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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ID媒体の管理方法及び管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20221014BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20221014BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G06K19/07 220
B65G1/137 A
G06K7/10 268
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018233712
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020095529
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】500352063
【氏名又は名称】株式会社デンソーエスアイ
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 頼明
(72)【発明者】
【氏名】山鍬 靖
(72)【発明者】
【氏名】石田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】仲木 健
(72)【発明者】
【氏名】山内 雅広
(72)【発明者】
【氏名】清水 博長
(72)【発明者】
【氏名】赤松 慎也
(72)【発明者】
【氏名】黒田 純司
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-293173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
G06K 19/07
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象となる一の個体に関連付けられた複数のID媒体に記録された情報を、読み取り装置により読み取って管理する方法であって、
前記複数の各ID媒体には、当該ID媒体が関連付けられた前記一の個体の識別情報と、当該各ID媒体自体を判別可能な判別情報が記録されており、
前記読み取り装置には、前記識別情報及び判別情報に対応する対比情報が記録されており、
前記読み取り装置において、
前記複数の全てのID媒体に記録された前記識別情報及び判別情報を読み取り、
読み取られた前記識別情報及び判別情報を、前記対比情報と比較し、
前記対比情報に対応する判別情報が読み取られなかったID媒体を、不良ID媒体として抽出する
ことを特徴とするID媒体の管理方法。
【請求項2】
前記複数のID媒体が取り付けられた個体が複数備えられる場合に、
前記読み取り装置において、
前記複数の各個体に取り付けられた、全ての前記ID媒体に記録された前記識別情報及び判別情報を読み取る
ことを特徴とする請求項1に記載のID媒体の管理方法。
【請求項3】
前記判別情報が、視覚により判別可能な情報を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のID媒体の管理方法。
【請求項4】
前記判別情報が、色情報を含む
ことを特徴とする請求項3に記載のID媒体の管理方法。
【請求項5】
前記複数の各ID媒体は、
外表面の少なくとも一部に、前記判別情報に対応する情報が表示されている
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のID媒体の管理方法。
【請求項6】
前記不良ID媒体として抽出されたID媒体を、
当該ID媒体の外表面に表示された前記判別情報に対応する情報を目視により判別して取り除き、良品のID媒体と交換する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のID媒体の管理方法。
【請求項7】
前記ID媒体が、
RFタグ,一次元コード,二次元コードのいずれか一つ、又は2種以上の組み合わせからなる
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のID媒体の管理方法。
【請求項8】
取付対象となる一の個体に関連付けられた複数のID媒体に記録された情報を読み取って管理する読み取り装置を備えたID媒体管理システムであって、
前記複数の各ID媒体には、当該ID媒体が関連付けられた前記一の個体の識別情報と、当該各ID媒体自体を判別可能な判別情報が記録されており、
前記読み取り装置は、
前記識別情報及び判別情報に対応する対比情報を記録した記憶手段と、
前記複数の全てのID媒体に記録された前記識別情報及び判別情報を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段で読み取られた前記識別情報及び判別情報を、前記対比情報と比較する比較手段と、
前記対比情報に対応する判別情報が読み取られなかったID媒体を、不良ID媒体として抽出する抽出手段と、を備える
ことを特徴とするID媒体の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばRFタグやバーコード,二次元コードなどで構成されるID媒体を管理するための方法及びシステムに関し、特に、取付対象となる個体に複数のID媒体が取り付けられる場合におけるID媒体の管理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、任意の物品や対象物に対して、当該物品や対象物に関する所定情報(個体識別情報)を読み書き可能に記憶したICチップを内蔵した所謂RFタグが、個体識別用のID媒体として広く使用されている。
RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグ,ICタグ,非接触タグ等とも呼ばれ、ICチップと無線アンテナを備えた電子回路が樹脂フィルム等の基材によって封止・コーティングされた所謂インレイ(インレット)が、タグ(荷札)状に形成されてなる超小型の通信端末であり、読取・書込装置(リーダ・ライタ)によってタグ内のICチップに所定の情報が無線で読み取りや書き込み,読み書き(リードオンリー,ライトワンス,リード・ライト)が行えるようになっている。
【0003】
そして、このようなRFタグに所定の情報を書き込んで任意の物品,対象物等に取り付けることにより、RFタグに記録された情報がリーダ・ライタによりピックアップされ、ICチップに記録された情報を、当該物品に関する所定情報、例えば、当該物品の名称や識別記号,内容物,成分,管理者,使用者,使用状態,使用状況などの種々の情報を、個体識別情報として認識,出力,表示,更新等させることができる。
このようなRFタグは、一般にICチップのメモリに数百ビット~数キロビットのデータが記録可能であり、物品等に関する情報としては十分な情報量を記録でき、また、読取・書込装置側とは非接触で通信が行えるため接点の磨耗や傷、汚れ等の心配もなく、さらに、タグ自体は無電源にすることができるため対象物に合わせた加工や小型化・薄型化が可能となる。このため、RFタグは、どのような対象物にも場所を取らずに容易に装着でき、対象物品の個体識別用のID媒体として便利に使用できることから、近年広く普及している。
【0004】
ところが、RFタグは、ICチップとアンテナをフィルムコーティングしたインレイそのものや、インレイを薄型の筐体やホルダなどに収納しただけの構造であるため、そのままの状態では、外部から加わる衝撃等によって故障や誤動作,破損などが生じる原因となる。
例えば、貨物用のパレットやスキッドなどに取り付けられるID媒体は、運搬用のフォークリフトの爪や他のパレット,構造物などが接触・衝突等することによって、恒常的に物理的,機械的な外力・衝撃が加わるおそれのある状態にあり、そのようなパレット等の対象物に取り付けられて用いられるID媒体の場合、外力が加わることによって容易に脱落や損傷・破壊等してしまい、情報の読み落としが生じるおそれがあった。
【0005】
このような破損等が生じたID媒体の読み落としを検知・判別する方策としては、例えば、事前に読み取るべき個体情報リストを準備して、リストとID媒体の読み取り情報とを比較する方法があり得る。しかしながら、このような方法では、例えば海外からの返却パレットなどは、海上コンテナ毎のリストしか存在せず、しかも、読み落としが検知された場合でも膨大な数(例えば100パレット以上)の中から、読み落としのあった個体を探さなければならないことから、特に大量の個体を処理する運輸・搬送現場などにおいては、現実的な方策とは言えなかった。
【0006】
また、他の方策として、ID媒体の自動読み取りゲート(読み取り装置)を通過する個体の数量をカメラで監視し、個体数量と読み取りが行われたID媒体数とを比較する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、例えばID媒体の取付対象となる専用パレットなどについて、色や形状等が様々である場合には、個体の数量識別が困難となる上、画像処理システムなどのID媒体の検知以外の費用が嵩む等の問題があった。
さらに、別の方策として、ID媒体が取り付けられた個体を、一つずつゲートを通過させる方法や、ハンディリーダを用いて個別に一つずつID媒体の読み取りを確認する方法もあり得るが、これも非常に多くの工数がかかってしまい、特に大量のパレット等を取り扱う現場では、現実的な対応とは言えなかった。
【0007】
ここで、特に外力が加わり易い環境下で使用されるID媒体について、脱落・破損等に備えて、一つの個体(パレット等)に対して、複数のID媒体を取り付けるようにして、いずれかのID媒体が破損等しても、他のID媒体によって情報の読み取り等の機能を確保・保証することが提案されている。
例えば、特許文献1には、物品搬送用のパレットに同一の情報を書き込んだ複数のRFタグから読み出された情報のうち、過半数の一致する情報に基づいて処理を進めることにより、一部のRFタグに不良が発生しても、処理を続行させるという提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-067683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、単に一つの個体に取り付けるID媒体の数を増やすというだけでは、管理対象となるID媒体の数がそれだけ増加することになり、ID媒体の故障や破損,脱落等の検知が更に難しくなるという問題が生じる。
また、上述した特許文献1の提案では、複数のRFタグを単一の支持ホルダに嵌め込むことで、取付対象となるパレットの一つの側面の同一箇所に集中的に配置するようになっているため、例えばフォークリフトの爪などが接触等した場合には、複数のRFタグが同時に破損・脱落等してしまうおそれがあった。
さらに、特許文献1の提案では、RFタグから不良情報を出力させることで、不良が発生したRFタグを特定できるとしているが、同一箇所に複数配置されたRFタグのいずれに不良が発生したか否かは、RFタグの外観を目視しただけでは判別が困難であり、不良が発生したRFタグの特定作業が煩雑乃至困難になるという問題もあった。
【0010】
本発明は、上記のような従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、取付対象となる個体に対して複数のID媒体を取り付けつつ、不良等が発生したID媒体を確実に判別・抽出するとともに、抽出された不良ID媒体を、外観から目視によって容易に識別・特定することができる、特に大量のパレット等が処理される運輸・搬送等の現場で使用される個体の識別に好適な、ID媒体の管理方法及び管理システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るID媒体の管理方法は、取付対象となる一の個体に関連付けられた複数のID媒体に記録された情報を、読み取り装置により読み取って管理する方法であって、前記複数の各ID媒体には、当該ID媒体が関連付けられた前記一の個体の識別情報と、当該各ID媒体自体を判別可能な判別情報が記録されており、前記読み取り装置には、前記識別情報及び判別情報に対応する対比情報が記録されており、前記読み取り装置において、前記複数の全てのID媒体に記録された前記識別情報及び判別情報を読み取り、読み取られた前記識別情報及び判別情報を、前記対比情報と比較し、前記対比情報に対応する判別情報が読み取られなかったID媒体を、不良ID媒体として抽出する構成としてある。
【0012】
また、本発明に係るID媒体の管理システムは、取付対象となる一の個体に関連付けられた複数のID媒体に記録された情報を読み取って管理する読み取り装置を備えたID媒体管理システムであって、前記複数の各ID媒体には、当該ID媒体が関連付けられた前記一の個体の識別情報と、当該各ID媒体自体を判別可能な判別情報が記録されており、前記読み取り装置は、前記識別情報及び判別情報に対応する対比情報を記録した記憶手段と、前記複数の全てのID媒体に記録された前記識別情報及び判別情報を読み取る読み取り手段と、前記読み取り手段で読み取られた前記識別情報及び判別情報を、前記対比情報と比較する比較手段と、前記対比情報に対応する判別情報が読み取られなかったID媒体を、不良ID媒体として抽出する抽出手段と、を備える構成としてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、取付対象となる個体に対して複数のID媒体を取り付けつつ、不良等が発生したID媒体を確実に判別・抽出できるとともに、抽出された不良ID媒体を、外観から目視によって容易に識別・特定することができるようになる。
これによって、特に大量のパレット等が処理される運輸・搬送等の現場において、外部から物理的な力や衝撃が加わることの多いパレットやスキッド等に用いられるID媒体の管理に好適な管理方法及び管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1(a)(b)】(a)は、本発明の一実施形態に係るID媒体の管理方法及び管理システムにおいて、ID媒体を取り付ける個体となるパレットの使用状態を示す説明図、(b)は、同じくID媒体が取り付けられたパレットの外観斜図である。
図1(c)(d)】(c)は、図1(b)に示したパレットの装着部に装着されたID媒体の外観図、(d)は、同じくID媒体が取り付けられた個体となるカゴ付きの金属製パレットの外観斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るID媒体の管理方法及び管理システムにおける、パレットに取り付けられたID媒体と読み取り装置との関係を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)はパレットの進行方向から見た正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るID媒体の管理方法及び管理システムにおける、(a)は読み取り装置の機能ブロック図、(b)は出力手段の表示画面の一例を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係るID媒体の管理方法における手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るID媒体の管理方法及び管理システムの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るID媒体の管理方法を実施するための管理システムの構成要素を示しており、(a)はID媒体を取り付けたパレット(個体)の使用状態を示す説明図、(b)はID媒体が取り付けられたパレットの外観斜図、(c)は(b)に示したパレットの装着部に装着されたID媒体の外観図、(d)はID媒体が取り付けられた個体となるカゴ付きの金属製パレットの外観斜視図である。
また、図2は、本実施形態に係るID媒体の管理方法を実施するための管理システムにおける、パレットに取り付けられたID媒体と読み取り装置との関係を模式的に示す説明図である。
【0016】
これらの図に示すように、本実施形態に係るID媒体の管理方法・管理システムは、ID媒体の取付対象となる一の個体に関連付けられた複数のID媒体に記録された情報を、読み取り装置により読み取って管理する方法・システムとなっている。
具体的には、ID媒体が取り付けられることによって個体識別が行われる個体となるパレット10に対して、ID媒体となるRFタグ20が複数取り付けられ、RFタグ20が取り付けられたパレット10が、フォークリフト100によって運搬・搬送される。
そして、フォークリフト100が読み取り装置50に近接してその近傍を通過することで、フォークリフト100に搭載された一又は二以上のパレット10に取り付けられているRFタグ20に記録されている情報が読み取り装置50によって読み取られるようになっている。
以下、このような本実施形態に係るID媒体の管理方法・管理システムを実施するための各部の詳細について説明する。
【0017】
[パレット]
パレット10は、スキッドとも呼ばれる、運搬対象となる物や荷物を搭載して運搬・搬送される際に使用される荷役台であり、ID媒体が関連付けられて個体識別管理が行われる、本発明に係る個体を構成している。
具体的には、パレット10は、図1(a)及び(b)に示すように、運搬対象物を搭載可能な搭載面となる矩形状の上面デッキ10a及び下面デッキ10bと、上下面デッキ10a,10bの間にフォークリフト100の爪が挿入される空間を形成する複数の桁10cを備えており、複数の各桁10cの間にフォークリフト100の爪が挿入されて、使用・運搬されるようになっている。
【0018】
上下面デッキ10a,10bは、いずれを搭載面として使用できるように同形・同大に形成され、また、パレット10を上下方向に重ねて積層できるようになっている。
桁10cは、パレット10の側面の二方向又は四方向からフォークリフト100の爪が挿入可能な空間を形成している。
このようなパレット10は、木製,合成樹脂製,金属製などがあり、耐久性などの面からは金属製パレットが好適に使用される。本実施形態のパレット10も、金属製パレットが用いられることを想定している。また、図1(d)に示すような、搭載物の転落防止などのためのカゴ付きの金属製パレット200が用いられることもある。
そして、本実施形態では、パレット10(200)の異なる複数の側面の所定位置に、RFタグ20を取り付けるための装着部11が備えられるようになっている。
【0019】
装着部11は、後述する取付体30を介してRFタグ20が装着される装着領域であり、本実施形態では、図1(b)に示すように、フォークリフト100の爪が挿入されることが想定されていない(挿入される可能性の低い)、パレット10の側面のほぼ中心において、上下面デッキ10a,10bの間の空間を利用して構成されるようになっている。
このような装着部11は、パレット10の4方向の側面のうち、少なくとも対向する二つの側面に設けることができ、必要に応じて、パレット10の任意の複数(三つ又は四つ)の側面に設けることもできる。また、パレット10の同一側面において、複数の装着部11を設けることも可能である。
本実施形態では、パレット10の搬送方向の左右の二つの側面に装着部11が備えられて、一つのパレット10に対して、二つのRFタグ20が取り付けられるようになっている(図2参照)。
【0020】
このような装着部11を備えることによって、RFタグ20は、パレット10の上下面デッキ10a,10bの内部に格納,埋設等されることなく、また、特別な保護構造等を必要とすることなく、パレット10に装着・取り付けることができる。
そして、このような装着部11に装着されたRFタグ20は、図2に示すように、フォークリフト100によって積層・搬送されて、例えばトラックや倉庫などに格納される途中において、読み取り装置50によって構成されるゲートを通過することによって、パレット10の進行方向左右の両側面に位置するRFタグ20が、読み取り装置50のアンテナ51によって検知・交信されて、RFタグ20に記録された情報(識別情報・判別情報)が自動で読み取られるようになる。
【0021】
また、装着部11に装着されたRFタグ20は、図1(b)及び(c)に示すように、パレット10の側面から視認可能な状態で装着部11に配置されるようになる。これによって、RFタグ20は、パレット10の外部から一目でその存在を視認・確認できるように、RFタグ20にバックアップ用のバーコードや二次元コード等がある場合にもそれらを容易かつ確実に読み取り等することができ、さらに、RFタグ20の着脱・交換等も容易に行えるようになる。
また、パレット10の装着部11の近傍等に、特に図示しないが、RFタグ20に書き込まれる識別情報(パレットID)に対応する文字や数字,記号等を表示・印字することにより、パレット10の外部から視認により所定の識別情報を確認できるようにすることもできる。
【0022】
また、装着部11に装着・配置されるRFタグ20は、パレット10の外周面より内部に納まるように装着部11に配置されるようになっている(図1(b)及び(c)参照)。
このような構成により、装着部11に装着されたRFタグは、パレット10の上下面デッキ10a,10bの外縁よりもパレット内側に位置することになり、パレット10の上下方向からRFタグ20に対して他の物体等が接触したり衝突したりすることがなくなり、RFタグ20は装着部11の内部において確実に保護・ガードされることになる。
【0023】
なお、装着部11に装着されるRFタグ20の配置位置は、パレット10の上下面デッキ10a,10bの外縁よりもパレット内側であって、上述したように、パレット10の外部からのRFタグ20の視認性や着脱性,バーコード等の読取性等が損なわれない適切な位置に配置される。
例えば、パレット10の外周から約2~3cm程度パレット内側の位置にRFタグ20が配置されるようにすることが好ましい。
また、上述した図2では、本発明の理解を容易にするための説明の便宜上、パレット10の側面から外方にRFタグ20が大きく突出するように描いているが、RFタグ20は、装着部11の内部に収納された状態で装着されるので、パレット10の側面に突出しないように構成・配置することができるものである。
【0024】
[RFタグ]
上記のようなパレット10の装着部11に装着されるRFタグ20は、読み取り装置50(リーダ・ライタ)との間で無線による所定の情報の読み取りや書き込み,読み書きが行われる、本発明に係るID媒体を構成している。
ここで、RFタグ20は、例えばリードオンリー型,ライトワンス型,リード・ライト型等の種類がある。
具体的には、RFタグ20は、ICチップと、ICチップが搭載されるループ回路アンテナと、ループ回路アンテナの両側に伸びるダイポールアンテナを備えたインレイと、インレイを収納するケース・筐体などで構成されている。
【0025】
ここで、RFタグ20が備えるICチップは、メモリ等の半導体チップからなり、例えば数百ビット~数キロビットのデータが記録可能となっている。
ICチップには、アンテナが接続され、アンテナの一部がチップ周囲を囲むようにループ状の回路導体として接続されてループ回路部を構成しており、ループ回路部を経由して、ICチップの左右両側や片側にアンテナが接続されている。
そして、ループ回路部によってICチップのインピーダンス整合が図られつつ、アンテナを介して図示しないリーダ・ライタとの間で無線通信による読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)が行われ、ICチップに記録されたデータが認識されるようになっている。
【0026】
RFタグ20(ICチップ)に記録されるデータとしては、例えば、商品の識別コード、名称、重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限等、任意のデータが記録可能であり、また、書換も可能である。
そして、本実施形態では、RFタグ20に格納・記録される情報として、そのRFタグ20が関連付けられているパレット10の識別情報と、そのRFタグ20自体を判別可能な判別情報が記録されるようになっている。
【0027】
具体的には、RFタグ20に記憶される識別情報としては、RFタグ20が取り付けられるパレット10を識別するためのパレットID,パレット名,パレットに搭載される搬送品情報(搬送品名・搬送先等)などがある。
また、RFタグ20に記憶される判別情報としては、そのRFタグ20を識別するためのタグID,タグに割り当てられた色を示す色識別情報(赤・緑などを示す色識別コード)などがある。
これらの識別情報・判別情報は、本システムにおけるID媒体の管理・運用を行う際に、予め複数の各RFタグ20に対して記録・登録させるようにする。
【0028】
さらに、RFタグ20は、内部にインレイを収納したケース・筐体の外観・表面の少なくとも一部に、そのRFタグ20に割り当てられている判別情報(色識別コード)に対応した情報(赤・緑などの色)が、着色・彩色等によって表示されるようになっている。
例えば、RFタグ20は、インレイを収納する筐体を、色識別コードに対応した色の樹脂製のケース等によって構成することができる。
また、汎用のケース等の表面に、色識別コードに対応した色のラベルを貼付したり、ケース表面に当該色の塗料を塗布するようにしても良い。
【0029】
このようにRFタグ20の判別情報として、そのRFタグ20に色を割り当て、その色を示す色識別コードをRFタグ20に記録させるとともに、RFタグ20の外観(筐体・ケース)に対応する色が表示されることによって、同一のパレット10に対して、同一のパレットID・タグIDが記録され、色(色識別コード・外観色)のみが異なる複数(2つ)のRFタグ20を取り付けることができる。
これによって、読み取り装置50において、同一のパレットID・タグIDが読み取られたRFタグ20について、複数の色識別情報が全て読み取られているか否かを検知・判定することで、いずれかの色識別情報が読み取られていない場合には、対応するパレットID・タグIDのRFタグ20のいずれかに読み落としが発生したことを抽出・判別することができる。
【0030】
そして、読み落としが発生したRFタグ20は、読み取られなかった色識別情報に対応する色が表面に表示されていることから、パレット10を目視で確認することにより、該当する色のRFタグ20を容易に特定することができるようになる。
これによって、一つのパレット10に取り付けられた複数(2つ)のRFタグ20のうち、いずれかに読み落としが発生した場合には、該当するRFタグ20を、その外観色を目視で確認することで、故障や破損・脱落等が生じているRFタグ20を容易に特定でき、不良のRFタグ20の良品のRFタグ20への交換等を迅速に行えるようになる。
【0031】
なお、RFタグ20に記録する色識別情報と外観に着色等によって表示する色は、例えば「赤・緑」のように、目視により確実に識別できる異なる色に設定することが好ましい。但し、識別可能な複数の色であれば、特に「赤と緑」に限定されるものではない。
また、以上のような色に加えて、あるいは色に代えて、同一のパレットID・タグIDが記録された複数のRFタグ20を判別できる他の情報を判別情報として用いることもできる。例えば、同一のパレットID・タグIDが記録された複数のRFタグ20に対して、「タグ1・タグ2」や「タグ右・タグ左」といった情報を記録し、RFタグ20の筐体・ケースに、対応する文字を印字・印刷し、またラベルやシール等を貼付することができる。
このようにしても、読み落としが発生したRFタグ20を、外観の目視によって容易に特定することが可能となる。
このように、判別情報は、RFタグ20の表面に表示することにより、視覚により判別可能な情報(色・文字・数字・記号等)であれば、任意の情報を採用して判別情報といてRFタグ20に記録・表示することができる。
【0032】
RFタグ20で使用される通信周波数帯としては、例えば所謂UHF帯に属する860~960MHz帯を対象とすることができる。
一般にRFタグで使用される周波数帯としては、例えば、135kHz以下の帯域、13.56MHz帯、UHF帯に属する860~960MHz帯、2.45GHz帯等の数種類の周波数帯がある。そして、使用される周波数帯によって無線通信が可能な通信距離が異なるとともに、周波数帯によって最適なアンテナ長などや配線パターンが異なってくる。
【0033】
例えば、取付対象となるパレット10の邪魔とならず、大きな設置スペース(装着部11)も必要ないよう小型化されたRFタグ20であれば、波長が短くアンテナが小型化できるUHF帯を対象とすることができ、例えば860MHz帯や920MHz帯を対象とすることができ、これらの周波数帯において良好な通信特性が得られるような取り付け構造を採用することが可能となる。
但し、RFタグ20の大きさの制約等がなければ、本発明に係る技術思想自体は、RFタグ20の通信周波数は、特定の周波数帯に限定されるものではなく、例えばUHF帯以外の任意の周波数帯域についても適用できることは勿論である。
【0034】
以上のようなRFタグ20は、具体的な構成や構造・機能等については、特に限定されるものではない。
例えば、既存の汎用タグや、特定の製品・用途などにカスタマイズされた専用タグなど、任意のものを対象とすることができ、その構成や形状・大きさ・機能などはどのようなものであっても、本実施形態に係るRFタグ20として採用することができる。
すなわち、無線通信可能なRFタグとして動作・機能するものであれば、本実施形態のRFタグ20として適用することができる。
【0035】
また、RFタグ20には、例えばインレイを収納した筐体の表面などに、バックアップ用のバーコードや二次元コードが付されることがある。このようなバーコード,二次元コードについても、本発明のID媒体を構成することができる。
また、RFタグ20に代えて、バーコード又は二次元コードを、単独又は組み合わせて装着部11に取り付けることも可能である。
したがって、本発明に係るID媒体は、RFタグ,バーコード(一次元コード),二次元コードのいずれか一つ、又は2種以上の組み合わせによって構成することができるものである。
【0036】
また、本実施形態では、以上のようなRFタグ20は、取付体30を介してパレット10の装着部11に着脱可能に取り付けられるようになっている。
取付体30は、RFタグ20をパレット10の装着部11に装着するための介在部材であって、RFタグ20が固定された取付体30が装着部11に取り付けられることによって、装着部11の内部に装着・配置される。
具体的には、取付体30は、RFタグ20に加わる外力によって折れ曲がり可能な弾性力を有する弾性体、例えばゴムや合成樹脂等によって形成することができる。
【0037】
このような取付体30を介してRFタグ20がパレット10に取り付けられることによって、外部から例えばフォークリフト100の爪が進入してRFタグ20に物理的衝撃が加わると、その物理的衝撃を逃す又は吸収するように、装着部11との接続箇所を支点として折れ曲がるようになる。
これによって、RFタグ20に物理的な外力が加わったとしても、取付体30が折れ曲がることによって、その物理的な外力が逃がされ又は吸収されて、RFタグ20に衝撃が加わることが回避乃至低減されるようになる。
同様の観点から、取付体30は、RFタグ20に加わる外力によって折れ曲がり可能な折れ曲がり・折り畳み構造体、例えばヒンジ構造・蝶番等によって形成することもできる。また、このような弾性体やヒンジ構造からなる取付体30は、その一部に折れ曲がり不能な剛性体を含むこともできる。
【0038】
また、取付体30は、装着部11に取り付けられた状態において、取付体30の表面(又は裏面)に固定されているRFタグ20が、パレット10の外周面より内部に納まるように、例えば、パレット10の外周から約2~3cm程度パレット内側の位置にRFタグ20が配置されるように、装着部11に取り付け・固定される。
これによって、取付体30を介して装着部11に装着されたRFタグは、パレット10の上下面デッキ10a,10bの外縁よりもパレット内側に位置するようになり、パレット10の上下方向からRFタグ20に対して他の物体等が接触したり衝突したりすることが防止される。
この取付体30の装着部11の取り付け位置は、パレット10の上下面デッキ10a,10bの外縁よりもパレット内側であって、上述したように、パレット10の外部からのRFタグ20の視認性や着脱性,バーコード等の読取性等が損なわれない適切な位置に設定される。
【0039】
[読み取り装置]
読み取り装置50は、上述したRFタグ20との間で無線による所定の情報の読み取りや書き込み,読み書きが行われるリーダ・ライタとなる装置であり、本発明に係るID媒体の管理システムの主要部を構成している。
本実施形態では、読み取り装置50は、図1(a)や図2に示すように、複数のパレット10を積載・搬送するフォークリフト100が、走行しながら通過できるゲート状に構成されており、フォークリフト100の横幅よりも広い間隔で対向配置された一対の支柱の対向面に、それぞれRFタグ20との間で無線信号を送受信するためのアンテナ51を備えている。
アンテナ51は、パレット10に取り付けられた複数のRFタグ20を確実に読み取ることができるように、所定位置に所定数だけ配置され、読み取り装置50をID媒体の自動識別装置として機能させるようになっている。
【0040】
また、読み取り装置50は、アンテナ51と接続された情報処理装置が備えられ、アンテナ51の制御を含む、RFタグ20の読み取り処理を実行するようになっている。情報処理装置は、例えばCPU,RAM,ROM,HDD,入力装置,表示装置等を含むハードウェアによって構成され、所定のソフトウェアが実装されることによって、以下のような処理機能を実行可能な手段として構成される。
図3(a)に読み取り装置50の機能ブロック図を、図3(b)に読み取り装置50の出力手段56から出力・表示される表示画面の一例を示す。
同図に示すように、読み取り装置50は、RFタグ20との間で無線信号を状受信する上述したアンテナ51を備えるとともに、記憶手段52,読み取り手段53,比較手段54,抽出手段55,出力手段56の各手段として機能するようになっている。
【0041】
記憶手段52は、RFタグ20に記録されている識別情報及び判別情報に対応する対比情報を記録している。
具体的には、記憶手段52に記録される対比情報としては、まず、RFタグ20に記憶される識別情報に対応する情報として、RFタグ20が取り付けられるパレット10を識別するパレットID,パレット名,パレットに搭載される搬送品情報(搬送品名・搬送先等),取り付けられるRFタグ20の数情報などがある。
また、RFタグ20に記憶される判別情報に対応する情報として、各RFタグ20を識別するタグID,タグに割り当てられた色を示す色識別コード(赤・緑など)なども、対比情報として記憶手段52に記録される。
これらの対比情報は、RFタグ20に書き込まれる識別情報・判別情報とともに、本システムにおけるID媒体の管理・運用を行う際に予め読み取り装置50に対して登録・記憶させるようにする。
【0042】
読み取り手段53は、アンテナ51を介して受信された信号から、複数の全てのRFタグ20に記録されている識別情報及び判別情報を読み取る。
このように読み取り装置50は、RFタグ20が取り付けられたパレット10が複数搬送される場合(図1(a)参照)には、読み取り手段53によって、複数の各パレット10に取り付けられた、全てのRFタグ20に記録された前記識別情報及び判別情報が読み取られるようになっている。
これによって、迅速かつ効率的なRFタグ20の読み取り処理、パレット10の個体識別処理が実行されるようになる。
【0043】
比較手段54は、読み取り手段53で読み取られた各RFタグ20の識別情報及び判別情報を、対応する対比情報と比較する。
具体的には、RFタグ20から読み取られたパレットID・タグID・色識別情報等の識別情報・判別情報を、記憶手段52に記録されている対応するパレットID・タグID・色識別情報等の対比情報と対比・比較する。
この比較手段54における比較処理により、RFタグ20から読み取られた識別情報・判別情報と、読み取り装置50に登録されている対比情報との一致/不一致や差分等が検知されることになる。
【0044】
抽出手段55は、比較手段54における比較処理の結果、対比情報に対応する判別情報が読み取られなかった場合に、該当するRFタグ20を、不良ID媒体として抽出する。
具体的には、記憶手段52に記録されている対比情報として、「パレットID:P0001・タグID:T0001・色識別コード・赤/緑」が記録されている場合に、RFタグ20から「パレットID:P0001・タグID:T0001・色識別コード・赤」と「パレットID:P0001・タグID:T0001・色識別コード・緑」の2つの情報が読み取られていれば、RFタグ20の読み落としはなく、不良ID媒体は抽出されない(図3(b)参照)。
【0045】
一方、「パレットID:P0003・タグID:T0003・色識別コード・赤/緑」が記録されている場合に、RFタグ20から「パレットID:P0003・タグID:T0003・色識別コード・緑」の情報が読み取られる一方、「パレットID:P0003・タグID:T0003・色識別コード・赤」の情報が読み取られていなければ、RFタグ20の読み落としが発生ており、不良ID媒体が抽出される(図3(b)参照)。この場合には、RFタグ20の判別情報「赤」の情報が読み取られていないので、該当するパレット10に取り付けられている2つのRFタグ20のうち、筐体・ケースが「赤」のRFタグ20が読み落とされたことになる。
【0046】
出力手段56は、上記のような比較手段54・抽出手段55による抽出処理結果を出力する。
具体的には、本実施形態では、読み取り装置50には、図3(b)に示すようなタブレット端末・スマートフォン等の情報処理装置が、無線通信可能に接続されるようになっており、このタブレット端末等が、比較手段54・抽出手段55による抽出処理結果を出力する出力手段56として機能するようになっている。このようなタブレット端末等からなる出力手段は、例えば、フォークリフト100の運転席などに備えられ、フォークリフト100の操作者が随時操作・視認等できるようなっている。
【0047】
出力手段56で出力・表示される情報としては、比較・抽出処理された識別情報・判別情報及び対比情報と、その一致/不一致などを示す情報が生成・表示されるようになっている。
図3(b)に示す例では、「パレットID・タグID・色識別コード(赤)・色識別コード(緑)・判定」の各項目について情報が、複数の各パレット10ごとに出力・表示されるようになっている。
例えば「パレットID:P0001」については、「パレットID:P0001・タグID・T0001・色識別コード(赤):〇・色識別コード(緑):〇・判定OK」として、「タグID:T0001」については読み落としが発生していないことが示される。
【0048】
一方、「パレットID:P0003」については、「パレットID:P0003・タグID・T0003・色識別コード(赤):×・色識別コード(緑):〇・判定NG」として、「タグID:T0003」については、「緑」のRFタグ20について読み落としが発生していることが示される。この場合、「判定NG」についてはハイライト表示などで表示させることができる。
したがって、出力手段56の表示結果を見た作業者等は、該当するIDのパレット10を目視して、該当する色が付されたRFタグ20を確認・特定することにより、そのRFタグ20に脱落や故障等があるか否かを点検・確認することができるようになる。
【0049】
なお、図3(b)に示す出力手段56の出力・表示内容は、本発明に係る出力情報の一例であり、この例に限定されるものではない。
また、出力手段56として、本実施形態では読み取り装置50と無線通信によって接続されるタブレット端末等を示しているが、上記のような比較・抽出処理の結果を情報として出力・表示できる限り、出力手段56の構成はタブレット端末に限られるものではない。
例えば、読み取り装置50を構成するゲート等に直接接続された表示部を出力手段56として機能させることもでき、また、フォークリフト100の作業現場と離れた社屋や管理棟などに設置されたPCなどの情報処理装置を出力手段56とすることも可能である。
【0050】
[動作(ID媒体の管理方法)]
次に、以上のような構成からなる読み取り装置50を含む本実施形態のID媒体の管理システムにおける動作(ID媒体の管理方法)について、図4を参照しつつ説明する。
図4は、本実施形態に係る管理システムで実行されるID媒体の管理方法の手順を示すフローチャートである。
まず、事前準備として、取付対象となる各パレット10に対して、それぞれ複数(2つ)のRFタグ20を用意し、各RFタグ20には、対応するパレット10の識別情報と、当該RFタグ20の判別情報(色識別コード)を記録しておく。このような識別情報・判別情報のRFタグ20への書き込みは、読み取り装置50によって行うことができ、また、別のリーダ・ライタ等を用いて行うこともできる。
【0051】
また、各RFタグ20は、インレイを収納したケース・筐体の外観を、そのRFタグ20に割り当てられている色識別コードに対応した色(赤・緑など)となるように、着色・彩色しておく。
そして、用意したRFタグ20を、それぞれ対応するパレット10の所定箇所(装着部11)に取り付ける。
また、読み取り装置50には、RFタグ20に記録される識別情報及び判別情報に対応する対比情報を、記憶手段52に記録・登録させておく。
【0052】
このようにして、複数のRFタグ20が取り付けられたパレット10について、パレットの搬送を開始する(ステップ401)。
ここで、本実施形態では、RFタグ20の管理として、製品等の搬送を終了したパレット10が返却・回収されて、例えばトラックや倉庫(図2(a)参照)などに格納されるタイミングで、RFタグ20の読み落とし判定を行うようにしている。
各パレット10に製品等が搭載されている状態のパレット10の出荷時は、一台のフォークリフト100に搭載・搬送されるパレット10の数は、基本的に一つであり、パレット10・RFタグ20の読み落とし判定を効率的に行うことが困難となる。
また、製品等の出荷時は、例えば港湾や倉庫などの使用時間が限られており、可能な限り迅速かつ効率的に出荷作業を終わらせる必要などもある。
【0053】
一方で、製品等の出荷が終わって返却されてくるパレット10は、一台のフォークリフト100に複数(例えば10個)のパレット10を搭載して搬送等することができる。
また、返却されてきたパレット10について読み落とし判定を実行することで、読み落としが検出されたパレット10・RFタグ20については、製品等の出荷の前に、事前に交換・修理等の対応を取ることが可能となる。
そこで、本実施形態では、製品等の出荷を終えたパレット10が返却・回収されてくるタイミングでRFタグ20の読み落とし判定・管理を実行するようにし、RFタグ20の管理を効率的かつ迅速に行えるようにしている。
【0054】
具体的には、フォークリフト100に搭載されて搬送される複数のパレット10は、フォークリフト100が移動することにより、読み取り装置50のゲートを通過する(ステップ402)。
複数のパレット10が読み取り装置50のゲートを通過すると、読み取り装置50のアンテナ51とRFタグ20との間で無線交信が自動的に行われ、RFタグ20からの無線信号がアンテナ51で受信され、複数の各RFタグ20に記録されている識別情報・判別情報が、読み取り装置50(読み取り手段53)によって読み取られる(ステップ403)。
これによって、迅速かつ効率的なRFタグ20の読み取り処理、パレット10の個体識別処理が実行されることになる。
【0055】
RFタグ20から読み取られた識別情報・判別情報は、読み取り装置50に記録されている対比情報と比較される(ステップ404)。
具体的には、RFタグ20から読み取られたパレットID・タグID・色識別コード等の識別情報・判別情報が、読み取り装置50(記憶手段52)に登録されている対応するパレットID・タグID・色識別コード等の対比情報と対比され、その一致/不一致が検知される。
そして、読み取り装置50(抽出手段55)では、判別情報が読み取られなかったRFタグ20を、不良ID媒体(読み落としタグ)として抽出する(ステップ405)。
【0056】
本実施形態では、各RFタグ20から読み取られた色識別情報(色識別コード)の色数と色が判定され、不足色があった場合に読み落としタグとして検知される。
例えば、読み取り装置50に記録されている対比情報として、「パレットID:P0001・タグID:T0001・色識別コード・赤/緑」が記録されている場合に、RFタグ20から「パレットID:P0001・タグID:T0001・色識別コード・赤」と「パレットID:P0001・タグID:T0001・色識別コード・緑」の2つの情報が読み取られていれば、RFタグ20の読み落としはなく、不良ID媒体は抽出されない(図3(b)参照)。
【0057】
一方、「パレットID:P0003・タグID:T0003・色識別コード・赤/緑」が記録されている場合に、RFタグ20から「パレットID:P0003・タグID:T0003・色識別コード・緑」の情報が読み取られる一方、「パレットID:P0003・タグID:T0003・色識別コード・赤」の情報が読み取られていなければ、RFタグ20の読み落としが発生ており、不良ID媒体が抽出される(図3(b)参照)。この場合には、RFタグ20の判別情報「赤」の情報が読み取られていないので、該当するパレット10に取り付けられている2つのRFタグ20のうち、筐体・ケースが「赤」のRFタグ20が読み落とされたことになる。
【0058】
以上のようなRFタグ20の読み取り処理の結果は、読み取り装置50(出力手段56)によって出力される(ステップ406)。
本実施形態では、読み取り装置50の出力手段として、図3(b)に示すようなタブレット端末等がフォークリフト100の運転席などに備えられており、同図に示すような出力結果が、フォークリフト100の操作者に対して随時出力・表示されるようになっている。
これによって、タブレット端末の表示結果を見た作業者等は、該当するIDのパレット10を目視して、該当する色のRFタグ20を確認・特定することができ、RFタグ20の脱落や故障等を点検・確認して、必要な交換・修理等の対応を取ることができるようになる。
【0059】
図3(b)に示す例では、「パレットID・タグID・色識別コード(赤)・色識別コード(緑)・判定」の各項目について情報が、複数の各パレット10ごとに出力・表示されるようになっている。
同図に示すように、「パレットID:P0001(及び2,4,6・・・)」については、「パレットID:P0001・タグID・T0001・色識別コード(赤):〇・色識別コード(緑):〇・判定OK」として、「タグID:T0001(及び2,4,6・・・)」については読み落としが発生していないことが示される。
【0060】
一方、「パレットID:P0003(及び5)」については、「パレットID:P0003・タグID・T0003・色識別コード(赤):×・色識別コード(緑):〇・判定NG(ハイライト表示)」として、「タグID:T0003(及び5)」については、「赤」(又は「緑」)のRFタグ20について読み落としが発生していることが示される。
したがって、作業者等は、読み落としのあったRFタグ20を、外観の色を視認・判別するだけで、不良ID媒体として特定・交換することができるようになる。すなわち、不良ID媒体として抽出されたRFタグ20は、当該RFタグ20の外表面に表示された判別情報に対応する情報(色・文字・数字等)を目視により判別することにより、不良品の取り除きと、良品への交換が行えるようになる。
また、読み落としが検知されなかった場合にも、複数のRFタグ20について、読み落とし防止の点検・管理を行うことができるようになる。
【0061】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係るID媒体の管理方法及び管理システムによれば、RFタグ20を取り付けたパレット10をフォークリフト100に搭載して読み取り装置50のゲートを通過させるだけで、RFタグ20の読み落としの判定を実行することができ、不良ID媒体の自動検知が可能となる。
これにより、管理対象となるパレット10が大量に搬送・処理される運輸・搬送の現場において、各パレット10に対して複数のRFタグ20が取り付けられても、各RFタグ20の読み落とし・不良の有無を効率よく確実に検知・判定することができるようになる。
【0062】
また、読み落としと判定・抽出されたRFタグ20は、該当するRFタグ20の外観を目視により確認することで特定でき、不良ID媒体の特定や交換等が容易になり、交換作業の工数等を大幅に削減することが可能となる。
さらに、ID媒体の不具合検知が容易かつ確実に行えることから、複数ID媒体の運用が可能となり、例えば、ID管理ゲート(読み取り装置50)以外での読み落とし防止や、例えば読み取り装置50のアンテナを片側のみとするなど、ゲートの簡素化を図ることも可能となる。
【0063】
このように、本発明によれば、取付対象となる個体に対して複数のID媒体を取り付けつつ、不良等が発生したID媒体を確実に判別・抽出でき、かつ、抽出された不良ID媒体を、外観から目視によって容易に識別・特定することができるようになる。
これによって、例えば運搬用のパレットやスキッド,貨物用のコンテナ,カゴ台車,カートラック等ように、運輸・搬送等の現場において大量に処理・運用されて、外部から物理的な力や衝撃が加わることの多い対象物の個体識別に用いられるID媒体の管理に好適に適用することができる。
【0064】
以上、本発明の物品への個体識別体取り付け方法及び個体識別体を備える物品について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、ID媒体となるRFタグ20が取り付けられたパレット10を複数搬送して返却・回収のタイミングで読み落としの判定を行うようにしているが、各パレット10に製品等を搭載して搬送する出荷のタイミングで読み落としの判定を行うことも勿論可能である。
【0065】
また、上述した実施形態では、ID媒体となるRFタグ20がパレット10に取り付けられた状態で読み落としの判定を行うようにしているが、ID媒体は、パレット等の取付対象の個体に取り付けられる前の状態においても、読み落としの判定を行うこともできる。
この場合には、取付対象となる個体に取り付けられる前のID媒体について、故障等の不良を検査・検証することができる。
【0066】
また、上述した実施形態では、本発明に係るID媒体を用いて個体識別管理を行う対象物として、運搬用,貨物用などに使用されるパレットを例示しているが、本発明を適用できる物品,対象物としては、パレットに限定されるものではない。
すなわち、RFタグ等のID媒体が装着されて、読み取り装置を介して所定の情報・データが読み書きされて管理等される物品,対象物であれば、どのような物品・対象物であっても、本発明に係る管理方法や管理システムを適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば貨物用のパレットやコンテナなど、任意の物品や対象物に取り付けられて使用される、耐久性や耐衝撃性等を高めるためにRFタグ等のID媒体の管理方法・管理システムとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 パレット
11 装着部
20 RFタグ(ID媒体)
30 取付体
50 読み取り装置
51 アンテナ
52 記憶手段
53 読み取り手段
54 比較手段
55 抽出手段
56 出力手段
100 フォークリフト
200 カゴ付き金属製パレット
図1(a)(b)】
図1(c)(d)】
図2
図3
図4