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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】電気機器の取付け構造
(51)【国際特許分類】
   F21V 15/01 20060101AFI20221014BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20221014BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20221014BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20221014BHJP
   F21V 31/00 20060101ALI20221014BHJP
   F21S 8/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
F21V15/01 350
H02G3/22
H05K7/00 L
F21V23/00 160
F21V31/00 400
F21S8/00 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018034424
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019149327
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-02-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】厨 謙三
(72)【発明者】
【氏名】山元 隼人
(72)【発明者】
【氏名】氷見山 渉
(72)【発明者】
【氏名】辻 智広
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-002318(JP,U)
【文献】特開2017-195044(JP,A)
【文献】特開2005-016916(JP,A)
【文献】特開2013-197321(JP,A)
【文献】特開平03-269907(JP,A)
【文献】特開2002-025306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 15/01
H02G 3/22
H05K 7/00
F21V 23/00
F21V 31/00
F21S 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室を構成する壁板と、
前記壁板に形成され、前記浴室内と前記浴室外の壁裏空間とを連通させる配線用開口部と、
ケーシング内に機器機能部を収容してなる機器本体と、前記ケーシングの背面から引き出された電線と、前記機器本体が前記壁板に取り付けられていない状態で前記壁板の内面に固定することが可能であって前記機器本体を前記壁板に固定するための台座ブラケットとを有する電気機器と、
前記ケーシングの前記背面よりも前記壁板側に配され、前記電線を当接させることで前記電線が上方へ変位することを規制可能な押え部とを備え、
前記電気機器は、前記ケーシングの前記背面を前記壁板の前記内面と対向させ、前記ケーシングの前記背面と前記台座ブラケットとによって囲まれた壁裏連通空間を構成し、前記ケーシングの背面から前記壁裏連通空間内へ引き出された前記電線を前記配線用開口部から前記壁裏空間へ導出させた状態で前記壁板に取り付けられており、
前記電線が前記押え部に当接することで、前記壁裏連通空間の内部において、前記電線のうち前記ケーシングの前記背面と前記押え部との間の領域が、前記壁板側から前記ケーシング側に向かって高くなるように傾斜した姿勢に保持されることを特徴とする電気機器の取付け構造。
【請求項2】
前記電線が前記押え部に当接した状態では、前記電線のうち前記壁裏空間側から前記電気機器側に向かって低くなるように屈曲した屈曲領域が、前記壁裏空間内のみに配されることを特徴とする請求項1記載の電気機器の取付け構造。
【請求項3】
前記押え部の下端は、前記ケーシングの前記背面における電線引出孔の上端と同じ高さか、前記電線引出孔の上端より低い位置に配されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電気機器の取付け構造。
【請求項4】
前記押え部が、前記台座ブラケットに一体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電気機器の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、浴室の壁面に電気機器を取り付けるための取付け構造が開示されている。電気機器のケーシング内には回路基板が収容され、ケーシングを構成する背面板には、貫通形態の配線穴が形成されている。回路基板に接続された複数本の電線は、配線穴を貫通してケーシングの外部に導出され、浴室の壁面の配線用開口部を通して、壁裏空間内に配索されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6249397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浴室内に電気機器を取り付け、壁裏空間内において電線が電気機器より高い位置へ向かって配索される場合には、壁裏空間内で電線に付着した水が、重力により電線を伝って流れ、配線穴からケーシング内に浸入することが懸念される。この対策として、特許文献1では、複数本の電線を束ねてシースで外装することで外周が円形をなすハーネスを構成するとともに、配線穴に筒状をなすゴム製のグロメットを取り付け、ハーネスの外周にグロメットの内周を液密状に密着させることで、ケーシング内への浸水防止を図っている。
【0005】
ケーシングの背面板にグロメットを取り付ける防水構造は、ケーシング内への浸水を阻止する手段としては有効である。しか、その一方で、ケーシング内におけるリード線の配索経路はグロメットの形状に依存するため、電気機器の内部における電線の配索自由度が制約されることが懸念される。信号線のように細い電線は、小さい曲率半径で自在に曲げることができるので、配索自由度が低くても大きな支障にはならない場合もある。しかし、電源線のように太くて剛性の高い電線の場合、配索自由度が低いと、電気機器を設計する上で大きな制約を受けることになる。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、電気機器の内部における電線の配索自由度を低下させることなく電気機器内への浸水を防止することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気機器の取付け構造は、
浴室を構成する壁板と、
前記壁板に形成され、前記浴室内と前記浴室外の壁裏空間とを連通させる配線用開口部と、
ケーシング内に機器機能部を収容してなる機器本体と、前記ケーシングの背面から引き出された電線と、前記機器本体が前記壁板に取り付けられていない状態で前記壁板の内面に固定することが可能であって前記機器本体を前記壁板に固定するための台座ブラケットとを有する電気機器と、
前記ケーシングの前記背面よりも前記壁板側に配され、前記電線を当接させることで前記電線が上方へ変位することを規制可能な押え部とを備え、
前記電気機器は、前記ケーシングの前記背面を前記壁板の前記内面と対向させ、前記ケーシングの前記背面と前記台座ブラケットとによって囲まれた壁裏連通空間を構成し、前記ケーシングの背面から前記壁裏連通空間内へ引き出された前記電線を前記配線用開口部から前記壁裏空間へ導出させた状態で前記壁板に取り付けられており、
前記電線が前記押え部に当接することで、前記壁裏連通空間の内部において、前記電線のうち前記ケーシングの前記背面と前記押え部との間の領域が、前記壁板側から前記ケーシング側に向かって高くなるように傾斜した姿勢に保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
壁裏空間内において電線が電気機器より高い位置へ向かって配索される場合には、壁裏空間内で電線に付着した水が、電線を伝って流れ落ちてケーシング内に浸入することが懸念される。本発明では、ケーシングの背面と壁板との間に押え部を設け、電線のうちケーシングの背面と押え部との間の領域を、壁板側からケーシング側に向かって高くなるように傾斜した姿勢に保持し、電線に付着した水を壁裏空間内において電線から滴下するようにした。これにより、ケーシングに防水用のグロメットを取り付ける必要がなくなるので、グロメットを設けたことに起因して電線の配索自由度が低下する、という虞はない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の電気機器の取付け構造の断面図
図2】電気機器の機器本体と台座ブラケットを分離した状態をあらわす斜視図
図3】電気機器の背面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、前記電線が前記押え部に当接した状態では、前記電線のうち前記壁裏空間側から前記電気機器側に向かって低くなるように屈曲した屈曲領域が、前記壁裏空間内のみに配されるようになっていてもよい。この構成によれば、電線を伝って流れ落ちた水を、壁板より電気機器側へ浸入させずに、壁裏空間内で確実に滴下させることができる。
【0011】
本発明は、前記押え部の下端は、前記ケーシングの前記背面における電線引出孔の上端と同じ高さか、前記電線引出孔の上端より低い位置に配されていてもよい。この構成によれば、電線が押え部に当接したときに、電線のうちケーシングの背面と押え部との間の領域を、水平な姿勢、又は前記壁板から前記ケーシングに向かって高くなるように傾斜した姿勢に、確実に保持することができる。
【0012】
本発明は、前記電気機器を前記壁板に固定するための台座ブラケットを備えており、前記押え部が、前記台座ブラケットに一体に形成されていてもよい。この構成によれば、台座ブラケットとは別に、押え部が形成された専用の部材を用いる場合に比べると、部品点数を削減することができる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図3を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図1における左方を前方と定義する。上下の方向については、図1~3にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。
【0014】
本実施例1の電気機器15の取付け構造は、図1に示すように、ユニットバスとして構成された浴室10の壁板11に電気機器15を取り付けたものであり、電気機器15の内部における電線22の配索自由度を低下させることなく電気機器15内への浸水を防止することを実現している。浴室10を区画する壁板11の外面(浴室10とは反対側の面)と建物の躯体壁12との間には、壁裏空間13が形成されている。壁板11には、浴室10内と壁裏空間13とを連通させる配線用開口部14が形成されている。
【0015】
電気機器15は、照明器具として機能するものであり、機器本体16と、台座ブラケット24とを組み付けて構成されている。機器本体16は、全体として横長の方形をなしており、合成樹脂製のケーシング17と、通電により発光機能を発揮する機器機能部21と、電線22とを備えて構成されている。
【0016】
ケーシング17は、全体として横長の箱形をなし、横長の方形をなす支持板18と、後面開放の箱形をなす透光性カバー23とを備えて構成されている。支持板18の前面には機器機能部21が取り付けられている。支持板18には、その前面から外面(ケーシング17の背面17R)へ貫通した形態の円形の電線引出孔19が形成されている。支持板18の背面17Rには、円形の外嵌部20が突出形成されている。外嵌部20は、電線引出孔19を概ね同心状に包囲するように配されている。透光性カバー23は、支持板18の前面(ケーシング17の内面)を覆うような形態で支持板18に組み付けられている。支持板18とケーシング17との隙間は液密状にシールされている。
【0017】
機器機能部21は、支持板18の前面に取り付けられている。支持板18に透光性カバー23を取り付けた状態では、機器機能部21はケーシング17内に収容される。機器機能部21は、通電により電気機器15としての本来の機能を発揮する。機器機能部21には電線22が接続されている。機器機能部21に接続された電線22は、電線引出孔19を通してケーシング17(電気機器15)の外部後方へ引き出されている。電線22は、2本の電源線(図示省略)を並列状態で束ね、この2本の電源線を一括して絶縁性のシースで被覆することで1本のハーネス状に成形されている。
【0018】
台座ブラケット24は、合成樹脂製であり、横長の板状をなしている。台座ブラケット24の前面には円筒形をなす取付部25が形成されている。機器本体16は、外嵌部20を取付部25に同心状に外嵌させた状態で、台座ブラケット24に取り付けられている。台座ブラケット24の後面24Rには、取付部25と同心の円形をなす位置決め突部26が形成されている。位置決め突部26は、配線用開口部14に対して台座ブラケット24を目視により位置決めするための目安としての機能と、パッキン28を台座ブラケット24に貼り付ける際の位置決めとしての機能と、台座ブラケット24を壁板11に固定したときにパッキン28が潰れ過ぎないようにするための機能と、台座ブラケット24をビス33で壁板11に固定したときにビス33の締付け力によって台座ブラケット24が不正に変形するのを防止する機能とを兼ね備えている。台座ブラケット24には、台座ブラケット24の前面から後面24Rに貫通した形態の電線貫通孔27が形成されている。電線貫通孔27は、取付部25及び位置決め突部26で包囲された円形領域内に配されている。電線貫通孔27の開口面積は配線用開口部14の開口面積よりも小さく設定されている。
【0019】
台座ブラケット24は、ビス33によって壁板11の内面11F(浴室10内に臨む面)に固定されている。台座ブラケット24を壁板11に固定した状態では、台座ブラケット24の位置決め突部26が、壁板11の配線用開口部14を同心状に包囲する形態で壁板11の内面11Fに当接する。壁板11の内面11Fと直角に視た水平視において、電線貫通孔27の開口領域は配線用開口部14の開口範囲内のみに限定される。つまり、配線用開口部14の開口領域は電線貫通孔27の開口領域の全体を含む広い範囲となっている。台座ブラケット24の後面24Rと壁板11の内面11Fとの間にはパッキン28が介装されている。パッキン28は、位置決め突部26及び配線用開口部14を全周に亘って包囲するように配され、台座ブラケット24の後面24Rと壁板11の内面11Fとの隙間を液密状にシールする。
【0020】
台座ブラケット24を壁板11に固定した後、機器本体16を台座ブラケット24に取り付ける。機器本体16を台座ブラケット24に取り付けた状態では、外嵌部20が取付部25に外嵌され、取付部25の外周と外嵌部20の内周との間にはシールリング29が介装される。シールリング29は、台座ブラケット24の前面と機器本体16(ケーシング17)の背面17Rとの隙間を液密状にシールする。電線引出孔19の開口領域は、取付部25で包囲された円形領域の範囲内のみとなっている。
【0021】
壁板11の内面11Fに台座ブラケット24と機器本体16を取り付けた状態では、壁板11の内面11Fより浴室10側に、電気機器15の背面17Rと台座ブラケット24とで囲まれた壁裏連通空間30が構成される。壁裏連通空間30と浴室10との間は、パッキン28とシールリング29とにより液密状にシールされている。機器本体16の背面17Rから壁裏連通空間30内へ引き出された電線22が、電線貫通孔27と配線用開口部14とに挿通される。壁裏空間13内では、電線22が配線用開口部14の上方へ引き上げられるように配索される。
【0022】
壁裏連通空間30は、配線用開口部14を介して壁裏空間13と連通しているとともに、電線引出孔19を介してケーシング17内の空間と連通している。したがって、ケーシング17(電気機器15)の内部空間は、壁裏連通空間30を介して壁裏空間13と連通している。そのため、壁裏空間13内の配線用開口部14より高い位置で電線22に水分が付着したり、電線22の外周で結露が生じたりした場合に、その水分が、電線22を伝って流れ落ち、壁裏連通空間30内を経て電線引出孔19に到達する可能性がある。
【0023】
本実施例の電気機器15は、下記の理由により、電線引出孔19の開口縁と電線22の外周との間にクリアランス31を設けている。外径寸法の大きい2本の電源線を並列して束ねた電線22は曲げ剛性が高いので、ケーシング17内の狭小スペース内において、電線22を小さい曲率半径で曲げることは困難である。そのため、電線引出孔19の開口面積を電線22の断面積より大きく設定して上記クリアランス31を確保し、電線22のうち機器機能部21との接続端部22Eの向きにばらつきがあっても、電線22を、電線引出孔19の開口縁に強く干渉させずにケーシング17の後方へ引き出させるようにしている。
【0024】
このように電線引出孔19の開口縁と電線22の外周との間にクリアランス31があると、電線引出孔19に到達した水分が電気機器15(ケーシング17)の内部に浸入することが懸念される。その対策として、壁裏連通空間30内には押え部32が設けられ、押え部32に対し電線22を下から当接させることで、壁裏連通空間30内における電線22の姿勢を、浸水できないような向きに矯正している。
【0025】
押え部32は、台座ブラケット24に一体に形成されている。詳細には、押え部32は、電線貫通孔27の開口縁部に形成され、電線貫通孔27の開口縁部のうち上縁部分を構成している。押え部32の下端縁は水平な直線状をなし、押え部32の水平方向の長さは、電線22の最大外径寸法より大きい寸法に設定されている。押え部32の下端縁と、電線貫通孔27の開口縁部における最下端との間の上下寸法は、電線22の最大外径寸法と同じか、それよりも大きい寸法に設定されている。押え部32の下端縁の位置は、電線引出孔19の開口縁部の上端よりも低い位置に配されている。
【0026】
電線貫通孔27に挿通された電線22は、上から押え部32により下向きに押圧される。ここで、電線22のうちケーシング17の背面17Rと押え部32との間の部分を、姿勢保持領域22Hと定義する。押え部32の高さは電線引出孔19の上端より低い位置に設定されているので、電線22の姿勢保持領域22Hは、壁板11(壁裏空間13)側からケーシング17の背面17R側に向かって高くなるように傾斜した姿勢に矯正される。したがって、壁裏空間13内で電線22を伝って流れ落ちた水分が、壁裏連通空間30内に浸入して押え部32の真下位置(姿勢保持領域22H)に至ったとしても、ケーシング17の背面17R(電線引出孔19)にまで到達することはない。したがって、電線引出孔19からケーシング17の内部への浸水の虞はない。
【0027】
また、電線22のうち壁裏空間13内に配索された下端部分を、屈曲領域22Wと定義する。電線22の屈曲領域22Wは、壁裏空間13から配線用開口部14(壁裏連通空間30)に向かって次第に低くなるように屈曲している。この屈曲領域22Wの配索範囲は、壁裏空間13内のみとされており、電線22のうち屈曲領域22Wと姿勢保持領域22Hとの間の部分は、水平配索領域22Lとなっている。水平配索領域22Lの配索範囲は、壁裏連通空間30のうち押え部32と壁板11の外面(壁裏空間13に臨む面)との間の領域内となっている。したがって、壁裏空間13内において電線22を伝って流れ落ちた水分は、水平配索領域22L内に浸入する前に、壁裏空間13内で電線22から滴下する。
【0028】
本実施例の電気機器15の取付け構造は、浴室10を構成する壁板11と、ケーシング17の背面17Rに形成した電線引出孔19から電線22を引き出させた形態の電気機器15とを備えて構成されている。壁板11には、浴室10内と浴室10外の壁裏空間13とを連通させる配線用開口部14が形成されている。電気機器15は、背面17Rを壁板11の内面11Fと対向させ、電線22を配線用開口部14から壁裏空間13へ導出させた状態で壁板11の内面11F(浴室10内)に取り付けられている。
【0029】
壁裏空間13内において電線22が電気機器15より高い位置へ向かって配索されているため、壁裏空間13内で電線22に付着した水が、電線22を伝って流れ落ち、壁裏連通空間30と電線引出孔19を経てケーシング17内に浸入することが懸念される。この対策として、本実施例では、ケーシング17の背面17Rよりも壁板11側の領域(背面17Rと壁板11の内面11Fとの間)に、電線22を下方から当接させることで電線22が上方へ変位することを規制可能な押え部32を配した。ケーシング17の背面17Rから壁裏連通空間30内へ引き出された電線22が押え部32に当接すると、電線22のうちケーシング17の背面17Rと押え部32との間の姿勢保持領域22Hが、壁板11側からケーシング17側に向かって高くなるように傾斜した姿勢に保持される。
【0030】
電線22の姿勢保持領域22Hを上記の向きに矯正したことにより、電線22に付着した水は、電線引出孔19に到達することなく、壁裏空間13内において電線22から滴下するようになっている。これにより、ケーシング17の電線引出孔19に防水用のグロメット(図示省略)を取り付ける必要がなくなったので、電線引出孔19の内周縁(開口縁)と電線22の外周との間にクリアランス31を確保することができた。クリアランス31を設けたことにより、ケーシング17の内部における電線22の配索の自由度が高められている。本実施例によれば、ケーシング17内への浸水を防止した上で、グロメットを設けたことに起因して電線22の配索自由度が低下することを回避できる。
【0031】
また、電線22が押え部32に当接した状態では、電線22のうち壁裏空間13側から電気機器15側に向かって低くなるように屈曲した屈曲領域22Wが、壁裏空間13内のみに配されている。この構成によれば、電線22を伝って流れ落ちた水を、壁板11より電気機器15側の壁裏連通空間30へ浸入させずに、壁裏空間13内で確実に滴下させることができる。
【0032】
また、押え部32の下端は、ケーシング17の背面17Rにおける電線引出孔19の開口縁の上端より低い位置に配されている。この構成によれば、電線22が押え部32に当接したときに、電線22のうちケーシング17の背面17Rと押え部32との間の姿勢保持領域22Hを、壁板11からケーシング17に向かって高くなるように傾斜した姿勢に、確実に保持することができる。
【0033】
また、電気機器15は、機器機能部21を備えた機器本体16と、機器本体16を壁板11に固定するための台座ブラケット24とを備えており、押え部32を、台座ブラケット24に一体に形成している。この構成によれば、台座ブラケット24とは別に、押え部32が形成された専用の部材を用いる場合に比べると、部品点数を削減することができる。
【0034】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、電線のうち壁裏空間側から電気機器側に向かって低くなるように屈曲した屈曲領域が、壁裏空間の範囲内のみに配されるようにしたが、電線の屈曲領域の一部が、壁板より電気機器側に配されていてもよい。
(2)上記実施例では、押え部を、台座ブラケットの電線貫通孔の開口縁部に形成したが、台座ブラケットに電線貫通孔が形成されていない場合は、台座ブラケットの外周縁に押え部を形成してもよい。
(3)上記実施例では、電気機器の機器本体を壁板に固定するための台座ブラケットに、押え部を一体に形成したが、押え部が形成されている部品を台座ブラケットに取り付けてもよい。
(4)上記実施例では、押え部を台座ブラケットに設けたが、押え部は、台座ブラケット以外の部材(浴室の壁板等)に設けてもよい。壁板に押え部を設ける手段としては、壁板の配線用開口部の開口縁部に押え部を一体に形成してもよく、押え部が形成された部品を配線用開口部に取り付けて、押え部を配線用開口部の内部(壁板の厚さの範囲内)に位置するようにしてもよい。
(5)上記実施例では、押え部の下端が、ケーシングの電線引出孔の上端より低い位置に配されているが、押え部の下端は、電線引出孔の上端と同じ高さに配されていてもよい。
(6)上記実施例では、押え部が電線に対し真上(浴室天井側)から当接するようになっているが、左右一対の押え部が、1本の電線に対し斜め上方から当接するようにしてもよい。
(7)上記実施例では、電気機器が照明器具である場合について説明したが、本発明は、電気機器が風呂釜用リモコンや浴室用オーディオ機器等である場合にも適用できる。
(8)上記実施例では、電線が2本の電源線を並列して束ねた形態であるが、電線は、電源線と信号線を束ねた形態であってもよい。この場合、電源線の外径と信号線の外径は、同寸法でもよく、異なる寸法でもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…浴室
11…壁板
11F…壁板の内面
13…壁裏空間
14…配線用開口部
15…電気機器
17…ケーシング
17R…ケーシングの背面
19…電線引出孔
22…電線
22H…電線の姿勢保持領域(電線のうちケーシングの背面と押え部との間の領域)
22W…電線の屈曲領域
24…台座ブラケット
32…押え部
図1
図2
図3