(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ワーク搬送装置
(51)【国際特許分類】
B21D 43/05 20060101AFI20221014BHJP
B21D 43/18 20060101ALI20221014BHJP
B21D 43/10 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B21D43/05 U
B21D43/18 Z
B21D43/10 Z
(21)【出願番号】P 2019151843
(22)【出願日】2019-08-22
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2019009475
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100861
【氏名又は名称】アイダエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】竹田 桂輔
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-216254(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010051947(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/05
B21D 43/18
B21D 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械に隣接して配置される基体と、
基端が前記基体に対して回転可能に支持される一対の第1アームと、
前記第1アームのそれぞれの先端に基端が回転可能に支持される一対の第2アームと、
前記第2アームのそれぞれの先端に回転可能に支持される互いに独立する一対の保持部と、
を含むワーク搬送装置であって、
前記保持部は、それぞれワークを保持する複数の保持部材を備え、
少なくとも一方の前記保持部は、
複数の前記保持部材を支持する第1支持部材と、
前記第2アームの先端に回転可能に支持されると共に、前記第1支持部材を支持する第2支持部材と、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に設けられる吸収部材と、
を含み、
前記第2支持部材は、前記ワークを搬送する搬送方向と交差する交差方向に沿って前記第1支持部材を移動可能に支持し、
前記吸収部材は、前記交差方向に生じる前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の移動を許容しかつ前記第1支持部材に対して前記第2支持部材を前記交差方向における初期位置に復帰可能であ
り、
前記吸収部材は、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間で圧縮可能な圧縮コイルスプリングからなる第1スプリングと第2スプリングとを含み、
前記第1スプリングは、前記第2支持部材が他方の前記保持部に近接移動することで圧縮し、前記第2支持部材を他方の前記保持部から離間移動するように復元し、
前記第2スプリングは、前記第2支持部材が他方の前記保持部から離間移動することで圧縮し、前記第2支持部材を他方の前記保持部に近接移動するように復元する、ワーク搬送装置。
【請求項2】
プレス機械に隣接して配置される基体と、
基端が前記基体に対して回転可能に支持される一対の第1アームと、
前記第1アームのそれぞれの先端に基端が回転可能に支持される一対の第2アームと、
前記第2アームのそれぞれの先端に回転可能に支持される互いに独立する一対の保持部と、
を含むワーク搬送装置であって、
前記保持部は、それぞれワークを保持する複数の保持部材を備え、
少なくとも一方の前記保持部は、
複数の前記保持部材を支持する第1支持部材と、
前記第2アームの先端に回転可能に支持されると共に、前記第1支持部材を支持する第2支持部材と、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に設けられる吸収部材と、
を含み、
前記第2支持部材は、前記ワークを搬送する搬送方向と交差する交差方向に沿って前記第1支持部材を移動可能に支持し、
前記吸収部材は、前記交差方向に生じる前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の移動を許容しかつ前記第1支持部材に対して前記第2支持部材を前記交差方向における初期位置に復帰可能であ
り、
前記吸収部材は、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間で圧縮可能な空圧シリンダからなる第1シリンダと第2シリンダとを含み、
前記第1シリンダは、前記第2支持部材が他方の前記保持部に近接移動することで圧縮し、前記第2支持部材を他方の前記保持部から離間移動するように復元し、
前記第2シリンダは、前記第2支持部材が他方の前記保持部から離間移動することで圧縮し、前記第2支持部材を他方の前記保持部に近接移動するように復元する、ワーク搬送装置。
【請求項3】
プレス機械に隣接して配置される基体と、
基端が前記基体に対して回転可能に支持される一対の第1アームと、
前記第1アームのそれぞれの先端に基端が回転可能に支持される一対の第2アームと、
前記第2アームのそれぞれの先端に回転可能に支持される互いに独立する一対の保持部と、
を含むワーク搬送装置であって、
前記保持部は、それぞれワークを保持する複数の保持部材を備え、
少なくとも一方の前記保持部は、
複数の前記保持部材を支持する第1支持部材と、
前記第2アームの先端に回転可能に支持されると共に、前記第1支持部材を支持する第2支持部材と、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に設けられる吸収部材と、
を含み、
前記第2支持部材は、前記ワークを搬送する搬送方向と交差する交差方向に沿って前記第1支持部材を移動可能に支持し、
前記吸収部材は、前記交差方向に生じる前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の移動を許容しかつ前記第1支持部材に対して前記第2支持部材を前記交差方向における初期位置に復帰可能であ
り、
前記吸収部材は、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間で互いに同極を対向して離間配置する磁石セットからなる第1磁石セットと第2磁石セットとを含み、
前記第1磁石セットは、前記第2支持部材が他方の前記保持部に近接移動して生ずる反発力で前記第2支持部材を他方の前記保持部から離間移動するように移動し、
前記第2磁石セットは、前記第2支持部材が他方の前記保持部から離間移動して生ずる反発力で前記第2支持部材を他方の前記保持部に近接移動するように移動する、ワーク搬送装置。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1項において、
一対の前記保持部の各々は、前記第1支持部材と前記第2支持部材とを備え、
一対の前記保持部の少なくとも一方は前記吸収部材を備え、
一対の前記保持部により一つの前記ワークが保持された状態で、一方の前記第1支持部材と他方の前記第1支持部材との第1間隔が維持されつつ、一方の前記第2支持部材と他方の前記第2支持部材との第2間隔が狭まるように前記吸収部材が変形可能であり、かつ、前記第1間隔が維持されつつ、狭まった状態の前記第2間隔を拡大するように前記吸収部材が変形可能である、ワーク搬送装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項において、
前記第1アームは、前記基体に対して第1回転軸を中心に回転し、
前記第2アームは、前記第1アームに対して第2回転軸を中心に回転し、
前記第2支持部材は、前記第2アームに対して第3回転軸を中心に回転し、
前記第1回転軸、前記第2回転軸及び前記第3回転軸は、互いに平行である、ワーク搬送装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項において、
前記第1支持部材は、案内部材を備え、
前記第2支持部材は、前記交差方向に沿って前記案内部材を摺動して案内する被案内部材を備える、ワーク搬送装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項において、
前記基体に固定される第1昇降駆動部と第2昇降駆動部とをさらに備え、
前記第1昇降駆動部は、一対の前記第1アームの一方を前記基体に対して昇降し、
前記第2昇降駆動部は、一対の前記第1アームの他方を前記基体に対して昇降する、ワーク搬送装置。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項において、
前記交差方向に生じる前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の移動及び初期位置への復帰は、前記ワークを前記保持部材が解放する解放位置で行う、ワーク搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械のワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス機械へのワークの搬入及びプレス機械からのワークの搬出を行うワーク搬送装置として、スカラロボットのユニットを2つ用いたワーク搬送装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1のワーク搬送装置は各スカラロボットの先端に保持部を備え、各保持部が2つのワークを保持してプレス機械に対しワークを搬送する。2つの保持部は互いにスライド可能に連結されている。そのため、一方のスカラロボットによるワークの搬送軌跡と他方のスカラロボットによるワークの搬送軌跡とがほぼ同じになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のワーク搬送装置は、2つの保持部で1つのワークを保持した場合、2つの保持部が互いに近接及び離間する方向に振れるため、ワークに歪が発生する恐れがある。この保持部の振れは、スカラロボットを構成するアームバーの関節部のギアにおけるバックラッシュと、アーム伸長動作時の減速に伴う慣性力により発生すると考えられる。
【0006】
そこで、本開示は、1つのワークを搬送する場合でもワークにおける歪の発生を抑制可能なワーク搬送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係るワーク搬送装置の一態様は、
プレス機械に隣接して配置される基体と、
基端が前記基体に対して回転可能に支持される一対の第1アームと、
前記第1アームのそれぞれの先端に基端が回転可能に支持される一対の第2アームと、
前記第2アームのそれぞれの先端に回転可能に支持される互いに独立する一対の保持部と、
を含むワーク搬送装置であって、
前記保持部は、それぞれワークを保持する複数の保持部材を備え、
少なくとも一方の前記保持部は、
複数の前記保持部材を支持する第1支持部材と、
前記第2アームの先端に回転可能に支持されると共に、前記第1支持部材を支持する第2支持部材と、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に設けられる吸収部材と、
を含み、
前記第2支持部材は、前記ワークを搬送する搬送方向と交差する交差方向に沿って前記第1支持部材を移動可能に支持し、
前記吸収部材は、前記交差方向に生じる前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の移動を許容しかつ前記第1支持部材に対して前記第2支持部材を前記交差方向における初期位置に復帰可能であり、
前記吸収部材は、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間で圧縮可能な圧縮コイルスプリングからなる第1スプリングと第2スプリングとを含み、
前記第1スプリングは、前記第2支持部材が他方の前記保持部に近接移動することで圧縮し、前記第2支持部材を他方の前記保持部から離間移動するように復元し、
前記第2スプリングは、前記第2支持部材が他方の前記保持部から離間移動することで圧縮し、前記第2支持部材を他方の前記保持部に近接移動するように復元することを特徴とする。
【0008】
前記ワーク搬送装置の一態様によれば、互いに独立する一対の保持部で1つのワークを搬送する場合でもワークにおける歪の発生を抑制できる。さらに、前記ワーク搬送装置の一態様によれば、圧縮コイルスプリングの圧縮と復元によって、互いに独立する一対の保持部で1つのワークを搬送する場合でもワークにおける歪の発生を抑制することができる。
[2]本発明に係るワーク搬送装置の他の一態様は、
プレス機械に隣接して配置される基体と、
基端が前記基体に対して回転可能に支持される一対の第1アームと、
前記第1アームのそれぞれの先端に基端が回転可能に支持される一対の第2アームと、
前記第2アームのそれぞれの先端に回転可能に支持される互いに独立する一対の保持部と、
を含むワーク搬送装置であって、
前記保持部は、それぞれワークを保持する複数の保持部材を備え、
少なくとも一方の前記保持部は、
複数の前記保持部材を支持する第1支持部材と、
前記第2アームの先端に回転可能に支持されると共に、前記第1支持部材を支持する第2支持部材と、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に設けられる吸収部材と、
を含み、
前記第2支持部材は、前記ワークを搬送する搬送方向と交差する交差方向に沿って前記第1支持部材を移動可能に支持し、
前記吸収部材は、前記交差方向に生じる前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の移動を許容しかつ前記第1支持部材に対して前記第2支持部材を前記交差方向における初期位置に復帰可能であり、
前記吸収部材は、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間で圧縮可能な空圧シリンダからなる第1シリンダと第2シリンダとを含み、
前記第1シリンダは、前記第2支持部材が他方の前記保持部に近接移動することで圧縮し、前記第2支持部材を他方の前記保持部から離間移動するように復元し、
前記第2シリンダは、前記第2支持部材が他方の前記保持部から離間移動することで圧縮し、前記第2支持部材を他方の前記保持部に近接移動するように復元することを特徴とする。
前記ワーク搬送装置の一態様によれば、互いに独立する一対の保持部で1つのワークを
搬送する場合でもワークにおける歪の発生を抑制できる。さらに、前記ワーク搬送装置の一態様によれば、空圧シリンダの圧縮と復元によって、互いに独立する一対の保持部で1つのワークを搬送する場合でもワークにおける歪の発生を抑制できる。
[3]本発明に係るワーク搬送装置の他の一態様は、
プレス機械に隣接して配置される基体と、
基端が前記基体に対して回転可能に支持される一対の第1アームと、
前記第1アームのそれぞれの先端に基端が回転可能に支持される一対の第2アームと、
前記第2アームのそれぞれの先端に回転可能に支持される互いに独立する一対の保持部と、
を含むワーク搬送装置であって、
前記保持部は、それぞれワークを保持する複数の保持部材を備え、
少なくとも一方の前記保持部は、
複数の前記保持部材を支持する第1支持部材と、
前記第2アームの先端に回転可能に支持されると共に、前記第1支持部材を支持する第2支持部材と、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に設けられる吸収部材と、
を含み、
前記第2支持部材は、前記ワークを搬送する搬送方向と交差する交差方向に沿って前記第1支持部材を移動可能に支持し、
前記吸収部材は、前記交差方向に生じる前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の移動を許容しかつ前記第1支持部材に対して前記第2支持部材を前記交差方向における初期位置に復帰可能であり、
前記吸収部材は、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間で互いに同極を対向して離間配置する磁石セットからなる第1磁石セットと第2磁石セットとを含み、
前記第1磁石セットは、前記第2支持部材が他方の前記保持部に近接移動して生ずる反発力で前記第2支持部材を他方の前記保持部から離間移動するように移動し、
前記第2磁石セットは、前記第2支持部材が他方の前記保持部から離間移動して生ずる反発力で前記第2支持部材を他方の前記保持部に近接移動するように移動することを特徴とする。
前記ワーク搬送装置の一態様によれば、互いに独立する一対の保持部で1つのワークを搬送する場合でもワークにおける歪の発生を抑制できる。さらに、前記ワーク搬送装置の一態様によれば、磁石セットの反発力による間隔調整によって、互いに独立する一対の保持部で1つのワークを搬送する場合でもワークにおける歪の発生を抑制できる。
【0009】
[4]前記ワーク搬送装置の一態様において、
一対の前記保持部の各々は、前記第1支持部材と前記第2支持部材とを備え、
一対の前記保持部の少なくとも一方は前記吸収部材を備え、
一対の前記保持部により一つの前記ワークが保持された状態で、一方の前記第1支持部材と他方の前記第1支持部材との第1間隔が維持されつつ、一方の前記第2支持部材と他方の前記第2支持部材との第2間隔が狭まるように前記吸収部材が変形可能であり、かつ、前記第1間隔が維持されつつ、狭まった状態の前記第2間隔を拡大するように前記吸収部材が変形可能であることができる。
【0010】
前記ワーク搬送装置の一態様によれば、第1間隔を維持しつつ第2間隔を調整可能とすることにより、互いに独立する一対の保持部で1つのワークを搬送する場合でもワークにおける歪の発生を抑制することができる。
【0017】
[5]前記ワーク搬送装置の一態様において、
前記第1アームは、前記基体に対して第1回転軸を中心に回転し、
前記第2アームは、前記第1アームに対して第2回転軸を中心に回転し、
前記第2支持部材は、前記第2アームに対して第3回転軸を中心に回転し、
前記第1回転軸、前記第2回転軸及び前記第3回転軸は、互いに平行であってもよい。
【0018】
前記ワーク搬送装置の一態様によれば、減速によって第1アーム等の各部に生じる慣性力と回転動作に用いるギアにおけるバックラッシュとによってワークに生じる歪を抑制できる。
【0019】
[6]前記ワーク搬送装置の一態様において、
前記第1支持部材は、案内部材を備え、
前記第2支持部材は、前記交差方向に沿って前記被案内部材を摺動して案内する被案内部材を備えることができる。
【0020】
前記ワーク搬送装置の一態様によれば、第1支持部材に対して第2支持部材を案内することによって、交差方向に生じる第2支持部材の変位を第1支持部材に伝えることを防止できる。
【0021】
[7]前記ワーク搬送装置の一態様において、
前記基体に固定される第1昇降駆動部と第2昇降駆動部とをさらに備え、
前記第1昇降駆動部は、一対の前記第1アームの一方を前記基体に対して昇降し、
前記第2昇降駆動部は、一対の前記第1アームの他方を前記基体に対して昇降することができる。
【0022】
前記ワーク搬送装置の一態様によれば、第1昇降駆動部及び第2昇降駆動部により各保持部を独立して昇降動作することによって、ワークの搬送軌跡の設定における自由度を向上できる。
【0023】
[8]前記ワーク搬送装置の一態様において、
前記交差方向に生じる前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の移動及び初期位置への復帰は、前記ワークを前記保持部材が解放する解放位置で行うことができる。
【0024】
前記ワーク搬送装置の一態様によれば、ワークに最も慣性力による歪が発生しやすい解放位置においてワークの歪の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るワーク搬送装置によれば、一対の保持部で1つのワークを搬送する場合でもワークにおける歪の発生を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態に係るワーク搬送装置の全体を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るワーク搬送装置の側面図である。
【
図3】本実施形態に係るワーク搬送装置の正面図である。
【
図4】本実施形態に係るワーク搬送装置の平面図である。
【
図5】本実施形態に係るワーク搬送装置の吸収部材の拡大斜視図である。
【
図6】本実施形態に係るワーク搬送装置の吸収部材の平面図である。
【
図7】本実施形態に係る吸収部材の動作を説明する平面図である。
【
図8】本実施形態に係る吸収部材の動作を説明する平面図である。
【
図9】本実施形態に係るワーク搬送装置の吸収部材の拡大斜視図である。
【
図10】変形例1に係るワーク搬送装置の吸収部材の正面図である。
【
図11】変形例1に係るワーク搬送装置の吸収部材の平面図である。
【
図12】変形例2に係るワーク搬送装置の吸収部材の平面図である。
【
図13】変形例3に係るワーク搬送装置における第1保持部の正面図である。
【
図14】変形例3に係るワーク搬送装置における第1保持部の平面図である。
【
図15】変形例3に係る吸収部材の動作を説明する正面図である。
【
図16】変形例3に係る吸収部材の動作を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0030】
本実施形態に係るワーク搬送装置は、プレス機械に隣接して配置される基体と、基端が前記基体に対して回転可能に支持される一対の第1アームと、前記第1アームのそれぞれの先端に基端が回転可能に支持される一対の第2アームと、前記第2アームのそれぞれの先端に回転可能に支持される互いに独立する一対の保持部と、を含むワーク搬送装置であって、前記保持部は、それぞれワークを保持する複数の保持部材を備え、少なくとも一方の前記保持部は、複数の前記保持部材を支持する第1支持部材と、前記第2アームの先端に回転可能に支持されると共に、前記第1支持部材を支持する第2支持部材と、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に設けられる吸収部材と、を含み、前記第2支持部材は、前記ワークを搬送する搬送方向と交差する交差方向に沿って前記第1支持部材を移動可能に支持し、前記吸収部材は、前記交差方向に生じる前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の移動を許容しかつ前記第1支持部材に対して前記第2支持部材を前記交差方向における初期位置に復帰可能であることを特徴とする。
【0031】
1.ワーク搬送装置の概要
図1~
図4を用いて、本実施形態に係るワーク搬送装置1の概要について説明する。図
1は本実施形態に係るワーク搬送装置1の全体を示す斜視図であり、
図2はワーク搬送装置1の側面図であり、
図3はワーク搬送装置1の正面図であり、
図4はワーク搬送装置1の平面図である。
【0032】
図1~
図4に示すように、ワーク搬送装置1は、プレス機械へのワークWの搬入及びプレス機械からのワークWの搬出を行う。本実施形態では、ワーク搬送装置1を2台のプレス機械の間に配置した例について説明するが、プレス加工前の材料をプレス機械に搬入するために材料とプレス機械との間に搬入装置としてワーク搬送装置1を配置してもよいし、プレス加工後の製品を取り出すための製品取出装置としてワーク搬送装置1を配置してもよい。なお、
図1~
図4では、プレス機械を下型5a及び下型5bだけで示し、プレス機械の本体の図示は省略した。
【0033】
ワーク搬送装置1は、ワークWを上流側の下型5a上から下流側の下型5b上へ向かって搬送方向Dに沿って搬送する。搬送方向Dは、
図4で示すようにワーク搬送装置1によってワークWが昇降する高さ範囲内の任意の高さの水平面内にあって、ワーク搬送装置1がワークWを受け取る第1位置P1における中間位置MP1と、ワークWを解放する第5位置P5における中間位置MP2とを結ぶ仮想直線上の方向である。中間位置MP1は、第1位置P1における第1保持部21と第2保持部22との中点である。中間位置MP2は、第1保持部21と第2保持部22との中点である。したがって、搬送方向Dは、ワークWの実際の搬送軌跡を示すものではなくてもよい。
【0034】
ワーク搬送装置1は、プレス機械に隣接して配置される基体2と、一対のアームユニットである第1ユニット3及び第2ユニット4と、を備える。
【0035】
ワーク搬送装置1は、第1ユニット3及び第2ユニット4の動作を制御する制御装置8を備える。制御装置8は、例えば制御プログラムなどを保存する記憶部と、各部のセンサの情報を受けて制御プログラムに基づいて各種演算を行う演算部と、演算結果に基づいて各駆動部に指令を出力する制御部と、を備える。制御装置8は、CPU,RAM,ROM等を備え、表示装置や入力装置をさらに備えてもよい。
【0036】
基体2は、上流側のプレス機械の下型5a及び下流側のプレス機械の下型5bに隣接して配置される。基体2は、例えば、プレス機械と同じ床面上に立設する図示しない脚部に固定されて所定高さに配置される。また、基体2は、隣接するプレス機械に固定されてもよい。
【0037】
第1ユニット3は、基体2の側面に第1昇降駆動部41を介して基体2に対して昇降自在に設けられる。第2ユニット4は、基体2の側面に第2昇降駆動部42を介して基体2に対して昇降自在に設けられる。第2ユニット4は、第1ユニット3と基本的に同じ構造であり、第1ユニット3と第2ユニット4との中間位置に鉛直方向に延びる平面に関して第1ユニット3と面対称となる。
【0038】
第1ユニット3及び第2ユニット4は、基端が基体2に対して回転可能に支持される一対の第1アーム11,11と、第1アーム11,11のそれぞれの先端に基端が回転可能に支持される一対の第2アーム12,12と、第2アーム12,12のそれぞれの先端に回転可能に支持される互いに独立する一対の保持部である第1保持部21及び第2保持部22と、を含む。第1保持部21と第2保持部22とは互いに独立しており、すなわち第1保持部21と第2保持部22とが直接連結されていないため、第1ユニット3及び第2ユニット4のうちの一方の動作が、他方の動作によって物理的に律せられることなく、ワークWの搬送軌跡を設定することが可能である。
【0039】
第1保持部21及び第2保持部22によって1つのワークWを保持した状態で、少なくとも一方の保持部例えば第1保持部21は、他方の保持部例えば第2保持部22を近接及び離間する方向に移動可能である。そして、一方の保持部例えば第1保持部21は、当該近接及び離間する方向における初期位置に他方の保持部例えば第2保持部22を復帰可能である。このように構成することにより、ワーク搬送装置1によれば、互いに独立する第1保持部21及び第2保持部22で1つのワークWを搬送する場合でもワークWにおける歪の発生を抑制することができる。
【0040】
図4に示すように、ワーク搬送装置1は、下型5a上の第1位置P1で上流側のプレス機械からワークWを受け取り、第1ユニット3及び第2ユニット4を互いに外側に屈曲させることで第2位置P2、第3位置P3及び第4位置P4を経て下型5bの第5位置P5で下流側のプレス機械にワークWを解放する。
【0041】
1.1.昇降駆動部
図1~
図4に示すように、第1昇降駆動部41及び第2昇降駆動部42は、基体2に固定される。第1昇降駆動部41は、第1ユニット3の第1アーム11を基体2に対して昇降し、第2昇降駆動部42は、第2ユニット4の第1アーム11を基体2に対して昇降する。第1昇降駆動部41と第2昇降駆動部42とは基本的な構成な同じであるので、ここでは第2昇降駆動部42について説明する。
【0042】
第2昇降駆動部42は、基体2に固定された電動モーターによってねじ軸を回転するボールねじ機構を含む。電動モーターの鉛直下方へ延びるねじ軸はボールを有するナット部と螺合する。ねじ軸は電動モーターにより回転し、ナット部がねじ軸に沿って上下方向に直線運動する。ナット部は昇降体45の側面に固定される。昇降体45は、第1アーム11の基端から上方へ延びる横断面が四角形の筒状フレームである。昇降体45の他の側面には一対のレール44,44が鉛直方向に延びて設けられる。基体2の側面にはレール44に摺動案内されるガイド43が固定される。
【0043】
第2昇降駆動部42の電動モーターを駆動するとねじ軸が回転してナット部を上下方向に移動させ、昇降体45のレール44が基体2に固定されたガイド43に対して摺動して昇降体45が基体2に対して昇降する。
【0044】
ワーク搬送装置1は、第1昇降駆動部41及び第2昇降駆動部42により各保持部を独立して昇降動作することができるため、ワークWの搬送軌跡の設定における自由度を向上することができる。各保持部を独立して昇降動作可能とは、たとえば第1昇降駆動部41及び第2昇降駆動部42のうちの一方の動作が、他方の動作によって物理的に律せられることなく、各保持部の昇降動作を設定することが可能ということである。
【0045】
第1昇降駆動部41及び第2昇降駆動部42は、基体2に対して昇降体45を昇降するものであれば他の駆動機構を採用することができ、例えば、ラック・アンド・ピニオン、ベルト駆動など公知の直動機構を採用することができる。
【0046】
1.2.アームユニット
図1~
図4に示すように、第1ユニット3は、第1アーム11と、第2アーム12と、第1保持部21と、を含む。第1アーム11は、基端が第1昇降駆動部41の昇降体45の下端において基体2に対して回転可能に支持される。第2アーム12は、第1アーム11の先端部分の下面に基端が回転可能に支持される。第1保持部21は、第2アーム12の先端部分の下面に回転可能に支持される。
【0047】
第2ユニット4は、第1アーム11と、第2アーム12と、第2保持部22と、を含む
。第1アーム11は、基端が第2昇降駆動部42の昇降体45の下端で基体2に対して回転可能に支持される。第2アーム12は、第1アーム11の先端部分の下面に基端が回転可能に支持される。第2保持部22は、第2アーム12の先端部分の下面に回転可能に支持される。
【0048】
昇降体45の下端には第1モーター51が固定され、第1モーター51の駆動により昇降体45(基体2)に対して第1アーム11が第1回転軸O1を中心に回転する。第1モーター51は、電動モーターである。第1回転軸O1は、昇降体45の中心を鉛直方向に延びる。第1モーター51の駆動力は、図示しない複数のギアを介して第1アーム11に伝わる。
【0049】
第1アーム11の先端部分の内部には第2モーター52が備えられ、第2モーター52の駆動により第1アーム11に対して第2アーム12が第2回転軸O2を中心に回転する。第2モーター52は電動モーターである。第2回転軸O2は、第1アーム11の先端と第2アーム12の基端とが上下に重なり合う領域で鉛直方向に延びる。第2モーター52の駆動力は、図示しない複数のギアを介して第2アーム12に伝わる。
【0050】
第2アーム12の先端部分の内部には第3モーター53が備えられ、第3モーター53の駆動により第2アーム12に対して第1保持部21または第2保持部22が第3回転軸O3を中心に回転する。第3モーター53は電動モーターである。第3回転軸O3は、第2アーム12の先端と第1保持部21の中心または第2保持部22の中心とが上下に重なり合う部分で鉛直方向に延びる。第1保持部21の中心は、第1保持部21の搬送方向Dにおける幅の中心であって、搬送方向Dに直交する直交方向D1における第1保持部21の長さの中心である。直交方向D1における第1保持部21の長さはワーク搬送装置1を平面視した状態における第1保持部21の長さである。第2保持部22の中心も、第1保持部21の中心と同様に、第2保持部22の搬送方向Dの幅の中心であってかつ直交方向D1の長さの中心である。第3モーター53の駆動力は、複数の図示しないギアを介して第1保持部21または第2保持部22に伝わる。直交方向D1は、搬送方向Dを含む水平面内にあるものとする。
【0051】
第1回転軸O1、第2回転軸O2及び第3回転軸O3は、それぞれ互いに平行である。ワークWの搬送速度を減速させることによって第1アーム11及び第2アーム12等に生じる慣性力が第1保持部21と第2保持部22とを近接させるように働くことで、ワークWに対して歪を生じさせる力になる。また、各回転軸における回転動作のために第1ユニット3及び第2ユニット4における各部には複数のギアが設けられており、これらのギアの回転停止動作におけるバックラッシュが第1保持部21と第2保持部22とを近接させるように働くことで、ワークWに対して歪を生じさせる力になる。このように、当該慣性力及びバックラッシュは、第1ユニット3及び第2ユニット4が伸びる位置、すなわち第5位置P5のワークWを解放する位置において搬送方向Dと交差する方向(本実施形態の各回転軸の方向によれば直交方向D1)に第1保持部21及び第2保持部22が移動する力を生じさせる。この力は、移動を停止した第2アーム12に対して第1保持部21と第2保持部22とが互いに近づこうとする力となる。以下で説明する第1保持部21及び/または第2保持部22の機構を備えることによって、当該慣性力及びバックラッシュによって生じるワークに対する歪を抑制することができる。また、上記説明ではワークWの搬送速度を減速してから停止するまでの間にワークWに生じる歪を問題としたが、これに限らず、ワークWが停止した状態から搬送速度を加速する際にワークWに生じる歪に対しても効果を有することが好ましい。
【0052】
1.3.保持部
図1~
図6を用いて保持部である第1保持部21及び第2保持部22について説明する
。
図5は、
図4におけるA-A断面図であって本実施形態に係るワーク搬送装置1の吸収部材30の拡大斜視図であり、
図6は
図3におけるB-B断面図であって吸収部材30の拡大平面図である。
【0053】
図1~
図6に示すように、第1保持部21及び第2保持部22は、それぞれワークWを保持する複数の保持部材23を備える。保持部材23は、ワークWを保持するための物であって、例えばバキュームカップのようなエア吸引による吸着構造や磁気による磁着構造を採用することができ、吸着構造以外の例えばワークWを掴むクランプ機構やワークWを吊り下げるフックなどを採用することができる。図示の例では保持部材23を各保持部に4か所設けているが、ワークWを安定的に保持できれば保持部材23の数はこれに限るものではない。
【0054】
少なくとも一方の保持部、例えば第1保持部21は、複数の保持部材23を支持する第1支持部材24と、第2アーム12の先端に回転可能に支持されると共に、第1支持部材24を支持する第2支持部材26と、第1支持部材24と第2支持部材26との間に設けられる吸収部材30と、を含む。第1支持部材24及び第2支持部材26は、金属製である。吸収部材30は、
図5に示す。
【0055】
第1保持部21及び第2保持部22の各々が、第1支持部材24と第2支持部材26とを備え、第1保持部21及び第2保持部22の少なくとも一方が吸収部材30を備えていてもよい。第1保持部21及び第2保持部22のいずれか一方が吸収部材30を備えていれば第1保持部21及び第2保持部22との間隔が狭くなったとしてもワークWにおける歪の発生を抑制できる。本実施形態のように第1保持部21及び第2保持部22のいずれもが吸収部材30を備えていてもよい。
【0056】
第2支持部材26は、ワークWを搬送する搬送方向Dと交差する交差方向に沿って第1支持部材24を移動可能に支持する。交差方向は、本実施形態では直交方向D1である。交差方向は、上述した慣性力及びバックラッシュによるワークWに対する歪を抑制することができれば直交方向D1以外の方向であってもよい。例えば、ワークWの形状によっては第1支持部材24の長手方向が直交方向D1と一致しない場合も想定されるが、第1支持部材24の交差方向に沿った移動によって直交方向D1における歪を抑制できればよい。第2支持部材26が第1支持部材24を交差方向に移動可能に支持することで、一対の保持部で1つのワークWを搬送する場合でもワークWにおける歪の発生を抑制することができる。
【0057】
第1支持部材24は、直交方向D1に沿って延びる取付ロッド240と、2本の取付ロッド240を一体に固定する第1ブロック242と、を備える。第1ブロック242には直交方向D1に沿って貫通する貫通孔244が形成される。取付ロッド240は搬送方向Dに平行に2本並んで配置される。第1ブロック242は、直交方向D1に間隔をあけて2つ配置される。貫通孔244は、吸収部材30の配置に合わせて2つの第1ブロック242の内の一方にのみ形成される。
【0058】
第2支持部材26は、直交方向D1に沿って延びるクロスバー260と、クロスバー260の両端から下方に向かって突出するように固定された2つの第2ブロック262と、を備える。クロスバー260は、直交方向D1における中心付近で第3回転軸O3の周りに回転可能に第2アーム12の先端に支持される。クロスバー260は、第4モーター54を備えており、クロスバー260が第4回転軸O4を中心に回転する。第4モーター54の駆動により、第1支持部材24及び保持部材23をチルト駆動することで、ワークWを第2アーム12に対して傾けることができる。第2ブロック262は、直交方向D1で第1ブロック242を跨ぐように形成される。
【0059】
第1支持部材24は、案内部材34を備える。第2支持部材26は、交差方向例えば直交方向D1に沿って案内部材34を摺動して案内する被案内部材35を備える。被案内部材35は、第1ブロック242を跨ぐ第2ブロック262の対向する内面を繋ぐリニアシャフトであることができ、案内部材34は第1ブロック242を直交方向D1に貫通するリニアブッシュであることができる。第2支持部材26が直交方向D1に移動すると、リニアシャフトがリニアブッシュに案内されて交差方向に沿った第1支持部材24の移動を許容する。第1支持部材24に対して第2支持部材26を摺動して案内することによって、交差方向に生じる第2支持部材26の変位を第1支持部材24及びワークWに伝えることを防止できる。
【0060】
案内部材34及び被案内部材35は、交差方向例えば直交方向D1に沿って第2支持部材26を案内することができれば他の公知の直動機構を採用することができ、例えばリニアガイドなどでもよい。
【0061】
1.3.1.吸収部材
図5~
図9を用いて、吸収部材30について詳細に説明する。
図7及び
図8は吸収部材30の動作を説明する平面図であり、
図9は本実施形態に係るワーク搬送装置1の吸収部材30の拡大斜視図である。
図7及び
図8は、第1保持部21及び第2保持部22の各吸収部材30の状態を一点鎖線の円の中に拡大して示す。
【0062】
図5~
図9に示すように、吸収部材30は、交差方向例えば直交方向D1に生じる第1支持部材24に対する第2支持部材26の移動を許容しかつ第1支持部材24に対して第2支持部材26を交差方向における初期位置に復帰可能である。初期位置は、交差方向において第1支持部材24に対して第2支持部材26が移動する前の位置である。また、初期位置は、吸収部材30に実質的に負荷が生じていないニュートラルな位置である。なお、初期位置における例えば第1支持部材24のわずかなずれに対しても第1支持部材24を移動させるために、初期位置において吸収部材30にわずかに負荷を生じさせておくこともできる。
【0063】
交差方向に生じる第1支持部材24に対する第2支持部材26の移動及び初期位置への復帰は、ワークWを保持部材23が解放する解放位置である第5位置P5(
図4)で行うことができる。保持部材23がワークWを保持した状態でもワークWに影響なく第1支持部材24に対して第2支持部材26が近接移動できるため、ワークWに対して最も慣性力及びバックラッシュによる歪が発生しやすい解放位置においてワークWの歪の発生を抑制することができる。また、解放位置において保持部材23がワークWを解放すると、吸収部材30が第1支持部材24及び第2支持部材26を初期位置へ復帰させる。第1支持部材24と第2支持部材26との位置が初期位置にあれば、次に搬送するワークWの所望の箇所に保持部材23が接触できる。
【0064】
図7及び
図8に示すように、第1保持部21及び第2保持部22により一つのワークWが保持された状態で、第1間隔L1が維持されつつ、第2間隔L2が狭まるように吸収部材30が変形可能であり、かつ、第1間隔L1が維持されつつ、狭まった状態の第2間隔L2を拡大するように吸収部材30が変形可能である。第1間隔L1は、第1保持部21の第1支持部材24と第2保持部22の第1支持部材24との間隔であり、第2間隔L2は、第1保持部21の第2支持部材26と第2保持部22の第2支持部材26との間隔である。第1間隔L1及び第2間隔L2の定義は、当然ではあるが、第1保持部21及び第2保持部22は第3回転軸O3を中心に回転していない初期状態にあることを前提とする。吸収部材30の変形とは、吸収部材30の交差方向における全長が変化することを言い、後述する変形例1のシリンダであればピストンロッドがシリンダ内に押し込まれる変形
や変形例2の磁石セットであれば磁石間の間隔が狭まる変形も含まれる。第1間隔L1を維持しつつ第2間隔L2を調整可能とすることにより、互いに独立する一対の保持部で1つのワークWを搬送する場合でもワークWにおける歪の発生を抑制できる。
【0065】
吸収部材30は、第1支持部材24と第2支持部材26との間で圧縮可能な圧縮コイルスプリングからなる第1スプリング31と第2スプリング32とを含む。第1スプリング31は、直交方向D1で第1ブロック242を挟んで第2スプリング32と対向して設けられる。第1スプリング31は、第2支持部材26が他方の保持部である第2保持部22に近接移動することで圧縮し、第2支持部材26を第2保持部22から離間移動するように復元する。また、第2スプリング32は、第2支持部材26が第2保持部22から離間移動することで圧縮し、第2支持部材26を第2保持部22に近接移動するように復元することができる。圧縮コイルスプリングの圧縮と復元によって、互いに独立する一対の保持部で1つのワークWを搬送する場合でもワークWにおける歪の発生を抑制できる。
【0066】
第1スプリング31は、第2ブロック262の内面から直交方向D1に沿って第1ブロック242に向かって延びる鍔付きカラー264の周囲に巻かれるようにして配置される。鍔付きカラー264は、柱状体の自由端に当該柱状体部分よりも大きな外径を有する鍔部が一体に設けられる。第1スプリング31の一端は第2ブロック262の内面に接触し、他端は鍔付きカラー264の先端の鍔に押し付けられたワッシャ266に接触する。第2スプリング32も同様に鍔付きカラー264の周りに取り付けられる。
【0067】
図5及び
図6に示すように、第1ブロック242の貫通孔244は、鍔付きカラー264の鍔が挿通可能であり、かつ、ワッシャ266が挿通不可能である。そのため、
図7の第2支持部材26が初期位置にある状態から、
図8のように第1保持部21の第2支持部材26が第2保持部22に向かって(
図8の下方向に)移動すると、鍔付きカラー264は
図9に拡大して示す状態になる。
図9に示すように、第2スプリング32は第2ブロック262の移動に伴いワッシャ266に押しつけられて圧縮し、第2スプリング32が取り付けられた鍔付きカラー264が貫通孔244に入り込む。そのため、保持部材23がワークWを解放すると、第2スプリング32が元の長さに戻ろうとする復元力がワッシャ266と第2ブロック262との間に作用して、第2支持部材26を第2保持部22から離れるように移動する。反対側には第1スプリング31があるので、第2支持部材26は徐々に初期位置に戻る。なお、第1スプリング31及び第2スプリング32の取付構造はこれに限るものではない。
【0068】
2.変形例1
図10及び
図11を用いてワーク搬送装置1の変形例1について説明する。
図10は変形例1に係るワーク搬送装置1における第1保持部21の吸収部材30aの正面図であり、
図11は変形例1に係るワーク搬送装置1における第1保持部21の吸収部材30aの平面図である。
図10及び
図11のワーク搬送装置1は、吸収部材30aの構成を除き、上記実施形態に係るワーク搬送装置1と基本的に同じである。そこで、上記実施形態と同じ部材については同じ符号を用いて説明し、重複する説明を省略する。
【0069】
図10及び
図11に示すように、第1保持部21の吸収部材30aは、第1支持部材24と第2支持部材26との間で圧縮可能な空圧シリンダからなる第1シリンダ301と第2シリンダ302とを含む。ここで「第1支持部材24と第2支持部材26との間で圧縮可能」とは、第1支持部材24と第2支持部材26との間における両者の相対的な移動により圧縮可能な状態であるということである。したがって、
図10及び
図11のように第1支持部材24と第2支持部材26との直交方向D1に沿った間隔が変化することにより第1シリンダ301または第2シリンダ302が圧縮するようにしてもよいし、第1支持部材24と第2支持部材26との間に空圧シリンダが挟まれる配置としてもよい。
図10
及び
図11は、第2支持部材26が第1支持部材24に対して初期位置にある状態を示す。
【0070】
第1シリンダ301及び第2シリンダ302については、それぞれのピストンロッドが第2ブロック262に貫通するように、それぞれのシリンダチューブが第2ブロック262に対して固定される。第1ブロック242に
図6で示したような貫通孔244は形成されておらず、第1シリンダ301のピストンロッドの先端は第1ブロック242の側面に接触し、第2シリンダ302のピストンロッドの先端は第1ブロック242の反対側の側面に接触する。第1シリンダ301及び第2シリンダ302の内部には圧縮空気が送り込まれており、それぞれのピストンロッドを第1ブロック242側へ常に付勢する。
【0071】
第1シリンダ301は、第2支持部材26が他方の保持部である第2保持部22に近接移動することで圧縮し、第2支持部材26を第2保持部22から離間移動するように復元する。第2シリンダ302は、第2支持部材26が第2保持部22から離間移動することで圧縮し、第2支持部材26を第2保持部22に近接移動するように復元する。空圧シリンダの圧縮と復元によって、互いに独立する一対の保持部で1つのワークWを搬送する場合でもワークWにおける歪の発生を抑制することができる。
【0072】
第1保持部21の吸収部材30aについて説明したが、第2保持部22にも同様の吸収部材30aを備えていてもよい。
【0073】
また、ワークWの搬送途中で第1シリンダ301と第2シリンダ302とに対する圧縮空気の供給及び排出を制御してもよい。例えば、
図4の第1位置P1で保持部材23がワークWを受け取るときは、第1シリンダ301及び第2シリンダ302の各ピストンを前進させて初期位置を維持し、その後、保持部材23がワークWを吸着したら第1シリンダ301及び第2シリンダ302の各ピストンへの圧縮空気を脱気または各ピストンを後退させて第1ブロック242に対する第2ブロック262の移動を許容し、さらに第
5位置P
5で保持部材23がワークWを解放したら第1シリンダ301及び第2シリンダ302の各ピストンを前進させて初期位置に復帰させるように制御してもよい。
【0074】
3.変形例2
図12を用いてワーク搬送装置1の変形例2について説明する。
図12は、変形例2に係るワーク搬送装置1における第1保持部21の吸収部材30bの平面図である。
図12のワーク搬送装置1は、吸収部材30bの構成を除き、上記実施形態に係るワーク搬送装置1と基本的に同じである。そこで、上記実施形態と同じ部材については同じ符号を用いて説明し、重複する説明を省略する。
【0075】
図12に示すように、第1保持部21の吸収部材30bは、第1支持部材24と第2支持部材26との間で互いに同極を対向して離間配置する磁石セットからなる第1磁石セット311と第2磁石セット312とを含む。第1磁石セット311は、互いに離して配置された磁石311aと磁石311bとからなり、磁石311aと磁石311bとは互いに同極が向かい合うように配置される。第2磁石セット312は、互いに離して配置された磁石312aと磁石312bとからなり、磁石312aと磁石312bとは互いに同極が向かい合うように配置される。
【0076】
第1磁石セット311は、第2支持部材26が他方の保持部である第2保持部22に近接移動して生ずる反発力で第2支持部材26を他方の保持部から離間移動するように移動する。第2磁石セット312は、第2支持部材26が他方の保持部である第2保持部22から離間移動して生ずる反発力で第2支持部材26を他方の保持部に近接移動するように移動することができる。磁石セットの反発による間隔調整によって、互いに独立する一対
の保持部で1つのワークWを搬送する場合でもワークWにおける歪の発生を抑制することができる。
【0077】
第1保持部21の吸収部材30bについて説明したが、第2保持部22にも同様の吸収部材30bを備えていてもよい。
【0078】
4.変形例3
図13~
図16を用いてワーク搬送装置1の変形例3について説明する。
図13は変形例3に係るワーク搬送装置1における第1保持部21の正面図であり、
図14は変形例3に係るワーク搬送装置1における第1保持部21の平面図であり、
図15は変形例3に係る吸収部材30cの動作を説明する図であり、
図16は変形例3に係る吸収部材30cの動作を説明する図である。
図13~
図16では第1ブロック242及び第2ブロック262の一部並びに第1シリンダ301及び第2シリンダ302の各シリンダチューブの断面をハッチングで示す。
図13~
図16のワーク搬送装置1は、上記実施形態に係るワーク搬送装置1と同じ部材については同じ符号を用いて説明し、重複する説明を省略する。また、図示しない第2保持部22は、吸収部材30cを備えておらず、第1支持部材24と第2支持部材26とは一体である。
【0079】
図13及び
図14に示すように、第1保持部21の吸収部材30cは、第1支持部材24と第2支持部材26との間で圧縮可能な空圧シリンダからなる第1シリンダ301と第2シリンダ302とを含む。ここで「第1支持部材24と第2支持部材26との間で圧縮可能」とは、上記変形例1と同様に、第1支持部材24と第2支持部材26との間における両者の相対的な移動により圧縮可能な状態であるということである。
図13及び
図14は、第2支持部材26が第1支持部材24に対して初期位置にある状態を示す。
【0080】
2つの第2ブロック262は、直交方向D1に沿って延びるクロスバー260の両端から下方に向かって突出するようにクロスバー260に固定される。また、第2ブロック262は、
図14に示すようにX軸に沿った方向にクロスバー260の両側へ延びる。
【0081】
第1シリンダ301及び第2シリンダ302の各シリンダチューブは、それぞれのピストンロッド321及び322が互いに対向するように、2つの第2ブロック262の外側面に固定される。これにより、
図14に示すように、2つの第1シリンダ301は、X軸に沿った方向で互いに間隔をあけて右側にある第2ブロック262に固定される。また、
図14に示すように、2つの第2シリンダ302は、X軸に沿った方向で互いに間隔をあけて左側にある第2ブロック262に固定される。
【0082】
2つの第1ブロック242は、それぞれ第1シリンダ301及び第2シリンダ302の各ピストンロッド321及び322に対応する位置にガイド穴245を2つずつ備える。ガイド穴245は、直交方向D1に沿って延びる。ガイド穴245は、第1ブロック242を貫通しておらず、底部を有する。
【0083】
第1シリンダ301のピストンロッド321及び第2シリンダ302のピストンロッド322は、それぞれ第2ブロック262を貫通し、第1ブロック242のガイド穴245内に延びる。ピストンロッド321,322の先端は、初期位置においてガイド穴245の底部に接触する。ピストンロッド321,322は、ガイド穴245に摺動案内されて直交方向D1に沿って第1ブロック242に対して相対移動可能である。
【0084】
第1シリンダ301及び第2シリンダ302の各シリンダチューブの内部には図示しない空圧回路から圧縮空気が送り込まれており、圧縮空気はピストンロッド321,322が第1ブロック242を押す方向に常にピストンを付勢する。ピストンロッド321,3
22が第1ブロック242を押すことによって、初期位置において、第1ブロック242と第2ブロック262とは、直交方向D1に沿って所定の間隔を有している。したがって、第1ブロック242は、ピストンロッド321またはピストンロッド322の押力に抗して第2ブロック262に対して当該間隔だけ相対移動可能である。
【0085】
図15では、第2支持部材26が
図15の右側(矢印a1)に向かって移動する状態、すなわち他方の保持部である図示しない第2保持部22に近接移動する状態を示す。第1シリンダ301のピストンロッド321の先端はガイド穴245の底部から離れ、
図15の左側の第1ブロック242と第2ブロック262の間隔が初期状態時から狭くなる。このとき第2シリンダ302のピストンロッド322は、第2シリンダ302内を後退する。その後、第2シリンダ302は、第2シリンダ302内の圧縮空気によって、第2ブロック262を左側へ移動させ、第2支持部材26を初期位置に復帰させる。
【0086】
図16では、第2支持部材26が
図16の左側(矢印a2)に向かって移動する状態、すなわち他方の保持部である図示しない第2保持部22に対し離間移動する状態を示す。第2シリンダ302のピストンロッド322の先端はガイド穴245の底部から離れ、
図16の右側の第1ブロック242と第2ブロック262の間隔が初期状態時から狭くなる。このとき第1シリンダ301のピストンロッド321は、第1シリンダ301内を後退する。その後、第1シリンダ301は、第1シリンダ301内の圧縮空気によって、第2ブロック262を右側へ移動させ、第2支持部材26を初期位置に復帰させる。
【0087】
図15及び
図16の状態において、第1保持部21の第1支持部材24と図示しない第2保持部22の第1支持部材24との間隔は一定に保たれており、これらの第1支持部材24に保持されるワークWにも歪は発生しない。このように、2つの空圧シリンダの圧縮と復元によって、互いに独立する一対の保持部で1つのワークWを搬送する場合でもワークWにおける歪の発生を抑制することができる。
【0088】
変形例3において、吸収部材30cは、第1保持部21にのみ備えられているが、第2保持部22にも同様の吸収部材30cを備えていてもよい。また、吸収部材30cは各ピストンロッドが第1ブロック242を押す方向へ常に付勢されているが、ワークWの搬送途中で第1シリンダ301と第2シリンダ302とに対する圧縮空気の供給及び排出を制御して各ピストンロッドの付勢力を調整してもよい。
【0089】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能であり、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0090】
1…ワーク搬送装置、2…基体、3…第1ユニット、4…第2ユニット、5a,5b…下型、8…制御装置、11…第1アーム、12…第2アーム、21…第1保持部、22…第2保持部、23…保持部材、24…第1支持部材、240…取付ロッド、242…第1ブロック、244…貫通孔、245…ガイド穴、26…第2支持部材、260…クロスバー、262…第2ブロック、264…鍔付きカラー、266…ワッシャ、30,30a,30b,30c…吸収部材、31…第1スプリング、301…第1シリンダ、311…第1磁石セット、311a、311b…磁石、32…第2スプリング、302…第2シリンダ、312…第2磁石セット、312a,312b…磁石、321,322…ピストンロッド、34…案内部材、35…被案内部材、41…第1昇降駆動部、42…第2昇降駆動
部、43…ガイド、44…レール、45…昇降体、51…第1モーター、52…第2モーター、53…第3モーター、54…第4モーター、D…搬送方向、D1…直交方向、L1…第1間隔、L2…第2間隔、MP1、MP2…中間位置、O1…第1回転軸、O2…第2回転軸、O3…第3回転軸、O4…第4回転軸、P1…第1位置、P2…第2位置、P3…第3位置、P4…第4位置、P5…第5位置、W…ワーク