(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】非対称的なアウトリガー配列のためのクレーン機能の性能強化
(51)【国際特許分類】
B66C 23/90 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
B66C23/90 R
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017159042
(22)【出願日】2017-08-22
【審査請求日】2020-08-21
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510051082
【氏名又は名称】マニタウォック クレイン カンパニーズ, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】MANITOWOC CRANE COMPANIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】ベントン, ジョン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】スクーンメイカー, スティーブン ジェイ.
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-256691(JP,A)
【文献】特開2004-182365(JP,A)
【文献】国際公開第2015/162096(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176686(US,A1)
【文献】特開2014-031223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ及びメモリを有しているコンピューティングデバイスによって実行可能な、それぞれの伸展した長さに伸展可能である複数のアウトリガーを有するクレーンのブームを制御するための方法であって、
各アウトリガーの伸展した長さを特定する段階と、
特定された前記伸展した長さに基づいて最大水平作業距離を計算する段階であって、前記最大水平作業距離には、第1の作業領域のための第1の最大水平作業距離と、前記第1の作業領域に隣接する第2の作業領域のための第2の最大水平作業距離とが含まれ、前記第1の作業領域は第1の旋回セクタ内に延び、前記第2の作業領域は前記第1の旋回セクタに隣接する第2の旋回セクタ内に延びるようにされた、段階と、
前記メモリ内に、ブームのフックにかかる荷重についての前記最大水平作業距離を表すデータを保存する段階であって、前記データは、前記第1の作業領域のための、前記第1の最大水平作業距離を表す第1の3次元の面の形式、及び前記第2の作業領域のための、前記第2の最大水平作業距離を表す第2の3次元の面の形式で保存される、段階と、
前記メモリ内に、前記ブームの3次元表示を保存する段階と、
前記ブームの3次元表示と前記第1の3次元の面との間の第1の
近接度ベクトル、
及び前記ブームの前記3次元表示と前記第2の3次元の面との間の第2の
近接度ベクトル
、を計算する段階と、
前記コンピューティングデバイスによって、前記
第1及び第2の近接度ベクトルがゼロ絶対値に達するのを防ぐように前記ブームの動きを制御する段階と、
を備えている、クレーンのブームを制御するための方法。
【請求項2】
前記最大水平作業距離を表すデータを保存する段階は、荷重表を表すデータを入力する段階を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大水平作業距離は前記ブームの揺動角度に依存して変動する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
最大水平作業距離を表すデータを保存する段階は、前記フックにかかる荷重を検出する段階と、前記検出された荷重に基づいて前記最大水平作業距離を計算する段階と、を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、更に、
メモリ内に、前記クレーンの付近の禁止領域であって前記ブームの侵入が禁止される禁止領域を保存する段階と、
前記禁止領域と前記ブームとの間の第3の
近接度ベクトルを計算する段階と、
前記コンピューティングデバイスによって、前記第3の
近接度ベクトルがゼロ絶対値に達するのを防ぐように前記ブームの動きを制限する段階と、
を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ブームの動きを制限する段階は、
閾値ベクトル絶対値を確立する段階と、
前記
第1又は第2の近接度ベクトルの絶対値が前記閾値ベクトル絶対値より小さいことに応えてクレーン機能を変更する段階と、
を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記クレーン機能を変更する段階は、前記フックを前記最大水平作業距離により近寄らせるような少なくとも1つの方向への前記ブームの動きを低速化する段階を備えている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブームの動きを制限する段階は、更に、
運転停止閾値ベクトル絶対値を確立する段階と、
前記
第1又は第2の近接度ベクトルの絶対値が前記運転停止閾値ベクトル絶対値より小さいことに応えて前記ブームの動きを停止させる段階と、
を備えている、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記クレーン機能は、収縮、伸展、ブーム上昇、ブーム下降、左揺動、及び右揺動、から成る群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
作業現場の障害物の近くにある、それぞれの伸展した長さに伸展可能である複数のアウトリガーを有するクレーンのブームを制御するためのシステムであって、
クレーンのブームの動作を制御するように構成されているクレーン制御システムであって、各アウトリガーの伸展した長さを特定し、特定された前記伸展した長さに基づいて最大水平作業距離を計算するようにされ、前記最大水平作業距離には、第1の作業領域のための第1の最大水平作業距離と、前記第1の作業領域に隣接する第2の作業領域のための第2の最大水平作業距離とが含まれ、前記第1の作業領域は第1の旋回セクタ内に延び、前記第2の作業領域は前記第1の旋回セクタに隣接する第2の旋回セクタ内に延びるようにされた、クレーン制御システムと、
前記クレーン制御システムと動作可能に通信しているプロセッサと、
前記プロセッサと動作可能に通信しているメモリと、
を備えており、
前記メモリは、
座標系を表すデータ、
前記クレーンのブームの3次元表示、
1つ又は複数の3次元の面の形式で前記最大水平作業距離を表すデータであって、第1の作業領域のための、前記第1の最大水平作業距離を表わす第1の3次元の面の形式、及び第2の作業領域のための、前記第2の最大水平作業距離を表す第2の3次元の面の形式で保存されるデータ、並びに、
前記プロセッサによる実行のためのコンピュータ実行可能命令であって、前記プロセッサに、前記クレーンのブームの前記3次元表示と前記第1の3次元の面との間の第1の
近接度ベクトルと、前記クレーンのブームの前記3次元表示と前記第2の3次元の面との間の第2の
近接度ベクトルとを計算させ
て、前記クレーン制御システムに計算された前記
第1及び第2の近接度ベクトルに基づいて前記ブームの動きを制限させるように構成されているコンピュータ実行可能命令、
を備えるデータを記憶しており、
前記最大水平作業距離を表すデータは前記ブームの揺動角度に依存して変動する、
システム。
【請求項11】
前記クレーンのフックにかかる荷重を測定するように構成されている荷重センサをさらに備えており、前記最大水平作業距離を表すデータは前記フックにかかる測定荷重に依存して変動する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記アウトリガーの伸展した長さを検出するようにされたアウトリガー長さ監視装置をさらに備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記1つ又は複数の3次元の面のそれぞれが円筒の一区分を形成する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
ブームとそれぞれの伸展した長さに伸展可能である複数のアウトリガーとを有するクレーンのためのクレーン制御システムであって、各アウトリガーの伸展した長さを特定して、特定された前記伸展した長さに基づいて最大水平作業距離を計算するようにされ、前記最大水平作業距離には、第1の作業領域のための第1の最大水平作業距離と、前記第1の作業領域に隣接する第2の作業領域のための第2の最大水平作業距離とが含まれており、
プロセッサと、
前記プロセッサへ動作可能に連結されているディスプレイと、
前記プロセッサと動作可能に通信しているメモリと、
を備えており、
前記メモリは、
座標系を表すデータ、
前記クレーンのブームを表すデータ、
前記第1の最大水平作業距離と前記第2の最大水平作業距離とを表すデータ、並びに、
前記プロセッサによる実行のためのコンピュータ実行可能命令であって、
前記座標系を表す前記データに基づく前記座標系の3次元表示、
前記クレーンのブームを表す前記データに基づくブームの3次元表示、及び
前記最大水平作業距離を表す前記データに基づく、前記第1の作業領域のための前記第1の最大水平作業距離と前記第2の作業領域のための前記第2の最大水平作業距離の3次元表示、
を備える3次元モデルを、前記プロセッサにより実行されたときに生成するように構成された、コンピュータ実行可能命令、
を備えるデータを記憶し、
前記第1の作業領域は第1の旋回セクタ内に延び、前記第2の作業領域は前記第1の旋回セクタに隣接する第2の旋回セクタ内に延びており、
前記コンピュータ実行可能命令はさらに、前記ブームの3次元表示と前記第1の最大水平作業距離の3次元表示との間の第1の
近接度ベクトルと、前記ブームの3次元表示と前記第2の最大水平作業距離の3次元表示との間の第2の
近接度ベクトルとを計算するようにされ、前記3次元モデルはさらに、前記第1の
近接度ベクトルと前記第2の
近接度ベクトルの3次元表示を備え、
前記3次元モデルは、前記ディスプレイ上に表示される、クレーン制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クレーン制御システムに関し、より詳細には非対称的なアウトリガー配列を有するクレーンの定格容量制限装置(RCL)に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンは輸送台車の形態をした下部走行体ユニットと物体を吊り上げるためのブームを有する上部構造ユニットを含んでいるのが典型的である。上部構造ユニットは下部走行体ユニット上で回転できるようになっているのが典型的である。輸送時、クレーンは下部走行体ユニットによってその車軸とタイヤに支持される。
【0003】
クレーンは、吊り上げ動作のために使用されるとき、普通は、輸送台車のタイヤ及び車軸に載っているときの実現可能な安定性よりも更に大きな安定性を有していなくてはならない。吊り上げ動作中のクレーンの安定性及び支持を提供するために下部走行体ユニットにアウトリガーシステムを設けることはよく知られている。アウトリガーシステムは、クレーンが吊り上げ作業を遂行しようとする位置に配置されたときにクレーンを支持するための逆ジャッキを有する少なくとも2つの(多くの場合は4つ又はそれ以上の)伸縮式アウトリガービームを含んでいるのが普通である。
【0004】
クレーンが吊り上げる荷重を監視して不安全な動作状態を操作者に報知するためにRCLシステムが開発された。伝統的なRCLシステムは、指示器や閾値に達したら音を発する可聴警報ほどに簡易なものもある。例えば、クレーンが或る特定の容量を超えて吊り上げようとすれば警報が鳴動することになる。より最近では、監視システムは、クレーンの配置を監視し、クレーンが不安全な動作状態へと移行していきそうであれば操作者に報知することができる。例えば、クレーンはフックにかかる一定の荷重を有しているかもしれないが、ブーム角度を下げてゆけば荷重モーメントは増加する。RCLシステムは、ブーム角度の変化及び荷重モーメントの増加を検出し、操作者に報知することができる。
【0005】
RCLシステムは、典型的には、クレーン構成に依存した最大許容吊り上げ荷重を指し示す荷重表と称される情報を有している。構成特性の1つはアウトリガーの位置付けである。典型的には、4つのアウトリガーは正方形に近い配列になっているものとされており、荷重表はアウトリガーの車両からの0%伸展時、50%伸展時、又は100%伸展時しか考慮していない。また、荷重表は、アウトリガーが全て同じ範囲まで伸展されているものと仮定している。回転中心線はアウトリガー間の大凡中間にあるので、最小許容荷重が揺動角度と共に変化しないことから荷重表は「360チャート」であるものと仮定できる。
【0006】
状況によっては、移動式クレーンがアウトリガーを全て同じ位置まで伸展させることができないこともある。例えば、壁又は他の物体が障害となって一つのアウトリガーを伸展させられず、結果として非対称的な配列になってしまうこともある。そのとき許容荷重は揺動角度に依存することになる。慎重を期すならば最小のアウトリガー伸展量に基づいて荷重表を選択することになるであろう。これは揺動角度に関わらず安全な動作状態を提供することになる。但し、この荷重表手法は、利用できたはずのクレーンの容量を制限することになるかも知れない。代わりに、上部構造と荷重との間のアウトリガーの位置に基づいて荷重表が選択されるようにすることもできるであろう。これはクレーンの吊り上げ容量を最大化するかも知れないが、システムが限定区域の外では何らの吊り上げも行なうことのないことを確実にするには注意深い監視が必要になるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国仮特許出願第62/096,041号
【文献】米国特許出願第14/974,812号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
移動式クレーンが非対称的なアウトリガー構成で吊り上げ動作を遂行できるようにするシステムを開発することが有益であろう。また、その様なシステムがクレーンの容量又は上部構造の揺動角度を不必要に制限しないのであれば好都合であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
アウトリガーが非対称的であるときのクレーンのブームの制御を強化するためのシステム及び方法が開示されている。1つの態様では、クレーンのブームの制御を強化するための方法は、ブームのフックにかかる荷重についての最大水平作業距離を表すデータを保存する段階と、ブームの位置を表すブームデータを保存する段階と、フックの位置と最大水平作業距離との間の最小ベクトルを計算する段階と、当該ベクトルがゼロ絶対値に達するのを防ぐようにブームの動きを制御又は制限する段階と、を含んでいる。
【0010】
幾つかの実施形態では、最大水平作業距離を表すデータを保存する段階は、荷重表を表すデータを入力する段階を含んでいる。幾つかの実施形態では、最大水平作業距離は揺動角度に依存して変動する。幾つかの実施形態では、最大水平作業距離を表すデータを保存する段階は、フックにかかる荷重を検出する段階と、検出された荷重に基づいて最大作業半径を計算する段階と、を含んでいる。幾つかの実施形態では、最大作業半径を計算する段階は、少なくとも1つのアウトリガーの位置を検出する段階と、検出された位置を使用して最大作業距離を計算する段階と、を含んでいる。
【0011】
幾つかの実施形態では、方法は、更に、クレーンの付近の禁止領域を表すデータを保存する段階と、禁止領域とブームとの間の第2の最小ベクトルを計算する段階と、コンピューティングデバイスによって、当該第2のベクトルがゼロ絶対値に達するのを防ぐようにブームの動きを制限する段階と、を含んでいる。幾つかの実施形態では、ブームの動きを制限する段階は、閾値ベクトル絶対値を確立する段階と、フックと作業半径との間の最小ベクトルの絶対値が閾値ベクトル絶対値より小さいことに応えてクレーン機能を変更する段階と、を含んでいる。幾つかの実施形態では、クレーン機能を変更する段階は、フックを作業半径により近寄らせるような少なくとも1つの方向へのブームの動きを低速化する段階を含んでいる。幾つかの実施形態では、ブームの動きを制限する段階は、更に、運転停止閾値ベクトル絶対値を確立する段階と、フックと作業半径との間の最小ベクトルの絶対値が閾値ベクトル絶対値より小さいことに応えてブームの動きを停止させる段階と、を含んでいる。
【0012】
別の態様では、クレーンのブームを制御するためのシステムが開示されている。システムは、クレーンブームの動作を制御するように構成されているクレーン制御システムと、クレーン制御システムと動作可能に通信しているプロセッサと、プロセッサと動作可能に通信しているメモリと、を含んでいる。メモリは、座標系を表すデータ、クレーンブームを表すデータ、最大水平作業距離を表すデータ、及びプロセッサによる実行のためのコンピュータ実行可能命令、を含むデータを記憶している。コンピュータ実行可能命令は、プロセッサに、クレーンブームと最大水平作業距離との間の最小ベクトルを、クレーンブームを表すデータ及び最大水平作業距離を表すデータに基づいて計算させるように、及びクレーン制御システムに、計算された最小距離に基づいてブームの動きを制限させるように、構成されている。
【0013】
幾つかの実施形態では、最大水平作業距離を表すデータは揺動角度に依存している。
【0014】
幾つかの実施形態では、システムは、更に、クレーンブームにかかる荷重を測定するように構成されている荷重センサを含んでおり、最大水平作業距離を表すデータはフックにかかる測定荷重に依存している。
【0015】
システムは、更に、アウトリガー長さ監視装置を含んでいてもよく、検出されたアウトリガー長さが最大水平作業距離を計算するのに使用される。
【0016】
別の態様によれば、クレーン制御システムは、プロセッサと、プロセッサへ動作可能に連結されているディスプレイと、プロセッサと動作可能に通信しているメモリと、を含んでいる。メモリは、座標系を表すデータ、クレーンブームを表すデータ、最大水平作業距離を表すデータ、及びプロセッサによる実行のためのコンピュータ実行可能命令であって3次元モデルを生成するように構成されているコンピュータ実行可能命令、を備えているデータを記憶している。3次元モデルは、座標系を表すデータに基づく座標系の表示、クレーンブームを表すデータに基づくブームの表示、及び最大水平作業距離を表すデータに基づく最大水平作業距離の表示、を含むことができる。3次元モデルはディスプレイ上に表示される。
【0017】
本発明のこれら及び他の特徴及び利点は、付随の特許請求の範囲と併せて次の詳細な説明から自明となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係るクレーンの斜視図を示している。
【
図2】一実施形態に係るクレーン制御システムの配線図若しくはブロック線図を示している。
【
図3】一実施形態に係る、クレーン及び最大水平作業距離面を示している。
【
図4】一実施形態に係る、最大水平作業距離面とブームモデルと近接度ベクトルを有する座標系を示している。
【
図5】一実施形態に係る、最大水平作業距離面とブームモデルと二重近接度ベクトルを有する座標系を示している。
【
図6】一実施形態に係る、新たな場所へ動かされたブームモデル及び2つの更新された近接度ベクトルを有する
図5の座標系を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態をこれより更に説明してゆく。次に続く段落では、実施形態の異なる態様がより詳細に定義されている。その様に定義されている各態様は、明確にそれとは反対の指示のない限り、何れかの他の単数又は複数の態様と組み合わされてもよい。具体的には、好適又は好都合であると示唆されている何れかの特徴が好適又は好都合であると示唆されている何れかの他の単数又は複数の特徴と組み合わされてもよい。
【0020】
図1は、クレーン10の斜視図である。クレーン10は、地面との係合のための下部構造4、及び上部構造とも称される回転台8へ取り付けられている運転室6を含んでいる。回転台8は、下部構造4に対して回転軸「A」周りに回転する。ブーム12が、回転台8へ取り付けられていて、運転室6に配置されているコンピュータシステム(
図2の300)の様なコンピューティングデバイスによって、及びコンピューティングデバイスによって制御されるクレーン制御装置によって、制御されている。1つの実施形態では、コンピュータシステム300は、ブーム運動、アウトリガーの伸展/収縮、ホイスト動作、などの様な、1つ又はそれ以上のクレーン機能を制御するように構成されているクレーン制御システムである。ブーム12は、基部部分13と、運転室6内の操作者制御によって及び/又はクレーン制御システム300から受信される制御信号によって、基部部分13に対して伸展(テレアウト(tele-out))又は収縮(テレイン(tele-in))させることのできる1つ又はそれ以上の伸縮部分14と、を含むことができる。運転室6の使用及びコンピューティングデバイスの場所は例示にすぎず、コンピューティングデバイスは運転室6内に配置されている必要はない。例えば、コンピューティングデバイスはクレーン10の下部構造に内蔵させることもできよう。
【0021】
コンピューティングデバイス300及び制御部は、更に、回転台8の動きを制御してブーム12を左揺動させる及び右揺動させることができる。コンピューティングデバイス及び制御は、更に、ブーム12を制御して上昇(ブームアップ)及び下降(ブームダウン)させることもできる。これらの6つの方向(テレアウト、テレイン、ブームアップ、ブームダウン、左揺動、及び右揺動)は、それぞれ、ベクトルによって表すことができ、各々が解説されている様に適切なアルゴリズムを使用して処理され追跡されるようになっていてもよい。ベクトル解析を行いブーム12の向きを継続的に監視することによって、作業現場での障害物との衝突を回避することができる。
【0022】
アウトリガー16は、吊り上げ動作が遂行されようとしているときに、下部構造4の側面から伸び、クレーン10のための支持基盤を提供する。アウトリガー16は、クレーンを輸送する場合は収縮される。アウトリガーは独立に制御されていて、各アウトリガー16を異なる距離へ伸展させることができるようになっている。例えば、
図1の実施形態では、クレーンの左手側のアウトリガーは伸展され、クレーンの右手側のアウトリガーは収縮されている。アウトリガー16の伸展又は長さは、例えば、コンピュータシステム300へ動作可能に接続されていてもよいアウトリガー長さ監視装置によって、検出、計算、又は測定されるようになっていてもよい。
【0023】
図2は、コンピュータシステム300(又は他のコンピューティングデバイス)の或る実施形態であって、運転室コンピューティングデバイス300又は無線ネットワークコンピュータ、又はここに言及されている何れかの他のコンピューティングデバイス、若しくは開示されている方法又は開示されている論理を実行するのに使用することのできる何らかの他のコンピューティングデバイス、を代表し得るコンピュータシステム300の実施形態を示している。コンピュータシステム300は、コンピュータシステム300にここに開示されている方法又はコンピュータベースの機能の1つ又はそれ以上を遂行させるように、実行されることになる指令リスト又は命令302のセットを含んでいてもよい。コンピュータシステム300は、独立型デバイスとして動作していてもよいし、又は例えばネットワークを使用して、例えば他のコンピュータシステム又は周辺デバイスへ接続されていてもよい。
【0024】
ネットワーク化された配備では、コンピュータシステム300は、サーバクライアントユーザーネットワーク環境でのサーバの資格で又はクライアントユーザーコンピュータとして動作していてもよく、又はピアツーピア(又は分散型)ネットワーク環境でのピアコンピュータシステムとして動作していてもよい。コンピュータシステム300は、更に、パソコン又はモバイルコンピューティングデバイスの様な各種デバイスであって、限定するわけではないが特定のアプリケーションの実行、プログラムの実行、及び何れかの形態のブラウザを通してインターネット又はウェブにアクセスするというオプションを伴う実行を含め、当該機械によって取られるべきアクションを規定する命令302のセットを実行する能力のあるデバイスとして実装されていてもよいし又はその様なデバイスへ組み入れられていてもよい。更に、説明されているシステムの各々は、1つ又はそれ以上のコンピュータ機能を遂行するべく命令の一セット又は複数セットを個別に又は合同で実行するサブシステムの何れかの集合体を含んでいてもよい。
【0025】
コンピュータシステム300は、情報を通信するためのバス320にメモリ304を含んでいてもよい。メモリ304には、コンピュータシステムにここに説明されている行為又は動作の何れかを遂行させる働きをするコードが記憶されていてもよい。メモリ304は、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、プログラム可能メモリ、ハードディスクドライブ、又は何れかの他の型式の揮発性及び不揮発性メモリ又は記憶デバイスであってもよい。
【0026】
コンピュータシステム300は、中央処理ユニット(CPU)及び/又はグラフィックス処理ユニット(GPU)の様なプロセッサ308を含んでいてもよい。プロセッサ308は、1つ又はそれ以上の汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、デジタル回路、光回路、アナログ回路、それらの組合せ、又は他の現時点で知られている又は今後開発されるデータ分析用及びデータ処理用のデバイスであってもよい。プロセッサ308は、命令302のセット又は他のソフトウェアプログラム、例えば論理的機能を実装するための手動でプログラムされた又はコンピュータ生成されたコードなど、を実装していてもよい。論理的機能又は説明されている何れのシステム要素も、他にも機能がある中でも、アナログの電気信号、音声信号、又は映像信号、又はそれらの組合せの様なアナログデータ源を、視聴目的又はコンピュータ処理の互換性目的の様な他のデジタル処理目的のためにデジタルデータ源へ処理及び/又は変換するようになっていてもよい。
【0027】
コンピュータシステム300は、更に、ディスクドライブユニット又は光学式ドライブユニット315を含んでいてもよい。ディスクドライブユニット315は、命令302の1つ又はそれ以上のセット、例えばソフトウェア、を埋め込むことのできるコンピュータ可読媒体340を含んでいてもよい。更に、命令302は、ここに説明されている動作の1つ又はそれ以上を遂行するようになっていてもよい。命令302は、コンピュータシステム300による実行中は、メモリ304内及び/又はプロセッサ308内に完全に又は少なくとも部分的に常駐していてもよい。メモリ内の1つ又はそれ以上のデータベースは、荷重表データを記憶していてもよい。
【0028】
メモリ304及びプロセッサ308は、更に、以上に論じられているコンピュータ可読媒体を含んでいてもよい。「コンピュータ可読媒体」、「コンピュータ可読記憶媒体」、「機械可読媒体」、「伝搬信号媒体」、及び/又は「信号担持媒体」は、命令実行可能なシステム、機器、又はデバイスによって或いはそれらと関連して使用するためのソフトウェアを含む、記憶、通信、伝搬、又は伝達する如何なるデバイス、を含むものとすることができる。機械可読媒体は、限定するわけではないが、選択的に、電子式、磁気式、光学式、電磁式、赤外線、又は半導体によるシステム、機器、デバイス、又は伝搬媒体、であってもよい。
【0029】
コンピュータシステム300は、更に、クレーン制御装置350、作業範囲制限装置360、及び定格容量制限装置365を含んでいてもよい。クレーン制御装置350は、プロセッサ308及びバス320と連結されていて、プロセッサ308から制御信号を受信したことに応えて、ブーム12及び回転台8を含むクレーンの構成要素を制御するように構成されていてもよい。
【0030】
定格容量制限装置365(当技術ではモーメント制限装置とも呼称される)は、クレーン操作者が確実にクレーン装置を設計パラメータの範囲内で安全に作業させるようにするための情報を提供する。作業範囲制限装置360は、クレーン操作者が確実にクレーン装置を規制容量の外で安全に作業させるようにするための情報を提供する。作業範囲制限装置360及び定格容量制限装置365は、それぞれ、複数のセンサを通してクレーンの動作を監視し、クレーン10の限界に関する情報を操作者へ提供するようになっていてもよい。幾つかの実施形態では、作業範囲制限装置360及び定格容量制限装置365の機能性は単一のユニットへ組み合わされていてもよい。クレーン10が物体を吊り上げると、クレーン10の動作と共に継続的に読取りが変化する。センサは、クレーンブーム12の長さ及び角度、吊り上げの高さ及び範囲、定格荷重、吊り上げ荷重、など、に関する情報を提供する。クレーン10が許容範囲を超えて作業しそうになると、定格容量制限装置365及び/又は作業範囲制限装置360が、警報の鳴動、指示器の点灯、又はクレーンの動作の修正を行なうようになっている。幾つかの実施形態では、作業範囲制限装置360は、更に、ブーム12、伸縮部分14、及び回転台8の制御装置の役割を果たすように適合されていてもよい。
【0031】
加えて、コンピュータシステム300は、ユーザーがコンピュータシステム300の構成要素の何れかと対話するために構成されている、キーボード、タッチスクリーンディスプレイ、及び/又はマウスの様な、入力デバイス325を含んでいてもよい。それは、更に、液晶ディスプレイ(LCD)、ブラウン管(CRT)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)、又は情報を伝えるのに適した他のディスプレイの様な、ディスプレイ370を含んでいてもよい。ディスプレイ370は、ユーザーがプロセッサ308の働きを見るためのインターフェースの役目、即ち具体的にはメモリ304又はドライブユニット315に記憶されているソフトウェアとのインターフェースの役目を果たすことができる。
【0032】
コンピュータシステム300は、通信ネットワーク経由の通信を可能にする通信インターフェース336を含んでいてもよい。ネットワークは、有線ネットワーク、無線ネットワーク、又はそれらの組合せ、を含んでいてもよい。通信インターフェース336ネットワークは、802.11、802.17、802.20、WiMax、セルラー電話規格、又は他の通信規格の様な、様々な通信規格による通信を可能にすることができる。
【0033】
従って、当該方法及びシステムは、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組合せで実現することができる。当該方法及びシステムは、少なくとも1つのコンピュータシステムで集中的に実現されていてもよいし、又は異なる要素が幾つかの相互接続されたコンピュータシステムを跨いで散らばる分散的に実現されていてもよい。ハードウェアとソフトウェアの典型的な組合せは、汎用コンピュータシステムであって、ローディングされて実行されると、コンピュータシステムがここに説明されている方法を実施するように当該コンピュータシステムを制御するコンピュータプログラムを有する汎用コンピュータシステムということになろう。その様なプログラムされたコンピュータは、専用コンピュータと考えることもでき、運転室6への設置向けに及びクレーン10の制御向けに特別に適合されていてもよい。
【0034】
当該方法及びシステムは、更に、ここに説明されている動作の実装を可能にする機構全てを含んでいて、コンピュータシステムにローディングされるとこれらの動作を実施することのできるコンピュータプログラム製品に埋め込まれていてもよい。本文脈でのコンピュータプログラムとは、情報処理能力を有するシステムに或る特定の機能を直接に遂行させること、又は次のa)別の言語、コード、又は表記法への変換、b)異なる素材形態での再現、の何れか又は両方の後に遂行させること、を意図した命令のセットを何れかの言語、コード、又は表記法で表したものを意味する。
【0035】
当業者には自明である様に、開示されている実施形態と関連付けて説明されている方法の段階又はアクションの順序は変更されてもよい。従って、図に登場している何れの順序又は図を参照して若しくは詳細な説明の中で説明されている何れの順序も、例示のみが目的であり、明示的に要求されている場合を別にして必須の順序を示唆するものではない。
【0036】
図3は、
図1のクレーン10を、更に詳細に解説されている最大水平作業距離を表す3次元(「3D」)の面18に関係付けて示している。最大水平作業距離は、クレーン10の所望レベルの安定性を維持しながら所与の荷重が支持され得るクレーン10からの最大水平作業距離である。この最大水平作業距離を超えて荷重を動かすことは、結果として望ましくない構成をもたらしかねない。
【0037】
1つの実施形態では、3D面18は、概して、或る角度範囲を通って延びていて概して台8の回転軸「A」に対応する中心点を有する円弧によって形成することができる。円弧は最大水平作業距離を表す。更に円弧を垂直に延長させることによって3D面18を形成することができる。こうして、3D面18は、円筒状の壁又は面の区分或いは別の湾曲した平面の区分として示されることができる。1つの実施形態では、3D面18の垂直方向の成分は水平方向の平面「H」(
図4参照)に直角に延びており、よって3D面18の一部又は全部が水平方向の平面「H」に直角である。従って、所与の揺動角度にて、最大水平作業距離は円弧の半径に対応する。半径若しくは最大水平作業距離は揺動角度の関数として変化するようになっていてもよい。
【0038】
1つの実施形態では、最大水平作業距離は、最大荷重を最大水平作業距離と相関付ける荷重表に基づくことができる。例えば、操作者が自分たちは或る特定の最大荷重を吊り上げる必要があるはずだということを知っているなら、操作者は当該荷重についての最大水平作業距離を規定している荷重表を選択することができる。1つの実施形態では、荷重表を表すデータが制御システム300へ提供されるようになっていてもよい。これは、最大荷重が作業距離について規定されている従来の荷重表と関連性はあるがそれとは異なる。最大水平作業距離はクレーンのアウトリガー構成に依存して変動することになる。例えば、最大水平作業距離は、吊り荷とクレーンとの間のアウトリガーが一杯まで伸ばされている場合には、伸ばされていないときに比べてより大きくなる。
【0039】
他の実施形態では、フックにかかる荷重は制御システム300によって測定することができ、そうすると最大水平作業距離は測定された荷重に基づいて求められる。例えば、予想される最高荷重についての最大水平作業距離を見つけるのではなしに、実際の荷重についての最大水平作業距離が確定される。この最大水平作業距離は、フックにかかる荷重が小さくなるにつれ増加する。従って、クレーンは、より軽い吊り荷ほどクレーンからより遠くで吊り上げることができるが、より重い荷重でもクレーンの近くにあるなら吊り上げることができるようになる。1つの実施形態では、フックにかかる荷重は荷重センサによって測定することができる。荷重センサは制御システム300へ動作可能に連結されていてもよい。
【0040】
最大水平作業差分を確定するのにどの技法が使用されようと、3D面は確定された最大水平作業距離に依存することになる。また、クレーン10は非対称になっているアウトリガー16構成を有していることもあるので、最大水平作業距離はクレーン10上のブーム12の揺動角度に依存して変動するようになっていてもよい。
図3では、クレーン10の右側に対し第1の最大水平作業距離20が定義されており、更にクレーン10の後方に対し第2の最大水平作業距離22が定義されている。クレーン10の前方及び左側に対する他の円筒状又は部分円筒状の3D面が存在するはずであるが、明快さを期してここには示されていない。この特定の実施例は4つの分断された円筒状又は部分円筒状の3D面を有するものとされているが、4つより多い又は少ない円筒状又は部分円筒状の3D面を存在させることも実施可能である。幾つかの実施形態では、揺動角度に依存して動的に最大水平作業距離を確定することができる。
【0041】
図4を参照して、1つの実施形態では、コンピュータシステム300は、プロセッサ308による命令302のセットの実行に応えて、ブーム12の表示42と、上に説明されている3D面18の1つ又はそれ以上の形態をしている単数又は複数の最大水平作業距離の表示と、を有する3次元(「3D」)モデルを生成するように構成されている。
図4では、最大水平作業距離及び異なる揺動角度を表すために4つの3D面34、36、38、40が示されている。ブーム表示42と4つの3D面34、36、38、40は3D座標系32の中で互いに対して向きを定められている。
【0042】
1つの実施形態では、ブーム表示42は、ブームの諸部分、例えば基部部分13や伸縮部分14、の相対的な位置付けを指し示す1つ又はそれ以上のブームセンサ52(
図3参照)からのセンサデータに基づいて生成される。例えば、1つの実施形態では、ブームセンサ52は座標系32に対するブームの部分13の位置を測定することができる。代替的又は追加的に、ブームセンサ52は、ブーム12の伸展長さを測定することもできる。ブームセンサ52は、更に、ブーム吊り上げ角度及びブーム揺動角度を測定するようになっていてもよい。
【0043】
最大水平作業距離は、3Dモデル内の台8の垂直軸すなわち回転軸「A」に対する場所に位置付けられていてもよい。加えて、最大水平作業距離は3Dモデル内で(単数又は複数の)円筒状区分として又は上に説明されている他の3D面18として提供されていてもよい。(単数又は複数の)円筒状部分又は他の3D面18は制御システム300によって荷重表情報に基づいて生成されており、当該情報は、例えば、測定されたフック荷重又は所望又は予測フック荷重とアウトリガー配列とから導出することができる。
【0044】
図4は、座標系32と、最大水平作業距離を表す3D面34、36、38、40と、クレーンブーム12を表すブームセグメント42と、近接度ベクトル44と、を含む3Dモデル30の一例を示している。3D面34、36、38、40は、以上に説明されている技法を使用して定義されている。3D面は、更に、ここでは最大水平作業距離面と呼称されることもある。
【0045】
1つの実施形態では、ブーム表示42は、ブーム12の物理的な配置向きを表す線分である。ブーム表示42は、ブーム12の基部を表す第1端46とブーム12の先端を表す第2端48を有している。ブーム表示42の向きは、ブームセンサ52の様な、クレーン10にとって利用可能な各種センサに基づいて確定することができる。例えば、揺動角度センサの様なブームセンサ52であれば、ブーム表示42が指している水平方向を確定することができるだろうし、ブーム長さセンサであれば、ブーム表示42の長さを確定することになるだろうし、またブーム吊り上げ角度センサは、ブーム表示42の水平方向の平面Hに対する角度を確定することができる。加えて、ブーム12のフック端は、荷重がかかっていれば下方に撓むであろう。撓みの量は、当技術で知られているRCLの計算に基づいて確定することができる。撓みは、ブームセグメント42の第2端に別の線分によって表されてもよいし、又はブーム表示42の長さ及び角度を詰めるという形でブームの描出物へ組み込まれてもよい。
【0046】
図4に示されている様に、最大水平作業距離面34、36、38、40は、ブーム表示42を定義している同じ座標系に対して定義されている。近接度ベクトル44は最大水平作業距離面34、36、38、40とブーム表示42との間の最小ベクトルである。このベクトル44は、ブーム表示42及び最大水平作業距離面34、36、38、40の既知の座標に基づいて計算することができる。このベクトル44は、個別の点で算出されてもよいし、又は継続的に計算されてもよい。
【0047】
近接度ベクトル44は、ブーム12の先端が最も近い最大水平作業距離面(
図4の34)にどれほど近接しているかを指し示していて、ブーム12と最も近い最大水平作業距離34との間の最小距離の方向も与えている。つまり、ベクトル44は、距離及び当該距離が延びる方向に関係する情報を提供するように構成されている。近接度ベクトル44は、ブーム12を動かせばフックが最も近い最大水平作業距離にぶつかってしまうかどうかを判定する比較的単純な計算を可能にさせる。例えば、近接度ベクトル44の絶対値は、ブーム12が最も近い最大水平作業距離34に接近するにつれてゼロに近づくはずである。
【0048】
幾つかの実施形態では、クレーン制御装置300は、近接度ベクトル44の絶対値に基づいて操作者入力に対する感度を調節するように構成されていてもよい。近接度ベクトル44がゼロに近づくと、クレーン制御は、ブームが最も近い最大水平作業距離面にぶつかるのを防止するように低速化してもよい。例えば、クレーン制御装置300は、ブーム12が最も近い最大水平作業距離面に接近するにつれてブーム12の速度を落とすようにブーム12を制御することができる。1つの実施形態では、ブーム12がより低い最大水平作業距離を有する隣接の旋回又は揺動セクタに接近するにつれ、ブーム12が揺動する速さ(即ち揺動角度の変化率)を遅くすることができる。別の実施形態では、ブーム12が最大水平作業距離面に接近するにつれ、ブーム12が伸縮する速さを落とすことができる。更に別の実施形態では、ブーム12が最大水平作業距離面に接近するにつれ、ブーム12を上昇又は下降させる速さ(即ち吊り上げ角度の変化率)を遅くすることができる。
【0049】
制御システム300は、ブーム12が最大水平作業距離面に接近しつつある旨の近接度ベクトルに基づく指示に応えて、以上のクレーン諸機能(例えば、ブーム伸縮速度、ブーム揺動速度、ブーム吊り上げ速度)の1つ又はそれ以上を制御することができる、ということが理解される。ブーム12の様なクレーン構成要素を低速化することに加え、制御システム300は、代替的又は追加的に、ブームの様なクレーン構成要素の動きを停止させるようにしてもよい。
【0050】
1つの実施形態では、閾値ベクトル絶対値が制御システム300にて提供されてもよい。閾値ベクトル絶対値は、最大許容近接度ベクトル又は最小許容近接度ベクトルであってもよい。例えば、1つの実施形態では、閾値ベクトル絶対値は、フックと最も近い最大許容作業距離面との間の最小許容近接度である。制御システム300は、フックと最大作業距離面との間の距離が閾値ベクトル絶対値より小さいことに応えて、クレーン機能を変更するように構成されている。クレーン機能は、例えば、揺動方向、伸縮方向、又は吊り上げ方向の1つ又はそれ以上の方向のブーム速度であってもよい。
【0051】
代替的又は追加的に、運転停止ベクトル絶対値が制御システム300にて確立されてもよい。そうすると、フックにかかる荷重が最大作業距離に対して運転停止ベクトルより小さい距離に位置付けられていることに応えて、クレーン制御システム300が、伸縮方向、揺動方向、又は吊り上げ方向のブームの動きの様な、クレーン機能を運転停止させるようになっていてもよい。
【0052】
幾つかの実施形態では、クレーン制御システム300は、制御に対する感度を異なる量で調節するようになっていてもよい。クレーン10は、ブーム12を上昇させてゆくとき又はブーム12を収縮させてゆくときは最も近い最大水平作業距離34にぶつかることはなさそうなので、クレーン制御システム300は、それら各々の場合の感度を、ブーム12を下降させてゆくとき又は伸展させてゆくときの感度より引き下げてもよいし、又はそれらの感度を一切調節しないというのであってもよい。
【0053】
幾つかの実施形態では、操作者入力の感度を選択的に調節するのに絶対値と併せて近接度ベクトル44の方向が用いられてもよい。例えば、揺動角度感度の引き下げは、近接度ベクトル44の周方向成分に依存し、ブーム角度感度及びブーム伸縮感度の引き下げは、近接度ベクトル44上の半径方向成分に依存していてもよい。これらの計算は、米国仮特許出願第62/096,041号(障害物の近くでクレーンを動作させるためのクレーン3D作業空間の空間的技法(CRANE 3D WORKSPACE SPATIAL TECHNIQUES FOR CRANE OPERATION IN PROXIMITY OF OBSTACLES))及びそれに続いて出願されている同じ名称を有する米国特許出願第14/974,812号に見つけられ、両出願をここに参考文献としてそっくりそのまま援用する。
【0054】
図4に描かれている様な実施例では、近接度ベクトル44は、単一の最大水平作業距離面について計算することができる。
図5に示されている実施例の様な幾つかの実施形態では、クレーン制御システム300は、複数の最大水平作業距離面34、36、38、40の間の断絶を勘案して複数の近接度ベクトル44a、44bを使用することができる。例えば、幾つかの実施形態では、現在の作業領域又は旋回セクタでの最大水平作業距離面までの略半径方向の距離を指し示すべく或る近位度ベクトルが提供され、異なる最大水平作業距離を有する隣接の作業領域又は旋回セクタまでの距離と当該隣接の作業領域が位置する方向を指し示すべくもう1つの近位度ベクトルが提供されてもよい。
【0055】
図5は、最大水平作業距離面34、36、38、40に対して位置付けられているクレーンブーム42の別の3Dモデルではあるが複数の近接度ベクトル44a、44bを有する3Dモデルを示している。上から見て時計回りにブーム12が揺動するつもりなら、第1の近接度ベクトル44aの与り知らぬところで異なる最大水平作業距離面36にぶつかってしまうだろう。従って、第2の近接度ベクトル44bが、クレーン制御システムに影響を与えるために使用されている。第2の近接度ベクトル44bを追加した場合、クレーン制御システム300は、時計回りの揺動運動を、ブームが時計回りに揺動されても異なる最大水平作業距離面36に干渉することのないほどブームが収縮されるまで阻止することができる。
【0056】
図6は、最大水平作業距離面34、36を作業範囲制限装置(WRL)と組み合わせた別の実施形態を示している。作業範囲制限装置の働きは、前述の米国仮特許出願第62/096,041号及び米国特許出願第14/974,812号に記載されている。この組合せの場合、クレーンの周りの空間について禁止領域又は障害物が定義されている。禁止領域又は障害物は、最大水平作業距離面34、36と同じに取り扱うことができ、近接度ベクトルが禁止領域及び最大水平作業距離面の最近接を指し示す。禁止領域は、例えば、最大水平作業範囲を超える区域とすることができる。追加的又は代替的に、フックにかかる荷重を、ブーム吊り上げ角度が増加してゆく際のブームの曲げ剛性によって制限するようにしてもよい。こうして、相対的に高い吊り上げ角度及び/又は相対的に高いブーム長さに対応する別の禁止領域がクレーン付近に存在することもある。別の禁止領域は、実質的に障害物を定義する容積、或いは、例えば最大吊り上げ高さを定義する平面又は建物又は作業現場の他の物体の様な障害物の面を定義する平面、ということになろう。
【0057】
図6に示されている様に、WRL禁止領域として天井高さ規制50が表されていて、3Dの平面状の面(それは平面のみならず稜線にも基づいている)として取り扱われている。この場合もやはり近接度ベクトル44a、44b、44cが円筒状の面と共に当該平面状の面に対しても計算される。そうするとクレーン制御システムは操作者入力に応えて、ブームの動きを修正することができる。例えば、
図6では、ブームの上方への動き及び伸展機能は、天井高さ規制との相互作用に基づいて阻止されてもよい。同様に、揺動運動及び伸展の制御は、制御の感度を制限するように修正されてもよい。
【0058】
従って、以上の実施形態では、最大水平作業距離面(即ち3D面)までの距離と方向が確定され、近接度ベクトルとしてコンピューティングシステム300へ提供される。次いで、ブーム12を動かせばフックが最も近い最大水平作業距離面にぶつかってしまうかを判定するための計算が近接度ベクトルに基づいて実施される。続いて、最大水平作業距離面を超えるフックの動きを回避するようにブーム12の動きが制御されることになる。
【0059】
加えて、最大水平作業距離の計算は、例えば、各アウトリガーの位置に基づくことができる。1つの実施形態では、アウトリガーは、互いに対して非対称的に配列及び伸展されていることもある。そうすると、異なる揺動角度又は異なる揺動角度範囲に対応する複数の最大水平作業距離が提供される。つまり、最大水平作業距離はブームの揺動角度に依存して変動することができる。
【0060】
以上の実施形態では、クレーン制御システム300は、生成された3Dモデルをディスプレイ370へ出力することができる。例えば、1つの実施形態では、メモリ304又は315は、プロセッサ308へ動作可能に接続されていて、座標系を表すデータ、クレーンブームを表すデータ、最大水平作業距離を表すデータ、及びプロセッサ308による実行のためのコンピュータ実行可能命令、を記憶することができる。コンピュータ実行可能命令は、プロセッサ308によって実行されたときに、3Dモデルを生成し当該3Dモデルをディスプレイ370へ出力するように構成されている。
【0061】
3Dモデルは、例えば、座標系を表すデータに基づいた座標系32の表示、クレーンブームを表すデータに基づいたブーム表示42、及び最大水平作業距離を表すデータに基づいた最大水平作業距離の表示、を含むことができる。最大水平作業距離の表示は、例えば3D面34、36、38、40として示されてもよい。1つの実施形態では、3D面は、円筒状区分の形態をしている。3Dモデルは、更に、天井高さ規制50を含んでいてもよい。更にまた、表示された3Dモデル内に1つ又はそれ以上のベクトル44a、44b、44cが示されていてもよい。
【0062】
従って、幾つかの実施形態では、ディスプレイ370は、概して、例えば
図4-
図6に示されている特徴を含む3Dモデルを表示することができる。1つの実施形態では、3Dモデルは、ブーム表示42の代わりに、クレーン10、クレーンブーム12、及び/又は他のクレーン構成要素、の縮尺合わせされた描出物を含んでいてもよい。
【0063】
ディスプレイ370は、クレーン上の操作者運転室に取り付けられていてもよいし、操作者運転室から離れた位置のクレーン上の制御パネルに取り付けられていてもよいし、現場から離れた制御センターに取り付けられていてもよいし、又はクレーン制御システムバス320へ動作可能及び/又は通信可能に連結されているタブレットやラップトップコンピュータの様な携帯型電子デバイス上に含まれていてもよい。
【0064】
従って、以上の実施形態では、クレーン、クレーンブーム、又はアウトリガーの様な他のクレーン構成要素、作業範囲限界又は境界、及びそれらの座標系内相対位置、の3D表示をディスプレイ370上で操作者へ提示することができる。そうすると、操作者は、作業現場でのクレーンの位置を他の作業現場内物体に対して及び特定の荷重及び特定のクレーン構成についてのクレーンの作業範囲限界に対して簡単に見極めることができるようになる。3Dモデルは、既定間隔で更新され、既定間隔でディスプレイ370へ出力されてもよい。1つの実施形態では、既定間隔は、ディスプレイ370がクレーン又は他のクレーン構成要素の動きを実質的にリアルタイムで示すべく構成されるほど十分に短くされている。つまり、3Dモデルは動的3Dモデルということになり、ディスプレイ370は動的モデルを表示することができるわけである。
【0065】
ここに参照されている全ての特許は、本開示の本文内にそういうものとして具体的に指示されていようがいまいが、これにより、ここにその全体を参考文献として援用する。
【0066】
本開示では、原文の「a」又は「an」の対訳である「一」又は「或る」は、単数形と複数形のどちらも含むと解釈されるべきである。逆に、複数形品目への言及は、該当する場合には単数形を含む。
【0067】
以上より、本発明の新規性のある概念の真の精神及び範囲から逸脱することなく数々の修正及び変更が達成され得るものと観測される。示されている特定の実施形態に対する何らの限定も意図されておらず、また暗示されるものでもないことを理解されたい。本開示は、付随の特許請求の範囲によって、当該特許請求の範囲の範囲内に収まる全てのその様な修正を網羅するものとする。
【符号の説明】
【0068】
4 下部構造
6 運転室
8 回転台
10 クレーン
12 ブーム
13 基部部分
14 伸縮部分
16 アウトリガー
18 3次元(3D)の面
20、22 最大水平作業距離
30 3Dモデル
32 3D座標系
34、36、38、40 最大水平作業距離面
42 ブームを表すセグメント
44、44a、44b、44c 近接度ベクトル
46 第1端(ブーム基部を表示)
48 第2端(ブーム先端を表示)
50 天井高さ規制
52 ブームセンサ
300 コンピュータシステム
302 命令
304 メモリ
308 プロセッサ
315 ディスクドライブユニット
320 バス
325 入力デバイス
336 通信インターフェース
340 コンピュータ可読媒体
350 クレーン制御装置
360 作業範囲制限装置
365 定格容量制限装置
370 ディスプレイ
A 回転台の回転軸
H 水平方向の平面