(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】組付装置
(51)【国際特許分類】
B23P 21/00 20060101AFI20221014BHJP
F01L 3/24 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B23P21/00 303C
F01L3/24 C
(21)【出願番号】P 2018182826
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】千田 敏之
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-216132(JP,A)
【文献】米国特許第04879795(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 21/00
F01L 3/24
F02F 1/24
B23P 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブステムが形成されたバルブをシリンダヘッドに設けられたバルブガイドに挿入して、前記バルブを前記シリンダヘッドに組み付ける組付装置であって、
前記バルブを保持及び解放可能とされた一又は複数の保持装置と、
前記保持装置に保持された前記バルブを下方に向けて押し付け可能とされた押付装置と、
前記保持装置を移動可能とする移動機構とを有し、
前記保持装置が、前記バルブを保持した状態において前記バルブガイド
の上方向に拡径した開口縁部から上方側に離間する保持位置と、前記バルブと前記バルブガイドとが接触する寸前の近接位置とに移動可能とされており、
前記近接位置において前記保持装置の保持力を低下させて、前記バルブを
自重で下方に向けて摺動させ、前記バルブステムの先端を前記バルブガイドに到達させた状態で、前記バルブが下方に押圧されることを特徴とする組付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブをシリンダヘッドに組み付けるための組付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシリンダヘッドには、バルブやスプリング等、複数のパーツが組み付けられている。また、シリンダヘッドにバルブ等のパーツを組み付けるための技術として、例えば、下記特許文献1には、シリンダヘッド用給排気バルブ部の組付装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年ではシリンダヘッドにバルブを自動で組み付ける組付装置(自動組付装置)が用いられている。自動組付装置では、供給されたバルブをチャック装置に保持させて組付位置まで移動させ、チャック装置をバルブガイドに向けて変位させることで、バルブをバルブガイドに挿入させている。
【0005】
また、このような従来の自動組付装置では、組み付け不良を防止するため、例えば、フローティング機構を設けてバルブガイドに対するバルブの位置決めを行って組み付けを行うものがある。
【0006】
しかしながら、フローティング機構を備える組付装置であっても、位置決めできないような(調芯できない)大きな位置ズレがある場合には、ワークや設備の破損が生じる恐れがある。具体的には、フローティング機構を備える組付装置であっても、バルブが正常位置にあるか否かの判断がなされないままチャック装置に変位される。そのため、バルブが大きく位置ズレしている場合には、バルブがシリンダヘッドの内壁面やバルブガイドなどと接触しながら変位して、ワークや設備の破損が生じる恐れがある。
【0007】
ここで、組付装置にフローティング機構を設ける場合、設備が大がかりとなりコストが増加する。また、チャック装置などの保持装置が複数設けられた組付装置では、それぞれのチャック装置にフローティング機構を設ける必要がある。また、複数のチャック装置のそれぞれにフローティング機構を設けるとすると、構造が複雑となり、精度出しやメンテナンス性が低下することが想定される。
【0008】
さらに、チャック装置が設けられるピッチによっては、それぞれのチャック装置に設けられたフローティング機構が干渉することが想定される。その一方、チャック装置及びフローティング機構が設けられる数(チャック数)を制限した場合、例えば多数のステム穴を備えるシリンダヘッドに対してバルブを組み付けるに際し、一つのシリンダヘッドに対する組み付け動作において、何度もチャック装置を往復させる必要がある。その結果、工数が増加するといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、フローティング機構を設けずバルブを組み付け可能とし、設備側や製品側への影響を低減することができる組付装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決すべく提供される本発明の組付装置は、バルブステムが形成されたバルブをシリンダヘッドに設けられたバルブガイドに挿入して、前記バルブを前記シリンダヘッドに組み付ける組付装置であって、前記バルブを保持及び解放可能とされた一又は複数の保持装置と、前記保持装置に保持された前記バルブを下方に向けて押し付け可能とされた押付装置と、前記保持装置を移動可能とする移動機構とを有し、前記保持装置が、前記バルブを保持した状態において前記バルブガイドから上方側に離間する保持位置と、前記バルブと前記バルブガイドとが接触する寸前の近接位置とに移動可能とされており、前記近接位置において前記保持装置の保持力を低下させて、前記バルブを下方に向けて摺動させ、前記バルブステムの先端を前記バルブガイドに到達させた状態で、前記バルブが下方に押圧されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の組付装置は、バルブをバルブガイドに挿入させる際に、バルブとバルブガイドとが接触する寸前の位置(近接位置)で保持装置の変位を停止させ、近接位置においてバルブが自重で落下すること、あるいは押付装置による軽い押圧力により押圧されることにより、バルブステムの先端がバルブガイドに侵入する。また、バルブステムの先端をバルブガイドに侵入させた状態でバルブをさらに押圧して、バルブをバルブガイドに挿入させることができる。このように、本発明の組付装置は、フローティング機構を要さずにバルブをバルブガイドに組み付けることができる。そのため、バルブとバルブガイドとの間に位置ズレがある場合に、バルブを保持装置に保持させながらバルブガイドに挿入する場合と比較して、設備への負荷を低減させ、バルブやシリンダヘッド等製品が傷付くことを低減することができる。
【0012】
また、本発明の組付装置によれば、フローティング機構を設ける必要がなく、多気筒エンジンの吸排側ポート又は排気側ポートの数に応じてチャック装置を複数設けることが可能となる(多軸構成が可能となる)。吸排気ポートの数に応じて多軸構成とした場合、一つのシリンダヘッドに吸気側又は排気側のバルブを一度の動作で組み付けることができる。その結果、本発明の組付装置は、ピッチ変換装置やシフト機構を要さず機構を簡略化できることに加え、従来の組付装置と比較して芯出しを容易に行うことができる。
【0013】
本発明の組付装置は、前記保持装置が、前記一対の爪部の挟持力を調整可能であることが望ましい。
【0014】
上述の構成によれば、保持位置から近接位置までバルブを押圧して移動させる際に、爪部の挟持力を緩めるなどして、バルブをスムーズに変位させることができる。
【0015】
本発明の組付装置は、前記保持装置が複数設けられるものであり、前記押付装置が、前記バルブと接触して押圧する複数のプッシャと、複数の前記プッシャを連結する連結部と、前記連結部を押圧する少なくとも二つの押圧装置とを備えるものであり、前記プッシャが、複数の前記保持装置の上方にそれぞれ配置されているものであり、前記プッシャが前記バルブと接触して前記バルブを下方に押圧した際に、複数の前記押圧装置のうちいずれかの前記押圧装置の変位量が所定の変位量に到達していないことに基づいて、異常が発生したと判定するものであってもよい。
【0016】
上述の構成によれば、いずれかバルブの先端がバルブガイドに侵入していない状態で、押付装置によりバルブが押圧されることを回避することができる。これにより、本発明の組付装置は、さらに設備や製品にダメージを与えることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フローティング機構を設けずバルブを組み付け可能とし、設備側や製品側への影響を低減することができる組付装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の組付装置を示している。(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【
図2】
図1の組付装置の組付対象とされたシリンダヘッドを示している。(a)はバルブ挿入面から視認した場合の平面図、(b)は
図2(a)のA-A’線断面図である。
【
図3】
図1の組付装置の組付対象とされたバルブを示している。(a)は正面図、(b)はシリンダヘッドに組み付けられた状態を示す断面図である。
【
図4】
図1の組付装置の組付ユニットを示している。(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図5】
図1の組付装置のチャック装置を示している。(a)は正面図、(b)は
図5(a)のA-A’線断面図である。
【
図6】
図1の組付装置により行われる組付動作を示すフロー図である。
【
図7】
図1の組付装置の組付ユニットの一連の移動動作を示す概念図である。
【
図8】
図1の組付装置のチャック装置及び押付装置の一連の動作を示す断面図である。
【
図9】
図1の組付装置のチルト装置によりシリンダヘッドの姿勢が変化される際の動作を示す概念図である。
【
図10】
図1の組付装置のエラー判定時の動作を示す概念図である。(a)は正常時、(b)はエラー発生時を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る組付装置10について図面を参照しつつ説明する。
【0020】
組付装置10は、シリンダヘッド1に対してバルブ3を組み付けるためのものである。より具体的には、組付装置10は、バルブステム3aを備えるバルブ3をシリンダヘッド1に形成されたステム穴1hに挿入して、バルブ3をシリンダヘッド1に組み付けるためのものである。
【0021】
ここで、組付装置10の組み付け対象とされたシリンダヘッド1、及びバルブ3について説明する。
【0022】
シリンダヘッド1は、シリンダの燃焼室を構成する部品である。
図2(a)に示すとおり、シリンダヘッド1は、シリンダブロック(図示を省略)側に配置されるバルブ挿入面1aに、吸気ポートや排気ポートを構成する複数の開口1bが形成されている。
【0023】
本実施形態で説明するシリンダヘッド1は、3気筒のエンジンに用いられるものであり、12の開口1bが設けられている。12の開口1bのうち、6つの開口1bが吸気ポートに対応し、他方の6つの開口1bが排気ポートに対応する。
【0024】
図2(b)に示すとおり、シリンダヘッド1の開口1bには、それぞれバルブガイド2が設けられている。バルブガイド2は、バルブ3のバルブステム3aと略一致する直径D1の開口径を有する。開口1bにバルブガイド2が嵌め込まれた状態では、バルブガイド2の内側に、後述するバルブ3のバルブステム3aが挿入されるステム穴1hが形成される。
【0025】
なお、以下の説明では、吸気ポートに対応するステム穴1hを「吸気側のステム穴1h」と、排気ポートに対応するステム穴1hを「排気側のステム穴1h」と記載して説明する場合がある。また、吸気側のステム穴1hが設けられた側を単に「吸気側」又は「IN側」と、排気側のステム穴1hが設けられた側を単に「排気側」又は「EX側」と記載する場合がある。
【0026】
図2(b)に示すとおり、ステム穴1hは、軸線L1がバルブ挿入面1aと略直交する鉛直線L4に対して傾斜するように形成されている。より具体的には、ステム穴1hは、軸線L1が鉛直線L4に対して角度θ1をなすように形成されている。また、ステム穴1hは、吸気側と排気側とで、軸線L1が相互に所定の角度をなすように設けられている。
【0027】
バルブ3は、吸気ポートや排気ポートを閉塞及び開放するための部材である。バルブ3は、ステム穴1hに挿入され、吸気ポートや排気ポートを閉塞及び開放するための部材である。なお、以下の説明では、吸気側のステム穴1hに挿入されるバルブ3(吸気バルブ)と、排気側のステム穴1hに挿入されるバルブ3(排気バルブ)とを総称して、単に「バルブ3」と記載して説明する。
【0028】
図3(a)に示すとおり、バルブ3は、棒状の形状とされたバルブステム3aと、バルブステム3aの一端にバルブヘッド3bが形成された部材である。バルブステム3aは、断面視において円形の形状を備えている。また、バルブステム3aは、長手方向に同じ直径とされたストレート部3eが形成されている。ストレート部3eの直径D2は、バルブガイド2の内周面2aの直径D1と略一致する大きさとされている。
【0029】
図3(b)に示すとおり、シリンダヘッド1のステム穴1hにバルブ3が組み付けられた状態では、バルブ3の軸線L2と、ステム穴1hの軸線L1とが一致するように組み付けられる。
【0030】
続いて、組付装置10の構成について説明する。
図1に示すとおり、組付装置10は、組付ユニット30、移動機構20、及びチルト装置60を有している。
図1(a)に示すとおり、組付装置10は、基台12の作業面12aに、組付ユニット30及び移動機構20が取り付けられている。また、チルト装置60は、作業面12aの下方に取り付けられている。
【0031】
なお、以下の説明において、作業面12aの長手方向を、単に「進退方向X」と記載して説明する場合がある。また、作業面12aの幅方向を、単に「幅方向W」と記載して説明する場合がある。さらに、組付装置10を設置した場合における上下方向を、単に「上下方向H」と記載して説明する場合がある。
【0032】
図1(a)に示すとおり、シリンダヘッド1は、パレット5に積置された状態で搬送機構6により組付装置10の作業面12aの下方に搬送される。シリンダヘッド1は、図示を省略した上方移動装置により上方に持ち上げられ、チルト装置60により抱え込まれるように保持される。
【0033】
図1及び
図4に示すとおり、組付ユニット30は、ユニット基台32、6つのチャック装置40、及び押付装置50を備えており、ユニット基台32にチャック装置40及び押付装置50が取り付けられた構成とされている。言い方を換えれば、組付ユニット30は、ユニット基台32に一体的に取り付けられており、ユニット基台32の移動に伴ってチャック装置40及び押付装置50が一体的に移動する。
【0034】
移動機構20は、組付ユニット30を移動させるために設けられている。
図1(a)に示すとおり、移動機構20は、組付ユニット30を進退方向Xに移動させる進退移動装置22と、組付ユニット30を上下方向Hに移動させる昇降装置24とを有している。組付装置10は、進退移動装置22及び昇降装置24により、組付ユニット30を進退方向X及び上下方向Hに移動させることができる。
【0035】
進退移動装置22は、組付ユニット30を進退方向Xに移動させるために設けられている。
図1(a)に示すとおり、進退移動装置22は、基台12の幅方向Wの両側に設けられたレール22aと、レール22aに取り付けられた移動体22bとを備えている。移動体22bには組付ユニット30のユニット基台32が連結されている。進退移動装置22は、移動体22bをレール22aに沿って移動させることで、組付ユニット30を進退方向Xに往来させることができる。
【0036】
昇降装置24は、組付ユニット30を上下方向Hに移動させるために設けられている。昇降装置24は、ユニット基台32と連結されており、ユニット基台32を昇降させることにより組付ユニット30を昇降させることができる。本実施形態の昇降装置24は、昇降モータを備えた構成とされている。そのため、昇降装置24は、組付ユニット30を降下させる距離や停止させる位置等、組付ユニット30の昇降動作を柔軟に行うことができる。
【0037】
組付装置10は、進退方向Xにおいて、基台12の一端寄りの位置においてバルブ3を取り出してチャック装置40に把持させる取出位置Px1が設けられている。また、組付装置10は、進退方向Xにおいて、基台12の他端寄りの位置において、バルブ3がシリンダヘッド1に組み付けられる組付位置Px2,Px3が設けられている(
図9参照)。
【0038】
図4に示すとおり、組付ユニット30は、複数のチャック装置40(保持装置)、及び押付装置50を備えている。組付ユニット30は、チャック装置40と押付装置50とが、ユニット基台32に取り付けられている(リジット接続)。そのため、組付ユニット30は、移動機構20により一体的に変位可能とされている。
【0039】
図4(b)に示すとおり、本実施形態の組付装置10の組付ユニット30には、6つのチャック装置40(保持装置)が設けられている。6つのチャック装置40は、進退方向Xと交差する幅方向Wに一列に配置されている。
【0040】
チャック装置40は、バルブ3を保持するために設けられている。
図4(a)に示すとおり、チャック装置40は、一対のチャック爪42を備えている。
図5(a)に示すとおり、チャック爪42の下方側には、バルブステム3aと接触して把持する把持部44が形成されている。また、
図5(b)に示すとおり、把持部44には、バルブステム3aの外周面3cを軸線方向L2に沿ってガイドするガイド部46が形成されている。
図5(b)に示すとおり、ガイド部46は、一対のチャック爪42のうち、一方のチャック爪42の把持部44に形成されたV字状の溝とされている。一対のチャック爪42がバルブステム3aを挟み込むように把持した状態では、バルブステム3aの外周面が、V字状の溝が形成された一方の把持部44と2箇所において線状に接触し、他方の把持部44と線状に接触する。言い方を換えれば、ガイド部46は、一対の把持部44とバルブステム3aとの接触線を3箇所形成してバルブステム3aのガイド通路を形成して、バルブステム3aの下方への移動をガイドする。なお、ガイド部46は、一対のチャック爪42のそれぞれの把持部44にV字状の溝を形成し、バルブステム3aの外周面を4箇所において線状に接触させるものであってもよい。
【0041】
チャック装置40は、電動式の駆動源により、一対のチャック爪42を近接及び離間させる動作を行うことができる。また、チャック装置40は、一対のチャック爪42を近接及び離間させる動作について、一対のチャック爪42の近接動作を柔軟に行うことができる。
【0042】
図5(a)に示すとおり、チャック装置40は、一対のチャック爪42の間にバルブステム3aを配置させ、一対のチャック爪42の把持部44でバルブステム3aを両側から挟み込むことで、バルブ3を保持することができる。また、チャック装置40は、バルブ3を保持した状態から、一対のチャック爪42を離間させる(チャック装置40の開放)ことで、バルブ3を解放して落下させる。さらに、チャック装置40は、バルブ3を保持した状態から、一対のチャック爪42を僅かに離間させて、把持部44の挟持力を緩めて把持部44に対してバルブ3を摺動させることができる(
図8参照)。
【0043】
なお、以下の説明において、一対のチャック爪42が十分な挟持力でバルブ3を保持している状態を、単に「保持状態」と記載して説明する場合がある。また、一対のチャック爪42が保持状態よりも僅かに離間して、一対のチャック爪42のバルブ3を挟持する力が緩められた状態(把持部44に対してバルブステム3aが摺動可能な挟持力)を、単に「摺動可能状態」と記載して説明する場合がある。さらに、一対のチャック爪42が離間した状態を、単に「開放状態」と記載して説明する場合がある。
【0044】
上述のとおり、本実施形態の組付装置10の組付ユニット30には、6つのチャック装置40(保持装置)が設けられている。6つのチャック装置40は、進退方向Xと交差する幅方向Wに一列に配置されている。組付装置10は、一度の組み付け動作で一度に6つのステム穴1hに対してそれぞれバルブ3を組み付けることができる。そのため、組付装置10は、従来一列に配置された複数の(例えば8つの)ステム穴1hに対して、組付ユニットを進退方向Xに複数回往復させる必要がない。これにより、組付装置10は、組付ユニット30を幅方向Wに変位させるための構成を必要とせず、移動機構20の構成を簡素化することができる。
【0045】
押付装置50は、バルブ3を下方に向けて押し付けるために設けられている。本実施形態の押付装置50は、チャック装置40に保持された状態のバルブ3を下方に押し付けるとともに、バルブガイド2に自重で挿入された状態のバルブ3をさらにステム穴1hに押し込むために設けられている。
【0046】
図10に示すとおり、押付装置50は、複数(本実施形態では6つ)のプッシャ52、連結部54、及び二つの電動シリンダ56を備えている。押付装置50は、6つのプッシャ52が、連結部54に取り付けられている。また、二つの電動シリンダ56は連結部54の幅方向W両側に配置されており、連結部54を上方から下方に向けて押圧可能とされている。
図5(a)に示すとおり、プッシャ52は、一対のチャック爪42の間の中心線C上に位置するように配置されている。押付装置50は、チャック装置40に保持された状態のバルブ3に対し、バルブヘッド3bを上方から下方に向けて押圧する。電動シリンダ56は、変位量を検知する機能を備えている。
【0047】
チルト装置60は、シリンダヘッド1を保持するとともに、シリンダヘッド1の姿勢を変化させるために設けられている。より具体的には、チルト装置60は、バルブ挿入面1aが略水平となる姿勢で搬送機構6により搬送されたシリンダヘッド1を、バルブ挿入面1aが傾斜するように姿勢を変化させる(チルトさせる)ために設けられている(
図9参照)。
図1に示すとおり、チルト装置60は、基台12の幅方向Wの両側に連結されており、幅方向Wに回転軸L3が形成されている。チルト装置60は、シリンダヘッド1を幅方向Wの両側から抱え込むように保持し、回転軸L3を中心に揺動することで、シリンダヘッド1の姿勢を変化させることができる。
【0048】
制御装置70(図示を省略)は、移動機構20、組付ユニット30、及びチルト装置60の動作を制御するために設けられている。
【0049】
<組付装置の動作について>
続いて、組付装置10の動作について図面を参照しつつ説明する。
【0050】
図7(a)に示すとおり、組付装置10は、先ず取出位置Px1においてバルブ3を各チャック装置40に把持させる。組付装置10は、搬送機構6により作業面12aの下方に搬送されたシリンダヘッド1を、上方移動装置(図示を省略)により持ち上げてチルト装置60に保持させる。
【0051】
図7(b)に示すとおり、組付装置10は、チルト装置60に保持された状態において、バルブ挿入面1aが略水平の姿勢とされたシリンダヘッド1を、チルト装置60を回転させて傾斜させる(チルト動作)。より具体的には、
図9(a)及び
図9(b)に示すとおり、組付装置10は、バルブ挿入面1aが略水平となるようにチルト装置60に保持されているシリンダヘッド1を、回転軸L3を中心に所定の角度分正回転(
図9(b)では反時計回り)させ、シリンダヘッド1を傾斜するような姿勢に変化させる。
【0052】
図9(b)に示すとおり、チルト装置60が正方向(
図9(b)では反時計回り)に所定の角度分回転すると、吸気側及び排気側のうち一方のステム穴1hは軸線L1が上下方向Hに沿うような略鉛直の姿勢となる。言い方を換えれば、組付装置10は、チルト装置60によりシリンダヘッド1を傾斜させて、バルブガイド2の軸線L2が上下方向Hに沿うように姿勢を変化させる。
【0053】
図7(c)に示すとおり、組付装置10は、バルブ3を各チャック装置40に把持させた状態で、進退移動装置22により、組付ユニット30を組付位置Px2まで進退方向Xに前進させる。
【0054】
組付装置10は、組付ユニット30を組付位置Px2まで前進させた後に、組付ユニット30を下降させてバルブ3をバルブガイド2に組み付ける動作を行う。具体的には、
図6に示すとおり、組付装置10は、組付ユニット30を組付位置Px2まで前進させた後に、下降動作(ステップ1)、チャック弱開放動作(ステップ2)、第一押付動作(ステップ3)、チャック本開放動作(ステップ4)、第二押付動作(ステップ5)、プッシャ後退動作(ステップ6)、及び上昇動作(ステップ7)の各動作を行う。以下、各動作について具体的に説明する。
【0055】
組付装置10は、組付位置Px2において、バルブ3をチャック装置40に保持させた状態(保持状態)で組付ユニット30を降下させる動作を行う(ステップ1、下降動作)。より具体的には、
図7(d)に示すとおり、組付装置10は、昇降装置24により、組付ユニット30を上下方向Hにおいて保持位置Ph1から下方に向けて移動させる。組付装置10は、バルブステム3aの先端部3dがバルブガイド2の開口縁部2cと接触する寸前の位置(以下、単に「近接位置Ph2」と記載する場合がある)まで組付ユニット30を降下させる。
【0056】
図8(a)に示すとおり、近接位置Ph2における先端部3dとバルブガイド2の開口縁部2cとの離間距離K1は特に限定されないものの、離間距離K1は、先端部3dと開口縁部2cとが接触する寸前となる距離であることが望ましい。
【0057】
組付装置10は、組付ユニット30が近接位置Ph2に配置された後、チャック装置40のチャック爪42を僅かに開放させて挟持力を低下させる動作を行う(ステップ2、チャック弱開放動作)。チャック装置40のチャック爪42が僅かに開放されて挟持力が緩められると、バルブ3は自重でバルブガイド2に向けて摺動して下降する、又はバルブ3はチャック爪42との摩擦力で摺動可能に保持されている状態となる。
【0058】
より具体的には、チャック装置40の挟持力が緩められると、バルブ3はチャック装置40のガイド部46にガイドされつつ自重で落下してバルブ3の先端部3dがバルブガイド2に侵入する(
図8(b-1)参照)。あるいは、チャック装置40の挟持力が緩められると、バルブ3はチャック装置40のガイド部46との摩擦力で摺動可能な状態で維持された状態となる(
図8(b-2)参照)。
【0059】
バルブ3がバルブガイド2に侵入する際に、バルブ3とバルブガイド2との軸線が僅かに一致していない場合には、バルブ3の先端部3dに形成されたテーパー状の部分がバルブガイド2の開口縁2cの内側やシリンダヘッド1の内壁面と軽く接触してガイドされる。言い方を換えれば、近接位置Ph2においてチャック装置40の挟持力が緩められると、バルブ3は僅かに水平方向に変位可能となり、バルブガイド2の内周面やシリンダヘッド1の内壁面と軽く接触しつつバルブガイド2の内側へガイドされる。
【0060】
組付装置10は、チャック装置40の挟持力を低下させた後、プッシャ52を所定距離分下降させる動作を行う(ステップ3、第一押付動作)。
図8(c)に示すとおり、プッシャ52が下方に移動される過程で、プッシャ52はバルブヘッド3bに上方から接触する。これにより、バルブ3は距離K2分押し下げられる。なお、チャック装置40には、ガイド部46が設けられているため、バルブ3は、バルブステム3aの外周面3cがガイド部46と接触して軸線L2方向にガイドされつつ下方に押し下げられる。そのため、組付装置10は、バルブ3を精度良く上下方向Hに押し下げることができる。なお、ステップ2のチャック弱開放動作において、バルブ3が所定距離以上下降している場合には、ステップ3のプッシャ下降動作において、プッシャ52がバルブ3と接触しない場合がある(ステップ2のチャック弱開放動作でバルブ3が距離K2以上バルブガイド2に侵入している場合)。
【0061】
なお、バルブ3が押し下げられる距離K2は、先端部3dがバルブガイド2の開口縁部2cに侵入して、バルブステム3aの外周面3cとバルブガイド2の内周面2aとがある程度接触して摺動可能となる位置まで降下されることが望ましい。また、バルブ3が押し下げられる距離K2は、プッシャ52の変位量を判定可能な距離であることが望ましい。
【0062】
組付装置10は、プッシャ52によりバルブ3を押し下げる動作において、全てのバルブ3のバルブガイド2への侵入が完了したか否かを判定する(エラー判定)。バルブ3のバルブガイド2への侵入完了の判定は、二つの電動シリンダ56の変位量を検知して、制御装置70より判定される。具体的には、
図10(a)に示すとおり、組付装置10は、二つの電動シリンダ56の双方の変位量が所定の変位量(変位量Ma)に到達したことを検知した場合には、全てのバルブ3がバルブガイド2への侵入が完了したと判定する。
【0063】
一方、6つのバルブ3のうち、いずれかのバルブ3がバルブガイド2に侵入していない場合には、いずれかのバルブ3がバルブガイド2の開口縁部2cと外れた位置でシリンダヘッド1と接触している可能性がある(
図10(b)参照)。また、このような場合には、いずれかのプッシャ52の降下が阻止されて連結部54が傾き、二つの電動シリンダ56のうち少なくとも一方が変位量Maまで到達しない。そのため、組付装置10は、二つの電動シリンダ56のうち、少なくとも一方が変位量Maに到達していない場合には、6つのバルブ3のうちいずれかのバルブ3がバルブガイド2への侵入が完了していないとして異常が発生したと判定する。
【0064】
これにより、組付装置10は、バルブ3がバルブガイド2に対する正常な位置にあるか否かを判定して、組み付け不良を抑制することができる。その結果、組付装置10は、バルブ3がシリンダヘッド1の内壁面やバルブガイド2の開口縁2cなどに接触したまま組付ユニット30が降下することが生じないように異常の有無を判定し、バルブ3やシリンダヘッド1を傷付ける、あるいは組付ユニット30に負荷がかかるなどの不具合を抑制することができる。
【0065】
図8(d)に示すとおり、エラー判定の後異常が検知されなかった場合には、組付装置10は、チャック装置40をさらに開放させる動作を行う(ステップ4、チャック本開放動作)。チャック装置40の本開放動作では、一対のチャック爪42がステップ2の弱開放動作よりもさらに離間される。この際、すでに先端部3dがバルブガイド2の開口縁部2cから内部に侵入しているため、バルブ3はバルブガイド2の内周面2aとバルブ3の外周面3cとが摺動するようにスムーズに落下する。
【0066】
組付装置10は、チャック本開放動作の後、プッシャ52をさらに下降させる動作を行う(ステップ5、第二押付動作)。具体的には、
図8(e)に示すとおり、組付装置10は、バルブ3をバルブガイド2の内部にある程度侵入させた状態で、プッシャ52をさらに降下させてバルブ3を下方に押圧する。これにより、バルブ3はバルブステム3aが完全にバルブガイド2の内部に押し込まれる。
【0067】
組付装置10は、第二押付動作の後、プッシャ52を上方に移動させる動作を行う(ステップ6、プッシャ後退動作)。
【0068】
組付装置10は、プッシャ後退動作の後、チャック装置40を上昇させる動作を行う(ステップ7、上昇動作)。
【0069】
上述の動作により、吸気側のステム穴1h及び排気側のステム穴1hのうち、一方の列に配置された6つのステム穴1h(バルブガイド2)に対するバルブ3の組み付け動作が完了する。また、一方の列に配置された6つのステム穴1hへのバルブ3の組み付け動作が完了すると、組付装置10は、組付ユニット30を保持位置Ph1まで上下方向Hに上昇させて、さらに組付位置Px2から取出位置Px1まで進退方向Xに後退させる。
【0070】
なお、上述の工程の後、二列に設けられたステム穴1hのうち、他方の列に配置された6つの排気側のステム穴1hに対するバルブ3の組み付け動作が行われる。
【0071】
具体的には、一方の列(例えば吸気側)のステム穴1hに対するバルブ3の組み付け動作が完了した後、再びチャック装置40にバルブ3を把持される工程が行われる。
【0072】
ここで、
図9(d)に示すとおり、組付装置10は、組付位置Px3まで組付ユニット30を前進させる。また、組付装置10は、上述の傾斜の向きとは異なる向きとなるようチルト装置60を作動させて、シリンダヘッド1をチルトさせる。これにより、他方の(吸気側又は排気側)ステム穴1hの軸線L1が上下方向Hに沿うように配置される。また、組付装置10は、組付ユニット30を組付位置Px3まで前進させ、上述したチャック装置40及び押付装置50によるバルブ3の挿入動作を行う。
【0073】
このように、組付装置10によれば、移動機構20により組付ユニット30を移動させる方向を二方向(進退方向X及び上下方向H)として、幅方向Wに移動させる機構(シャトル機構)を要しない。そのため、移動機構20の構成を単純化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、バルブをシリンダヘッドに組み付けるための組付装置として、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 シリンダヘッド
1h ステム穴
2 バルブガイド
3 バルブ
3a バルブステム
3b バルブヘッド
3d 先端部
10 組付装置
20 移動機構
22 進退移動装置(移動機構)
24 昇降装置(移動機構)
30 組付ユニット
40 チャック装置(保持装置)
42 チャック爪(爪部)
46 ガイド部
50 押付装置
52 プッシャ
54 連結部
56 電動シリンダ(押圧装置)
60 チルト装置
70 制御装置
H 上下方向
Ph1 保持位置
Ph2 近接位置
W 幅方向
X 進退方向