(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ラインローラ
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
A01K89/01 C
(21)【出願番号】P 2018240052
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【氏名又は名称】大坂 知美
(72)【発明者】
【氏名】落合 浩士
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-209357(JP,A)
【文献】特開2014-155499(JP,A)
【文献】特開2014-223054(JP,A)
【文献】特開2015-065900(JP,A)
【文献】独国特許発明第102015012349(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用スピニングリールのスプールに釣糸を案内するためのラインローラであって、
釣糸を案内するガイド面を外周に有する円筒状の案内部材と、
前記案内部材の内周面を回転可能に支持する軸受と、
前記軸受の内周面を径方向に支持する支持部材と、
前記軸受の端面に当接して軸方向の位置を固定するカラーと、
前記カラーと前記支持部材との接合面に、前記案内部材の回転軸回りの全周にわたって介在する防水部材と、
を備え、
前記カラーと前記支持部材との接合面に、前記カラーまたは前記支持部材に前記回転軸回りの全周にわたって連続する溝が形成されており、
前記溝に
Oリングからなる前記防水部材が配置される、
ラインローラ。
【請求項2】
魚釣用スピニングリールのスプールに釣糸を案内するためのラインローラであって、
釣糸を案内するガイド面を外周に有する円筒状の案内部材と、
前記案内部材の内周面を回転可能に支持する軸受と、
前記軸受の内周面を径方向に支持する支持部材と、
前記軸受の端面に当接して軸方向の位置を固定するカラーと、
前記カラーと前記支持部材との接合面に、前記案内部材の回転軸回りの全周にわたって介在する防水部材と、
を備え、
前記カラーと前記支持部材との接合面に、前記カラーまたは前記支持部材に前記回転軸回りの全周にわたって連続する溝が形成されており、
前記溝に撥水性グリースからなる前記防水部材が配置される、
ラインローラ。
【請求項3】
前記カラーは、前記軸受を軸方向に挟んで軸方向の位置を固定する第1のカラーおよび第2のカラーを含み、
前記防水部材は、前記第1のカラーと前記支持部材との接合面に、前記回転軸回りの全周にわたって介在する第1の防水部材、および、前記第2のカラーと前記支持部材との接合面に、軸回りの全周にわたって介在する第2の防水部材を含み、
前記第1のカラーと前記支持部材との接合面に、前記第1のカラーまたは前記支持部材に前記回転軸回りの全周にわたって連続する第1の溝が形成されており、前記第1の防水部材は前記第1の溝に配置され、
前記第2のカラーと前記支持部材との接合面に、前記第2のカラーまたは前記支持部材に前記回転軸回りの全周にわたって連続する第2の溝が形成されており、前記第2の防水部材は前記第2の溝に配置される、
請求項1
または2に記載のラインローラ。
【請求項4】
前記溝は、前記支持部材の外周面に形成されている、請求項1
から3のいずれか1項に記載のラインローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣に用いられるスピニングリールのラインローラに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用のスピニングリールは、スプールと、一対のロータアームを有するロータと、一対のロータアームの先端部に揺動可能に装着された釣糸案内機構、いわゆるベールアームと、を備えている。釣糸案内機構は、釣糸をスプールに案内するための機構である。釣糸案内機構は、ベールと、ベールの両端部を支持する一対のベール支持部材と、ラインローラと、を有している。
【0003】
ラインローラは、滑らかに回転するように軸受で支持されており、軸受に水が浸入するのを防止することが必要である。例えば、特許文献1には、ラインローラを支持する軸受の防水、防塵を図った魚釣用スピニングリールが記載されている。特許文献1のスピニングリールでは、ハンドル操作に連動回転するロータの支持アームに取り付く支持部材の支持部に、軸受を介してラインローラを回転可能に支持すると共に、当該ラインローラと上記支持部との間にシール部材を介在させた魚釣用スピニングリールに於て、前記ラインローラと軸受との間に、前記シール部材の保持部を設けたカラーを介在し、当該保持部にシール部材を保持して、シール部材の先端を前記支持部側に摺接させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1のラインローラでは、軸受の軸方向の位置を固定するワッシャの外周面にシール部材が摺接して、ワッシャの外周はシールされている。しかし、ワッシャが嵌合する支持部とワッシャとの接合面、およびワッシャを押さえているアームレバーとワッシャとの接合面は、硬質の部材どうしの接合であって、それらの接合面を通じて軸受に水が浸入する可能性がある。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたもので、軸受を径方向に支持する支持部材と、軸受の軸方向の位置を固定するカラーとの間から、軸受に水が浸入するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観点に係るラインローラは、魚釣用スピニングリールのスプールに釣糸を案内するためのラインローラであって、釣糸を案内するガイド面を外周に有する円筒状の案内部材と、案内部材の内周面を回転可能に支持する軸受と、軸受の内周面を径方向に支持する支持部材と、軸受の端面に当接して軸方向の位置を固定するカラーと、カラーと支持部材との接合面に、案内部材の回転軸回りの全周にわたって介在する防水部材と、を備え、カラーと支持部材との接合面に、カラーまたは支持部材に回転軸回りの全周にわたって連続する溝が形成されており、溝にOリングからなる防水部材が配置される。
【0008】
好ましくは、カラーは、軸受を軸方向に挟んで軸方向の位置を固定する第1のカラーおよび第2のカラーを含み、防水部材は、第1のカラーと支持部材との接合面に、回転軸回りの全周にわたって介在する第1の防水部材、および、第2のカラーと支持部材との接合面に、軸回りの全周にわたって介在する第2の防水部材を含み、第1のカラーと支持部材との接合面に、第1のカラーまたは支持部材に回転軸回りの全周にわたって連続する第1の溝が形成されており、第1の防水部材は第1の溝に配置され、第2のカラーと支持部材との接合面に、第2のカラーまたは支持部材に回転軸回りの全周にわたって連続する第2の溝が形成されており、第2の防水部材は第2の溝に配置される。
【0009】
好ましくは、溝は、支持部材の外周面に形成されている。
【0012】
あるいは、防水部材は、撥水性グリースである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラインローラの軸受を径方向に支持する支持部材と、軸受の軸方向の位置を固定するカラーとの接合面に、防水部材を配置したので、支持部材とカラーとの間から、軸受に水が浸入するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るラインローラを備えるスピニングリールの側面図
【
図2】実施の形態に係るラインローラを備えるスピニングリールの正面図
【
図4】実施の形態1の変形例に係るラインローラの断面図
【
図5】防水部材がリップシールの場合のラインローラの断面図
【
図6】防水部材が撥水性グリースの場合のラインローラの断面図
【
図7】本発明の実施の形態2に係るラインローラの断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態に係るラインローラを備えるスピニングリールの側面図である。魚釣用のスピニングリール100は、リール本体110、ロータ120、スプール130、ハンドル140、および釣糸案内機構2を備えている。ハンドル140を回して、ロータ120をスプール130の周りに回転させることができる。ロータ120の回転に同期して、スプール130が
図1の左右方向に往復動する。ロータ120が、
図1の左右方向の軸の周りに回転することによって、釣糸は釣糸案内機構2で案内されてスプール130に巻かれる。釣糸の先につけた仕掛けをキャスティングすると、スプール130に巻かれた釣糸は、
図1の左方向に繰り出される。釣糸の繰り出される方向を前という。
【0017】
リール本体110は、ケース部111と、蓋部112とを有している。蓋部112は、ケース部111に対して取り外し可能である。また、ケース部111は、スピニングリール100を釣竿の下に取り付けるための、前後方向に延びる装着部113を有している。装着部113は、釣竿に装着される部分である。ハンドル140は、リール本体110の左右どちらにも装着できる。
図1では、ハンドル140はスピニングリール100を前から見て右に装着されている。
【0018】
ロータ120は、第1ロータアーム122および第2ロータアーム123を有する。釣糸案内機構2は、糸案内姿勢と糸開放姿勢とを取るように、第1ロータアーム122および第2ロータアーム123の先端部に揺動可能に支持されている。釣糸案内機構2は、ロータ120の回転軸に交わる軸、
図1では上下方向の軸の周りに揺動可能である。釣糸案内機構2は、第1ベール支持部材21と、第2ベール支持部材22と、ベール23と、ラインローラの案内部材を回転可能に支持する支持軸(支持部材)24と、を備えている。
【0019】
第1ベール支持部材21は、第1端部21aと第2端部21bとを有する。第1端部21aは、第1ロータアーム122の先端部に揺動可能に支持される。第1ベール支持部材21の第2端部21bは、支持軸24を介して、ベール23の第1端部23aを支持する。
【0020】
第2ベール支持部材22は、第1端部22aと第2端部22bとを有する。第1端部22aは、第2ロータアーム123の先端部に揺動可能に支持される。第2端部22bは、ベール23の第2端部23bを支持する。
【0021】
図2は、実施の形態に係るラインローラを備えるスピニングリールの正面図である。
図2は、釣糸案内機構2が糸案内姿勢を取っている状態を示す。
図2では、
図1とは反対に、ハンドル140がスピニングリール100の前から見て左に装着されている状態を示す。
【0022】
ベール23は、略U字状のステンレス合金製の部材である。ベール23は、糸案内姿勢でスプール130の外周面に沿って外方に凸となるように湾曲している。ベール23の第1端部23aは、支持軸24を介して、第1ベール支持部材21に支持されている。ベール23の第2端部23bは、第2ベール支持部材22に支持されている。
【0023】
釣糸案内機構2が糸開放姿勢から糸案内姿勢に復帰したときに、釣糸がスピニングリール100の前から、
図2でベール23の外側を通ってスプール130に達するように配置される。釣糸の端はスプール130に固定されている。糸案内姿勢で、ロータ120が
図2で時計回りに回ると、釣糸はベール23の外側を第1端部23aの方に滑って、ラインローラ3に落ち込む。さらにロータ120が回転すると、スプール130は回転しないので、釣糸はラインローラ3にたぐられて、スプール130に巻かれる。
【0024】
ラインローラ3は、ロータ120の回転に従って、ロータ120の軸の周りに公転すると同時に、釣糸に接して案内するラインローラ3の案内部材が支持軸24の周りに自転する。釣糸を損傷させないために、ラインローラ3の案内部材は支持軸24の周りに滑らかに回ることが必要である。
【0025】
図3は、実施の形態1に係るラインローラの断面図である。
図3は、ラインローラ3の案内部材6が自転する軸を通る断面を示す。ラインローラ3は、第1ベール支持部材21およびベール23に回転不能に支持される支持軸24に対し、円筒状の案内部材6が支持軸24の周りに回転可能に支持されている。釣糸は、案内部材6の外周面に接し、回転する案内部材6によってスプール130に案内される。案内部材6の外周面は、釣糸を案内するガイド面である。以下の説明において、ラインローラ3の回転軸とは、案内部材6が自転する中心軸をいう。軸方向とは、案内部材6の回転軸が延びる方向を意味する。軸方向は、支持軸24が延びる方向を意味し、
図3では左右方向が軸方向である。また、径方向とは、回転軸を中心とする円の径方向を意味する。また、周方向とは、回転軸を中心とする円の周方向を意味する。
【0026】
ラインローラ3は、案内部材6、第1ブッシュ8および第2ブッシュ9、第1軸受11および第2軸受12、第1カラー4、スペーサ7および第2カラー5、ならびに、支持部材である支持軸24を備える。案内部材6は、第1ブッシュ8および第2ブッシュ9で軸方向および径方向に規制されて支持される。第1ブッシュ8および第2ブッシュ9はそれぞれ、第1軸受11および第2軸受12で回転可能に支持される。第1軸受11および第2軸受12の内周面は、支持部材である支持軸24で径方向に支持される。第1軸受11および第2軸受12は、第1カラー4、スペーサ7および第2カラー5で軸方向の位置が固定されている。
【0027】
案内部材6は、内径が小さい小径部61の軸方向両端に段が形成され、段から軸方向および径方向に拡大した形状である。第1ブッシュ8および第2ブッシュ9はそれぞれ、軸方向の一方の端に径方向内方に突出するフランジ81,91が形成され、他方は外径に段を形成して径が大きい大径部82,92を有する。第1ブッシュ8および第2ブッシュ9は、互いにフランジ81,91を向かい合わせて配置され、両者のフランジ81,91が第1軸受11および第2軸受12の外輪に挟まれている。案内部材6の内周面の段は、第1ブッシュ8および第2ブッシュ9の大径部82,92で軸方向に挟まれている。
図3では、第1ブッシュ8と第2ブッシュ9は同じ形状であり、互いに逆向きに向かい合わされている。
【0028】
第1カラー4、第1軸受11、スペーサ7、第2軸受12および第2カラー5は、その順でならんで支持軸24に嵌合している。第1軸受11の内輪と第2軸受12の内輪の間にスペーサ7が介在し、第1軸受11の内輪の他方の端面は第1カラー4に当接している。第2軸受12の内輪の他方の端面は第2カラー5に当接している。第1カラー4の他方の端面は、ベール23に当接して固定されている。第2カラー5の他方の端面は、第1ベール支持部材21に当接して固定されている。支持軸24には、一方の端に大径のフランジ27が形成され、他方の端から中心軸に沿って雌ねじが形成されている。支持軸24の雌ねじにボルト30が螺合して締結されている。支持軸24のフランジ27は、第1ベール支持部材21に形成された孔21cの縁に掛かり、ボルト30の頭31は、ベール23に形成された孔23cの縁に掛かっている。ボルト30の頭31と支持軸24のフランジ27で、ベール23、第1カラー4、第1軸受11、スペーサ7、第2軸受12、第2カラー5および第1ベール支持部材21が挟まれて、固定されている。
【0029】
ラインローラ3は、魚釣りをする現場の水がかかる環境にさらされる。すなわち、案内部材6の外周、ベール23、第1ベール支持部材21、ボルト30の頭31および支持軸24のフランジ27に水がかかる。そのため、案内部材6と第1ブッシュ8および第2ブッシュ9との接合面、第1ブッシュ8と第1カラー4との間の開口、ならびに、第2ブッシュ9と第2カラー5との間の開口を通して、第1軸受11および第2軸受12に水が浸入する可能性がある。さらに、ベール23と第1カラー4の接合面またはベール23と支持軸24の接合面から、第1カラー4と支持軸24との接合面を通じて第1軸受11に水が浸入する可能性がある。また、第1ベール支持部材21と第2カラー5の接合面または第1ベール支持部材21と支持軸24の接合面から、第2カラー5と支持軸24との接合面を通じて第2軸受12に水が浸入する可能性がある。実施の形態1のラインローラ3では、それらの箇所に防水を施している。
【0030】
第1ブッシュ8の大径部82の外周面に形成された、全周に亘って連続する溝83にOリング84が配置されている。案内部材6と第1ブッシュ8の接合面は、Oリング84でシールされている。同様に、第2ブッシュ9の大径部92の外周面に全周に亘って連続して形成された溝93にOリング94が配置され、案内部材6と第2ブッシュ9の接合面は、Oリング94でシールされている。2つのOリング84,94によって、案内部材6と第1ブッシュ8および第2ブッシュ9との接合面から、第1軸受11および第2軸受12に水が浸入するのを防止している。また、2つのOリング84,94が案内部材6と第1ブッシュ8および第2ブッシュ9に密着することによって、案内部材6、第1ブッシュ8および第2ブッシュ9の振動および音鳴りが防止される。
【0031】
第1ブッシュ8の大径部82と第1カラー4との間に、弾性体で形成された円環状の第1リップシール42が配置されている。第2ブッシュ9の大径部92と第2カラー5との間に、弾性体で形成された円環状の第2リップシール52が配置されている。第1リップシール42は、第1カラー4の外周に全周に亘って連続する溝41に嵌められている。第2リップシール52は第2カラー5の外周面に全周に亘って連続する溝51に嵌められている。第1リップシール42および第2リップシール52はそれぞれ、開放状態より伸張された状態で溝41,51に嵌合し、溝41,51の底に密着している。第1リップシール42の外周先端は、第1ブッシュ8の大径部82の内周面に当接または近接し、第1カラー4と第1ブッシュ8との間の開口をシールしている。第2リップシール52の外周先端は、第2ブッシュ9の大径部92の内周面に当接または近接し、第2カラー5と第2ブッシュ9との間の開口をシールしている。
【0032】
支持軸24の外周面の第1カラー4と接合する部分に、回転軸の全周に亘って連続する第1の溝25が形成され、第1の溝25に第1の防水部材であるOリング13が嵌められている。支持軸24の外周面の第2カラー5と接合する部分に、回転軸の全周に亘って連続する第2の溝26が形成され、第2の溝26に第2の防水部材であるOリング14が嵌められている。
【0033】
Oリング13は、第1の溝25の底と第1カラー4の内周面に圧接され、第1カラー4と支持軸24との接合面を通じて第1軸受11に水が浸入するのを防止する。Oリング14は、第2の溝26の底と第2カラー5の内周面に圧接され、第2カラー5と支持軸24との接合面を通じて第2軸受12に水が浸入するのを防止する。
【0034】
以上説明したように、実施の形態1のラインローラ3によれば、ラインローラ3の外部から第1軸受11および第2軸受12へ到る接合面と開口は、Oリング84,94、第1リップシール42、第2リップシール52、第1の防水部材であるOリング13、および第2の防水部材であるOリング14でシールされ、第1軸受11および第2軸受12が防水される。特に、Oリング13およびOリング14によって、第1軸受11および第2軸受12の支持部材である支持軸24と、第1軸受11および第2軸受12の軸方向の位置を固定する第1カラー4および第2カラー5との接合面を通じて、第1軸受11および第2軸受12に水が浸入するのが防止される。その結果、第1軸受11および第2軸受12の防水が保たれ、案内部材6の回転の円滑性が維持される。
【0035】
実施の形態1のラインローラ3は、
図3の構成に限らない。例えば、支持軸24とボルト30の向きを逆にして、支持軸24のフランジ27がベール23に掛かり、ボルト30の頭31が第1ベール支持部材21に掛かるように構成してもよい。また例えば、案内部材6と第1ブッシュ8、または、案内部材6と第2ブッシュ9が一体に形成されていてもよい。案内部材6、第1ブッシュ8および第2ブッシュ9が一体に形成されていてもよい。その場合は、Oリング84、またはOリング94が省略される。
【0036】
第1ブッシュ8と第1カラー4との開口、または、第2ブッシュ9と第2カラー5との開口をシールするのは、リップシールに限らない。例えば、撥水性グリース、ラビリンスシールまたは磁性流体シールなどを用いてもよい。また、第1軸受11および第2軸受12を合わせて、1つの軸受で案内部材6を支持する構成も考えられる。
【0037】
Oリング13が配置される第1の溝25を、第1カラー4の内周面に形成してもよい。その場合、Oリング13は、第1カラー4に形成された第1の溝25の底と支持軸24の外周面に圧接される。また、Oリング14が配置される第2の溝26を、第2カラー5の内周面に形成してもよい。その場合、Oリング14は、第2カラー5に形成された第2の溝26の底と支持軸24の外周面に圧接される。
【0038】
その他、ベール23と第1カラー4を一体に構成し、ベール23で直接、第1軸受11の位置を固定する構成でもよい。その場合、ベール23は第1カラー4を兼ね、Oリング13は、ベール23と支持軸24との接合面をシールする。また、第1ベール支持部材21と第2カラー5を一体に構成し、第1ベール支持部材21で直接、第2軸受12の位置を固定する構成でもよい。その場合は、第1ベール支持部材21は第2カラー5を兼ね、Oリング14は、第1ベール支持部材21と支持軸24との接合面をシールする。
【0039】
変形例.
図4は、実施の形態1の変形例に係るラインローラの断面図である。変形例では、第2の溝26が、支持軸24の外周面ではなく、支持軸24の第2カラー5の端面に向き合う、回転軸に交わる面に形成されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0040】
変形例でも、支持軸24のフランジ27は第1ベール支持部材21の孔21cの縁に掛かり、第1ベール支持部材21が第2カラー5の端面に当接して、第2カラー5の位置を固定している。変形例ではフランジ27が2段になっていて、フランジ27の小径部28は第2カラー5の端面に向かっている。第2カラー5の端面とフランジ27の小径部28は極めて近接し、小径部28の回転軸に交わる面と第2カラー5の端面は接合面とみなせる。
【0041】
第2の溝26は、小径部28の回転軸に交わる面に形成され、第2の溝26に第2の防水部材であるOリング14が配置される。Oリング14は、第2の溝26の底と第2カラー5の端面に圧接され、第2カラー5と支持軸24との接合面を通じて第2軸受12に水が浸入するのを防止する。小径部28の回転軸に交わる面は、回転軸に直交する平面には限らず、円錐面または球面などでもよい。
【0042】
なお、例えば、第1ベール支持部材21の孔21cと、支持軸24の第1ベール支持部材21の孔21cに嵌合する部分の外形を円筒面ではない異形にして、支持軸24が第1ベール支持部材21に対して回転しないように構成すれば、支持軸24で第2カラー5の軸方向の位置を固定することができる。その場合、支持軸24のフランジ27の小径部28は第2カラー5に当接し、小径部28の回転軸に交わる面と第2カラー5の端面は接合面である。
【0043】
第1の防水部材および第2の防水部材は、Oリング13,14には限らない。防水部材として、リップシールを用いてもよい。
図5は、防水部材がリップシールの場合のラインローラの断面図である。
図5では、ラインローラ3の要部を示し、ベール23および第1ベール支持部材21は省略されている。
【0044】
図5のラインローラ3では、第1の防水部材として弾性体で形成されたリップシール15が第1の溝25に配置され、第2の防水部材として弾性体で形成されたリップシール16が第2の溝26に配置されている。その他の構成は、
図3と同様である。リップシール15およびリップシール16はそれぞれ、開放状態より伸張した状態で嵌められ、第1の溝25および第2の溝26の底に密着している。リップシール15の外周は、第1カラー4の内周面に当接し、リップシール15は、第1カラー4と支持軸24との接合面を通じて第1軸受11に水が浸入するのを防止する。リップシール16の外周は第2カラー5の内周面に当接し、第2カラー5と支持軸24との接合面を通じて第2軸受12に水が浸入するのを防止する。
【0045】
実施の形態1で説明したように、
図5の構成でも、第1の溝25を第1カラー4の内周面に形成して、第1カラー4の方にリップシール15を配置してもよい。また、第2の溝26を第2カラー5の内周面に形成して第2カラー5の方にリップシール16を配置してもよい。その場合、リップシール15,16のリップは、径方向内方に向かうように構成する。リップシール15,16の断面と溝25,26の断面に隙間がないように、リップシール15,16を形成することによって、ラインローラ3を組み立てるときにリップシールがねじれるのを防止することができる。
【0046】
リップシール15,16の断面の形状は、
図5に示すものに限らない。断面が多角形、あるいは、断面が円弧または楕円の一部と多角形の組み合わせなど、溝25,26に配置されてシールとしての機能を発揮すれば、どのような形状でも構わない。また、
図4の変形例のように、第2の溝26を、支持軸24の第2カラー5の端面に向き合う、回転軸に交わる面に形成してもよい。
【0047】
第1の防水部材および第2の防水部材として、撥水性グリースを用いることもできる。
図6は、防水部材が撥水性グリースの場合のラインローラの断面図である。
図6では、ラインローラ3の要部を示し、ベール23および第1ベール支持部材21は省略されている。
【0048】
図6のラインローラ3では、第1の防水部材として撥水性グリース17が第1の溝25に配置され、第2の防水部材として撥水性グリース18が第2の溝26に配置されている。その他の構成は、
図3と同様である。第1の溝25および第2の溝26は、組み立てるときに撥水性グリース17,18で満たされ、第1カラー4および第2カラー5と支持軸24との接合面の微細な隙間にも、撥水性グリース17,18が入り込んでいる。撥水性グリース17,18によって、第1カラー4と支持軸24との接合面を通じて第1軸受11に水が浸入するのが防止され、第2カラー5と支持軸24との接合面を通じて第2軸受12に水が浸入するのが防止される。
【0049】
第1の溝25および第2の溝26はそれぞれ、第1カラー4および第2カラー5の内周面に形成されてもよい。その場合でも、撥水性グリース17,18が、第1の溝25および第2の溝26に充填される。第1の溝25を第1カラー4の内周面と支持軸24の外周面の両方に形成してもよい。その場合、第1カラー4の第1の溝と支持軸24の第1の溝25は向き合っていなくてもよい。第2の溝26を第2カラー5の内周面と支持軸24の外周面の両方に形成してもよい。その場合、第2カラー5の第2の溝と支持軸24の第2の溝26は向き合っていなくてもよい。
【0050】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係るラインローラの断面図である。実施の形態2では、第1ベール支持部材21、支持軸24および第2カラー5が一体に形成されている。そのため、第2の溝26および第2の防水部材がない。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0051】
実施の形態2では、第1ベール支持部材21は支持軸24を兼ね、第1軸受11および第2軸受12の内周面を径方向に支持している。また、支持軸24部分から一段径が大きくなったボス部29が、第2軸受12の内輪に当接して、第2軸受12の軸方向の位置を固定する第2カラーを兼ねている。ボルト30の頭31と第1ベール支持部材21のボス部29で、ベール23、第1カラー4、第1軸受11、スペーサ7および第2軸受12が挟まれて、固定されている。実施の形態2では、支持軸24と第2カラー5は一体であって、両者の間の接合面はない。第1ベール支持部材21のボス部29の外周に溝51が形成され、溝51に第2リップシール52が嵌められている。ボス部29と第2ブッシュ9の間の開口は、第2リップシール52でシールされている。
【0052】
実施の形態2でも、案内部材6と第1ブッシュ8の接合面は、Oリング84でシールされ、案内部材6と第2ブッシュ9の接合面は、Oリング94でシールされている。第1ブッシュ8の大径部82と第1カラー4との間に、弾性体で形成された円環状の第1リップシール42が配置され、第1リップシール42は、第1カラー4と第1ブッシュ8との間の開口をシールしている。
【0053】
支持軸24の外周面の第1カラー4と接合する部分に、回転軸の全周に亘って連続する第1の溝25が形成され、第1の溝25に第1の防水部材であるOリング13が嵌められている。Oリング13は、第1の溝25の底と第1カラー4の内周面に圧接され、第1カラー4と支持軸24との接合面を通じて第1軸受11に水が浸入するのを防止する。
【0054】
実施の形態2でも、実施の形態1で説明したのと同様に、支持軸24とボルト30の向きを逆にして、支持軸24とベール23および第1カラー4を一体に構成してもよい。その場合、第1の溝25および第1の防水部材が省略され、第2カラー5と支持軸24との接合面に形成される第2の溝26に、第2の防水部材であるOリング14が嵌められる。
【0055】
図4の変形例に類似する構成で、第1ベール支持部材21と支持軸24を別体にしたまま、支持軸24と第2カラー5を一体に構成してもよい。その場合、第1ベール支持部材21の孔と、支持軸24の第1ベール支持部材21の孔21cに嵌合する部分の外形を円筒面ではない異形にして、支持軸24が第1ベール支持部材21に対して回転しないように構成する。支持軸24と第2カラー5を一体に形成すれば、両者の間の接合面はないので、第2の溝26および第2の防水部材は不要である。
【0056】
実施の形態2でも、Oリング13が配置される第1の溝25を、第1カラー4の内周面に形成してもよい。その場合、Oリング13は、第1カラー4に形成された第1の溝の底と支持軸24の外周面に圧接される。ベール23と第1カラー4を一体に構成し、ベール23で直接、第1軸受11の位置を固定する構成でもよい。その場合、ベール23は第1カラー4を兼ね、Oリング13は、ベール23と支持軸24との接合面をシールする。また、Oリング13に代えて、第1のリップシール15または撥水性グリース17を用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
2 釣糸案内機構
3 ラインローラ
4 第1カラー
5 第2カラー
6 案内部材
7 スペーサ
8 第1ブッシュ
9 第2ブッシュ
11 第1軸受
12 第2軸受
13、14 Oリング
15、16 リップシール
17、18 撥水性グリース
21 第1ベール支持部材
21a 第1端部
21b 第2端部
21c 孔
22 第2ベール支持部材
22a 第1端部
22b 第2端部
23 ベール
23a 第1端部
23b 第2端部
23c 孔
24 支持軸(支持部材)
25 第1の溝
26 第2の溝
27 フランジ
28 小径部
29 ボス部
30 ボルト
31 頭
41 溝
42 第1リップシール
51 溝
52 第2リップシール
61 小径部
81 フランジ
82 大径部
83 溝
84 Oリング
91 フランジ
92 大径部
93 溝
94 Oリング
100 スピニングリール
110 リール本体
111 ケース部
112 蓋部
113 装着部
120 ロータ
122 第1ロータアーム
123 第2ロータアーム
130 スプール
140 ハンドル