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特許7158230流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 11/18 20060101AFI20221014BHJP
   B01J 29/90 20060101ALI20221014BHJP
   B01J 29/08 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C10G11/18
B01J29/90 M
B01J29/08 M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018185240
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020055899
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100209347
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】赤穂 達広
(72)【発明者】
【氏名】千代田 範人
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-157486(JP,A)
【文献】迫田尚夫,磁気分離装置を用いたFCC廃触媒削減技術の開発,排出物削減・高度リサイクル技術小委員会報告書,PEC-2004T-08,日本,財団法人 石油産業活性化センター,2005年03月,p1-p38
【文献】塩入智紀,重質油の接触分解,燃料協会誌,第57巻第610号(1978),日本,燃料協会,1978年,p96-p105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動接触分解反応において、随時、新触媒を投入し、前記投入された新触媒の量に応じて使用後の触媒を抜出す触媒メークアップ処理によって流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を制御する方法であって、任意の反応経過時tに実施した触媒メークアップ処理から、前記任意の反応経過時tより後の別の任意の反応経過時tx+1の間(tx+1-t)に流動接触分解装置に流入した原料油中の総金属量から、前記(tx+1-t)の間に流動接触分解触媒に堆積した金属量の推定値を導出し、前記堆積した金属量の推定値と前記tに実施した触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度から前記tx+1における流動接触分解触媒中の堆積金属濃度の推定値を導出し、前記tx+1に実施する触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒の堆積金属濃度の推定値が所定の値以下になるように前記tx+1に実施する触媒メークアップ処理における新触媒の投入量、及び使用後の触媒の抜出し量を決定する、流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を制御する方法。
【請求項2】
前記tx+1に実施する触媒メークアップ処理における新触媒の投入量、及び使用後の触媒の抜出し量は、下記式(1)及び下記式(2)から導出することを特徴とする請求項1に記載の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を制御する方法。
【数1】
(式(1)中、C(M)tx+1(MU後)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度の推定値(wtppm)、W(cat)tx+1(MU前)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理前の流動接触分解触媒の総質量(ton)、W(cat)tx+1(WD)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理における使用後の触媒の抜出し量(ton)、C(M)tx(MU後)はtxに実施した触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度(wtppm)、W(M)oilは(tx+1-tx)の間に流動接触分解装置に流入した原料油中の総金属量(ton)、W(cat)tx+1(MU後)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒の総質量(ton)である。)
【数2】
(式(2)中、W(cat)tx+1(MU)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理における新触媒の投入量(ton)である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動接触分解触媒に原料油を接触させて原料油を分解する流動接触分解反応に使用される前記流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を所定の値以下になるように制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解装置は重質油をはじめとする原料油を分解処理して、ガソリンや灯油・軽油などの付加価値の高い分解油を得る装置である。流動接触分解触媒としては、例えば、ゼオライト及び活性アルミナを主成分として含む固体酸触媒が使用される。流動接触分解装置においては分解反応と同時にコークが生成し、前記コークが流動接触分解触媒の活性点を被覆、細孔を閉塞し、触媒活性(分解活性)が低下する(コーク失活)。
【0003】
そこで、流動接触分解装置ではコーク失活した流動接触分解触媒を、スチームによりストリッピングしたのち、再生塔へ移送し、空気流通下、高温でコークを燃焼除去することによって流動接触分解触媒を再生し、反応に再利用する。
【0004】
また、原料油として重質油を使用した場合、前記重質油中にはニッケル、バナジウム、鉄、銅などの金属が有機金属化合物(例えば、ポルフィリン)の形態で多量に存在しており、これらの金属は流動接触分解触媒によって脱メタルされ、流動接触分解触媒上に堆積し、流動接触分解触媒の分解活性を著しく低下させる。すなわち、流動接触分解触媒への金属の堆積と共に分解活性が低下してゆき、実質的に所期の転化率を達成できなくなる。さらに、水素の発生量とコークの生成量が著しく増加し、流動接触分解装置の運転を困難にする。それに伴い、望ましい液状製品の収率が低下する(特許文献1)。
【0005】
上述の金属の中でも、特にバナジウムは流動接触分解触媒の活性成分であるゼオライトの結晶構造を破壊し、分解活性を低下させる。また、ニッケルは脱水素触媒活性を有しているため、水素、コークを著しく増加させ、結果として流動接触分解触媒の分解活性を低下させるとともに、流動接触分解装置の運転を困難にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-313176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した通り、コークにより活性低下した流動接触分解触媒は、空気流通下、高温でコークを燃焼除去することにより流動接触分解装置内で再生することが可能である。一方、金属堆積によって活性が低下した流動接触分解触媒は、流動接触分解装置内で再生することは実質的に不可能である。そのため、金属堆積によって活性が低下した流動接触分解触媒の一部を定期的あるいは定常的に抜出し、必要量の新触媒を投入することにより、流動接触分解装置内の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を制御し、流動接触分解反応の活性を維持するという方法がとられている(以下、触媒メークアップ処理ともいう。)。
【0008】
触媒メークアップ処理の目的は、流動接触分解装置内の流動接触分解触媒の金属濃度を所定値以下に保つことであり、その結果として、所定以上の分解活性(転化率)を維持することが可能となる。分解活性が維持されるとガス収率や液収率の安定につながり、それらを回収する装置の装置許容量の制限の懸念が小さくなる。一方、触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒中の金属濃度を所定の値以下にするための新触媒の投入量を決定するためには、触媒メークアップ処理前における、流動接触分解装置内に充填されている流動接触分解触媒中の堆積金属濃度が必要となる。
【0009】
流動接触分解触媒中の堆積金属濃度は、誘導結合プラズマ発光分析等の分析により、定量することは可能であるが、分析を行うためには、流動接触分解触媒を溶解させる等の前処理が必要であり、即時に(リアルタイムで)流動接触分解触媒中の金属濃度を得ることは実質的に不可能である。そのため、前記分析の結果が出た後に新触媒の投入量を決める、いわゆる後追いの対応により触媒メークアップ処理が行われているのが実情である。また、分析値を得るまでの間の新触媒の投入量はこれまでの経験値や実績値等から決定しなければならず、投入量が少なすぎる場合は、必要活性に届かず、投入量が多すぎる場合は、過剰に投入した触媒の分、経済性が悪化するという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、流動接触分解反応において、随時、新触媒を投入し、使用後の触媒を抜出す触媒メークアップ処理により、流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を精度よく制御するための方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 流動接触分解反応において、随時、新触媒を投入し、前記投入された新触媒の量に応じて使用後の触媒を抜出す触媒メークアップ処理によって流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を制御する方法であって、任意の反応経過時tに実施した触媒メークアップ処理から、前記任意の反応経過時tより後の別の任意の反応経過時tx+1の間(tx+1-t)に流動接触分解装置に流入した原料油中の総金属量から、前記(tx+1-t)の間に流動接触分解触媒に堆積した金属量の推定値を導出し、前記堆積した金属量の推定値と前記tに実施した触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度から前記tx+1における流動接触分解触媒中の堆積金属濃度の推定値を導出し、前記tx+1に実施する触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒の堆積金属濃度の推定値が所定の値以下になるように前記tx+1に実施する触媒メークアップ処理における新触媒の投入量、及び使用後の触媒の抜出し量を決定する、流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を制御する方法。
[2] 前記tx+1に実施する触媒メークアップ処理における新触媒の投入量、及び使用後の触媒の抜出し量は、下記式(1)及び下記式(2)から導出することを特徴とする[1]に記載の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を制御する方法。
【数1】
(式(1)中、C(M)tx+1(MU後)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度の推定値(wtppm)、W(cat)tx+1(MU前)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理前の流動接触分解触媒の総質量(ton)、W(cat)tx+1(WD)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理における使用後の触媒の抜出し量(ton)、C(M)tx(MU後)はtxに実施した触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度(wtppm)、W(M)oilは(tx+1-tx)の間に流動接触分解装置に流入した原料油中の総金属量(ton)、W(cat)tx+1(MU後)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒の総質量(ton)である。)
【数2】
(式(2)中、W(cat)tx+1(MU)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理における新触媒の投入量(ton)である。)
【発明の効果】
【0012】
流動接触分解反応において、随時、新触媒を投入し、使用後の触媒を抜出す触媒メークアップ処理により、流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を精度よく制御するための方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の流動接触分解反応における触媒中の金属濃度(V+1/4Ni)wtppmの実測値及び推定値の経時変化を示す図である。
図2】実施例1の流動接触分解反応における分解反応の転化率の経時変化を示す図である。
図3】比較例1の流動接触分解反応における触媒中の金属濃度(V+1/4Ni)wtppmの実測値の経時変化を示す図である。
図4】比較例1の流動接触分解反応における分解反応の転化率の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
【0015】
本実施形態の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を制御する方法は、随時、新触媒を投入し、前記投入された新触媒の量に応じて使用後の触媒を抜出す触媒メークアップ処理により行われることを特徴とする。具体的には、任意の反応経過時tに実施した触媒メークアップ処理から、前記任意の反応経過時tより後の別の任意の反応経過時tx+1の間(tx+1-t)に流動接触分解装置に流入した原料油中の総金属量から、前記(tx+1-t)の間に流動接触分解触媒に堆積した金属量の推定値を導出し、前記堆積した金属量の推定値と前記tに実施した触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度から前記tx+1における流動接触分解触媒中の堆積金属濃度の推定値を導出し、前記tx+1に実施する触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒の堆積金属濃度の推定値が所定の値以下になるように前記tx+1に実施する触媒メークアップ処理における新触媒の投入量、及び使用後の触媒の抜出し量を決定することを特徴とする。
【0016】
また、前記tx+1に実施する触媒メークアップ処理における新触媒の投入量、及び使用後の触媒の抜出し量は、下記式(1)及び式(2)から導出することが好ましい。
【0017】
【数3】
【0018】
前記式(1)中、C(M)tx+1(MU後)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度の推定値(wtppm)、W(cat)tx+1(MU前)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理前の流動接触分解触媒の総質量(ton)、W(cat)tx+1(WD)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理における使用後の触媒の抜出し量(ton)、C(M)tx(MU後)はtxに実施した触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度(wtppm)、W(M)oilは(tx+1-tx)の間に流動接触分解装置に流入した原料油中の総金属量(ton)、W(cat)tx+1(MU後)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒の総質量(ton)である。
【0019】
【数4】
【0020】
前記式(2)中、W(cat)tx+1(MU)はtx+1に実施する触媒メークアップ処理における新触媒の投入量(ton)である。
【0021】
流動接触分解反応において、流動接触分解触媒は、クラッキング反応器と触媒再生器の間を循環する。その際に、流動接触分解触媒の一部は、前記クラッキング反応器の上部、及び触媒再生器の上部から飛散し、流動接触分解装置から抜出される(以下、飛散抜出し触媒ともいう。)。本明細書においてtx+1に実施する触媒メークアップ処理における使用後の触媒の抜出し量であるW(cat)tx+1(WD)は、前記飛散抜出し触媒と意図的に抜出される触媒の和を意味する。すなわち、意図的に抜出される触媒の質量は、W(cat)tx+1(WD)から飛散抜出し触媒の質量を減ずることにより得ることができる。
なお、飛散抜出し触媒の質量は、クラッキング反応器の上部、及び触媒再生器の上部から飛散し、抜出された触媒を捕集し、その質量を直接測定してもよいし、流動接触分解装置内の流動接触分解触媒の質量の減少分を後述するレベル計によって測定し、当該減少分を飛散抜出し触媒の質量としてもよい。
【0022】
すなわち、前記式(1)におけるC(M)tx+1(MU後)が所定の値以下となるように、W(cat)tx+1(WD)の値を導出すればよい。また、W(cat)tx+1(WD)の値が導出できれば、W(cat)tx+1(MU)を前記式(2)から得ることができる。なお、tx+1に実施する触媒メークアップ処理前の流動接触分解触媒の総質量であるW(cat)tx+1(MU前)、及びtx+1に実施する触媒メークアップ処理後の流動接触分解触媒の総質量であるW(cat)tx+1(MU後)は、所期の値とすることができ、流動接触分解装置内のレベル計によりリアルタイムで測定が可能である。すなわち、本明細書におけるW(cat)tx+1(MU前)、W(cat)tx+1(MU後)は、堆積した金属の質量を含めた触媒の総質量を意味する。
【0023】
なお、流動接触分解反応において、通常、流動接触分解装置内の流動接触分解触媒の質量(堆積した金属の質量を含む)は一定として反応を行う。すなわち、前記式(1)中のW(cat)tx+1(MU前)、及びW(cat)tx+1(MU後)は一定の値とすることができる(W(cat)tx+1(MU前)=W(cat)tx+1(MU後))。さらに、W(cat)tx+1(MU前)、W(cat)tx+1(MU後)として、反応開始時における触媒の充填量であるW(cat)t0を使用することができる。なお、厳密には、レベル計により測定したW(cat)tx+1(MU前)、W(cat)tx+1(MU後)の質量は堆積した金属を含む質量であるため、W(cat)tx+1(MU前)、W(cat)tx+1(MU後)中の純粋な触媒質量としては前記堆積した金属の質量分、W(cat)t0よりも小さな値になる。一方で、W(cat)tx+1(MU前)、W(cat)tx+1(MU後)、W(cat)t0の質量に対するW(cat)tx+1(MU前)、W(cat)tx+1(MU後)中の堆積した金属の質量は相対的に非常に微量であるため、W(cat)t0と、W(cat)tx+1(MU前)中の純粋な触媒質量とW(cat)tx+1(MU後)中の純粋な触媒質量は実質的に等しい。
【0024】
上述のように流動接触分解装置内の流動接触分解触媒の質量を一定として反応を行う場合(W(cat)tx+1(MU前)=W(cat)tx+1(MU後))、前記式(2)よりW(cat)tx+1(MU)=W(cat)tx+1(WD)が成立する。すなわち、流動接触分解装置内の流動接触分解触媒の質量を一定として反応を行う場合、tx+1に実施する触媒メークアップ処理における使用後の触媒の抜出し量と新触媒の投入量は等しい量となる。
【0025】
流動接触分解装置(以下、FCC装置ともいう。)で処理を行う重質油中に含まれる金属元素としては、ニッケル、バナジウム、鉄、ナトリウム、亜鉛、アルミニウム、バリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉛、モリブデン、クロム、カドミウム、ヒ素、セレン、ケイ素等が代表的な例として挙げられ、これらは有機金属化合物(例えば、ポルフィリン)の形態をとる。これらの金属は流動接触分解触媒(以下、FCC触媒ともいう。)によって脱メタルされ、FCC触媒上へ堆積する。前記式(1)中のC(M)tx+1(MU後)、C(M)tx(MU後)、W(M)oilを分析、導出する上で、上記全ての金属について分析、導出を行ってもよいし、触媒活性に特に影響を与える金属元素のみを分析、導出してもよい。
【0026】
上述の金属元素の中でも液収率、ガソリン収率等を低下させる金属元素としてはニッケルとバナジウムがよく知られているため、前記式(1)のC(M)tx+1(MU後)、C(M)tx(MU後)、W(M)oilを分析、導出する上で、金属元素としてニッケルとバナジウムのみを分析、導出してもよい。また、上記液収率、ガソリン収率等の低下の度合いという観点から、(V+1/4Ni)という量が本分野においてはよく使用されている。したがって、前記式(1)のC(M)tx+1(MU後)、C(M)tx(MU後)、W(M)oilを分析、導出する上で金属濃度及び金属量として、(V+1/4Ni)(単位は例えば、wtppm、ton)の値を分析、導出してもよい。
【0027】
<txに実施した触媒メークアップ処理後の触媒中の堆積金属濃度:C(M)tx(MU後)>
任意の反応経過時tに実施した触媒メークアップ処理後のFCC触媒中の堆積金属濃度であるC(M)tx(MU後)は、分析値を使用しても推定値を使用してもよい。
前記分析値は、例えば任意の反応経過時tに実施した触媒メークアップ処理後のFCC触媒をサンプリングし、塩酸、フッ化水素酸等の酸性溶液を添加し、加熱して溶解させた溶液を誘導結合プラズマ発光分析により測定することにより得ることができる。
前記推定値は、前記式(1)のC(M)tx+1(MU後)にC(M)tx(MU後)を代入して下記式(3)により導出することができる。
【0028】
【数5】
【0029】
前記式(3)中、C(M)tx(MU後)はtxに実施した触媒メークアップ処理後のFCC触媒中の堆積金属濃度の推定値(wtppm)、W(cat)tx(MU前)はtxに実施した触媒メークアップ処理前のFCC触媒の総質量(ton)、W(cat)tx(WD)はtxに実施した触媒メークアップ処理における使用後の触媒の抜出し量(ton)、C(M)tx-1(MU後)は前記任意の反応経過時tより前の別の任意の反応経過時tx-1に実施した触媒メークアップ処理後のFCC触媒中の堆積金属濃度(wtppm)、W(M)oilは(tx-tx-1)の間にFCC装置に流入した原料油中の総金属量(ton)、W(cat)tx(MU後)はtxに実施した触媒メークアップ処理後のFCC触媒の総質量(ton)である。
【0030】
反応開始時の触媒中の堆積金属濃度C(M)0、及び所定の期間の間にFCC装置に流入した原料油中の総金属量W(M)oil(ton)さえわかれば、前記式(3)のように、前記式(1)を繰り返し適用することによって、任意の反応経過時のFCC触媒中の堆積金属濃度の推定値を経時的に導出することができる。
【0031】
<(tx+1-tx)の間にFCC装置に流入した原料油中の総金属量:W(M)oil>
前記反応経過時tから、前記反応経過時tx+1の間(tx+1-t)にFCC装置に流入した原料油中の総金属量W(M)oilは、例えば、(tx+1-t)の間にFCC装置に流入した原料油の容積と前記原料油の密度と前記原料油中の金属濃度を乗じることにより得ることができる。
【0032】
前記原料油の容積は、(tx+1-t)の間の原料油の流量(単位は例えば、m/h)と(tx+1-t)の積により得ることができる。原料油の流量は、例えば流量計、タンクの液面レベルの変化等により得ることができる。また、前記原料油の流量は、例えばマスフローコントローラー、コントロールバルブ、ポンプ、コンプレッサー等で制御を行い、所期の量とすることもできる。
【0033】
前記原料油の密度は、例えば振動法、浮ひょう法、ピクノメータ法により得ることができる。
【0034】
前記原料油中の金属濃度は分析値を使用しても推定値を使用してもよい。
前記分析値は、(tx+1-t)の間にFCC装置に流入した原料油をFCC装置の入口より前でサンプリングし、例えば、誘導結合プラズマ発光分析法(以下、ICP発光分析法ともいう。)により分析することにより得ることができる。(tx+1-t)の間に前記分析を複数回行った場合は、その平均値を使用することができる。一方で、上記分析には一定の時間がかかるため、即時に(リアルタイムで)原料油中の金属濃度を得ることは実質的に不可能である。そのため、本実施形態においては、原料油中の金属濃度の推定値を使用することが好ましい。
前記推定値としては、原料の原油中の金属濃度が既知であり、かつその後の蒸留、脱硫などの各工程における金属の配分率や脱メタル率の実績値がある場合は、当該実績値を利用して推定値を導出することができる。例えば、流動接触分解反応の原料として脱硫常圧残渣を使用する場合、常圧蒸留によって、原料の原油中の既知の金属量のうちどの程度の量が常圧残渣に配分されるか(配分率)、及びその後の脱硫工程における脱硫装置の処理量、原料油密度、反応温度、脱硫率などの実績値により推定される脱メタル率から流動接触分解反応の原料油中の金属濃度の推定値を得ることができる。
【0035】
原料油中の金属濃度として推定値を使用する場合は、定期的に分析値との比較を行い、その推定の精度を確認することが好ましい。
この際、前記分析値に対する前記推定値の割合である[(推定値)/(分析値)]としては、0.90~1.10であることが好ましく、0.95~1.05であることがより好ましく、0.98~1.02であることがさらに好ましい。
[(推定値)/(分析値)]の範囲が前記範囲を外れる場合は、上述の配分率、脱メタル率の値を再確認し、前記配分率、脱メタル率の値を修正すればよい。
【0036】
<tx+1に実施する触媒メークアップ処理後のFCC触媒中の堆積金属濃度の推定値:C(M)tx+1(MU後)>
前記反応経過時tx+1に実施する触媒メークアップ処理後のFCC触媒中の堆積金属濃度の推定値C(M)tx+1(MU後)としては所期の値を前記式(1)に代入し、tx+1に実施する触媒メークアップ処理における使用後の触媒の必要な抜出し量W(cat)tx+1(WD)及び、新触媒の必要な投入量W(cat)tx+1(MU)を前記式(1)及び前記式(2)から導出すればよい。
【0037】
また、逆に、tx+1に実施する触媒メークアップ処理における使用後の触媒の抜出し量W(cat)tx+1(WD)及び、新触媒の必要な投入量W(cat)tx+1(MU)の所期の値を前記式(1)及び前記式(2)に代入し、前記反応経過時tx+1に実施する触媒メークアップ処理後のFCC触媒中の堆積金属濃度の推定値C(M)tx+1(MU後)を導出してもよい。
【0038】
上述の方法にて前記推定値C(M)tx+1(MU後)を導出した場合、前記反応経過時tx+1に実施する触媒メークアップ処理後のFCC触媒中の堆積金属濃度の分析値C(M)tx+1(MU後)analysisとの比較を定期的に行い、推定の精度を確認することが好ましい。
この際、前記分析値に対する前記推定値の割合である[C(M)tx+1(MU後)/C(M)tx+1(MU後)analysis]としては、0.8~1.2であることが好ましく、0.85~1.15であることがより好ましく、0.9~1.1であることがさらに好ましい。
前記分析値に対する前記推定値の割合である[C(M)tx+1(MU後)/C(M)tx+1(MU後)analysis]が前記範囲を外れる原因としては、前記式(1)中のW(M)oilを導出する上で使用する原料油中の金属濃度の推定値が実測値から外れることが例として挙げられる。この場合、原料油中の金属濃度の分析値に対する原料油中の金属濃度の推定値の割合を確認し、上述した範囲を外れる場合は、上述した通り、配分率、脱メタル率を再確認、修正すればよい。
【0039】
本発明の別の実施形態によれば、任意の反応経過時t’に実施した触媒メークアップ処理から、流動接触分解触媒の堆積金属濃度の推定値が所定値に達する前記反応経過時t’より後の別の任意の反応経過時t’x+1までの時間t(h)を下記式(4)により導出することができる。
【0040】
【数6】
【0041】
前記式(4)中、C(M)t’x+1はt’x+1の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度(wtppm)、W(cat) t’x+1はt’x+1の流動接触分解触媒の総質量(ton)、C(M)t’x(MU後)はt’xに実施した触媒メークアップ処理後の流動接触分解中の堆積金属濃度(wtppm)、Foilは(t’x+1-t’x)の間に流動接触分解装置に流入した原料油の流量(m/h)、ρoilは(t’x+1-t’x)の間に流動接触分解装置に流入した原料油の密度(ton/m)、C(M)oilは(t’x+1-t’x)の間に流動接触分解装置に流入した原料油中の金属濃度(wtppm)である。
【0042】
上記tの導出方法について詳細に説明する。まず、前記式(4)中のC(M)t’x+1に所期の流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を代入する。また、C(M)t’x(MU後)は、上述の分析値又は推定値を用いることができる。推定値を用いる場合、推定値は前記式(1)及び(2)より求めることができる。さらに、W(cat)t’x+1は流動接触分解装置内のレベル計により得ることができる。なお、流動接触分解装置内の流動接触分解触媒の質量を一定として反応を行う場合は、上述した通り、W(cat)t’x+1として、反応開始時における触媒の充填量であるW(cat)t0を使用することができる。さらに原料油の流量Foilはすでに説明した方法により、測定又は制御することができる。また、原料油の密度は、すでに説明した方法により測定することができる。最後に原料油中の金属濃度C(M)oilとして上述の分析値又は推定値を使用することにより、前記式(4)からtを導出することができる。
【0043】
本発明において原料油の流動接触分解反応は、本分野において公知の方法によって実施することができる。原料油の流動接触分解反応は、FCC触媒と原料油とを接触させることにより実施することができる。
【0044】
本発明において、流動接触分解される原料油としては、ガソリンの沸点よりも高い温度で沸騰する炭化水素油(炭化水素混合物)を挙げることができる。
【0045】
ガソリンの沸点よりも高い温度で沸騰する炭化水素油としては、原油の常圧あるいは減圧蒸留で得られる軽油留分や常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油等から選ばれる一種以上を挙げることができ、もちろんコーカー軽油、溶剤脱瀝油、溶剤脱瀝アスファルト、タールサンド油、シェールオイル油、石炭液化油、GTL(Gas to Liquids)油、植物油、廃潤滑油、廃食油等から選ばれる一種以上も挙げることができる。
さらに、上記炭化水素油としては、当業者に周知の水素化処理、すなわち、Ni-Mo系触媒、Co-Mo系触媒、Ni-Co-Mo系触媒、Ni-W系触媒などの水素化処理触媒の存在下、高温・高圧下で水素化脱硫した水素化処理油も挙げることができる。
【0046】
商業的規模での炭化水素油の流動接触分解反応は、通常、垂直に据え付けられたクラッキング反応器と触媒再生器との2種の容器からなるFCC装置に、FCC触媒を連続的に循環させることにより行うことができる。なお、本明細書において、流動接触分解装置(FCC装置)には、残油流動接触分解装置(RFCC装置)も含まれる。すなわち、本明細書において、流動接触分解反応には、残油流動接触分解反応も含まれる。
以下、FCC装置によって行われる接触分解反応を具体的に説明する。
触媒再生器から供給される高温の再生FCC触媒を、クラッキング反応器中で炭化水素油と混合して接触させ、前記FCC触媒をクラッキング反応器の上方向に導きつつ、炭化水素油を分解する。次いで、上記炭化水素油を接触分解することにより表面に析出したコークによって失活したFCC触媒を、分解生成物から分離し、ストリッピング後、触媒再生器に供給する。触媒再生器に供給された失活したFCC触媒は、前記FCC触媒上のコークを空気燃焼により除去、再生した後、再びクラッキング反応器に循環する。
一方、流動接触分解反応により得られたクラッキング反応器内の分解生成物は、ドライガス、LPG、ガソリン留分、LCO、重質留分のような1種以上の留分に分離する。もちろん、分解生成物から分離したLCOや重質留分の一部あるいは全部を、クラッキング反応器内に再循環させて分解反応をさらに進めてもよい。
【0047】
クラッキング反応器の運転条件としては、反応温度が400~600℃であることが好ましく、450~550℃であることがより好ましく、反応圧力が常圧~0.49MPa(5kg/cm)であることが好ましく、常圧~0.29MPa(3kg/cm)であることがより好ましく、FCC触媒/炭化水素油の質量比が2~20であることが好ましく、4~15であることがより好ましい。
【0048】
クラッキング反応器における反応温度が400℃以上であると、炭化水素油の分解反応が進行して、分解生成物を好適に得やすくなる。また、クラッキング反応器における反応温度が600℃以下であると、分解により生成するドライガスやLPGなどの軽質ガス生成量を軽減することができ、目的物のガソリン留分の収率を相対的に増大させ易くなるため経済的である。
【0049】
クラッキング反応器における反応圧力が0.49MPa以下であると、モル数が増加する分解反応の進行が阻害されにくい。また、クラッキング反応器における本発明に係るFCC触媒/原料炭化水素油の質量比が2以上であると、クラッキング反応器内の触媒濃度を適度に保つことができ、原料炭化水素油の分解を好適に進行し易くなる。クラッキング反応器におけるFCC触媒/原料炭化水素油の質量比が20以下である場合も、炭化水素油の分解反応が効果的に進行し、触媒濃度の上昇に見合った分解反応を進行させ易くなる。
【0050】
触媒再生器の運転条件としては、再生温度が600~800℃であることが好ましく、700~750℃であることがより好ましい。
触媒再生器における再生温度が600℃以上であると、コークの燃焼が充分に進み、触媒活性が充分に回復する。また、触媒再生器における再生温度が800℃以下であると、装置材質への悪影響が低い。
【0051】
本発明において、触媒メークアップ処理は以下のように行うことができる。新触媒の投入は、新触媒を充填した機器から触媒再生器へ連続的あるいは短期間で一度に投入され、触媒再生器内の触媒レベルが実質的に一定となるよう同量の触媒を触媒再生器から抜出す。また、使用後の触媒の抜出しは、連続的あるいは短期間で一度に抜出す方法でも構わない。なお、触媒の投入あるいは抜出しの際に反応を停止する必要はない。
【実施例
【0052】
以下、本発明を実施例により説明するが、これらは例示であって、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0053】
<触媒中及び原料油中のNi及びVの含有量の測定>
任意の反応経過時におけるFCC触媒をサンプリングし、酸性溶液を添加し、加熱することにより溶解させた。得られた溶液をICP発光分析法(測定機器:Thermo Fisher Scientific社製 i CAP 6500 Radical)により測定し、触媒中のNi及びVの含有量の実測値を得た(測定波長:Ni(231.604 nm)、V(310.230 nm))。また、原料油をFCC装置の入口より前でサンプリングしICP発光分析法により上記と同様に測定し、原料油中のNi及びVの含有量の実測値を得た。
<原料油中のNi及びVの含有量の推定>
原料油(脱硫常圧残渣)中のNi及びVの含有量の推定値として、常圧蒸留によって、原料の原油中の既知の金属量のうちどの程度の量が常圧残渣に配分されるか(配分率)、及びその後の脱硫工程における脱硫装置の処理量、原料油密度、反応温度、脱硫率などの実績値により推定される脱メタル率により推定した値を使用した。なお、後述するように流動接触分解反応の原料油として、脱硫常圧残渣、減圧脱硫軽油を使用したが、減圧脱硫軽油には金属化合物はほとんど含まれていないため、脱硫常圧残渣のみNi及びVの含有量の推定値の算出を行った。
<原料油の密度の測定>
原料油の密度は、振動法により測定した。
【0054】
<反応条件>
実施例1で使用した触媒、原料油種、反応温度等の反応条件(平均の反応条件)を表1に示す。同様に比較例1で使用した触媒、原料油種、反応温度等の反応条件(平均の反応条件)を表2に示す。なお、実施例1と比較例1で使用した触媒並びに原料油種は同じである。
【0055】
[実施例1]
転化率を66%に保つことを前提条件として反応を行った。反応が定常状態となった時点を反応日数0日(図1の反応日数0日)として、その後およそ70日間反応を行った。
反応開始時から前記反応日数0日まで前記式(1)及び前記式(2)を繰り返し適用し、前記反応日数0日時のFCC触媒中のV+1/4Ni(wtppm)の推定値を求めた(以下、V+1/4Ni(wtppm)を単に金属濃度という。)。また、前記反応日数0日時のFCC触媒をサンプリングして、上述のICP発光分析法によってFCC触媒中の金属濃度を分析したところ、その分析値は前記推定値とよく一致することを確認した(反応日数0日時のFCC触媒中の金属濃度の推定値:3,525wtppm、反応日数0日時のFCC触媒中の金属濃度の分析値:3,525wtppm)。前記推定値をC(M)とした。触媒メークアップ処理は24hおきに行い、触媒メークアップ処理後のFCC触媒中の金属濃度が3,500wtppm以下になるように前記式(1)及び前記式(2)から新触媒の投入量、及び使用後の触媒の抜出し量を導出し、導出した量に基づいて触媒メークアップ処理を行った。なお、流動接触分解装置内の流動接触分解触媒の質量が一定になるように、触媒メークアップ処理における使用後の触媒の抜出し量と新触媒の投入量は同じ量とした。
また、1週間おきに、FCC触媒をサンプリングして、上述のICP発光分析法によってFCC触媒中の金属濃度の実測値(分析値)を測定した。
【0056】
【表1】
【0057】
得られた分解生成油は、Agilent technologies社製 AC Simdis Analyzerを用いてガスクロ蒸留法にて解析し、ガソリン留分(25~190℃)、中間留分(LCO)(190~350℃)、HCO(350℃以上)の生成物量を解析した。また反応の転化率は、100-(LCO留分の得率+重質留分の得率(HCO留分の得量))により算出した。
【0058】
図1に触媒メークアップ処理後の触媒中の金属濃度の実測値(分析値)と推定値の経時変化を示す。また、図2に流動接触分解反応における分解反応の転化率の経時変化を示す。
図1に示されている通り、触媒メークアップ処理後の触媒中の金属濃度の実測値(分析値)と推定値はよく一致し、触媒中の金属濃度をほぼ一定に保つことができた。反応日数0日時を含めた図1中の11点の触媒中の金属濃度の実測値(分析値)に対する推定値の割合の平均は、0.972であった。それに伴い、図2に示されている通り、転化率もほぼ一定に保つことができ効率的、経済的な運転が可能となることがわかった。
【0059】
[比較例1]
触媒メークアップ処理量を一定にすること(新触媒の投入量、使用後の触媒の抜出し量ともに7(ton/24h))を前提条件として反応を行った。反応が定常状態となった時点を反応日数0日(図3の反応日数0日)として、その後およそ70日間反応を行った。
また、1週間おきに、FCC触媒をサンプリングして、上述のICP発光分析法によってFCC触媒中の金属濃度の実測値(分析値)を測定した。さらに得られた分解生成油を実施例1と同様の方法により解析し、それぞれの留分の生成量、並びに反応の転化率を算出した。
【0060】
【表2】
【0061】
図3にFCC触媒中の金属濃度の実績値(分析値)の経時変化を示す。また、図4に流動接触分解反応における分解反応転化率の経時変化を示す。
図3に示されている通り、実施例1に比べ、触媒中の金属濃度の実測値(分析値)は大幅に振れた。それに伴い、図4に示されている通り、転化率も大幅に振れ、ガス回収装置の容量オーバーの懸念が大きくなることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る流動接触分解触媒中の堆積金属濃度の制御方法は、流動接触分解反応において、随時、新触媒を投入し、使用後の触媒を抜出す触媒メークアップ処理により、流動接触分解触媒中の堆積金属濃度を精度よく制御することができるため有用である。
図1
図2
図3
図4