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特許7158275ポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 27/02 20060101AFI20221014BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20221014BHJP
   C07C 63/24 20060101ALI20221014BHJP
   C07C 63/26 20060101ALI20221014BHJP
   C07C 51/09 20060101ALI20221014BHJP
   C08J 11/18 20060101ALI20221014BHJP
   C08J 11/16 20060101ALI20221014BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
C07C27/02 ZAB
C07C31/20
C07C63/24
C07C63/26 A
C07C51/09
C08J11/18
C08J11/16
C07B61/00 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018243274
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020105088
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 多加志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 武司
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503734(JP,A)
【文献】中国特許第103074760(CN,B)
【文献】特開2006-141991(JP,A)
【文献】特開2000-303350(JP,A)
【文献】米国特許第04717600(US,A)
【文献】特開2017-155349(JP,A)
【文献】J. APPL. POLYM. SCI.,2013年,130 (4),2790-2795
【文献】Journal of Applied Polymer Science,2002年,85,1652-1660
【文献】American Dyestuff Reporter,1984年,73(12),37-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 27/02
C07C 31/20
C07C 63/24
C07C 63/26
C07C 51/09
C08J 11/18
C08J 11/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂を、アルカリ剤及び下記一般式(1)で表される化合物が含まれる処理液に接触させて加水分解する工程、を備える、ポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法。
【化1】

[式(1)中、R、R、R及びRのうちの1つが、炭素数1218のアルキル基を示し、残りの3つが、それぞれ独立に、グリシジル基、炭素数1~4の炭化水素基、又は下記一般式(2)で示される基を示し(但し、残りの3つのうち少なくとも1つが、下記一般式(2)で示される基を示す)、Xが対イオンを示す。
-(AO)-H (2)
{式(2)中、Aは炭素数1~4のアルキレン基を示し、化合物の分子内におけるnの総和は以下であり、nが2以上の場合、複数のAは同一であっても、異なっていてもよい。}]
【請求項2】
前記加水分解物が、多価カルボン酸及び多価アルコール並びにオキシカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法。
【請求項3】
前記加水分解物を分離して精製する工程を更に備える、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂としてペットボトルのカット片を前記処理液に接触させて加水分解する、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、耐熱性、強度、染色性及び経済性などに優れるため、ペットボトルなどの容器、繊維及びフィルムなどの幅広い分野で用いられている。また、各分野で使用されたポリエステル樹脂は、リサイクルにかけられ再利用される。このような再利用の用途としては、例えば、食品用トレイ、化粧品などのプリスターパックなどのシート、自動車の内装、インテリア、衣料などの繊維製品、ペットボトル、回収ボックス、文房具、食品用パウチなどの成形品など様々な用途が挙げられる。
【0003】
リサイクル対象となるポリエステル樹脂としては、リサイクルの社会的な体制などが整っていることから、ペットボトルに含まれるポリエステル樹脂が先行している状況にある。リサイクルの方法としては、メカニカルリサイクル(物理的再生法)及びケミカルリサイクル(化学的再生法)が知られている。
【0004】
メカニカルリサイクルは、回収された使用済みペットボトル等を選別、粉砕、洗浄して表面に付着した汚れ、異物を十分に取り除いた後に高温下に曝して、樹脂内部にとどまっている汚染物質を拡散させ除染を行い再利用する方法である。
【0005】
ケミカルリサイクルは、回収された使用済みペットボトルに含まれるポリエステル樹脂の分子構造を変化させ再利用する方法であり、例えば、使用済みペットボトルを高温で熱分解して合成ガス及び分解油などの化学原料にする方法、使用済みペットボトルを化学的に解重合させモノマーにする方法などがある。
【0006】
近年になって、ポリエステル樹脂を化学的に解重合し、そのモノマー成分である多価カルボン酸、多価アルコール及びオキシカルボン酸等を回収して再利用するケミカルリサイクルが研究されている。この方法は、種類が異なるプラスチックが混在したり、異物や汚れが存在していても、工程上問題がなければリサイクルが可能である。
【0007】
ポリエステル樹脂を化学的に解重合する方法としては、例えば、メタノールを用いたエステル交換反応でジメチルテレフタレートを得るメタノール分解法や、エチレングリコールなどを用いたエステル交換反応反応でグリコールビス-2-(ヒドロキシエチル)テレフタレートを得るグリコール分解法が知られている。メタノール分解法は、有害性のあるメタノールを大量に使い、且つ、高圧下で反応を進行させるため、設備の負担が大きく、危険を伴う。グリコール分解法は、オリゴマーなどの副生成物が生じるため、その精製が困難である。
【0008】
上記の方法以外の分解法として、アルカリ剤を用いてポリエステル樹脂を分解し、多価カルボン酸、多価アルコール、及びオキシカルボン酸等の分解物を得るアルカリ分解法が知られている。例えば、下記特許文献1には、加水分解助剤としてアミンを使用し、芳香族ジカルボン酸単位及びアルキレングリコール単位を構成成分として含有するポリエステルを加水分解して芳香族ジカルボン酸及びアルキレングリコールを製造する方法が開示されている。また、下記特許文献2には、回収ポリエチレンテレフタレートの粉砕乃至破砕物を分解してテレフタル酸を得る方法が開示されている。更に、下記特許文献3には、ポリエステルを加水分解してジカルボン酸を回収する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平6-240046号公報
【文献】特開2000-212117号公報
【文献】特表平9-503769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アルカリ分解法は、比較的穏和な条件でポリエステル樹脂を分解することができる反面、分解に要する時間が長いという問題がある。そのため、ポリエステル樹脂から所望の分解物を製造又は回収する効率を高めようとする場合、アルカリ分解法にはポリエステル樹脂の分解効率を向上させることに技術的な需要があるが、従来の方法は低温での分解速度が低く、改善の余地がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポリエステル樹脂を低温であっても短時間で十分に分解することができ、ポリエステル樹脂から所望の加水分解物を効率よく得ることができるポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アルカリ剤及び特定の第4級アンモニウム化合物が含まれる処理液にペットボトルを混合して加水分解することにより、95~150℃の条件であっても短時間で十分な分解率が得られ、ペットボトルから加水分解物としてテレフタル酸及びイソフタル酸やエチレングリコール等を高い収率で回収できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、ポリエステル樹脂を、アルカリ剤及び下記一般式(1)で表される化合物が含まれる処理液に接触させて加水分解する工程を備えるポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法を提供する。
【0014】
【化1】

[式(1)中、R、R、R及びRのうちの1つ又は2つが、それぞれ独立に、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数5~36のアルキル基、又はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数5~36のアルケニル基を示し、残りの3つ又は2つが、それぞれ独立に、炭素数7~10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1~4の炭化水素基、又は下記一般式(2)で示される基を示し、Xが対イオンを示す。
-(AO)-H (2)
{式(2)中、Aは炭素数1~4のアルキレン基、又は炭素数2~4のアルケニレン基を示し、nは1~12の整数を示し、化合物の分子内におけるnの総和は12以下であり、nが2以上の場合、複数のAは同一であっても、異なっていてもよい。}]
【0015】
上記加水分解物は、多価カルボン酸及び多価アルコール並びにオキシカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法によれば、ポリエステル樹脂を低温であっても短時間で十分に分解することができ、ポリエステル樹脂から所望の加水分解物を効率よく得ることができる。これにより、回収されたポリエステル樹脂などから、穏和な条件で多価カルボン酸、多価アルコール又はオキシカルボン酸等を効率よく回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態のポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法は、ポリエステル樹脂を、アルカリ剤及び下記一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」という場合もある。)が含まれる処理液に接触させて加水分解する工程(以下、「加水分解工程」という場合もある。)を備える。
【0019】
【化2】

[式(1)中、R、R、R及びRのうちの1つ又は2つが、それぞれ独立に、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数5~36のアルキル基、又はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数5~36のアルケニル基を示し、残りの3つ又は2つが、それぞれ独立に、炭素数7~10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1~4の炭化水素基、又は下記一般式(2)で示される基を示し、Xが対イオンを示す。
-(AO)-H (2)
{式(2)中、Aは炭素数1~4のアルキレン基、又は炭素数2~4のアルケニレン基を示し、nは1~12の整数を示し、上記化合物の分子内におけるnの総和は12以下であり、nが2以上の場合、複数のAは同一であっても、異なっていてもよい。}]
【0020】
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂は、特に制限されず、例えば、多価アルコール及び多価カルボン酸の重合物、オキシカルボン酸の重合物、並びに多価アルコール、多価カルボン酸及びオキシカルボン酸の重合物等が挙げられる。ポリエステル樹脂は、芳香環を有する芳香族ポリエステル樹脂又は芳香環を有しない脂肪族ポリエステル樹脂であってもよく、脂肪族芳香族ポリエステル樹脂であってもよい。また、ポリエステル樹脂は、2種以上のポリエステル樹脂を含む混合物であってもよい。
【0021】
多価アルコールとしては、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールなどのブタンジオール、1,6-ヘキサメチレングリコールなどのヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンなどの芳香族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール等が挙げられる。多価アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
多価カルボン酸としては、特に制限されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタンアントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、1,2-ビス(2-クロルフェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸及びこれらのエステル形成誘導体;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸及びこれらのエステル形成誘導体;1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸及びこれらのエステル形成誘導体等が挙げられる。多価カルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
オキシカルボン酸は、分子内にカルボキシル基及び水酸基を有する化合物である。オキシカルボン酸としては、特に制限されないが、例えば、乳酸、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、ヒドロキシ酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシプロパン酸、ヒドロキシ枯草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシメチルカプロン酸、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、ウンデカラクトン及びラクチド等が挙げられる。
【0024】
ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリトリメチレンテレフタレート(1,3-プロパンジオール及びテレフタル酸の共重合体)、ポリトリメチレンイソテレフタレート(1,3-プロパンジオール、テレフタル酸及びイソフタル酸の共重合体)、ポリエチレンテレフタレート(エチレングリコール及びテレフタル酸の共重合体)、ポリエチレンイソテレフタレート(エチレングリコール、テレフタル酸及びイソフタル酸の共重合体)、ポリブチレンテレフタレート(1,4-ブタンジオールテレフタル酸の重合体)、ポリブチレンイソテレフタレート(1,4-ブタンジオール、テレフタル酸及びイソフタル酸の共重合体)、ポリトリメチレンナフタレート(1,3-プロパンジオール及び2,6-ナフタレンジカルボン酸の共重合体)、ポリエチレンナフタレート(エチレングリコール及び2,6-ナフタレンジカルボン酸の共重合体)、ポリブチレンナフタレート(1,4-ブタンジオール及び2,6-ナフタレンジカルボン酸の共重合体)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(1,4-シクロヘキサンジメタノール及びテレフタル酸の共重合体)、ポリシクロヘキサンジメチルイソテレフタレート(1,4-シクロヘキシレンジメチルジオール、テレフタル酸及びイソフタル酸の共重合体)、ポリ乳酸(乳酸の重合体)、ポリグリコール酸(グリコール酸の重合体)、乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸及びグリコール酸の共重合体)、並びに、アルキド樹脂(グリセリン、ペンタエリスリートル及びエチレングリコールなど多価アルコールと、フタル酸及び安息香酸など多価カルボン酸と、ステアリン酸、オレイン酸及びリノレイン酸など脂肪酸との共重合体)などが挙げられる。加水分解物が高収率で得られやすい点で、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンイソテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、及びポリグリコール酸が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンイソテレフタレートがより好ましい。
【0025】
ポリエステル樹脂の形態は、ペットボトル、繊維、機械カバー、絶縁材料、光学用機能性フィルム、磁気テープ、写真フィルム、包装フィルム、ロープ及びケーブルなどが挙げられる。リサイクルの社会体制やポリエステル樹脂の化学組成の均一性の観点から、ペットボトルが好ましい。
【0026】
[アルカリ剤]
アルカリ剤は、有機物を含む有機系アルカリ剤及び有機物を含まない無機系アルカリ剤が挙げられる。ポリエステル樹脂の加水分解物を高収率で得る観点から、無機系アルカリ剤を用いることが好ましい。
【0027】
有機系アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、アルキルアミン類、アルカノールアミン類及びアルキレンジアミン類などが挙げられる。無機系アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及びケイ酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂の加水分解物を高収率で得る観点から、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムが好ましい。アルカリ剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
処理液に含まれるアルカリ剤の含有量は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂を多価カルボン酸、多価アルコール及びオキシカルボン酸等の加水分解物に完全に加水分解する観点から、加水分解しようとするポリエステル樹脂が有するエステル基に対して1モル当量以上となるように調整することが好ましい。アルカリ剤の含有量は、ポリエステル樹脂の分解率と分解速度の観点から、ポリエステル樹脂が有するエステル基に対して、1~100モル当量であることが好ましく、1~20モル当量であることがより好ましい。
【0029】
[化合物(1)]
次に、本実施形態の化合物(1)について説明する。
【0030】
化合物(1)は、ポリエステル樹脂の加水分解物を高収率で得る観点から、R、R、R及びRのうちの1つが、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数5~36のアルキル基、又はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数5~36のアルケニル基を示し、残りの3つが、それぞれ独立に、炭素数7~10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1~4の炭化水素基、又は上記一般式(2)で示される基を示し、上記一般式(2)中、nは1~6の整数を示し、化合物(1)の分子内におけるnの総和は6以下であることが好ましく、R、R、R及びRのうちの1つが、炭素数8~22のアルキル基を示し、残りの3つが、それぞれ独立に、炭素数7~10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1~4の炭化水素基、又は上記一般式(2)で示される基を示し、上記一般式(2)中、nは1~6の整数を示し、化合物(1)の分子内におけるnの総和は6以下であることがより好ましい。
【0031】
化合物(1)が炭素数7~10のアラルキル基を含む場合、炭素数7~10のアラルキル基としては、特に制限されないが、例えば、ベンジル基及びフェネチル基などが挙げられる。
【0032】
は、第4級アンモニウム化合物と対イオンを形成することができるアニオンであれば特に制限はなく、例えば、塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲンアニオン;硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンなど無機アニオン;ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、グルコン酸イオン、乳酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、アジピン酸イオンなどの一価又は多価カルボン酸に由来するアニオン;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルイオン、アルキル又はアリールリン酸エステルイオンなどのリン酸エステルアニオン;アルキルベンゼンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオンなどスルホン酸アニオン;メチルカーボネートイオン、エチルカーボネートイオンなどのアルキルカーボーネートアニオン;アルキル硫酸エステルイオン、アルケニル硫酸エステルイオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルイオンなど硫酸エステルアニオンなどを挙げることができる。
【0033】
化合物(1)は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
化合物(1)は、例えば、以下の方法で製造することができる。
<R、R、R及びRのうちの1つが炭素数5~36のアルキル基(又はアルケニル基)であり、残りの3つがそれぞれ独立に、炭素数7~10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1~4の炭化水素基、又は下記一般式(2)で示される基である化合物>
このような化合物は、例えば、下記に示される方法等により得ることができる。
【0035】
(i)トリエタノールアミンに炭素数5~36のアルキル(又はアルケニル)ハライドを反応させる方法。
(ii)トリエタノールアミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、炭素数5~36のアルキル(又はアルケニル)ハライドを反応させる方法。
(iii)炭素数5~36のモノアルキル(又はモノアルケニル)アミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、下記一般式(a-1)で示される化合物、炭素数1~4のアルキルハライド、炭素数1~4のアルケニルハライド、ジアルキル硫酸、ジアルキルカーボネート、塩化ベンジル及びエピクロロヒドリンなどを用いて4級化する方法。
Y-R10-OH (a-1)
[式(a-1)中、Yはハロゲン原子を示し、R10は炭素数2~4のアルキレン基(又はアルケニレン基)を示す。]
(iv)炭素数5~36のモノアルキル(又はモノアルケニル)アミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、酸で中和した後、アルキレンオキシドを反応させて4級化する方法。
(v)炭素数5~36のアルキル基(又はモノアルケニル基)、並びに炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルケニル基、水酸基を有する炭素数1~4のアルキル基及び水酸基を有する炭素数1~4のアルケニル基からなる群より選択される基を2つ有する三級アミンを上記一般式(a-1)で示される化合物、炭素数1~4のアルキルハライド、炭素数1~4のアルケニルハライド、ジアルキル硫酸、ジアルキルカーボネート、塩化ベンジル又はエピクロロヒドリンなどを用いて4級化する方法。
(vi)炭素数5~36のアルキル基(又はアルケニル基)、並びに炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルケニル基、水酸基を有する炭素数1~4のアルキル基、水酸基を有する炭素数1~4のアルケニル基からなる群より選択される基を2つ有する三級アミンを酸で中和した後、アルキレンオキシドを反応させて4級化する方法。
【0036】
<R、R、R及びRのうちの2つが炭素数5~36のアルキル基(又はアルケニル基)であり、残りの2つが炭素数7~10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1~4の炭化水素基、又は下記一般式(2)で示される基である化合物>
このような化合物は、例えば、下記に示される方法等により得ることができる。
【0037】
(i)炭素数5~36のジアルキル(又はジアルケニル)アミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、酸で中和した後、アルキレンオキシドを反応させて4級化する方法。
(ii)炭素数5~36のモノアルキル(又はモノアルケニル)アミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、炭素数5~36のアルキル(又はアルケニル)ハライドを反応させ4級化する方法。
(iii)炭素数5~36のジアルキル(又はジアルケニル)アミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、上記一般式(a-1)で示される化合物、炭素数1~4のアルキルハライド、炭素数1~4のアルケニルハライド、ジアルキル硫酸、ジアルキルカーボネート、塩化ベンジル及びエピクロロヒドリンなどを用いて4級化する方法。
(iv)炭素数5~36のアルキル基及び炭素数5~36のアルケニル基のうち一方を2つ又は両方を1つずつ、並びに炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルケニル基、水酸基を有する炭素数1~4のアルキル基及び水酸基を有する炭素数1~4のアルケニル基からなる群より選択される基を1つ有する三級アミンを酸で中和した後、アルキレンオキシドを反応させて4級化する方法。
(v)炭素数5~36のアルキル基及び炭素数5~36のアルケニル基のうち一方を2つ又は両方を1つずつ、並びに炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルケニル基、水酸基を有する炭素数1~4のアルキル基及び水酸基を有する炭素数1~4のアルケニル基からなる群より選択される基を1つ有する三級アミンに、上記一般式(a-1)で示される化合物、炭素数1~4のアルキルハライド、炭素数1~4のアルケニルハライド、ジアルキル硫酸、ジアルキルカーボネート、塩化ベンジル又はエピクロロヒドリンなどを用いて4級化する方法。
【0038】
<化合物(1)の含有量>
処理液に含まれる化合物(1)の含有量は、ポリエステル樹脂の分解効果、コストの観点から、処理液の全量に対して0.001~5質量%であることが好ましく、0.005~5質量%であることがより好ましく、0.01~2質量%であることが更に好ましい。
【0039】
処理液に含まれる化合物(1)の含有量は、アルカリ剤100質量部に対して、0.0005~200質量部であってよく、分解率と処理コストの観点から、0.001~200質量部であることが好ましく、0.001~100質量部であることがより好ましく、0.2~50質量部であることが更に好ましい。
【0040】
[その他成分]
本実施形態で用いられる処理液は、その用途に応じて、純水、イオン交換水、井戸水及び水道水などの水;メタノール、エタノール及びプロパノールなどの炭素数1~6の低級アルコール並びにこれら低級アルコールのアルキレンオキシド付加物;エチレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングルコールなどのグリコール類;更には、加水分解後の異物を除去するために、3-メチル-3-メトキシブタノールなどの有機溶剤;オレンジオイルなどの天然溶剤、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、化合物(1)以外のカチオン界面活性剤、両性界面活性剤、鉱物油等のその他の成分を含有することができる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて配合することができる。
【0041】
[加水分解工程]
本実施形態の加水分解工程は、ポリエステル樹脂を処理液に接触させることができれば、特に制限されない。ポリエステル樹脂を処理液に接触させる方法としては、例えば、ポリエステル樹脂を処理液に浸漬させる方法、ポリエステル樹脂に処理液を噴霧する方法、ポリエステル樹脂に処理液を滴下する方法などが挙げられる。ポリエステル樹脂を処理液に接触させる方法がポリエステル樹脂を処理液に浸漬させる方法である場合、処理液を攪拌しても、攪拌せず静置してもよい。攪拌方法としては、例えば、攪拌羽根によって攪拌する方法、エアーバブリング攪拌する方法、分解釜(槽)の回転及び振動によって攪拌する方法等が挙げられる。また、本実施形態のポリエステル樹脂を処理液に接触させて加水分解する工程において、ポリエステル樹脂を浸漬させた処理液に超音波をあててもよい。
【0042】
加水分解工程における処理方式は、特に制限されないが、例えば、貯蔵した処理液中にポリエステル樹脂を投入するバッチ方式又はポリエステル樹脂に処理液を通液する連続方式であってもよい。
【0043】
加水分解工程における処理温度は、特に制限されないが、ポリエステル樹脂の分解性と熱エネルギーの節約の観点から、50~250℃であることが好ましく、60~200℃であることがより好ましく、80~150℃であることが更に好ましい。
【0044】
加水分解工程における処理時間は、特に制限されないが、分解率と処理コストの観点から、0.1~36時間であることが好ましく、0.5~24時間であることがより好ましく、0.5~12時間であることがさらに好ましい。
【0045】
加水分解工程におけるポリエステル樹脂の質量と、処理液の質量との比率は、ポリエステル樹脂の分解性の観点から、ポリエステル樹脂:処理液が1:1000~1:1であることが好ましく、1:100~1:2であることがより好ましい。
【0046】
[加水分解物]
本実施形態の加水分解工程により、ポリエステル樹脂の加水分解物を得ることができる。加水分解物は、多価カルボン酸及び多価アルコール並びにオキシカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種を含むことができる。多価カルボン酸、多価アルコール及びオキシカルボン酸としては、上述したポリエステル樹脂における多価カルボン酸、多価アルコール及びオキシカルボン酸と同様のものが挙げられる。
【0047】
[精製工程]
本実施形態のポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法は、ポリエステル樹脂を加水分解して得られた加水分解物を分離して精製する工程(以下、「精製工程」という場合もある。)を更に備えていてもよい。
【0048】
加水分解物が多価カルボン酸を含む場合、多価カルボン酸の分離精製は、特に制限されず公知の方法を用いることができる。例えば、ポリエステル樹脂がペットボトルにおいて主に使用されるポリエチレンイソテレフタレートである場合、加水分解工程で得られた分解液から加水分解せずに残った未分解物をろ過し、その後、硫酸や塩酸などの酸をろ液に添加してテレフタル酸及びイソフタル酸を析出させ、ろ過、遠心などを行って分離し、水洗・乾燥などの処理を行い、多価カルボン酸であるテレフタル酸及びイソフタル酸を精製する方法が挙げられる。更に多価カルボン酸の純度を上げたい場合は、例えば、アルカリ溶液に溶解して再析出を繰り返してもよい。
【0049】
加水分解物が多価アルコールを含む場合、多価アルコールの分離精製は、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ペットボトルにおいて主に使用されるポリエチレンイソテレフタレートである場合、加水分解工程で得られた分解液から加水分解せずに残った未分解物をろ過し、その後、ろ液に硫酸や塩酸などの酸を添加してテレフタル酸及びイソフタル酸を析出させ、ろ過してテレフタル酸及びイソフタル酸を除去したろ液(多価アルコール溶液)を蒸留して回収する方法が挙げられる。多価アルコールの純度を上げたい場合は、例えば、蒸留の段数や回数を増やし、蒸留後に再び水や溶剤によって再溶解したあと、ろ過などして異物を取り除き、再蒸留してもよい。
【0050】
加水分解物がオキシカルボン酸を含む場合、オキシカルボン酸の分離精製は、特に制限されず公知の方法を用いることができる。例えば、ポリエステル樹脂がポリ乳酸である場合、加水分解工程で得られた分解液から加水分解せずに残った未分解物をろ過し、その後、得られたろ液に含まれる乳酸のアルカリ塩にカルシウム塩を添加し、乳酸を乳酸カルシウムとして晶析し、溶解性の不純物を分離した後、硫酸など酸と反応させて乳酸カルシウムを乳酸に転換し、カルシウム分を硫酸カルシウム結晶として分離する方法で精製できる。さらに乳酸の純度を高めるために活性炭処理、反復晶析、イオン交換樹脂、有機溶媒による抽出、電気透析、乳酸をメタノールやエタノール等のアルコールでエステル化し蒸留することによって不純物を分離する方法等を併用してもよい。
【0051】
[その他の工程]
本実施形態のポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法は、上述した加水分解工程及び精製工程に加えて、その他の工程を更に備えていてもよい。例えば、ポリエステル樹脂の加水分解をより促進するために、加水分解工程の前に、ポリエステル樹脂の裁断工程や殺菌洗浄工程などの工程を有していてもよい。
【実施例
【0052】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0053】
<第4級アンモニウム塩の調製>
{化合物(E1)~(E10)及び(CE1)~(CE4)の調製}
下記式(3)で表される第4級アンモニウム塩について、表1及び2に示されるように第4級アンモニウム基の置換基や対イオンの種類を変更した化合物をそれぞれ調製した。
【0054】
【化3】
【0055】
なお、表1及び2中、EO及びPOは、それぞれ、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を示し、数字は付加モル数(又は平均付加モル数)を示す。また、表1及び2中で、例えば、化合物(E4)のようにR及びRの項目にまたいで-(EO)Hという記載がある場合は、結合手を2つ有する窒素原子1モルに対して、平均付加モル数で4モルのEOが付加した構造を表す。化合物(E6)のようにR及びRの項目にまたいで-(EO)-(PO)Hという記載がある場合は、結合手を2つ有する窒素原子1モルに対して、平均付加モル数で6モルのEO及び2モルのPOがそれぞれブロックで付加した構造を表す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
{化合物(CE5)及び(CE6)の調製}
下記式(4)で表される第3級アミン化合物について、表3で示されるように第3級アミン化合物の置換基を変更した化合物をそれぞれ調製した。
【化4】
【0059】
【表3】
【0060】
{化合物(CE7)の調製}
下記式(5)で表される第2級アミン化合物について、表4で示されるように第2級アミン化合物の置換基を変更した化合物を調製した。
【化5】
【0061】
【表4】
【0062】
(調製例1)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にラウリルジメチルアミンを1モル当量と重量比で同量の蒸留水を仕込み、リン酸を0.97モル当量混合し中和した。オートクレーブを窒素置換した後、85~95℃でエチレンオキシド1.1モル当量を吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(E1)を得た。得られた化合物(E1)の酸価は0.2であった。H-NMR及び13C-NMR[JMN-ECZ500R(日本電子(株))]を用いて化合物(E1)を分析し、化合物(E1)が、一般式(1)中、Rがラウリル基、R及びRがメチル基、Rが-(EO)Hである化合物を含むことを確認した。また、得られた化合物(E1)の不揮発分は、60.8質量%であった。これを水で希釈して、化合物(E1)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0063】
(調製例2)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にラウリルアミンを1モル当量仕込み、その後、オートクレーブを窒素置換した後、120~130℃でエチレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、ラウリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と中間体化合物と重量比で倍量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85~95℃でジメチル硫酸を1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(E2)を得た。得られた化合物(E2)のアミン価は0.1であった。またH-NMR及び13C-NMRを用いて上記中間体化合物及び化合物(E2)を分析し、化合物(E2)が、一般式(1)中、Rがラウリル基、R及びRが-(EO)H、Rがメチル基である化合物を含むことを確認した。また、得られた化合物(E2)の不揮発分は、43.0質量%であった。これを水で希釈して、化合物(E2)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0064】
(調製例3)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にラウリルアミンを1モル当量仕込み、その後、オートクレーブを窒素置換した後、120~130℃でエチレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、ラウリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物である中間体化合物を得た。中間体化合物と重量比で同量の蒸留水を中間体化合物に添加し、さらにパラトルエンスルホン酸を0.97モル当量混合し中和した。オートクレーブを窒素置換した後、これに再度85~95℃でエチレンオキシド1.1モル当量を吹き込んだ。4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(E3)を得た。得られた化合物(E3)の酸価は0であった。H-NMR及び13C-NMRを用いて上記中間体化合物及び化合物(E3)を分析し、化合物(E3)が、一般式(1)中、Rがラウリル基、R、R及びRが-(EO)Hである化合物を含むことを確認した。また、得られた化合物(E3)の不揮発分は、64.1質量%であった。これを水で希釈して、化合物(E3)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0065】
(調製例4)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にステアリルアミンを1モル当量仕込み、オートクレーブを窒素置換した後、120~130℃でエチレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、ステアリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物を得た。さらに、触媒として水酸化ナトリウムをステアリルアミンの5/1000質量分を仕込んだ。そして、オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した後、120~130℃でエチレンオキシド2モル当量吹き込み、4時間熟成を行い、ステアリルアミンのエチレンオキシド4モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と中間体化合物と重量比で倍量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85~95℃でジエチル硫酸を1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(E4)を得た。得られた化合物(E4)のアミン価は0.3であった。またH-NMR及び13C-NMRを用いて上記中間体化合物及び化合物(E4)を分析し、化合物(E4)が、一般式(1)中、Rがステアリル基、R及びRが、結合手2つ有する窒素原子1モルに対して合計で4モルのEOが付加した構造、Rがエチル基である化合物を含むことを確認した。また、得られた化合物(E4)の不揮発分は、40.8質量%であった。これを水で希釈して、化合物(E4)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0066】
(調製例5)
環流コンデンサー付きの4つ口フラスコにラウリルジメチルアミンを1モル当量及び重量比で倍量の蒸留水を仕込み、85~95℃で塩化ベンジルを1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(E5)を得た。得られた化合物(E5)のアミン価0.3であった。またH-NMR及び13C-NMRを用いて化合物(E5)を分析し、化合物(E5)が、一般式(1)中、Rがラウリル基、R及びRがメチル基、Rがベンジル基である化合物であることを確認した。また、得られた化合物(E5)の不揮発分は、45.2質量%であった。これを水で希釈して、化合物(E5)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0067】
(調製例6)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にラウリルアミンを1モル当量仕込み、オートクレーブを窒素置換した後、120~130℃でエチレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行った。さらに触媒として水酸化ナトリウムをラウリルアミンの5/1000質量分を仕込み、オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した。その後、120~130℃でエチレンオキシド4モル当量を吹き込み、4時間熟成を行い、さらに、プロピレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。その後、4時間熟成を行い、ラウリルアミンのエチレンオキシド6モル、プロピレンオキシド2モルブロック付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と中間体化合物と重量比で倍量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、さらに85~95℃で塩化ベンジルを1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(E6)を得た。得られた化合物(E6)のアミン価は0.3であった。またH-NMR及び13C-NMRを用いて、上記中間体化合物及び化合物(E6)を分析し、化合物(E6)が、一般式(1)中、Rがラウリル基、R及びRが、結合手2つ有する窒素原子1モルに対して合計で6モルのEO及び2モルのPOがそれぞれブロックで付加した構造、Rがベンジル基である化合物を含むことを確認した。また、得られた化合物(E6)の不揮発分は、38.4質量%であった。これを水で希釈して、化合物(E6)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0068】
(調製例7)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にトリエタノールアミンを1モル当量と触媒として水酸化ナトリウムをトリエタノールアミンの5/1000質量分を仕込み、オートクレーブを窒素置換した。その後、120~130℃でエチレンオキシド9モル当量を吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、トリエタノールアミンのエチレンオキシド9モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と、中間体化合物と重量比で倍量の蒸留水とを還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込んだ。その後、85~95℃でステアリルクロリド1.1モル当量を4つ口フラスコに徐々に仕込んだ。仕込み終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(E7)を得た。得られた化合物(E7)のアミン価は0.3であった。H-NMR及び13C-NMRを用いて上記中間体化合物及び化合物(E7)を分析し、化合物(E7)が一般式(1)中、Rがステアリル基、R、R及びRが、結合手3つ有する窒素原子1モルに対して合計で12モルのEOが付加した構造である化合物を含むことを確認した。また、得られた化合物(E7)の不揮発分は、44.2質量%であった。これを水で希釈して、化合物(E7)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0069】
(調製例8)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にヘキシルアミンを1モル当量仕込み、その後、オートクレーブを窒素置換した後、120~130℃でエチレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、ヘキシルアミンのエチレンオキシド2モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と中間体化合物と重量比で同量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85~95℃で塩化ベンジルを1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(E8)を得た。得られた化合物(E8)のアミン価は0.3であった。H-NMR及び13C-NMRを用いて上記中間体化合物及び化合物(E8)を分析し、化合物(E8)が、一般式(1)中、Rがヘキシル基、R及びRが-(EO)H、Rがベンジル基である化合物を含むことを確認した。また、得られた化合物(E8)の不揮発分は、63.5質量%であった。これを水で希釈して、化合物(E8)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0070】
(調製例9)
ジデシルメチルアミンを1モル当量と、ジデシルメチルアミンと重量比で同量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85~95℃でジメチル硫酸1.1モル当量を4つ口フラスコに徐々に仕込んだ。仕込み終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(E9)を得た。得られた化合物(E9)化合物のアミン価は0.1であった。H-NMR及び13C-NMRを用いて化合物(E9)を分析し、化合物(E9)が、一般式(1)中、R及びRがデシル基、R及びRがメチル基である化合物であることを確認した。また、得られた化合物(E9)の不揮発分は、59.1質量%であった。これを水で希釈して、化合物(E9)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0071】
(調製例10)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にジラウリルアミンを1モル当量と触媒として水酸化ナトリウムをジラウリルアミンの5/1000質量分を仕込んだ。その後、オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した。次いで、120~130℃でエチレンオキシド4モル当量を吹き込み、その後、4時間の熟成を行い、ジラウリルアミンのエチレンオキシド4モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と中間体化合物と重量比で倍量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85~95℃でジメチル硫酸を1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(E10)を得た。得られた化合物(E10)のアミン価は0.1であった。またH-NMR及び13C-NMRを用いて上記中間体化合物及び化合物(E10)を分析し、化合物(E10)が、一般式(1)中、R、Rがラウリル基、Rが-(EO)H、Rがメチル基である化合物を含むことを確認した。また、得られた化合物(E10)の不揮発分は、38.6質量%であった。これを水で希釈して、化合物(E10)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0072】
(比較調製例1)
化合物(CE1)としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いた。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの10%メタノール溶液(東京化成工業製)を、化合物(CE1)を10質量%含む分散液としてそのまま用いた。
【0073】
(比較調製例2)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にトリエタノールアミンを1モル当量と触媒として水酸化ナトリウムをトリエタノールアミンの5/1000質量分を仕込んだ。その後、オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した。次いで、120~130℃でエチレンオキシド7モル当量を吹き込み、その後、4時間の熟成を行った。熟成後、さらに、プロピレンオキシド10モル当量を吹き込み、再び4時間の熟成を行い、トリエタノールアミンのエチレンオキシド10モル、プロピレンオキシド10モルブロック付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と、中間体化合物と重量比で倍量の蒸留水とを還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込んだ。その後、85~95℃でオレイルクロリド1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(CE2)を得た。得られた化合物(CE2)のアミン価は0.4であった。H-NMR及び13C-NMRを用いて上記中間体化合物及び化合物(CE2)を分析し、化合物(CE2)が一般式(1)中、Rがオレイル基、R、R及びRが、結合手3つ有する窒素原子1モルに対して合計で10モルのEO及び10モルのPOがそれぞれブロックで付加した構造である化合物を含むことを確認した。また、得られた化合物(CE2)の不揮発分は、39.5質量%であった。これを水で希釈して、化合物(CE2)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0074】
(比較調製例3)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にステアリルアミンを1モル当量仕込み、オートクレーブを窒素置換した後、120~130℃でエチレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、ステアリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物を得た。さらに、触媒として水酸化ナトリウムをステアリルアミンの5/1000質量分を仕込んだ。そして、オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した。その後、120~130℃でエチレンオキシド28モル当量吹き込み、4時間の熟成を行い、ステアリルアミンのエチレンオキシド30モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と、中間体化合物と重量比で倍量の蒸留水とを還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85~95℃でジメチル硫酸を1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(CE3)を得た。得られた化合物(CE3)のアミン価は0.1であった。またH-NMR及び13C-NMRを用いて上記中間体化合物及び化合物(CE3)を分析し、化合物(CE3)が、一般式(1)中、Rがステアリル基、R及びRが、結合手2つ有する窒素原子1モルに対して合計で30モルのEOが付加した構造であり、Rがメチル基である化合物を含むことを確認した。また、得られた化合物(CE3)の不揮発分は、35.2質量%であった。これを水で希釈して、化合物(CE3)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0075】
(比較調製例4)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にラウリルアミンを1モル当量仕込み、オートクレーブを窒素置換した後、120~130℃でエチレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、ラウリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物を得た。さらに、触媒として水酸化ナトリウムをラウリルアミンの5/1000質量分を仕込んだ。そして、オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した後、120~130℃でエチレンオキシ43モル当量吹き込み、4時間の熟成を行い、ラウリルアミンのエチレンオキシド45モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と中間体化合物と重量比で倍量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85~95℃でラウリルクロリド1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(CE4)を得た。得られた化合物(CE4)化合物のアミン価は0.2であった。H-NMR及び13C-NMRを用いて上記中間体化合物及び化合物(CE4)を分析し、化合物(CE4)が、一般式(1)中、R及びRがラウリル基、R及びRが、結合手2つ有する窒素原子1モルに対して合計で45モルのEOが付加した構造である化合物を含むことを確認した。また、得られた化合物(CE4)の不揮発分は、35.6質量%であった。これを水で希釈して、化合物(CE4)の不揮発分を10質量%含む分散液を得た。
【0076】
(比較調製例5)
化合物(CE5)としてN,N-ジメチルラウリルアミンを酢酸で中和した化合物を用いた。N,N-ジメチルラウリルアミン(東京化成工業製)を酢酸で中和し、その後、水で希釈することにより、化合物(CE5)を10質量%含む分散液を得た。
【0077】
(比較調製例6)
化合物(CE6)としてトリメチルアミンを用いた。トリメチルアミンの25%メタノール溶液(東京化成工業製)を水で希釈することにより、化合物(CE6)を10質量%含む分散液を得た。
【0078】
(比較調製例7)
化合物(CE7)としてジエチルアミンを用いた。ジエチルアミン(東京化成工業製)を水で希釈することにより、化合物(CE7)を10質量%含む分散液を得た。
【0079】
<ポリエステル樹脂の加水分解物の製造>
(実施例1)
ミニカラー染色試験機(商品名:MINI COLOR、テクサム技研製)に洗浄した市販の飲料水のペットボトル(樹脂の種類:ポリエチレンイソテレフタレート)のカット片(約1.0×0.5cm)を10g、水酸化ナトリウム8g(4.2倍モル当量)又は20g(10.5倍モル当量)、化合物(E1)を0.4g(化合物(E1)の不揮発分を10質量%含む分散液として4.0g)添加し、更に全体の質量が200gとなるように蒸留水を添加し、混合物を得た。得られた混合物を回転速度40rpm、回転方向を正転逆転の条件で加水分解処理を行い、分解液を得た。この際、処理時間は4時間又は8時間とし、処理温度は95℃、120℃又は150℃に変更した。
【0080】
なお、水酸化ナトリウムのモル当量は、ペットボトルのカット片に含まれるポリエステル骨格のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数を示している。例えば、実施例1においては、水酸化ナトリウムを8g添加した場合、1つのポリエステル骨格の分子量が210.2{テレフタル酸の分子量(分子量:166.1)及びエチレングリコールの分子量(分子量:62.1)の合計値から水の分子量(分子量:18)を引くことで算出。}であるから、ペットボトルのカット片10gに含まれるポリエステル骨格のモル数は、ペットボトルのカット片の質量10gを1つのポリエステル骨格の分子量で除することにより、0.048モルと算出される。また、水酸化ナトリウム8gのモル数は、0.2モルである。そのため、水酸化ナトリウムのモル当量は、水酸化ナトリウム8gのモル数0.2モルをペットボトルのカット片10gに含まれるポリエステル骨格のモル数0.048モルで除することにより、4.2倍モル当量と算出される。
【0081】
(実施例2,4及び5)
上記式(3)で表される化合物として、化合物(E1)に代えて表5、7及び9に記載の化合物を用い、上記式(3)で表される化合物の添加量を表5、7及び9に記載のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の加水分解物の製造を行った。
【0082】
(実施例3及び7、参考例8~13並びに比較例2~8)
化合物(E1)に代えて表5~16に記載の化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の加水分解物の製造を行った。
【0083】
(比較例1)
化合物(E1)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の加水分解物の製造を行った。
【0084】
(比較例9)
ミニカラー染色試験機に洗浄した市販の飲料水のペットボトル(樹脂の種類:ポリエチレンイソテレフタレート)のカット片(約1.0×0.5cm)を10g、トリメチルアミン(25%メタノール溶液、東京化成工業製)55.4gを添加し、混合物を得たこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の加水分解物の製造を行った。
【0085】
(比較例10)
ミニカラー染色試験機に洗浄した市販の飲料水のペットボトル(樹脂の種類:ポリエチレンイソテレフタレート)のカット片(約1.0×0.5cm)を10g、エチレングリコール180g及び炭酸ナトリウム10gを添加し、混合物を得たこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の加水分解物の製造を行った。
【0086】
<ペットボトルの分解率(%)の算出>
<ポリエステル樹脂の加水分解物の製造>で得られた分解液を濾別し、加水分解せずに残ったペットボトルのカット片及び濾液を得た。得られた加水分解せずに残ったペットボトルのカット片を温度105℃、3時間の条件で乾燥した。乾燥後のカット片の重量を測定し、下記の計算式にてペットボトルの分解率(%)を算出した。結果を表5、6及び表8に示した。
ペットボトルの分解率(%)={10(g)-乾燥後のカット片の質量(g)}×100/10(g)
【0087】
<テレフタル酸及びイソフタル酸の回収率(%)の算出>
<ペットボトルの分解率(%)の算出>で得られた濾液の質量を測定し、そのうちの25gを採取し、濃塩酸を5ml加え濾液を酸性にした。次いで、濾液に水を20ml加え、遠心分離した。遠心分離した濾液から上澄み液Aを取り除き、沈殿物Bを蒸留水で洗浄し、再度遠心分離して、上澄み液Dを取り除き、沈殿物Cを採取し、これを乾燥し、質量を測定した。沈殿物CはIR測定装置(装置名:NICOLET is10、ThermoScientific社製)を用いてIR分析をした。その結果、沈殿物Cは、テレフタル酸及びイソフタル酸を含むことを確認した。さらに、得られた沈殿物Cに含まれるテレフタル酸及びイソフタル酸をトリメチルアンモニウムヒドロキシドでメチル化した。その後、沈殿物Cを熱分解装置(フロンティア・ラボ製:PY-3030D)付きのガスクロマト質量分析計(商品名:JMS-Q1500GC、日本電子社製)にて分析して、沈殿物Cにおけるテレフタル酸及びイソフタル酸の純度を求めた。求められた純度から、下記の計算式にてテレフタル酸及びイソフタル酸の回収率(%)を算出した。結果を表7、8、13及び14に示した。
テレフタル酸及びイソフタル酸の回収率(%)={沈殿物Cの質量(g)×純度×ろ液の質量(g)/25(g)}/{ペットボトルのカット片10gから100%テレフタル酸及びイソフタル酸を回収した場合のテレフタル酸及びイソフタル酸の質量7.90(g)}
【0088】
なお、ペットボトルのカット片10gから100%テレフタル酸及びイソフタル酸を回収した場合のテレフタル酸及びイソフタル酸の質量7.90(g)は、テレフタル酸及びイソフタル酸の分子量166.1(g)をポリエチレンテレフタレート骨格及びポリエチレンイソフタレート骨格1つの分子量210.2で除した値にペットボトルのカット片の質量10(g)を乗じることにより算出される。
【0089】
<エチレングリコールの回収率(%)の算出>
<テレフタル酸及びイソフタル酸の回収率(%)の算出>で得られた上澄み液A及び上澄み液Dを混合し、混合液を得た。得られた混合液をガスクロマトグラフ分析計(アジレント・テクノロジー製:GC-7890A)で分析し、混合液に含まれるエチレングリコールの濃度を測定した。下記の計算式にてエチレングリコールの回収率(%)を算出した。結果を表9、10、15及び16に示した。
エチレングリコールの回収率(%)={混合液の質量(g)×混合液に含まれるエチレングリコールの濃度(%)×ろ液の質量(g)/25(g)}/{ペットボトルのカット片10gから100%エチレングリコールを回収した場合のエチレングリコールの質量2.95(g)}
【0090】
なお、ペットボトルのカット片10gから100%エチレングリコールを回収した場合のエチレングリコールの質量2.95(g)は、エチレングリコールの分子量62.0(g)をポリエチレンテレフタレート骨格及びポリエチレンイソフタレート骨格1つの分子量210.2で除した値にペットボトルのカット片の質量10(g)を乗じることにより算出される。

【0091】
【表5】

【0092】
【表6】
【0093】
【表7】

【0094】
【表8】
【0095】
【表9】

【0096】
【表10】

【0097】
【表11】

【0098】
【表12】

【0099】
【表13】

【0100】
【表14】

【0101】
【表15】

【0102】
【表16】

【0103】
なお、表16中の*1は、比較例10の場合、多量のエチレングリコール(ペットボトルのカット片10gに対して、エチレングリコール180g)を用いて処理しているため、処理に使用されたエチレングリコールが回収作業でのロスなどにより減少し、正確な回収率は出せないことを表す。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、ポリエステル樹脂を低温であっても短時間で十分に分解することができ、ポリエステル樹脂から所望の加水分解物を効率よく得ることができるポリエステル樹脂の加水分解物の製造方法を提供することができる。