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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】スイッチング電源回路及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
H02M3/155 B
H02M3/155 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018145741
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020022297
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】神田 良
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-258554(JP,A)
【文献】特開2014-017962(JP,A)
【文献】国際公開第2010/084588(WO,A1)
【文献】特開2006-203981(JP,A)
【文献】特開2013-240187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0074908(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
H01L 21/337-21/338
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 29/778
H01L 29/80-29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に供給する電力を制御する制御回路に起動用電圧を供給する起動回路を備え、
前記起動回路は、
第1ドレイン部、第1ソース部及び第1ゲート部を有し、前記第1ドレイン部が外部電源と接続されているノーマリーオン型の第1トランジスタと、
第2ドレイン部、第2ソース部及び第2ゲート部を有し、前記第1トランジスタと直列に接続されているノーマリーオフ型の第2トランジスタと、
一方端が前記第1トランジスタの前記第1ドレイン部及び前記外部電源と直接接続され、他方端が前記第2トランジスタの前記第2ゲート部と接続されている抵抗とを有することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
前記抵抗は、前記第1トランジスタ上に配置されたフィールドプレートであることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項3】
前記第1トランジスタは、ジャンクションFETであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチング電源回路。
【請求項4】
前記起動回路は、前記第2トランジスタがオンされているときに充電され、前記制御回路を起動させる前記起動用電圧を生成するコンデンサをさらに有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のスイッチング電源回路。
【請求項5】
前記起動回路は、前記第2トランジスタの前記第2ゲート部の電圧をクランプするダイオードをさらに有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のスイッチング電源回路。
【請求項6】
負荷に供給する電力を制御する制御回路に起動用電圧を供給する起動回路を備え、
前記起動回路は、
第1ドレイン部、第1ソース部及び第1ゲート部を有し、前記第1ドレイン部が外部電源と接続されているノーマリーオン型の第1トランジスタと、
第2ドレイン部、第2ソース部及び第2ゲート部を有し、前記第1トランジスタと直列に接続されているノーマリーオフ型の第2トランジスタと、
前記第1トランジスタ上に配置され、一方端が前記第1トランジスタの前記第1ドレイン部及び前記外部電源と直接接続され、他方端が前記第2トランジスタの前記第2ゲート部と接続されている抵抗性のフィールドプレートとを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記第1トランジスタは、ジャンクションFETであることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記起動回路は、前記第2トランジスタがオンされているときに充電され、前記制御回路を起動させる前記起動用電圧を生成するコンデンサをさらに有することを特徴とする請求項6又は7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記起動回路は、前記第2トランジスタの前記第2ゲート部の電圧をクランプするダイオードをさらに有することを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタは、同一基板に形成されたものであることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ及び前記ダイオードは、同一基板に形成されたものであることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源回路及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部電源からトランジスタに電力が供給されると自動的にトランジスタをオンすることができる(自己起動機能を有する)起動回路を備えるスイッチング電源回路が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1においては、図6に示すように、MOSFET830、コイル840、ダイオード850、コンデンサ860で構成される回路が記載されており、特許文献1に記載されたスイッチング電源回路(以下、従来のスイッチング電源回路800という)は、MOSFET830を駆動させる駆動回路821と、駆動回路821を介してMOSFET830のオンオフ動作を制御することによって負荷に供給する電力を制御する制御回路822と、制御回路822に起動用電圧を供給する起動回路823とを備える。
【0004】
従来のスイッチング電源回路800において、起動回路823は、図7に示すように、ドレイン部D、ソース部S及びゲート部Gを有し、ドレイン部Dが端子HVを介して外部電源BHV(図6参照。)と接続されているMOSFET910と、MOSFET910がオンされているときに充電され、制御回路822を起動させる起動用電圧Vddを生成するコンデンサ930と、一方端がMOSFET910のドレイン部D及び外部電源BHVと接続され、他方端がMOSFET910のゲート部Gと接続されている抵抗性のフィールドプレート940とを有する。
【0005】
従来のスイッチング電源回路800によれば、抵抗性のフィールドプレート940を有し、フィールドプレート940の一方端がMOSFET910のドレイン部D及び外部電源BHVと接続され、他方端がMOSFET910のゲート部Gと接続されているため、外部電源BHVからMOSFET910に電力が供給されると自動的にMOSFET910をオンすることができる(自己起動機能を有する)。
【0006】
また、従来のスイッチング電源回路800によれば、MOSFET910が外部電源BHVと接続されているため、制御回路822を起動させる所定の電圧を制御回路822自身が生成した後はMOSFET910をオフにして消費電力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-17962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のスイッチング電源回路800においては、MOSFET910が外部電源BHVと接続されているため、外部からサージが印加された場合にMOSFET910の寄生バイポーラトランジスタがオンして過電流による破壊が起こる場合がある、という問題がある。
【0009】
そこで、本発明は上記した問題を解決するためになされたものであり、自己起動機能を有し、かつ、外部からサージが印加された場合でも破壊が起こり難いスイッチング電源回路及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明のスイッチング電源回路は、負荷に供給する電力を制御する制御回路に起動用電圧を供給する起動回路を備え、前記起動回路は、第1ドレイン部、第1ソース部及び第1ゲート部を有し、前記第1ドレイン部が外部電源と接続されているノーマリーオン型の第1トランジスタと、第2ドレイン部、第2ソース部及び第2ゲート部を有し、前記第1トランジスタと直列に接続されているノーマリーオフ型の第2トランジスタと、一方端が前記第1トランジスタの前記第1ドレイン部及び前記外部電源と接続され、他方端が前記第2トランジスタの前記第2ゲート部と接続されている抵抗とを有することを特徴とする。
【0011】
[2]本発明のスイッチング電源回路においては、前記抵抗は、前記第1トランジスタ上に配置されたフィールドプレートであることが好ましい。
【0012】
[3]本発明のスイッチング電源回路においては、前記第1トランジスタは、ジャンクションFETであることが好ましい。
【0013】
[4]本発明のスイッチング電源回路において、前記起動回路は、前記第2トランジスタがオンされているときに充電され、前記制御回路を起動させる前記起動用電圧を生成するコンデンサをさらに有することが好ましい。
【0014】
[5]本発明のスイッチング電源回路において、前記起動回路は、前記第2トランジスタの前記第2ゲート部の電圧をクランプするダイオードをさらに有することが好ましい。
【0015】
[6]本発明の半導体装置は、負荷に供給する電力を制御する制御回路に起動用電圧を供給する起動回路を備え、前記起動回路は、第1ドレイン部、第1ソース部及び第1ゲート部を有し、前記第1ドレイン部が外部電源と接続されているノーマリーオン型の第1トランジスタと、第2ドレイン部、第2ソース部及び第2ゲート部を有し、前記第1トランジスタと直列に接続されているノーマリーオフ型の第2トランジスタと、前記第1トランジスタ上に配置され、一方端が前記第1トランジスタの前記第1ドレイン部及び前記外部電源と接続され、他方端が前記第2トランジスタの前記第2ゲート部と接続されている抵抗性のフィールドプレートとを有することを特徴とする。
【0016】
[7]本発明の半導体装置においては、前記第1トランジスタは、ジャンクションFETであることが好ましい。
【0017】
[8]本発明の半導体装置において、前記起動回路は、前記第2トランジスタがオンされているときに充電され、前記制御回路を起動させる前記起動用電圧を生成するコンデンサをさらに有することが好ましい。
【0018】
[9]本発明の半導体装置において、前記起動回路は、前記第2トランジスタの前記第2ゲート部の電圧をクランプするダイオードをさらに有することが好ましい。
【0019】
[10]本発明の半導体装置においては、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタは、同一基板に形成されたものであることが好ましい。
【0020】
[11]本発明の半導体装置においては、前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ及び前記ダイオードは、同一基板に形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスイッチング電源回路及び半導体装置によれば、上記した構成の、第1トランジスタ、第2トランジスタ及び抵抗(フィールドプレート)を有する起動回路を備えるため、外部電源から第1トランジスタ及び第2トランジスタに電力が供給されると自動的に第2トランジスタをオンする(第1トランジスタにも電流が流れる)ことができ(自己起動機能を有する)、かつ、制御回路を起動させる所定の電圧を制御回路自身が生成した後は第2トランジスタをオフにして(第1トランジスタにも電流が流れなくなる)消費電力を低減することができる。
【0022】
また、本発明のスイッチング電源回路及び半導体装置によれば、起動回路は、第1ドレイン部が外部電源と接続されているノーマリーオン型の第1トランジスタと、第1トランジスタと直列に接続されているノーマリーオフ型の第2トランジスタとを有し、第1トランジスタはジャンクションFETなどの破壊耐量が大きいトランジスタを使用することができる。従って、外部からサージが印加された場合でも第1トランジスタによって当該サージの影響が抑えられることとなり、第2トランジスタにおいて過電流による破壊が起こり難くなる。
【0023】
また、本発明のスイッチング電源回路及び半導体装置によれば、ノーマリーオン型の第1トランジスタが外部電源と接続されているため、ジャンクションFETなどの破壊耐量が大きいトランジスタを第1トランジスタとして使用することができる。その結果、破壊耐量が大きいスイッチング電源回路及び半導体装置とすることができる。
【0024】
また、本発明のスイッチング電源回路及び半導体装置によれば、起動回路が、第1トランジスタと直列に接続されているノーマリーオフ型の第2トランジスタを有するため、ノーマリーオン型の第1トランジスタに流れる電流をノーマリーオフ型の第2トランジスタで制御することができる。
【0025】
本発明の半導体装置によれば、フィールドプレートが第1トランジスタ上に配置されているため、第1トランジスタの表面電界を緩和することができ、第1トランジスタの高耐圧化・信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係るスイッチング電源回路1を示す回路図である。なお、符号VPC及び符号HGNDは端子を示す。
図2】実施形態における起動回路23を示す回路図である。なお、図2は、図1において破線で囲まれた領域Aを示す。
図3】実施形態における第1トランジスタ100の要部拡大平面図である。
図4】実施形態における第1トランジスタ100の要部拡大断面図である。
図5】変形例における起動回路を示す回路図である。
図6】従来のスイッチング電源回路800を示す回路図である。図6中、符号820は制御部を示し、符号824は起動確認回路を示し、符号825は起動回路オン/オフ用スイッチを示す。
図7】従来の起動回路823を示す回路図である。なお、図7は、図6において破線で囲まれた領域Bを示す。また、図7中、符号825は起動回路オン/オフ用スイッチを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のスイッチング電源回路及び半導体装置について、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。
【0028】
[実施形態]
1.実施形態に係るスイッチング電源回路1の構成
実施形態に係るスイッチング電源回路1は、図1に示すように、制御部20、主スイッチ30、リアクトル40、ダイオード50及びコンデンサ60とを備える。主スイッチ30、リアクトル40及びコンデンサ60が直列に接続されており、ダイオード50においては、カソード部側が主スイッチ30及びリアクトル40と接続されており、アノード部側が接地されている。主スイッチ30は適宜のスイッチを用いることができ、実施形態においてはMOSFET(Metal―Oxide―Semiconductor Field―Effect Transistor)を用いる。
【0029】
実施形態に係るスイッチング電源回路1においては、外部電源10(高圧直流電源)が、主スイッチ30と接続されている。また、負荷と接続するための出力端子VPPが、リアクトル40及びコンデンサ60と接続されており、負荷に直流電圧Vppを供給する。
【0030】
制御部20は、駆動回路21、制御回路22、起動回路23、起動確認回路24、起動回路オン/オフ用スイッチ25を備える。起動回路23は、外部電源10及び主スイッチ30と接続されている。
駆動回路21は、主スイッチ30のゲート部Gに電力を供給することにより主スイッチ30を駆動させる回路である。
制御回路22は、駆動回路21を介して主スイッチ30のオンオフを制御することにより、出力端子VPPに接続される負荷に供給する電力を制御する。また、制御回路22においては、起動した後には、主スイッチ30のオンオフ制御に必要な電力を制御回路22自身が生成する。
起動回路23は、制御回路22に起動用電圧Vddを供給する。起動回路23の詳細については後述する。
起動確認回路24は、制御回路22が起動したかどうか(負荷に供給する電力を生成したかどうか)を確認し、制御回路22が負荷に供給する電力を生成していないときには、起動回路オン/オフ用スイッチ25をオフのままにし、制御回路22が負荷に供給する電力を生成したときには、起動回路オン/オフ用スイッチ25をオンする制御をする。
起動回路オン/オフ用スイッチ25としては、適宜のスイッチ(例えば、MOSFET)を用いることができる。
【0031】
次に、起動回路23について説明する。
起動回路23は、図2に示すように、第1トランジスタ100と、第2トランジスタ200と、コンデンサ300と、抵抗(フィールドプレート)400と、ダイオード500とを有する。
起動回路23においては、第1トランジスタ100と、第2トランジスタ200と、コンデンサ300とが直列に接続されている。
【0032】
制御回路22へ起動用電圧Vddを出力する出力端子は、第2トランジスタ200及びコンデンサ300と接続されている。また、起動回路オン/オフ用スイッチ25は、第2トランジスタ200の第2ゲート部G2及び抵抗400と接続されている。ダイオード500は、アノード部側が接地されており、カソード部側が第2トランジスタ200の第2ゲート部G2及び抵抗400と接続されている。
【0033】
第1トランジスタ100は、第1ドレイン部D1、第1ソース部S1及び第1ゲート部G1を有し、第1ドレイン部D1が外部電源10(端子HV)と接続されているノーマリーオン型のジャンクションFETである。第1トランジスタ100は、外部電源10から供給される高電圧に耐えうる程度の耐圧(比較的高耐圧)を有するトランジスタである。第2トランジスタ200と外部電源10との間に、サージによって破壊されにくいジャンクションFETである第1トランジスタを配置するため、第2トランジスタ200に直接サージの影響が及ぼされることを防ぐことができる。
第1トランジスタ100は、第2トランジスタ200に印加される電圧や起動用電圧Vddが所定の電圧値以上にならないように第2トランジスタ200の第2ドレイン部D2に印加する電圧をクランプする。従って、第2トランジスタ200にサージの影響が及びにくくなる。
【0034】
第2トランジスタ200は、NチャネルのMOSFETである。第2トランジスタ200は、第2ドレイン部D2、第2ソース部S2及び第2ゲート部G2を有し、第2トランジスタ200の第2ドレイン部D2は、第1トランジスタ100の第1ソース部S1と接続されている。
第2トランジスタ200は、第1トランジスタ100によってクランプされた電圧に耐えうる程度の比較的低耐圧のトランジスタである。
【0035】
コンデンサ300は、第2トランジスタ200がオンされているときに充電され、制御回路22を起動させる起動用電圧Vddを安定して供給することができる。
【0036】
抵抗400は、一方端が第1トランジスタ100の第1ドレイン部D1及び外部電源10(端子HV)と接続され、他方端が第2トランジスタ200の第2ゲート部G2、ダイオード500のカソード部及び起動回路オン/オフ用スイッチ25と接続されている。抵抗400としては、第1トランジスタ100上に形成された抵抗性のフィールドプレートを用いる。
【0037】
ダイオード500は、第2トランジスタ200の第2ゲート部G2の電圧をクランプする。
【0038】
2.実施形態に係るスイッチング電源回路1の動作
次に、実施形態に係るスイッチング電源回路1の動作について、図1及び図2を参照して説明する。
まず、外部電源10から端子HVを介して起動回路23に電力が供給される。そして、図2に示すように、第1トランジスタ100に電力が供給されるとともに、抵抗(フィールドプレート)400を介して第2トランジスタ200の第2ゲート部G2に電力が供給される。このとき、抵抗400による電圧降下により第2トランジスタ200の第2ゲート部G2には比較的小さい電圧が印加される。これにより、第2トランジスタ200がオンされ、ノーマリーオン型の第1トランジスタ100、第2トランジスタ200を介してコンデンサ300に充電が開始され、充電されたコンデンサ300から出力端子を介して制御回路22(図1参照。)に起動用電圧Vddを供給する。制御回路22は起動用電圧Vddによって起動し、主スイッチ30を制御するとともに、制御回路22自身が主スイッチ30を制御する電圧を生成する。
【0039】
制御回路22自身が主スイッチ30を制御する電圧を生成したことを起動確認回路24が検出すると、起動確認回路24は起動回路オン/オフ用スイッチ25をオンする信号を起動回路オン/オフ用スイッチ25に送付する。起動回路オン/オフ用スイッチ25がオンされると、外部電源10から抵抗400を介して第2トランジスタ200に流れていた電流が起動回路オン/オフ用スイッチ25を介してアースに流れるため、第2トランジスタ200がオフになる。従って、第1トランジスタ100及び第2トランジスタ200には電流が流れなくなる。なお、制御回路22は、制御回路22自身で生成した電力で主スイッチ30を制御する。
【0040】
3.実施形態に係る半導体装置1000の構成
実施形態に係る半導体装置1000は、実施形態に係るスイッチング電源回路1を構成する半導体装置である。実施形態に係る半導体装置1000は、図1に示すように、負荷に供給する電力を制御する制御回路22に起動用電圧Vddを供給する起動回路23を備える。
【0041】
起動回路23は、図2に示すように、第1ドレイン部D1、第1ソース部S1及び第1ゲート部G1を有し、第1ドレイン部D1が端子HVを介して外部電源10(図1参照。)と接続されているノーマリーオン型の第1トランジスタ100と、第2ドレイン部D2、第2ソース部S2及び第2ゲート部G2を有し、第1トランジスタ100と直列に接続されているノーマリーオフ型の第2トランジスタ200と、第1トランジスタ100上に配置され、一方端が第1トランジスタ100の第1ドレイン部D1及び外部電源10(図1参照。)と接続され、他方端が接続部材W(ワイヤ等)を介して第2トランジスタ200の第2ゲート部G2と接続されている抵抗性のフィールドプレート400(図2図4参照。)とを有する。
【0042】
第2トランジスタ200及びダイオード500は適宜の構成とすることができる。実施形態においては、第1トランジスタ100、第2トランジスタ200及びダイオード500が、同一基板に形成されたものを想定しているが、ディスクリート部品の第2トランジスタ200及びダイオード500を取り付けてもよいし、第1トランジスタ100、第2トランジスタ200及びダイオード500のうちの2つが同一基板に形成されたものであってもよい。
【0043】
第1トランジスタ100においては、図3及び図4に示すように、平面的に見て、中心部に第1ドレイン部120(第1ドレイン部D1)が形成され、外周部にリング状に第1ソース部130(第1ソース部S1)が形成されており、第1ソース部130の一部に他の部分と接続部材W(ワイヤ等)を介して接続するためのパッドが設けられている。抵抗400としてのフィールドプレート400は、第1ドレイン部D1から外周方向に向かってスパイラル状に形成されている(特に、図3参照。)。なお、第1ゲート部G1は基板の裏面に形成されている。
【0044】
第1トランジスタ100は、図4に示すように、半導体基体110と、第1ドレイン部120と、第1ソース部130と、第1ドレイン部側の第1フィールドプレート122と、第1ソース部側の第2フィールドプレート132とを備える。
【0045】
半導体基体110は、p型基板111と、p型基板111上に形成されているn型のドリフト層112と、ドリフト層112の表面の一部に形成された酸化膜116と、酸化膜116とドリフト層112との間に配置され、酸化膜116を覆うように形成されているp型半導体層113とを有する。
【0046】
酸化膜116は、平面的に見てリング状(トポロジー的に中央が空いている適宜の形状)に形成されており、当該リングの中央部分に第1ドレイン部120が形成されている。また、酸化膜116の外周を囲むように第1ソース部S1が形成されている。第1ドレイン部120と半導体基体110とが接する領域、及び、第1ソース部130と半導体基体110とが接する領域には、それぞれn型のコンタクト領域114,115が形成されている。
【0047】
第1トランジスタ100においては、半導体基体110の表面上の第1ドレイン部120と接する位置から酸化膜116上にかけて第1フィールドプレート122が形成されている。また、半導体基体110の表面上の第1ソース部130と接する位置から酸化膜116上にかけて第2フィールドプレート132が形成されている。これにより、半導体基体110の表面の電界をより一層緩和することができる。
【0048】
4.実施形態に係るスイッチング電源回路1及び半導体装置1000の効果
実施形態に係るスイッチング電源回路1及び半導体装置1000によれば、上記した構成の、第1トランジスタ100、第2トランジスタ200及び抵抗400を有する起動回路23を備えるため、外部電源10から第1トランジスタ100に電力が供給されると自動的に第1トランジスタ100をオンすることができ(自己起動機能を有する)、かつ、制御回路22を起動させる所定の電圧を制御回路22自身が生成した後は第1トランジスタ100をオフにして消費電力を低減することができる。
【0049】
また、実施形態に係るスイッチング電源回路1及び半導体装置1000によれば、起動回路23は、第1ドレイン部D1が外部電源10と接続されているノーマリーオン型の第1トランジスタ100と、第1トランジスタ100と直列に接続されているノーマリーオフ型の第2トランジスタ200とを有し、第1トランジスタ100はジャンクションFETなどの破壊耐量が大きいトランジスタを使用することができる。従って、外部からサージが印加された場合でも第1トランジスタ100によって当該サージの影響が抑えられることとなり、第2トランジスタ200において過電流による破壊が起こり難くなる。
【0050】
また、実施形態に係るスイッチング電源回路1及び半導体装置1000によれば、起動回路23が、第1トランジスタ100と直列に接続されているノーマリーオフ型の第2トランジスタ200を有するため、ノーマリーオン型の第1トランジスタ100に流れる電流をノーマリーオフ型の第2トランジスタ200で制御することができる。
【0051】
また、実施形態に係るスイッチング電源回路路1及び半導体装置1000によれば、第1トランジスタ100は、破壊耐量が大きいジャンクションFETであるため、外部からサージが印加された場合でも過電流による破壊が起こり難くなる。
【0052】
また、実施形態に係るスイッチング電源回路路1及び半導体装置1000によれば、抵抗400は、第1トランジスタ100上に配置されたフィールドプレートであるため、第1トランジスタ100の表面電界を緩和することができ、第1トランジスタ100の高耐圧化・信頼性の向上を図ることができる。
【0053】
また、実施形態に係るスイッチング電源回路1及び半導体装置1000によれば、起動回路23は、第2トランジスタ200がオンされているときに充電され、制御回路22を起動させる起動用電圧Vddを生成するコンデンサ300を有するため、起動用電圧Vddを安定して供給することができる。
【0054】
また、実施形態に係るスイッチング電源回路1及び半導体装置1000によれば、起動回路23は、第2トランジスタ200の第2ゲート部G2の電圧をクランプするダイオード500を有するため、第2トランジスタ200の第2ゲート部G2に印加される電圧を所定の値に保つことができる。
【0055】
また、実施形態に係る半導体装置1000によれば、第1トランジスタ100、第2トランジスタ200及びダイオード500は、同一基板に形成されたものであるため、構成部品間の距離を短くすることができる。従って、接地面積が少なくて済み、電気機器の小型化の要請に適う半導体装置となる。
【0056】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0057】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数、材質、形状、位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0058】
(2)上記実施形態においては、実施形態に係るスイッチング電源回路1を、主スイッチ30、リアクトル40、ダイオード50及びコンデンサ60とを備える降圧型の回路としたが、本発明はこれに限定されるものではない。実施形態に係るスイッチング電源回路1を昇圧型の回路としてもよい。また、上記実施形態においては、実施形態に係るスイッチング電源回路1を非絶縁型の回路としたが、本発明はこれに限定されるものではない。実施形態に係るスイッチング電源回路1を絶縁型の回路としてもよい。
【0059】
(3)上記実施形態においては、実施形態に係るスイッチング電源回路1を、制御回路22自身が主スイッチ30を制御する電圧を生成する回路としたが、本発明はこれに限定されるものではない。起動回路によって制御回路を起動する構成であれば、制御回路以外の箇所で主スイッチ30を制御する電圧を生成する(又は供給する)適宜の回路としてもよい。
【0060】
(4)上記実施形態においては、第1トランジスタ100をジャンクションFETとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。ノーマリーオン型であれば他の構成(例えば、静電誘導型トランジスタSIT(Static Induction Transistor)のトランジスタであってもよい。
【0061】
(5)上記実施形態においては、第2トランジスタ200をNチャネルMOSFETとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。ノーマリーオフ型であれば他の構成のトランジスタ(例えば、pチャネルMOSFET、IGBT等)であってもよい。なお、第2トランジスタ200がFET以外の場合には、第2ドレイン部が第2コレクタ部に相当し、第2ソース部が第2エミッタ部に相当する。
【0062】
(6)上記実施形態においては、リング状の第1ソース部130を有する第1トランジスタ100(図3参照。)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。リング状の一部が切り欠かれた第1ソース部を有する第1トランジスタ100を用いてもよい。このとき、第1ソース部の切り欠かれた部分を通して第2トランジスタ200の第2ゲート部G2と抵抗400とを接続する構成としてもよい。
【0063】
(7)上記実施形態においては、第1トランジスタのみを用いて起動用電圧Vddが所定以上の電圧にならないようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1トランジスタに加えて、起動用電圧Vddの出力端子と第2トランジスタ200・コンデンサ300間の配線との間にクランプ用のダイオード502をさらに配置することによって起動用電圧Vddが所定以上の電圧にならないようにしてもよい(図5参照。)。
【符号の説明】
【0064】
1,800…スイッチング電源回路、10,BHV…外部電源、20,820…制御部、21,821…駆動回路、22,822…制御回路、23,823…起動回路、24,824…起動確認回路、25,825…起動回路オン/オフ用スイッチ、30,830…主スイッチ、40,840…リアクトル(コイル)、50,850…ダイオード、60,300,860,930…コンデンサ、100…第1トランジスタ、110…半導体基体、111…p型基板、112…ドリフト層、113…p型半導体層、114…コンタクト領域、115…コンタクト領域、116…酸化膜、120…第1ドレイン部、122…第1フィールドプレート、130…第1ソース部、132…第2フィールドプレート、200…第2トランジスタ、400,940…抵抗(フィールドプレート)、500,502…ダイオード、830,910…MOSFET、1000…半導体装置、D…ドレイン部、D1…第1ドレイン部、D2…第2ドレイン部、G…ゲート部、G1…第1ゲート部、G2…第2ゲート部、S…ソース部、S1…第1ソース部、S2…第2ソース部、HV…端子、VPP…出力端子
図1
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図4
図5
図6
図7