IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボッシュ株式会社の特許一覧 ▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-車両運転支援システム 図1
  • 特許-車両運転支援システム 図2
  • 特許-車両運転支援システム 図3
  • 特許-車両運転支援システム 図4
  • 特許-車両運転支援システム 図5
  • 特許-車両運転支援システム 図6
  • 特許-車両運転支援システム 図7
  • 特許-車両運転支援システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】車両運転支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20221014BHJP
   G08G 1/14 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G08G1/14 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018209148
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020077120
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100103
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100173163
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 信洋
(74)【代理人】
【識別番号】100134522
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 朝子
(74)【代理人】
【識別番号】100135024
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 敢
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ノルドブルフ
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 尚也
(72)【発明者】
【氏名】山本 翔
(72)【発明者】
【氏名】阿蘇 将也
(72)【発明者】
【氏名】窪田 賢太
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-230641(JP,A)
【文献】特開昭63-144976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構内物流システムに適用され、車両(20)の運転を外部から制御する車両運転支援システム(1)において、
特定エリア内に設置された監視装置(5)と、
前記車両(20)に搭載され、ステアリングホイール(23)、アクセルペダル(25)、ブレーキペダル又はシフトレバー(27)のうちの少なくとも一つを操作する少なくとも一つのロボット装置(21)と、
前記車両(20)の外部に設置され、前記監視装置(5)の検出情報に基づいて前記ロボット装置(21)の制御に用いる情報を演算し、通信ネットワークを介して前記車両(20)に前記情報を送信する情報処理装置(50)と、
前記車両(20)に搭載され、前記情報処理装置(50)から送信される前記情報に基づいて前記ロボット装置(21)を制御する車両制御装置(30)と、を備え
前記情報処理装置(50)は、
生産ラインの稼働状況の情報に基づいて、前記車両(20)の前記ロボット装置(21)の制御に用いる情報を演算する、
車両運転支援システム。
【請求項2】
前記情報処理装置(50)は、
前記生産ラインの稼働状況の情報に基づいて、制御対象の車両(20)の台数を変更する、
請求項1に記載の車両運転支援システム。
【請求項3】
前記情報処理装置(50)は、
前記監視装置(5)の検出情報に基づいて所定時間後の前記車両(20)の目標位置を設定する、
請求項1又は2に記載の車両運転支援システム。
【請求項4】
前記情報処理装置(50)は、
前記車両(20)が前記特定エリア内に設定される目的地点に到達するための前記所定時間後の前記目標位置を設定する、
請求項に記載の車両運転支援システム。
【請求項5】
前記情報処理装置(50)は、
前記監視装置(5)の検出情報に基づいて前記車両(20)の周囲情報を算出し、前記車両(20)の周囲情報に基づいて前記車両(20)の目標位置を設定する、
請求項3又は4に記載の車両運転支援システム。
【請求項6】
前記情報処理装置(50)は、
前記監視装置(5)の検出情報に基づいて前記特定エリア内の情報を算出し、前記特定エリア内の情報に基づいて前記車両(20)の目標位置を設定する、
請求項3~5のいずれか1項に記載の車両運転支援システム。
【請求項7】
前記車両制御装置(30)は、
所定時間後の前記車両(20)の目標位置の情報に基づいて設定される前記ステアリングホイール(23)の目標舵角、前記アクセルペダル(25)の目標踏込量、前記ブレーキペダルの目標踏込量又は前記シフトレバー(27)の目標位置に基づいて、前記ロボット装置(21)のアクチュエータ(41,43,45)を制御する、
請求項3~6のいずれか1項に記載の車両運転支援システム。
【請求項8】
前記情報処理装置(50)は、
前記車両(20)の現在位置の情報及び所定時間後の前記車両(20)の目標位置の情報を前記車両制御装置(30)に送信し、
前記車両制御装置(30)は、
前記車両(20)の現在位置及び目標位置の情報に基づいて、前記ロボット装置(21)の前記アクチュエータ(41,43,45)の目標操作量を設定し、前記アクチュエータ(41,43,45)を制御する、
請求項に記載の車両運転支援システム。
【請求項9】
前記情報処理装置(50)は、
前記車両(20)の現在位置の情報及び前記所定時間後の前記車両(20)の目標位置の情報に基づいて算出される前記ロボット装置(21)の前記アクチュエータ(41,43,45)の目標操作量を前記車両制御装置(30)に送信し、
前記車両制御装置(30)は、前記アクチュエータ(41,43,45)の目標操作量に基づいて前記アクチュエータ(41,43,45)を制御する、
請求項に記載の車両運転支援システム。
【請求項10】
前記車両(20)を、前記特定エリア内に設定される複数の異なる地点(11,13)間を自動運転させるために用いられる、
前記請求項1~9のいずれか1項に記載の車両運転支援システム。
【請求項11】
構内物流システムに適用され、車両(20)の運転を外部から制御する車両運転支援システム(1)において、
特定エリア内に設置された監視装置(5)と、
前記車両(20)に搭載され、ステアリングホイール(23)、アクセルペダル(25)、ブレーキペダル又はシフトレバー(27)のうちの少なくとも一つを操作する少なくとも一つのロボット装置(21)と、
前記車両(20)の外部に設置され、前記監視装置(5)の検出情報に基づいて前記ロボット装置(21)の制御に用いる情報を演算し、通信ネットワークを介して前記車両(20)に前記情報を送信する情報処理装置(50)と、
前記車両(20)に搭載され、前記情報処理装置(50)から送信される前記情報に基づいて前記ロボット装置(21)を制御する車両制御装置(30)と、を備え、
前記情報処理装置(50)は、
複数の車両(20)にそれぞれ搭載された前記ロボット装置(21)を制御し、
前記複数の車両(20)のうちの第1の車両の走行に遅れが生じたと判断した場合、前記複数の車両(20)のうちの走行ルート上に障害のない第2の車両の走行速度の制御目標を変更し、又は、前記複数の車両(20)のうちの待機中の第3の車両の走行を開始させる、
車両運転支援システム。
【請求項12】
構内物流システムに適用され、車両(20)の運転を外部から制御する車両運転支援方法において、
前記車両(20)の外部に設置された情報処理装置(50)が、特定エリア内に設置された監視装置(5)の検出情報及び生産ラインの稼働状況の情報に基づいて、前記車両(20)に搭載され、ステアリングホイール(23)、アクセルペダル(25)、ブレーキペダル又はシフトレバー(27)のうちの少なくとも一つを操作する少なくとも一つのロボット装置(21)の制御に用いる情報を演算し、通信ネットワークを介して前記車両(20)に前記情報を送信するステップと、
前記車両(20)に搭載された車両制御装置(30)が、前記情報処理装置(50)から送信される前記情報に基づいて前記ロボット装置(21)を制御するステップと、を備える、
車両運転支援方法。
【請求項13】
構内物流システムに適用され、車両(20)の運転を外部から制御する車両運転支援方法において、
前記車両(20)の外部に設置された情報処理装置(50)が、特定エリア内に設置された監視装置(5)の検出情報に基づいて、前記車両(20)に搭載され、ステアリングホイール(23)、アクセルペダル(25)、ブレーキペダル又はシフトレバー(27)のうちの少なくとも一つを操作する少なくとも一つのロボット装置(21)の制御に用いる情報を演算し、通信ネットワークを介して前記車両(20)に前記情報を送信するステップと、
前記車両(20)に搭載された車両制御装置(30)が、前記情報処理装置(50)から送信される前記情報に基づいて前記ロボット装置(21)を制御するステップと、を備え、
前記情報処理装置(50)は、
複数の前記車両(20)にそれぞれ搭載された前記ロボット装置(21)を制御し、
前記複数の車両(20)のうちの第1の車両の走行に遅れが生じたと判断した場合、前記複数の車両(20)のうちの走行ルート上に障害のない第2の車両の走行速度の制御目標を変更し、又は、前記複数の車両(20)のうちの待機中の第3の車両の走行を開始させる、
車両運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年車両外部の装置により車両の運転を制御するシステムが提案されている。例えば特許文献1には、開始位置から目標位置に至る駐車場におけるルートを車両外部で特定し、当該ルートのうち少なくとも1つの区間を、通信ネットワークを介して車両に送信し、上記区間を辿る走行時、当該区間を辿る自律走行中の逸脱について、車両外部の監視システムによって当該車両を監視する駐車場の誘導方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2018-502357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、車両の進行方向及び車速を車両の外部から制御可能な自律運転技術を搭載した車両の制御を前提としている。このため、運転者の操作によらずに外部から操作可能な自動変速機、ステアリング装置又は加減速装置を備えていない車両等、車速又は進行方向を電子制御するためのソフトウェア又はハードウェアを備えていない車両には適用することができない。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、自律運転技術を搭載していないあるいは部分的にしか搭載していない車両に対しても適用可能な車両運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある観点によれば、構内物流システムに適用され、車両の運転を外部から制御する車両運転支援システムにおいて、特定エリア内に設置された監視装置と、車両に搭載され、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル又はシフトレバーのうちの少なくとも一つを操作する少なくとも一つのロボット装置と、車両の外部に設置され、監視装置の検出情報に基づいてロボット装置の制御に用いる情報を演算し、通信ネットワークを介して車両に情報を送信する情報処理装置と、車両に搭載され、情報処理装置から送信される情報に基づいてロボット装置を制御する車両制御装置と、を備え、情報処理装置は、生産ラインの稼働状況の情報に基づいて、車両のロボット装置の制御に用いる情報を演算する、車両運転支援システムが提供される。
また、本発明の別の観点によれば、構内物流システムに適用され、車両の運転を外部から制御する車両運転支援システムにおいて、特定エリア内に設置された監視装置と、車両に搭載され、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル又はシフトレバーのうちの少なくとも一つを操作する少なくとも一つのロボット装置と、車両の外部に設置され、監視装置の検出情報に基づいてロボット装置の制御に用いる情報を演算し、通信ネットワークを介して車両に情報を送信する情報処理装置と、車両に搭載され、情報処理装置から送信される情報に基づいてロボット装置を制御する車両制御装置と、を備え、情報処理装置は、複数の車両にそれぞれ搭載されたロボット装置を制御し、複数の車両のうちの第1の車両の走行に遅れが生じたと判断した場合、複数の車両のうちの走行ルート上に障害のない第2の車両の走行速度の制御目標を変更し、又は、複数の車両のうちの待機中の第3の車両の走行を開始させる、車両運転支援システムが提供される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、構内物流システムに適用され、車両の運転を外部から制御する車両運転支援方法において、車両の外部に設置された情報処理装置が、特定エリア内に設置された監視装置の検出情報及び生産ラインの稼働状況の情報に基づいて、車両に搭載され、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル又はシフトレバーのうちの少なくとも一つを操作する少なくとも一つのロボット装置の制御に用いる情報を演算し、通信ネットワークを介して車両に情報を送信するステップと、車両に搭載された車両制御装置が、情報処理装置から送信される情報に基づいてロボット装置を制御するステップと、を備える、車両運転支援方法が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、構内物流システムに適用され、車両の運転を外部から制御する車両運転支援方法において、車両の外部に設置された情報処理装置が、特定エリア内に設置された監視装置の検出情報に基づいて、車両に搭載され、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル又はシフトレバーのうちの少なくとも一つを操作する少なくとも一つのロボット装置の制御に用いる情報を演算し、通信ネットワークを介して車両に情報を送信するステップと、車両に搭載された車両制御装置が、情報処理装置から送信される情報に基づいてロボット装置を制御するステップと、を備え、情報処理装置は、複数の車両にそれぞれ搭載されたロボット装置を制御し、複数の車両のうちの第1の車両の走行に遅れが生じたと判断した場合、複数の車両のうちの走行ルート上に障害のない第2の車両の走行速度の制御目標を変更し、又は、複数の車両のうちの待機中の第3の車両の走行を開始させる、車両運転支援方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、自律運転技術を搭載していない車両に対しても車両運転支援システムを適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る車両運転支援システムの全体構成例を示す模式図である。
図2】同実施形態に係る車両運転支援システムの適用例を示す模式図である。
図3】同実施形態に係る情報処理装置及び車両制御装置の第1の構成例を示すブロック図である。
図4】第1の構成例の情報処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図5】第1の構成例の車両制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図6】同実施形態に係る情報処理装置及び車両制御装置の第2の構成例を示すブロック図である。
図7】第2の構成例の情報処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図8】第2の構成例の車両制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<1.車両運転支援システムの全体構成例>
図1を参照して、本実施形態に係る車両運転支援システム1の全体構成例を説明する。図1は、車両運転支援システム1の全体構成例を示す模式図である。
【0012】
車両運転支援システム1は、監視装置5、情報処理装置50、ロボット装置21及び車両制御装置30を備える。このうち、ロボット装置21及び車両制御装置30は車両20に搭載され、監視装置5及び情報処理装置50は車両20の外部に設置される。車両運転支援システム1は、車両20の外部に設置された情報処理装置50が、特定エリア内に設置された複数の監視装置5a~5j(特に区別を要しない場合には監視装置5と総称する。)の検出情報に基づいて車両20を制御し、車両20を走行させるシステムである。
【0013】
特定エリアは、任意に設定されるエリアであってよいが、少なくとも情報処理装置50と車両20とが無線通信ネットワークを介して通信可能な範囲内で設定される。さらに、監視装置5と情報処理装置50とが無線通信手段により通信を行う場合、特定エリアは、監視装置5と情報処理装置50とが通信可能な範囲内で設定される。
【0014】
制御対象となる車両20は、少なくとも運転者のハンドル操作、アクセル操作、ブレーキ操作又はシフト切換操作に起因してエンジン、ステアリング装置、ブレーキ装置、変速機等が動作する車両である。車両20は、これらの動作の少なくとも1つが運転者の操作によらずに作動しない車両20であってもよい。車両20は、自律運転を行うためのソフトウェア又はハードウェアの少なくとも一部を備えていない車両20であってよい。例えば、車両20は、電動ステアリング装置又は自動変速機の少なくとも一方を備えていなくてもよい。
【0015】
なお、本明細書において、自律運転とは、車両20の車速又は進行方向を調節する操作のうちの一部又は全部が、人の手によらずに行われる運転状態をいう。
【0016】
監視装置5は、特定エリア内の状況を監視するための装置である。監視装置5は、レーダーセンサ、カメラ、超音波センサ又はLIDARのうちの一つ又は複数のセンサ素子を備える。監視装置5は、監視範囲内の物体を検知できる装置であれば特に限定されるものではない。
【0017】
特定エリア内に設置される監視装置5の数は、一つであってもよく複数であってもよい。ただし、監視装置5によって特定エリア内の全範囲を監視可能にするために、複数の監視装置が設置されることが好ましい。特に、監視装置5は、曲がり角や走行路の交差点、死角となりやすい位置の付近に設置される。監視装置5による検出情報を示す信号は、情報処理装置50に送信される。監視装置5は、有線又は無線の通信手段により、情報処理装置50に対して信号を送信する。
【0018】
情報処理装置50は、監視装置5の検出情報に基づいてロボット装置21の制御に用いる情報を演算し、当該情報を示す信号を、通信ネットワークを介して車両20に送信する。情報処理装置50は、例えば基地局9を介して通信ネットワークに接続される。通信ネットワークは、例えばWi-FiやLTE(Long Term Evolution)等の通信方式を利用したモバイルネットワークであってよい。
【0019】
情報処理装置50は、監視装置5の検出情報に基づいて、特定エリア内の情報であるエリア内情報を算出する。エリア内情報は、車両20の周囲に限らず特定エリア内に存在する他車両や物、施設の状況を示す情報を含む。エリア内情報は、主として、車両20の走行ルートを設定するために用いられる。
【0020】
また、情報処理装置50は、監視装置5の検出情報に基づいて、制御対象の車両20の走行状態の情報を算出する。車両20の走行状態の情報は、車両20の位置、向き、車速及び進行方向の情報を含む。また、情報処理装置50は、監視装置5の検出情報に基づいて、車両20の周囲情報を算出する。車両20の周囲情報とは、車両20の周囲に存在する他車両や物、人物等の状況を示す情報を含む。車両20の周囲情報は、主として、車両20を自律走行させるための安全性を判断するために用いられる。
【0021】
情報処理装置50は、エリア内情報、車両20の走行状態の情報及び車両20の周囲情報に基づいて、車両20に搭載されたロボット装置21の制御に用いる情報を演算し、通信ネットワークを介して車両20に当該情報を送信する。例えば、情報処理装置50は、エリア内情報に基づいて車両20の走行ルートを設定し、車両20の走行状態の情報及び車両20の周囲情報に基づいて、所定時間後の車両20の目標位置を設定する。
【0022】
情報処理装置50は、車両20の目標位置に基づいて車両20の目標舵角及び目標加速度を設定するとともに、これらの目標舵角及び目標加速度に応じたロボット装置21の制御に用いる情報を車両20に送信する。
【0023】
車両20に搭載されたロボット装置21は、ステアリングホイール23を動作させる第1のアクチュエータ41、アクセルペダル25を動作させる第2のアクチュエータ43、シフトレバー27を動作させる第3のアクチュエータ45及び図示しないブレーキペダルを動作させる第4のアクチュエータを含む。図1には、人型のロボット装置21が示されているが、ロボット装置21は人型でなくてもよい。また、ロボット装置21は、それぞれ一つ又は複数のアクチュエータを備えた複数のロボット装置からなっていてもよい。
【0024】
第1のアクチュエータ41は、ステアリングホイール23を回転動作させる。第1のアクチュエータ41は、例えばステッピングモータに代表されるモータであってよい。第2のアクチュエータ43及び第4のアクチュエータは、それぞれアクセルペダル25又はブレーキペダルの踏込動作を行う。第2のアクチュエータ43及び第4のアクチュエータは、例えばモータの出力又は油圧によりピストンを進退動させる構成のアクチュエータであってよい。第3のアクチュエータ45は、シフトレバー27の位置を移動させる。図1に示した例では、シフトレバー27の位置を移動させる二軸ロボット装置21aが備えられ、第3のアクチュエータ45は、二軸ロボット装置21aのアームを回転動作させるモータである。
【0025】
これらの各アクチュエータは、車室内の任意の位置に取り付けられる。各アクチュエータは、取外し可能にされていてもよい。アクチュエータが取外し可能になっていれば、例えば車両運転支援システム1の異常時等にアクチュエータを取外し、人の手によって車両20を運転することができる。なお、ロボット装置21及び各アクチュエータの構成は上記の例に限られない。
【0026】
車両制御装置30は、情報処理装置50から送信される情報に基づいてロボット装置21の各アクチュエータを制御する。つまり、車両制御装置30は、車両20の目標舵角及び目標加速度に応じて設定されるロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量に応じて各アクチュエータに駆動信号を出力する。
【0027】
<2.車両運転支援システムの適用例>
次に、図2を参照して、本実施形態に係る車両運転支援システム1の適用例を説明する。図2は、車両運転支援システム1(1A)の適用例を示す模式図である。かかる適用例は、車両20を、特定エリア内に存在する二つの異なる第1の地点11及び第2の地点13の間を走行させるためのシステムに車両運転支援システムを適用した例である。
【0028】
図2に示した車両運転支援システム1Aは、車両20に、第1の地点11と第2の地点13との間で搬送物をピストン輸送させるシステムである。かかる車両運転支援システム1Aは、例えば工場あるいは倉庫等における構内輸送システムに適用することができる。車両20は、少なくとも車路10内を走行するように設定される。
【0029】
車路10に沿って複数(図2の例では10個)の監視装置5a~5jが設置されている。複数の監視装置5a~5jは、車路10及び車路10の周囲を含む特定エリア内に存在する車両、人物、障害物等の位置に応じた信号を情報処理装置50に出力する。特に、車路10と通路16とが合流する合流地点15は監視装置5b,5cにより監視可能にされ、車両20にとって死角となり得る障害物17の周囲は監視装置5h,5i,5jにより監視可能にされる。それぞれの監視装置5a~5jは、有線又は無線の通信手段を介して情報処理装置50に信号を出力する。
【0030】
情報処理装置50は、監視装置5a~5jの検出信号に基づいて、エリア内情報、車両20の走行状態の情報及び車両20の周囲状況の情報を算出する。例えば、図2に示す状態において、情報処理装置50は、あらかじめ記憶された監視装置5a~5jの設置位置の情報と照らし合わせながら、すべての監視装置5a~5jの検出情報に基づいて、エリア内情報として、車路10及び車路10の周囲の車両19a,19b、人物、障害物17等の位置を特定する。情報処理装置50は、当該エリア内情報に基づいて、第1の地点11から第2の地点13に車両20を移動させる走行ルートRを設定する。
【0031】
また、情報処理装置50は、例えば監視装置5a~5jの検出情報に基づいて、車両20の走行状態の情報として、制御対象の車両20の位置、向き、車速及び進行方向を特定する。例えば、情報処理装置50は、第1の地点11に存在する車両20の車両制御装置30と通信することにより制御対象の車両20を認識した後、監視装置5a~5jを用いて当該車両20の位置、向き、車速及び進行方向を特定する。
【0032】
また、情報処理装置50は、例えば監視装置5a,5b,5cの検出情報に基づいて、制御対象の車両20の周囲状況の情報として、走行ルートRに沿って車両20が走行する際の障害の有無を特定する。例えば、図2に示す状態において、情報処理装置50は、車両20の進行方向前方の合流地点15に対して、通路16から他の車両19bが迫っていることを特定する。
【0033】
情報処理装置50は、算出したエリア内情報、車両20の走行状態の情報及び車両20の周囲状況の情報に基づいて、所定時間経過後の車両20の目標位置を設定する。さらに、情報処理装置50は、設定した車両20の目標位置に応じた、車両20に搭載されたロボット装置21の制御に用いる情報を、所定時間ごとに、基地局9及び通信ネットワークを介して車両20に対して当該情報を送信する。具体的に、情報処理装置50は、所定時間ごとに監視装置5a~5jの検出情報を受信し、所定の演算処理の実行により得られたロボット装置21の制御に用いる情報を所定時間ごとに車両20に対して送信する。所定時間は、情報処理装置50の処理速度を考慮しつつ、例えば0.3~1.0秒の範囲内に設定されてよい。
【0034】
車両20に搭載された車両制御装置30は、情報処理装置50から送信される情報を受信し、当該情報に基づいてロボット装置21の各アクチュエータの駆動を制御する。これにより、所定時間ごとに車両20の舵角及び加速度が調節され、車両20の安全性を確保しつつ、車両20を第1の地点11から第2の地点13まで走行させることができる。
【0035】
車両20を第2の地点13から第1の地点11へと走行させる際にも、情報処理装置50及び車両制御装置30は同様の処理を行う。このようにして、車両運転支援システム1Aは、車両20の外部からの制御により、車両20を、第1の地点11と第2の地点13との間を安全に行き来させることができる。
【0036】
<3.情報処理装置及び車両制御装置の構成例>
以下、図2に示した車両運転支援システム1Aに用いられる情報処理装置50及び車両制御装置30の構成例を説明する。
【0037】
(3-1.第1の構成例)
図3は、情報処理装置50及び車両制御装置30の第1の構成例を示すブロック図である。第1の構成例では、情報処理装置50は、所定時間後の車両20の目標位置を算出し、車両20の現在位置及び目標位置の情報を車両制御装置30に送信する。車両制御装置30は、受信した情報に基づいて、ロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量を設定し、各アクチュエータを制御する。
【0038】
(情報処理装置)
情報処理装置50は、第1の通信部51、第2の通信部52、検出情報処理部53、ルート設定部54、車両制御情報設定部55及び記憶部56を備える。情報処理装置50の一部又は全部は、例えば、マイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサユニット等で構成されていてもよく、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよい。また、情報処理装置50の一部又は全部は、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0039】
記憶部56は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の記憶素子や、HDD(Hard Disk Drive)やストレージ装置、CD-ROM等の記憶装置を含む。記憶部56は、マイクロコンピュータ等により実行されるプログラムや各種演算処理に用いられるパラメータ、演算結果、各種センサ等の検出情報等を記憶する。
【0040】
第1の通信部51は、監視装置5と情報処理装置50との間で通信を行うためのインタフェースである。情報処理装置50は、第1の通信部51を介して監視装置5から出力される信号を受信する。
【0041】
第2の通信部52は、車両制御装置30と情報処理装置50との間で通信を行うためのインタフェースである。情報処理装置50は、第2の通信部52により、基地局9及び通信ネットワークを介して車両制御装置30に対して信号を送信する。
【0042】
検出情報処理部53は、監視装置5の検出情報を用いて種々の演算処理を行う。例えば、検出情報処理部53は、マイクロコンピュータ等によるプログラムの実行により実現される機能であってよい。検出情報処理部53は、監視装置5の検出情報に基づいて、エリア内情報、車両20の走行状態の情報及び車両20の周囲状況の情報を算出する。
【0043】
ルート設定部54は、車両20の走行ルートRを設定する。例えば、ルート設定部54は、マイクロコンピュータ等によるプログラムの実行により実現される機能であってよい。ルート設定部54は、算出されたエリア内情報に基づいて、車両20を第1の地点11から第2の地点13まで走行させるための走行ルートRを設定する。ルート設定部54は、記憶部56にあらかじめ記憶された車路10内において、走行ルートRを設定するよう構成されていてよい。
【0044】
なお、あらかじめ走行ルートRを不変に設定されている場合には、ルート設定部54が省略されていてもよい。
【0045】
車両制御情報設定部55は、所定時間ごとに、所定時間後の車両20の目標位置を設定する。例えば、車両制御情報設定部55は、マイクロコンピュータ等によるプログラムの実行により実現される機能であってよい。車両制御情報設定部55は、走行ルートRの情報、車両20の走行状態の情報及び車両20の周囲状況の情報に基づいて、所定時間後の車両20の目標位置を設定する。車両制御情報設定部55は、設定した目標位置の情報を、第2の通信部52を介して車両20に搭載された車両制御装置30に送信する。
【0046】
情報処理装置50は、監視装置5a~5jの検出情報に基づく所定時間後の車両20の目標位置の設定処理と、車両20の現在位置及び目標位置の情報の送信処理とを所定時間ごとに実行する。所定時間は、例えば1~5秒であってよい。
【0047】
(車両制御装置)
車両制御装置30は、通信部31、制御情報演算部32及びロボット制御部33を備える。車両制御装置30の一部又は全部は、例えば、マイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサユニット等で構成されていてもよく、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよい。また、車両制御装置30の一部又は全部は、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0048】
車両制御装置30は、一つの電子制御ユニットにより構成されていてもよく、互いに通信可能な複数の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。また、車両制御装置30は、RAMやROM等の図示しない記憶素子を備えていてもよい。
【0049】
通信部31は、車両制御装置30と情報処理装置50との間で通信を行うためのインタフェースである。車両制御装置30は、通信部31により、通信ネットワークを介して車両制御装置30から送信される信号を受信する。
【0050】
制御情報演算部32は、情報処理装置50から受信した信号が示す情報に基づいて、ロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量を設定する。例えば、制御情報演算部32は、マイクロコンピュータ等によるプログラムの実行により実現される機能であってよい。制御情報演算部32は、情報処理装置50から送信される車両20の現在位置及び目標位置の情報に基づいて、車両20の目標舵角及び目標加速度を設定する
【0051】
具体的に、制御情報演算部32は、所定時間後の車両20の目標位置と、車両20の現在の位置及び向きとに基づいて、車両20の目標舵角及び目標加速度を設定する。また、制御情報演算部32は、設定した車両20の目標舵角及び目標加速度の情報に基づいて、ロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量を設定する。
【0052】
ロボット制御部33は、制御情報演算部32により設定された各アクチュエータの目標操作量に基づいて各アクチュエータの動作を制御する。ロボット制御部33は、例えばマイクロコンピュータ及び駆動回路を備えて構成され、各アクチュエータの目標操作量にしたがって各アクチュエータの駆動回路を制御する。このとき、各アクチュエータの操作量の変化量(速度)には上限が設定され、車両20の急ハンドルや急加速が生じないようになっていてもよい。
【0053】
これにより、車両20は、車両20の外部の情報処理装置50によって制御され、車両20の安全性を確保しつつ、車両20を第1の地点11から第2の地点13まで走行させることができる。
【0054】
(情報処理装置及び車両制御装置の動作例)
次に、第1の構成例に係る情報処理装置50及び車両制御装置30の動作例を説明する。
【0055】
図4は、情報処理装置50の動作例を示すフローチャートである。情報処理装置50の検出情報処理部53は、第1の通信部51を介して、監視装置5a~5jから送信される検出情報を取得する(ステップS11)。
【0056】
次いで、検出情報処理部53は、取得した監視装置5a~5jの検出情報に基づいて、エリア内情報、車両20の走行状態の情報及び車両20の周囲状況の情報を算出する(ステップS13)。
【0057】
次いで、情報処理装置50のルート設定部54は、エリア内情報に基づいて、車両20を第1の地点11から第2の地点13まで走行させるための走行ルートRを設定する(ステップS15)。なお、あらかじめ走行ルートRを不変に設定されている場合には、ステップS15の処理が省略されていてもよい。
【0058】
次いで、情報処理装置50の車両制御情報設定部55は、走行ルートRの情報、車両20の走行状態の情報及び車両20の周囲状況の情報に基づいて、所定時間後の車両20の目標位置を設定する(ステップS17)。
【0059】
基本的に、車両制御情報設定部55は、車両20が走行ルートRに沿って、あらかじめ設定された加速度で移動するように所定時間後の車両20の目標位置を設定する。そのうえで、車両20の位置及び進行方向が走行ルートRから外れている場合に、車両制御情報設定部55は、車両20を走行ルートR上に戻すように車両20の目標位置を設定する。また、走行ルートR上に、人物や他の車両等の障害が存在する場合に、車両制御情報設定部55は、当該障害を回避するように車両20の目標位置を設定する。障害を回避することには、車両20を一時的に走行ルートRから外させることだけでなく、車両20を減速させたり停止させたりすることも含む。
【0060】
次いで、車両制御情報設定部55は、設定した車両20の目標位置の情報と、車両20の現在位置、向き及び進行方向の情報とを、第2の通信部52及び通信ネットワークを介して車両制御装置30に送信する(ステップS19)。
【0061】
情報処理装置50は、ステップS11~ステップS19までの各処理をあらかじめ設定した所定時間ごとに繰り返し実行する。所定時間は、情報処理装置50の処理速度を考慮しつつ、例えば0.3~1.0秒の範囲内に設定されてよい。
【0062】
図5は、車両制御装置30の動作例を示すフローチャートである。車両制御装置30の制御情報演算部32は、通信部31を介して、情報処理装置50から送信される車両20の所定時間後の目標位置の情報と、車両20の現在位置、向き及び進行方向の情報とを取得する(ステップS31)。
【0063】
次いで、制御情報演算部32は、受信した所定時間後の車両20の目標位置と、車両20の現在位置、向き及び進行方向の情報とに基づいて、車両20の目標舵角及び目標加速度を設定する(ステップS33)。
【0064】
次いで、制御情報演算部32は、設定した目標舵角及び目標加速度の情報に基づいて、ロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量を設定する(ステップS35)。具体的に、制御情報演算部32は、目標舵角の情報に基づいて、ステアリングホイール23を動作させる第1のアクチュエータ41の目標操作量を設定する。第1のアクチュエータ41がステッピングモータ等のモータである場合、目標操作量は、例えば回転角度である。
【0065】
また、制御情報演算部32は、目標加速度の情報に基づいて、アクセルペダル25を動作させる第2のアクチュエータ43、シフトレバー27を動作させる第3のアクチュエータ45及び図示しないブレーキペダルを動作させる第4のアクチュエータの目標操作量を設定する。第2のアクチュエータ43及び第4のアクチュエータがピストンを進退動させる構成のアクチュエータである場合、目標操作量は、例えばピストンのストローク量である。また、第3のアクチュエータ45が二軸ロボット装置21aのアームを回転動作させるモータである場合、目標操作量は、各モータの回転角度である。
【0066】
例えば、制御情報演算部32は、あらかじめ記憶されたエンジンの動作点及び変速機のシフト切換線のマップ情報を参照しつつ、目標加速度に基づいてアクセルペダル25又はブレーキペダルの目標踏込量及びシフトレバー27の目標位置を設定する。制御情報演算部32は、設定したアクセルペダル25又はブレーキペダルの目標踏込量及びシフトレバー27の目標位置に基づいて、第2のアクチュエータ43、第3のアクチュエータ45及び第4のアクチュエータの目標操作量を設定する。
【0067】
次いで、制御情報演算部32は、設定した各アクチュエータの目標操作量をロボット制御部33に送信する(ステップS37)。
【0068】
次いで、ロボット制御部33は、受信した各アクチュエータの目標操作量に基づいて、各アクチュエータの駆動回路の制御し、各アクチュエータを作動させる(ステップS39)。
【0069】
車両制御装置30は、ステップS31~ステップS39までの各処理をあらかじめ設定した所定時間ごとに繰り返し実行する。
【0070】
以上説明した第1の構成例によれば、車両20の外部に設置された情報処理装置50が、特定エリア内に設置された監視装置5の検出情報に基づいて所定時間後の車両20の目標位置を設定し、車両20の現在位置の情報とともに車両制御装置30に送信する。また、車両制御装置30は、受信した車両20の現在位置及び目標位置の情報に基づいて、車両20に設置されたロボット装置21の各アクチュエータの操作量を制御する。
【0071】
これにより、ステアリングホイール23、アクセルペダル25、ブレーキペダル及びシフトレバー27が各アクチュエータによって動作され、車両20の進行方向及び速度が調節される。したがって、自律運転技術が搭載されていない車両であっても、車両20の外部の情報処理装置50によって、車両20の安全性を確保しつつ、車両20を第1の地点11から第2の地点13まで走行させることができる。
【0072】
また、第1の構成例では、車両制御装置30は、ロボット装置21の各アクチュエータの駆動を制御することで足り、車両20の軌道の修正は、監視装置5a~5jの検出情報に基づいて情報処理装置50により行われる。このため、自律運転を可能にするソフトウェア又はハードウェアが搭載されていない車両20であっても、本実施形態に係る車両運転支援システム1を適用することができる。
【0073】
なお、第1の構成例では、情報処理装置50が、所定時間後の車両20の目標位置を設定し、車両制御装置30が、車両20に搭載されたロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量を設定する。このため、車両制御装置30が、車両20ごとのステアリング特性、エンジンの出力特性、ブレーキ特性及び変速特性の情報を持つことで、情報処理装置50は、これらの特性の異なる車両に対しても同じ制御情報を送信すれば足り、情報処理装置50の負荷を比較的小さくすることができる。
【0074】
(3-2.第2の構成例)
図6は、情報処理装置50及び車両制御装置30の第2の構成例を示すブロック図である。第2の構成例では、情報処理装置50は、所定時間後の車両20の目標位置の情報に基づいて車両20の目標舵角及び目標加速度を算出し、さらに当該目標舵角及び目標加速度の情報に基づいて算出されるロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量の情報を車両制御装置30に送信する。車両制御装置30は、受信した情報に基づいて、各アクチュエータを制御する。
【0075】
第2の構成例は、ロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量が、車両20の外部の情報処理装置50により設定される点において、第1の構成例とは異なる。以下、主として第1の構成例と異なる点を説明する。
【0076】
(情報処理装置)
情報処理装置50は、第1の構成例と同様に、第1の通信部51、第2の通信部52、検出情報処理部53、ルート設定部54、車両制御情報設定部57及び記憶部56を備える。第2の構成例において、第1の通信部51、第2の通信部52、検出情報処理部53、ルート設定部54及び記憶部56は、第1の構成例の情報処理装置50と同様に構成される。
【0077】
第2の構成例において、車両制御情報設定部57は、第1の構成例の車両制御情報設定部55と同様の手順で、所定時間後の車両20の目標位置を設定する。そして、車両制御情報設定部57は、第1の構成例の車両制御装置30の制御情報演算部32が行っていた手順に沿って、車両20の目標舵角及び目標加速度を設定するとともに、目標舵角及び目標加速度の情報に基づいて、ロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量を設定する。車両制御情報設定部57は、設定した各アクチュエータの目標操作量の情報を、第2の通信部52及び通信ネットワークを介して、車両制御装置30に送信する。
【0078】
(車両制御装置)
車両制御装置30は、通信部31及びロボット制御部33を備える。第2の構成例において、車両制御装置30は、第1の構成例の車両制御装置30の制御情報演算部32に相当する機能を備えていない。ロボット制御部33は、情報処理装置50から送信された各アクチュエータの目標操作量に基づいて各アクチュエータの動作を制御する。
【0079】
(情報処理装置及び車両制御装置の動作例)
次に、第2の構成例に係る情報処理装置50及び車両制御装置30の動作例を説明する。
【0080】
図7は、情報処理装置50の動作例を示すフローチャートである。情報処理装置50の検出情報処理部53、検出情報処理部53、ルート設定部54及び車両制御情報設定部57は、それぞれ図4に示したステップS11~ステップS17の処理を行い、所定時間後の車両20の目標位置を算出する。
【0081】
次いで、車両制御情報設定部57は、図5に示したステップS33の処理に沿って、所定時間後の車両20の目標位置と、車両20の現在位置、向き及び進行方向の情報とに基づいて、車両20の目標舵角及び目標加速度を設定する(ステップS21)。
【0082】
次いで、車両制御情報設定部57は、設定した目標舵角及び目標加速度の情報に基づいて、ロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量を設定する(ステップS23)。
【0083】
次いで、車両制御情報設定部57は、設定した各アクチュエータの目標操作量の情報を、第2の通信部52及び通信ネットワークを介して車両制御装置30に送信する(ステップS25)。
【0084】
情報処理装置50は、ステップS11~ステップS25までの各処理をあらかじめ設定した所定時間ごとに繰り返し実行する。
【0085】
図8は、車両制御装置30の動作例を示すフローチャートである。車両制御装置30の制御情報演算部32は、通信部31を介して、情報処理装置50から送信される各アクチュエータの目標操作量の情報を取得する(ステップS36)。
【0086】
次いで、ロボット制御部33は、受信した各アクチュエータの目標操作量に基づいて、各アクチュエータの駆動回路の制御し、各アクチュエータを作動させる(ステップS37)。
【0087】
車両制御装置30は、ステップS36~ステップS37までの各処理をあらかじめ設定した所定時間ごとに繰り返し実行する。
【0088】
以上説明した第2の構成例によれば、車両20の外部に設置された情報処理装置50が、特定エリア内に設置された監視装置5の検出情報に基づいて、車両20に搭載されたロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量を設定して車両制御装置30に送信する。また、車両制御装置30は、受信した目標操作量に基づいて、ロボット装置21の各アクチュエータの操作量を制御する。
【0089】
これにより、ステアリングホイール23、アクセルペダル25、ブレーキペダル及びシフトレバー27が各アクチュエータによって動作され、車両20の進行方向及び速度が調節される。したがって、自律運転技術が搭載されていない車両であっても、車両20の外部の情報処理装置50によって、車両20の安全性を確保しつつ、車両20を第1の地点11から第2の地点13まで走行させることができる。
【0090】
また、第2の構成例においても、車両制御装置30は、ロボット装置21の各アクチュエータの駆動を制御することで足り、車両20の軌道の修正は、監視装置5a~5jの検出情報に基づいて情報処理装置50により行われる。このため、自律運転を可能にするソフトウェア又はハードウェアが搭載されていない車両20であっても、本実施形態に係る車両運転支援システム1を適用することができる。
【0091】
なお、第2の構成例では、情報処理装置50が、車両20に搭載されたロボット装置21の各アクチュエータの目標操作量を設定し、車両制御装置30に送信する。このため、情報処理装置50は、制御対象の車両20のステアリング特性、エンジンの出力特性、ブレーキ特性及び変速特性の情報を記憶又は設定可能にすることで、これらの特性の異なる車両を制御することができる。したがって、車両20に対してロボット装置21を着脱可能にして、あらゆる車両20を車両20の外部から制御することができるようになる。この場合、車両20には、ロボット制御部33としての機能があれば足りるため、車両制御装置30の構成を簡素化することができる。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0093】
例えば、上記実施形態において、車両運転支援システム1は、車両20のステアリングホイール23、アクセルペダル25、ブレーキペダル及びシフトレバー27のすべてをロボット装置21により動作させるシステムであったが、本発明はかかる例に限定されない。車両運転支援システムは、車両20のステアリングホイール23、アクセルペダル25、ブレーキペダル及びシフトレバー27のうちの一部をロボット装置21により動作させるシステムであってもよい。
【0094】
例えば、車両20が、目標加速度に基づいてエンジンの燃料噴射量若しくは吸気量及び自動変速機の変速比を制御するソフトウェア及びハードウェアを備える場合、ロボット装置21が、アクセルペダル25を操作する第2のアクチュエータ及びシフトレバー27を操作する第3のアクチュエータを備えていなくてもよい。また、車両20が、目標加速度(目標減速度)に基づいて回生ブレーキ又は油圧式ブレーキシステムを制御するソフトウェア及びハードウェアを備える場合、ロボット装置21が、ブレーキペダルを操作する第4のアクチュエータを備えていなくてもよい。車両20が、目標舵角に基づいてステアリングホイール23の回転角度を調節する電動パワーステアリング装置を制御するソフトウェア及びハードウェアを備える場合、ロボット装置21が、ステアリングホイール23を操作する第1のアクチュエータを備えていなくてもよい。
【0095】
また、上記の実施形態は、第1の地点11と第2の地点13との間で車両20に搬送物をピストン輸送させる例であり、情報処理装置50は、監視装置5a~5jの検出情報に基づいて車両20の制御を行っていたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、運転支援システム1が構内物流システムに適用される場合、情報処理装置50は、さらに生産ラインの生産速度や出荷速度、出荷状況等の稼働状況の情報に基づいて車両20の目的地点、目標到達時間及び所定時間後の目標位置を設定し、ロボット装置21の制御に用いる情報を算出してもよい。
【0096】
また、情報処理装置50が複数の車両20の制御を行う場合、第1の車両の走行ルート内に障害物が一時的に現れたり、何らかの影響で目標到達時間に間に合わない状況になったりすると情報処理装置50が判断した場合、物流システムの出荷時期に遅れが生じないように、第2の車両あるいは第3の車両を制御してしてもよい。具体的には、走行ルート上に障害のない第2の車両の走行速度等の制御目標を変更したり、待機中の第3の車両の走行を開始させたりしてもよい。
【0097】
さらに、情報処理装置50は、繁忙期であるか否か等によって、運転の支援を行う車両20の台数や、それぞれの車両20の目標到達時間又は走行速度等を変えながら車両20の制御を行ってもよい。
【0098】
また、上記の実施形態において、車両運転支援システム1を適用した構内輸送システムは、車両20が二つの異なる第1の地点11と第2の地点13との間を行き来する例であったが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、車両運転支援システム1は、車両20を、一つ又は二つ以上の中間地点を経由しつつ、第1の地点から第2の地点まで移動させるシステムに適用されてもよい。この場合、情報処理装置50は、特定エリア内に設置された監視装置5の検出情報に基づいて、中間地点を経由する第1の地点から第2の地点までの走行ルートRを設定しつつ、ロボット装置21を利用した車両20の制御を行う。
【0099】
かかる車両運転支援システムは、例えば、空港やイベント会場での人輸送システム、あるいは、ごみ回収施設(特定エリア)内におけるごみ収集車両の自動運転システムに適用することができる。例えば、ごみ収集車両の自動運転システムにおいて、あらかじめ設定されたスタート地点で車両(ごみ収集車両)20の運転者が車両20から降りる一方、ロボット装置21を車両20に取り付けて制御を開始させる。かかる自動運転システムでは、車両20を、スタート地点から、ごみを下ろすピット及び洗車場を経由して、終点まで自動で走行させるように利用される。
【0100】
また、車両運転支援システムは、自動バレーパーキング(AVP)システムに適用されてもよい。この場合、情報処理装置50は、特定の駐車エリア内に設置された監視装置5の検出情報に基づいて空きスペース(駐車位置)を特定するとともに、車両20の受け渡し位置から駐車位置までの走行ルートRを設定しつつ、ロボット装置21を利用した車両20の制御を行う。車両20が駐車位置に到達するまでに当該駐車位置に他車両が駐車した場合、情報処理装置50は、目的とする駐車位置を変更して走行ルートRを再設定する。かかるシステムは、パーキングエリアだけでなく、レンタカー施設において車両20を受け渡し場所から空きスペースに移動させ、又は、空きスペースから受け渡し場所まで移動させるシステムとして利用される。このようにして、車両運転支援システム1は、車両20を、受け渡し場所と駐車位置との間を安全に移動させることができる。
【0101】
また、上記の実施形態では、情報処理装置50が1つの装置である例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。情報処理装置50が複数の装置を含み、上記した情報処理装置50の機能が複数の装置に分散されて備えられてもよい。例えば、車両運転支援システム1が自動バレーパーキングシステム(AVP)に適用される場合、上位システムのサーバ(第1の装置)が諸々の条件に応じて駐車位置を指定するとともに当該駐車位置までの走行ルートRを設定するルート設定部54の機能を備え、下位システムのサーバ(第2の装置)が上位システムから受信した走行ルートRにしたがって、監視装置5a~5jの検出情報に基づいて車両20の制御情報を設定し送信する車両制御情報設定部55の機能を備えてもよい。
【0102】
あるいは、情報処理装置50が第1の走行ルートを設定するルート設定部54を備えるとともに、上位システムのサーバから別の走行ルート(第2の走行ルート)の情報を受信してもよい。この場合、情報処理装置50のルート設定部54は、例えば、安全、距離又は時間のうちの少なくとも1つを考慮して、いずれかの走行ルートRを選択してもよい。
【符号の説明】
【0103】
1・・・車両運転支援システム、5・・・監視装置、9・・・基地局、20・・・車両、21・・・ロボット装置、23・・・ステアリングホイール、25・・・アクセルペダル、27・・・シフトレバー、30・・・車両制御装置、31・・・通信部、32・・・制御情報演算部、33・・・ロボット制御部、41・・・第1のアクチュエータ、43・・・第2のアクチュエータ、45・・・第3のアクチュエータ、50・・・情報処理装置、51・・・第1の通信部、52・・・第2の通信部、53・・・検出情報処理部、54・・・ルート設定部、55・・・車両制御情報設定部、56・・・記憶部、R・・・走行ルート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8