のワーク100と同様のサンプルの接合予定部にインダイレクトスポット溶接を施し、通電を途中の複数段階で止めた複数のサンプルを作製する。そして、各サンプルの切断面から金属板1,3の接触面積Sを測定すると共に、そのときの溶接電極10の変位量xを記録し、グラフ上に(x,S)をプロットする(図4参照)。このグラフから、変位量xと接触面積Sとの相関関係を算出する。図示例では、接触面積Sと変位量xとがおおよそ比例関係にあり、S=a・x+bで表される(a,bは定数)。この関係式を用いることにより、実際の製品にインダイレクトスポット溶接を施す際に、測定が容易な溶接電極10の変位量xから、直接測定することが困難な金属板1,3同士の接触面積Sを取得することができる。
【0025】
これらの電流値I、電圧V、及び接触面積S(溶接電極10の変位量x)から、D=V・I/S=V・I/(a・x+b)で表される発熱密度Dを算出する(図2の鎖線参照)。この発熱密度Dを用いて、ナゲットNの品質を評価する。以下、発熱密度Dを用いたナゲットNの評価方法の具体的手順の一例を説明する。
【0026】
まず、通電開始から終了までの期間を複数の区間に分ける。本実施形態では、電流値が一定の各ステップS1~S5の少なくとも一つを複数の区間に分け、具体的には、図2に示すように、第1~第5のステップS5をそれぞれ2つの区間に等分して区間C1~C10を形成する。そして、予め、様々な条件でインダイレクトスポット溶接を行った多数のサンプルを作成し、このときの各区間C1~C10の発熱密度の値(例えば、各区間の発熱密度の平均値や積分値等)を取得すると共に、各サンプルの切断面から接合点の不良の有無を確認する。そして、発熱密度と接合点の品質との相関が高い区間、すなわち、接合点が良好である場合と不良である場合とで発熱密度の値に明確な差が生じている一又は複数の区間を選択し、選択した区間において発熱密度の値の許容範囲を設定する。
【0027】
そして、実際の製品において、インダイレクトスポット溶接を施した接合点の品質を評価する。すなわち、選択した区間の発熱密度の値が許容範囲内であれば、金属板1,3の接合予定部Pに良好なナゲットNが形成されていると判定し、選択した区間の発熱密度の値が許容範囲外であれば、ナゲットNに何らかの不良(ナゲット径不足、金属板の割れ、ブローホール等)が生じていると判定する。
【0028】
尚、接合点を評価するにあたり、上記で選択した区間の発熱密度の値(平均値、積分値等)をそのまま用いるのではなく、これらの区間の発熱密度から統計的手法(例えば判別分析法)により作成した評価式を用いてもよい。例えば、各区間C1~C10の発熱密度の値をc1~c10としたとき、F=k1・c1+k2・c2+・・・+k10・c10で表される評価式Fを用いてもよい。k1~k10は、各項の寄与率を踏まえた係数である。このような評価式を用いることで、接合点の品質をより正確に評価することが可能となる。この評価式には、上記のような各区間の発熱密度の値の項の他、何れかの区間の発熱密度の値の累乗(例えばc1等)の項や、複数の区間の発熱密度の値の積(例えばc1・c2等)や比(例えばc1/c2等)の項を加えてもよい。
【0029】
上記のように、溶接中の電流値I、電圧V、及び金属板1,3同士の接触面積S(溶接電極10の変位量x)の関係を表す発熱密度Dを用いてナゲットNの品質を評価することで、たがね試験や超音波検査を適用できないナゲットNの品質であっても評価できる。
【0030】
また、発熱密度D(=I・V/S=I・R/S)は、電流密度(=I/S)だけでなく、金属板1,3の温度や接触面積Sに伴って時々刻々と変化する抵抗値Rを考慮したパラメータである。この発熱密度Dを用いることで、金属板1,3の接触部における抵抗発熱による発熱状態をモニタリングできるため、ナゲットNの品質を正確に評価することができる。
【0031】
尚、上記のようなナゲットNの品質評価は、インダイレクトスポット溶接工程とは別に設けた検査工程で行ってもよいし、インダイレクトスポット溶接工程内で行ってもよい。後者の場合、例えば、インダイレクトスポット溶接の完了と同時に、発熱密度Dの算出及びナゲットNの良否判定を自動で行うことができる。この場合、サイクルタイムの短縮が図られ、製造コストを低減できる。
【0032】
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、接合点の品質を評価するにあたり、発熱密度Dに有効電流率Kを乗じた指標を用いてもよい。有効電流率Kは、電極間を流れる全電流のうち、溶接に寄与する有効電流の流れやすさを表す指標である。以下、有効電流率Kの測定方法の一例を詳しく説明する。
【0033】
まず、溶接に寄与しない無効電流経路の抵抗値Rを測定する。具体的には、図5に示すように、抵抗測定器30の一方の端子31を、ワーク100のうち、第1の金属板1の接合予定部Pあるいはその付近に上方から当接させる。また、抵抗測定器30の他方の端子32を、ワーク100のうち、接合予定部P以外の部位、例えば、後のインダイレクトスポット溶接においてアース電極20(図1参照)を当接させる部位に当接させる。本実施形態では、他方の端子32を、第2の金属板2の底部2bの既接合点Q2に下方から当接させる。この状態で、ワーク100の接合予定部Pを加圧することなく、両端子31,32間の電流経路の抵抗値を測定する。このとき、両金属板1,3の接合予定部Pは実質的に接触しておらず、接合予定部Pにほとんど電流が流れないため、一方の端子31→第1の金属板1→既接合点Q1→第2の金属板2→他方の端子32という、接合予定部P(両金属板1,3の界面)を通らない電流経路L1が形成される。この電流経路L1を、溶接に寄与しない無効電流の電流経路とみなし、このときの電流値及び電圧から電流経路L1の抵抗値を測定し、この抵抗値を無効電流経路の抵抗値Rとする。
【0034】
次に、溶接に寄与する有効電流経路の抵抗値Rを測定する。具体的には、図6に示すように、抵抗測定器30の一方の端子31を、ワーク100のうち、第3の金属板3の接合予定部Pあるいはその付近に当接させる。本実施形態では、抵抗測定器30の一方の端子31を、予め第1の金属板1に設けられたスリット1aに挿入して、第3の金属板3の天板部3bの接合予定部P付近に上方から当接させる。また、抵抗測定器30の他方の端子32を、第2の金属板2の底部2bの既接合点Q2に下方から当接させる。これにより、一方の端子31→第3の金属板3→既接合点Q2→第2の金属板2→他方の端子32という電流経路L2が形成され、この電流経路L2の抵抗値を測定する。この電流経路L2の抵抗値は、インダイレクトスポット溶接(図1参照)において溶接電極10及びアース電極20をワーク100に接触させて通電したときに、接合予定部P(両金属板1,3の界面)を流れる有効電流の電流経路の抵抗値と略同様であるため、この電流経路L2の抵抗値を有効電流経路の抵抗値Rとみなす。
【0035】
こうして測定された無効電流経路の抵抗値R及び有効電流経路の抵抗値Rに基づいて、有効電流率Kを算出する。具体的には、有効電流経路の抵抗値Rと無効電流経路の抵抗値Rとの和を全体抵抗R(=R+R)とし、有効電流率Kを、全体抵抗Rに対する無効電流経路の抵抗値Rの比率とする(K=R/R)。尚、有効電流率Kを、有効電流経路の抵抗値Rに対する無効電流経路の抵抗値Rの比率(R/R)としてもよい。あるいは、ワーク100の接合予定部Pの溶接時における全電流経路の抵抗値をRTOTALとしたとき、有効電流率Kを、溶接時における全電流経路の合成抵抗値RTOTALに対する無効電流経路の抵抗値Rの比率(R/RTOTAL)とすることもできる。
【0036】
そして、発熱密度Dに有効電流率Kを乗じた実質発熱密度D’(=K・D)を用いて、ナゲットNの品質を評価する。これにより、金属板1,3の接触部における発熱状態をより正確に評価することができるため、接触部の溶融状態、ひいてはナゲットNの品質をより正確に評価することができる。
【0037】
また、上記の実施形態では、金属板同士の接触面積Sを変位量xで代替して発熱密度Dを算出した場合を示したが、これに限られない。例えば、通電を途中で止めた複数のサンプルを作製し、各サンプルの接合点の断面から金属板同士の接触面積を測定してもよい。
【0038】
また、本発明に係る評価方法は、インダイレクトスポット溶接の接合点に限らず、ダイレクトスポット溶接やシリーズ溶接等の他のスポット溶接の接合点の評価に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1-3 金属板
10 溶接電極
20 アース電極
100 ワーク
N ナゲット(接合点)
P 接合予定部
Q1,Q2 既接合点
図1
図2
図3
図4
図5
図6