特許 7158233 エレベータ玩具及び建物玩具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-10-13

(45)【発行日】2022-10-21

(54)【発明の名称】エレベータ玩具及び建物玩具

(51)【国際特許分類】

   A63H 3/52 20220101AFI20221014BHJP

【ＦＩ】

A63H3/52 B

【請求項の数】 6

(21)【出願番号】P 2018187637

(22)【出願日】2018-10-02

(65)【公開番号】P2020054643

(43)【公開日】2020-04-09

【審査請求日】2021-10-01

(73)【特許権者】

【識別番号】000128234

【氏名又は名称】株式会社エポック社

(74)【代理人】

【識別番号】110002022

【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】神山 圭

【審査官】鈴木 智之

(56)【参考文献】

【文献】実開昭５４－１４５２９１（ＪＰ，Ｕ）

【文献】実開昭５２－０９１２９５（ＪＰ，Ｕ）

【文献】実開昭５１－１５０７９９（ＪＰ，Ｕ）

【文献】実開昭５６－０６８５９０（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ａ６３Ｈ １／００－３７／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

籠と、
前記籠に対して回動軸により回動可能に接続される扉であって、該回動軸の径方向の両側に跨って形成された開閉制御突起を有する扉と、
前記開閉制御突起をガイドするスリットが形成される籠枠と、
を備え、
前記スリットは、上下に延設されて、前記開閉制御突起を縦向き配置に規制する直線部と、前記扉の閉方向側の内縁に形成される第一切欠部と、前記扉の開方向側の内縁に形成される第二切欠部とを有し、
前記第二切欠部は、前記第一切欠部の上縁の上下に亘って前記第一切欠部と対向配置されるように形成され、
前記第一切欠部の底部から前記第二切欠部の底部までの内幅は、前記開閉制御突起の横向き配置を許容する幅で形成され、
前記扉は前記回動軸に対して外側に重心を有する、
ことを特徴とするエレベータ玩具。

【請求項2】

前記第一切欠部の下縁は傾斜しているとともに、前記第一切欠部の上縁は前記内縁に対して直角であり、
前記第二切欠部の下縁及び上縁は傾斜している、
ことを特徴とする請求項１に記載のエレベータ玩具。

【請求項3】

前記第一切欠部の底部の上端から前記第二切欠部の底部の下端までの上下幅と、横向きの前記開閉制御突起の上下厚みは同じであることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載のエレベータ玩具。

【請求項4】

前記籠は前記回動軸により前記扉の下端側と接続される、
ことを特徴とする請求項１乃至請求項３の何れかに記載のエレベータ玩具。

【請求項5】

前記籠を紐体により吊支して昇降させる昇降装置を備えることを特徴とする請求項１乃至請求項４の何れかに記載のエレベータ玩具。

【請求項6】

請求項１乃至請求項５の何れかに記載のエレベータ玩具を備えることを特徴とする建物玩具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、エレベータ玩具及び建物玩具に関する。

【背景技術】

【0002】

従来から、エレベータを有する多層階の建物を模した建物玩具が提供されている。例えば、特許文献１には、エレベータが設けられたフィギアハウスが開示されている。このフィギアハウスは、後壁に突起を付設したエレベータボックスと、この突起に係合する螺旋体とを有する。エレベータボックスは、その向きを同じにしたまま昇降可能に筒状枠に支持されており、螺旋体の軸がモータにより回転することで上昇又は下降することができる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１７－１３６１０９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかしながら、特許文献１のエレベータは、フィギアを出し入れする際に出入り口の手前に位置する玄関扉を遊戯者が手で開閉する必要があり、遊戯者にとって煩雑な操作を要してしまう。

【0005】

本発明は、以上の点に鑑み、簡易な構成で扉の自動開閉が可能なエレベータ玩具及び建物玩具を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の一つの態様に係るエレベータ玩具は、籠と、前記籠に対して回動軸により回動可能に接続される扉であって、該回動軸の径方向の両側に跨って形成された開閉制御突起を有する扉と、前記開閉制御突起をガイドするスリットが形成される籠枠と、を備え、前記スリットは、上下に延設されて、前記開閉制御突起を縦向き配置に規制する直線部と、前記扉の閉方向側の内縁に形成される第一切欠部と、前記扉の開方向側の内縁に形成される第二切欠部とを有し、前記第二切欠部は、前記第一切欠部の上縁の上下に亘って前記第一切欠部と対向配置されるように形成され、前記第一切欠部の底部から前記第二切欠部の底部までの内幅は、前記開閉制御突起の横向き配置を許容する幅で形成され、前記扉は前記回動軸に対して外側に重心を有する、ことを特徴とする。

【0007】

本発明の一つの態様に係る建物玩具は、上述のエレベータ玩具を備えることを特徴とする。

【発明の効果】

【0008】

上記態様によれば、簡易な構成で扉の自動開閉が可能なエレベータ玩具及び建物玩具を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】本発明の実施形態に係る建物玩具の斜視図である。

【図2】本発明の実施形態に係るエレベータ玩具の籠を正面側から見た斜視図である。

【図3】本発明の実施形態に係るエレベータ玩具の籠を背面側から見た斜視図である。

【図4】本発明の実施形態に係る籠と籠枠の関係を示す図であり、（ａ）は図１の籠及び籠枠のＩＶ－ＩＶ横断面図であり、（ｂ）は床の開口部から延設する支持突起周辺の斜視図である。

【図5】本発明の実施形態に係る昇降装置周辺の斜視図である。

【図6】本発明の実施形態に係るエレベータ玩具の動作を示す図であり、（ａ）は上昇中の籠の扉が閉まっている状態を示し、（ｂ）は上昇中の籠の扉が開く動作中の状態を示す。

【図7】本発明の実施形態に係るエレベータ玩具の動作を示す図であり、（ａ）は籠が乗降階に到着して扉が開いている状態を示し、（ｂ）は籠が上昇を始めて扉が閉じる動作中の状態を示す。

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明する。図１は建物玩具１の斜視図である。建物玩具１は、全体が縦長の略直方体状に形成され、１階の部屋１１と、２階の部屋１２と、３階の部屋１３とを備える。各部屋１１～１３の奥側にはエレベータ玩具２が配置されている。建物玩具１の各部屋１１～１３の前方は開放されている。遊戯者は各部屋１１～１３に形象体や家具を模した玩具を配置して人形遊びなどをすることができる。以下の説明では、建物玩具１の３階の部屋１３側を上、その反対側を下とする。また、建物玩具１のエレベータ玩具２側を後、その反対側を前とし、建物玩具１の左側を左、その反対側を右とする。

【0011】

１階と２階の部屋１１，１２の左右には、出入口１１１，１２１が形成される。また、各部屋１１～１３の壁には窓１１２，１２２，１３２が形成される。建物玩具１の屋根は、後方側の片流れ屋根３１と前方側の陸屋根３２とを組み合わせて形成される。３階の部屋１３の後側の壁は片流れ屋根３１の傾斜に対応した傾斜壁としている。片流れ屋根３１の一部には円錐屋根３３が突設している。円錐屋根３３は、エレベータ玩具２の上方に配置されており、内部にエレベータ玩具２の昇降装置７が収納されている。円錐屋根３３の上端には、昇降装置７と連結されたハンドル３３１が設けられている。ハンドル３３１は、鳥を模して平坦状に形成されている。遊戯者はハンドル３３１を把持して回転操作することにより、エレベータ玩具２の籠４を昇降させることができる。

【0012】

エレベータ玩具２は、図１に示すように、形象体玩具等を乗降させることができる籠４と、籠４を各階の部屋１１～１３間にガイドする籠枠６とを備える。

【0013】

図２及び図３に、籠４を正面側及び背面側から見た斜視図を示す。籠４は、上下に長い略直方体の箱状に形成され、前方及び上方が開口している。籠４の後壁４１には窓４１１が形成される。籠４の左壁４２及び右壁４３は、後壁４１の両端からそれぞれ傾斜部４２１及び傾斜部４３１を介して前方へ延設される。籠４の左壁４２の上端及び下端には左方に突出する上鍔部４２２及び下鍔部４２３が前後に亘って形成される。左壁４２の前端には上鍔部４２２から下鍔部４２３に亘って配置される前鍔部４２４が形成される。前鍔部４２４の前面は平板状に形成される。前鍔部４２４の左端縁からは後方へ向かって平板状の側板４２４ａが延設される（図３参照）。

【0014】

また、籠４の右壁４３の上端及び下端には右方に突出する上鍔部４３２と下鍔部４３３（図３参照）が前後に亘って形成される。右壁４３の前端には上鍔部４３２から下鍔部４３３に亘って配置される前鍔部４３４が形成される。前鍔部４３４の前面は平板状に形成される。前鍔部４３４の右端縁からは後方へ向かって平板状の側板４３４ａが延設される（図４（ａ）及び図５も参照）。

【0015】

図３に示すように、籠４の床部４４の下面には前後に延設された複数のリブ４４１～４４３が形成される。床部４４の下面は鍔部４２３，４３３の下面と平坦に連続している。床部４４の前端の左右には、切欠部４４４が設けられている。切欠部４４４の両外側には被係合腕部４４５ａ，４４５ｂが形成される。被係合腕部４４５ａ，４４５ｂは左右に平坦面を向けた片持ちの略矩形板状に形成される。各被係合腕部４４５ａ，４４５ｂの外側の面には図示しない円形溝が形成されている。

【0016】

左側の前鍔部４２４の左方には、昇降ガイド４５が形成される。昇降ガイド４５は前鍔部４２４の下端及び上端に亘って形成される。昇降ガイド４５は、前述の側板４２４ａと、レール状の外側ガイド壁４５１と、外側ガイド壁４５１の間に設けられる溝部４５２とにより形成される。溝部４５２の底板４５２ａ及び外側ガイド壁４５１は、左壁４２よりも上方に延設されている。外側ガイド壁４５１の上端には吊支部４５３が設けられる。吊支部４５３には前後方向に開口した吊支孔４５３ａが形成される。吊支孔４５３ａには図１の円錐屋根３３内の昇降装置７から吊下げられた紐体Ｌが取り付けられて、籠４が吊支される。

【0017】

側板４２４ａの上端は上鍔部４２２の下面と接続され、側板４２４ａの下端は鍔部４２２の上面と接続される。側板４２４ａと左壁４２の外面とは離間して後方へ開口するように形成される。

【0018】

床部４４の前端側には、籠４に対し回動軸Ａにより回動可能な略矩形板状の扉５が接続される。扉５は、左壁４２から右壁４３の内幅よりもやや狭く形成されて、籠４内に収容することができる。扉５の開状態における上面である第一面５ａの前縁には前縁壁５１１が左右に亘って形成される。また、第一面５ａの左縁及び右縁には、それぞれ左縁壁５１２及び右縁壁５１３が形成される。左縁壁５１２及び右縁壁５１３は第一面５ａの前後に亘って形成される。

【0019】

扉５は、左縁壁５１２の後方に延設された係合腕部５２１と、右縁壁５１３の後方に延設された係合腕部５２２とを有する。係合腕部５２１及び係合腕部５２２は、互いに対向する内面側に、回動軸Ａを構成する図示しない円形の突起部を有する。左側の係合腕部５２１の突起部は被係合腕部４４５ａの円形溝に係合し、右側の係合腕部５２２の突起部は被係合腕部４４５ｂの円形溝に係合する。これにより、扉５は、係合腕部５２１，５２２を軸に回動して開閉することができる。扉５を閉じた状態では、扉５の第一面５ａ側が籠４の内壁として形成され、第一面５ａの反対側である第二面５ｂ側が籠４の外面として形成される。

【0020】

係合腕部５２１の外側面には、開閉制御突起５３及び回動制御突起５４が形成される。開閉制御突起５３及び回動制御突起５４は、扉５の板面と略平行な長矩形板状に形成される。開閉制御突起５３は、回動軸Ａ方向から（籠４の左側から）見て回動軸Ａの径方向の両側（図２及び図７（ａ）では前方側及び後方側）に跨って形成される。開閉制御突起５３は、回動軸Ａに対する扉５の基端側である第一端部５３１と、扉５の先端側である第二端部５３２とを有する。開閉制御突起５３の係合腕部５２１側の一部には、回動制御突起５４の前端面の位置まで延設された突出部５３３が形成される。突出部５３３は、扉５の閉状態において籠４の左壁４２の下方前端に設けられた切欠溝４２５内に収容される。

【0021】

回動制御突起５４は、開閉制御突起５３の前方側（扉５の先端側）であって、開閉制御突起５３に対して第二面５ｂ側にオフセットして配置される。回動制御突起５４は開閉制御突起５３と接続するように段状に配置される（図７（ａ）等も参照）。また、回動制御突起５４よりも、開閉制御突起５３の方が左側方へ突出するように形成される。

【0022】

籠枠６は、図４（ａ）に示す横断面視において前方に開口した略Ｕ字枠状に形成される（図１も参照）。図４（ａ）では籠枠６が３階に位置する籠４を収容する様子を示している。籠枠６の後壁６１は、籠４の後壁４１と摺接しており、籠４の後方への移動を規制している。籠枠６の左壁６２及び右壁６３は、後壁６１の左右両端部から傾斜部６２１及び傾斜部６３１を介して延設される。傾斜部６２１及び傾斜部６３１の一部は、籠４の傾斜部４２１及び傾斜部４３１とそれぞれと摺接している。

【0023】

左壁６２の前方側の先端は、溝部４５２内に収容される。左壁６２の先端と溝部４５２の底板４５２ａとは、図４（ａ）の断面視においてやや離隔している。開状態の扉５の開閉制御突起５３の第一端部５３１側は、図４（ａ）の断面視において溝部４５２内に配置されながら、左壁６２の先端と僅かに離隔している。また、左壁６２の先端側の内面６２ａは、籠４の側板４２４ａと摺接しており、右壁６３の先端側の内面６３ａは、側板４３４ａと摺接している。そのため、籠４の左右の搖動は左壁６２及び右壁６３により規制される。

【0024】

さらに、建物玩具１のエレベータ玩具２が配置される左側の内壁１３３（内壁１１３，１２３を含む）からは、籠枠６の一部を形成する前壁６４がエレベータ玩具２側に立設している。前壁６４の後方面側は、昇降ガイド４５の前面４５１ａと摺接して籠４の前方への移動を規制する。また、前壁６４の先端は、前鍔部４２４と昇降ガイド４５の前面４５１ａとの段部４２４ｂと当接して、籠４の左方への移動を規制することができる。

【0025】

また、前壁６４の後方における内壁１３３からは、籠枠６の左壁６２側に向けてガイド板６５が立設している。ガイド板６５は部屋１３の床１３４と略平行に形成される。ガイド板６５は略矩形状に形成され、隅部において略矩形状の切欠部６５１が形成される。このような前壁６４の後側に配置されるガイド板６５は、昇降ガイド４５の上下長さよりも短い間隔で、図１の建物玩具１内に上下に亘って複数配置される。そのため、何れかのガイド板６５の切欠部６５１内には昇降ガイド４５が位置していることとなるため、ガイド板６５は籠４の左方及び後方への移動を規制することができる。

【0026】

図４（ａ）の前壁６４の先端と、左壁６２の先端との間には、底板４５２ａ及び開閉制御突起５３をガイドするスリット８が形成される。スリット８は、開閉制御突起５３をガイドして扉５を開閉させることができる。スリット８は、１階の床１１４から３階の天井１３５までに亘って上下に延設される。スリット８は、図６（ａ）に示すように、開閉制御突起５３を縦向き配置に規制する直線部８１と、扉５の閉方向側の内縁８１１に形成される第一切欠部８２と、扉５の開方向側の内縁８１２に形成される第二切欠部８３とを含む。直線部８１のスリット幅は、図６（ａ）の回動軸側からみた開閉制御突起５３の板厚よりもやや幅広に形成される。

【0027】

第一切欠部８２は、略直角台形状に形成されている。第一切欠部８２の上縁８２２は、底部８２１及び上側の直線部８１の内縁８１１に対して略直角段状に形成される。また、第一切欠部８２の下縁８２３は、底部８２１と、下側の直線部８１の内縁８１１とを傾斜して接続する。

【0028】

第二切欠部８３は、略台形状に形成されており、第一切欠部８２の上縁８２２の上下に亘って第一切欠部８２と対向配置される。第二切欠部８３の上縁８３２は、底部８３１と、上側の直線部８１の内縁８１２とを傾斜して接続する。第二切欠部８３の下縁８３３も、底部８３１と、下側の直線部８１の内縁８１２とを傾斜して接続する。

【0029】

第二切欠部８３の下縁８３３は第一切欠部８２の底部８２１の高さ位置に配置され、第一切欠部８２の上縁８２２は第二切欠部８３の底部８３１の高さ位置に配置される。また、第一切欠部８２の底部８２１の上端から第二切欠部８３の底部８３１の下端までの上下幅と、開閉制御突起５３の板厚（図７（ａ）の横向きの開閉制御突起５３の上下方向の板厚）は略同じとなるように形成される。

【0030】

第一切欠部８２及び第二切欠部８３は、各部屋１１～１３の床１１４，１２４，１３４と対応して配置される（図４（ｂ）も参照）。なお、本実施形態では籠４が１階よりも下方へ移動しない構成としているため、１階に配置する第一切欠部８２を略長方形状に形成して、下縁８２３に相当する構成を省略してもよい。したがってこの場合は、図６（ａ）等に示した第一切欠部８２は、籠枠６の底部６６（図１参照）と接続されるように途中で終端される。

【0031】

また、扉５の閉状態では、開閉制御突起５３が回動するため、図４（ａ）の開閉制御突起５３と底板４５２ａとの前後の突出幅が略同じとなり、開閉制御突起５３と底板４５２ａがスリット８の直線部８１によりガイドされる。また、扉５の閉状態では、回動制御突起５４と前鍔部４２４との前後の突出幅も略同じとなり、回動制御突起５４は前鍔部４２４とともに前壁６４の右方先端側に摺接してガイドされる。

【0032】

図１に戻り、２階及び３階の部屋１２，１３の床１２４，１３４において、エレベータの出入口に相当する籠枠６の前方側には、略矩形状に上下に貫通する開口部１２６，１３６が形成される。図４（ｂ）は、３階の開口部１３６の一部を図４（ａ）のＰ部方向から見た斜視図である。なお本図では、扉５と手前側の床１３４の一部を二点鎖線で省略して、支持突起１３６ａやスリット８側の構成を示している。３階の床１３４の開口部１３６の内縁からは支持突起１３６ａが突出している。支持突起１３６ａは、開口部１３６の左内縁における籠枠６側に形成される。開口部１３６の前端側の内縁周辺は、開状態の扉５の先端側を支持することができる。また、開口部１３６内に設けられた支持突起１３６ａは、開状態の扉５の基端側を支持することができる。

【0033】

２階の床１２４の開口部１２６の内縁からも、支持突起１３６ａと同様の位置に、支持突起１２６ａが突出している。開口部１２６の前端側の内縁周辺は、開状態の扉５の先端側を支持することができる。また、開口部１２６内に設けられた支持突起１２６ａは、開状態の扉５の基端側を支持することができる。

【0034】

また、図１における１階の床１１４の籠枠６の前方側には、溝状の逃げ部１１４ａ，１１４ｂが設けられる。逃げ部１１４ａ，１１４ｂは、扉５の係合腕部５２２の前後及び左右に対応する位置に設けられて、離隔して配置される。籠４が１階の部屋１１に位置するときに扉５が回動すると、係合腕部５２２の後端側の軌道は、逃げ部１１４ａ，１１４ｂ内を通過することができる。そのため、籠枠６の底部６６と床１１４とが略同一平面状に形成されていても扉５は開閉することができる。開状態の扉５は床１１４に当接して支持される。

【0035】

次に、昇降装置７について説明する。図５は図１の建物玩具１の円錐屋根３３内に収容される後方側から見た昇降装置７周辺の斜視図である。昇降装置７は、巻上部７１及び回転制御部７２を有する。巻上部７１は、上下方向に配置された回転軸７１１と、回転軸７１１に対して固定されたボビン７１２と、ボビン７１２の下面に形成された歯車７１３と、を備える。

【0036】

ボビン７１２は、回転軸７１１に対して略垂直に配置された円板状の鍔部７１２ａと、鍔部７１２ａの上面から回転軸７１１の上方側へ立設する円筒状の巻上軸７１２ｂを有する。巻上軸７１２ｂは回転軸７１１の外周を囲うように離隔して配置される。巻上軸７１２ｂには、略矩形状の切欠部７１２ｃが形成されている。また巻上軸７１２ｂには、切欠部７１２ｃよりも鍔部７１２ａ側に略矩形状の開口部７１２ｄが形成される。

【0037】

切欠部７１２ｃ及び開口部７１２ｄにはエレベータ玩具２の籠４を吊支する紐体Ｌ（図２参照）を固定することができる。巻上軸７１２ｂに固定された紐体Ｌは、巻上軸７１２ｂの外周面に巻回することができる。紐体Ｌは、図示しない板部材やそらせ車等のガイドにより籠４の吊支部４５３に対して上方から垂下するようにガイドされる。図５においては紐体Ｌの図示は省略している。

【0038】

鍔部７１２ａの下面には、回転軸７１１に対して固定された歯車７１３が設けられる。また、歯車７１３の側方には回転制御部７２が配置される。回転制御部７２は回転軸７１１の径方向に対して弾発可能に両持ちバネ状に懸架された弾発部７２１と、弾発部７２１の略中央において歯車７１３側に突設された凸円弧状の係合突起７２２とを有する。

【0039】

係合突起７２２は、弾発部７２１により歯車７１３側に付勢されており、歯車７１３と歯合してボビン７１２の回転を規制することができる。使用者が回転軸７１１の先端に取り付けられたハンドル３３１を把持して回転軸７１１に予め設定された力以上の回転力を加えると、歯車７１３と係合突起７２２との歯合が解除されてボビン７１２が回転し、紐体Ｌの巻上量を調整することができる。したがって、使用者がハンドル３３１を時計回り又は反時計回りに回転操作することにより、紐体Ｌに吊支された籠４を上下動させることができる。

【0040】

次に、エレベータ玩具２の動作について説明する。図６（ａ）、図６（ｂ）、図７（ａ）及び図７（ｂ）は、図４（ａ）のエレベータ玩具２のＶＩ－ＶＩ断面における籠４とスリット８との関係を示している。ここでは、２階の床１２４付近に設けられた第一切欠部８２及び第二切欠部８３の周辺の構成を示している。左壁６２及び前壁６４の各先端部により形成されるスリット８は、２点鎖線により縁部のみを図示している。まず、籠４が１階側から上昇する際の動作について説明する。

【0041】

図６（ａ）で、エレベータ玩具２の籠４は、昇降装置７により下の階から上の階（本図の例では１階の部屋１１から２階の部屋１２）へ向かって上昇している。扉５は回動軸Ａが重心よりも後方側に位置するため自重により開方向へ付勢されている。しかし、板状の開閉制御突起５３の第一端部５３１側が内縁８１１と当接し、第二端部５３２側が内縁８１２と当接するため、開閉制御突起５３の回動軸Ａを中心とする回動が規制される。したがって、直線部８１は、開閉制御突起５３を第一端部５３１から第二端部５３２に亘る板幅が上下方向に向くように縦向き配置に規制し、扉５を閉状態に維持したまま籠４を上昇させることができる。

【0042】

図６（ｂ）で、籠４が上昇することにより、開閉制御突起５３が第一切欠部８２及び第二切欠部８３の間に移動すると、扉５が開方向へ付勢されているため、第一端部５３１が第一切欠部８２の下縁８２３付近の切り欠き空間を通過して、第二端部５３２が第二切欠部８３の下縁８３３付近の切り欠き空間に移動する。したがって、開閉制御突起５３は図６（ｂ）の時計回りの回動が許容されて、扉５が開方向へ回動する。

【0043】

図７（ａ）で、籠４がさらに上昇すると、扉５は、開方向への付勢力により開閉制御突起５３の第一端部５３１及び第二端部５３２が前後を向くように回動する。このとき、回動制御突起５４が床１２４の開口部１２６の一部から突出している支持突起１２６ａと当接するとともに、扉５の第二面５ｂの先端側が床１２４と当接するため、扉５の前方への回動は規制される。したがって、扉５の開状態の回動角度は閉状態に対して前方へ略９０度に設定される。

【0044】

図７（ｂ）で、籠４がさらに上昇すると、開閉制御突起５３の第一端部５３１側が上縁８２２と当接して開閉制御突起５３は反時計回り方向の回転力を受ける。開閉制御突起５３は第二切欠部８３の上縁８３２付近の切り欠き空間により第二端部５３２側の回動が許容される。そのため、開閉制御突起５３と接続される扉５は自重による開方向への力に抗して閉方向へ回動する。

【0045】

籠４がさらに上昇すると、図７（ｂ）に二点鎖線で示す開閉制御突起５３は、上側の直線部８１の内縁８１１，８１２により第一端部５３１から第二端部５３２に亘る板幅が上下方向を向くように縦向き配置に規制される。そのため、籠４は直線部８１により扉５を閉状態に維持したまま上昇することができる。

【0046】

次に籠４が下降する際の動作について、図６（ａ）、図６（ｂ）、図７（ａ）及び図７（ｂ）を用いて説明する。籠４は、昇降装置７により上の階から下の階（本図の例では３階の部屋１３から２階の部屋１２）へ向かって下降する。扉５は開方向へ付勢されているが、図７（ｂ）の２点鎖線で示す開閉制御突起５３の第一端部５３１側が内縁８１１と当接し、第二端部５３２側が内縁８１２と当接するため、開閉制御突起５３の回動軸Ａを中心とする回動が規制される。したがって、直線部８１は、開閉制御突起５３を第一端部５３１から第二端部５３２に亘る板幅が上下方向に向くように縦向き配置に規制し、扉５を閉状態に維持したまま籠４を下降させることができる。

【0047】

籠４が下降することにより、開閉制御突起５３が第一切欠部８２及び第二切欠部８３の間に移動すると、扉５が開方向へ付勢されているため、第一端部５３１が第一切欠部８２の上縁８２２付近の切り欠き空間に移動し、第二端部５３２が第二切欠部８３の上縁８３２付近の切り欠き空間に移動する。したがって、開閉制御突起５３は図７（ｂ）の時計回りの回動が許容されて、扉５が開方向へ回動する。

【0048】

図７（ａ）で、籠４がさらに下降すると、扉５の開方向への付勢力により開閉制御突起５３の第一端部５３１及び第二端部５３２が前後に向くように回動する。このとき、前述したように、回動制御突起５４が床１２４の開口部１２６の一部から突出している支持突起１２６ａと当接するとともに、扉５の第二面５ｂの先端側が床１２４と当接するため、扉５の前方への回動は規制される。

【0049】

図６（ｂ）で、籠４がさらに下降すると、開閉制御突起５３の第二端部５３２側が下縁８３３と当接して開閉制御突起５３は反時計回り方向の回転力を受ける。開閉制御突起５３は第一切欠部８２の下縁８２３付近の切り欠き空間により第一端部５３１側の回動が許容される。そのため、開閉制御突起５３と接続される扉５は自重による開方向への力に抗して閉方向へ回動する。

【0050】

図６（ａ）で、籠４がさらに下降すると、開閉制御突起５３は、下側の直線部８１の内縁８１１，８１２により第一端部５３１から第二端部５３２に亘る板幅が上下方向を向くように縦向きに配置に規制される。そのため、籠４は直線部８１により扉５を閉状態に維持したまま下降することができる。

【0051】

以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は以上の実施形態によって限定されることはなく、種々の態様で実施することができる。例えば、本実施形態では籠４が３階よりも上方へ移動しない構成としているため、３階に対応する第一切欠部８２の上縁８２２の高さでスリット８を終端させる構成としてもよい。

【0052】

また、昇降装置７が、モータ等の動力と、この動力を駆動又は停止させるスイッチとを備え、使用者のスイッチ操作により巻上部７１を任意の方向に回転させる構成としてもよい。この場合であっても、扉５は籠４の位置によって自動で開閉動作させることができる。

【0053】

以上のような本発明の実施形態によれば、下記の態様のエレベータ玩具及び建物玩具を提供することができる。

【0054】

第１の態様に係るエレベータ玩具は、籠と、前記籠に対して回動軸により回動可能に接続される扉であって、該回動軸の径方向の両側に跨って形成された開閉制御突起を有する扉と、前記開閉制御突起をガイドするスリットが形成される籠枠と、を備え、前記スリットは、上下に延設されて、前記開閉制御突起を縦向き配置に規制する直線部と、前記扉の閉方向側の内縁に形成される第一切欠部と、前記扉の開方向側の内縁に形成される第二切欠部とを有し、前記第二切欠部は、前記第一切欠部の上縁の上下に亘って前記第一切欠部と対向配置されるように形成される。

【0055】

この構成によれば、各階を移動中の籠４は扉５を閉状態に維持し、各階の部屋に到着した籠４の扉５が開状態となるように、扉５をスリット８により開閉制御することができる。よって、簡易な構成で扉５の自動開閉が可能なエレベータ玩具２を構成することができる。

【0056】

第２の態様に係るエレベータ玩具は、前記第一切欠部の下縁は傾斜しているとともに、前記第一切欠部の上縁は前記内縁に対して直角であり、前記第二切欠部の下縁及び上縁は傾斜している。

【0057】

この構成によれば、扉５が開状態の籠４が上昇し始めて扉５を閉じる動作、及び上の階から籠４が下降してきて扉５が開く動作を、素早く行うことができる。また、下の階から籠４が上昇してきて扉５が開く動作、及び扉５が開状態の籠４が下降し始めて扉５を閉じる動作を、比較的緩やかな速度で行うことができる。また、下の階から籠４が上昇してきて扉５が開く動作の場合では、扉５が床１２４，１３４等に向かって勢いよく衝突することを防ぐことができる。
ことができる。

【0058】

第３の態様に係るエレベータ玩具は、前記第一切欠部の底部から前記第二切欠部の底部までの内幅は、前記開閉制御突起の横向き配置を許容する幅で形成される。

【0059】

この構成によれば、扉５を閉状態に対して略９０度開くように回動させることができる。

【0060】

第４の態様に係るエレベータ玩具は、前記第一切欠部の底部の上端から前記第二切欠部の底部の下端までの上下幅と、横向きの前記開閉制御突起の上下厚みは同じである。

【0061】

この構成によれば、籠４は、各階の部屋１１～１３に到着する直前まで扉５を閉状態とし、到着すると扉５を素早く開状態とすることができる。また、扉５を開状態とした籠４が上昇又は下降し始めると、扉５を素早く閉状態とすることができる。

【0062】

第５の態様に係るエレベータ玩具は、前記籠は前記回動軸により前記扉の下端側と接続され、前記扉は前記回動軸に対して外側に重心を有する。

【0063】

この構成によれば、簡易な構成で扉５を開方向へ付勢し、スリット８により開閉制御突起５３の向きを制御することで扉５の開閉を籠４の位置に応じて制御することができる。よって、簡易な構成で扉５の自動開閉を可能とすることができる。

【0064】

第６の態様に係るエレベータ玩具は、前記籠を紐体により吊支して昇降させる昇降装置を備える。

【0065】

この構成によれば、電動機構を備えることなく簡易な構成で昇降装置７を構成することができ、遊ぶ際にも安全なエレベータ玩具２とすることができる。

【0066】

第７の態様に係る建物玩具は、第１の態様乃至第６の態様の何れかに記載のエレベータ玩具を備える。

【0067】

この構成によれば、各階を移動中の籠４は扉５を閉状態に維持し、各階の部屋に到着した籠４の扉５が開状態となるように、扉５をスリット８により開閉制御することができる。よって、簡易な構成で扉５の自動開閉が可能なエレベータ玩具２を備えた建物玩具１を構成することができる。

【符号の説明】

【0068】

１ 建物玩具 ２ エレベータ玩具
４ 籠 ５ 扉
５ａ 第一面 ５ｂ 第二面
６ 籠枠 ７ 昇降装置
８ スリット １１ 部屋
１２ 部屋 １３ 部屋
２４ 前鍔部 ３１ 屋根
３２ 陸屋根 ３３ 円錐屋根
４１ 後壁 ４２ 左壁
４３ 右壁 ４４ 床部
４５ 昇降ガイド ５３ 開閉制御突起
５４ 回動制御突起 ６１ 後壁
６２ 左壁 ６２ａ 内面
６３ 右壁 ６３ａ 内面
６４ 前壁 ６５ ガイド板
６６ 底部 ７１ 巻上部
７２ 回転制御部 ８１ 直線部
８２ 第一切欠部 ８３ 第二切欠部
１１１ 出入口 １１２ 窓
１１３ 内壁 １１４ 床
１１４ａ 逃げ部 １１４ｂ 逃げ部
１２１ 出入口 １２２ 窓
１２３ 内壁 １２４ 床
１２５ 開口部 １２６ 開口部
１２６ａ 支持突起 １３２ 窓
１３３ 内壁 １３４ 床
１３５ 天井 １３６ 開口部
１３６ａ 支持突起 ３３１ ハンドル
４１１ 窓 ４２１ 傾斜部
４２２ 上鍔部 ４２３ 下鍔部
４２４ 前鍔部 ４２４ａ 側板
４２４ｂ 段部 ４３１ 傾斜部
４３２ 上鍔部 ４３３ 鍔部
４３３ 下鍔部 ４３４ 前鍔部
４３４ａ 側板 ４４１ リブ
４４２ リブ ４４３ リブ
４４４ 切欠部 ４４５ａ 被係合腕部
４４５ｂ 被係合腕部 ４５１ 外側ガイド壁
４２５ 切欠溝 ４５１ａ 前面
４５２ 溝部 ４５２ａ 底板
４５３ 吊支部 ４５３ａ 吊支孔
５１１ 前縁壁 ５１２ 左縁壁
５１３ 右縁壁 ５２１ 係合腕部
５２２ 係合腕部 ５３１ 第一端部
５３２ 第二端部 ６２１ 傾斜部
６３１ 傾斜部 ６５１ 切欠部
７１１ 回転軸 ７１２ ボビン
７１２ａ 鍔部 ７１２ｂ 巻上軸
７１２ｃ 切欠部 ７１２ｄ 開口部
７１３ 歯車 ７２１ 弾発部
７２２ 係合突起 ８１１ 内縁
８１２ 内縁 ８２１ 底部
８２２ 上縁 ８２３ 下縁
８３１ 底部 ８３２ 上縁
８３３ 下縁
Ａ 回動軸 Ｌ 紐体

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】