IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧 ▶ ルノー エス.ア.エス.の特許一覧

特許7158268停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び車両
<>
  • 特許-停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び車両 図1
  • 特許-停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び車両 図2
  • 特許-停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び車両 図3
  • 特許-停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び車両 図4
  • 特許-停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び車両 図5
  • 特許-停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び車両 図6
  • 特許-停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び車両 図7
  • 特許-停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び車両 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 99/00 20090101AFI20221014BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B60R99/00 330
B60R99/00 321
B60W30/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018236264
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020097315
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】御厨 裕
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隆志
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019332(JP,A)
【文献】特開2009-220614(JP,A)
【文献】特開2004-168085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 99/00
B60R 6/00-6/10
G08G 1/14
B60W 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と記憶部とを備えるコンピュータを用いて、車両が走行する車道に隣接する場所であって、前記車両を停車させることができる前記場所を検出する停車可能場所検出方法であって、
前記記憶部には、前記車道に隣接する停車スペースの中に前記車両を停車させるために必要な前記停車スペースの奥行きと前記停車スペースの幅の関係を示す相関データであって、前記車道の幅方向に垂直な方向の長さである前記奥行きと前記車道の幅方向の長さである前記幅の関係を示す前記相関データが記憶され、
前記制御部は、
前記車道の周辺の物体に係わる距離情報を取得し、前記距離情報から、前記車道に隣接する空きスペースを検出し、前記距離情報から、前記空きスペースの奥行きを算出し、 前記距離情報から、前記空きスペースの幅を算出し、前記相関データ、前記空きスペースの前記幅、及び前記空きスペースの前記奥行きに基づいて、前記空きスペースに前記車両を停車させることができるか否かを判定し、
前記空きスペースの前記幅及び前記奥行きに基づいて、前記空きスペースに前記車両を停車させた時に、前記空きスペースから前記車道へ張り出す前記車両の前記幅方向の長さである張り出し長を算出し、前記張り出し長に基づいて、前記空きスペースに前記車両を停車させることがでるか否かを判定することを特徴とする停車可能場所検出方法。
【請求項2】
前記制御部は、前記相関データ、前記空きスペースの前記幅、及び前記空きスペースの前記奥行きに基づいて、前記空きスペースに前記車両を停車させることができないと判定した場合において、前記張り出し長に基づいて、前記空きスペースに前記車両を停車させることができるか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の停車可能場所検出方法。
【請求項3】
前記制御部は、
前記相関データに示された前記停車スペースの前記奥行きと前記幅の関係と、前記空きスペースの前記幅及び前記奥行きとを対比することにより、前記空きスペースが前記停車スペースに該当するか否かを判定し、前記空きスペースが前記停車スペースに該当する場合に、前記空きスペースに前記車両を停車させることができると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の停車可能場所検出方法。
【請求項4】
前記相関データは、
前記停車スペースの前記奥行きと、前記奥行きを有する前記停車スペースの中に前記車両を停車させるために必要な前記停車スペースの前記幅の最小値の関係を示すデータであり、
前記制御部は、
前記相関データを参照することにより、前記空きスペースの前記奥行きに対応する前記停車スペースの前記幅の最小値を特定し、前記空きスペースの前記幅が、前記停車スペースの前記幅の最小値以上である場合に、前記空きスペースは前記停車スペースに該当すると判定することを特徴とする請求項に記載の停車可能場所検出方法。
【請求項5】
前記制御部は、前記張り出し長が、前記車両の周囲の他者の交通を乱すか否かの観点から定まるしきい値よりも短い場合に、前記空きスペースに前記車両を停車させることができると判定することを特徴とする請求項に記載の停車可能場所検出方法。
【請求項6】
前記制御部は、前記車道の幅方向の長さである車道幅を取得し、前記車道幅から、前記車両の周囲の他者の交通を乱すか否かの観点から予め定められた前記車道幅の最小値を減算した値を、前記しきい値に設定することを特徴とする請求項に記載の停車可能場所検出方法。
【請求項7】
前記相関データは、前記停車スペースの中に前記車両を前進動作のみで停車させるために必要な前記停車スペースの奥行きと幅との関係を示すデータであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の停車可能場所検出方法。
【請求項8】
前記制御部は、前記空きスペースに前記車両を前進動作のみで停車させた場合に、前記空きスペースから前記車道へ張り出す前記車両の前記幅方向の長さである前記張り出し長を算出することを特徴とする請求項の何れか一項に記載の停車可能場所検出方法。
【請求項9】
制御部と記憶部とを備えるコンピュータを有し、車両が走行する車道に隣接する場所であって、前記車両を停車させることができる前記場所を検出する停車可能場所検出装置であって、
前記記憶部には、前記車道に隣接する停車スペースの中に前記車両を停車させるために必要な前記停車スペースの奥行きと前記停車スペースの幅の関係を示す相関データであって、前記車道の幅方向に垂直な方向の長さである前記奥行きと前記車道の幅方向の長さである前記幅の関係を示す前記相関データが記憶され、
前記制御部は、
前記車道の周辺の物体に係わる距離情報を取得し、前記距離情報から、前記車道に隣接する空きスペースを検出し、前記距離情報から、前記空きスペースの奥行きを算出し、前記距離情報から、前記空きスペースの幅を算出し、前記相関データ、前記空きスペースの前記幅、及び前記空きスペースの前記奥行きに基づいて、前記空きスペースに前記車両を停車させることができるか否かを判定し、
前記空きスペースの前記幅及び前記奥行きに基づいて、前記空きスペースに前記車両を停車させた時に、前記空きスペースから前記車道へ張り出す前記車両の前記幅方向の長さである張り出し長を算出し、前記張り出し長に基づいて、前記空きスペースに前記車両を停車させることができるか否かを判定することを特徴とする停車可能場所検出装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記相関データ、前記空きスペースの前記幅、及び前記空きスペースの前記奥行きに基づいて、前記空きスペースに前記車両を停車させることができないと判定した場合において、前記張り出し長に基づいて、前記空きスペースに前記車両を停車させることができるか否かを判定することを特徴とする請求項9記載の停車可能場所検出装置。
【請求項11】
請求項に記載の停車可能場所検出装置と、前記車両を自動で走行させる走行制御装置とを備える前記車両であって、
前記走行制御装置は、前記車両を停車させることができると判定された前記空きスペースへ前記車両を停車させるための目標軌道を算出し、前記目標軌道に沿って前記車両を走行させることを特徴とする車両。
【請求項12】
前記走行制御装置は、前記車両を停車させることができると判定された前記空きスペースへ前記車両を前進動作のみで停車させるための前記目標軌道を算出することを特徴とする請求項11に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び停車可能場所検出装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人間の運転手を必要としない無人車両を用いた乗客又は物品の輸送に関する技術が知られている(特許文献1参照)。特許文献1は、無人車両及び乗客の位置情報に基づいて、無人車両が乗客を拾う乗車地(ピックアップ領域)を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0277191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、設定した乗車地に無人車両が到着したときに、他の車両が乗車地に停車している場合、無人車両を乗車地に停車できなくなる、という課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、車両を停車させることができる場所を精度よく検出する停車可能場所検出方法、停車可能場所検出装置、及び車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係わる停車可能場所検出方法は、車両を停車させるために必要な停車スペースの奥行きと停車スペースの幅の関係を示す相関データを記憶し、車道の周辺の物体に係わる距離情報を取得し、距離情報から、車道に隣接する空きスペースの奥行き及び空きスペースの幅を算出し、相関データ、空きスペースの幅、及び空きスペースの奥行きに基づいて、空きスペースに車両を停車させることができるか否かを判定し、空きスペースの幅及び奥行きに基づいて、空きスペースに車両を停車させた時に、空きスペースから車道へ張り出す車両の幅方向の長さである張り出し長を算出し、張り出し長に基づいて、空きスペースに車両を停車させることがでるか否かを判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、車両を停車させることができる場所を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る停車可能場所検出装置を含む自動輸送システム10の全体構成を示す概略図である。
図2図2は、自動輸送サービスに係わる図1の車両40の概略構成を示すブロック図である。
図3図3は、図2の車両40の詳細な構成及び図1の端末装置60の詳細な構成を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係わる停車制御装置41及び走行制御装置42の動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、図4のステップS6~S8の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、相関データ56の一例であるテーブルを示す表である。
図7図7は、車線Rd1、車線Rd1に隣接する空きスペースFsの一例を示す天頂図である。
図8図8は、目標軌道及び停車位置を算出する方法を説明する天頂図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1を参照して、実施形態に係る停車可能場所検出装置を含む自動輸送システム10の全体構成を説明する。自動輸送システム10は、車両40を用いて、ある場所から別の場所へ乗客又は物品を輸送する自動輸送サービスを提供するシステムである。図1は乗客(ユーザ50)を輸送する例を示す。自動輸送システム10は、輸送手段としての車両40と、自動輸送サービスを享受するユーザ50が保持する端末装置60と、自動輸送システム10全体を管理する管理サーバ20と、を備える。管理サーバ20と車両40の間、及び管理サーバ20と端末装置60の間は、それぞれ通信ネットワーク30を介して、双方向に通信可能に接続されている。勿論、車両40と端末装置60の間が双方向に通信可能に接続されていても構わない。
【0011】
自動輸送システム10において、車両40及び端末装置60は、移動可能な通信端末(移動情報端末)としての機能を備える。よって、通信ネットワーク30のうち、少なくとも車両40及び端末装置60に接続する部分は、高度道路交通システム(ITS)又は新交通管理システム(UTMS)における車車間・車路間通信、或いは3Gや4Gなどの移動体通信を含む無線通信により実現される。端末装置60には、スマートフォン、タブレット型端末、ノートパソコン、携帯電話、PHSが含まれる。また、車両40には、無線通信を行うための通信装置が搭載されている。一方、通信ネットワーク30のうち、管理サーバ20に接続される部分は、インターネットにより実現される。自動輸送システム10は、コンピュータ資源としての管理サーバ20の機能(自動輸送サービス)を、インターネットを経由してユーザ50に提供する「クラウドコンピューティング」として実現することも可能である。
【0012】
本実施形態に係る停車可能場所検出装置は、車両40上に搭載されている。しかし、他の実施形態として、停車可能場所検出装置を管理サーバ20上或いは端末装置60上に搭載することも可能である。また、停車可能場所検出装置を、その機能毎に車両40、管理サーバ20、及び端末装置60に分割して、搭載しても構わない。
【0013】
図2及び図3を参照して、自動輸送サービスに係わる図1の車両40の構成を説明する。車両40は、センサ部43と、停車制御装置41(制御部)と、記憶部55と、走行制御装置42と、通信部44とを備える。本実施形態に係る停車可能場所検出装置は、停車制御装置41及び記憶部55によって実現される。
【0014】
センサ部43は、車両40に搭載された、レーザレーダやミリ波レーダ、カメラ、ライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)など、複数の異なる種類の物体検出センサを備える。センサ部43は、複数の物体検出センサを用いて、車両40が走行する車道及び車道の周辺の物体を検出する。「車道及び車道の周辺の物体」には、車道と歩道を区切る縁石、ガードレール、建造物の壁、道路標示、駐車車両が含まれる。センサ部43は、これらの物体の自車両11に対する位置、形状及び大きさを検出する。「道路標示」とは、路面に描かれた道路鋲、ペイント、石等による線、記号又は文字である。図2では、車両40の前端部にセンサ部43を表記し、その他の部分、例えば、車両40の側部や後端部への表記を省略した。しかし、実際には、物体検出センサは、車両40の前端部のみならず、車両40の側部及び後端部を含む複数の箇所に設置されている。よって、センサ部43が検出する車両40の周辺の範囲には、車両40の前方のみに限らず、車両40の左右の側方及び後方も含まれる。更に、センサ部43が検出する車両40の周辺の範囲には、車両40が走行する自車線のみならず、自車線に隣接する車線及びその他の車線を含む車両40が走行する車道全体と、車道に隣接する路肩、自転車道及び歩道と、路肩、自転車道及び歩道に隣接する建造物とが含まれる。センサ部43は、車両40が走行する車道及び車道の周辺の物体を、所定の繰り返し周期で連続的に検出する。
【0015】
停車制御装置41は、ある場所から別の場所へ乗客又は物品を輸送する際に、車道に隣接した場所であって、車両40を停車させることができる場所(停車可能場所)を検出する。具体的には、停車制御装置41は、車両40が乗客を拾う時、乗客を降ろす時、車両40へ物品を積み込む時、又は荷下ろしを行う時に、車両40を停車させることができる場所を検出する。停車制御装置41は、車両40がその場所に停車することにより、車両40の周囲の他者(人、他の車両を含む)の交通を乱すことがなく、その結果、他者の交通違反又は交通事故を誘発する恐れがない場所を、停車可能場所として、検出する。
【0016】
停車制御装置41は、CPU(中央処理装置)、RAM及びROMなどのメモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、停車制御装置41として機能させるためのコンピュータプログラム(停車制御プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、停車制御装置41が備える複数の情報処理回路(45~49、51)として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって停車制御装置41が備える複数の情報処理回路(45~49、51)を実現する例を示す。もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(45~49、51)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(45~49、51)を個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、情報処理回路(45~49、51)は、車両40にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。本実施形態では、一例として、マイクロコンピュータが、自車両11の自動運転を実行する走行制御装置42をも実現している。
【0017】
記憶部55には、停車制御装置41が停車可能場所を検出する際に参照される相関データ56が記憶されている。「相関データ」56は、車道に隣接する停車スペースであって、停車スペースの中に車両40を停車させるために必要な停車スペースの奥行きと停車スペースの幅の関係を示す。「停車スペースの奥行き」とは、車道の幅方向に垂直な方向の停車スペースの長さである。「停車スペースの幅」とは、車道の幅方向の停車スペースの長さである。「停車スペースの中に車両40を停車させる」とは、車両40全体が停車スペースの中に収まった状態で、車両40を停車させる、ことを意味する。換言すれば、車両40の一部も停車スペースから車道へ張り出していない状態で、車両40を停車させる、ことを意味する。
【0018】
図7は、車線Rd1、車線Rd1に隣接する空きスペースFsの一例を示す天頂図である。図7は、車両40の破線7よりも右側部分が車道Rd1へ張り出した状態で停車している車両40を示している。図7に示すシーンにおいて、空きスペースFsの中に車両40を停車できていない。空きスペースFsは、他車両5a1、5a2、縁石5bにより規定される領域であって、障害物が無く車両40が走行することができる領域である。
【0019】
図6は、記憶部55に記憶されている相関データ56の一例であって、停車スペースの幅(Wps)と停車スペースの奥行き(Dps)との関係を示している。幅(Wps)は、α1からα6へ向かって長くなり、奥行き(Dps)は、β1からβ6へ向かって長くなる。図6において、停車スペースの中に車両40を停車させることが可能な、停車スペースの幅(Wps)と奥行き(Dps)の組合せを、円(○)で示す。
【0020】
図6に示すように、停車スペースの奥行き(Dps)が十分に長ければ(β5)、停車スペースの幅(Wps)が短くても(α2)、停車スペースの中に車両40を停車させることができる。逆に、停車スペースの幅(Wps)が十分に長ければ(α6)、停車スペースの奥行き(Dps)が短くても(β1)、停車スペースの中に車両40を停車させることができる。なお、車両40を停車させるために必要な停車スペースの奥行き(Dps)と幅(Wps)の関係、即ち「相関データ」56は、その車両40に固有な外形寸法、最大操舵角、及び最小回転半径に基づいて予め定めることができる。よって、記憶部55に、「相関データ」56を予め記憶されておくことができる。
【0021】
図3に示すように、停車制御装置41は、距離取得部45と、空きスペース検出部46と、空きスペース奥行算出部47と、空きスペース幅算出部48と、空きスペース寸法判定部49と、車道幅算出部51とを備える。
【0022】
距離取得部45は、車両40が走行する車道及び車道の周辺の物体に係わる距離情報を取得する。「距離情報」には、車道と歩道を区切る縁石、ガードレール、建造物の壁、道路標示、及び駐車している他車両の自車両11に対する位置、形状及び大きさを示す情報が含まれる。本実施形態で、距離取得部45は、センサ部43により検出された車道及び車道の周辺の物体から、距離情報を取得することができる。他の実施形態として、距離取得部45は、通信部44が車両40の外部から受信することができる情報の中から、車両40の周辺の距離情報を抽出しても構わない。この場合、車両40は、GPS受信機などの自己位置を検出する装置を用いて、自己位置を示す情報を取得すればよい。
【0023】
空きスペース検出部46は、距離取得部45により取得された距離情報から、車道に隣接する空きスペースFsを検出する。「空きスペースFs」とは、他の車両、縁石、ガードレール、カラーコーン(登録商標)、壁、その他の障害物が路面上に存在しない、路面が表出している領域を示す。空きスペース検出部46は、先ず、停車可能場所の候補として、空きスペースFsを検出する。例えば、空きスペース検出部46は、車両40の全長及び全幅に基づいて、空きスペースFsを検出する。具体的には、車両40の全長及び全幅よりも大きな空きスペースFsを検出する。これにより、車両40が収まらないほどに小さな空きスペースを、停車可能場所の候補から、除外することができる。車両40の全長及び全幅を示すデータは、記憶部55に予め記憶されている。
【0024】
空きスペース奥行算出部47は、距離取得部45により取得された距離情報から、空きスペース検出部46により検出された空きスペースの奥行きを算出する。図7に示すように、「空きスペースFsの奥行き(Dfs)」とは、車道(Rd1、Rd2)の幅方向に垂直な方向の空きスペースFsの長さを示す。
【0025】
空きスペース幅算出部48は、距離取得部45により取得された距離情報から、空きスペース検出部46により検出された空きスペースの幅を算出する。図7に示すように、「空きスペースFsの幅(Wfs)」とは、車道(Rd1、Rd2)の幅方向の空きスペースFsの長さを示す。
【0026】
空きスペース寸法判定部49は、少なくとも2つの判定方法を用いて、空きスペースFsに車両40を停車させることができるか否かを判定する。2つの判定方法を、「第1の判定方法」及び「第2の判定方法」と呼ぶ。「第1の判定方法」は、空きスペースFsの内部に車両40の全体が収まるように停車させることができるか否かを判定する方法である。「第2の判定方法」は、空きスペースFsに車両40を停車させた時に、空きスペースFsから車道(Rd1、Rd2)へ張り出す車両40の幅方向の長さ(以後、「張り出し長」という)に基づいて、空きスペースFsに車両40を停車させることができるか否かを判定する方法である。「第2の判定方法」は、「第1の判定方法」で、否定的に判定された場合において用いられる。「第1の判定方法」及び「第2の判定方法」の少なくとも何れか一方によって、肯定的に判定されれば、空きスペース寸法判定部49は、車両40を空きスペースFsに停車させることができると判定する。一方、「第1の判定方法」及び「第2の判定方法」の双方で否定的に判定された場合、空きスペース寸法判定部49は、車両40を空きスペースFsに停車させることができないと判定する。以下、「第1の判定方法」及び「第2の判定方法」を詳細に説明する。
【0027】
<第1の判定方法>
空きスペース寸法判定部49は、相関データ56、空きスペースFsの幅(Wfs)、及び空きスペースFsの奥行き(Dfs)に基づいて、空きスペースFsに車両40を停車させることができるか否かを判定する。具体的には、空きスペース寸法判定部49は、相関データ56に示された停車スペースの幅(Wps)と奥行き(Dps)の関係と、空きスペースの幅(Wfs)及び奥行き(Dfs)に基づいて、空きスペースFsに車両40を停車させることができるか否かを判定する。即ち、空きスペース寸法判定部49は、空きスペースFsが停車スペースPsに該当するか否かを判定する。そして、空きスペースが停車スペースに該当する場合に、空きスペースFsに車両40を停車させることができると判定し、空きスペースFsが停車スペースPsに該当しない場合に、空きスペースFsに車両40を停車させることができないと判定する。
【0028】
詳細には、空きスペース寸法判定部49は、相関データ56に示された停車スペースの幅(Wps)と奥行き(Dps)の関係と、空きスペースFsの幅(Wfs)及び奥行き(Dfs)とを対比することにより、空きスペースFsが停車スペースに該当するか否かを判定する。
【0029】
前記した「停車スペースと空きスペースFsの対比」の具体例を以下に述べる。図6に示す相関データは、停車スペースの奥行き(Dps)と、奥行き(Dps)を有する停車スペースの中に車両40を停車させるために必要な停車スペースの幅(Wps)の最小値の関係を示すデータであると言える。例えば、停車スペースの奥行きが「β3」である場合、奥行き(β3)を有する停車スペースの中に車両40を停車させるために必要な停車スペースの幅の最小値は、「α3」である。このように、停車スペースの奥行き(β1、β2、β3、β4、β5)の各々に、停車スペースの幅の最小値(α6、α5、α3、α3、α2)が対応している。
【0030】
空きスペース寸法判定部49は、図6に示す相関データ56を参照することにより、空きスペースの奥行き(Dfs)に対応する停車スペースの幅(Wps)の最小値を特定する。例えば、空きスペースの奥行き(Dfs)に一致する、図6の停車スペースの奥行き(Dps)を特定する。そして、図6の相関データを参照することにより、特定した停車スペースの奥行き(Dps)に対応する停車スペースの幅(Wps)の最小値を、特定する。
【0031】
そして、空きスペース寸法判定部49は、空きスペースの幅(Wfs)と停車スペースの幅(Wps)の最小値とを比較し、空きスペースの幅(Wfs)が停車スペースの幅(Wps)の最小値以上であるか否かを判断する。空きスペース寸法判定部49は、空きスペースの幅が停車スペースの幅(Wps)の最小値以上である場合に、空きスペースFsは停車スペースに該当すると判定し、空きスペースの幅(Wfs)が停車スペースの幅(Wps)の最小値未満である場合に、空きスペースFsは停車スペースに該当しないと判定する。
【0032】
なお、相関データは、停車スペースの奥行きと、前記奥行きを有する停車スペースの中に車両40を停車させるために必要な停車スペースの幅の最小値の関係を示すデータであるか、又は、停車スペースの幅と、前記幅を有す停車スペースの中に車両40を停車させるために必要な停車スペースの奥行きの最小値との関係を示すデータである。
【0033】
<第2の判定方法>
空きスペースの広さが十分ではないため、車両40の全体が空きスペースの中に収まるように車両40を停車することができず、車両40の一部が空きスペースから車道へ張り出した状態で車両40を停車せざるを得ない場合がある。この場合、車両40が停車することによって、車両40の周囲の他者(人、他の車両を含む)の交通を乱すことがなければ、当該空きスペースに停車可能であると判定することが許容される。
【0034】
そこで、空きスペース寸法判定部49は、空きスペースは停車スペースに該当しないと判定した場合において、車両40の「張り出し長」に基づいて、空きスペースに車両40を停車させることができるか否かを判定する。これにより、周囲の交通への影響を十分に配慮しつつ、実情に沿って柔軟に停車可能性を判断することができる。
【0035】
図7は、停車スペースには該当しないと判定された空きスペースFsに車両40を停車させた状態を示す。車両40の左側の一部分は空きスペースFsの中に収まっているが、車両40の右側の残り部分は車道Rd1へ張り出している。車両40の張り出し長(Cw)は、空きスペースFsと車道Rd1との境界線7から車両40の右側面8までの車幅方向の長さである。空きスペース奥行算出部と47及び空きスペース幅算出部と48は、車道Rd1の周辺にある縁石5の位置及び形状から、車道Rd1に隣接する空きスペースFsの奥行き(Dfs)及び幅(Wfs)を算出する。
【0036】
目標軌道算出部53は、空きスペースFsの奥行きDfs及び幅Wfsに基づいて、空きスペースFsに停車させることができる車両40の位置(停車位置)を算出する。停車位置の具体的な算出方法は、後述する。空きスペース寸法判定部49は、停車位置から張り出し長(Cw)を算出することができる。図7に示すように、目標軌道算出部53は、空きスペースFsの奥行きDfs方向及び幅Wfs方向について、ユーザ50に最も近くなる停車位置を算出する。
【0037】
空きスペース寸法判定部49は、張り出し長(Cw)と、車両の周囲の他者の交通を乱すか否かの観点から定まるしきい値とを比較する。そして、空きスペース寸法判定部49は、張り出し長(Cw)が、しきい値よりも短い場合に、空きスペースFsに車両40を停車させることができると判定し、張り出し長(Cw)が、しきい値以上である場合に、空きスペースFsに車両40を停車させることができないと判定する。なお、しきい値の設定の仕方については、図5を参照して複数の実施例を後述する。
【0038】
以上説明したように、空きスペース寸法判定部49は、第1の判定方法により、空きスペースFsが停車スペースに該当するか否かを判定する。空きスペースFsが停車スペースに該当しないと判定した場合、空きスペース寸法判定部49は、第2の判定方法により、張り出し長(Cw)がしきい値よりも短いか否かを判定する。空きスペース寸法判定部49は、空きスペースFsが停車スペースに該当する場合、又は張り出し長(Cw)がしきい値よりも短い場合に、空きスペースFsに車両40を停車させることができると判定する。空きスペース寸法判定部49は、空きスペースFsが停車スペースに該当せず、且つ、張り出し長(Cw)がしきい値以上である場合に、空きスペースFsに車両40を停車させることができないと判定する。
【0039】
通信部44は、車両40の外部に対して、車路間通信、車車間通信、及び移動体通信の少なくとも1つを実行する装置である。通信部44が受信する情報には、特に制限はなく、車路間通信、車車間通信、及び移動体通信により受信可能な全ての情報が含まれる。
【0040】
走行制御装置42は、目標軌道算出部53と、走行制御部54とを備える。目標軌道算出部53は、停車制御装置41により車両40を停車させることができると判定された空きスペースへ車両40を停車させるための目標軌道及び停車位置を算出する。具体的には、距離取得部45により取得された距離情報、その車両40に固有な外形寸法、最大操舵角、及び最小回転半径に基づいて、車道周囲の障害物に接触しないような目標軌道及び目標軌道の終端に位置する車両40の停車位置を算出する。走行制御部54は、ステアリングアクチュエータ、ブレーキペダルアクチュエータ、アクセルペダルアクチュエータを制御することにより、目標軌道に沿って車両40を走行させ、停車位置に車両40と停車させる。
【0041】
ユーザ50が所持する端末装置60は、移動体通信を実行する通信部61と、ディスプレイ及びスピーカなどの出力装置と、タッチパネル及びマイクなどの入力装置と、端末装置60全体を制御する端末制御部62とを備える。
【0042】
<自動輸送サービスの動作手順>
次に、実施形態に係わる自動輸送サービスの一連の手順を説明する。まず、自動輸送サービスを利用したいユーザ50は、端末装置60を用いて、乗車する車両40を予約する。具体的には、ユーザ50は、通信部61を用いて管理サーバ20の乗車予約サイトにアクセスする。そして、入力装置を用いて、ユーザ50の氏名、電子メールアドレス、電話番号等のユーザ識別情報、及びユーザ50の現在位置、ユーザ50が車両40に乗車する乗車地、ユーザ50が車両40から降車する降車地、希望する乗車時刻等の予約情報を入力する。端末制御部62は、入力されたユーザ識別情報及び予約情報を、端末装置60を用いて管理サーバ20へ送信する。
【0043】
ユーザ識別情報及び予約情報を受信した管理サーバ20は、予約情報に基づいて、乗車地、及び乗車地までの第1走行ルートを既知のルート検索方法により演算し、車両40に送信する。さらに、管理サーバ20は、予約情報に基づいて、ユーザ50の降車地、及び乗車地から降車地までの第2走行ルートを車両40に送信する。
【0044】
走行制御部54は、管理サーバ20から取得した第1走行ルートに基づいて乗車地まで車両40を自動的に走行させる。乗車地に到着した車両40は、管理サーバ20から取得したユーザ識別情報に基づいて、センサ部43を用いて、ユーザ50或いはユーザ50が所持する端末装置60を探索する。その後、車両40に搭載された停車制御装置41は、ユーザ50に近い場所であって、車両40を停車させることができる場所を検出する。そして、目標軌道算出部53は、検出された場所(空きスペースFs)へ車両40を停車させるための目標軌道及び停車位置を算出する。走行制御部54は、ステアリングアクチュエータ、ブレーキペダルアクチュエータ、アクセルペダルアクチュエータを制御することにより、目標軌道に沿って車両40を走行させ、停車位置に車両40と停車させる。停車した後、車両40は、ユーザ50の個人認証を行い、車両40のドアを開く。車両40は、ユーザ50の乗車を確認した後、ドアを閉じる。
【0045】
走行制御部54は、乗車地から降車地までの第2走行ルートに沿って、車両40を自動的に走行させる。
【0046】
停車制御装置41は、降車地において、乗車地と同様にして、車両40を停車させることができる場所を検出する。そして、走行制御装置42は、検出された場所(空きスペースFs)へ車両40を停車させるための目標軌道及び停車位置を算出し、目標軌道に沿って車両40を走行させ、停車位置に車両40と停車させる。停車した後、車両40は、車両40のドアを開き、ユーザ50の降車を確認した後、ドアを閉じる。その後、車両40は所定の待機地点まで自動的に戻る。
【0047】
図4及び図5のフローチャートを参照して、実施形態に係わる自動輸送サービスのうち、乗車地及び降車地の各々における停車制御装置41及び走行制御装置42の動作を、詳細に説明する。図4は、実施形態に係わる停車可能場所検出方法の一例を示す。図5は、図4のステップS6~S8の詳細な手順の一例を示す。
【0048】
ステップS1において、走行制御部54は、乗車地又は降車地(以後、纏めて「乗降地」と言う場合がある)に到着するまでの残り時間又は残り距離が所定値に成った時、停車可能な場所を検出するための制御モードをオン状態にする。ステップS2に進み、センサ部43は、車両40が走行する車道及び車道の周辺の物体を検出する。そして、距離取得部45は、センサ部43により検出された車道及び車道の周辺の物体から、距離情報を取得する。あるいは、距離取得部45は、通信部44が車両40の外部から受信することができる情報の中から、車両40の周辺の距離情報を抽出しても構わない。
【0049】
ステップS3に進み、空きスペース検出部46は、距離取得部45により取得された距離情報から、車道(Rd1、Rd2)に隣接する空きスペースFsであって、車両40の全長及び全幅よりも大きな空きスペースFsを探索する。空きスペースFsを検出できた場合(ステップS3でYES)、ステップS4へ進み、空きスペースFsを検出できない場合(ステップS3でNO)、ステップS2へ戻る。
【0050】
ステップS4に進み、空きスペース奥行算出部47は、ステップS2で取得された距離情報から、ステップS3で検出された空きスペースの奥行き(Dfs)を算出する。そして、空きスペース幅算出部48は、距離取得部45により取得された距離情報から、ステップS3で検出された空きスペースの幅(Wfs)を算出する。
【0051】
ステップS5に進み、空きスペース寸法判定部49は、相関データ56を、記憶部55から読み出す。ステップS6に進み、空きスペース寸法判定部49は、第1の判定方法を用いて、空きスペースFsに車両40を停車させることができるか否かを判定する。具体的に、空きスペース寸法判定部49は、ステップS3で検出された空きスペースFsが、相関データ56に示された停車スペースに該当するか否かを判定する。空きスペースFsが停車スペースに該当すると判定した場合(S5でYES)、空きスペースに車両40を停車させることができるので、ステップS8へ進む。一方、空きスペースFsが停車スペースに該当しないと判定した場合(S5でNO)、ステップS7へ進む。
【0052】
ステップS7に進み、空きスペース寸法判定部49は、距離取得部45により取得された距離情報から、車両40が走行する車道の幅方向の長さ(以後、「車道幅」と言う)を示す情報を抽出する。
【0053】
ここで、「車道幅」には、車両40が走行する自車線(1車線)の幅、車両40が走行する道路が複数車線からなる場合は、はみ出し可能な自車線及び隣接車線を合わせた幅方向の長さ、或いは、道路がはみ出し可能な対面走行の場合、対向車線を含めた幅方向の長さ、等が含まれる。車線を区画する区画線や車道境界線の種類(実線、破線、色)に応じて、上記した長さから車道幅が決定する。車道幅は、中央分離帯、はみ出し禁止を示す白色実線、対向車線の縁石を含む、車両が乗り越えることができないもの、又は交通規則上跨いではいけない又ははみ出してはいけないもの(黄色線)により定義される。ゼブラゾーン(導流帯)は、車道幅に含ませることができる。つまり、「車道幅」とは、車両40が乗り越えることができないもの又は交通規則上跨いではいけない又ははみ出してはいけない物であって、車道の両側の各々にある前記物の間の距離を示す。車両40の一部が空きスペースから車道に張り出して停車した時、他者は、車道幅から車両40の張り出し長を減算した残り幅の部分を通行することになる。他者の交通を乱すか否かの観点から残り幅の最小値を予め定めることができる。
【0054】
例えば、図7に示す対面走行の道路において、車線Rd1に隣接して対向車線Rd2があり、車線Rd1と対向車線Rd2とが中央線6により区切られている。中央線6が白色破線又は黄色実線である場合、交通規則上、車線Rd1を走行する他車両は、停車中の車両40を避けるために、中央線6から対向車線Rd2側へはみ出して走行できる。この場合、車道幅は、車線Rd1の左側端部から対向車線Rd2の右側端部までの距離であってもよい。一方、中央線6が白色実線である場合、交通規則上、車線Rd1を走行する他車両は、停車中の車両40を避けるために、中央線6から対向車線Rd2へはみ出して走行できない。よって、車道幅は、車線Rd1の左側端部から車線Rd1の右側端部、つまり中央線6までの距離(Wrd)となる。
【0055】
ステップS8に進み、空きスペース寸法判定部49は、第2の判定方法を用いて、車両40の「張り出し長Cw」に基づいて、空きスペースFsに車両40を停車させることができるか否かを判定する。空きスペースFsに車両40を停車させることができると判定された場合(ステップS8でYES)、ステップS9へ進む。一方、空きスペースFsに車両40を停車させることができないと判定された場合(ステップS8でNO)、ステップS2へ戻る。
【0056】
ステップS9において、目標軌道算出部53は、空きスペースの奥行き(Dfs)及び幅(Wfs)から、空きスペースでの車両40の停車位置を算出する。ステップS10において、目標軌道算出部53は、停車位置までの車両40の目標軌道を算出する。ステップS11及びS12において、走行制御部54は、目標軌道に沿って車両40を走行させ、停車位置に車両40と停車させる。ステップS13において、車両40は、ユーザ50の個人認証及びドアの開閉等の乗降地到着処理を実行し、停車可能な場所を検出するための制御モードをオフ状態にする。車両40は、通信部44を用いて、管理サーバ20へ乗降地への到着の結果を送信する。
【0057】
図5を参照して、図4のステップS6~S8の詳細な手順を説明する。ステップU1において、空きスペース寸法判定部49は、図6の相関データを参照することにより、図7に示す空きスペースの奥行き(Dfs)に対応する停車スペースの幅(Wps)の最小値を特定する。ステップS2に進み、空きスペース寸法判定部49は、図7に示す空きスペースの幅(Wfs)が、停車スペースの幅(Wps)の最小値以上である場合(ステップU2でYES)、ステップU3に進み、空きスペースFsは停車スペースに該当すると判定する。一方、空きスペースの幅(Wfs)が停車スペースの幅(Wps)の最小値未満である場合(ステップU2でNO)、ステップU4に進む。ステップU4において、空きスペース寸法判定部49は、空きスペースFsの奥行き(Dfs)及び幅(Wfs)に基づいて、空きスペースFsに停車させることができる車両40の位置(停車位置)を算出し、停車位置から車両40の張り出し長(Cw)を算出する。
【0058】
ステップU5に進み、空きスペース寸法判定部49は、張り出し長(Cw)と、しきい値(Thcw)とを比較する。しきい値(Thcw)は、車両40の周囲の他者の交通を乱すか否かの観点から定められる。張り出し長(Cw)が、しきい値よりも短い場合に、ステップU3に進み、空きスペースFsに車両40を停車させることができる(S8でYES)と判定する。張り出し長(Cw)が、しきい値(Thcw)以上である場合に、ステップU6に進み、空きスペースFsに車両40を停車させることができない(S8でNO)と判定する。
【0059】
なお、しきい値(Thcw)は、予め定められた一定の値(例えば、0.5m)であってもよいし、可変値としてもよい。車両40の一部が車道に張り出して停車した時、他者は、車道幅から車両40の張り出し長を減算した残り幅の部分を通行することになる。他者の交通を乱すか否かの観点から残り幅の最小値を予め定めることができる。そこで、しきい値(Thcw)を、車道幅に応じて変化させても構わない。具体的には、空きスペース寸法判定部49は、車道幅から、車両40の周囲の他者の交通を乱すか否かの観点から予め定められた車道幅の最小値(例えば、2~4m)を減算した値を、しきい値(Thcw)に設定することができる。
【0060】
<停車位置及び目標軌道の算出方法>
次に、目標軌道算出部53が、空きスペースFsへ車両40を停車させるための目標軌道及び停車位置を算出する方法の一例を説明する。他の実施形態として、他の目標軌道及び停車位置の算出方法を用いることは可能である。
【0061】
図8に示すように、目標軌道算出部53は、最終的な停車位置Pを始点として、逆方向、即ち車両40が後退する方向に、目標軌道9を演算する。なお、目標軌道9は、車両40の重心位置(P、Pc-1、Pc-2、・・・)を繋ぐ線分である。このとき、停車位置Pの車両40の左側面から壁5までの距離を「マージンRmrg」と定義し、車両40が旋回する時に壁5側に張り出す長さを「車体張り出し長Rover」と定義する。前輪の舵角は、車両40の位置から壁までの距離(マージンRmrg)と車体の右前端部の幅方向への張り出し(車体張り出し長Rover)によって制約される。
【0062】
まず、初期のマージンRmrgとして、例えば0.3mを設定する。目標軌道算出部53は、旋回半径が最小となり、且つ車体張り出し長RoverがマージンRmrg未満となる旋回中心位置を計算する。計算モデルは、車両40の2つの前輪をその中心位置に配置した1輪に簡略化し、車両40の2つの後輪をその中心位置に配置した1輪に簡略化した2輪モデルである。車両40のパラメータを以下のように定義する。
【0063】
δ:前輪舵角
L:ホイールベース
:車体全長
:車体全幅
V:車速
:幅方向の車速
:幅方向の重心位置(絶対座標)
θ:ヨー角(絶対座標)
mrg:マージン
over:車体張り出し長
:奥行き方向の旋回中心座標
:幅方向の旋回中心座標
マージン(Rmrg)は、(1)式により定義される。
【0064】
【数1】
【0065】
車体張り出し長(Rover)は、(2)式により定義される。
【0066】
【数2】
【0067】
幅方向の重心位置(P)、ヨー角(θ)、奥行き方向の旋回中心座標(R)、幅方向の旋回中心座標(R)は、(3)式、(4)式、(5)式、(6)式でそれぞれ定義される。
【0068】
【数3】
【0069】
【数4】
【0070】
【数5】
【0071】
【数6】
【0072】
(1)式及び(2)式に(3)~(6)式を代入し、車体張り出し長RoverがマージンRmrgに等しいとする。これにより、目標軌道算出部53は、(7)式に示すように、旋回半径が最小となり、且つ且つ車体張り出し長RoverがマージンRmrg未満となる前輪舵角(δ)を、マージンRmrg及び車両40の寸法(L、L、W)で表すことができる。
【0073】
【数7】
【0074】
目標軌道算出部53は、(7)式に示す前輪舵角(δ)にて車両40を所定距離だけ後退方向に移動させ、移動後の位置Pp―1及びマージンRmrgについて、再度、前輪舵角(δ)を演算する。これを繰り返し、演算することにより、目標軌道9を生成する。目標軌道9に沿って移動する車両40が障害物5と接触する場合、マージンRmrgを増やして、例えば0.5mに設定して、再び、目標軌道9を生成する。目標軌道9に沿って移動する車両40が障害物5と接触しなくなるまで、マージンRmrgを増やす。これにより、マージンRmrgの最小値を演算することが出来る。このようにして、目標軌道算出部53は、ユーザ50に最も近い停車位置(P)及び目標軌道9を算出することができる。
【0075】
なお、本実施形態において、車両40の前輪のみが転舵輪である場合を説明したが、車両40の前輪及び後輪の双方が転舵輪であっても構わない。
【0076】
<前進動作のみによる停車>
車両40は、予め定めた走行ルートに沿って車両40を自動的に走行させる自動運転モードを備える。自動運転モードにおいて、車両40は、原則として、前進動作のみを行い、後退動作を行うことは想定されていない。この場合、空きスペースFsへの停車は、全て車両40の前進動作により遂行され、後退動作や切り返し動作は想定していない。
【0077】
そこで、走行制御装置42は、空きスペースFsへ車両40を前進動作のみで停車させるための目標軌道9を算出する。
【0078】
また、停車制御装置41は、空きスペースFsに車両40を前進動作のみで停車させた場合の「張り出し長Cw」を算出する。これにより、車両が自動運転車両である場合であっても、停車可能性を精度よく判定することができる。
【0079】
更に、相関データ56は、停車スペースの中に車両40を前進動作のみで停車させるために必要な停車スペースの奥行き(Dps)と幅(Wps)との関係を示すデータである。これにより、車両40が自動運転車両である場合であっても、停車可能性を精度よく判定することができる。
【0080】
以上説明したように、実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0081】
車両40を空きスペースFsに停車させることができるか否かは、空きスペースの幅(Wfs)と奥行き(Dfs)の関係に基づいて判定することができる。停車スペースの中に車両40を停車させるために必要な停車スペースの奥行き(Dps)と幅(Wps)の関係は、その車両40に固有な外形寸法、最大操舵角、最小回転半径に基づいて予め定めることができる。そこで、停車スペースの奥行き(Dps)と幅(Wps)の関係を示す相関データ56が予め記憶された記憶部55と停車制御装置41(制御部)とを備えるコンピュータを用いて、車両40を停車させることができる場所(停車可能場所)を検出する。まず、停車制御装置41は、車道の周辺の物体に係わる距離情報から空きスペースを検出し、空きスペースの幅(Wfs)と奥行き(Dfs)を算出する。そして、停車制御装置41が、相関データ56に示された停車スペースの幅(Wps)と奥行き(Dps)の関係と、空きスペースの幅(Wfs)及び奥行き(Dfs)に基づいて、空きスペースFsに車両40を停車させることができるか否かを判定する。具体的には、停車制御装置41が、空きスペースFsが停車スペースに該当するか否かを判定し、空きスペースFsが停車スペースに該当する場合に、空きスペースFsに車両40を停車させることができると判定する。これにより、車両40を停車させることができる場所を精度よく検出することができる。
【0082】
例えば、空きスペースの幅(Wfs)及び奥行き(Dfs)と、相関データ56に示された停車スペースの幅(Wps)と奥行き(Dps)の関係とを対比することにより、空きスペースFsが停車スペースに該当するか否かを判定する。空きスペースFsに車両40を停車させることができるか否かを精度よく判定することができる。
【0083】
停車制御装置41は、相関データ56を参照することにより、空きスペースの奥行き(Dfs)に対応する停車スペースの幅(Wps)の最小値を特定し、空きスペースの幅(Wfs)が、停車スペースの幅(Wps)の最小値以上である場合に、空きスペースFsは停車スペースに該当すると判定する。空きスペースFsに車両40を停車させることができるか否かを精度よく判定することができる。
【0084】
停車制御装置41は、空きスペースFsに車両40を停車させた場合に、空きスペースFsから車道(Ed1)へ張り出す車両40の幅方向の長さである「張り出し長Cw」を算出し、張り出し長Cwを更に考慮に入れて、空きスペースFsへの停車の可能性を判断する。これにより、空きスペースFsの広さが十分ではないため車両40の全体が空きスペースFsの中に収まるように車両40を停車することができない場合であっても、周囲の交通への影響を十分に配慮しつつ、実情に沿って柔軟に停車可能性を判断することができる。
【0085】
例えば、張り出し長Cwが、車両40の周囲の他者の交通を乱すか否かの観点から定まるしきい値(Thcw)よりも短い場合に、空きスペースFsに車両40を停車させることができると判定する。これにより、空きスペースFsが停車スペースに該当しない、即ち、張り出し長Cwがゼロでない場合であっても、車両40の周囲の他者の交通を乱さない限りにおいて、停車可能と判断することがすることができる。
【0086】
車両40の一部が車道Rd1に張り出して停車した時、他者は、車道幅(Rd1、Rd2)から車両40の張り出し長を減算した残り幅の部分を通行することになる。この残り幅について、他者の交通を乱すか否かの観点から最小値を予め定めることができる。そこで、例えば、車両40の周囲の他者の交通を乱すことがない車道幅の最小値を予め定め、実際の車道幅から車道幅の最小値を減算した値を、しきい値(Thcw)に設定する。これにより、実際の車道幅に応じて適切なしきい値を設定することができる。
【0087】
車両40が自動運転車両である場合、空きスペースFsへの停車は、全て車両40の前進動作により遂行され、後退動作や切り返し動作は想定していない。よって、停車スペースの中に車両40を前進動作のみで停車させるために必要な停車スペースの奥行き(Dps)と幅(Wps)との関係を示す相関データ56を用いる。これにより、車両40が自動運転車両である場合であっても、停車可能性を精度よく判定することができる。
【0088】
更に、停車制御装置41は、空きスペースFsに車両40を前進動作のみで停車させた場合の張り出し長Cwを算出する。これにより、車両40が自動運転車両である場合であっても、停車可能性を精度よく判定することができる。
【0089】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
9 目標軌道
40 車両
41 停車制御装置(制御部)
42 走行制御装置
55 記憶部
56 相関データ
Dps 停車スペースの奥行き
Wps 停車スペースの幅
Fs 空きスペース
Dfs 空きスペースの奥行き
Wfs 空きスペースの幅
Cw 張り出し長
Thcw しきい値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8