(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】中空構造板
(51)【国際特許分類】
B32B 3/26 20060101AFI20221014BHJP
B31D 3/02 20060101ALI20221014BHJP
B31F 1/28 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B32B3/26 A
B31D3/02
B31F1/28
(21)【出願番号】P 2018150651
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】星野 秀明
(72)【発明者】
【氏名】深沢 英範
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-220787(JP,A)
【文献】特開2006-030473(JP,A)
【文献】特開2008-129186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G02B 5/20-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部及び下面に開口部を有する錐台形状且つ中空状の凸部が、一方の面に複数形成された熱可塑性樹脂からなる中空構造部と、
前記中空構造部に積層される少なくとも1枚以上の、熱可塑性樹脂からなる表面材及び/又は表皮材と、
を少なくとも有し、
少なくとも1以上の前記凸部内、及び/又は、前記中空構造部と前記表面材及び/又は前記表皮材との間に連通部がある場合は該連通部の少なくとも一部に、クロミック物質を含んでなるクロミック組成物を有する、中空構造板。
【請求項2】
前記クロミック物質は、サーモクロミック物質及び/又はフォトクロミック物質である、請求項1に記載の中空構造板。
【請求項3】
前記中空構造部、前記表面材、及び前記表皮材からなる群のうち少なくとも1以上は、透光性を有する、請求項1又は2に記載の中空構造板。
【請求項4】
前記中空構造部を構成する熱可塑性樹脂及び/又は前記表面材を構成する熱可塑性樹脂は、クロミック物質が添加されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の中空構造板。
【請求項5】
前記クロミック組成物の前記凸部内、及び/又は、前記連通部内の体積に占める体積比率は、10~85%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の中空構造板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造板に関する。より詳しくは、環境管理を簡便にすることができる中空構造板に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の中空構造板は、軽量で、かつ、耐薬品性、耐水性、断熱性、遮音性及び復元性に優れ、取り扱いも容易であることから、物流用途、パネル材等の建築用途、更には、自動車用途などの幅広い分野に使用されている。例えば、特許文献1には、所定の間隔を隔てて平行に配置された合成樹脂素材製の2枚のシートの間に、所定のピッチで凹凸波形が繰り返された合成樹脂素材製の波形部材が挟持された状態の中空構造板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の中空構造板では、該中空構造板が置かれている環境の管理をすることは不可能であった。
【0005】
そこで、本発明では、このような実情に鑑み、環境管理を簡便にすることができる中空構造板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明では、上面部及び下面に開口部を有する錐台形状且つ中空状の凸部が、一方の面に複数形成された熱可塑性樹脂からなる中空構造部と、前記中空構造部に積層される少なくとも1枚以上の、熱可塑性樹脂からなる表面材及び/又は表皮材と、を少なくとも有し、少なくとも1以上の前記凸部内、及び/又は、前記中空構造部と前記表面材及び/又は前記表皮材との間に連通部がある場合は該連通部の少なくとも一部に、クロミック物質を含んでなるクロミック組成物を有する中空構造板を提供する。
本発明では、前記クロミック物質は、サーモクロミック物質及び/又はフォトクロミック物質であってもよい。
また、本発明では、前記中空構造部、前記表面材、及び前記表皮材からなる群のうち少なくとも1以上は、透光性を有していてもよい。
更に、本発明では、前記中空構造部を構成する熱可塑性樹脂及び/又は前記表面材を構成する熱可塑性樹脂は、クロミック物質が添加されていてもよい。
加えて、本発明では、前記クロミック組成物の前記凸部内、及び/又は、前記連通部内の体積に占める体積比率は、10~85%であってもよい。
【0007】
ここで、本発明で使用する技術用語について定義付けを行う。
本発明において、「クロミック物質」(「クロミック材料」とも称される)とは、クロミズム(chromism)を示す物質のことであり、ここでいう「クロミズム」とは、外部からの刺激により物質の状態が変化する現象のことをいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、環境管理を簡便にすることができる中空構造板を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】Aは、本発明に係る中空構造板1の第1実施形態の構造を模式的に示す斜視図であり、Bは、Aの矢印方向から視た場合の模式図であり、Cは、BのP-P線端面図である。
【
図2】Aは、本発明に係る中空構造板1の第2実施形態の構造を模式的に示す平面図であり、Bは、AのQ-Q線端面図である。
【
図3】本発明に係る中空構造板1の第3実施形態の構造を模式的に示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る中空構造板1の第4実施形態の構造を模式的に示す斜視図である。
【
図5】Aは、本発明に係る中空構造板1の第5実施形態の構造を模式的に示す平面図であり、Bは、AのR-R線端面図である。
【
図6】本発明に係る中空構造板1の製造方法の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。また、各図において、薄墨を施した部分は、本技術に係る中空構造板におけるクロミック組成物を入れることが可能な領域を示しているに過ぎず、本技術においてはクロミック組成物の形状はこれらの図で表された形状に限定されるものではない。
【0011】
1.中空構造板1
本発明に係る中空構造板1は、立壁により隔てられた中空部21が複数形成された熱可塑性樹脂からなる中空構造部2と、中空構造部2に積層される少なくとも1枚以上の、熱可塑性樹脂からなる表面材3及び/又は表皮材4と、を少なくとも有する。また、少なくとも1以上の中空部21内、及び/又は、中空構造部2と表面材3及び/又は表皮材4との間に連通部22がある場合は該連通部22の少なくとも一部に、クロミック物質を含んでなるクロミック組成物10を有することを特徴とする。
【0012】
前述の通り、クロミック物質は、外部刺激によって、光物性、構造等のその物質の状態が変化するという性質を有するため、本発明に係る中空構造板1は、クロミック物質の変化により該中空構造板1が置かれている環境の変化を視覚的に瞬時に確認することができる。この環境としては、例えば、温度、光の当たり具合、湿度等が挙げられる。
【0013】
そのため、例えば、本発明に係る中空構造板1を、壁、家具、車両やコンテナなどの内装等に用いた場合には、室内や、車両内、コンテナ内等において環境が変化したことを、クロミック物質の状態(例えば、色、蛍光などの光物性、構造等)の変化に基づき視覚を通じて簡便に把握することができ、結果として、これらの空間内に保管された物の保管状況の管理などに利用できる。
【0014】
前記クロミック物質としては、例えば、サーモクロミズム(thermochromism)を示す物質(サーモクロミック物質、「サーモクロミック材料」とも称される)、フォトクロミズム(photochromism)を示す物質(フォトクロミック物質、「フォトクロミック材料」とも称される)、エレクトロクロミズム(electrochromism)を示す物質等が挙げられる。なお、「サーモクロミズム」とは、熱の作用によりその状態を変化させる現象であり、「フォトクロミズム」とは、光の作用によりその状態を変化させる現象であり、「エレクトロクロミズム」とは、電気的に引き起こされる酸化還元反応によりその状態を変化させる現象である。
【0015】
本発明において、クロミック組成物10は、前記クロミック物質を含んでなり、すなわち、前記クロミック物質自体で構成されていてもよく、前記クロミック物質及び他の化合物の混合物により構成されていてもよい。また、本発明において、クロミック組成物10の状態は特に限定されず、液体状、半固体状、固体状等のいずれの状態であってもよい。
【0016】
前記サーモクロミック物質としては、例えば、VO2、[Cu(dieten)2](ClO4)2等のサーモクロミック銅(II)錯体、ロイコ染料、示温顔料、スピロピラン、サリチリデンアニリン、ポリジアセチレンなどを用いることができる。また、VO2には、転移温度や転移カーブを制御する目的で、W、Mo、Fなどの元素を添加することもできる。
【0017】
前記フォトクロミック物質としては、例えば、Cr、Fe、Ni等をドープしたTiO2、WO3、MoO3、Nb2O5などの遷移金属酸化物、アゾベンゼン、ジアリールエテンなどを用いることができる。
【0018】
本発明では、前記クロミック物質として、サーモクロミック物質及び/又はフォトクロミック物質を用いることが好ましく、サーモクロミック物質を用いることがより好ましい。これらの物質を用いることで、特に、温度及び/又は光の当たり具合について、視覚的に簡便に把握することができる。
【0019】
また、本発明では、クロミック組成物10として、市販の示温インキ等をそのまま用いることもできる。
【0020】
中空構造板1の目付は特に限定されないが、200~6000g/m2とすることが好ましく、300~2000g/m2とすることがより好ましく、400~1800g/m2とすることが特に好ましい。これにより、中空構造板1の軽量化を図ることができる。
【0021】
中空構造板1の厚みも特に限定されないが、1.5~55mmとすることが好ましい。1.5mm以上とすることにより、中空構造板1の厚みが薄くなり過ぎることを防ぎ、曲げ剛性が保持された中空構造板1を作製できる。また、55mm以下とすることにより、中空構造部2における中空部21の高さを制御でき、中空部21の側壁の厚みがドラフトされて薄くなり過ぎることを防げるため、変形(座屈)が発生しにくい中空構造板1を作製できる。
【0022】
本発明に係る中空構造板1は、その端面を任意の形状に加工することができる。具体的には、端面が切りっぱなしでもよく、端面を、C形形状等に加工したり、垂直端面に封止したり、R形状に封止したりしてもよい。更に、本発明では、中空構造板1の端面に機能性を付与するために、端面に接着剤等を介してエッジ材を貼り合わせることもできる。
【0023】
<中空構造部2>
中空構造部2は、立壁により隔てられた中空部21が複数形成された熱可塑性樹脂からなる。また、中空構造部2には、少なくとも1枚以上の、熱可塑性樹脂からなる表面材3及び/又は表皮材4が積層される。なお、本発明では、中空構造部2に積層された表面材3や表皮材4と、中空構造部2と、の間には、部分的に僅かな隙間が空いていてもよい。また、本発明においては、中空構造部2に積層される表面材3又は表皮材4の枚数は特に限定されない。
【0024】
本発明において、「連通部」とは、具体的には、中空構造部2を矜持するようにして少なくとも2枚以上の表面材3及び/又は表皮材4が積層された場合に、中空部21の周囲にある、
図2のBの上側の表面材3又は表皮材4と中空構造部2との間にできる部分(
図2のBの符号22参照)である。
【0025】
本発明では、
図1~5に示すように後述する表面材3や表皮材4を中空構造部2に積層することで、中空部21及び/又は連通部22内にクロミック組成物10を入れることが好ましい。このような構成を採用することで、本発明に係る中空構造板1の製造効率を向上させることができる。なお、この場合、クロミック組成物10は、中空部21及び/又は連通部22の壁面や、表面材3、表皮材4等に直接固定されていなくてもよい。
【0026】
また、本発明では、クロミック組成物10の中空部21及び/又は連通部22内の体積に占める体積比率が、10~85%であることが好ましい。体積比率が10%未満であると、光物性の変化を目視にて確認することが困難となる。また、体積比率が85%を超えると、中空部21内に占めるクロミック組成物10の比率が大きくなり、成形時の内圧が高くなってしまう。このため、例えば、中空構造部2を矜持するようにして少なくとも2枚以上の表面材3及び/又は表皮材4が積層する場合などには、中空構造板1の表面の平滑性が保持できなくなる。
【0027】
また、本発明では、クロミック組成物10を有する中空部21及び/又は連通部22同士の間隔I(
図1のB参照)が、3~2500mmであることが好ましい。これにより、クロミック組成物10が局所的な偏って、目視による確認がしづらくなることを防ぐことができる。
【0028】
中空構造部2において仮想される水平面と立壁とがなす角度(傾斜角)θ1(
図1のC参照)は特に限定されないが、中空構造板1の外側から荷重をかけた際に、十分な強度を得るため、立壁に傾斜角を有する方が好ましい。また、傾斜角θ1は、45°以上とすることが好ましい。傾斜角θ1を45°以上とすることにより、更に十分な強度が得られる。また、傾斜角θ1は、80°未満とすることが好ましい。傾斜角θ1を80°未満とすることにより、中空構造部2を真空形成した場合等において、中空構造部2の厚みが薄くなり過ぎることを防ぎ、かつ、立壁のフィルム化も防止できるため、十分な強度が得られる。
【0029】
また、傾斜角θ1は、50°以上75°未満とすることがより好ましい。これにより、中空構造板1の剛性を高めることができる。また、座屈等による変形を防ぎ、中空構造板1の形状保持性を向上させることができる。なお、本発明に係る中空構造板1において、傾斜角θ1は、常に一定でなくてもよく、中空部21が中心軸に対して非対称な形状であってもよい。
【0030】
立壁の高さh(
図1のC参照)は特に限定されないが、1mm以上とすることが好ましい。立壁の高さhを1mm以上とすることにより、剛性が高い中空構造板1を得ることができる。また、立壁の高さhは、50mm以下とすることが好ましい。立壁の高さhを50mm以下とすることにより、中空部21の側壁部分が薄くなり過ぎるのを防ぎ、中空構造部2の変形を防ぐことができる。
【0031】
立壁の厚みも特に限定されないが、0.1mm以上とすることが好ましい。立壁の厚みを0.1mm以上とすることにより、座屈等の変形を防ぎ、中空構造板1の形状保持性を向上させることができる。
【0032】
また、本発明では、立壁の途中に段差を設けたり、立壁の途中にウェーブを設けたりすることもできる。
【0033】
中空構造部2の材質は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、通常、中空構造板に用いることが可能な熱可塑性樹脂を、1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。
【0034】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール(PОM)等が挙げられる。
【0035】
中空構造部2の材質としては、これらの中でも特に、加工性、コスト、重量及び物性の観点から、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー等のオレフィン系樹脂が好ましい。また、本発明では、更に高い剛性を得るため、ABS樹脂、ポリカーボネート等のエンジニアリング・プラスチックを用いることもできる。
【0036】
本発明では、中空構造部2を構成する熱可塑性樹脂に、前記クロミック物質が添加されていてもよい。これにより、少なくとも1以上の中空部21内、及び/又は、中空構造部2と表面材3及び/又は表皮材4との間に連通部22がある場合は該連通部22の少なくとも一部に保持されたクロミック組成物に基づく状態の変化以外にも、色々な状態(例えば、色、蛍光などの光物性、構造等)の変化を示すことができ、該中空構造板1が置かれている環境をより視覚的に簡便に確認することができる。
【0037】
この場合のクロミック物質としては、前述したものと同様であるため、ここでは説明を割愛するが、サーモクロミック物質及び/又はフォトクロミック物質を用いることが好ましく、サーモクロミック物質を用いることがより好ましい。これらの物質を用いることで、特に、温度及び/又は光の当たり具合について、視覚的に簡便に把握することができる。
【0038】
また、本発明では、中空構造部2、後述する表面材3、及び後述する表皮材4からなる群のうち少なくとも1以上は、透光性を有することが好ましい。これにより、クロミック物質の状態(好ましくは、その光物性)が変化した際に、より鮮明にその変化を確認することができる。
【0039】
中空構造部2の目付は特に限定されないが、150g/m2以上とすることが好ましい。目付を150g/m2以上とすることにより、中空部21を良好に成形することができる。
【0040】
本発明では、中空構造部2や後述する表面材3を形成する熱可塑性樹脂には、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどのフィラー、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維等のチョップドストランド等を添加してもよい。
【0041】
また、本発明では、中空構造部2や後述する表面材3を形成する熱可塑性樹脂には、難燃性、導電性、濡れ性、滑り性、耐候性などを向上させるための改質剤や顔料等の着色剤等を添加してもよい。
【0042】
なお、中空構造部2や後述する表面材3は、同一の材料で形成されていてもよく、熱融着可能な範囲で相互に異なる材料で形成されていてもよい。
【0043】
中空構造部2の構造は特に限定されないが、少なくとも一方の面に中空状の凸部(=中空部21)が複数形成された1枚の熱可塑性樹脂シートからなる構造(
図1~3参照)、ハニカム構造の中空部21が複数形成された熱可塑性樹脂シートからなる構造(
図4参照)、又は、少なくとも一方の面に中空部21が複数形成された2枚の熱可塑性樹脂シートからなる構造(
図5参照)が好ましく、少なくとも一方の面に中空状の凸部が複数形成された1又は2枚の熱可塑性樹脂シートからなる構造がより好ましい。
【0044】
また、本発明では、熱可塑性樹脂シートの一部に流路が存在する構造を採用することもできる。なお、本発明において、この流路の形状、断面の構造、流路の形成方向等は特に限定されない。
【0045】
前記凸部は、
図1のCに示すように、少なくとも上面部211及び開口部212を有していれば、その形態は特に限定されず、適宜自由に設計することができる。具体的には、例えば、
図1、2及び5で示した円錐台形状又は楕円錐台形状、
図3で示した三角錐台形状、四角錐台形状、五角錐台形状等の多角錐台形状、更には、円柱形状、楕円柱形状、多角柱形状、多角星柱形状、多角星錐台形状など様々な形状に設計することができる。また、これらの形状を組み合わせて設計してもよい。
【0046】
本発明では、後述する表面材3や表皮材4が中空構造部2に積層された際に、起点を少なくしてこれらからの剥離強度を向上させるため、
図3で示したように、多角錐台形状や多角柱形状等の角を丸く設計してもよい。
【0047】
本発明では、これらの中でも特に、前記凸部を、円錐台形状、楕円錐台形状又は多角錐台形状に設計することが好ましい。これにより、製造工程における設計を容易化できることに加え、金型を用いて前記凸部を成形する際には、金型の製造コストを削減することもできる。
【0048】
また、本発明では、前記凸部を、円錐台形状又は楕円錐台形状に設計することがより好ましい。これにより、中空構造板1の曲げ剛性を向上させることができると共に、圧縮強度を保持させることができる。
【0049】
更に、本発明では、前記凸部を、楕円錐台形状又は円錐台形状に設計した場合、上面部211の径の長さは特に限定されないが、1~10mmとすることが好ましい。これにより、中空構造板1の厚さ方向における圧縮強度を向上させることができる。
【0050】
また、本発明では、前記凸部を、楕円錐台形状又は円錐台形状に設計した場合、開口部212の径の長さは特に限定されないが、3~15mmとすることが好ましい。これにより、中空構造板1の厚さ方向における圧縮強度を向上させることができる。
【0051】
本発明では、前記凸部は、全て同一の形態であってもよいし、2種以上の形態を自由に選択して組み合わせてもよい。また、本発明では、前記凸部の途中に段差を設けたり、前記凸部の途中にウェーブを設けたりすることもできる。
【0052】
前記凸部の配列形態は特に限定されず、例えば、前記凸部を四角格子状、千鳥状、又は不規則に配列させることができる。なお、本明細書では、千鳥状に配置させることには、
図3に示すように、所定の基準方向に沿って視たときに、隣接する前記凸部同士が互い違うように配置される状態も含まれるものとする。
【0053】
また、前記凸部を千鳥状に配列させた場合、横方向の中空部21の中心同士を結んだ線と斜め方向の中空部21の中心同士を結んだ線とがなす角度θ2(
図1のB参照)は特に限定されないが、θ2=60°とすることが好ましい。これにより、中空構造板1の剛性を向上できる。なお、「四角格子状」とは、θ2=90°とした場合の配列を意味する。
【0054】
中空部21の開口部211間の最短距離Lも特に限定されないが、0.2~8mmとすることが好ましい。最短距離Lを0.2mm以上とすることにより、ライナー部(中空部21を一定の方向から視た際に、中空部21が存在しない部分)の厚みが薄くなり過ぎることを防げるため、圧縮強度の低下を回避できる。また、最短距離Lを8mm以下とすることにより、中空部21間の距離が長くなり過ぎて単位面当たりの中空部21の数が減りすぎることを回避できるため、中空構造板1の曲げ剛性を一定以上に保つことができる。なお、本発明に係る中空構造板1において、最短距離Lは、常に一定でなくてもよい。
【0055】
本発明において、前述した、少なくとも一方の面に中空状の凸部が複数形成された1枚の熱可塑性樹脂シートからなる構造とは、より具体的には、例えば、
図1~3で示したように、一方の面に錐台形状の凸部が複数形成された1枚の熱可塑性樹脂シートからなる構造とすることができる。この構造を採用することで、平面圧縮強度を保持しつつ、加工性にも優れた中空構造板1を提供できる。なお、この構造の中空構造板1は、例えば、後述する
図6に示す製造方法等により製造することができる。
【0056】
また、本発明において、前述した、少なくとも一方の面に中空状の凸部が複数形成された2枚の熱可塑性樹脂シートからなる構造とは、より具体的には、例えば、
図5で示したように、一方の面に錐台形状の凸部が複数形成された2枚の熱可塑性樹脂シートからなり、かつ、前記2枚の熱可塑性樹脂シートは凸部同士を突き合わせた状態で溶融してなる構造とすることができる。この構造を採用することで、ソリの発生が抑制され、かつ、曲げ剛性にも優れた中空構造板1を提供できる。なお、この構造の中空構造板1は、例えば、後述する
図6に示す製造方法等により製造することができる。
【0057】
また、本発明では、この構造の場合、
図5のB中の符号Xで示された部分も、中空部21の概念に含まれる。すなわち、本発明に係る中空構造板1は、この部分にクロミック組成物10を有していてもよい。
【0058】
<表面材3>
表面材3は、中空構造部2に積層される。なお、本発明では、この表面材3に対し、更に1又は複数枚の表面材3が積層されていてもよく、後述する表皮材4等が積層されていてもよい。
【0059】
表面材3の厚みは特に限定されないが、0.1mm以上とすることが好ましい。0.1mm以上とすることで、中空構造板1の剛性を保持することができる。
【0060】
表面材3の目付は特に限定されないが、100g/m2以上とすることが好ましい。目付を100g/m2以上とすることにより、中空構造部2に表面材3を積層する際に、表面材3が薄くなり過ぎて破けることを防止できる。
【0061】
表面材3の材質は熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、通常、中空構造板に用いることが可能な熱可塑性樹脂を、1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。なお、熱可塑性樹脂の具体例は前述したものと同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0062】
表面材3の材質としては、これらの中でも特に、加工性、コスト、重量及び物性の観点から、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー等のオレフィン系樹脂が好ましい。また、本発明では、更に高い剛性を得るため、ABS樹脂、ポリカーボネート等のエンジニアリング・プラスチックを用いることもできる。
【0063】
本発明では、表面材3を構成する熱可塑性樹脂に、前記クロミック物質が添加されていてもよい。これにより、少なくとも1以上の中空部21内、及び/又は、中空構造部2と表面材3及び/又は表皮材4との間に連通部22がある場合は該連通部22の少なくとも一部に保持されたクロミック組成物に基づく状態の変化以外にも、色々な状態(例えば、色、蛍光などの光物性、構造等)の変化を示すことができ、該中空構造板1が置かれている環境をより視覚的に簡便に確認することができる。
【0064】
この場合のクロミック物質としては、前述したものと同様であるため、ここでは説明を割愛するが、サーモクロミック物質及び/又はフォトクロミック物質を用いることが好ましく、サーモクロミック物質を用いることがより好ましい。これらの物質を用いることで、特に、温度及び/又は光の当たり具合について、視覚的に簡便に把握することができる。
【0065】
また、本発明では、中空構造部2を構成する熱可塑性樹脂又は表面材3を構成する熱可塑性樹脂に、前記クロミック物質が添加されていてもよく、中空構造部2を構成する熱可塑性樹脂及び表面材3に、前記クロミック物質が添加されていてもよい。
【0066】
本発明では、表面材3を複数有していてもよく、この場合、複数の表面材3の厚みは同一としてもよいし、異なるものであってもよい。また、各表面材を、同一の材質で形成してもよいし、異なる材質で形成してもよい。
【0067】
<表皮材4>
表皮材4は、中空構造部2に積層される。なお、本発明では、この表皮材4に対し、更に1又は複数枚の表皮材4等が積層されていてもよい。表皮材4を積層することで、中空構造板1に対し、意匠性、吸音特性、断熱性などの各種用途に応じた特性を付与することができる。
【0068】
表皮材4の材質は特に限定されず、通常、中空構造板の表皮材として用いることができる材料を、目的の用途などに応じて、適宜自由に選択して用いることができる。具体的には、例えば、熱可塑性樹脂シート、樹脂製の織布、不織布、組布、編み物、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる金属シート、有機系又は無機系多孔質シート、化粧シート等が挙げられる。また、複数の同種又は異種のシートを積層した積層シート等を表皮材4として用いることも可能である。
【0069】
本発明では、表皮材4を複数有していてもよく、この場合、複数の表皮材4の厚みは同一としてもよいし、異なるものであってもよい。また、各表皮材を、同一の材質で形成してもよいし、異なる材質で形成してもよい。
【0070】
2.中空構造板1の製造方法
本発明に係る中空構造板1は、その構成に特徴があるため、製造方法は特に限定されない。すなわち、本発明に係る中空構造板1の製造には、通常、中空構造板を製造する際に用いられる方法を、適宜自由に選択して用いることができる。なお、
図6において、矢印jは中空構造板1の流れ方向を示す。
【0071】
図6は、本発明に係る中空構造板1の製造方法の一例を示す概念図である。
図6で示した製造方法では、まず、溶融状態の熱可塑性樹脂Pを、金型D1、D2で両側からプレスすることにより、中空構造部2を製造する。次に、中空部21内及び/又は連通部22内にクロミック組成物10を入れる。そして、先端にTダイ101が設けられた押出機102から、熱可塑性樹脂を押し出してシート状にした表面材3又は表皮材4を、加熱手段が設けられたローラーRを用いて熱融着により中空構造部2に積層し、本発明に係る中空構造板1を製造する。
【実施例】
【0072】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0073】
1.試験方法及び試験結果
まず、以下の表1に示す実施例1~5の中空構造板を作製した。実施例1~5の中空構造板は、
図1で示した構造を
図6で示した製造方法により作製した。
【0074】
【0075】
なお、表1中、PPはポリプロピレンを示し、PETはポリエチレンテレフタレートを示し、PCはポリカーボネートを示す。また、表1中、「体積比率」とは、クロミック組成物10の中空部21又は連通部22内の体積に占める体積比率を指す。
【0076】
実施例1~5の中空構造板においては、クロミック組成物として、※1:示温インキ(MT―30赤、エムテック化学製)を用いた。
【0077】
次に、各中空構造板において、以下の評価を行った。また、以下の評価結果は、表1に併記した。
【0078】
[目視での確認]
各中空構造板を倉庫の壁に取り付け、倉庫内の温度20℃から、40℃に変化させた。20℃と40℃で、目視にて中空構造板の色の変化を確認できたものを、「○」、確認できなかったものを「×」と評価した。
【0079】
2.考察
実施例1~5の中空構造板は、いずれも外部刺激である温度変化に対して良好な感受性を示し、目視にて室内の変化を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、環境管理を簡便にすることができる中空構造板を提供することができる。そのため、本発明に係る中空構造板は、壁、家具、車両やコンテナなどの内装等に取り付け、室内や、車両内、コンテナ内等における環境の変化を、視覚を通じて簡便に把握することができ、これらの空間内に保管された物の保管状況の管理などに利用できる。したがって、物流用途などの各種用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1:中空構造板
10:クロミック組成物
2:中空構造部
21:中空部
22:連通部
211:上面部
212:開口部
3:表面材
4:表皮材
101:Tダイ
102:押出機
R:加熱手段が設けられたローラー
D1、D2:金型
P:溶融状態の熱可塑性樹脂
θ1:中空部21の開口部212から仮想される水平面と中空部21とがなす角度
θ2:横方向の中空部21の中心同士を結んだ線と斜め方向の中空部21の中心同士を結んだ線とがなす角度
h:立壁の高さ
L:中空部21の開口部212間の最短距離
I:クロミック組成物10を有する中空部21同士の間隔
j:中空構造板1の流れ方向