(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】作業機械のための表示システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20221014BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20221014BHJP
B60R 1/24 20220101ALI20221014BHJP
B60R 1/26 20220101ALI20221014BHJP
【FI】
H04N7/18 J
H04N7/18 U
E02F9/26 B
B60R1/24
B60R1/26
(21)【出願番号】P 2018164761
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 卓
(72)【発明者】
【氏名】安藤 友起
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】西峰 末宣
(72)【発明者】
【氏名】川元 康裕
(72)【発明者】
【氏名】河原 淳人
(72)【発明者】
【氏名】津村 総一
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-062733(JP,A)
【文献】特開2011-001163(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118705(WO,A1)
【文献】特開2007-158860(JP,A)
【文献】国際公開第2017/014325(WO,A1)
【文献】特開2002-036954(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083322(WO,A1)
【文献】特開2002-128463(JP,A)
【文献】特開平10-145777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B60R 1/00
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械本体と、
前記作業機械本体に装着された第1の作業機および第2の作業機と、
前記作業機械本体に装着され、各々が撮像データを出力する、複数のカメラと、
前記複数のカメラのうち1台以上のカメラから出力される前記撮像データを表示する表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部とを備え、
前記第1の作業機はブレードであり、
前記表示制御部は、前記表示部に複数の分割表示部を設定し、
前記表示制御部は、前記複数のカメラのうち1台以上のカメラを含む、前記第1の作業機による作業を撮像する第1カメラ群を設定し、かつ、前記複数のカメラのうち1台以上のカメラを含む、前記第2の作業機による作業を撮像する第2カメラ群を設定し、
前記第1カメラ群は、前記作業機械本体の前方を撮像範囲に含む前方カメラと、前記ブレードの切刃の左方側端部を撮像範囲に含む左ブレードカメラと、前記ブレードの前記切刃の右方側端部を撮像範囲に含む右ブレードカメラとを含み、
前記表示制御部は、前記第1カメラ群および前記第2カメラ群のいずれか一方に含まれるカメラから出力される前記撮像データを、前記複数の分割表示部に表示
し、
前記表示制御部は、前記複数の分割表示部として、前記前方カメラから出力される前記撮像データを表示する前方表示部と、前記左ブレードカメラから出力される前記撮像データを表示する左ブレード表示部と、前記右ブレードカメラから出力される前記撮像データを表示する右ブレード表示部とを設定し、
前記表示制御部は、前記左ブレード表示部と前記右ブレード表示部とを、前記左ブレード表示部を左に、前記右ブレード表示部を右にして、左右に並べて設定し、
前記表示制御部は、前記前方表示部を、前記左ブレード表示部および前記右ブレード表示部よりも上に、前記左ブレード表示部と前記右ブレード表示部との境界に中央揃えして設定する、作業機械のための表示システム。
【請求項2】
前記作業機械はブルドーザであり
、
前記第2の作業機はリッパである、請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
履帯を有する走行体をさらに備え、前記作業機械本体は前記走行体上に設置され、
前記リッパは、先端にリッパポイントを有し、
前記第2カメラ群は、前記作業機械本体の後方を撮像範囲に含む後方カメラと、前記リッパポイントを撮像範囲に含むリッパポイントカメラと、前記履帯を撮像範囲に含む履帯カメラとを含む、請求項
2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記複数の分割表示部として、前記後方カメラから出力される前記撮像データを表示する後方表示部と、前記リッパポイントカメラから出力される前記撮像データを表示するリッパポイント表示部と、前記履帯カメラから出力される前記撮像データを表示する履帯表示部とを設定し、
前記表示制御部は、前記リッパポイント表示部と、前記後方表示部と、前記履帯表示部とを、左から右にこの順に並べて設定する、請求項
3に記載の表示システム。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記複数のカメラのうち1台以上のカメラを含む、前記作業機械の走行時に前記作業機械の周辺を撮像する第3カメラ群を設定し、
前記表示制御部は、前記第1カメラ群、前記第2カメラ群および前記第3カメラ群のいずれか1つのカメラ群に含まれるカメラから出力される前記撮像データを、前記分割表示部に表示し、
前記第3カメラ群は、前
記前方カメラと、前記作業機械本体の後方を撮像範囲に含む後方カメラと、前記作業機械本体の左方を撮像範囲に含む左方カメラと、前記作業機械本体の右方を撮像範囲に含む右方カメラとを含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項6】
前記表示制御部は、前
記前方表示部を、前記前方表示部以外の前記分割表示部よりも大きく設定する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項7】
作業機械本体と、
前記作業機械本体に装着された第1の作業機および第2の作業機と、
前記作業機械本体に装着され、各々が撮像データを出力するm台(mは2以上の整数)のカメラと、
m台のカメラのうち1台以上のカメラから出力される前記撮像データを表示する表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部とを備え、
前記第1の作業機はブレードであり、
前記表示制御部は、前記表示部にn個(nは1以上m未満の整数)の分割表示部を設定し、各々の前記分割表示部には対応するカメラから出力される前記撮像データが表示され、
前記表示制御部は、m台のカメラのうち、前記第1の作業機の下端を撮像するカメラを含んでn台のカメラよりなる第1カメラ群を設定し、かつ、m台のカメラのうち、前記第2の作業機の下端を撮像するカメラを含んでn台のカメラよりなる第2カメラ群を設定し、
前記第1カメラ群は、前記作業機械本体の前方を撮像範囲に含む前方カメラと、前記ブレードの切刃の左方側端部を撮像範囲に含む左ブレードカメラと、前記ブレードの前記切刃の右方側端部を撮像範囲に含む右ブレードカメラとを含み、
前記表示制御部は、前記第1カメラ群および前記第2カメラ群のいずれか一方に含まれるカメラから出力される前記撮像データの各々を、n個の前記分割表示部に対応させて表示
し、
前記表示制御部は、n個の前記分割表示部として、前記前方カメラから出力される前記撮像データを表示する前方表示部と、前記左ブレードカメラから出力される前記撮像データを表示する左ブレード表示部と、前記右ブレードカメラから出力される前記撮像データを表示する右ブレード表示部とを設定し、
前記表示制御部は、前記左ブレード表示部と前記右ブレード表示部とを、前記左ブレード表示部を左に、前記右ブレード表示部を右にして、左右に並べて設定し、
前記表示制御部は、前記前方表示部を、前記左ブレード表示部および前記右ブレード表示部よりも上に、前記左ブレード表示部と前記右ブレード表示部との境界に中央揃えして設定する、作業機械のための表示システム。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記第1カメラ群および前記第2カメラ群の各々に対して、前記表示部内でのn個の前記分割表示部の位置および大きさを設定する、請求項
7に記載の表示システム。
【請求項9】
作業機械本体と、
前記作業機械本体に装着された第1の作業機および第2の作業機と、
前記作業機械本体に装着され、各々が撮像データを出力する、複数のカメラと、
前記複数のカメラのうち1台以上のカメラから出力される前記撮像データを表示する表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部とを備え、
前記第2の作業機はリッパであり、
前記リッパは、先端にリッパポイントを有し、
前記表示制御部は、前記表示部に複数の分割表示部を設定し、
前記表示制御部は、前記複数のカメラのうち1台以上のカメラを含む、前記第1の作業機による作業を撮像する第1カメラ群を設定し、かつ、前記複数のカメラのうち1台以上のカメラを含む、前記第2の作業機による作業を撮像する第2カメラ群を設定し、
前記第2カメラ群は、前記作業機械本体の前方を撮像範囲に含む前方カメラと、前記作業機械本体の後方を撮像範囲に含む後方カメラと、前記リッパポイントを撮像範囲に含むリッパポイントカメラとを含み、
前記表示制御部は、前記第1カメラ群および前記第2カメラ群のいずれか一方に含まれるカメラから出力される前記撮像データを、前記複数の分割表示部に表示し、
前記表示制御部は、前記複数の分割表示部として、前記前方カメラから出力される前記撮像データを表示する前方表示部と、前記後方カメラから出力される前記撮像データを表示する後方表示部と、前記リッパポイントカメラから出力される前記撮像データを表示するリッパポイント表示部とを設定し、
前記表示制御部は、前記前方表示部と前記後方表示部とを、前記前方表示部を上に、前記後方表示部を下にして、上下に並べて設定し、前記リッパポイント表示部を、前記前方表示部と前記後方表示部との並びの左側に設定する、作業機械のための表示システム。
【請求項10】
作業機械本体と、
前記作業機械本体に装着された第1の作業機および第2の作業機と、
前記作業機械本体に装着され、各々が撮像データを出力するm台(mは2以上の整数)のカメラと、
m台のカメラのうち1台以上のカメラから出力される前記撮像データを表示する表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部とを備え、
前記第2の作業機はリッパであり、
前記リッパは、先端にリッパポイントを有し、
前記表示制御部は、前記表示部にn個(nは1以上m未満の整数)の分割表示部を設定し、各々の前記分割表示部には対応するカメラから出力される前記撮像データが表示され、
前記表示制御部は、m台のカメラのうち、前記第1の作業機の下端を撮像するカメラを含んでn台のカメラよりなる第1カメラ群を設定し、かつ、m台のカメラのうち、前記第2の作業機の下端を撮像するカメラを含んでn台のカメラよりなる第2カメラ群を設定し、
前記第2カメラ群は、前記作業機械本体の前方を撮像範囲に含む前方カメラと、前記作業機械本体の後方を撮像範囲に含む後方カメラと、前記リッパポイントを撮像範囲に含むリッパポイントカメラとを含み、
前記表示制御部は、前記第1カメラ群および前記第2カメラ群のいずれか一方に含まれるカメラから出力される前記撮像データの各々を、n個の前記分割表示部に対応させて表示し、
前記表示制御部は、n個の前記分割表示部として、前記前方カメラから出力される前記撮像データを表示する前方表示部と、前記後方カメラから出力される前記撮像データを表示する後方表示部と、前記リッパポイントカメラから出力される前記撮像データを表示するリッパポイント表示部とを設定し、
前記表示制御部は、前記前方表示部と前記後方表示部とを、前記前方表示部を上に、前記後方表示部を下にして、上下に並べて設定し、前記リッパポイント表示部を、前記前方表示部と前記後方表示部との並びの左側に設定する、作業機械のための表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械のための表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の遠隔監視および遠隔操作に関連する情報を提供するための表示システムが、たとえば米国特許出願公開第2014/0240506号明細書(特許文献1)に開示されている。この文献には、複数の作業機械に関連付けられた撮像データのうち、特定の作業機械の車載カメラにより撮像された当該作業機械の前方、後方、前右方および前左方の撮像データを拡大して、表示画面に表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2014/0240506号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機として、たとえば前側に掘削ブレード、後側にリッパを備えるような作業機械においては、掘削ブレードによる掘削作業が行なわれ、リッパによるリッピング作業が行なわれ、また作業機を使わない単なる走行が行なわれる。表示画面に表示される情報量は、それぞれの作業に対応する情報量が多いほど望ましい。
【0005】
上記文献には、作業の種類に関わらず同じ車載カメラから撮像した撮像データを表示画面に表示することが開示されている。しかし、情報量を多くするために多数の撮像データを表示画面に表示すると、各撮像データが小さくなることで撮像データ一つ当たりの情報量が低下し、また、注視すべき撮像データを選びにくくなる。
【0006】
本開示では、表示部に表示される撮像データの情報量を増大できる、作業機械のための表示システムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従うと、作業機械本体と、第1の作業機および第2の作業機と、複数のカメラと、表示部と、表示制御部とを備える、作業機械のための表示システムが提供される。第1の作業機および第2の作業機は、作業機械本体に装着されている。複数のカメラは、作業機械本体に装着されており、各々が撮像データを出力する。表示部は、複数のカメラのうち1台以上のカメラから出力される撮像データを表示する。表示制御部は、表示部を制御する。表示制御部は、表示部に複数の分割表示部を設定する。表示制御部は、複数のカメラのうち1台以上のカメラを含む、第1カメラ群および第2カメラ群を設定する。第1カメラ群は、第1の作業機による作業を撮像する。第2カメラ群は、第2の作業機による作業を撮像する。表示制御部は、第1カメラ群および第2カメラ群のいずれか一方に含まれるカメラから出力される撮像データを、対応する複数の分割表示部に表示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に従えば、表示部に表示される撮像データの情報量を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に基づくブルドーザの構成を概略的に示す側面図である。
【
図3】実施形態に基づく表示システムの構成の概略を示すブロック図である。
【
図4】表示制御部により実行される処理を示すフローチャートである。
【
図6】表示部に表示される撮像データの第一の例を示す模式図である。
【
図7】表示部に表示される撮像データの第二の例を示す模式図である。
【
図8】表示部に表示される撮像データの第三の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
[ブルドーザ10の構成]
まず、実施形態の表示システムを適用可能な作業機械の一例として、ブルドーザ10の構成について説明する。
図1は、実施形態に基づくブルドーザ10の構成を概略的に示す側面図である。
図2は、
図1に示すブルドーザの背面図である。
【0012】
図1,2に示されるように、ブルドーザ10は、本体1(実施形態における作業機械本体に相当する)と、掘削ブレード2と、走行体3とを主に備えている。掘削ブレード2は、本体1に装着されている。掘削ブレード2は、本体1の前方に設けられている。走行体3は、車幅方向に離れた左右一対の履帯3Cを有している、履帯式の走行体である。本体1は、左右一対の履帯3Cの間に配置されている。履帯3Cが駆動されることにより、ブルドーザ10が走行する。
【0013】
本体1は、キャブ(運転室)9とエンジン室8とを有している。キャブ9は、本体1の後上部に配置されている。エンジン室8は、キャブ9の前方に配置されている。エンジン室8は、キャブ9と掘削ブレード2との間に配置されている。ブルドーザ10を操作する運転員は、キャブ9に搭乗する。キャブ9は、運転員が着座するための運転席を内部に有し、かつその運転席を囲むように構成されている。
【0014】
実施形態では、ブルドーザ10が直進走行する方向を、ブルドーザ10の前後方向という。ブルドーザ10の前後方向において、本体1から掘削ブレード2が突き出している側を、前方向とする。ブルドーザ10の前後方向において、前方向と逆側を、後方向とする。ブルドーザ10の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。ブルドーザ10の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0015】
前後方向とは、キャブ9内の運転席に着座した運転員の前後方向である。左右方向とは、運転席に着座した運転員の左右方向である。左右方向とは、ブルドーザ10の車幅方向である。上下方向とは、運転席に着座した運転員の上下方向である。運転席に着座した運転員に正対する方向が前方向であり、運転席に着座した運転員の背後方向が後方向である。運転席に着座した運転員が正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。運転席に着座した運転員の足元側が下側、頭上側が上側である。
【0016】
以下の図においては、前後方向を図中矢印X、左右方向を図中矢印Y、上下方向を図中矢印Zで示している。
【0017】
キャブ9の後側上部に、コンデンサユニット9cが取り付けられている。コンデンサユニット9cは、キャブ9の後部から後方に突き出して配置されている。コンデンサユニット9cの内部には、キャブ9内の空気を調和するための空調装置を構成する機器類、たとえば熱交換器および送風機などが収容されている。
【0018】
ブルドーザ10は作業機として、本体1の前方に掘削ブレード2(第1の作業機)を備えている。掘削ブレード2は、地表の掘削および整地などの作業を行なうための作業機である。掘削ブレード2は、本体1に対して前方に配置される、前方作業機の一例である。掘削ブレード2は、その下端に切刃2Cを有している。切刃2Cは、掘削ブレード2の刃先を構成している。掘削ブレード2は、切刃2Cの左方の端部に左方側端部2CLを有している。掘削ブレード2は、切刃2Cの右方の端部に右方側端部2CRを有している。掘削ブレード2は、左下端2E1と、右下端2E2とを有している。
【0019】
掘削ブレード2は、左右両側でフレーム4により支持されている。フレーム4は、四角柱状の部材である。フレーム4の一端は、掘削ブレード2の背面に、回転自在の支持部により取り付けられている。フレーム4の他端は、走行体3の側面に支持されている。
【0020】
掘削ブレード2は、チルト油圧シリンダ5およびリフト油圧シリンダ6によって駆動される。チルト油圧シリンダ5の一端は、掘削ブレード2の背面に支持されている。チルト油圧シリンダ5の他端は、フレーム4の上面に支持されている。チルト油圧シリンダ5の油圧による伸縮により、掘削ブレード2の上端が、掘削ブレード2にフレーム4が取り付けられる支持部を中心に、前後方向に移動する。これにより、掘削ブレード2のチルト角が変化する。
【0021】
リフト油圧シリンダ6の一端は、掘削ブレード2の背面に支持されている。リフト油圧シリンダ6の中間部は、本体1の側面に支持されている。リフト油圧シリンダ6の油圧による伸縮により、掘削ブレード2は、フレーム4の他端を中心に、上下方向に移動する。
【0022】
本体1には、フロントグリル23が取り付けられている。フロントグリル23は、本体1の前端に配置されている。フロントグリル23は、本体1の前端に形成された開口部を覆うように、配置されている。掘削ブレード2は、フロントグリル23の前方に、間隔を空けて配置されている。
【0023】
本体1の後端には、燃料タンク26が配置されている。燃料タンク26は、キャブ9の後方に配置されている。燃料タンク26は、その内部に、エンジン21に供給する燃料を貯留している。
【0024】
燃料タンク26は、
図1に示すように、側方視において、後方に向かうほどその高さが低くなっている。燃料タンク26は、後方に向かって下方に傾斜するテーパ面を有している。
【0025】
ブルドーザ10は他の作業機として、本体1の後方にリッパ11(第2の作業機)を備えている。リッパ11は、岩石などの硬質材料を貫通し破砕するための作業機である。リッパ11は、本体1に装着されている。リッパ11は、本体1の後方に設けられている。ブルドーザ10の前後方向において、本体1からリッパ11が突き出している側が、後方向である。リッパ11は、燃料タンク26の後方に、間隔を空けて配置されている。リッパ11は、本体1に対して後方に配置される、後方作業機の一例である。
【0026】
リッパ11は、シャンク12を有している。シャンク12の先端(下端)に、リッパポイント13が設けられている。リッパ11は、リッパポイント13を岩石などに突き刺して、走行体3による牽引力によって岩石の切削または破砕を行う。リッパ11は、チルトシリンダ15およびリフトシリンダ16によって駆動される。
【0027】
チルトシリンダ15およびリフトシリンダ16の下方に、リッパアーム14が設けられている。リッパアーム14の一端は、本体1に回動可能に取り付けられている。リッパアーム14の他端には、ビーム17が、リッパアーム14に対して回動可能に取り付けられている。シャンク12は、リッパアーム14に対して、ビーム17を中心として回動可能に設けられている。
【0028】
エンジン室8内に、ブルドーザ10の駆動源であるエンジン21が収容されている。エンジン21が発生する動力は、本体1内部のドライブトレインを経て、走行体3の駆動輪に伝達される。駆動輪の回動により、履帯3Cが駆動され、ブルドーザ10が走行する。エンジン21の動力はまた、油圧ポンプに伝達される。油圧ポンプは、掘削ブレード2を駆動するチルト油圧シリンダ5およびリフト油圧シリンダ6、ならびにリッパ11を駆動するチルトシリンダ15およびリフトシリンダ16などの、各アクチュエータに圧油を供給する。
【0029】
エンジン21は、エンジンフード22によって上方から覆われている。エンジンフード22は、エンジン室8の天井部を構成している。エンジンフード22は、エンジン室8の外部と内部とを隔てている。
【0030】
燃料タンク26の上方に、作業台30が配置されている。作業台30は、キャブ9の後方に配置されている。作業台30は、キャブ9の後方において作業を行なう運転員の足場である。作業台30上で運転員が行なう作業は、たとえば、キャブ9の窓の清掃、燃料タンク26のフィルタ交換およびブリーザのメンテナンス、ならびにコンデンサユニット9cに収容されたコンデンサの清掃などである。作業台30には、予期しない落下を防止するためのガードレール31が取り付けられている。
【0031】
本体1の左縁に沿って、地上から作業台30へのアクセスを可能にするためのアクセス通路40が設けられている。アクセス通路40には、予期しない落下を防止するためのガードレール41が取り付けられている。
【0032】
ブルドーザ10には、転倒時保護構造90が取り付けられている。転倒時保護構造90は、ISO3471として規格化されている。
図2に示す背面図では、図示の明確化のために、転倒時保護構造90は図示を省略されている。転倒時保護構造90は、三方枠状に枠組みされて形成されている。
【0033】
転倒時保護構造90は、左柱部91と、梁部93と、図示しない右柱部とを有している。左柱部91は、キャブ9の左側方に配置されている。右柱部は、キャブ9の右側方に配置されている。梁部93は、キャブ9の上方に配置されている。梁部93は、左柱部91の上端に連結された左端と、右柱部の上端に連結された右端とを有している。梁部93は、左柱部91および右柱部によって支持されている。梁部93は、左柱部91と右柱部との間で、左右方向に延びている。左柱部91と右柱部とは、キャブ9を側方視した場合にキャブ9内の運転席に重畳する位置に、配置されている。梁部93は、キャブ9を平面視した場合にキャブ9内の運転席に重畳する位置に、配置されている。
【0034】
ブルドーザ10には、複数のカメラが取り付けられている。ブルドーザ10には、m台(mは2以上の整数)のカメラが取り付けられている。複数のカメラは、第1のカメラ51、第2のカメラ52、第3のカメラ53、第4のカメラ54(
図1,2には不図示)、第5のカメラ55、第6のカメラ56(
図1,2には不図示)、第7のカメラ57、および第8のカメラ58を含んでいる。
【0035】
第1のカメラ51は、本体1の前方を撮像する。第1のカメラ51の撮像範囲には、本体1の前方が含まれている。第1のカメラ51が出力する撮像データは、本体1の前方の地形を含み得る。第1のカメラ51は、実施形態における前方カメラに相当する。第1のカメラ51は、支持部51Sに取り付けられている。支持部51Sは、エンジンフード22から上方に突き出している。第1のカメラ51は、支持部51Sを介して、本体1に装着されている。第1のカメラ51は、前下方を向いて固定されている。
【0036】
第2のカメラ52は、本体1の後方を撮像する。第2のカメラ52の撮像範囲には、本体1の後方が含まれている。第2のカメラ52が出力する撮像データは、本体1の後方の地形を含み得る。第2のカメラ52は、実施形態における後方カメラに相当する。第2のカメラ52は、コンデンサユニット9cに取り付けられている。第2のカメラ52は、コンデンサユニット9cに収容されている。第2のカメラ52は、キャブ9を介して、本体1に装着されている。第2のカメラ52は、後下方を向いて固定されている。
【0037】
第3のカメラ53は、掘削ブレード2の切刃2Cの左方側端部2CLを撮像する。第3のカメラ53の撮像範囲には、掘削ブレード2の左下端2E1が含まれている。第3のカメラ53が出力する撮像データは、掘削ブレード2の左下端2E1を含み得る。第3のカメラ53の撮像範囲は、掘削ブレード2の左下端2E1が地表に貫入する地点を含む。第3のカメラ53は、実施形態における左ブレードカメラに相当する。第3のカメラ53は、転倒時保護構造90の左柱部91に取り付けられている。第3のカメラ53は、転倒時保護構造90を介して、本体1に装着されている。第3のカメラ53は、前下方を向いて固定されている。
【0038】
図1,2には図示されないが、第4のカメラ54は、転倒時保護構造90の右柱部に取り付けられている。第4のカメラ54は、転倒時保護構造90を介して、本体1に装着されている。第4のカメラ54は、前下方を向いて固定されている。第4のカメラ54は、掘削ブレード2の切刃2Cの右方側端部2CRを撮像する。第4のカメラ54の撮像範囲には、掘削ブレード2の右下端2E2が含まれている。第4のカメラ54が出力する撮像データは、掘削ブレード2の右下端2E2を含み得る。第4のカメラ54の撮像範囲は、掘削ブレード2の右下端2E2が地表に貫入する地点を含む。第4のカメラ54は、実施形態における右ブレードカメラに相当する。
【0039】
第5のカメラ55は、本体1の左方を撮像する。第5のカメラ55の撮像範囲には、本体1の左方が含まれている。第5のカメラ55が出力する撮像データは、本体1の左方の地形を含み得る。第5のカメラ55は、実施形態における左方カメラに相当する。第5のカメラ55は、転倒時保護構造90の左柱部91に取り付けられている。第5のカメラ55は、転倒時保護構造90を介して、本体1に装着されている。第5のカメラ55は、左下方を向いて固定されている。第3のカメラ53と第5のカメラ55とは、第3のカメラ53が前側に、第5のカメラ55が後側に、前後方向に隣り合って配置されている。
【0040】
図1,2には図示されないが、第6のカメラ56は、転倒時保護構造90の右柱部に取り付けられている。第6のカメラ56は、転倒時保護構造90を介して、本体1に装着されている。第6のカメラ56は、右下方を向いて固定されている。第6のカメラ56は、本体1の右方を撮像する。第6のカメラ56の撮像範囲には、本体1の右方が含まれている。第6のカメラ56が出力する撮像データは、本体1の右方の地形を含み得る。第6のカメラ56は、実施形態における右方カメラに相当する。第4のカメラ54と第6のカメラ56とは、第4のカメラ54が前側に、第6のカメラ56が後側に、前後方向に隣り合って配置されている。
【0041】
第7のカメラ57は、リッパ11の下端に相当するリッパポイント13を撮像する。第7のカメラ57の撮像範囲には、リッパポイント13が含まれている。第7のカメラ57が出力する撮像データは、リッパポイント13を含み得る。第7のカメラ57は、実施形態におけるリッパポイントカメラに相当する。第7のカメラ57は、本体1の後面に取り付けられている。第7のカメラ57は、左右方向における本体1の後面の中央部付近において、本体1に装着されている。第7のカメラ57は、後下方を向いて固定されている。
【0042】
第8のカメラ58は、左右一対の履帯3Cのうち、右側の履帯3Cを撮像する。第8のカメラ58の撮像範囲には、右側の履帯3Cが含まれている。第8のカメラ58が出力する撮像データは、右側の履帯3Cを含み得る。第8のカメラ58は、実施形態における履帯カメラに相当する。第8のカメラ58は、本体1の後面に取り付けられている。第8のカメラ58は、左右方向における本体1の後面の右縁部付近において、本体1に装着されている。第8のカメラ58は、右側の履帯3Cの上方に配置されている。第8のカメラ58は、後下方を向いて固定されている。
【0043】
[システム構成]
図3は、実施形態に基づく表示システムの構成の概略を示すブロック図である。
図3に示されるように、表示システムは、
図1,2を参照して説明したブルドーザ10と、遠隔操作局100とを備えている。
【0044】
ブルドーザ10は、コントローラ60を有している。コントローラ60は、図示しないメモリに格納されているプログラムに基づいて、ブルドーザ10の動作を制御する。コントローラ60は、第1~第8のカメラ51~58から、各々のカメラが撮像した撮像データの入力を受ける。
【0045】
コントローラ60は、ブレードアクチュエータ、すなわちチルト油圧シリンダ5およびリフト油圧シリンダ6に制御信号を出力することにより、掘削ブレード2の動作を制御する。コントローラ60から制御信号を受けたチルト油圧シリンダ5およびリフト油圧シリンダ6が適宜伸縮することにより、掘削ブレード2のチルト角の変化、および掘削ブレード2の上下動が行なわれる。
【0046】
コントローラ60は、リッパアクチュエータ、すなわちチルトシリンダ15およびリフトシリンダ16に制御信号を出力することにより、リッパ11の動作を制御する。コントローラ60から制御信号を受けたチルトシリンダ15およびリフトシリンダ16が適宜伸縮することにより、シャンク12が上下動し、シャンク12の先端のリッパポイント13もまた上下動する。
【0047】
コントローラ60は、変速機64および操向装置66に制御信号を出力することにより、ブルドーザ10の走行を制御する。
【0048】
ブルドーザ10は、送受信装置62を有している。コントローラ60は、送受信装置62を経由して、遠隔操作局100に信号を送信し、また遠隔操作局100から信号を受信する。コントローラ60は、第1~第8のカメラ51~58から出力された撮像データを、送受信装置62を経由して、遠隔操作局100へ送信する。
【0049】
遠隔操作局100は、表示制御部110と、送受信装置112と、入力装置114と、表示部120とを有している。表示制御部110、送受信装置112、入力装置114、および表示部120は、ブルドーザ10から離れた遠隔操作局100に配置されている。
【0050】
表示制御部110は、表示部120を制御する。表示制御部110は、送受信装置112を経由して、ブルドーザ10から信号を受信し、またブルドーザ10に信号を送信する。表示制御部110は、送受信装置112を経由して、ブルドーザ10から、第1~第8のカメラ51~58で撮像された撮像データの入力を受ける。
【0051】
入力装置114は、オペレータによって操作される。入力装置114は、後述するカメラ群を選択するためのスイッチを含んでいる。
【0052】
表示制御部110は、表示部120に複数の分割表示部を設定する。表示制御部110は、表示部120にn個(nは1以上の整数)の分割表示部を設定する。分割表示部の数nはカメラの数mより小さい。表示制御部110は、選択されたカメラ群に含まれる、第1~第8のカメラ51~58のうち1台以上のカメラから出力される撮像データを、対応する複数の分割表示部に表示する。カメラ群はn台のカメラを含む。表示部120には、m台のカメラから出力される撮像データのうち、カメラ群に含まれるn台のカメラの撮像データをそれぞれ表示するためのn個の分割表示部が設定される。以下に記載の実施形態では、8台のカメラから出力される撮像データのうち、4台のカメラの撮像データをそれぞれ表示するための4個の分割表示部が設定される。
【0053】
遠隔操作局100はまた、操作盤140を有している。操作盤140は、ブレード操作レバー141と、リッパ操作レバー142と、操向レバー143とを有している。ブレード操作レバー141、リッパ操作レバー142、および操向レバー143は、オペレータによって操作される。操作盤140の操作は、ブルドーザ10のコントローラ60へ入力される。操作盤140の操作の入力を受けたコントローラ60は、その入力に従って、ブレードアクチュエータ、リッパアクチュエータ、変速機64または操向装置66へ制御信号を出力して、これらアクチュエータを動作させる。
【0054】
入力装置114および操作盤140は、表示部120を見るオペレータの手元に配置される。オペレータは、表示部120を見ながら、入力装置114および操作盤140を操作することができる。
【0055】
[動作]
以上の構成を備えている表示システムの動作について、以下に説明する。
図4は、表示制御部110により実行される処理を示すフローチャートである。
【0056】
図4に示されるように、まずステップS1において、カメラ群を選択する。入力装置114は、カメラ群を選択するためのスイッチを含んでいる。表示制御部110は、オペレータによるスイッチの操作の入力を受けて、表示部120に表示される撮像データがどのカメラ群に含まれるカメラにより撮像されたものであるのかを、選択する。
【0057】
図5は、カメラ群G1~G3を示す模式図である。実施形態のブルドーザ10に搭載されている第1~第8のカメラ51~58は、第1カメラ群G1、第2カメラ群G2、および第3カメラ群G3に、分類される。表示制御部110は、第1カメラ群G1、第2カメラ群G2、および第3カメラ群G3を設定する。第1カメラ群G1、第2カメラ群G2、および第3カメラ群G3は、各々、8台のカメラのうち1台以上のカメラを含んでいる。
【0058】
第1カメラ群G1は、第1のカメラ51と、第2のカメラ52と、第3のカメラ53と、第4のカメラ54とを含んでいる。第1カメラ群G1は、本体1の前方を撮像範囲に含む第1のカメラと、掘削ブレード2の切刃2Cの左方側端部2CLを撮像範囲に含む第3のカメラ53と、掘削ブレード2の切刃2Cの右方側端部2CRを撮像範囲に含む第4のカメラ54とを含んでおり、掘削ブレード2による作業を撮像する。第1カメラ群G1は、掘削ブレード2の下側左右端が撮像範囲にあるカメラを含む。
【0059】
第2カメラ群G2は、第1のカメラ51と、第2のカメラ52と、第7のカメラ57と、第8のカメラ58とを含んでいる。第2カメラ群G2は、本体1の後方を撮像範囲に含む第2のカメラ52と、リッパポイント13を撮像範囲に含む第7のカメラ57と、右側の履帯3Cを撮像範囲に含む第8のカメラ58とを含んでおり、リッパ11による作業を撮像する。第2カメラ群G2は、リッパ11の下端にあるリッパポイント13が撮像範囲にあるカメラを含む。
【0060】
第3カメラ群G3は、第1のカメラ51と、第2のカメラ52と、第5のカメラ55と、第6のカメラ56とを含んでいる。第3カメラ群G3は、本体1の前方を撮像範囲に含む第1のカメラ51と、本体1の後方を撮像範囲に含む第2のカメラ52と、本体1の左方を撮像範囲に含む第5のカメラ55と、本体1の右方を撮像範囲に含む第6のカメラ56とを含んでおり、ブルドーザ10の走行時および停止中にブルドーザ10の周辺を撮像する。
【0061】
オペレータは、所望のカメラによって撮像された撮像データを表示部120に表示させるように、入力装置114のスイッチを操作する。入力装置114に入力されたオペレータのスイッチ操作は、表示制御部110に通知される。表示制御部110は、オペレータのスイッチ操作に基づいて、第1~第3カメラ群G1~G3のうち、表示部120に表示すべき撮像データを出力するカメラを含む1つのカメラ群を選択する。
【0062】
カメラ群の選択は、オペレータのスイッチ操作に基づいて行われなくてもよい。たとえば、オペレータによる操作盤140の操作が表示制御部110に入力されて、掘削ブレード2による作業、リッパ11による作業、または作業機を使わない単なる走行のいずれの動作をブルドーザ10が行なうのかを、操作盤140の操作から表示制御部110が判定してもよく、その判定の結果に基づいて表示制御部110が第1~第3カメラ群G1~G3から1つのカメラ群を選択してもよい。
【0063】
たとえば、操作盤140に、作業モードを切り替えるためのスイッチが設けられてもよい。オペレータは、カメラ群を選択するためのスイッチではなく、作業モードを切り替えるためのスイッチを操作し、この作業モードの切り替えを表示制御部110が検出することで、表示制御部110が第1~第3カメラ群G1~G3から1つのカメラ群を選択してもよい。
【0064】
または、オペレータがブレード操作レバー141を操作しているとき、掘削ブレード2による作業が行なわれていると判定され、この場合第1カメラ群G1が自動的に選択されてもよい。オペレータがリッパ操作レバー142を操作しているとき、リッパ11による作業が行なわれていると判定され、この場合第2カメラ群G2が自動的に選択されてもよい。オペレータがブレード操作レバー141とリッパ操作レバー142とのいずれも操作していないとき、ブルドーザ10は単なる走行をしているかまたは停車していると判定され、この場合第3カメラ群G3が自動的に選択されてもよい。
【0065】
ブルドーザ10の動作の判定は、遠隔操作局100におけるオペレータの操作に限られず、たとえばコントローラ60からのブレードアクチュエータ、リッパアクチュエータなどのアクチュエータへの制御信号の出力に基づいて、行なわれてもよい。またたとえば、たとえばブレードアクチュエータを構成するチルト油圧シリンダ5およびリフト油圧シリンダ6へ供給される油圧を検出することによって、ブルドーザ10の動作の判定が行なわれてもよい。
【0066】
図4に戻って、次にステップS2において、分割表示部を設定する。
図6は、表示部120に表示される撮像データの第一の例を示す模式図である。
【0067】
表示制御部110は、表示部120に複数の分割表示部を設定する。
図6に示される表示部120(表示部120Aとも称する)には、複数の分割表示部として、前方表示部121と、後方表示部122と、左ブレード表示部123と、右ブレード表示部124とが設定されている。前方表示部121は、第1のカメラ51から出力される撮像データを表示する。後方表示部122は、第2のカメラ52から出力される撮像データを表示する。左ブレード表示部123は、第3のカメラ53から出力される撮像データを表示する。右ブレード表示部124は、第4のカメラ54から出力される撮像データを表示する。
【0068】
表示制御部110は、左ブレード表示部123と、右ブレード表示部124と、後方表示部122とを、左から右にこの順に並べて設定している。左ブレード表示部123、右ブレード表示部124および後方表示部122は、横長矩形状の同じ形状に設定されており、同じ面積に設定されている。
【0069】
表示制御部110は、前方表示部121を、左ブレード表示部123、右ブレード表示部124および後方表示部122の列の上側に設定している。前方表示部121は、横長矩形状の形状に設定されており、左ブレード表示部123、右ブレード表示部124および後方表示部122よりも横長に設定されている。前方表示部121は、前方表示部121以外の分割表示部、すなわち左ブレード表示部123、右ブレード表示部124および後方表示部122よりも、大きく設定されている。前方表示部121は、左ブレード表示部123、右ブレード表示部124および後方表示部122よりも、大きい面積を有するように、設定されている。
【0070】
表示制御部110は、左ブレード表示部123と右ブレード表示部124とを、左ブレード表示部123を左に、右ブレード表示部124を右にして、左右に並べて設定している。表示制御部110は、前方表示部121を、左ブレード表示部123および右ブレード表示部124よりも上に設定している。表示制御部110は、前方表示部121を、左ブレード表示部123と右ブレード表示部124との境界に中央揃えして、設定している。
【0071】
表示制御部110は、表示部120の右上隅に、各種のアイコン131と、傾斜計132および傾斜インジケータ133とを設定している。傾斜計132および傾斜インジケータ133は、水平面に対するブルドーザ10のピッチ角およびロール角を表示する。
【0072】
図7は、表示部120に表示される撮像データの第二の例を示す模式図である。
図7に示される表示部120(表示部120Bとも称する)には、複数の分割表示部として、前方表示部121と、後方表示部122と、リッパポイント表示部127と、履帯表示部128とが設定されている。リッパポイント表示部127は、第7のカメラ57から出力される撮像データを表示する。履帯表示部128は、第8のカメラ58から出力される撮像データを表示する。
【0073】
表示制御部110は、リッパポイント表示部127と、後方表示部122と、履帯表示部128を、左から右にこの順に並べて設定している。リッパポイント表示部127、後方表示部122および履帯表示部128は、横長矩形状の同じ形状に設定されており、同じ面積に設定されている。
【0074】
表示制御部110は、前方表示部121を、リッパポイント表示部127、後方表示部122および履帯表示部128の列の上側に設定している。前方表示部121は、横長矩形状の形状に設定されており、リッパポイント表示部127、後方表示部122および履帯表示部128よりも横長に設定されている。前方表示部121は、前方表示部121以外の分割表示部、すなわちリッパポイント表示部127、後方表示部122および履帯表示部128よりも、大きく設定されている。前方表示部121は、リッパポイント表示部127、後方表示部122および履帯表示部128よりも、大きい面積を有するように、設定されている。
【0075】
表示制御部110は、前方表示部121と後方表示部122とを、前方表示部121を上に、後方表示部122を下にして、上下に並べて設定している。表示制御部110は、前方表示部121と後方表示部122とを、中央揃えして設定している。表示制御部110は、リッパポイント表示部127を、前方表示部121と後方表示部122との並びの左側に設定している。表示制御部110は、履帯表示部128を、前方表示部121と後方表示部122との並びの右側に設定している。
【0076】
図8は、表示部120に表示される撮像データの第三の例を示す模式図である。
図8に示される表示部120(表示部120Cとも称する)には、複数の分割表示部として、前方表示部121と、後方表示部122と、左方表示部125と、右方表示部126とが設定されている。左方表示部125は、第5のカメラ55から出力される撮像データを表示する。右方表示部126は、第6のカメラ56から出力される撮像データを表示する。
【0077】
表示制御部110は、前方表示部121と後方表示部122とを、前方表示部121を上に、後方表示部122を下にして、上下に並べて設定している。表示制御部110は、前方表示部121と後方表示部122とを、中央揃えして設定している。表示制御部110は、左方表示部125を、前方表示部121と後方表示部122との並びの左側に設定している。表示制御部110は、右方表示部126を、前方表示部121と後方表示部122との並びの右側に設定している。
【0078】
後方表示部122は、横長矩形状の形状に設定されている。左方表示部125と右方表示部126とは、後方表示部122の横長矩形を90°回転させた縦長矩形状の形状に設定されている。後方表示部122、左方表示部125および右方表示部126は、同じ面積に設定されている。
【0079】
前方表示部121は、横長矩形状の形状に設定されており、後方表示部122よりも横長に設定されている。前方表示部121は、前方表示部121以外の分割表示部、すなわち後方表示部122、左方表示部125および右方表示部126よりも、大きい面積を有するように、設定されている。
【0080】
ステップS2において、表示制御部110は、ステップS1で選択されたカメラ群に対応する分割表示部を、表示部120に設定する。より詳細には、オペレータによる入力装置114の操作などに基づいて第1カメラ群G1が選択されたとき、
図6に示す分割表示部を、表示部120に設定する。第2カメラ群G2が選択されたとき、
図7に示す分割表示部を設定する。第3カメラ群G3が選択されたとき、
図8に示す分割表示部を設定する。
【0081】
次に、ステップS3において、表示部120に撮像データを表示する。ステップS1の選択において第1カメラ群G1が選択されている場合、表示制御部110は、第1カメラ群G1に含まれるカメラから出力される撮像データを、
図6に示す表示部120Aの対応する複数の分割表示部に表示する。具体的には、表示制御部110は、第1のカメラ51から出力される撮像データを前方表示部121に表示し、第2のカメラ52から出力される撮像データを後方表示部122に表示し、第3のカメラ53から出力される撮像データを左ブレード表示部123に表示し、第4のカメラ54から出力される撮像データを右ブレード表示部124に表示する。
【0082】
ステップS1の選択において第2カメラ群G2が選択されている場合、表示制御部110は、第2カメラ群G2に含まれるカメラから出力される撮像データを、
図7に示す表示部120Bの対応する複数の分割表示部に表示する。具体的には、表示制御部110は、第1のカメラ51から出力される撮像データを前方表示部121に表示し、第2のカメラ52から出力される撮像データを後方表示部122に表示し、第7のカメラ57から出力される撮像データをリッパポイント表示部127に表示し、第8のカメラ58から出力される撮像データを履帯表示部128に表示する。
【0083】
図7に示されるリッパポイント表示部127には、リッパポイント13が写っている。リッパポイント表示部127には、地面におけるリッパポイント13が地中に貫入する点が写っている。リッピング作業中に、リッパポイント13が土中に隠れてリッパポイント表示部127に写らなくなることもあるが、その場合でもリッパポイント13は、第7のカメラ57の撮像範囲内に存在している。
【0084】
ステップS3の選択において第3カメラ群G3が選択されている場合、表示制御部110は、第3カメラ群G3に含まれるカメラから出力される撮像データを、
図8に示す表示部120Cの対応する複数の分割表示部に表示する。具体的には、表示制御部110は、第1のカメラ51から出力される撮像データを前方表示部121に表示し、第2のカメラ52から出力される撮像データを後方表示部122に表示し、第5のカメラ55から出力される撮像データを左方表示部125に表示し、第6のカメラ56から出力される撮像データを右方表示部126に表示する。
【0085】
このようにして、表示部120に表示される画像が、作業に応じて変更される。表示制御部110は、表示部120に複数の分割表示部を設定して、複数のカメラ(第1~第8のカメラ51~58)の撮像データのうち、各作業に対応する所定の撮像データの組み合わせを、対応する複数の分割表示部に切り替え表示する。
【0086】
[作用および効果]
次に、上述した実施形態の作用および効果について説明する。
【0087】
実施形態においては、表示制御部110は、掘削ブレードによる作業を撮像する第1カメラ群G1と、リッパによる作業を撮像する第2カメラ群G2とを設定する。表示制御部110はまた、表示部120に複数の分割表示部を設定する。
図4および
図6,7に示されるように、表示制御部110は、第1カメラ群G1および第2カメラ群G2から1つのカメラ群を選択し、選択されたいずれか一方のカメラ群に含まれるカメラから出力される撮像データを、対応する複数の分割表示部に表示する。表示制御部110は、第1カメラ群G1および第2カメラ群G2の各々に対して、表示部120内での複数の分割表示部の位置および大きさを設定する。
【0088】
ブルドーザ10の本体1に装着された第1~第8のカメラ51~58のうち、作業に対応したカメラが選択されて、選択されたカメラから出力される撮像データが表示部120に表示される。8台のカメラ51~58の撮像データを常に表示するのではなく、不要な撮像データを表示しないようにして表示部120に表示される撮像データの数を減らすことにより、データ通信量を低減できるので、撮像データをリアルタイムで表示することが容易になる。また、表示される撮像データの数を減らすことで各分割表示部の大きさをより大きくできるので、表示部120に表示される撮像データの情報量を増大することができる。オペレータが表示部120を見やすくなるので、遠隔操作局100からのブルドーザ10の操縦が容易になる。
【0089】
図1,5に示されるように、第1カメラ群G1は、本体1の前方を撮像範囲に含む第1のカメラ51と、掘削ブレード2の切刃2Cの左方側端部2CLを撮像範囲に含む第3のカメラ53と、掘削ブレード2の切刃2Cの右方側端部2CRを撮像範囲に含む第4のカメラ54とを含んでいる。第3のカメラ53は、掘削ブレード2の左下端2E1が地中に貫入する位置を撮像範囲に含む。第4のカメラ54は、掘削ブレード2の右下端2E2が地中に貫入する位置を撮像範囲に含む。掘削ブレード2による作業時に、作業に対応した第1カメラ群G1を選択することで、本体1の前方の地形と、掘削ブレード2の切刃2Cの左方側端部2CLおよび右方側端部2CRとを、表示部120に大きく表示することができる。したがって、オペレータは、表示部120を見ながらブレード作業を容易に行なうことができる。
【0090】
図6に示されるように、表示制御部110は、左ブレード表示部123と右ブレード表示部124とを左右に並べて設定し、前方表示部121を左ブレード表示部123と右ブレード表示部124との境界に中央揃えして設定する。このように前方表示部121、左ブレード表示部123および右ブレード表示部124を配置することで、本体1の前方と掘削ブレード2の両下端2E1,2E2との撮像データの配置を、キャブ9内からのオペレータの目視に近い配置にすることができ、オペレータが各撮像データをより見やすくすることができる。
【0091】
図1,2,5に示されるように、第2カメラ群G2は、本体1の後方を撮像範囲に含む第2のカメラ52と、リッパポイント13を撮像範囲に含む第7のカメラ57と、右側の履帯3Cを撮像範囲に含む第8のカメラ58とを含んでいる。リッパ11による作業時に、作業に対応した第2カメラ群G2を選択することで、本体1の後方の地形と、リッパポイント13と、履帯3Cとを、表示部120に大きく表示することができる。したがって、オペレータは、表示部120を見ながらリッピング作業を容易に行なうことができ、併せて、リッピング作業中に履帯3Cの空転が発生していないかどうかを確認することができる。
【0092】
図7に示されるように、表示制御部110は、リッパポイント表示部127と後方表示部122と履帯表示部128とを、左から右にこの順に並べて設定する。このようにリッパポイント表示部127、後方表示部122および履帯表示部128を配置することで、オペレータが各分割表示部に表示される撮像データをより見やすくすることができる。
【0093】
表示制御部110は、ブルドーザ10の走行時にブルドーザ10の周辺を撮像する第3カメラ群G3を設定する。
図1,5に示されるように、第3カメラ群G3は、本体1の前方、後方、左方および右方の各々を撮像範囲に含む第1のカメラ51、第2のカメラ52、第5のカメラ55および第6のカメラ56を含んでいる。ブルドーザ10の走行時に、作業に対応した第3カメラ群G3を選択することで、ブルドーザ10の周辺の地形を表示部120に大きく表示することができる。したがって、オペレータは、表示部120を見ながらブルドーザ10を安全に走行させることができる。
【0094】
図6~8に示されるように、表示制御部110は、前方表示部121を、それ以外の分割表示部よりも大きく設定する。作業時に見る頻度の高い前方表示部121を大きくすることで、本体1の前方の撮像データを大きく表示でき、オペレータは本体1の前方の状況を容易に確認しながら作業を行なうことができる。
【0095】
これまでの実施形態の説明では、作業機械の例として、掘削ブレード2とリッパ11とを備えるブルドーザ10について説明した。ブルドーザ10は、リッパ11に替えて他の種類の後方作業機を備えていてもよい。たとえばブルドーザ10は、本体1の後方にウインチを備えていてもよく、第7のカメラ57が撮像範囲にウインチを含むように構成されてもよい。
【0096】
作業機械は、ブルドーザ10に限られるものではない。たとえば、前輪と後輪との間にブレードを備え本体の後方にリッパを備えるモータグレーダなど、他の種類の作業機械に、本開示の思想を適用してもよい。
【0097】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0098】
1 本体、2 掘削ブレード(第1の作業機)、2C 切刃、2CL 左方側端部、2CR 右方側端部、2E1 左下端、2E2 右下端、3 走行体、3C 履帯、5 チルト油圧シリンダ、6 リフト油圧シリンダ、8 エンジン室、9 キャブ、9c コンデンサユニット、10 ブルドーザ、11 リッパ(第2の作業機)、12 シャンク、13 リッパポイント、14 リッパアーム、15 チルトシリンダ、16 リフトシリンダ、17 ビーム、21 エンジン、22 エンジンフード、51 第1のカメラ、51S 支持部、52 第2のカメラ、53 第3のカメラ、54 第4のカメラ、55 第5のカメラ、56 第6のカメラ、57 第7のカメラ、58 第8のカメラ、60 コントローラ、62,112 送受信装置、64 変速機、66 操向装置、90 転倒時保護構造、91 左柱部、93 梁部、100 遠隔操作局、110 表示制御部、114 入力装置、120 表示部、121 前方表示部、122 後方表示部、123 左ブレード表示部、124 右ブレード表示部、125 左方表示部、126 右方表示部、127 リッパポイント表示部、128 履帯表示部、131 アイコン、132 傾斜計、133 傾斜インジケータ、140 操作盤、141 ブレード操作レバー、142 リッパ操作レバー、143 操向レバー、G1 第1カメラ群、G2 第2カメラ群、G3 第3カメラ群。