(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】コンバータ回路を複数搭載した電源回路及びその制御回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 W
(21)【出願番号】P 2018162214
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】仙田 悟
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】新井 大輔
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-012868(JP,A)
【文献】特開2016-012955(JP,A)
【文献】特開2015-226340(JP,A)
【文献】特開2004-112981(JP,A)
【文献】特開2001-025252(JP,A)
【文献】特開2013-231601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0094262(US,A1)
【文献】特開2013-070614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧と、
一次側コイルと二次側コイルを備えたトランスとスイッチング素子とダイオードを備えた複数のコンバータと、
前記コンバータを流れる電流の検出を行う電流監視部と、
切替制御部と、
を備え、
複数の前記コンバータは並列に接続され、
前記切替制御部は、前記コンバータの
負荷又は入力電圧に応じて変化するスイッチング周波数のスイッチング周波数領域に応じて複数の前記コンバータのいずれかの前記コンバータを駆動すること、
を特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記コンバータは、フライバックコンバータであること、
を特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記フライバックコンバータは、
前記スイッチング周波数を制御するRCC(Ringing Choke Converter)方式、又は、疑似共振RCC方式であること、
を特徴とする請求項2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記フライバックコンバータは、パルス幅を制御するPWM(Pulse Width Modulation)方式であること、
を特徴とする請求項2に記載の電源回路。
【請求項5】
複数の前記コンバータは、それぞれが使用可能な
前記スイッチング周波数領域が異なること、
を特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項6】
複数の前記コンバータは、それぞれが使用可能なパルス幅領域が異なること、
を特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項7】
複数の前記コンバータとして、少なくとも
前記スイッチング周波数の低周波領域に対応した前記コンバータと、
前記スイッチング周波数の高周波領域に対応した前記コンバータを備えていること、
を特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項8】
前記スイッチング周波数の高周波領域に対応した前記コンバータの最低スイッチング周波数は、
前記スイッチング周波数の低周波領域に対応した前記コンバータの最高スイッチング周波数よりも低いこと、
を特徴とする請求項7に記載の電源回路。
【請求項9】
複数の前記コンバータとして、少なくともパルス幅の広い
前記スイッチング周波数の低周波領域に対応した前記コンバータと、パルス幅の狭い
前記スイッチング周波数の高周波領域に対応した前記コンバータを備えていること、
を特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項10】
前記スイッチング周波数の高周波領域に対応した前記コンバータの
最大パルス幅は、
前記スイッチング周波数の低周波領域に対応した前記コンバータの
最小パルス幅よりも
大きいこと、
を特徴とする請求項9に記載の電源回路。
【請求項11】
前記スイッチング周波数の低周波領域に対応した前記コンバータと
前記スイッチング周波数の高周波領域に対応した前記コンバータを切り替える一次側電流は、
前記スイッチング周波数の高周波領域に対応した前記コンバータと
前記スイッチング周波数の低周波領域に対応した前記コンバータの前記一次側電流が共通する共通一次側電流領域であること、
を特徴とする請求項9に記載の電源回路。
【請求項12】
前記電流監視部に電流検出抵抗を設け、電流の検出を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項13】
前記電流監視部にロゴスキーコイルを設け、電流の検出を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項14】
前記ロゴスキーコイルは、進みコイルと戻しコイルとから構成され、
前記戻しコイルは、1又は複数の、直線状コイルとして、又は、巻回されたコイルとして前記進みコイルの内部に設けられていること、
を特徴とする請求項13に記載の電源回路。
【請求項15】
前記ロゴスキーコイルは、中心部に導体を備えていること、
を特徴とする請求項13に記載の電源回路。
【請求項16】
前記スイッチング素子として、MOSFETから成るスイッチング素子と、GaN-HEMTから成るスイッチング素子を備えたこと、
を特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項17】
請求項1に記載の電源回路を備えたこと、
を特徴とするスイッチング電源モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータ回路を複数搭載した電源回路及びその制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
効率の良いスイッチング電源とするために、複数の回路を搭載する方法は、従来様々な提案が提案されている。軽負荷での効率向上のために、特許文献1には、負荷サイズが所定の閾値より大きいときには臨界導通モードで動作させ、負荷サイズが所定の閾値より小さいときには電流不連続モードで動作させるPFC(力率改善回路)が開示されている。
【0003】
複数の回路を搭載するインターリーブ制御はノイズの低減を目的としており、特許文献2には、PFCシステムを小型・高効率で実現するインターリーブ制御方式が開示されている。インターリーブ制御は、電源回路を複数系統(2相)に分けて各相に位相差を持たせ、リップルなどを互いに打ち消しあう制御方式である。トータルの部品点数は増えるが、個々のインダクタや出力コンデンサなどを軽減でき、また複数系統になることで発熱も分散されるメリットがある。
【0004】
フライバックコンバータは、昇圧と降圧が可能で部品点数が少ない、入力電圧範囲が広い等の特徴を持っているが、特許文献3には、軽負荷及び高入力電圧に対応するために、複数の2次巻線のインダクタンス値を変化させる選択手段と、機器の動作状態を判断する制御手段を有し、制御手段により、複数の2次巻線のインダクタンス値を選択する選択手段を動作させることで、複数の2次巻線のインダクタンス値を変化させている。
【0005】
特許文献4には、広い入力電圧範囲に対して部品の耐圧を抑えて変換効率を維持するために、単数のフライバックコンバータと、このフライバックコンバータの入力端子と出力端子をそれぞれ共通接続した単数又は複数のフォワードコンバータと、入力端子の電圧を常時監視して所定の設定電圧の範囲において単数又は複数のフォワードコンバータに動作信号を与える電圧監視回路とを備えている。フライバックコンバータは、本質的に、スイッチング素子のオン時にエネルギ蓄積し、オフ時にエネルギ供給するものであり、広い入力電圧範囲に対応する可能性を有しているが、変換効率については、エネルギ伝達の非同時性に起因して、常に高くすることには制限がある。フォワードコンバータは、スイッチング素子のオン時にほぼ同時にエネルギ供給するものであり、変換効率については、エネルギ伝達の同時性に起因して、高くすることは比較的容易である。これらの両方式の特性を生かして、広い入力電圧範囲に対応させることを実現したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-233110号公報
【文献】特開2013-132125号公報
【文献】特開2012-143112号公報
【文献】特開平11-252918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フライバックコンバータには、制御方法により、他励型のPWM方式、自励型のRCC(Ringing Choke Converter)方式、RCCに共振技術を利用した疑似共振RCC方式の3種類がある。従来のRCC方式と疑似共振RCC方式は、入力電圧が高い場合や軽負荷のときにはスイッチング周波数が高くなり、スイッチング素子が追従できずに、不連続モードである間欠発振となっていた。また、PWM(Pulse Width Modulation)方式は、入力電圧が高い場合や軽負荷のときにはスイッチ素子の導通期間(ton)が短くなり、スイッチング素子が追従できずに、間欠発振となっていた。間欠発振では、出力のリップル電圧が大きくなるなどの問題があった。
【0008】
従来スイッチング素子としてはMOSFETが多く使用されてきたが、高周波化には限界がある。また、炭化ケイ素結晶はダイヤモンドと同様に強固な四面体構造であり、シリコンよりも緻密で安定した結晶であることから絶縁破壊強度が高くて活性層を非常に薄くすることが可能であるが、電子移動度が高くないので高周波領域での使用には不向きである。
【0009】
複数の回路システムを利用するPFCのインターリーブ制御方式は、個々のインダクタや出力コンデンサなどを軽減できるが、軽負荷時や低電圧のときに高くなるスイッチング周波数に対応したものではなかった。
【0010】
さらに、近年電源回路の小型化の要求も高まってきており、部品の小型化には、スイッチング周波数の高周波化によるインダクタ容量の低減が不可欠であり、高周波化も大きな課題となっている。
【0011】
絶縁型コンバータは、スイッチング素子を高周波化に対応させ、コイルのインダクタンスを小さくして小型化が可能である。しかしながら、重負荷時や低電圧の入力電圧に対応させるためには、最低スイッチング周波数を低くしなければならず、コイルのインダクタンスを大きな値に設定することになるが、これにより高周波領域での追従性が低下し、高周波化に対しての課題となっていた。
【0012】
本発明は、入力電圧範囲が広く、軽負荷から重負荷まで対応可能な電源回路及びスイッチング電源モジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の電源回路は、入力電圧と、一次側コイルと二次側コイルを備えたトランスとスイッチング素子とダイオードを備えた複数のコンバータと、前記コンバータを流れる電流の検出を行う電流監視部と、切替制御部と、を備え、複数の前記コンバータは並列に接続され、前記切替制御部は、前記コンバータの周波数領域に応じて複数の前記コンバータのいずれかの前記コンバータを駆動すること、を特徴とする。
【0014】
(2)本発明の電源回路においては、前記コンバータは、フライバックコンバータであること、が好ましい。
【0015】
(3)本発明の電源回路においては、前記フライバックコンバータは、スイッチング周波数を制御するRCC(Ringing Choke Converter)方式、又は、疑似共振RCC方式であること、が好ましい。
【0016】
(4)本発明の電源回路においては、前記フライバックコンバータは、パルス幅を制御するPWM(Pulse Width Modulation)方式であること、が好ましい。
【0017】
(5)本発明の電源回路においては、複数の前記コンバータは、それぞれが使用可能なスイッチング周波数領域が異なること、が好ましい。
【0018】
(6)本発明の電源回路においては、複数の前記コンバータは、それぞれが使用可能なパルス幅領域が異なること、が好ましい。
【0019】
(7)本発明の電源回路においては、複数の前記コンバータとして、少なくともスイッチング周波数の低周波領域に対応した前記コンバータと、スイッチング周波数の高周波領域に対応した前記コンバータを備えていること、が好ましい。
【0020】
(8)本発明の電源回路においては、高周波領域に対応した前記コンバータの最低スイッチング周波数は、低周波領域に対応した前記コンバータの最高スイッチング周波数よりも低いこと、が好ましい。
【0021】
(9)本発明の電源回路においては、複数の前記コンバータとして、少なくともパルス幅の広い低周波領域に対応した前記コンバータと、パルス幅の狭い高周波領域に対応した前記コンバータを備えていること、が好ましい。
【0022】
(10)本発明の電源回路においては、高周波領域に対応した前記コンバータの最小パルス幅は、低周波領域に対応した前記コンバータの最大パルス幅よりも狭いこと、が好ましい。
【0023】
(11)本発明の電源回路においては、低周波領域に対応した前記コンバータと高周波領域に対応した前記コンバータを切り替える一次側電流は、高周波領域に対応した前記コンバータと低周波領域に対応した前記コンバータの前記一次側電流が共通する共通一次側電流領域であること、が好ましい。
【0024】
(12)本発明の電源回路においては、前記電流監視部に電流検出抵抗を設け、電流の検出を行うこと、が好ましい。
【0025】
(13)本発明の電源回路においては、前記電流監視部にロゴスキーコイルを設け、電流の検出を行うこと、が好ましい。
【0026】
(14)本発明の電源回路においては、前記ロゴスキーコイルは、進みコイルと戻しコイルとから構成され、前記戻しコイルは、1又は複数の直線状コイルとして、又は、巻回されたコイルとして前記進みコイルの内部に設けられていること、が好ましい。
【0027】
(15)本発明の電源回路においては、前記ロゴスキーコイルは、中心部に導体を備えていること、が好ましい。
【0028】
(16)本発明の電源回路においては、前記スイッチング素子として、MOSFETから成るスイッチング素子と、GaN-HEMTから成るスイッチング素子を備えること、が好ましい。
【0029】
(17)本発明のスイッチング電源モジュールは、上記(1)に記載の電源回路を備えたこと、
を特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
(1)本発明の電源回路は、入力電圧と、一次側コイルと二次側コイルを備えたトランスとスイッチング素子とダイオードを備えた複数のコンバータと、前記コンバータを流れる電流の検出を行う電流監視部と、切替制御部とを備え、複数のコンバータは並列に接続され、切替制御部は、コンバータの周波数領域に応じて複数のコンバータのいずれかのコンバータを駆動する。これにより、広範囲の入力電圧と軽負荷から重負荷に対応可能としているため、高効率で高性能な電源回路となる。
【0031】
(2)本発明の電源回路において、コンバータは、フライバックコンバータであるから、周波数領域に応じてコンバータを切り替えることができるので、広範囲の入力電圧と軽負荷から重負荷に対応可能となり、高効率で高性能な電源回路となる。
【0032】
(3)本発明の電源回路において、フライバックコンバータは、スイッチング周波数を制御するRCC(Ringing Choke Converter)方式、又は、疑似共振RCC方式であることから、周波数領域に応じてコンバータを切り替えることができるので、広範囲の入力電圧と軽負荷から重負荷に対応可能となり、高効率で高性能な電源回路となる。
【0033】
(4)本発明の電源回路において、フライバックコンバータは、パルス幅を制御するPWM(Pulse Width Modulation)方式であることから、パルス幅に対応して切り替えることができる。
【0034】
(5)本発明の電源回路において、複数のコンバータは、それぞれが使用可能なスイッチング周波数領域が異なるため、広範囲のスイッチング周波数に対応して切り替えることができる。
【0035】
(6)本発明の電源回路において、複数のコンバータは、それぞれが使用可能なパルス幅領域が異なる。このため、パルス幅に対応したコンバータに切り替えることができる。
【0036】
(7)本発明の電源回路は、複数のコンバータとして、少なくともスイッチング周波数の低周波領域に対応したコンバータと、スイッチング周波数の高周波領域に対応したコンバータを備えている。このため、周波数領域に応じてコンバータを切り替えることができるので、広範囲の入力電圧と軽負荷から重負荷に対応可能となり、高効率で高性能な電源回路となる。
【0037】
(8)本発明の電源回路において、高周波領域に対応したコンバータの最低スイッチング周波数は、低周波領域に対応したコンバータの最高スイッチング周波数よりも低い。低周波領域に対応したコンバータは、高周波領域を考慮することなく、低コストのスイッチング素子が使用可能で、インダクタンスを大きくしてより低周波数まで対応可能となる。高周波領域に対応したコンバータは、最低スイッチング周波数を高く設定でき、小さなインダクタンスでよいため、小型の絶縁トランスが使用可能となる。
【0038】
(9)本発明の電源回路は、複数のコンバータとして、少なくともパルス幅の広い低周波領域に対応したコンバータと、パルス幅の狭い高周波領域に対応したコンバータを備えている。このため、パルス幅に応じて対応した周波数領域にコンバータを切り替えることができるので、広範囲の入力電圧と軽負荷から重負荷に対応可能となり、高効率で高性能な電源回路となる。
【0039】
(10)本発明の電源回路において、高周波領域に対応したコンバータの最小パルス幅は、低周波領域に対応したコンバータの最大パルス幅よりも狭い。低周波領域に対応したコンバータは、最小パルス幅に制限されることなく、低コストのスイッチング素子が使用可能で、インダクタンスを大きくしてより低周波数まで対応可能となる。高周波領域に対応したコンバータは、最大パルス幅に制限されることなく、小さなインダクタンスでよいため、小型の絶縁トランスが使用可能となる。
【0040】
(11)本発明の電源回路において、低周波領域に対応したコンバータと高周波領域に対応したコンバータを切り替える一次側電流は、高周波領域に対応したコンバータと低周波領域に対応したコンバータの一次側電流が共通する共通一次側電流領域である。このため、コンバータ切り替えによる一次側電流の不連続性をなくすことができる。
【0041】
(12)本発明の電源回路において、コンバータの電流監視部に電流検出抵抗を設け、電流の検出を行うことができる。この場合、電流を電圧として検出することができる。
【0042】
(13)本発明の電源回路において、電流監視部にロゴスキーコイルを設け、電流の検出を行うこともできる。ロゴスキーコイルは、電流が流れる結果として周囲に発生する磁界による誘起電圧を検出しているので、電流検知による損失がない。
【0043】
(14)本発明の電源回路において、ロゴスキーコイルは、進みコイルと戻しコイルとから構成され、戻しコイルは、1又は複数の、直線状コイルとして、又は、巻回されたコイルとして進みコイルの内部に設けられているため、外部磁界の影響を抑えることができる。
【0044】
(15)本発明の電源回路において、ロゴスキーコイルは、中心部に導体を備えているため、電流が流れる導線を貫通させること無く、電流検出素子として配線パターンに組み込むことができる。電源回路への実装が容易となる。
【0045】
(16)本発明の電源回路において、スイッチング素子として、MOSFETから成るスイッチング素子と、GaN-HEMTから成るスイッチング素子を備える。MOSFETは低周波領域に対応させ、低コストのコンバータとし、GaN-HEMTは高周波領域に対応させ、絶縁トランスのインダクタンスを小さくして小型化したコンバータとすることができる。
【0046】
(17)本発明のスイッチング電源モジュールは、上記(1)に記載の電源回路を備えているため、小型で高性能なスイッチング電源モジュールとして提供される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図2】
図1のフライバックコンバータの電源回路に、PWM制御を行う場合のPWM電源回路10-1を示す図である。
【
図3】入力電圧監視部30及び出力電圧監視部32の無い簡易タイプの電源回路10-2を示す図である。
【
図4】第1フライバックコンバータ22を示した図である。
【
図5】第1フライバックコンバータ22の各部における電圧波形と電流波形を示した図である。
【
図6】第1フライバックコンバータ22の一次側電流I
11とスイッチング周波数f
s1の関係を示す図である。
【
図7】第1フライバックコンバータ22の負荷Pと一次側電流I
11の関係を示す図である。
【
図8】第1フライバックコンバータ22の負荷Pとスイッチング周波数f
s1の関係を示す図である。
【
図9】第1フライバックコンバータ22の入力電圧V
inとスイッチング周波数f
s1の関係を示す図である。
【
図10】第1フライバックコンバータ22の一次側電流I
11と周波数範囲を説明する図である。
【
図11】第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24との切り替え動作を説明する図である。
【
図12】PWM信号を発生させるためのPWM発生回路の一例を示す図である。
【
図13】電圧モードでのPWM信号を発生させるPWM発生回路の動作とPWM制御を説明する図である。第1フライバックコンバータ22を対象としている。
【
図14】PWM制御による第1フラバックコンバータ22と第2フラバックコンバータ24の切り替え動作を説明する図である。
【
図15】PWM制御における第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24との切り替え動作を説明する図である。
【
図16】ロゴスキーコイルの原理を説明する図である。
【
図17】ロゴスキーコイル50の実施形態である矩形ロゴスキーコイル60を示す図である。
【
図18】進みコイル52の1つの巻回ユニットを説明する図である。
【
図19】中心部に導体56を設けたロゴスキーコイル型電流検出素子74を説明する図である。
【
図20】RCC方式のフライバックコンバータによる本発明の電源回路の実施例1(80)を示す図である。
【
図21】PWM方式のフライバックコンバータによる本発明の電源回路の実施例2(82)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せをする様々なバリエーションが可能である。従って、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0049】
本発明の電源回路は、入力電圧と、一次側コイルと二次側コイルを備えたトランスとスイッチング素子とダイオードを備えた複数のコンバータと、電流監視部と、切替制御部とを備え、複数のコンバータは並列に接続され、切替制御部は、コンバータの周波数領域に応じて複数のコンバータのいずれかのコンバータを駆動することを特徴とする。複数のコンバータは、それぞれが使用可能なスイッチング周波数領域やパルス幅領域が異なる。
【0050】
図1は、本発明による電源回路10を示す図である。コンバータはフライバックコンバータであり、スイッチング周波数を制御するRCC方式によるフライバックコンバータの電源回路である。スイッチング周波数の低周波領域に対応したコンバータと、スイッチング周波数の高周波領域に対応したコンバータを備えている。入力電圧V
inは、入力コンデンサ12によりノイズが除去され、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24に入力される。第1フライバックコンバータ22は低周波領域に対応し、第1トランスTS1と第1スイッチング素子SW1と第1ダイオードD1で構成されている。第1トランスTS1の一次側と二次側は、逆極性である。第1スイッチング素子SW1は、第1トランスTS1の一次側巻線と直列接続され、第1ダイオードは、第1トランスTS1の二次側巻線と直列接続され、平滑コンデンサ14に接続されている。
【0051】
第2フライバックコンバータ24は高周波領域に対応し、第2トランスTS2と第2スイッチング素子SW2と第2ダイオードD2で構成されている。第2トランスTS2の一次側と二次側は、逆極性である。第2スイッチング素子SW2は、第2トランスTS2の一次巻線と直列接続され、第2ダイオードは、第2トランスTS2の二次巻線と直列接続され、平滑コンデンサ14に接続されている。平滑コンデンサ14は、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24並列に接続されており、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24からの出力を平滑化して、負荷16に出力電圧Voutを供給している。
【0052】
第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24は、切替制御部18-1からの制御信号がスイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2の各ゲートへ入力されることにより、切り替えて駆動される。切替制御部18-1における周波数監視部26で、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24のスイッチング周波数が監視され、スイッチング周波数に応じて切り替えが行われる。
【0053】
入力電圧Vinが大きい場合には、トランスTS1及びトランスTS2の一次に蓄積されるエネルギも短時間で行われるため、入力電圧監視部30は、RCC方式や疑似共振RCC方式でのスイッチング周波数を高くしたり、PWM方式の場合は、パルス波形のデューティを短くしたりする。このため、入力電圧Vinの監視用に入力電圧監視部30が設けられている。また、入力電圧監視部30は、入力電圧Vinの過電圧保護回路としての機能を持たせてもよい。
【0054】
フライバックコンバータのスイッチング制御方式は、周波数可変型としてのRCC方式の他、疑似共振RCC方式がある。スイッチング素子のオン期間にトランスに蓄えられたエネルギを、オフ期間に二次側にフライバック電圧として伝送し、放出後にトランスのリアクタンスと、スイッチング素子と並列に設けられた容量との間で共振を起こし、電圧を振動させる。疑似共振RCC方式は、この共振電圧を利用して、共振電圧が極小となったタイミングでスイッチング素子をオンさせる。
【0055】
疑似共振RCC方式は、負荷が軽いときや入力電圧が高いときは、スイッチング周波数が高くなる。このため、RCC方式と同様に、低周波領域と高周波領域に対応したフライバックコンバータを切り替えて、効率の良いフライバックコンバータとすることができる。
【0056】
一方、スイッチング周波数を固定して、パルス幅を可変させるPWM方式がある。このPWM方式は、スイッチング周波数を固定し、一次側電流をパルス幅で制御する方式である。
【0057】
図2は、
図1のフライバックコンバータの電源回路に、PWM制御を行う場合のPWM電源回路10-1を示す図である。フライバックコンバータは、パルス幅を制御するPWM方式である。PWM方式を制御するPWM制御は、スイッチング周波数は固定されており、デューティ即ちパルス幅が可変となる。PWM方式のフライバックコンバータは、パルス幅の広い低周波領域に対応したコンバータとパルス幅の狭い高周波領域に対応したコンバータを備えている。第1フライバックコンバータ22は低周波領域に対応し、第2フライバックコンバータ24は高周波領域に対応している。
【0058】
このため、第2フライバックコンバータ24の固定スイッチング周波数は、第1フライバックコンバータ22の固定スイッチング周波数fs1よりも高く設定している。低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24とを、出力電圧監視部32で検知する出力電圧Vout、或は、電流監視部20で検知する一次側電流により、PWM制御部34でパルス幅を制御し、パルス幅に応じて切替制御部18-2で第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24を切り替える。
【0059】
図3は、入力電圧監視部30及び出力電圧監視部32の無い簡易タイプの電源回路10-2を示す図である。電流監視部20で検知する一次側電流でスイッチング周波数やパルス幅を制御するため、高精度の電源を必要としない場合には、回路が簡略化でき、低コストの電源となる。
【0060】
フライバック方式の電源では、負荷が重負荷状態の下で動作するとき、または電源がより高い電圧を提供しなければならないとき、安定した出力電力を提供することは、容易に達成される。これに反して、負荷が軽負荷状態の下で動作するとき、または電源がより低い電圧を提供しなければならないとき、安定した出力電力を提供することが困難である。軽負荷・低電圧の場合は、スイッチング周波数を高くしたり、PWM制御信号のデューティを低減したりして、低い出力電圧を提供することができる。しかしながら、スイッチング周波数が高くなったり、パルス幅が狭くなったりしたとき、フライバックコンバータが追従できず、出力電圧を安定化させるのが困難である。
【0061】
このため、スイッチング周波数の高周波化又は狭いパルス幅に対して、高周波領域まで追従可能な第2フライバックコンバータを設けている。第2フライバックコンバータは、高速で動作するスイッチング素子SW2と第2ダイオードD2を使用し第2トランスのインダクタンスを小さくしている。
【0062】
第1トランスTS1と第2トランスTS2の一次側に流れる電流は、スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2のオン時間にアース線に流れる。このため、
図1に示した様に、アース線に電流監視部20を設けて、合算電流を検知している。第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24の一次側を流れる合算電流値を電流監視部20で検出し、検出された合算電流値は、切替制御部18で、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24の切り替えに利用されている。
【0063】
第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24は、使用可能な周波数領域が異なり、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と、高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24を備え、並列に接続されている。低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22のスイッチング素子SW1には、MOSFETが使用されている。高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24のスイッチング素子SW2には、GaN-HEMTが使用されている。GaN-HEMTは大電力で高周波化が可能であり、第2トランスTS2の小型化も可能である。
【0064】
高周波領域は第2フライバックコンバータ24を動作させるので、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22は、最低スイッチング周波数を低くしたり、パルス幅を広くしたりすることができ、例えば、周波数は、可聴周波数に近い周波数に設定できる。第1フライバックコンバータ22の使用可能な最高スイッチング周波数は、MOSFETの周波数特性と第1トランスTS1のインダクタンスに依存して決まる。
【0065】
低周波領域は第1フライバックコンバータ22を動作させるので、高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24は、第2フライバックコンバータ24の使用可能な最高スイッチング周波数を高くしたり、パルス幅を狭くしたりするため、GaN-HEMTの周波数特性を考慮して、第2トランスTS2のインダクタンスを小さな値に設定する。これにより第2トランスTS2の小型化も図れる。
【0066】
高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24は、第2トランスTS2のインダクタンスを小さな値に設定しているため、第2フライバックコンバータ24の最低スイッチング周波数も高くなる。この高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24の最低スイッチング周波数は、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22の最高スイッチング周波数よりも低くければよい。
【0067】
PWM方式では、コンバータとして、少なくともパルス幅の広い低周波領域に対応したコンバータと、パルス幅の狭い高周波領域に対応したコンバータを備えている。高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24は、第2トランスTS2のインダクタンスを小さな値に設定しているため、第2フライバックコンバータ24の最小パルス幅を狭くすることができる。この高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24の最大パルス幅は、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22の最小パルス幅より広ければよい。
【0068】
低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24の切り替えは一次側電流の所定の電流値で行い、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24の一次側電流が共通する共通一次側電流領域である。
【0069】
次に、RCC方式におけるフライバックコンバータの動作とスイッチング周波数について説明する。
【0070】
図4は、第1フライバックコンバータ22を示した図である。第1トランスTS1のコアに巻回された一次巻線N11は、第1スイッチング素子SW1のドレインに接続されている。第1トランスTS1の二次側は、二次巻線N12と第1ダイオードD1のアノードが接続されている。第1トランスTS1の一次側と二次側は、ドットで示したように逆極性としている。第1スイッチング素子SW1のゲートにゲート電圧V
g1が印加され、第1スイッチング素子SW1がオン状態になると、入力電圧V
inにより一次巻線N11に一次側電流I
11が流れる。一次側電流I
11が流れると、第1トランスTS1のコアに磁束が発生し、コアが磁化されてエネルギWが蓄積される。この時、二次側は、第1ダイオードD1の向きが逆なので二次側の二次側電流I
12は流れない。
【0071】
次に、第1スイッチング素子SW1が、ゲート電圧Vg1の遮断によりオフ状態になると、一次側電流I11は流れず、スイッチング素子SW1のスイッチング素子電圧VSW1は、入力電圧Vinが直接印加された状態となる。第1トランスTS1のコアに蓄積されたエネルギWは開放されて、二次巻線N12から第1ダイオードD1に向かって流れる。エネルギWが全て放出されたとき、即ち、二次側電流I12がゼロになったときに、再び第1スイッチング素子SW1のゲートにゲート電圧Vg1の印加によりオン状態になる。第1トランスTS1の一次巻線N11と二次巻線N12は、チョークコイルの機能を備えているため、直流を含めた低周波数の電流は流しやすく、高周波数の電流は流しにくい。
【0072】
図5は、第1フライバックコンバータ22の各部における電圧波形と電流波形を示した図である。
図5(A)は、スイッチング素子SW1のゲートに印加されるゲート電圧V
g1である。
図5(B)は、スイッチング素子SW1のスイッチング素子電圧V
SW1である。
図5(C)は、一次側に流れる一次側電流I
11を、
図5(D)は、二次側に流れる二次側電流I
12を示している。
【0073】
時間t1でゲート電圧Vg1が印加されると、スイッチング素子SW1はオン状態となり、スイッチング素子SW1に印加されたスイッチング電圧VSW1がゼロとなって導通する。これにより第1トランスTS1の一次巻線N11に一次側電流I11が流れ、第1トランスTS1のコアにエネルギWを蓄積する。一次側電流I11は直線的に増加する。オン時間tonの間に蓄えられたエネルギWは、ゲート電圧Vg1の印加が停止されると、スイッチング素子SW1はオフ状態となり、サージ電圧を伴った入力電圧Vinが印加された状態となる。一次側電流I11は流れず、第1トランスTS1のコアに蓄積されたエネルギWは、二次側の二次巻線N12を介して放出され、ダイオードD1に二次側電流I12が流れる。二次側電流I2は、直線状に減少する。オフ時間toffは、第1トランスTS1に蓄えられたエネルギWが全て放出される時間である。第1トランスTS1に蓄えられたエネルギWが全て放出されると、再びゲート電圧が印加され、同様の現象が繰り返される。繰り返される周期TSW1は、TSW1=ton+toffであり繰り返しのスイッチング周波数fs1は、fs1=1/Tsw1となる。
【0074】
スイッチング素子SW1がオフのときに第1トランスTS1のコアに蓄積さるエネルギWは、一次巻線N11のインダクタンスL11と一次側電流I11で表現すれば次式となる。
W=(1/2)L11I11
2fs1 ・・・・・・・・(1)
【0075】
エネルギWは、一次巻線N11のインダクタンスL11と入力電圧Vinで表現すれば次式となる。
W=(1/2)Vin
2/(L11fs1) ・・・・・・(2)
【0076】
エネルギWは、軽負荷では小さく、重負荷では大きくなる。従って、(1)式と(2)式から、負荷とスイッチング周波数fs1の関係、一次側電流I11とスイッチング周波数fs1の関係、更には、入力電圧Vinとスイッチング周波数fs1の関係が理解される。
【0077】
これらのスイッチング周波数fs1は、第1トランスTS1のコアに蓄積されたエネルギWが完全に放出されたときに、再度エネルギWの蓄積を開始する臨界モードの動作である。フライバックコンバーの動作モードは、臨界モードの動作の他に、連続モードと不連続モードの動作がある。連続モードは、第1トランスTS1のコアに蓄積されたエネルギWが完全に放出される以前に、再度エネルギWの蓄積を開始する動作である。不連続モードは、第1トランスTS1のコアに蓄積されたエネルギWが完全に放出された後、一定の遅延時間を伴って、再度エネルギWの蓄積を開始する動作である。
【0078】
(1)式と(2)式から、一次側電流I
11、入力電圧V
in、負荷Pとスイッチング周波数f
s1の関係を概念的に捉えることができる。次に、RCC方式のフライバックコンバータについて、
図6~9を用いてこれらの関係を説明する。
【0079】
図6は、第1フライバックコンバータ22の一次側電流I
11とスイッチング周波数f
s1の関係を示す図である。一次側電流I
11に対して、臨界モードをグラフ化して示し、臨界モードのスイッチング周波数f
s1以下では連続モードとなり、臨界モードのスイッチング周波数f
s1以上では不連続モードとなる。一次側電流I
11が小さいほど、スイッチング周波数f
s1は高くなっている。
【0080】
図7は、第1フライバックコンバータ22の負荷Pと一次側電流I
11の関係を示す図である。負荷Pは、コアに蓄積さるエネルギWと考えることができる。負荷Pが小さいほど、臨界モードの一次側電流I
11小さくなっている。負荷Pに対して、臨界モード以下の一次側電流I
11では不連続モードとなり、臨界モード以上の一次側電流I
11では連続モードとなる。
【0081】
図8は、第1フライバックコンバータ22の負荷Pとスイッチング周波数f
s1の関係を示す図である。負荷Pは、コアに蓄積さるエネルギWと考えることができる。負荷Pが小さいほど、臨界モードのスイッチング周波数f
s1は高くなっている。負荷Pに対して、臨界モード以下のスイッチング周波数f
s1では不連続モードとなり、臨界モード以上のスイッチング周波数f
s1では連続モードとなる。
【0082】
図9は、第1フライバックコンバータ22の入力電圧V
inとスイッチング周波数f
s1の関係を示す図である。入力電圧V
inが高いほど、臨界モードのスイッチング周波数f
s1は高くなっている。入力電圧V
inに対して、臨界モード以下のスイッチング周波数f
s1では連続モードとなり、臨界モード以上のスイッチング周波数f
s1では不連続モードとなる。入力電圧V
inと一次側電流I
11は、比例関係にあるから、入力電圧V
inを一次側電流I
11として考えることもできる。
【0083】
図10は、第1フライバックコンバータ22の一次側電流I
11と周波数範囲を説明する図である。第1フライバックコンバータ22の最低スイッチング周波数f
1minは設計的に設定され、最高スイッチング周波数f
1maxは、スイッチング素子SW1の周波数特性から決まる。一次側電流I
11が小さくなり、最高スイッチング周波数f
1maxを超えると、スイッチング素子SW1のオンオフが追従できなくなり、不連続モードとなる。第1フライバックコンバータ22は、低周波領域を対象として設計されているため、最高スイッチング周波数f
1maxは低く抑えられている。
【0084】
図11は、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24との切り替え動作を説明する図である。第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24の切り替える場合について、ここでは、例として、スイッチング周波数f
sと一次側電流I
1の関係を示している。
【0085】
なお、スイッチング周波数の符号fsは、第1フライバックコンバータ22のスイッチング周波数をfs1,とし、第2フライバックコンバータ24のスイッチング周波数をfs2とした総称を示している。一次側電流の符号I1は、第1フライバックコンバータ22の一次側電流をI11とし、第2フライバックコンバータ24の一次側電流をI12とした一次側電流の総称を示している。
【0086】
第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24の切り替えは、切替制御部18-1において、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24のスイッチング周波数fsを監視して、スイッチング周波数fsに応じて行われる。11(A)は、スイッチング周波数fsに対して、第1フライバックコンバータ22の臨界モードと第2フライバックコンバータの臨界モードの関係を説明する図である。第2フライバックコンバータ24は、高周波領域を対象として設計されており、第2トランスTS2の一次側インダクタンスL12は、第1トランスTS1の一次側インダクタンスL11よりも小さな値である。
【0087】
このため、一次側電流I11に対する第2フライバックコンバータ24のスイッチング周波数fs2は、第1フライバックコンバータ22のスイッチング周波数fs1よりも高くなる。高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24の最低スイッチング周波数f2minは、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22の最高スイッチング周波数f1maxよりも低い値に設定されている。第1フライバックコンバータ22の周波数領域は、最低スイッチング周波数f1minから最高スイッチング周波数f1maxの範囲であり、第2フライバックコンバータ24の周波数領域は、最低スイッチング周波数f2minから最高スイッチング周波数f2maxの範囲である
【0088】
図11(B)は、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24を切り替えて使用する状態を示す図である。低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24を切り替える一次側電流I
swは、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24の一次側電流I
11が共通する共通一次側電流領域の電流値である。共通一次側電流領域は、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24のいずれも使用可能であり、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24を切り替える一次側電流I
swを共通一次側電流領域に設定することで、一次側電流I
1がギャップを生ずることなく連続する。
【0089】
例えば、第1フライバックコンバータ22から第2フライバックコンバータ24へ、一次側電流I
swで切り替えるとすると、この時、第1フライバックコンバータ22の切替スイッチング周波数f
1swで行われることになり、第2フライバックコンバータ24の切替スイッチング周波数f
2swとなって、第2フライバックコンバータ24が駆動される。
図11(B)から明らかなように、スイッチング周波数f
sにギャップがあるが、一次側電流I
1は連続している。
【0090】
低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24の切り替えは、第1フライバックコンバータ22を駆動中に最高スイッチング周波数f1maxを検出した時に、第2フライバックコンバータ24に切り替え、第2フライバックコンバータ24を駆動中に最低スイッチング周波数f2minを検出した時に、第1フライバックコンバータ24に切り替えてもよい。
【0091】
低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24とを備え、第1トランスTS1又は第2トランスTS2の一次側電流を、スイッチング周波数に対応して切り替えているので、広いスイッチング周波数範囲が使用可能となり、高効率のフライバックコンバータとすることができる。
【0092】
フライバックコンバータのスイッチング制御方式は、上記に説明した周波数可変型としてのRCC方式の他、擬似共振RCC方式がある。スイッチング素子のオン期間にトランスに蓄えられたエネルギを、オフ期間に二次側にフライバック電圧として伝送し、放出後にトランスのリアクタンスと、スイッチング素子と並列に設けられた容量との間で共振を起こし、電圧を振動させる。擬似共振型制御方式は、この共振電圧を利用して、共振電圧が極小となったタイミングでスイッチング素子をオンさせる。
【0093】
擬似共振RCC方式は、負荷が軽いときや入力電圧が高いときは、スイッチング周波数が高くなる。このため、RCC方式と同様に、低周波領域と高周波領域に対応したフライバックコンバータを切り替えて、効率の良いフライバックコンバータとすることができる。
【0094】
一方、パルス幅を可変させるPWM方式は、スイッチング周波数を固定し、一次側電流をパルス幅で制御する方式である。
【0095】
図12は、PWM信号を発生させるためのPWM発生回路の一例を示す図である。PWM発生回路は、誤差増幅器36とPWM発生器38から構成されている。
図12(A)は、出力電圧V
OUTをフィードバックループで帰還して、PWM信号を発生させる電圧モード制御のPWM発生回路である。誤差増幅器36では、出力電圧V
OUTと基準電圧V
refと比較し、差分を誤差出力V
EROUTとして出力し、PWM発生器38に入力する。PWM発生器38には、三角波発生器から三角波が入力されており、三角波と誤差出力V
EROUTを比較して、PWM信号を発生させる。
【0096】
図12(B)は、電流モード制御でPWM信号を発生させるPWM発生回路である。フィードバックループは、電圧ループと電流ループの両方がある。誤差増幅器36では、出力電圧V
OUTと基準電圧V
refと比較し、差分を誤差出力V
EROUTとして出力し、PWM発生器38に入力する。PWM発生器38には、例えば、固定の三角波に一次側電流又は二次側電流を利用したカレントセンスゲインを加算した波形が入力されており、この波形のスロープを利用して、電圧モードと同じく誤差出力V
EROUTとの比較により、PWM信号を発生させる。
【0097】
図13は、電圧モードでのPWM信号を発生させるPWM発生回路の動作とPWM制御を説明する図である。第1フライバックコンバータ22を対象としている。
図13(A)は、PWM発生器38入力される誤差増幅器36からの誤差出力V
EROUTと三角波を示す図である。
図13(B)は、PWM発生器38の出力を示す図であり、これがスイッチング素子SW1のゲート信号となる。誤差増幅器36には、出力電圧V
OUTと基準電圧V
refが入力されている。PWM発生器38には、誤差増幅器36からの誤差出力V
EROUTと三角波が入力される。三角波の周期は、固定されたスイッチング周波数f
s1に対するスイッチング周期T
sw1である。PWM発生器38はコンパレータとして動作し、誤差出力V
EROUTよりも三角波の電圧が高いときに、PWM信号を出力する。PWM信号は、第1フライバックコンバータ22のスイッチング素子SW1のゲートに入力され、スイッチング素子SW1をオンオフさせる。
【0098】
図13(C)は、第1フライバックコンバータ22の一次側電流I
11の波形を示す図であり、
図13(D)は、第1フライバックコンバータ22の二次側電流I
12の波形を示す図である。連続モードの波形を示しており、PWM信号によるスイッチング素子SW1のオン/オフにより制御される。PWM信号のパルス幅が狭くなると、第1フライバックコンバータ22のスイッチング素子SW1が追従できず、スイッチング素子SW1が動作しなくなり、不連続モードとなる。
【0099】
図14は、PWM制御による第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24の切り替えによる動作を説明する図である。
図14(A)は、PWM発生器38入力される誤差増幅器36からの誤差出力V
EROUTと三角波を示す図である。
図14(B)は、PWM発生器38の出力を示す図であり、これがスイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2のゲート信号となる。
【0100】
まず第1フライバックコンバータ22が固定周波数fs1で動作している。PWM制御部34で第1フライバックコンバータ22のパルス幅Tp1が監視されており、所定のパルス幅以下のときに第2フライバックコンバータ24に切り替えられる。第2フライバックコンバータ24に切り替えられると、固定周波数fs2の周期Tsw2で三角波が発生し、誤差出力VEROUTとの比較でPWM信号を出力する。第2フライバックコンバータ24は高周波領域に対応しているから、第1フライバックコンバータ22では追従できなかった短い時間のパルス幅にも応答し、不連続となること無く動作する。PWM制御部34で第2フライバックコンバータ24のパルス幅Tp2も監視されており、所定のパルス幅以上のときに第1フライバックコンバータ22に切り替えられる。
【0101】
図15は、PWM制御における第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24との切り替え動作を説明する図である。切り替えはパルス幅T
pを基準にして、PWM制御部34により行われる。
図15(A)は、一次側電流I
1に対して、第1フライバックコンバータ22におけるスイッチング素子SW1のゲートに入力されるパルス幅T
p1と第2フライバックコンバータ22のスイッチング素子SW2のゲートに入力されるパルス幅T
p2を示す図である。第1フライバックコンバータ22のスイッチング素子SW1を駆動するスイッチング周波数f
s1と第2フライバックコンバータ24のスイッチング素子SW2を駆動するスイッチング周波数f
s2は固定されている。
【0102】
パルス幅の符号Tpは、第1フライバックコンバータ22におけるスイッチング素子SW1のゲートに入力されるパルス幅をTp1とし、第2フライバックコンバータ22のスイッチング素子SW2のゲートに入力されるパルス幅をTp2とした総称を示す。
【0103】
第2フライバックコンバータ24は、パルス幅の狭い高周波領域を対象として設計されており、第2トランスTS2の一次側インダクタンスL12は、第1トランスTS1の一次側インダクタンスL11よりも小さな値である。また、固定周波数は、第1フライバックコンバータ24より第2フライバックコンバータ24の方が高い。高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24の最大パルス幅Tp2maxは、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22の最小パルス幅Tp1minよりも大きい値に設定されている。
【0104】
図15(B)は、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24を切り替えて使用する状態を説明する図である。低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24を切り替える一次側電流I
swは、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24の一次側電流I
1が共通する共通一次側電流領域である。共通一次側電流領域は、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24のいずれも使用可能であり、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24を切り替える一次側電流I
swを共通一次側電流領域に設定することで、一次側電流I
1がギャップを生ずることなく連続する。
【0105】
例えば、第1フライバックコンバータ22から第2フライバックコンバータ24へ、一次側電流I
swで切り替えるとすると、この時、第1フライバックコンバータ22の切替パルス幅T
p1swで行われることになり、第2フライバックコンバータ24の切替パルス幅T
p2swとなって、第2フライバックコンバータ24が駆動される。
図15(B)から明らかなように、パルス幅にギャップがあるが、一次側電流I
1は連続している。
【0106】
次に、第2フライバックコンバータ22から第1フライバックコンバータ24への切り替えは、同じ一次側電流I
swで切り替えるとすると、第2フライバックコンバータ22の切替パルス幅T
p2swで行われることになり、第1フライバックコンバータ22の切替パルス幅T
p1swとなって、第1フライバックコンバータ24が駆動される。
図15(B)から明らかなように、パルス幅T
pにギャップがあるが、一次側電流I
11は連続している。
【0107】
低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24の切り替えは、PWM制御部34において、第1フライバックコンバータ22を駆動中に最小パルス幅Tp1minが検出された時に、第2フライバックコンバータ24に切り替えてもよい。また、第2フライバックコンバータ24を駆動中に最大パルス幅Tp2maxを検出した時に、第1フライバックコンバータ24に切り替えてもよい。
【0108】
PWM制御によるフライバックコンバータにおいて、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24とを備え、PWM信号のパルス幅に対応して切り替えているので、軽負荷・低入力電圧に対しても広い範囲で使用可能となり、高効率のフライバックコンバータとすることができる。
【0109】
次に、電流監視部20における電流検出方法について説明する。
【0110】
一次側電流I1の検出には、電流検出抵抗を用いる方法がある。電流を検出する導線に、直列に電流検出抵抗を接続して、電圧を測定して電流値に変換する。このため、一次側電流I1の検出に電流検出抵抗を使用すると、電流検出抵抗での損失を伴う。
【0111】
損失のない電流検出方法としては、ロゴスキーコイルを用いた方法がある。電流検出抵抗を挿入する方法は、電流検出抵抗での損失が避けられないが、ロゴスキーコイルは損失のない電流検出が可能である。
【0112】
図16は、ロゴスキーコイルの原理を説明する図である。ロゴスキーコイル50は、円環状の進みコイル52と、その終端の線を進みコイル52の中心を通して折り返した戻しコイル54とを有し、進みコイル52の巻き始めと、折り返した戻しコイル54の終端を近接した位置に端子を設けて、端子から引き出す構造になっている。進みコイル52の内部に戻しコイル54が入る構造である。被測定物である導体56は、進みコイル52が巻かれている円環の中心部を貫通している。この導体56に電流Iが流れることにより磁界が発生し、円環状の進みコイル52を貫通する磁界の変化により、進みコイル52に電圧が誘起され、この誘起されたロゴスキーコイル誘起電圧V
RCを積分器58に供給することにより、ロゴスキーコイル電流I
Rを求める。
【0113】
ロゴスキーコイル誘起電圧VRCは、次式で求められる。
VRC=μNS(dIR/dt) ・・・(4)
VRC:ロゴスキーコイル誘起電圧
μ:透磁率
N:単位巻数
S:コイル断面積(進みコイル)
IR:ロゴスキーコイル電流
t:時間
【0114】
ロゴスキーコイル誘起電圧VRCは、ロゴスキーコイル50に流れるロゴスキーコイル電流IRの時間微分となるため、積分器58を通すことで、ロゴスキーコイル電流IRに比例した信号が得られる。ロゴスキーコイル誘起電圧VRCは、単位巻数Nとコイルの断面積Sの積に比例するから、巻数を多くして断面積を広くするほどロゴスキーコイル誘起電圧VRCは高くなる。
【0115】
ロゴスキーコイル50の外側に配置される導電線等により外部磁界が発生した場合に、進みコイル52の出力と戻しコイル54の出力が打ち消し合うようにする必要がある。
【0116】
図17は、ロゴスキーコイル50の実施形態である矩形ロゴスキーコイル60を示す図である。
図17(A)は平面図、
図17(B)は、平面図のX-Y断面図である。進みコイル52の断面は矩形状であり、戻しコイル54は、矩形状の進みコイル52の終端部から折り返され、進みコイル52の中心部を迂回している。進みコイル52及び戻しコイル54は、導電性の材料で作製される。進みコイル52の端部には進みコイル電極62があり、戻しコイル54の端部には戻しコイル電極64がある。進みコイル52は、平板状の上面パターン66を平行に並べ、一方の端部を側面パターン70-1で下方に延し、隣接する上面パターン66の他方の端部は、側面パターン70-2で底面パターン68に接続されている。底面パターン68は、側面パターン70-1と側面パターン70-2を接続している。
図17(A)に示した矩形ロゴスキーコイル60は、進みコイル52が中心部を矩形状に囲んだ形状となっているが、中心部を円形に囲んだ形状、又は、多角形に囲んだ形状でもよい。
【0117】
図18は、進みコイル52の1つの巻回ユニットを説明する図である。
図18(A)は、平行に配置された2つの上面パターン66-1と上面パターン66-2を示す図である。
図18(B)は、側面パターン70-1と側面パターン70-2を示す図である。側面パターン70-1は、上面パターン66-1の一方の端部と接続される位置にあり、側面パターン70-2は、上面パターン66-1に隣接する上面パターン66-2の他方の端部と接続される位置にある。側面パターン70-1と側面パターン70-2は、複数の層を積層した構造であってもよい。
図18(C)は、底面パターン68を示す図である。底面パターン68は、側面パターン70-1と側面パターン70-2を接続している。
【0118】
図18(D)は、
図18(A)~(C)の各パターンを積層して巻回ユニットを構成した図である。巻回ユニットは、上面パターン66-1、側面パターン70-1、底面パターン68、側面パターン70-2、及び、上面パターン66-2により導通ループを形成し、矩形状のコイルとなっている。この巻回ユニットを複数並べて矩形ロゴスキーコイル60の進みコイル52を構成している。
【0119】
ロゴスキーコイルは、導体を流れる電流を検出するため、中心部に導体を貫通させる中空の領域が備えられているのが基本的な構造である。このため、例えばリード線を貫通させる構造とする必要があり、パワーモジュールやスイッチング電源に搭載するには難しかった。これに対して、パワーモジュールやスイッチング電源に搭載し易くするために、中心部に導体を設けた構造を以下に説明する。
【0120】
図19は、中心部に導体56を設けたロゴスキーコイル型電流検出素子74を説明する図である。
図19(A)はロゴスキーコイル型電流検出素子74の平面図、
図19(B)は、
図19(A)のX-Y断面図である。ロゴスキーコイルは
図17に示した矩形ロゴスキーコイル60を使用している。ロゴスキーコイル型電流検出素子74は、多層配線のプリント板技術を用いて作製することができる。
【0121】
導体56に電流を流すと、導体56の周囲に磁界が発生して矩形ロゴスキーコイル50に誘起電圧が発生する。この誘起電圧を、進みコイル電極62と戻しコイル電極64から取り出し、積分器58への入力とする。
【0122】
ロゴスキーコイル型電流検出素子74は、中心部に導体56を備えているので、リード線等を貫通させることなく、パワーモジュール等に容易に搭載できる。
<実施例1>
【0123】
図20は、RCC方式のフライバックコンバータによる本発明の電源回路の実施例1である。低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24が並列に接続された、フライバックコンバータである。第1フライバックコンバータ22は、最低スイッチング周波数を小さい値にして低周波側での周波数領域を広げるために、第1トランスTS1のインダクタンスを大きな値に設定している。スイッチング素子SW1には、MOSFETを使用している。第1ダイオードD1もMOSダイオードである。
【0124】
高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24は、使用可能な最高スイッチング周波数を高くするために高周波数に対応した素子を使用する。スイッチング素子SW2には、GaN-HEMTを使用し、第2ダイオードD2には、GaNダイオードを使用している。GaNからなる素子は、MHzオーダーのスイッチングが可能である。
【0125】
電流検出には、ロゴスキーコイル型電流検出素子74を使用した。
図19に示したロゴスキーコイル型電流検出素子74を、一次側回路のアース線に直列接続した。ロゴスキーコイル型電流検出素子74は、中心部に導体56が埋め込まれており、アース線の一部としている。ロゴスキーコイル型電流検出素子74の導体56の下部をアースパターンにハンダ付けし、上部はワイヤボンディングでアースパターンに接続した。このように、ロゴスキーコイル型電流検出素子74は、従来の製造技術で容易に電源回路に搭載できる。積分器40は、切替制御部18に設けている。
【0126】
入力電圧Vinは、入力コンデンサ12によりノイズが除去され、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24に入力される。第1トランスTS1及び第2トランスTS2の一次側と二次側は、逆極性である。第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24の出力はコンデンサ14で平滑化され、負荷16に電力を供給する。負荷16に供給される電力は、負荷の状態によって高負荷から低負荷まで変動する。これにともない、電流値も変動しスイッチング周波数も低周波数から高周波数まで変動する。
【0127】
切替制御部18により、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24を切り替えて使用する。切り替えは、ノイズの影響を抑えるために、ヒステリシスを持たせて、遅延させてもよい。これにより、電流検出による損失が無く、負荷に応じて効率のよい電力変換が可能なフライバックコンバータを実現することができる。
<実施例2>
【0128】
図21は、PWM方式のフライバックコンバータによる本発明の電源回路の実施例2である。実施例1と同じく、低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24が並列に接続された、フライバックコンバータである。
【0129】
PWM信号を電流モードで制御するため電流検出は、一次側回路のアース線に直列接続しロゴスキーコイル型電流検出素子74で行う。これにより、第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24の一次側電流が、合算電流として検出できる。
【0130】
第1フライバックコンバータ22は、最大パルス幅を広くして低周波側での周波数領域を広げるために、第1トランスTS1のインダクタンスを大きな値に設定している。スイッチング素子SW1には、MOSFETを使用している。第1ダイオードD1もMOSダイオードである。高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24は、使用可能な最小パルス幅を小さくするために高周波数に対応した素子を使用する。スイッチング素子SW2には、GaN-HEMTを使用し、第2ダイオードD2には、GaNダイオードを使用している。GaNからなる素子は、MHzオーダーのスイッチングが可能である。
【0131】
電流検出には、ロゴスキーコイル型電流検出素子74を使用した。
図19に示したロゴスキーコイル型電流検出素子74を、一次側回路のアース線に直列接続した。ロゴスキーコイル型電流検出素子74は、中心部に導体56が埋め込まれており、アース線の一部としている。ロゴスキーコイル型電流検出素子74の導体56の下部をアースパターンにハンダ付けし、上部はワイヤボンディングでアースパターンに接続した。このように、ロゴスキーコイル型電流検出素子74は、従来の製造技術で容易に電源回路に搭載できる。積分器40は、切替制御部18に設けている。
【0132】
入力電圧Vinは、入力コンデンサ12によりノイズが除去され、第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24に入力される。第1トランスTS1及び第2トランスTS2の一次側と二次側は、逆極性である。第1フライバックコンバータ22と第2フライバックコンバータ24の出力はコンデンサ14で平滑化され、負荷16に電力を供給する。負荷16に供給される電力は、負荷の状態によって高負荷から低負荷まで変動する。これにともない、電流値も変動し、PWM制御によるパルス幅も変動する。
【0133】
低周波領域に対応した第1フライバックコンバータ22と高周波領域に対応した第2フライバックコンバータ24は、切替制御部18により切り替えて使用される。切り替えは、ノイズの影響を抑えるために、ヒステリシスを持たせて、遅延させてもよい。これにより、電流検出による損失が無く、負荷に応じて効率のよい電力変換が可能なフライバックコンバータを実現することができる。
【0134】
本発明のフライバックコンバータに保護回路を含めた制御部を備えたスイッチング電源モジュールは、小型で高性能なスイッチング電源モジュールとして提供される。
【0135】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0136】
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧
TS1 第1トランス
TS2 第2トランス
N11、N21 一次巻線
N12、N22 二次巻線
SW1 第1スイッチング素子
SW2 第2スイッチング素子
D1 第1ダイオード
D2 第2ダイオード
L11、L21 一次側インダクタンス
L12、L22 二次側インダクタンス
I1、I11,I21 一次側電流
I2、I12,I22 二次側電流
Vg1、Vg2 ゲート電圧
fs、fs1、fs2 スイッチング周波数
f1min、f2min 最低スイッチング周波数
f1max、f2max 最高スイッチング周波数
VSW1 スイッチング素子電圧
W エネルギ
P 負荷
Isw 切替一次側電流
f1sw、f2sw 切替スイッチング周波数
I1min、I2min 最小一次側電流
I 電流
Vref 基準電圧
Verout 誤差増幅器出力
Tsw1 スイッチング周期
VEROUT 誤差出力
Tp、Tp1、Tp2 パルス幅
Tp1min、Tp2min 最小パルス幅
Tp1max、Tp2max 最大パルス幅
Tp1sw、Tp2sw 切替パルス幅
VRC ロゴスキーコイル誘起電圧
IR ロゴスキーコイル電流
10,10-2 電源回路
10-1 PWM電源回路
12 入力コンデンサ
14 平滑コンデンサ
16 負荷
18-1,18-2 切替制御部
20 電流監視部
22 第1フライバックコンバータ
24 第2フライバックコンバータ
26 周波数監視部
30 入力電圧監視部
32 出力電圧監視部
34 PWM制御部
36 誤差増幅器
38 PWM発生器
50 ロゴスキーコイル
52 進みコイル
54 戻しコイル
56 導体
58 積分器
60 矩形ロゴスキーコイル
62 進みコイル電極
64 戻しコイル電極
66、66-1、66-2 上面パターン
68 底面パターン
70-1、70-2 側面パターン
74 ロゴスキーコイル型電流検出素子
80 実施例1
82 実施例2