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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20221014BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221014BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2015084630
(22)【出願日】2015-04-17
(65)【公開番号】P2015213061
(43)【公開日】2015-11-26
【審査請求日】2018-02-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2014086562
(32)【優先日】2014-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛成
(72)【発明者】
【氏名】中山 知則
(72)【発明者】
【氏名】北山 直樹
【合議体】
【審判長】酒井 朋広
【審判官】井上 信一
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-46852(JP,A)
【文献】特開2012-129068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の表面に、少なくとも電極活物質と下記化学式(1)で表される繰返し単位を有するポリアミド酸からなるバインダーを含有する電極合剤組成物(ただし、有機溶媒の含有量が全溶媒中50質量%以下である水溶媒とイミダゾール類とを含有する、電極用合剤ペーストは除く)によって電極合剤層を形成し、次いで最高温度を200℃以下で加熱処理して溶媒を除去するとともにポリアミド酸のイミド化反応を行うことを特徴とする電極の製造方法。


化学式(1)において、Aは、下記化学式(2)、下記化学式(3)、及び下記化学式(4)からなる群から選択される1種類以上の4価の基からなり、Bは、下記化学式(5)、下記化学式(6)、下記化学式(7)、下記化学式(8)及び炭素数4~10の2価の飽和炭化水素基からなる群から選択される1種類以上の2価の基を50~99モル%含有し、並びに、下記化学式(9)、及び下記化学式(10)からなる群から選択される1種類以上の2価の基を1~50モル%含有するものからなる。



化学式(8)において、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、カルボニル基、スルホキシル基、スルホン基、1,1’-エチリデン基、1,2-エチリデン基、2,2’-イソプロピリデン基、2,2’-ヘキサフルオロイソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、1,3-フェニレンジメチレン基、1,4-フェニレンジメチレン基、1,3-フェニレンジエチリデン基、1,4-フェニレンジエチリデン基、1,3-フェニレンジプロピリデン基、1,4-フェニレンジプロピリデン基、1,3-フェニレンジオキシ基、1,4-フェニレンジオキシ基、ビフェニレンジオキシ基、メチレンジフェノキシ基、エチリデンジフェノキシ基、プロピリデンジフェノキシ基、ヘキサフルオロプロピリデンジフェノキシ基、オキシジフェノキシ基、チオジフェノキシ基、スルホンジフェノキシ基のいずれかである。


化学式(10)において、Yは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、カルボニル基、スルホキシル基、スルホン基、1,1’-エチリデン基、1,2-エチリデン基、2,2’-イソプロピリデン基、2,2’-ヘキサフルオロイソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、1,3-フェニレンジメチレン基、1,4-フェニレンジメチレン基、1,3-フェニレンジエチリデン基、1,4-フェニレンジエチリデン基、1,3-フェニレンジプロピリデン基、1,4-フェニレンジプロピリデン基、1,3-フェニレンジオキシ基、1,4-フェニレンジオキシ基、ビフェニレンジオキシ基、メチレンジフェノキシ基、エチリデンジフェノキシ基、プロピリデンジフェノキシ基、ヘキサフルオロプロピリデンジフェノキシ基、オキシジフェノキシ基、チオジフェノキシ基、スルホンジフェノキシ基のいずれかである。
【請求項2】
電極合剤組成物が、さらにエポキシ基又はオキサゾリン基を有する架橋剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
電極合剤組成物が、さらにピリジン類化合物を含有することを特徴とする請求項1~2のいずれかに記載の電極の製造方法。
【請求項4】
電極活物質が、炭素粉末、ケイ素粉末、スズ粉末、またはケイ素若しくはスズを含む合金粉末であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電極の製造方法。
【請求項5】
電極活物質が、リチウム遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の電極の製造方法。
【請求項6】
リチウムイオン二次電池用電極を得ることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の電極の製造方法。
【請求項7】
下記化学式(1)で表される繰返し単位を有するポリアミド酸からなるバインダーを含有し、炭素繊維を含有しない電極合剤組成物(ただし、有機溶媒の含有量が全溶媒中50質量%以下である水溶媒とイミダゾール類とを含有する、電極用合剤ペーストは除く)。


化学式(1)において、Aは、下記化学式(2)、下記化学式(3)、及び下記化学式(4)からなる群から選択される1種類以上の4価の基からなり、Bは、下記化学式(5)、下記化学式(6)、下記化学式(7)、下記化学式(8)及び炭素数4~10の2価の飽和炭化水素基からなる群から選択される1種類以上の2価の基を50~99モル%含有し、並びに、下記化学式(9)、及び下記化学式(10)からなる群から選択される1種類以上の2価の基を1~50モル%含有するものからなる。


化学式(8)において、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、カルボニル基、スルホキシル基、スルホン基、1,1’-エチリデン基、1,2-エチリデン基、2,2’-イソプロピリデン基、2,2’-ヘキサフルオロイソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、1,3-フェニレンジメチレン基、1,4-フェニレンジメチレン基、1,3-フェニレンジエチリデン基、1,4-フェニレンジエチリデン基、1,3-フェニレンジプロピリデン基、1,4-フェニレンジプロピリデン基、1,3-フェニレンジオキシ基、1,4-フェニレンジオキシ基、ビフェニレンジオキシ基、メチレンジフェノキシ基、エチリデンジフェノキシ基、プロピリデンジフェノキシ基、ヘキサフルオロプロピリデンジフェノキシ基、オキシジフェノキシ基、チオジフェノキシ基、スルホンジフェノキシ基のいずれかである。


化学式(10)において、Yは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、カルボニル基、スルホキシル基、スルホン基、1,1’-エチリデン基、1,2-エチリデン基、2,2’-イソプロピリデン基、2,2’-ヘキサフルオロイソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、1,3-フェニレンジメチレン基、1,4-フェニレンジメチレン基、1,3-フェニレンジエチリデン基、1,4-フェニレンジエチリデン基、1,3-フェニレンジプロピリデン基、1,4-フェニレンジプロピリデン基、1,3-フェニレンジオキシ基、1,4-フェニレンジオキシ基、ビフェニレンジオキシ基、メチレンジフェノキシ基、エチリデンジフェノキシ基、プロピリデンジフェノキシ基、ヘキサフルオロプロピリデンジフェノキシ基、オキシジフェノキシ基、チオジフェノキシ基、スルホンジフェノキシ基のいずれかである。
【請求項8】
さらにエポキシ基又はオキサゾリン基を有する架橋剤を含有することを特徴とする請求項7に記載の電極合材剤組成物。
【請求項9】
さらにピリジン類化合物を含有することを特徴とする請求項7~8のいずれかに記載の電極合剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの電気化学素子の電極の製造方法に関する。特にポリアミド酸からなるバインダーを用いた電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるため、移動情報端末の駆動電源などとして広く利用されている。近年は、大容量を必要とする電気・ハイブリッド自動車への搭載など産業用途での使用も広まりつつあり、より高容量化や高性能化のための検討がなされている。その試みの一つは、負極活物質として単位体積あたりのリチウム吸蔵量の多いケイ素やスズ、或いはこれらを含む合金を用いて、充放電容量を増大させようとするものである。
【0003】
しかし、例えばケイ素やスズ、或いはこれらを含む合金のような充放電容量の大きな活物質を用いると、充放電に伴って活物質が非常に大きな体積変化を起こす。このため、これまでの電極で用いられていたポリフッ化ビニリデンやゴム系樹脂を結着剤(バインダー)として用いると、活物質層が破壊されたり、集電体と活物質層との界面で剥離が発生したりして、電極の集電構造が破壊され、電池のサイクル特性が容易に低下するという問題があった。
このため、非常に大きな体積変化に対しても電極の破壊や剥離を起こしにくい、電池環境下での靭性が高い電極用のバインダーが望まれていた。
【0004】
特許文献1には、リチウム二次電池において、負極の結着剤としてポリイミド樹脂を用いると、充放電サイクルを繰り返し行っても電池容量が低下しにくくサイクル寿命が長くなることが記載されている。ここでは、電極は350℃で2時間加熱処理されて製造されている。(参照:実施例1、2)
特許文献2には、電解液に対する膨潤度が小さく、優れた靱性(大きな破断伸度及び破断エネルギー)を有する、特定のポリアミック酸と溶剤とからなる電極用バインダー樹脂組成物が記載されている。また、電極を製造する際にはイミド化反応が十分に進行するよう、比較的高い温度での加熱処理が必要であることが記載されている。
特許文献3には、カルボキシル基を有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とを含有するリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物が記載されている。
【0005】
一方、非特許文献1には、電解液に対する電極用のバインダー樹脂の膨潤度が小さいほど充放電サイクルに伴う放電容量保持率が高くなるので好ましいことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-163031号公報
【文献】国際公開2011/040308号
【文献】特開2013-20875号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】日立化成テクニカルレポート第45号(2005年7月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリイミドをバインダーとして電極を製造する際には、加熱処理温度を極めて高温にする必要があるために特別な装置や環境が必要とされる。このため、ポリフッ化ビニリデンやゴム系樹脂などの通常のバインダーと同程度の比較的低温で短時間の加熱処理で電極の製造を行うことが望まれている。
また、近年、電池用の集電体(銅箔など)は極薄化が進んで厚さが10μm以下のものが使用されるようになり、電極製造工程で集電体が高温に曝されると機械強度が大幅に低下するなどの問題が生じることから、200℃以下の比較的低温で熱処理することが望まれている。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、200℃以下の比較的低温、且つ比較的短時間の加熱処理で、電池環境下でも膨潤度が小さく、且つ優れた付着性や靱性を保つことができる高性能のリチウム二次電池用の電極を容易に得ることができる、電極の製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、種々検討した結果、特定の化学構造からなる芳香族ポリアミド酸を含有する電極合剤組成物を用いることによって、200℃以下の比較的低温、且つ比較的短時間の加熱処理により電極を製造しても、電池環境下でも膨潤度が小さく、且つ優れた付着性や靱性を保つことができる高性能のリチウム二次電池用の電極を容易に得ることができることを見出して、本発明に至った。
【0011】
本発明は、以下の各項に関する。
1. 集電体の表面に、少なくとも電極活物質と下記化学式(1)で表される繰返し単位を有するポリアミド酸からなるバインダーを含有する電極合剤組成物によって電極合剤層を形成し、次いで加熱処理して溶媒を除去するとともにポリアミド酸のイミド化反応を行うことを特徴とする電極の製造方法。
【化1】
化学式(1)において、Aは、下記化学式(2)、下記化学式(3)、及び下記化学式(4)からなる群から選択される1種類以上の4価の基からなり、Bは、下記化学式(5)、下記化学式(6)、下記化学式(7)、下記化学式(8)及び炭素数4~10の2価の飽和炭化水素基からなる群から選択される1種類以上の2価の基、並びに下記化学式(9)、及び下記化学式(10)からなる群から選択される1種類以上の2価の基からなる。
【化2】
【化3】
化学式(8)において、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、カルボニル基、スルホキシル基、スルホン基、1,1’-エチリデン基、1,2-エチリデン基、2,2’-イソプロピリデン基、2,2’-ヘキサフルオロイソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、1,3-フェニレンジメチレン基、1,4-フェニレンジメチレン基、1,3-フェニレンジエチリデン基、1,4-フェニレンジエチリデン基、1,3-フェニレンジプロピリデン基、1,4-フェニレンジプロピリデン基、1,3-フェニレンジオキシ基、1,4-フェニレンジオキシ基、ビフェニレンジオキシ基、メチレンジフェノキシ基、エチリデンジフェノキシ基、プロピリデンジフェノキシ基、ヘキサフルオロプロピリデンジフェノキシ基、オキシジフェノキシ基、チオジフェノキシ基、スルホンジフェノキシ基のいずれかである。
【化4】
化学式(10)において、Yは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、カルボニル基、スルホキシル基、スルホン基、1,1’-エチリデン基、1,2-エチリデン基、2,2’-イソプロピリデン基、2,2’-ヘキサフルオロイソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、1,3-フェニレンジメチレン基、1,4-フェニレンジメチレン基、1,3-フェニレンジエチリデン基、1,4-フェニレンジエチリデン基、1,3-フェニレンジプロピリデン基、1,4-フェニレンジプロピリデン基、1,3-フェニレンジオキシ基、1,4-フェニレンジオキシ基、ビフェニレンジオキシ基、メチレンジフェノキシ基、エチリデンジフェノキシ基、プロピリデンジフェノキシ基、ヘキサフルオロプロピリデンジフェノキシ基、オキシジフェノキシ基、チオジフェノキシ基、スルホンジフェノキシ基のいずれかである。
2. 電極合剤組成物が、さらにエポキシ基又はオキサゾリン基を有する架橋剤を含有することを特徴とする項1に記載の電極の製造方法。
3. 電極合剤組成物が、さらにピリジン類化合物を含有することを特徴とする項1~2のいずれかに記載の電極の製造方法。
4. 電極活物質が、炭素粉末、ケイ素粉末、スズ粉末、またはケイ素若しくはスズを含む合金粉末であることを特徴とする項1~3のいずれかに記載の電極の製造方法。
5. 電極活物質が、リチウム遷移金属酸化物であることを特徴とする項1~4のいずれかに記載の電極の製造方法。
6. リチウムイオン二次電池用電極を得ることを特徴とする項1~5のいずれかに記載の電極の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、200℃以下の比較的低温、且つ比較的短時間の加熱処理により、ポリイミドをバインダーとした電池環境下でも膨潤度が小さく且つ優れた付着性や靱性を保つことができる高性能のリチウム二次電池用の電極を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電極の製造方法は、特にリチウム二次電池の電極(負極及び正極)を好適に製造することができる。以下、限定するものではないが、特にリチウム二次電池用の電極の製造方法に基づいて説明する。
【0014】
本発明において、集電体は、電池で通常用いられる導電性金属箔であることが好適である。導電性金属箔としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス(鉄)、チタン、コバルトなどの導電性を有する金属またはこれらの組み合わせからなる合金の箔を好適に挙げることができる。特にリチウム二次電池では、負極の集電体としては厚みが5~100μm程度の銅又は銅合金からなる箔、正極の集電体としては厚みが5~100μm程度のアルミニウム箔が、箔薄膜に加工し易く、安価で、電極を高性能化し易いことなどから好適である。
集電体は、必要に応じて表面粗さが制御され、例えば平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチングメタル状、エンボス状などの箔以外の形状であっても構わない。
【0015】
本発明で用いる電極合剤組成物(電極合剤ペースト)は、少なくとも電極活物質と特定の繰り返し単位を有するポリアミド酸からなるバインダーと溶媒とを含有する。
本発明で用いる電極合剤組成物の電極活物質は、電池で通常用いられるものであれば限定されるものではない。負極の場合は、リチウムを電気化学的に挿入、脱離することができる物質であればよく、例えば黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素などの炭素粉末、ケイ素粉末、スズ粉末、またはケイ素若しくはスズを含む合金粉末を挙げることができる。合金粉末はケイ素若しくはスズと金属元素との金属間化合物であることが好ましく、金属元素としてはニッケル、チタン、鉄、コバルト、銅、ジルコン、マンガンなどの遷移金属であることが好ましい。正極の場合は、リチウム元素を有し、リチウムを電気化学的に脱離、挿入することができる物質であればよく、例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2,LiCo0.5Mn0.52,LiNi0.7Co0.2Mn0.12などのリチウム遷移金属酸化物を好適に挙げることができる。
【0016】
本発明で用いる電極合剤組成物のバインダーは、前記化学式(1)の繰り返し単位を有するポリアミド酸からなる。
このポリアミド酸は、溶媒中でテトラカルボン酸成分とジアミン成分とをイミド化反応を抑制するために低温で反応させることによって容易に調製することができる。
テトラカルボン酸成分は、テトラカルボン酸類すなわちテトラカルボン酸、その酸二無水物及びそのエステル化化合物などであり、好ましくは二無水物である。
【0017】
化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸において、Aで表される4価の基としては、上述した化学式(2)、化学式(3)、及び化学式(4)からなる群から選択される1種類以上が用いられる。かかる4価の基は、テトラカルボン酸から誘導されるものである。以下の説明では、かかる4価の基の元となるテトラカルボン酸のことを「テトラカルボン酸成分」と呼ぶ。本発明のポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸成分は、好ましくは4,4’-オキシジフタル酸類、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類、ピロメリット酸類からなる群から選択される1つ以上のテトラカルボン酸類であり、好ましくは3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類、或いは、4,4’-オキシジフタル酸類と、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類及び/又はピロメリット酸類との組み合わせからなる混合物である。前記混合物は10~90モル%さらに20~60モル%の4,4’-オキシジフタル酸類と、90~10モル%さらに80~40モル%の3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類及び/又はピロメリット酸類との組み合わせからなる混合物であることが好ましい。
【0018】
化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸において、Bで表される2価の基としては、上述した化学式(5)、化学式(6)、化学式(7)、化学式(8)及び炭素数4~10の2価の飽和炭化水素基からなる群から選択される1種類以上が用いられる。かかる2価の基は、ジアミンから誘導されるものである。以下の説明では、かかる2価の基の元となるジアミンのことを「ジアミン成分」と呼ぶ。本発明のポリアミド酸を構成するジアミン成分は、好ましくは1~4個の芳香族環を有する芳香族ジアミン及び炭素数4~10の脂肪族ジアミンから選択される1つ以上のジアミンを含む。1~4個の芳香族環を有する芳香族ジアミンとしては、例えばp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,4-ビス(β-アミノ-第三ブチル)トルエン、ビス-p-(1,1-ジメチル-5-アミノ-ペンチル)ベンゼン、1-イソプロピル-2,4-m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミンなどの1個の芳香族環を有する芳香族ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン、ビス(p-β-アミノ-第三ブチルフェニル)エーテルなどの2個の芳香族環を有する芳香族ジアミン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(p-β-メチル-6-アミノフェニル)ベンゼンなどの3個の芳香族環を有する芳香族ジアミン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルなどの4個の芳香族環を有する芳香族ジアミンを好適に挙げることができる。
【0019】
また、4個の芳香族環を有する芳香族ジアミンとしては、下記化学式(8)で表される芳香族ジアミンを好適に挙げることができる。
【化5】
但し、前記化学式(8)において、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、カルボニル基、スルホキシル基、スルホン基、1,1’-エチリデン基、1,2-エチリデン基、2,2’-イソプロピリデン基、2,2’-ヘキサフルオロイソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、1,3-フェニレンジメチレン基、1,4-フェニレンジメチレン基、1,3-フェニレンジエチリデン基、1,4-フェニレンジエチリデン基、1,3-フェニレンジプロピリデン基、1,4-フェニレンジプロピリデン基、1,3-フェニレンジオキシ基、1,4-フェニレンジオキシ基、ビフェニレンジオキシ基、メチレンジフェノキシ基、エチリデンジフェノキシ基、プロピリデンジフェノキシ基、ヘキサフルオロプロピリデンジフェノキシ基、オキシジフェノキシ基、チオジフェノキシ基、スルホンジフェノキシ基のいずれかである。
【0020】
炭素数4~10の脂肪族ジアミンとしては、例えば1,4-ジアミノブタン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン)、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカンなどのジアミンを好適に挙げることができる。
【0021】
本発明で用いるポリアミド酸を構成するジアミン成分は、前記の1~4個の芳香族環を有する芳香族ジアミンから選択される1つ以上のジアミンを50~99モル%、好ましくは70~97モル%、より好ましくは80~95モル%含む。
【0022】
本発明では、化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸において、Bで表される2価の基として、上述した化学式(5)、化学式(6)、化学式(7)、化学式(8)及び炭素数4~10の2価の飽和炭化水素基からなる群から選択される1種類以上を用いることに加えて、極性基を有するジアミン類から誘導される二価の基を1種類以上用いる。詳細には、本発明で用いるポリアミド酸を構成するジアミン成分は、さらに、極性基を有するジアミン類を1~50モル%、好ましくは3~30モル%、より好ましくは5~20モル%含む。極性基を有するジアミンとしては、分子中に水酸基、カルボキシル基のようなエポキシ樹脂などに対する反応性を持った極性基を有する芳香族ジアミンが好適である。
【0023】
極性基を有する芳香族ジアミンの例としては、2,4-ジアミノフェノ-ルなどのジアミノフェノ-ル化合物、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジハイドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジハイドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジハイドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラハイドロキシビフェニルなどのヒドロキシビフェニル化合物、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2-ビス〔3-アミノ-4-ハイドロキシフェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-アミノ-3-ハイドロキシフェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-アミノ-4-ハイドロキシフェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラハイドロキシジフェニルメタンなどのヒドロキシジフェニルアルカン化合物、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジハイドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジハイドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジハイドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラハイドロキシジフェニルエ-テルなどのヒドロキシジフェニルエ-テル化合物、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラハイドロキシジフェニルスルホンなどのヒドロキシジフェニルスルホン化合物、2,2-ビス〔4-(4-アミノ-3-ハイドロキシフェノキシ)フェニル〕プロパンなどのビス(ハイドロキシフェノキシフェニル)アルカン化合物、4,4’-ビス(4-アミノ-3-ハイドロキシフェノキシ)ビフェニルなどのビス(ハイドロキシフェノキシ)ビフェニル化合物、2,2-ビス〔4-(4-アミノ-3-ハイドロキシフェノキシ)フェニル〕スルホンなどのビス(ハイドロキシフェノキシフェニル)スルホン化合物などの水酸基を有するジアミン化合物を挙げることができる。
【0024】
さらに、3,5-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノ安息香酸などのベンゼンカルボン酸、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラカルボキシビフェニルなどのカルボキシビフェニル化合物、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジカルボキシジフェニルメタン、2,2-ビス〔3-アミノ-4-カルボキシフェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-アミノ-3-カルボキシフェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-アミノ-4-カルボキシフェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラカルボキシビフェニルなどのカルボキシジフェニルアルカン化合物、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジカルボキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジカルボキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルエ-テルなどのカルボキシジフェニルエ-テル化合物、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルスルホンなどのカルボキシジフェニルスルホン化合物、2,2-ビス〔4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンなどのビス(カルボキシフェノキシフェニル)アルカン化合物、4,4’-ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)ビフェニルなどのビス(カルボキシフェノキシ)ビフェニル化合物、2,2-ビス〔4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル〕スルホンなどのビス(カルボキシフェノキシフェニル)スルホン化合物などのカルボキシル基を有するジアミン化合物を挙げることができる。
【0025】
カルボキシル基を有するジアミン化合物としては、下記化学式(9)及び(10)で表される芳香族ジアミンを好適に挙げることができる。
【化6】
化学式(10)において、Yは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、カルボニル基、スルホキシル基、スルホン基、1,1’-エチリデン基、1,2-エチリデン基、2,2’-イソプロピリデン基、2,2’-ヘキサフルオロイソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、1,3-フェニレンジメチレン基、1,4-フェニレンジメチレン基、1,3-フェニレンジエチリデン基、1,4-フェニレンジエチリデン基、1,3-フェニレンジプロピリデン基、1,4-フェニレンジプロピリデン基、1,3-フェニレンジオキシ基、1,4-フェニレンジオキシ基、ビフェニレンジオキシ基、メチレンジフェノキシ基、エチリデンジフェノキシ基、プロピリデンジフェノキシ基、ヘキサフルオロプロピリデンジフェノキシ基、オキシジフェノキシ基、チオジフェノキシ基、スルホンジフェノキシ基のいずれかである。
【0026】
本発明で用いるポリアミド酸を構成するジアミン成分は、これらの中で、特にp-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ヘキサメチレンジアミンからなる群から選択された1つ以上のジアミンと、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジハイドロキシビフェニル、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシジフェニルメタンからなる群から選択された1つ以上のジアミンとからなることが好適である。
【0027】
本発明で用いるポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸成分とジアミン成分とのモル比[テトラカルボン酸成分/ジアミン成分]は略等モル、具体的には0.95~1.05好ましくは0.97~1.03になるようにすることが重要である。このモル比の範囲外では、得られるポリイミドの分子量が低いため、バインダーとして用いる場合の靭性が不足する恐れがある。また、本発明で用いるポリアミド酸は、温度30℃、濃度0.5g/100mLで測定した対数粘度が0.2以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.6以上の高分子量であることが好適である。対数粘度が前記範囲よりも低い場合には、ポリアミド酸の分子量が低いことから、バインダーとして適した特性を有するポリイミドを得るのが難しくなることがある。
【0028】
ポリアミド酸は、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを、公知の方法にしたがって、溶媒中で反応させることで容易に調製することができる。限定するものではないが、通常は、ジアミン成分を溶媒に溶解した溶液にテトラカルボン酸成分を一度或いは多段階で添加して攪拌することにより好適に行うことができる。反応温度は10℃~100℃が好ましく、15℃~80℃がさらに好ましく、15℃~50℃が特に好ましい。反応温度が10℃より低いと反応が遅くなることから好ましくなく、100℃より高いと溶液の粘度が低くなることがあり好ましくない。反応時間は、0.5時間~72時間の範囲が好ましく、1時間~60時間がさらに好ましく、1.5時間~48時間が特に好ましい。反応時間が0.5時間より短いと反応が十分進行せず、合成されたポリアミック酸溶液の粘度が不安定になることがある。一方、72時間以上の時間をかけるのは生産性の面から好ましくない。
【0029】
ポリアミド酸の調製には、ポリアミド酸の溶解が可能であり、通常のポリアミド酸を調製する際に用いられる公知の有機溶媒を使用することができる。例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4-ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール、m-クレゾール、フェノール、γ-ブチロラクトンが挙げられる。これらの溶媒は、単独または2種以上混合して使用しても差し支えない。これらのうち、ポリアミド酸の溶解性、および安全性から、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトンが好ましく、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトンが特に好ましい。
【0030】
調製されたポリアミド酸溶液は、ポリアミド酸を溶媒に均一に溶解したものである。このポリアミド酸溶液は、ポリアミド酸に起因する固形分濃度が、溶媒とポリアミド酸との合計量に対して5質量%超~45質量%、好ましくは10質量%超~40質量%、より好ましくは15質量%超~30質量%の溶液として好適に用いることができる。ポリアミド酸に起因する固形分濃度が5質量%より低いと溶液の粘度が低くなりすぎ、45質量%より高いと溶液の流動性がなくなることがある。
また溶液粘度は、30℃における溶液粘度が、好ましくは1000Pa・sec以下、より好ましくは0.5~500Pa・sec、さらに好ましくは1~300Pa・sec、特に好ましくは3~200Pa・secである。溶液粘度が1000Pa・secを超えると、電極活物質粉末の混合や集電体上への均一な塗布が困難となり、0.5Pa・secよりも低いと、電極活物質粉末の混合や集電体上への塗布時にたれなどが生じ、加熱乾燥、イミド化後のポリイミド樹脂の靭性が低くなる恐れがある。
【0031】
ポリアミド酸は、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを溶媒中で反応させて得られたポリアミド酸溶液を、例えば貧溶媒に投入して析出させる方法などにより単離して(それを、所定の溶媒に再度溶解させることによって)使用しても良いし、得られたポリアミド酸溶液を単離することなく、調製したものをそのまま或いは単に希釈するなどして使用してもよい。生産性、コストの点から、得られたポリアミド酸溶液を単離することなくそのまま使用することが好ましい。
【0032】
本発明で用いる電極合剤組成物(電極合剤ペースト)の溶媒は、ポリアミド酸を溶解し得る従来公知の有機溶媒を好適に用いることができる。常圧での沸点が300℃以下の有機極性溶媒が好ましく、ポリアド酸の調製の際に用いられる前記溶剤を好適に用いることができる。
【0033】
本発明で用いる電極合剤組成物においては、さらにエポキシ基又はオキサゾリン基を有する架橋剤を含有することが、電解液に接触した場合の電極合剤層と集電体との接着強度の低下を抑制することができるので好適である。エポキシ基を有する架橋剤としてはエポキシ樹脂を挙げることができる。また、オキサゾリン基を有する架橋剤としては1,3-フェニレンビスオキサゾリン、オキサゾリン基含有樹脂などを挙げることができる。架橋剤の添加量はポリアミド酸に対して好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%である。
【0034】
本発明で用いる電極合剤組成物においては、さらにピリジン類化合物を含有することが、得られるポリイミドバインダーの電解液に対する膨潤度をより小さくし、破断伸度及び破断エネルギーをより大きくすることができ、さらに電極を得るための加熱処理時間を短くできるし、加熱処理温度をより低く抑えることができるので、好適である。
ピリジン類化合物は、化学構造中にピリジン骨格を有する化合物のことであり、例えばピリジン、3-ピリジノール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、6-tert-ブチルキノリン、アクリジン、6-キノリンカルボン酸、3,4-ルチジン、ピリダジンなどを好適に挙げることができる。これらのピリジン系化合物は、単独または2種以上併用して使用しても差し支えない。
【0035】
ピリジン類化合物の添加量は、限定するものではないが、ポリアミド酸のアミド酸構造に対して(アミド酸構造1モル当たり)、好ましくは0.05~2.0モル当量、より好ましくは0.1~1.0モル当量である。添加量がこの範囲外では、電解液に対する樹脂の膨潤度をより小さくし、得られるポリイミドバインダーの破断伸度及び破断エネルギーをより大きくし、さらに電極を得るための加熱処理温度をより低く抑えるというピリジン類化合物の添加効果を得ることが難しい場合がある。
【0036】
本発明で用いる電極合剤組成物においては、通常の電極合剤組成物が含有する、例えば界面活性剤、粘度調整剤(増粘剤)、導電補助剤(導電剤)などの添加剤を好適に含有することができる。また、本発明で用いる電極合剤組成物においては、ポリアミド酸とともに、ポリアミド酸以外のポリフッ化ビニリデンやゴム系樹脂からなるバインダー成分を混合して用いてもよい。ポリアミド酸以外のバインダー成分は、ポリアミド酸を含むバインダー成分全量中50質量%未満、好ましくは30質量%未満、より好ましくは10質量%未満の割合で共存させるのが好適である。
【0037】
本発明の電極合剤組成物は、前記ポリアミド酸を含む電極用バインダー樹脂組成物に、電極活物質や必要に応じて他の成分を加えて十分に混錬することによって、好ましくはスラリー状態で得られる。電極合剤組成物中の電極活物質の量は、格別限定されないが、通常、ポリアミック酸に起因する固形分質量に対して、質量基準で0.1~1000倍、好ましくは1~1000倍、より好ましくは5~1000倍、さらに好ましくは10~1000倍である。電極活物質の量が少なすぎると、集電体に形成された電極合剤層に不活性な部分が多くなり、電極としての機能が不十分になることがある。また、電極活物質の量が多すぎると電極活物質が集電体に十分に結着されずに脱落し易くなる。本発明の電極合剤組成物においてポリアミド酸に起因する固形分が全固形分中の1~15質量%となるよう混合することが好ましい。この範囲外では電極の性能が低下することがある。
【0038】
本発明の電極の製造方法においては、集電体の表面に、少なくとも電極活物質とポリアミド酸からなるバインダーと溶媒とを含有する電極合剤組成物を塗布・流延することによって、集電体の表面に電極合剤層が形成された積層体を得る。電極合剤層は、通常は乾燥後に10~300μm程度の厚さに調整される。この工程は、集電体を連続的に供給しながら、集電体表面に連続的に電極合剤組成物を塗布・流延することが好適である。電極合剤層は集電体の片面或いは両面に形成される。
【0039】
次いで、集電体の表面に電極合剤層が形成された積層体は加熱処理されて、溶媒を除去するとともにポリアミド酸のアミド酸構造がイミド構造に変換される。この加熱処理の工程は、好ましくは80℃~200℃、好ましくは90℃~180℃、より好ましくは100℃~150℃の温度範囲で行われる。
加熱処理温度が80℃以下の場合、イミド化反応が十分に進行しなかったり、電極成形体の物性が低下したりすることがある。また、200℃を超えると集電体が劣化する恐れがある。加熱処理は発泡や粉末化を防ぐために多段で段階的に昇温させる方法で行ってもよい。加熱処理時間は10分~48時間の範囲が好ましい。48時間以上は生産性の点から好ましくなく、10分よりも短いとイミド化反応や溶媒の除去が不十分となることがある。
この間に、ほとんどの溶媒が除かれ、且つポリアミド酸はイミド化反応によって実質的にポリイミドになる。加熱処理は、効率よく溶媒を除くために、減圧下条件下や不活性ガス流条件下で好適に行うことができる。
ここで、実質的にポリイミドになるとは、ポリイミド中にアミド酸構造が残存してもよいことを意味しており、アミド酸構造中の70%以上、好ましくは80%以上、より好ましく90%以上がイミド化されていればよい。この程度の低温での加熱処理によってアミド酸構造を完全にイミド化することは必ずしも容易ではない。しかしながら、本発明の特定のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とから構成される繰り返し単位からなるポリアミド酸からなるバインダーは、この程度の低温の加熱処理によって、電池環境下でも膨潤度が小さく(ジメチルカーボネートに25℃で24時間浸漬したときの膨潤による質量増加率が好ましくは2質量%以下より好ましくは1質量%以下である)且つ優れた付着性(集電体との90°ピール強度が0.5N/mm以上、より好ましくは0.7N/mm以上であり、且つ25℃で24時間ジメチルカーボネートに浸漬した後の90°ピール強度の保持率が80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上であり、また集電体とのクロスカット法による付着性試験で、剥離が5%未満であり、且つ25℃で24時間ジメチルカーボネートに浸漬した後の剥離も5%未満である)や靱性を保つことができるという高性能電池のバインダーとして要求される優れた特性を発現することができる。90°ピール強度測定やクロスカット法による付着性試験の詳細は後述する。
【0040】
本発明の電極の製造方法によって得られた電極は、公知の方法にしたがって、好適に電池を製造することができる。例えばリチウム二次電池の場合には、通常の方法に従って、得られた正極及び負極を、ポリオレフィン多孔質体などのセパレータを挟み込みながら、例えば円筒状に巻き取り、この円筒状の電極体を、円筒状のままで或いは押しつぶして扁平状にして、この電極体と非水電解液とを外装体内に挿入することによって、好適に電池を得ることができる。
【実施例
【0041】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、以下の例では、本発明の特徴である前記化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸からなるバインダー(バインダー樹脂組成物)が、200℃以下の低温で加熱処理した場合においても、電極用のバインダー樹脂として要求される特性を十分に満たすものであることを示す。
【0042】
以下の例で用いた特性の測定方法を以下に示す。
<固形分濃度>
試料溶液(その質量をw1とする)を、熱風乾燥機中120℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で30分間加熱処理して、加熱処理後の質量(その質量をw2とする)を測定する。固形分濃度[質量%]は、次式によって算出した。
固形分濃度[質量%]=(w2/w1)×100
【0043】
<対数粘度>
試料溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒はNMP)になるように希釈した。この希釈液について、30℃にて、キャノンフェンスケNo.100を用いて流下時間(T1)を測定した。対数粘度は、ブランクのNMPの流下時間(T0)を用いて、次式から算出した。
対数粘度={ln(T1/T0)}/0.5
【0044】
<溶液粘度(回転粘度)>
試料溶液を、トキメック社製E型粘度計を用いて30℃で測定した。
【0045】
<溶液安定性>
試料溶液を、25℃の温度に調整された雰囲気中に保管し、1ヶ月後の溶液粘度変化が±10%以内のものを○、±10%を超えたものを×とした。溶液粘度変化は、{(1ヶ月保管後の溶液粘度-保管前の溶液粘度)/保管前の溶液粘度}×100で定義される。
【0046】
<DMC膨潤試験>
銅箔と電極合剤層からなる電極を5cm角に切り出したものを試料とし、電極合剤層単独の質量は計算によって銅箔の質量を減じることによって求めることとし、以下のジメチルカーボネート溶液での膨潤試験によって電極合剤層の膨潤度Sを測定した。すなわち、25℃で24時間真空乾燥後の電極合剤層の質量を乾燥質量(Wd)とし、ジメチルカーボネート溶液に25℃で24時間浸漬後の電極合剤層の質量を膨潤質量(Ww)とし、次式により膨潤度Sを計算した。
S[質量%]=(Ww-Wd)/Ww×100
【0047】
<付着性試験(クロスカット法)>
付着性試験は、JIS K 5600-5-6に準拠して行った。なお、評価は目視により、評価基準(3)に準拠した分類0~分類5(数字が小さいほど強固に付着している)で示した。
なお、付着性試験は、ジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について、それぞれ行った。
【0048】
<90°ピール強度測定>
90°ピール強度試験は、万能試験機(オリエンテック社製RTC-1225A)を用いて、IPC-TM650に準拠して測定した。
【0049】
<90°ピール強度保持率>
ジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について、90°ピール強度を測定し、次式により90°ピール強度の保持率を算出した。
90°ピール強度保持率[%]
=浸漬後の90°ピール強度/浸漬前の90°ピール強度×100
【0050】
以下の例で使用した化合物の略号について説明する。
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸二無水物、
s-BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
PPD:p-フェニレンジアミン、
ODA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、
HMD:ヘキサメチレンジアミン、
3,5-DABA:3,5-ジアミノ安息香酸
MBAA:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシジフェニルメタン
1,3-PBO:1,3-フェニレンビスオキサゾリン
【0051】
〔実施例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gを加え、これにODAの36.81g(0.184モル)及び3,5-DABAの3.11g(0.020モル)と、s-BPDAの60.09g(0.204モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度18.2質量%、溶液粘度5.3Pa・s、対数粘度0.62のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液に1重量%のエポキシ樹脂を添加し電極用バインダー樹脂組成物を得た。
前記電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表1に示した。
【0052】
前記電極用バインダー樹脂組成物4.4g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
【0053】
〔実施例2〕
電極用バインダー樹脂組成物にエポキシ樹脂の代わりに1,3-PBOを1重量%添加した以外は実施例1と同様にして各種試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
【0054】
〔実施例3〕
実施例1の電極用バインダー樹脂組成物に何も添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
【0055】
〔実施例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gを加え、これにODAの35.83g(0.179モル)及びMBAAの5.69g(0.020モル)と、s-BPDAの58.48g(0.199モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度18.1質量%、溶液粘度5.1Pa・s、対数粘度0.65のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液に1重量%のエポキシ樹脂を添加し電極用バインダー樹脂組成物を得た。
前記電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表2に示した。
【0056】
前記電極用バインダー樹脂組成物4.4g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
【0057】
〔実施例5〕
電極用バインダー樹脂組成物にエポキシ樹脂の代わりに1,3-PBOを1重量%添加した以外は実施例4と同様にして各種試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
【0058】
〔実施例6〕
実施例4の電極用バインダー樹脂組成物に何も添加しなかったこと以外は実施例4と同様にして試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
【0059】
【表1】
【0060】
〔実施例7〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gを加え、これにODAの13.20g(0.066モル)、3,5-DABAの3.34g(0.022モル)及びHMDの15.32g(0.132モル)と、ODPAの68.14g(0.220モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度17.9質量%、溶液粘度5.0Pa・s、対数粘度0.71のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液に1重量%のエポキシ樹脂を添加し電極用バインダー樹脂組成物を得た。
前記電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表2に示した。
【0061】
前記電極用バインダー樹脂組成物4.5g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表2に示した。
【0062】
〔実施例8〕
電極用バインダー樹脂組成物にエポキシ樹脂の代わりに1,3-PBOを1重量%添加した以外は実施例7と同様にして各種試験を行った。
【0063】
これらの結果を表2に示した。
〔実施例9〕
実施例7の電極用バインダー樹脂組成物に何も添加しなかったこと以外は実施例7と同様にして試験を行った。
これらの結果を表2に示した。
【0064】
〔実施例10〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gを加え、これにODAの12.82g(0.064モル)、MBAAの6.11g(0.021モル)及びHMDの14.88g(0.128モル)と、ODPAの66.19g(0.213モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度18.0質量%、溶液粘度4.9Pa・s、対数粘度0.73のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液に1重量%のエポキシ樹脂を添加し電極用バインダー樹脂組成物を得た。
前記電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表2に示した。
【0065】
前記電極用バインダー樹脂組成物4.5g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表2に示した。
【0066】
〔実施例11〕
電極用バインダー樹脂組成物にエポキシ樹脂の代わりに1,3-PBOを1重量%添加した以外は実施例10と同様にして各種試験を行った。
これらの結果を表2に示した。
【0067】
〔実施例12〕
実施例10の電極用バインダー樹脂組成物に何も添加しなかったこと以外は実施例10と同様にして試験を行った。
これらの結果を表2に示した。
【0068】
【表2】
【0069】
〔実施例13〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gを加え、これにPPDの4.51g(0.042モル)、ODAの29.25g(0.146モル)及び3,5-DABAの3.18g(0.021モル)と、s-BPDAの30.70g(0.104モル)及びODPAの32.37g(0.104モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度18.2質量%、溶液粘度5.3Pa・s、対数粘度0.68のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液に1重量%のエポキシ樹脂を添加し電極用バインダー樹脂組成物を得た。
前記電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表3に示した。
【0070】
前記電極用バインダー樹脂組成物4.5g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表3に示した。
【0071】
〔実施例14〕
電極用バインダー樹脂組成物にエポキシ樹脂の代わりに1,3-PBOを1重量%添加した以外は実施例13と同様にして各種試験を行った。
これらの結果を表3に示した。
【0072】
〔実施例15〕
実施例13の電極用バインダー樹脂組成物に何も添加しなかったこと以外は実施例13と同様にして試験を行った。
これらの結果を表3に示した。
【0073】
〔実施例16〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gを加え、これにPPDの4.51g(0.042モル)、ODAの29.25g(0.146モル)及び3,5-DABAの3.18g(0.021モル)と、s-BPDAの30.70g(0.104モル)及びODPAの32.37g(0.104モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度18.1質量%、溶液粘度5.1Pa・s、対数粘度0.67のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液に1重量%のエポキシ樹脂を添加し電極用バインダー樹脂組成物を得た。
前記電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表1に示した。
【0074】
前記電極用バインダー樹脂組成物4.5g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表3に示した。
【0075】
〔実施例17〕
電極用バインダー樹脂組成物にエポキシ樹脂の代わりに1,3-PBOを1重量%添加した以外は実施例16と同様にして各種試験を行った。
これらの結果を表3に示した。
【0076】
〔実施例18〕
実施例16の電極用バインダー樹脂組成物に何も添加しなかったこと以外は実施例16と同様にして試験を行った。
これらの結果を表3に示した。
【0077】
【表3】
【0078】
〔比較例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gを加え、これにODAの40.50g(0.202モル)と、s-BPDAの59.50g(0.202モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度18.4質量%、溶液粘度5.1Pa・s、対数粘度0.64のポリアミド酸溶液を得た。これをそのまま電極用バインダー樹脂組成物として用いた。
前記電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表4に示した。
【0079】
前記電極用バインダー樹脂組成物4.4g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表4に示した。
【0080】
〔比較例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gを加え、これにODAの29.52g(0.147モル)及びPPDの6.83g(0.063モル)と、s-BPDAの30.98g(0.105モル)及びODPA32.67g(0.105モル)のとを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度18.3質量%、溶液粘度4.8Pa・s、対数粘度0.69のポリアミド酸溶液を得た。これをそのまま電極用バインダー樹脂組成物として用いた。
前記電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表4に示した。
【0081】
前記電極用バインダー樹脂組成物4.4g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表4に示した。
【0082】
〔比較例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gを加え、これにODAの17.41g(0.087モル)及びHMDの15.16g(0.130モル)と、ODPA67.43g(0.217モル)のとを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度18.5質量%、溶液粘度4.5Pa・s、対数粘度0.70のポリアミド酸溶液を得た。これをそのまま電極用バインダー樹脂組成物として用いた。
前記電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表4に示した。
【0083】
前記電極用バインダー樹脂組成物4.4g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表4に示した。
【0084】
【表4】