(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】鉄道車両用結合部材及び鉄道車両用結合部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B61D 17/08 20060101AFI20221014BHJP
B61D 17/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B61D17/08
B61D17/00 C
(21)【出願番号】P 2018235291
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 祥
(72)【発明者】
【氏名】芝 寿洋
(72)【発明者】
【氏名】上田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-157956(JP,A)
【文献】実開昭58-104763(JP,U)
【文献】米国特許第6375249(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0136218(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/08
B61D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の側面を構成する側構体と、前記鉄道車両の屋根を構成する屋根構体と、前記側構体及び前記屋根構体の少なくともいずれかと一体化しつつ前記鉄道車両の前後の方向に延在する補強部材との結合を補強する鉄道車両用結合部材であって、
前記側構体に接合される側構体接合部と、
前記屋根構体に接合される屋根構体接合部と、
前記補強部材に接合される補強部材接合部と、
前記側構体接合部と、前記屋根構体接合部と、前記補強部材接合部とを互いに連結する連結部と、
を備え、
前記側構体接合部と、前記屋根構体接合部と、前記補強部材接合部と、前記連結部とは、一枚の板材が屈曲されることにより形成されている、鉄道車両用結合部材。
【請求項2】
前記側構体接合部と、前記屋根構体接合部と、前記補強部材接合部と、前記連結部とは、一枚の板材が一度に屈曲されることにより形成されている、請求項1に記載の鉄道車両用結合部材。
【請求項3】
前記側構体接合部と、前記屋根構体接合部と、前記補強部材接合部と、前記連結部とは、線対称な一枚の板材が屈曲されることにより形成されている、請求項1又は2に記載の鉄道車両用結合部材。
【請求項4】
前記鉄道車両の前後の方向に互いに異なる位置で前記補強部材に接合される一対の前記補強部材接合部を備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の鉄道車両用結合部材。
【請求項5】
鉄道車両の側面を構成する側構体と、前記鉄道車両の屋根を構成する屋根構体と、前記側構体及び前記屋根構体の少なくともいずれかと一体化しつつ前記鉄道車両の前後の方向に延在する補強部材との結合を補強する鉄道車両用結合部材の製造方法であって、
前記側構体に接合される側構体接合部と、前記屋根構体に接合される屋根構体接合部と、前記補強部材に接合される補強部材接合部と、前記側構体接合部と前記屋根構体接合部と前記補強部材接合部とを互いに連結する連結部とを、一枚の板材を屈曲することにより形成する、鉄道車両用結合部材の製造方法。
【請求項6】
前記側構体接合部と、前記屋根構体接合部と、前記補強部材接合部と、前記連結部とを、一枚の板材を一度に屈曲することにより形成する、請求項5に記載の鉄道車両用結合部材の製造方法。
【請求項7】
前記側構体接合部と、前記屋根構体接合部と、前記補強部材接合部と、前記連結部とを、線対称な一枚の板材を屈曲することにより形成する、請求項5又は6に記載の鉄道車両用結合部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用結合部材及び鉄道車両用結合部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の側面を構成する側構体と、鉄道車両の屋根を構成する屋根構体との結合を補強する鉄道車両用結合部材が知られている。例えば、特許文献1の鉄道車両の側構体では、側構体の縦骨部材の上端部には連結具が接合されている。連結具は断面略コ字状に形成される部材であり、両側面が縦骨部材に重ね接合される。連結部の両側面及び底面に上部接合具が連結される。上部接合具は、縦骨部材と屋根構体とを連結し接合するための金具である。上部接合具の上端部が屋根構体に接合されることにより、縦骨部材と屋根構体とが連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄道車両の剛性を高めるために、側構体及び屋根構体と一体化しつつ鉄道車両の前後の方向に延在する補強部材が設けられることがある。このような補強部材と側構体と屋根構体との結合を補強するための鉄道車両用結合部材を製造する場合は、鉄道車両用結合部材の部品数や溶接箇所が多くなり、製造の手間及びコストが増大する問題がある。
【0005】
そこで本発明は、製造の手間及びコストを低減することができる鉄道車両用結合部材及び鉄道車両用結合部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鉄道車両の側面を構成する側構体と、鉄道車両の屋根を構成する屋根構体と、側構体及び屋根構体の少なくともいずれかと一体化しつつ鉄道車両の前後の方向に延在する補強部材との結合を補強する鉄道車両用結合部材であって、側構体に接合される側構体接合部と、屋根構体に接合される屋根構体接合部と、補強部材に接合される補強部材接合部と、側構体接合部と屋根構体接合部と補強部材接合部とを互いに連結する連結部と、を備え、側構体接合部と屋根構体接合部と補強部材接合部と連結部とは一枚の板材が屈曲されることにより形成されている鉄道車両用結合部材である。
【0007】
この構成によれば、鉄道車両の側面を構成する側構体と、鉄道車両の屋根を構成する屋根構体と、側構体及び屋根構体の少なくともいずれかと一体化しつつ鉄道車両の前後の方向に延在する補強部材との結合を補強する鉄道車両用結合部材であって、側構体に接合される側構体接合部と、屋根構体に接合される屋根構体接合部と、補強部材に接合される補強部材接合部と、側構体接合部と、屋根構体接合部と、補強部材接合部とを互いに連結する連結部とを備え、側構体接合部と屋根構体接合部と補強部材接合部と連結部とは一枚の板材が屈曲されることにより形成されているため、製造の手間及びコストを低減することができる。
【0008】
この場合、側構体接合部と屋根構体接合部と補強部材接合部と連結部とは、一枚の板材が一度に屈曲されることにより形成されていることが好適である。
【0009】
この構成によれば、側構体接合部と屋根構体接合部と補強部材接合部と連結部とは、一枚の板材が一度に屈曲されることにより形成されているため、製造の手間及びコストをさらに低減することができる。
【0010】
また、側構体接合部と屋根構体接合部と補強部材接合部と連結部とは、線対称な一枚の板材が屈曲されることにより形成されていることが好適である。
【0011】
この構成によれば、側構体接合部と屋根構体接合部と補強部材接合部と連結部とは、線対称な一枚の板材が屈曲されることにより形成されているため、板材の加工が容易であり、製造の手間及びコストをさらに低減することができる。
【0012】
また、鉄道車両の前後の方向に互いに異なる位置で補強部材に接合される一対の補強部材接合部を備えることが好適である。
【0013】
この構成によれば、鉄道車両の前後の方向に互いに異なる位置で補強部材に接合される一対の補強部材接合部を備えるため、補強部材との接合がより安定する。
【0014】
また、本発明は、鉄道車両の側面を構成する側構体と、鉄道車両の屋根を構成する屋根構体と、側構体及び屋根構体の少なくともいずれかと一体化しつつ鉄道車両の前後の方向に延在する補強部材との結合を補強する鉄道車両用結合部材の製造方法であって、側構体に接合される側構体接合部と、屋根構体に接合される屋根構体接合部と、補強部材に接合される補強部材接合部と、側構体接合部と屋根構体接合部と補強部材接合部とを互いに連結する連結部とを、一枚の板材を屈曲することにより形成する鉄道車両用結合部材の製造方法である。
【0015】
この場合、側構体接合部と屋根構体接合部と補強部材接合部と連結部とを、一枚の板材を一度に屈曲することにより形成することが好適である。
【0016】
また、側構体接合部と屋根構体接合部と補強部材接合部と連結部とを、線対称な一枚の板材を屈曲することにより形成することが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の鉄道車両用結合部材及び鉄道車両用結合部材の製造方法によれば、製造の手間及びコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態の鉄道車両用結合部材を示す斜視図である。
【
図2】(A)は実施形態の鉄道車両用結合部材の正面図であり、(B)は実施形態の鉄道車両用結合部材の側面図であり、(C)は実施形態の鉄道車両用結合部材の平面図である。
【
図3】実施形態の鉄道車両用結合部材の製造方法で用いられる一枚の板材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る鉄道車両用結合部材及び鉄道車両用結合部材の製造方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態の鉄道車両用結合部材1は、鉄道車両100の側面を構成する側構体101と、鉄道車両100の屋根を構成する屋根構体102と、側構体101及び屋根構体102の少なくともいずれかと一体化しつつ鉄道車両100の前後の方向Dに延在する補強部材103との結合を補強する。本実施形態では、補強部材103は、側構体101の上端部又は屋根構体102の下端部の少なくともいずれかに配置され、側構体101の上端部と屋根構体102の下端部とを一体化しつつ鉄道車両100の前後の方向Dに延在する。
【0020】
図1、
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)に示すように、鉄道車両用結合部材1は、側構体に接合される側構体接合部11と、屋根構体102に接合される屋根構体接合部12と、補強部材103に接合される補強部材接合部13L,13Rと、側構体接合部11と、屋根構体接合部12と、補強部材接合部13L,13Rとを互いに連結する連結部14とを備える。側構体接合部11と、屋根構体接合部12と、補強部材接合部13L,13Rと、連結部14とは、一枚の板材20が屈曲部15,16,17で屈曲されることにより形成されている。板材20は、例えば、厚さ1~3mm程度であり、SUS301L等により形成されている。鉄道車両用結合部材1は、全体として、鉄道車両100の前後の方向Dに直交する鉄道車両100の上下の方向に平行な対称軸Xに対して線対称である。
【0021】
側構体接合部11と、屋根構体接合部12と、補強部材接合部13L,13Rと、連結部14とは、一枚の板材20が一度に屈曲部15,16,17で屈曲されることにより形成されている。また、
図3に示すように、側構体接合部11と、屋根構体接合部12と、補強部材接合部13L,13Rと、連結部14とは、対称軸Xに対して、線対称な一枚の板材20が屈曲されることにより形成されている。
【0022】
図1、
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)に示すように、側構体接合部11は、側構体101の側柱等にスポット溶接により接合される。側構体接合部11と連結部14との間の屈曲部15の屈曲の角度は、側構体101と屋根構体102と補強部材103との位置関係により、適宜、設定される。屋根構体接合部12は、屋根構体102の下端部等に一対の栓溶接部12Wにおいて栓溶接により接合される。屋根構体102において屋根構体接合部12が回転せずに最小限の溶接箇所で接合されるように、屋根構体接合部12は一対の栓溶接部12Wを有することが好適である。なお、側構体101と屋根構体102と補強部材103との位置関係により、屋根構体接合部12と連結部14との間にも、任意の角度で屈曲する屈曲部が設けられてもよい。
【0023】
鉄道車両用結合部材1は、鉄道車両100の前後の方向Dに互いに異なる位置で補強部材103に接合される一対の補強部材接合部13L,13Rを備える。補強部材接合部13L,13Rのそれぞれは、補強部材103に1つの栓溶接部13Wにおいて栓溶接により接合される。補強部材103において補強部材接合部13L,13Rが回転せずに最小限の溶接箇所で接合されるように、補強部材接合部13L,13Rは合わせて一対の栓溶接部13Wを有することが好適である。鉄道車両用結合部材1は、補強部材接合部13L,13Rのそれぞれと連結部14との間に2つの屈曲部16,17を備える。2つの屈曲部16,17はそれぞれ反対方向に略90°の角度で屈曲している。
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る鉄道車両用結合部材の製造方法について説明する。
図3に示すように、側構体101に接合される側構体接合部11と、屋根構体102に接合される屋根構体接合部12と、補強部材103に接合される補強部材接合部13L,13Rと、側構体接合部11と屋根構体接合部12と補強部材接合部13L,13Rとを互いに連結する連結部14とを形成するために、一枚の厚さ1~3mmのSUS301L等の板材20が切断加工される。板材20には、屈曲部15,16,17が設定される。また、板材20には、栓溶接部12W,13Wが穿設される。板材20は、対称軸Xに対して線対称である。
【0025】
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)に示すように、側構体接合部11と、屋根構体接合部12と、補強部材接合部13L,13Rと、連結部14とが、一枚の板材20を一度に屈曲部15,16,17で所定の角度にプレス曲げ加工により屈曲することによって形成される。側構体接合部11と、屋根構体接合部12と、補強部材接合部13L,13Rと、連結部14とは、対称軸Xに対して線対称な一枚の板材20を屈曲することにより形成される。なお、製造の状況に応じて、屈曲部15,16,17がそれぞれ別個に異なる時間に屈曲されてもよい。
【0026】
本実施形態によれば、鉄道車両100の側面を構成する側構体101と、鉄道車両100の屋根を構成する屋根構体102と、側構体101及び屋根構体102の少なくともいずれかと一体化しつつ鉄道車両100の前後の方向Dに延在する補強部材103との結合を補強する鉄道車両用結合部材1であって、側構体101に接合される側構体接合部11と、屋根構体102に接合される屋根構体接合部12と、補強部材103に接合される補強部材接合部13L,13Rと、側構体接合部11と、屋根構体接合部12と、補強部材接合部13L,13Rとを互いに連結する連結部14とを備え、側構体接合部11と屋根構体接合部12と補強部材接合部13R,13Lと連結部14とは一枚の板材20が屈曲されることにより形成されているため、製造の手間及びコストを低減することができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、側構体接合部11と屋根構体接合部12と補強部材接合部13L,13Rと連結部14とは、一枚の板材20が一度に屈曲されることにより形成されているため、製造の手間及びコストをさらに低減することができる。
【0028】
また、本実施形態によれば、側構体接合部11と屋根構体接合部12と補強部材接合部13L,13Rと連結部14とは、線対称な一枚の板材20が屈曲されることにより形成されているため、板材20の加工が容易であり、製造の手間及びコストをさらに低減することができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、鉄道車両100の前後の方向Dに互いに異なる位置で補強部材103に接合される一対の補強部材接合部13L,13Rを備えるため、補強部材103との接合がより安定する。加えて、本実施形態では、一対の補強部材接合部13L,13Rのそれぞれと連結部14との間における屈曲部16と屈曲部17との間が合計で2枚の板材20により補強されるため、屋根構体102の変形抑制と側構体101に対する側面衝突に対する耐久性の向上とを図ることができる。さらに、栓溶接部12W,13Wは、合計で最小限の4箇所しかないため、溶接作業も低減される。
【0030】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、鉄道車両用結合部材1が1枚の板材が屈曲されることにより形成されている限りにおいて、側構体接合部11、屋根構体接合部12、補強部材接合部13R,13L及び連結部14の形状は適宜変更されてもよい。例えば、補強部材接合部13R,13Lは、1つだけでもよく、3つ以上でもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…鉄道車両用結合部材、11…側構体接合部、12…屋根構体接合部、12W…栓溶接部、13L,13R…補強部材接合部、13W…栓溶接部、14…連結部、15,16,17…屈曲部、20…板材、100…鉄道車両、101…側構体、102…屋根構体、103…補強部材、D…方向、X…対称軸。