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特許7158239鋼製セグメントとRC部材との接合部材、接合構造及び接合方法
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  • 特許-鋼製セグメントとRC部材との接合部材、接合構造及び接合方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】鋼製セグメントとRC部材との接合部材、接合構造及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20221014BHJP
   E21D 11/14 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
E21D11/10 C
E21D11/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018198820
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020066871
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 和義
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 直俊
(72)【発明者】
【氏名】西岡 尊寿
(72)【発明者】
【氏名】大石 憲寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 廉
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-095473(JP,A)
【文献】特開2012-162883(JP,A)
【文献】特開2012-246660(JP,A)
【文献】特開2012-172483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
E21D 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製セグメントとRC部材とを接合するための接合部材であって、
前記接合部材は少なくとも、
前記鋼製セグメントに接合される接合プレートと、
前記接合プレートの縁に沿って接合されている孔部が形成された一方の孔あき鋼板と、
前記接合プレートの側面に、前記孔あき鋼板と直交するように接合されている孔部が形成された他方の孔あき鋼板と、からなり、
前記接合部材が前記鋼製セグメント主桁の外面側に接合されており、前記RC部材の内部に埋設されており、
前記接合プレートは、前記鋼製セグメントの主桁の地山側の外面に直接開先溶接されていることを特徴とする鋼製セグメントとRC部材との接合部材。
【請求項2】
前記一方の孔あき鋼板は前記接合プレートに直交するように接合されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製セグメントとRC部材との接合部材。
【請求項3】
前記一方の孔あき鋼板が前記RC部材の軸方向に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋼製セグメントとRC部材との接合構造。
【請求項4】
前記接合プレートは面内に屈曲した平板状を呈し、前記鋼製セグメント主桁の円弧の中心に向かって該主桁に接合されていることを特徴とする請求項に記載の鋼製セグメントとRC部材との接合構造。
【請求項5】
鋼製セグメントとRC部材とを接合するための接合方法であって、
前記鋼製セグメントに接合される接合プレートと、
前記接合プレートの縁に沿って接合されている孔部が形成された一方の孔あき鋼板と、
前記接合プレートの側面に、前記孔あき鋼板と直交するように接合されている孔部が形成された他方の孔あき鋼板と、からなる接合部材のうち、
前記接合プレートを前記鋼製セグメントの主桁の地山側の外面に直接開先溶接することで、前記接合部材を前記鋼製セグメント主桁の外面側に接合し、前記RC部材の内部に埋設するように該RC部材を構築することを特徴とする鋼製セグメントとRC部材との接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にシールドトンネルにおける鋼殻としての鋼製セグメントとRC部材(鉄筋コンクリート部材)との接合部材、接合構造及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、首都圏を中心として、都市部の大深度の地下空間等を利用した高速道路や鉄道網の建設が盛んに行われている。
工事区間は重要幹線道路の直下に設けられることが多く、幹線道路の通過車両や道路下のインフラ設備、近隣の住民、近接するビル建物や鉄道等のその他の公共構造物への影響を最小限に抑える設計、施工方法が求められている。
そのため、本線トンネルには、近接への影響の少ないシールドトンネル工法が多く採用されているが、こうした工事は、ジャンクション、換気口、避難通路やダクト等の設備を切開いたトンネル側面に接続する工事を伴うため、周辺地盤の緩みへの配慮が特に重要になり、これまで様々な工法が考案,実施されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、構造物の躯体としての鋼殻とRC部材とを接合するための構造であって、鋼殻の中空部に取り付けた鉄筋継手にRC部材を形成するための鉄筋を連結し、コンクリートを打設してRC部材を形成するとともに鋼殻の中空部に一体にコンクリートを充填することにより、鋼殻の外側にRC部材を一体に接合する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、鋼製セグメントを外周面側と内周面側からRC部材で巻き込むように接合する方法であり、シールドトンネルの内空側でRC部材を構築するための鋼殻の一部切断撤去及び配筋,型枠,コンクリート打設,養生や脱型作業等を伴うため、その期間中、トンネル断面をある一定程度占有しなければならない。この場合、シールド工事や完成したシールドトンネル区間を搬送路として利用した他の関連工事等に支障を及ぼす可能性がある。
【0004】
一方、特許文献2には、鋼殻としての鋼製セグメントと、その外周面側に設けられるRC部材とを接合するための鋼製セグメントとRC部材との接合構造において、孔部が形成された孔あき鋼板が鋼製セグメントの主桁に鋼製セグメントの外周面から突出するように接合され、RC部材のコンクリートの内部に埋設されている接合構造が開示されている。
さらに、特許文献3には、部材に突設され、かつ、コンクリートに埋め込んで、部材とコンクリートとの結合を図るために使用される孔あき鋼板を有する高性能孔あき鋼板ジベルにおいて、孔あき鋼板の部材に固定される側とは反対側に溶接したフランジプレートと、孔あき鋼板の周囲に配置した帯鉄筋とを備える孔あき鋼板ジベルが記載されている。
特許文献2、3に開示されている接合構造には、曲げ、軸力、せん断力の3種類の断面力が発生する複合応力状態となるが、鋼製セグメントに接合された孔あき鋼板に対し、その複合応力に対する分担が不明確であり、設計上の取り扱いが困難となり得る。また、当該接合構造は、複数の孔部を設けた孔あき鋼板を接合部材とした簡便な構造であり、単一部材であるがゆえに接合部材の製作期間,コスト面等で有利となる一方、断面力を伝達する接合部材自体に孔を設けた、断面欠損を伴う構造であるため、特に高耐力が求められる大断面シールドトンネルへの適用には、部材の大きさを過度に大きくしたり、接合箇所を多くしなければ対応できない等の課題も想定される。
特許文献2、3の接合構造では、主部材である鋼製セグメントに孔あき鋼板ジベルを直接設置し、そのジベルをRC部材に埋設するため、鋼製セグメントとRC部材との界面で部材軸が一致せず、応力伝達機構が不明確である。鋼製セグメントとRC部材との界面付近の狭い領域でずれせん断力と支圧応力の複合応力が生じ、応力が局所化しやすいと想定される。孔あき鋼板ジベルはRC部材の軸心付近に設置されるため、曲げに対して鋼製セグメントとRC部材の界面が離間し易く、比較的剛性は小さいと想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-47968号公報
【文献】特開2012-246660号公報
【文献】特開2014-118723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鋼製セグメントで構成されるトンネル内空側の作業に支障を及ぼすことなく、トンネル外面側へRC部材を接合することが可能であり、合理的かつ簡便な評価手法の適用が可能な接合部材、接合構造及び接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の鋼製セグメントとRC部材との接合部材は、鋼製セグメントとRC部材とを接合するための接合部材であって、前記接合部材は少なくとも、
前記鋼製セグメントに接合される接合プレートと、前記接合プレートの縁に沿って接合されている孔部が形成された一方の孔あき鋼板と、前記接合プレートの側面に、前記孔あき鋼板と直交するように接合されている孔部が形成された他方の孔あき鋼板と、からなり、前記接合部材が前記鋼製セグメント主桁の外面側に接合されており、前記RC部材の内部に埋設されており、前記接合プレートは、前記鋼製セグメントの主桁の地山側の外面に直接開先溶接されていることを特徴とする。
前記一方の孔あき鋼板は前記接合プレートに直交するように接合されていても良い。
【0008】
また、本発明の鋼製セグメントとRC部材との接合構造は、前記一方の孔あき鋼板が前記RC部材の軸方向に配置されており、前記接合プレートは面内に屈曲した平板状を呈し、前記鋼製セグメント主桁の円弧の中心に向かって該主桁に接合されていても良い。さらに、前記孔部には、鉄筋が挿通されていても良い。
【0009】
また、本発明の鋼製セグメントとRC部材との接合方法は、鋼製セグメントとRC部材とを接合するための接合方法であって、前記鋼製セグメントに接合される接合プレートと、 前記接合プレートの縁に沿って接合されている孔部が形成された一方の孔あき鋼板と、前記接合プレートの側面に、前記孔あき鋼板と直交するように接合されている孔部が形成された他方の孔あき鋼板と、からなる接合部材のうち、前記接合プレートを前記鋼製セグメントの主桁の地山側の外面に直接開先溶接することで、前記接合部材を前記鋼製セグメント主桁の外面側に接合し、前記RC部材の内部に埋設するように該RC部材を構築することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造によれば、主部材である接合プレートに、互いに直交する孔あき鋼板が接合されているので、接合部に作用する曲げ、軸力に対しては、接合プレートの縁に沿って接合されている一方の孔あき鋼板が、せん断力に対しては、接合プレートの側面に前記一方の孔あき鋼板と直交するように接合されている他方の孔あき鋼板が、それぞれ分担するため、荷重の伝達が明確になる。すなわち、接合部に生じる複合応力に対し、従来の重ね合わせの原理での設計が可能となるため、設計上の取り扱いが容易になる。
また、セグメントに直接接合される主部材である接合プレートと、RC部材との荷重の伝達を担う孔あき鋼板を別部材とすることで、高耐力が求められる大断面シールドトンネルとRC部材との接合部であっても、孔あき鋼板に求められるずれせん断耐力とは独立して、接合する鋼製セグメントの主桁と同等以上の剛性を有する接合プレートを任意に設計することができ、孔あき鋼板の孔加工も容易になる等、合理的な接合部材及び接合構造を比較的容易に計画することが可能となる。
主部材である接合プレートを、接合プレートの桁高の1.5倍以上RC部材の内部に埋め込ませることで高い剛性を確保でき、応力を円滑に伝達することができる。また、接合部材を鋼製セグメント残置側に寄せた位置に設置することで、鋼製セグメントとRC部材の界面離間を抑制することも可能となる。
前記一方の孔あき鋼板がRC部材の軸方向に配置されていることで、RC部材と該孔あき鋼板、及び該孔あき鋼板と接合プレートとの断面力の伝達方向に捻じれが生じず、荷重伝達をより明確にできる接合構造を確保できる。
また、特に、鋼製セグメントに対して接合プレートの設置角度が浅い場合、接合プレートは面内に屈曲した平板状を呈し、鋼製セグメント主桁の円弧の中心に向かって該主桁に接合されていれば、溶接部(鋼製セグメントの主桁と接合プレートとの接合部)の必要耐力を確保しつつ溶接長、溶接量を低減できるので合理的である。
さらに、孔部に鉄筋が挿通されていることで、孔単体よりも大きなずれせん断耐力を確保できる。
【0011】
本発明の鋼製セグメントとRC部材との接合方法によれば、鋼製セグメントで構成されるトンネル内空側の作業に支障を及ぼすことなく、トンネル外面側へRC部材を接合することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造の側面図である。
図2】本発明の鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造の平面図である(図1のA-A矢視)。
図3】本発明の鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造の断面図である(図1のB-B矢視)。
図4】本発明の屈曲部を有する接合プレートを用いた鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造の側面図である。
図5】本発明の孔部に鉄筋が挿通された鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造の俯瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<接合部材及び接合構造>
図1に、本発明の鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造の側面図と、図2に、図1のA-A矢視である本発明の鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造の平面図と、図3に、図1のB-B矢視である本発明の鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造の断面図をそれぞれ示す。
図1より、本発明の接合部材1は、平板状からなる接合プレート11を主部材とし、対向するように接合プレート11の上下辺縁に沿って複数の孔部15,15・・・(図2参照のこと)を有する矩形形状からなる部材軸方向の孔あき鋼板12,12と、部材軸方向の孔あき鋼板12に直交するように接合プレート11の側面に所定の間隔を開けて接合されている複数の孔部15,15・・・(図3参照のこと)を有する同じく矩形形状からなる部材軸直角方向の孔あき鋼板13,13・・・とからなる。なお、本実施形態の接合部材1は、予め工場で製作された鋼製のプレキャスト部材であるが、必要に応じて、現地で製作されても良い。
なお、主部材である接合プレートを、接合プレートの桁高の1.5倍以上RC部材の内部に埋め込ませることで高い剛性を確保でき、応力を円滑に伝達することができる。また、接合部材を鋼製セグメント残置側に寄せた位置に設置することで、鋼製セグメントとRC部材の界面離間を抑制することも可能となる。
【0014】
図1より、鋼製セグメント2は、トンネルの外殻を成す主桁21と、主桁21に直交し、トンネル中心に向かって配置されている縦リブ23,23・・・と、各鋼製セグメント2間を接続するために、鋼製セグメント2の端部に縦リブ23と同様な形態で配置されている継手板22と、鋼製セグメント2の外縁を覆うように配置されているスキンプレート24とから形成されている。
図2,3より、本実施形態の鋼製セグメント2の主桁21は、鋼製セグメント2の端部に配置されている2つの外主桁211,211と中主桁212との3主桁からなる。
図1に示す接合部材1は、スキンプレート24の一部を切断して露出させた外主桁211と中主桁212の外面側に接合プレート11を開先溶接による全強溶接(溶接部16,16・・・)を行うことで、鋼製セグメント2に接合されている。接合プレート11の厚さは、主桁21の厚さを超えないものとする。
トンネル軸方向に隣り合う鋼製セグメント2,2同士は、外主桁211,211に設けられた不図示のボルト孔を介してリング継手25,25・・・により一体に接続されるため、接合プレート11も隣り合う外主桁211,211の両方にそれぞれ接合プレート11,11同士が背合わせで密着した状態で接合されている。接合部材接合作業の位置決め等の目的で、接合プレート11,11に設けられた不図示のボルト孔を介して、固定用ボルト14,14,14,14により接合されている。
【0015】
図1より、接合部材1は、鋼製セグメント2に接合された状態で、RC部材3の内部に埋設されたことにより、鋼製セグメント2とRC部材3とが接合された接合構造JSが形成される。
実施形態では、RC部材3の主鉄筋の方向である部材軸方向(主断面直角方向)に、部材軸方向の孔あき鋼板12,12が配置されている。すなわち、接合プレート11の強軸がRC部材3の中立軸方向と同じ向きに配置されていることになる。
【0016】
本実施形態の接合構造JSにより、鋼製セグメント2で発生した断面力のうち、曲げモーメントM及び軸力Nは接合プレート11から部材軸方向の孔あき鋼板12,12を介して、RC部材3に伝達され、せん断力Sは接合プレート11から部材軸直角方向の孔あき鋼板13,13・・・を介してRC部材3に伝達される。RC部材3で発生した断面力は、この逆の経路を辿って鋼製セグメント2に伝達される。なお、各孔あき鋼板12,13からRC部材3への断面力の伝達は、孔部に介在するコンクリートのずれせん断によってなされる。
【0017】
図4に、本発明の屈曲部を有する接合プレートを用いた鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造の側面図を示す。
トンネル外面の上方又は下方付近に接合プレート11をRC部材3の部材軸方向に平行に鋼製セグメント2に接合する場合、接合プレート11の桁高に対して、溶接部16の溶接長さが極端に長くなる。したがって、矩形板状の接合プレート11に屈曲部111を設け、鋼製セグメント2の主桁21の円弧中心に向かって主桁21に接合されていれば、溶接部16の必要耐力を確保しつつ溶接長、溶接量を低減できる。
【0018】
図5に、本発明の孔部に鉄筋が挿通された鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造の俯瞰図を示す。
鉄筋17,17・・・が、対抗する部材軸方向の孔あき鋼板12,12及び部材軸直角方向の孔あき鋼板13,13・・・の各孔部15,15・・・を貫通するように挿通された状態でRC部材3内部に埋設されている。
【0019】
<接合方法>
本発明の鋼製セグメント2とRC部材3とを接合するための接合方法は、鋼製セグメント2の主桁21の外面側に前述した接合部材1を開先溶接による全強溶接(図1~4の溶接部16参照のこと)により接合し、接合部材1をRC部材3の内部に埋設するようにRC部材3を構築することである。なお、本実施形態の接合部材1は、予め工場で製作されたプレキャスト部材であるが、必要に応じて、現地で製作されても良い。
【0020】
本実施形態の鋼製セグメントとRC部材との接合部材及び接合構造によれば、主部材である接合プレートに、互いに直交する孔あき鋼板が接合されているので、接合部に作用する曲げ、軸力に対しては、接合プレートの縁に沿って接合されている一方の孔あき鋼板が、せん断力に対しては、接合プレートの側面に前記一方の孔あき鋼板と直交するように接合されている他方の孔あき鋼板が、それぞれ分担するため、荷重の伝達が明確になる。すなわち、接合部に生じる複合応力に対し、従来の重ね合わせの原理での設計が可能となるため、設計上の取り扱いが容易になる。
また、セグメントに直接接合される主部材である接合プレートと、RC部材との荷重の伝達を担う孔あき鋼板を別部材とすることで、高耐力が求められる大断面シールドトンネルとRC部材との接合部であっても、孔あき鋼板に求められるずれせん断耐力とは独立して、接合する鋼製セグメントの主桁と同等以上の剛性を有する接合プレートを任意に設計することができ、孔あき鋼板の孔加工も容易になる等、合理的な接合部材及び接合構造を比較的容易に計画することが可能となる。
主部材である接合プレートを、接合プレートの桁高の1.5倍以上RC部材の内部に埋め込ませることで高い剛性を確保でき、応力を円滑に伝達することができる。また、接合部材を鋼製セグメント残置側に寄せた位置に設置することで、鋼製セグメントとRC部材の界面離間を抑制することも可能となる。
前記一方の孔あき鋼板がRC部材の軸方向に配置されていることで、RC部材と該孔あき鋼板、及び該孔あき鋼板と接合プレートとの断面力の伝達方向に捻じれが生じず、荷重伝達をより明確にできる接合構造を確保できる。
また、特に、鋼製セグメントに対して接合プレートの設置角度が浅い場合、接合プレートは面内に屈曲した平板状を呈し、鋼製セグメント主桁の円弧の中心に向かって該主桁に接合されていれば、溶接部(鋼製セグメントの主桁と接合プレートとの接合部)の必要耐力を確保しつつ溶接長、溶接量を低減できるので合理的である。
さらに、孔部に鉄筋が挿通されていることで、孔単体よりも大きなずれせん断耐力を確保できる。
【0021】
本実施形態の鋼製セグメントとRC部材との接合方法によれば、鋼製セグメントで構成されるトンネル内空側の作業に支障を及ぼすことなく、トンネル外面側へRC部材を接合することが可能となる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、主桁の数は、中主桁の無い2主桁であっても良く、ずれ止めは孔あき鋼板ジベルに限らず、頭付きスタッドや形鋼ジベルでも良い。また、鋼製セグメントはシールドトンネル以外の鋼殻でも良い。
【符号の説明】
【0023】
JS 接合構造
M 曲げモーメント
N 軸力
S せん断力
1 接合部材
11 接合プレート
111 屈曲部
12 部材軸方向の孔あき鋼板
13 部材軸直角方向の孔あき鋼板
14 固定用ボルト
15 孔部
16 溶接部
17 鉄筋
2 鋼製セグメント
21 主桁
211 外主桁
212 中主桁
22 継手板
23 縦リブ
24 スキンプレート
25 リング継手
3 RC部材
図1
図2
図3
図4
図5