(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】粒子加飾プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221014BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20221014BHJP
B41J 3/407 20060101ALI20221014BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20221014BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20221014BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20221014BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41M5/00 100
B41J3/407
B41J2/21
B05D1/26 Z
B05D3/06 Z
B05D7/24 301M
B05D7/24 301T
B41M5/00 120
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2018243303
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】田渕 新二
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187554(JP,A)
【文献】特開2000-033334(JP,A)
【文献】特開2018-058185(JP,A)
【文献】特開2011-131393(JP,A)
【文献】特開2001-187481(JP,A)
【文献】特開2016-079396(JP,A)
【文献】特開2017-217807(JP,A)
【文献】特開2015-020399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 5/00
B41J 3/407
B05D 1/26
B05D 3/06
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物が載置される載置台と、
非ニュートン流体のインクを収容するディスペンサと、
エネルギー線発生装置と、
前記ディスペンサと前記載置台とを相対的に移動させる移動装置と、
前記ディスペンサおよび前記移動装置の駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記インクは、
平均粒子径が1μm以上100μm以下の加飾粒子と、
重合性化合物と、
重合開始剤と、
を含み、
前記制御装置は、出力データに基づき、前記移動装置によって前記ディスペンサおよび前記載置台の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させるとともに、前記ディスペンサから前記インクを前記被加工物に供給するように構成されている、粒子加飾プリンタ。
【請求項2】
前記インクの総質量に占める前記加飾粒子の割合は、1質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載の粒子加飾プリンタ。
【請求項3】
前記加飾粒子は、メタリック顔料、パール顔料、ホログラムグリッター、および、金属酸化物粒子の少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の粒子加飾プリンタ。
【請求項4】
前記ディスペンサは、前記インクを吐出する吐出口を備え、
前記吐出口の口径は、50μm以上600μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒子加飾プリンタ。
【請求項5】
第二インクを吐出可能な吐出ヘッドをさらに備え、
前記制御装置は、前記出力データに基いて前記移動装置によって前記吐出ヘッドを前記載置台に対して相対的に移動させるとともに、前記出力データに基づく所定の位置において前記吐出ヘッドから前記第二インクを吐出するように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の粒子加飾プリンタ。
【請求項6】
前記出力データは、前記被加工物を加工するための位置基準となるクロップマークに関する情報を含み、
前記クロップマークを検出する検出装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記載置台に載置された前記被加工物に備えられた前記クロップマークを前記検出装置によって検出するとともに、前記クロップマークを位置基準として、前記ディスペンサおよび前記吐出ヘッドの少なくとも一方を前記載置台に対して相対的に移動させるように構成されている、請求項5に記載の粒子加飾プリンタ。
【請求項7】
載置台と、非ニュートン流体のインクを収容するディスペンサと、エネルギー線発生装置と、前記ディスペンサと前記載置台とを相対的に移動させる移動装置と、前記ディスペンサおよび前記移動装置の駆動を制御する制御装置と、を備える粒子加飾プリンタを用いる加飾方法であって、
前記インクは、平均粒子径が1μm以上100μm以下の加飾粒子と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含み、
上記載置台に被加工物を載置すること、
出力データに基づき、前記移動装置によって前記ディスペンサおよび前記載置台の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させること、
前記出力データに基づき、前記ディスペンサから前記インクを前記被加工物に供給すること、
前記インクが供給された前記被加工物に対し、エネルギー線を照射して前記インクを硬化させること、
を含む、粒子加飾方法。
【請求項8】
前記粒子加飾プリンタは、第二インクを吐出可能な吐出ヘッドをさらに備え、
当該粒子加飾方法は、前記出力データに基づき、前記移動装置によって前記吐出ヘッドおよび前記載置台の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させるとともに、前記吐出ヘッドから前記第二インクを前記被加工物に供給すること、を含み、
前記被加工物に対する前記インクの供給工程は、前記第二インクの供給工程の後に実施する、請求項7に記載の粒子加飾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子加飾プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋内外のサインディスプレイ用の樹脂シートや、電子機器、日用品等の外装材等に対して、光沢やラメ等を含む特殊な意匠を付与するという需要がある。このような特殊な意匠は、一般に、例えば、メタリック顔料やラメ等を含むインクを用いて、スクリーン印刷等の有版印刷により実施されている。有版印刷では、インクを選ばずに繰り返し同一の絵柄を大量に印刷できるという利点があるが、版を用意しなければならないというデメリットが大きい。
【0003】
その一方で、たとえ少量であっても利用者の多様な嗜好を満足させる意匠を、要求(Demand)に応じた必要数だけ手軽に印刷する技術も求められている。そこで近年、インクジェット方式による無版のデジタル印刷が注目されている。このインクジェット印刷では、一般的に、CMYKと呼ばれる4つの基本色を用い、デジタルデータに基いて、基材に任意のカラー画像を描画するものである。インクジェット印刷は、このように無版で印刷できるという特徴の他に、小ロットで多品種の印刷や、短納期での印刷が可能になるという利点があり、その利用が拡大されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6056933号公報
【文献】特許第6049505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェット印刷では、インクを微小な液滴状に精密に制御して吐出することから、使用できるインクが制限されるという課題が潜在している。例えば、インクジェットヘッドのノズル径は一般的に25~30μm程度であるが、インクに含むことができるメタリック顔料等の寸法は、平均粒子径として例えば200nm以下に限定され得る。したがって、インクジェット印刷においてCMYK基本色以外のメタリックインクを用いる場合には、メタリック顔料の寸法が微細なものに制限され、人の視覚に映える光沢やラメ等の加飾を行うことは不可能であった。なお、特許文献1には、平均粒子径が500nm以上2.0μm以下の金属粉を含む紫外線硬化型インク組成物をインクジェット方式で印刷できることが開示されている。しかしながら、特許文献1の紫外線硬化型インク組成物を用いる場合は、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりを防ぐために、インク組成物をヘッドから定期的に廃棄したり、インク組成物をインク供給経路で循環させたりする必要があった。そのため、このようなインクジェットプリンタは、構造および制御が複雑になるとともに、安定して稼働させることが現実的に困難になるという問題があった。
【0006】
本発明は上記の従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、意匠性の高いメタリック顔料等の加飾粒子を含むインクを用いた特殊な加飾を、オンデマンドで手軽に実施することができる粒子加飾プリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される粒子加飾プリンタは、被加工物が載置される載置台と、非ニュートン流体のインクを収容するディスペンサと、エネルギー線発生装置と、上記ディスペンサと上記載置台とを相対的に移動させる移動装置と、上記ディスペンサおよび上記移動装置の駆動を制御する制御装置と、を備える。ここで上記インクは、平均粒子径が1μm以上100μm以下の加飾粒子と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含む。そして制御装置は、出力データに基づき、上記移動装置によって上記ディスペンサおよび上記載置台の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させるとともに、上記ディスペンサから上記インクを上記被加工物に供給するように構成されている。
【0008】
また、ここに開示される粒子加飾方法は、載置台と、非ニュートン流体のインクを収容するディスペンサと、エネルギー線発生装置と、上記ディスペンサと上記載置台とを相対的に移動させる移動装置と、上記ディスペンサおよび上記移動装置の駆動を制御する制御装置と、を備える粒子加飾プリンタを用いる加飾方法である。ここで上記インクは、平均粒子径が1μm以上100μm以下の加飾粒子と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含む。この粒子加飾方法は、上記載置台に被加工物を載置すること、出力データに基づき、上記移動装置によって上記ディスペンサおよび上記載置台の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させること、上記出力データに基づき、上記ディスペンサから上記インクを上記被加工物に供給すること、および、上記インクが供給された上記被加工物に対し、エネルギー線を照射して上記インクを硬化させること、を含む。
【0009】
ここに開示される技術によれば、被加工物に対して意匠性の高い加飾粒子を含むインクを用いた特殊な加飾を、加飾粒子による目詰まり等の不都合を被ることなく実施することができる。ここで、インクは、非ニュートン流動性を示す非ニュートン流体であることから、上記のとおり平均粒子径の大きな加飾粒子を、長期に亘って分散性よく安定して含むことができる。そしてこの加飾粒子は、平均粒子径の大きな、金属メタリック顔料、パール顔料、ホログラムグリッター、金属酸化物粒子などであり得る。このような意匠性の高い加飾粒子を含むインクを用いた印刷は、従来の有版印刷機によると、たとえ1つの被加工物に印刷するのみであっても、目的の意匠に応じた版(例えば、スクリーン製版)を作製する必要があった。しかしながら、この粒子加飾プリンタによると、目的の加飾意匠に対応した出力データ(デジタルデータ)を用意することで、版を用意する必要なく出力データに基いて加飾を実施することができる。また、従来のインクジェットプリンタでは、ニュートン流動性を示すインクしか吐出することができなかったため、このような大きな加飾粒子を含むインクを安定的に印刷することは困難である。これに対し、この粒子加飾プリンタではディスペンサを用いることで、寸法の大きな加飾粒子を含む加飾インクによる特殊印刷を可能としている。これにより、金属メタリック顔料、パール顔料、ホログラムグリッター、金属酸化物粒子等を含む意匠性の高いインクによる加飾を可能とする粒子加飾プリンタが提供される。
【0010】
なお、最近では、紫外線硬化型インクを糊材として基材の表面にインクジェットプリンタで印刷し、紫外線を照射してインクを半硬化させた状態で転写箔を貼り付けるようにした加飾方法が提案されている(特許文献2参照)。この手法は、エネルギー線硬化性のインクを用いて、加飾のための転写箔を基材に固定する点において本技術に類似しているともいえる。しかしながら、寸法の大きな加飾粒子を含む非ニュートン性の加飾インクを用いた印刷を行わない点において、本技術と本質的に異なる。加えて、特許文献2の技術では、例えば、実現できる意匠が金属箔によるものに制限され、被加工物の表面形態は平坦であることが求められるというデメリットがある。したがって、本技術によると、上記の加飾インクを用いた特殊な加飾を、自由度を高めて簡便に実現できる点において、これまでにない加飾方法が提案される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、意匠性の高いメタリック顔料等の加飾粒子を含むインクを用いた特殊な加飾を、オンデマンドで手軽に実施することができる粒子加飾プリンタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る粒子加飾プリンタの斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る粒子加飾プリンタの平面図である。
【
図3】一実施形態に係る粒子加飾プリンタの正面図である。
【
図4】一実施形態に係る粒子加飾プリンタの要部斜視図である。
【
図5】一実施形態に係るディスペンサユニットの側面図である。
【
図6】テーブルに載置された被加工物に、画像およびクロップマークが印刷された様子を示す平面図である。
【
図7A】一実施形態に係るディスペンサユニットおよび印刷ヘッドユニットが連結された状態を示す正面図である。
【
図7B】一実施形態に係るディスペンサユニットおよび印刷ヘッドユニットが分離された状態を示す正面図である。
【
図8】一実施形態に係る制御装置の接続関係を説明する図である。
【
図9】一実施形態に係る制御装置のブロック図である。
【
図10】一実施形態に係る粒子加飾方法のフローチャートである。
【
図11】他の実施形態に係る粒子加飾方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る粒子加飾プリンタについて説明する。本実施形態に係る粒子加飾プリンタは、加飾対象である被加工物に、加飾インクによる印刷と、付加的にインクジェット印刷と、を実施することができるプリンタである。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。なお、明細書中の数値範囲を示す「A~B」との表記は、「A以上B以下」を意味する。
【0014】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る粒子加飾プリンタ10を示す斜視図である。
図1に示すように、粒子加飾プリンタ10は、被加工物5に印刷を行う。図面中の符号U、D、F、Rr、L、Rは、それぞれ垂直方向の上、下、水平方向における前、後、左、右を示している。ただし、左、右とは、粒子加飾プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右をそれぞれ意味し、また、前、後とは、粒子加飾プリンタ10から作業者に向かう方向を前、遠ざかる方向を後とする。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態において、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向であり、本実施形態では水平面において主走査方向Yと直角に交わる方向である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。図面中の符号Zは高さ方向を表す。高さ方向は主走査方向Yおよび副走査方向Xと交差する方向であり、本実施形態で高さ方向Zは上下方向である。すなわち、本実施形態では方向X,Y,Zは互いに直交する空間座標系となり得る。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0015】
本実施形態の被加工物5の素材は特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体などの樹脂材料、金、銀、銅、プラチナ、真鍮、アルミ、鉄、チタン、ステンレス等の金属材料はもちろんのこと、陶器、セラミック、ガラス、ゴム、皮革、木材板、カーボン、紙類、布帛などであってもよい。また被加工物5の形状も特に制限されず、シート状や、携帯電話ケースや電子タバコの外装材、アクセサリやフォトフレーム等の立体形状であってもよい。なお、本技術では、エネルギー線硬化性の重合性化合物を含むインクを用いることから、被加工物5は、インクとの相溶性の高い樹脂材料によって構成されていることが好ましい。
【0016】
図1に示すように、粒子加飾プリンタ10は、箱状に形成されている。粒子加飾プリンタ10は、ケース12と、操作パネル19とを備えている。ケース12は、ベース部12Bと、フロントカバー12Fと、背面カバー12Rrと、左サイドカバー12Lと、右サイドカバー12Rと、上カバー12Uと、蓋部材13とを備えている。ベース部12Bは、粒子加飾プリンタ10の全体を支持する。フロントカバー12Fは、ベース部12Bの右部の前端に接続され、上方に向かって延びている。背面カバー12Rrは、ベース部12Bの後端に接続され、上方に向かって延びている。左サイドカバー12Lは、ベース部12Bの左端に接続され、上方に向かって延びている。左サイドカバー12Lの後端は、背面カバー12Rrの左端に接続されている。右サイドカバー12Rは、ベース部12Bの右端に接続され、上方に向かって延びている。右サイドカバー12Rの前端は、フロントカバー12Fの右端に接続され、右サイドカバー12Rの後端は、背面カバー12Rrの右端に接続されている。上カバー12Uは、L字形状であって、フロントカバー12Fの上端、背面カバー12Rrの上端、左サイドカバー12Lの後部上端、および、右サイドカバー12Rの上端にそれぞれ接続されている。そして、ケース12には、フロントカバー12F、上カバー12U、左サイドカバー12L、およびベース部12Bに囲まれるように開口13Bが形成されている。蓋部材13は、この開口13Bを開閉自在に覆うように、上カバー12Uの左部の前端に回動自在に支持されている。蓋部材13は、後端を軸にして上方に開かれることにより、ケース12の内部空間と外部空間とを連通する。この内部空間が、加飾空間13Aとなる。加飾空間13Aには、テーブル20が備えられている。このテーブル20において、被加工物5に対する粒子加飾と、付加的な印刷とが行われる。蓋部材13には、可視光に透明で紫外線を遮断する窓部13Wが設けられている。作業者は、蓋部材13を閉じた状態であっても窓部13Wを通じてケース12内の加飾空間13Aを確認することができる。
【0017】
図2は、粒子加飾プリンタ10の平面図である。
図3は、粒子加飾プリンタ10の正面図である。
図4は、粒子加飾プリンタ10の要部斜視図である。
図2および
図4では、フロントカバー12F、背面カバー12Rr、左サイドカバー12L、右サイドカバー12R、上カバー12Uおよび蓋部材13の図示は便宜上省略している。加飾空間13Aの左端部には、左サイドフレーム15Lが配置されている。加飾空間13Aの右端部には、右サイドフレーム15Rが配置されている。ベース部12Bと上カバー12Uとの間には、主走査方向Yに延びる支持壁14が設けられている。支持壁14は、左サイドフレーム15Lと右サイドフレーム15Rとに連結されている。支持壁14は、後述の第一移動装置を設置するために、高さ方向に幅のある板状である。支持壁14には、テーブル20を上方から撮像することができる撮像装置76が備えられている。撮像装置76は、テーブル20の平面視を撮像することができる。撮像装置76は、例えばCCDカメラである。撮像装置76は、後述する制御装置100に電気的に接続されて、その駆動が制御される。
【0018】
図1に示すように、ガイドレール16は、支持壁14に設けられている。ガイドレール16は、テーブル20の上方に配置されている。ガイドレール16は、テーブル20と平行に配置されている。ガイドレール16は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール16には、ディスペンサユニット30のキャリッジ31と、印刷ヘッドユニット40のキャリッジ41とが係合している。
【0019】
図2に示すように、ベルト17は、支持壁14の壁面に平行して配置されている。ベルト17は、主走査方向Yに延びている。ベルト17は、無端状のベルトである。ベルト17の右端および左端には、それぞれプーリ(図示せず)が設置されている。ベルト17は、これら一対のプーリの周囲に巻き掛けられている。ベルト17には、ディスペンサユニット30のキャリッジ31が固定されている。そして一方のプーリには、当該プーリを回転駆動するキャリッジモータ18(
図8参照)が接続されている。キャリッジモータ18は、制御装置100に電気的に接続されて、その駆動が制御される。キャリッジモータ18が駆動すると上記プーリが回転し、ベルト17が主走査方向Yに走行する。ガイドレール16、ベルト17、プーリおよびキャリッジモータ18は、ディスペンサユニット30および印刷ヘッドユニット40を主走査方向Yに移動させる第一移動装置の一例である。
【0020】
粒子加飾プリンタ10は、テーブル20を備えている。テーブル20は、ガイドレール16より下方に配置されている。テーブル20は、ディスペンサユニット30および印刷ヘッドユニット40より下方に配置されている。テーブル20は、ベース部12Bより上方に配置されている。テーブル20上には、被加工物5が配置される。テーブル20は、載置台の一例である。テーブル20に配置された被加工物5には、ディスペンサユニット30によって加飾インクが供給される。テーブル20は、後述するテーブル移動装置50によって副走査方向Xおよび高さ方向Zに移動可能に設けられている。
【0021】
図2に示すように、本実施形態のテーブル20は、前後方向の長さが左右方向の長さよりも短い矩形である。テーブル20は、内部に空間を有している。テーブル20の上面には、複数の吸引孔22が形成されている。吸引孔22は、テーブル20内部の空間と連通している。複数の吸引孔22は、例えば主走査方向Yおよび副走査方向Xに配列されている。テーブル20の下面には、排気孔24が形成されている。排気孔24は、テーブル20内部の空間と連通している。排気孔24は、テーブル20の主走査方向Yの中心20Xより左方に位置する。排気孔24の直径は、吸引孔22の直径より大きい。排気孔24は、減圧室26を介して排出口28に接続されている。減圧室26は、図示しない減圧ポンプを備えている。減圧ポンプは、制御装置100に電気的に接続されて、その駆動が制御される。減圧ポンプが駆動することで、減圧室26は、テーブル20の空間内の空気を排気孔24から吸引する。減圧室26に吸引された空気は排出口28から外部に排出される。テーブル20の空間には負圧が発生する。これにより、テーブル20の上面に被加工物5を配置したとき、被加工物5は吸引孔22に吸いつけられて、テーブル20上の位置が固定される。
【0022】
図3に示すように、粒子加飾プリンタ10は、テーブル移動装置50を備えている。テーブル移動装置50は、テーブル20の下方に配置されている。テーブル移動装置50は、第二移動装置52と、第三移動装置62とを備えている。第二移動装置52は、テーブル20の下方に配置され、テーブル20を支持している。第二移動装置52は、テーブル20を上下方向に移動させる。第三移動装置62は、第二移動装置52の下方に配置され、第二移動装置52を支持している。第二移動装置52は、第三移動装置62の上に設けられている。第三移動装置62は、ベース部12Bに配置されている。第三移動装置62は、第二移動装置52およびテーブル20を副走査方向Xに移動させる。
【0023】
図3および
図4に示すように、第二移動装置52は、昇降部53と、無端状の駆動ベルト54と、上下方向に延びる複数のボールねじ55とを備えている。昇降部53は、下面が開口された箱状である。昇降部53上には、テーブル20が固定されている。昇降部53は、正面視で、主走査方向Yに延びる板状の本体部53Aと、本体部53Aの左端から下方に延びる左脚部53Bと、本体部53Aの右端から下方に延びる右脚部53Cと、を備えるコの字状である。昇降部53の左下端と右下端とには、昇降部53よりも左方と右方とにそれぞれ延出するフランジ(
図3参照)が設けられている。昇降部53は、後述する支持台64の開口64X内を上下方向に出没可能に移動する。複数のボールねじ55は、支持台64の内部に立設されている。4つのボールねじ55は、箱状の昇降部53の四隅であって、昇降部53よりも左方と右方とにそれぞれ配置されている。ボールねじ55は、上下方向に延びる軸部55Aと、軸部55Aの上端に固定されたプーリ(図示せず)と、軸部55Aに螺合され上下方向に移動可能なボルトねじ部55Bと、を有している。駆動ベルト54は、複数のボールねじ55のプーリに巻き掛けられている。また、駆動ベルト54は、図示しない第二モータの回転軸にも巻き掛けられている。第二モータは、制御装置100に電気的に接続されて、その駆動が制御される。ボルトねじ部55Bは、昇降部53のフランジに固定されている。フランジには、ボルトねじ部55Bのネジ穴と連続するネジ穴が形成されている。ボールねじ55の軸部55Aは、支持台64に固定されている。第二モータが駆動することで、駆動ベルト54は複数のボールねじ55の周りを回転走行するとともに、軸部55Aを回転させる。軸部55Aが回転することによってねじ部55Bが軸部55Aに沿って上下方向に移動する。このとき、第二モータが駆動して駆動ベルト54が一の方向に移動すると、ボールねじ55のねじ部55Bが回転し、昇降部53は上方に移動する。一方で、第二モータが駆動して駆動ベルト54が一の方向と逆方向に移動すると、ボールねじ55のねじ部55Bが逆回転し、昇降部53は下方に移動する。このように、第二モータを駆動することによって、昇降部53は支持台64に対して上下方向に移動する。その結果、テーブル20も上下方向に移動する。
【0024】
図4に示すように、第三移動装置62は、ベース部12Bに設けられている。第三移動装置62は、ベース部12Bに形成された開口12X内に設けられている。第三移動装置62は、移動ベース63と、支持台64と、第1シャフト65と、第2シャフト66と、固定ベース67とを備えている。
【0025】
図4に示すように、第1シャフト65および第2シャフト66は、副走査方向Xに延びている。第1シャフト65は、第2シャフト66の左方に配置されている。第1シャフト65と第2シャフト66とは平行に配置されている。第1シャフト65および第2シャフト66は、前後をベース部12Bに支持されている。
【0026】
図4に示すように、移動ベース63は、第1シャフト65から第2シャフト66まで延びている。移動ベース63は、第1シャフト65および第2シャフト66に摺動自在に係合している。移動ベース63は、副走査方向Xに延びる第1筒状部63Aと第2筒状部63Bとを備えている。第1シャフト65は、第1筒状部63Aに挿入されている。第2シャフト66は、第2筒状部63Bに挿入されている。移動ベース63は、第1シャフト65および第2シャフト66に沿って副走査方向Xにスライド移動可能に構成されている。
【0027】
図4に示すように、支持台64は、移動ベース63上に設けられている。複数のボールねじ55の軸部55Aは、移動ベース63に支持されている。支持台64の上には第二移動装置52が配置されている。支持台64は、正面視で、主走査方向Yに延びる板状の本体部64Aと、本体部64Aの左端から下方に延びる左脚部64Bと、本体部64Aの右端から下方に延びる右脚部64Cとを備えている。
図3に示すように、支持台64は、正面視において、下向きに開放されたコ字状(U字状)に形成されている。
図4に示すように、本体部64Aには、上下方向に開口する矩形状の開口64Xが貫通形成されている。昇降部53は、前述のように、開口64Xから出没可能に構成されている。左脚部64Bおよび右脚部64Cは、移動ベース63に固定されている。左脚部64Bは、第1シャフト65より右方に配置されている。右脚部64Cは、第2シャフト66より左方に配置されている。支持台64には、左脚部64Bおよび右脚部64Cの下端から内側に向けて突出する板状のフランジ(図示せず)が形成されており、該フランジと本体部64Aとにボールねじ55の軸部55Aの下端が固定されている。
【0028】
図4に示すように、固定ベース67は、副走査方向Xに延びている。固定ベース67は、第1シャフト65より右方かつ第2シャフト66より左方に配置されている。固定ベース67は、ベース部12Bに支持されている。固定ベース67は、移動ベース63より上方に配置されている。固定ベース67は、支持台64の本体部64Aより下方に配置されている。固定ベース67は、左脚部64Bより右方かつ右脚部64Cより左方に配置されている。固定ベース67には、前部に第1プーリ67Aが、後部に第2プーリ(図示せず)が設けられている。第1プーリ67Aおよび第2プーリには、無端状のベルト67Bが巻き掛けられている。ベルト67Bには、移動ベース63が固定されている。第1プーリ67Aは、第1プーリ67Aを駆動する第三モータ(図示せず)に接続されている。第三モータは、制御装置100に電気的に接続されて、その駆動が制御される。第三モータを駆動することによって、ベルト67Bが回転駆動する。これにより、支持台64および移動ベース63は、第1シャフト65および第2シャフト66に沿って副走査方向Xにスライド移動する。即ち、第三モータを駆動することによって、テーブル20は、副走査方向Xに移動する。
【0029】
図5に示すように、ディスペンサユニット30は、キャリッジ31と、ディスペンサ32と、2つの紫外線ランプ38とを備えている。ディスペンサ32は、キャリッジ31に着脱可能に固定されている。紫外線ランプ38は、ディスペンサ32の左右に一つずつ配置するように、キャリッジ31に固定されている。キャリッジ31は、ガイドレール16に係合している。キャリッジ31は、ベルト17に固定されている。ベルト17が走行すると、キャリッジ31は、ガイドレール16に沿って主走査方向Yに移動する。このキャリッジ31によって、ディスペンサ32と紫外線ランプ38とは一体的に移動される。
【0030】
ディスペンサ32は、テーブル20より上方に配置されている。ディスペンサ32は、非接触の流体供給装置である。本実施形態のディスペンサ32は、シリンジ33、ディスペンサバルブ34、ニードル35、エア圧送部36およびディスペンサ制御装置37を備えている。ディスペンサ32は、ニードル35の下端がテーブル20に載置される被加工物5に接触しないように、その上下方向の位置を調整可能に構成されていてもよい。ディスペンサ32は、テーブル20に向けて加飾インクを供給することで、テーブル20に載置された被加工物5を加飾するための加飾インクを印刷する。加飾部の形状は、例えば
図6に示すように、所望の画像80に対応する形状であってよい。なお、「画像」とは、被加工物5上に形成される像のことであり、その内容は特に限定されない。画像には、文字、記号、図形、グラフ、絵柄等が含まれる。また、
図6の上、下、左、右は、それぞれテーブル20の後部、前部、左部、右部の方向を表している。
【0031】
シリンジ33は、加飾インクを収容する円筒型の容器である。シリンジ33は、上端が開口されるとともに、下端がディスペンサバルブ34を介してニードル35に接続されている。ニードル35は、シリンジ33に供給された加飾インクを排出する排出部である。ニードル35に設けられた針穴の直径は、例えば、50~600μm程度である。ディスペンサバルブ34は、シリンジ33とニードル35との間の流路を提供するとともに、この流路を連通したり遮断したりすることができる。ディスペンサバルブ34が開状態となることで、シリンジ33とニードル35とが連通される。ディスペンサバルブ34が閉状態となることで、シリンジ33とニードル35とが遮断される。
【0032】
エア圧送部36は、シリンジ33およびディスペンサバルブ34に接続されている。エア圧送部36は、シリンジ33の上端の開口を密閉する。エア圧送部36は、シリンジ33内に高圧のエアを圧送する。エア圧送部36は、シリンジ33内に、例えば25℃で、0.25MPa以上、好ましくは0.3MPa以上、より好ましくは0.4MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上程度のエアを送ることができる。エア圧送部36の送るエア圧力の上限は特に制限されず、一例として、0.75MPa以下程度とすることができる。これにより、シリンジ内に収容された加飾インクを一定の圧力で圧送することができる。また、エア圧送部36は、ディスペンサバルブ34にエアを送る。ディスペンサバルブ34は、エア圧送部36から高圧のエアが圧送されることで、流路の開状態と閉状態とを切り替える。このことにより、ディスペンサ32は、例えば、1パルスあたり25~250nlの流量の流体を、100~1000Hzのレートで吐出することができるように構成されている。エア圧送部36は、ディスペンサ制御装置37によってその作動が制御される。換言すると、ディスペンサ制御装置37は、ディスペンサ32からの加飾インクの吐出条件およびディスペンサバルブ34の作動を制御する。ディスペンサ制御装置37は、制御装置100に電気的に接続されて、その駆動が制御される。
【0033】
紫外線ランプ38は、加飾インクを硬化させるための紫外線を発生させるための装置である。紫外線ランプ38は、ディスペンサ32の左右両端にそれぞれ1つずつ配置されている。紫外線ランプ38は、主走査方向Yに沿ってディスペンサ32と並んでいる。紫外線ランプ38は、インクを硬化可能な波長の紫外線を発生することができるLEDランプである。紫外線の波長は、例えば、254nmや365nm、385nm、395nm等であってよい。本実施形態における紫外線ランプ38は、例えば、波長365nmの紫外線を出射する。これにより、254nmの紫外線と比較してエネルギーは小さいものの、被加工物5上に供給された加飾インクの比較的内部にまでエネルギーを供給することができる。その結果、加飾インクが嵩高く供給された場合でも、当該インクを好適に硬化させることができる。紫外線ランプ38は、制御装置100に電気的に接続されて、その動作が制御される。紫外線ランプ38は、ここでは2つであるが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。紫外線ランプ38は、エネルギー線発生装置の一例である。エネルギー線としては、紫外線(UV)の他に、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線であってよい。
【0034】
ここで、加飾インクは、平均粒子径が1μm以上100μm以下の加飾粒子と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含む。また、加飾インクは、非ニュートン流体のインクである。この加飾インクは、非ニュートン流動性を示すようにその配合が調整されている。より安定した非ニュートン流動性を実現するために、加飾インクは、溶剤を含まない態様であることが好ましい。
【0035】
ここで、非ニュートン流体とは、ニュートン流体に当てはまらない流体の総称をいい、流れのせん断応力(接線応力)と流れの速度勾配(ずり速度、せん断速度)との関係が線形ではない粘性を有する流体を意味する。なお加飾インクは、より好ましくは、擬塑性流体である。加飾インクが擬塑性流体であることで、力を加えることにより粘度が低下し、力を加えるまでは高い粘度を示す。このことにより、静止状態においても、インク中の加飾粒子の分散状態を安定して維持することができる。また、加飾インクが被加工物5に供給されたときに、インクが滲みにくくかつダレにくいために、印刷精度の高い加飾を行うことができる。また、ディスペンサからの加飾インクの供給に際して、例えば供給圧を加えることで、加飾インクの供給性(流動性)が向上するために好ましい。
【0036】
加飾粒子は、被加工物5を装飾する目的で、加飾インクに添加される加飾材である。加飾粒子は、被加工物5を装飾し得る限りにおいて各種の材料を特に制限なく用いることができる。加飾粒子は、平均粒子径が1μm以上100μm以下である。加飾粒子がこのような大きな寸法を有することで、当該加飾粒子が有する機能や性状を発揮して被加工物5を効果的に加飾することができる。なお、インクジェットプリンタに用いられるインクに含まれる一般的な顔料の平均粒子径は200nm以下であり、大きくても1μmに満たないのが通常である。ここに開示される技術では、1μm以上という大きな加飾粒子を含むインクによって、被加工物5を装飾することができる。
【0037】
加飾粒子は、必ずしもこれに限定されないが、例えば、その寸法が大きいことから加飾効果が向上される加飾材であることが好ましい。そのような加飾材としては、例えば、金属光沢を発現するメタリック顔料や、メタリック顔料よりも柔らかなパール調の光沢を発するパール顔料、立体的なホログラムパターンが備えられたホログラムグリッター、様々な光学的特性を発現し得る金属酸化物粒子等が好適例として挙げられる。より具体的には、メタリック顔料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ブロンズ、ステンレス、ニッケル等の金属粉を薄く延展した鱗片状の金属顔料が好適例として挙げられる。パール顔料としては、光の多重層反射を実現する構成であれば特に制限されず、例えば、天然または人工の層状粒子であるマイカ(雲母)をコアとし、その表面を二酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化セリウム、フッ素化合物等の高屈折材料で被覆した被覆雲母や、薄片アルミニウムをコアとしてその表面を上記と同様の高屈折材料で被覆した干渉色アルミ顔料、タルクをコアとしてその表面を上記と同様の高屈折材料で被覆したタルク質パール顔料等が挙げられる。ホログラムグリッターとしては、例えば、アルミニウム蒸着したポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)等の樹脂フィルムに、超微細なホログラムエンボス加工を施すことによって、プリズム効果を発現させたホログラムフィルムの粉末である、ホログラムラメパウダーが好適例として挙げられる。金属酸化物粒子としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄等の紫外線散乱剤、タルク、カオリン、マイカ、金属石鹸等の体質顔料等が挙げられる。加飾インクは、これらの加飾粒子のいずれか1種を単独で含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでもよい。このような加飾材を含むインクを用いることで、被加工物5に、メタリック調、パール調、ホログラムラメ調、光沢質の画像等を印刷することができる。
【0038】
加飾粒子の粒径は特に制限されず、所望の加飾効果を発現し得る寸法のものを適宜用いることができる。例えば、中でも、平均粒子径が凡そ3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上であってよい。また、平均粒子径の上限は、凡そ200μm程度であってよいが、典型的には100μm以下であり、品質が良好なものが入手しやすいとの観点から、例えば50μm以下であってよい。なお、本明細書で言う平均粒子径は、レーザ回折散乱法によって得られる体積基準の粒度分布における累積50%粒子径(D50)である。ただし、薄片状の加飾粒子については、平面視における二軸平均径を採用してもよい。
【0039】
加飾インクに占める加飾粒子の割合は、例えば、1~20質量%程度とすることができる。加飾粒子の割合が1質量%よりも少なすぎると、十分な加飾効果が得られにくく、同じ箇所に加飾インクを複数回重ねて印刷する必要が生じ得るために好ましくない。加飾粒子の割合は、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、例えば10質量%以上であってよい。しかしながら、加飾粒子の割合が20質量%よりも多すぎると、ディスペンサ32のニードル35等の吐出口が詰まる可能性が生じるために好ましくない。加飾粒子の割合は、例えば、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下としてもよい。
【0040】
重合性化合物は、エネルギー線の作用によって液体(粘性体を含む。)から固体に変化する有機材料を広く一般に使用することができる。エネルギー線としては、上述のように、各種の光、放射線であってよく、ここでは紫外線である。この重合性化合物は、例えば、紫外線硬化性化合物である。この重合性化合物は、典型的には、モノマー、オリゴマー、および、プレポリマーのいずれか1種以上を含む。オリゴマーは、分子量が1万以下の低重合体であってよく、好ましくはダイマーまたはトリマーである。プレポリマーは、モノマーの重合または縮合反応を適当な所で止めた中間生成物であり、例えば、分子量が1万を越えて重合度が1000以下程度のもの(ポリマーに至らないもの)をいう。ここに開示される加飾インクにおいて、重合性化合物は、少なくともオリゴマー成分を含むことが好ましく、モノマーとオリゴマーとを含むことがより好ましい。オリゴマーは、モノマー成分等に比べて一般に高粘度であるため、非ニュートン流体の加飾インクを調製するために適した成分であり得る。
【0041】
重合性化合物は、これに制限されるものではないが、(メタ)アクリル系モノマーに対応するモノマー単位を含むモノマー、オリゴマーを含むことが好ましい。これにより、硬化したときに透明性に優れるために加飾粒子の加飾効果を引き立てる機能を発現する。換言すれば、また、適度な硬度を備えて耐久性および耐候性にも優れるために好ましい。このようなモノマー単位としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。また重合性化合物は、一分子中に少なくともひとつの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー単位を含んでいてもよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを包含し、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を包含する。
【0042】
またこれらのモノマー単位は、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマーを含んでいてもよい。このような他のモノマー(共重合性モノマー)としては、カルボキシ基、水酸基、窒素原子含有環等の極性基、ケイ素含有基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アミド基、ウレタン基、ポリエステル基等の官能基を含むモノマーが挙げられる。例えば、これらのモノマー単位は、エポキシ骨格、ポリエステル骨格、ウレタン骨格を主鎖とし、その両末端に(メタ)アクリロイル基を備えるアクリル変性モノマーであってよい。重合性化合物は、透明性や耐久性の観点から、これらのアクリル系モノマー単位を主成分(モノマー単位の総量の50質量%以上)として含有するものが好ましい。また、重合性化合物は、高粘性を備えるとの観点から、アクリル変性モノマー単位を主成分(モノマー単位の総量の50質量%以上)として含有するものがより好ましい。
【0043】
重合開始剤は、エネルギー線を吸収して活性化(励起)し、重合性化合物の重合反応を開始する物質(例えば、ラジカル分子や水素イオン)を生成して、重合性化合物の三次元的な重合や架橋を引き起こす役割を担う。重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤等の、この種の公知の各種の化合物を用いることができる。一例として、光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、p-アニシル系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、重合性化合物におけるモノマー成分100質量部に対して0.01質量部~5質量部程度とすることができる。
【0044】
加飾インクは、ここに開示される技術の本質を損ねない範囲において、加飾粒子、重合性化合物および重合開始剤のほかに、必要に応じて添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、レベリング剤、可塑剤、分散剤、レオロジー調整剤、酸化防止剤、光安定剤、防カビ剤等のうちの1種または2種以上が挙げられる。これらの添加剤は、合計の添加量が加飾インクの総量の10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
【0045】
加飾インクの粘度はこれに限定されるものではないが、加飾粒子の沈降を抑制して、ディスペンサ32による印刷を好適に実施するとの観点から、例えば20℃における粘度(以下同じ。)が、1Pa・s以上が好ましく、5Pa・s以上がより好ましく、10Pa・s以上が特に好ましく、例えば50Pa・s以上であってよい。このように加飾インクが適度に高い粘性を備えることで、被加工物5に供給された加飾インクにおける加飾粒子の沈降も抑制されて、表面形態が均一な印刷膜を形成することができる。しかしながら、加飾インクの粘度が高すぎると、インクの供給性が悪化したりインクがかすれたりしやすく、高精細な印刷が困難となるために好ましくない。かかる観点から、加飾インクの粘度は400Pa・s以下程度が適切であり、300Pa・s以下程度であってよく、例えば200Pa・s以下程度や、100Pa・s以下程度等であってよい。
【0046】
図2に示すように、印刷ヘッドユニット40は、ディスペンサユニット30の右方Rに配置されている。なお、印刷ヘッドユニット40は、ディスペンサユニット30の左方Lに配置されていてもよい。印刷ヘッドユニット40は、キャリッジ41と、インクヘッド42と、2つの紫外線ランプ48と、を備えている。インクヘッド42は、インクジェット方式でインクを吐出する装置である。インクヘッド42は、印刷ヘッドの一例である。インクヘッド42は、キャリッジ41に搭載されている。インクヘッド42は、テーブル20より上方に配置されている。紫外線ランプ48は、インクヘッド42の左右に一つずつ配置するように、キャリッジ41に固定されている。キャリッジ41が移動することで、インクヘッド42と紫外線ランプ48とは一体的に移動される。インクヘッド42は、カラーインクを吐出するノズル43を備えている。インクヘッド42は、カラーインクを液滴状に吐出するインクジェット方式の印刷ヘッドである。インクジェット方式は、例えば、二値偏向方式あるいは連続偏向方式などの連続方式や、サーマル方式、あるいは圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式のいずれであってもよい。ただし、印刷ヘッドユニット40の構成はこれに限定されず、例えば、トナー方式により印刷を実行する印刷ヘッドであってもよい。カラーインクは、上記の加飾インクとは異なり、色彩を付与するためのインクである。カラーインクは、第二インクの一例である。
【0047】
インクヘッド42は、テーブル20に向けてカラーインクを吐出することで、テーブル20に載置された被加工物5に、
図6に示すような画像80やクロップマーク82A~82Dを印刷することができる。クロップマークは、印刷の位置ズレを防ぐための見当合わせのために使用する印であり、例えば被加工物5を仕上がりサイズに裁断するための位置を示す役割をも示す。
図6においてマーク82A~82Dは「+」印であるが、マーク82A~82Dの形状はこれに限定されない。マーク82A~82Dは、例えば、円形や多角形などの幾何学模様や、各種意匠、任意の不定形模様等であってもよい。
【0048】
ここでは、5つのインクヘッド42がキャリッジ41に搭載されている。インクヘッド42は、主走査方向Yに並んでいる。インクヘッド42は、キャリッジ41を介してガイドレール16に沿って主走査方向Yに移動可能である。インクヘッド42は、被加工物5に印刷をしていないときには、ガイドレール16の右端側に位置するホームポジションHPに待機するように構成されている。ホームポジションHPは、テーブル20よりも右方に位置する。5つのインクヘッド42は、互いに異なる5つの色のを吐出する。5色のインクは、例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク、ホワイトインクである。インクヘッド42の数は5個に限定されない。また、インクヘッド42が吐出するカラーインクの色も何ら限定されない。
【0049】
ただし、インクヘッド42により吐出される上記カラーインクは、ニュートン流動性を示す。例えば、カラーインクがニュートン流動性を示すことで、インクジェット方式のインクヘッド42から所望のサイズおよび量のインク滴を適切な速度で好適に吐出できる。ニュートン流動性とは、流れのせん断応力(接線応力)と流れの速度勾配(ずり速度、せん断速度)とが比例した粘性の性質をいう。なお、一般的なインクジェット用の水系インクの粘度は、30mPa・s以下、例えば2~20mPa・s程度に調整されている。このようなインクは、例えば、ソルベント系インク(溶剤系インク)や水系インクであってもよいし、あるいは、紫外線(UV)等のエネルギーを受けて硬化するエネルギー硬化型インク(典型的には、UV硬化性インク)等であってもよい。本実施形態では、カラーインクは、紫外線硬化型のインクである。紫外線硬化型のインクは、典型的には、色材と、重合性化合物と、重合開始剤とを含んでいる。このカラーインクは、ニュートン流動性を示し得るように、重合性化合物としてモノマーを多く含んでいる。例えば、カラーインクを構成する重合性化合物のうち、50質量%以上がモノマーである。インクヘッド42は、例えば、このような紫外線硬化型インクを好ましく吐出するように、吐出機構が調整されている。
【0050】
紫外線ランプ48は、インクを硬化させるための紫外線を被加工物5上に照射するためのものである。紫外線ランプ48は、インクを硬化可能な波長の紫外線を発生することができるLEDランプであり、例えば上述のディスペンサユニット30の紫外線ランプ38と同様の構成とすることができる。紫外線ランプ48は、インクヘッド42の左右両端にそれぞれ1つずつ配置されている。紫外線ランプ48は、左右方向Xにインクヘッド42と並んでいる。紫外線ランプ48はここでは2つであるが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。紫外線ランプ48は、制御装置100に電気的に接続されて、その動作が制御される。紫外線ランプ48は、ここでは2つであるが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0051】
図1に示すように、粒子加飾プリンタ10は、複数のインクカートリッジ44を備えている。複数のインクカートリッジ44には、上述の通り、それぞれ異なる色の紫外線硬化型のインクが収容されている。インクカートリッジ44は、インクチューブ(図示せず)を介してインクヘッド42に接続している。インクカートリッジ44は、インクカートリッジ収容部4に収容されている。インクカートリッジ収容部45は、ケース12の内部かつベース部12Bの左後部に設けられている。
【0052】
図7Aに示すように、印刷ヘッドユニット40のキャリッジ41の左側部分には、連結部材90が設けられている。この連結部材90は、ディスペンサユニット30のキャリッジ31に設けられた連結部材91に対し、着脱自在に連結する。本実施形態では、連結部材90、91は磁石によって構成されており、連結に際して磁力を利用する。ただし、連結部材90、91は磁力を利用するものに限られず、係合部材等の他の構成を備えたものであってもよい。印刷ヘッドユニット40のキャリッジ41の右側部分には、L字状に形成された受け金具92が設けられている。
【0053】
ここで、
図7Aに示すように、右サイドフレーム15Rには、印刷ヘッドユニット40を待機位置にロックするためのロック装置93が設けられている。ロック装置93は、受け金具92に引っ掛けられる受け金具94と、受け金具94をロック位置(
図7B参照)と非ロック位置(
図7A参照)との間で移動させるロック用ソレノイド95(
図8参照)とを備えている。ロック用ソレノイド95は、後述する制御装置100(
図8参照)に電気的に接続され、その駆動が制御される。
【0054】
図7Aに示すように、印刷ヘッドユニット40による印刷を行う際には、受け金具94が非ロック位置に設定される。ディスペンサユニット30のキャリッジ31が右方に移動し、連結部材90と連結部材91とが接触すると、キャリッジ41とキャリッジ31とが連結される。その結果、印刷ヘッドユニット40は、ディスペンサユニット30とともに主走査方向Yに移動可能となる。一方、ディスペンサユニット30による印刷の際には、
図7Bに示すように、印刷ヘッドユニット40が待機位置(ホームポジションHP)に位置づけられ、ロック装置93の受け金具94がロック位置に設定される。これにより、印刷ヘッドユニット40の移動が阻止される。キャリッジ31が左方へ移動すると、連結部材90と連結部材91とが離反し、キャリッジ31とキャリッジ41との連結が解除される。その結果、印刷ヘッドユニット40が待機位置に待機した状態で、ディスペンサユニット30が主走査方向Yに移動可能となる。
【0055】
図7Aおよび
図7Bに示すように、粒子加飾プリンタ10は、センサ39を備えている。センサ39は、検出装置の一例である。センサ39は、被加工物5に設けられたマーク82A~82D(
図6参照)を検出する。センサ39は、例えばキャリッジ31に設けられている。センサ39は、ディスペンサユニット30のうちテーブル20と対向する位置に配置されている。センサ39は、キャリッジ31の左側下端に設置されている。センサ39は、図示しない本体部と、発光素子と、受光素子とを備えている。発光素子および受光素子は、本体部に設けられている。発光素子は、例えば、LED(つまり発光ダイオード)等で構成されている。発光素子は、被加工物5に設けられたマーク82A~82Dとその周辺領域83に向けて光を照射する。受光素子は、例えばフォトダイオード等で構成されている。受光素子は、発光素子の高さ位置と同じ高さ位置に設けられている。受光素子は、マーク82A~82Dとその周辺領域83において反射された反射光を受光する。センサ39は、マーク82A~82Dにおいて反射された反射光の第1受光量と、周辺領域83において反射された反射光の第2受光量との差である光量差が所定の値以上の場合に、被加工物5に設けられたマーク82A~82Dを検出するように構成されている。なお、センサ39の種類は特に限定されず、光学式センサ等の従来から用いられている各種のセンサを好適に利用することができる。
【0056】
図1に示すように、右サイドカバー12Rの前部には、操作パネル19が設けられている。操作パネル19には、印刷状態等を表示する表示部と、作業者によって操作される入力キー等が設けられている。操作パネル19は、粒子加飾プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置100に接続されている。作業者は、操作パネル19から制御装置100に指示・命令を入力することで、粒子加飾プリンタ10を所望のとおり動作させることができる。
【0057】
図1に示すように、制御装置100は、粒子加飾プリンタ10の内部に設けられている。制御装置100は、被加工物5への加飾インクによる印刷や、被加工物5へのカラーインクによる印刷を制御する装置である。制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されず、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データ等の各種情報を送受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(central processing unit:CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。また、制御装置100は、例えばFPGA(field-programmable gate array)等の書き換え可能なプログラマブルロジックデバイスによって構成されていてもよい。FPGAは、例えば、集積回路によって構成されるCPUコアや、乗算器、RAM、および関連する周辺回路等を含むことができる。
【0058】
記憶装置は、印刷データを記憶する。印刷データは、出力データの一例である。印刷データは、被加工物5の表面に印刷すべき画像80に対応するデータを含む。印刷データは、例えば画像80についての色情報、位置情報、加飾情報等を含む。印刷データは、さらに、位置合わせのためのマーク82A~82Dに対応する情報を含むことができる。この場合、画像80についての位置情報は、マーク82A~82Dのいずれか1以上に対する相対的な位置として表されていてもよい。印刷データは、例えば、画像80のうち、加飾インクで印刷するべき第1部分に関する情報を含む第1印刷データと、画像80のうちカラーインクで印刷するべき第2部分に関する第2印刷データと、を含む。第1印刷データは、例えば、ビットマップ形式であってもよいし、ラスタ形式のデータであってもよい。第1印刷データは、例えば、二値化表現されたラスタ形式のデータである。第2印刷データは、例えばビットマップ形式のデータである。第1印刷データは、例えば第2印刷データを基にして、加飾部に対応する情報を抽出したり、変換したりして作製されてもよい。第1印刷データと第2印刷データとは、共通して、マーク82A~82Dに対応する情報を含む。これらのデータは、例えば、全部または一部が外部のコンピュータ70から送信されたものであってよいし、または外部のコンピュータ70から受信したものであってよい。あるいは、これらのデータは、全部または一部が外部のコンピュータ70から受け取ったデータに基いて制御装置100が加工および/または変換して用意したものであってよい。
【0059】
図8に示すように、制御装置100は、インターフェイスを介して、外部のコンピュータ70に有線または無線による通信が可能に接続されている。コンピュータ70には、加飾のための印刷データが保存されている。制御装置100は、コンピュータ70から印刷データを受けとり、この印刷データに基いて、キャリッジモータ18、第二モータ、第三モータ、ディスペンサ制御装置37、紫外線ランプ38、インクヘッド42、紫外線ランプ48、およびロック用ソレノイド95を制御する。コンピュータ70には、液晶ディスプレイ等からなる表示装置72と、キーボードやマウス、タッチパネル等からなる入力装置74と、が接続されている。表示装置72は、例えば、撮像装置76によって撮像したテーブル20の平面視像を表示することができる。入力装置74は、例えば、タッチパネルに代わって、キーボードや、携帯端末などであってよい。
【0060】
図9に示すように、制御装置100は、第一印刷制御部101と、第二印刷制御部102と、マーク検出部103と、を備えている。上述した制御装置100の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えば記憶装置に記憶することができる。プログラムは、CDやDVDなどの記録媒体から読み込むことができ、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、制御装置100の各部は、マイクロプロセッサおよび/または回路などによって物理的に実現されていてもよい。
【0061】
第一印刷制御部101は、ディスペンサユニット30の挙動制御を実行する。第一印刷制御部101は、ディスペンサユニット30に、被加工物5の表面に所望の加飾を施すための加飾インクの印刷を実行させる。本実施形態では、第一印刷制御部101は、第1印刷データに基いて、キャリッジモータ18を駆動することによりキャリッジ31を介してディスペンサ32を主走査方向Yの左方Lに移動させる。これと並行して、第一印刷制御部101は、ディスペンサ制御装置37を駆動させることにより、所定の位置においてディスペンサ32のニードル35から加飾インクを供給する。さらに、第一印刷制御部101は、ニードル35から被加工物5の表面に加飾インクを供給したとき、被加工物5上の加飾インクに紫外線を照射するよう紫外線ランプ38を起動させる。第一印刷制御部101は、加飾インクの供給を停止すると、例えば紫外線ランプ38を停止させる。これにより、一走査ラインの印刷が行われる。ディスペンサ32の主走査方向Yの移動が完了すると、第三モータを駆動することにより、次の走査ラインの位置まで被加工物5を副走査方向Xの前方Fに移動する。被加工物5の副走査方向Xの移動が済むと、再びキャリッジモータ18を駆動するとともに、ディスペンサ32および紫外線ランプ38を駆動し、第1印刷データに基いて、次の走査ラインの印刷を行う。
【0062】
このとき、加飾インクの吐出は、ディスペンサ32を主走査方向Yの右方Rに移動させつつ行ってもよいし(双方向印刷)、ディスペンサ32を主走査方向Yの右方Rに移動させた後に再び左方Lに移動させる際に行ってもよい(片方向印刷)。以下、印刷の終了まで同様の動作を繰り返す。またあるいは、第一印刷制御部101は、第1印刷データに基いて、キャリッジモータ18および第三モータの両方を駆動することにより、ディスペンサ32を主走査方向Yと副走査方向XとによるXY平面を所定の軌跡(印刷ライン)に沿って二次元的に相対移動させてもよい。そして第一印刷制御部101は、ディスペンサ32を二次元的に相対移動させつつ、ディスペンサ制御装置37を駆動させることにより、所定の位置においてディスペンサ32のニードル35から加飾インクを吐出させてもよい。このようにして、粒子加飾プリンタ10は、加飾インクを用いた印刷を実行することができる。なお、第一印刷制御部101は、加飾情報を基に、加飾インクの供給位置のみならず、供給量をも適切に制御することができる。加飾インクの供給量は、例えば、エア圧力、ディスペンサ32の走査速度、ディスペンサ32からのインク吐出量等を制御することで調整することができる。また、第一印刷制御部101は、加飾インクの供給量が多いとき、紫外線ランプ38から発射する紫外線量を増大させることができる。
【0063】
第二印刷制御部102は、印刷ヘッドユニット40の挙動制御を実行する。第二印刷制御部102は、印刷ヘッドユニット40に、被加工物5の表面に所望の画像を印刷するためのカラーインクによる印刷を実行させる。本実施形態では、第二印刷制御部102は、まずキャリッジモータ18を駆動することにより、キャリッジ31とキャリッジ41を連結させ、ロック装置93を解除する。次いで、第二印刷制御部102は、第2印刷データに基いて、インクヘッド42を主走査方向Yの左方Lに移動させつつ、インクヘッド42を制御することで各ノズル43からカラーインクを吐出させる。さらに、第二印刷制御部102は、ノズル43から被加工物5の表面にカラーインクを吐出したとき、被加工物5上のカラーインクに対して紫外線を照射するよう紫外線ランプ48を起動させる。第二印刷制御部102は、カラーインクの吐出を停止すると、紫外線ランプ48を停止させる。これにより、一走査ラインの印刷が行われる。インクヘッド42の主走査方向Yの左方Lへの移動が完了すると、第三モータを駆動することにより、次の走査ラインの位置まで被加工物5を副走査方向Xの前方Fに移動する。被加工物5の副走査方向Xの前方Fへの移動が済むと、再びキャリッジモータ18を駆動するとともに、インクヘッド42および紫外線ランプ48を駆動し、第2印刷データに基いて、次の走査ラインの印刷を行う。このとき、カラーインクの吐出は、インクヘッド42を主走査方向Yの右方Rに移動させつつ行ってもよいし(双方向印刷)、インクヘッド42を主走査方向Yの右方Rに移動させた後に再び左方Lに移動させる際に行ってもよい(片方向印刷)。以下、印刷の終了まで同様の動作を繰り返す。このようにして、粒子加飾プリンタ10は、カラーインクを用いた印刷を実行することができる。
【0064】
マーク検出部103は、被加工物5に設けられたマーク82A~82Dを検出する。マーク検出部103は、キャリッジモータ18を駆動するとともに第三モータを駆動することにより、被加工物5に対しセンサ39を二次元的に相対移動させる。マーク検出部103は、例えば、被加工物5の外接矩形領域の四隅周辺を検出するように、センサ39の移動を制御する。マーク82A~82Dの検出は、例えば、右下のマーク82D、左下のマーク82C、左上のマーク82B、右上のマーク82Aの順で行われる。マーク検出部103は、センサ39の発光素子から所定の発光量の光を被加工物5に照射させる。このとき、被加工物5の周辺領域83やマーク82A~82Dにおいて反射された反射光はセンサ39の受光素子に受光される。マーク検出部103は、センサ39の受光素子において受光された第1受光量と第2受光量との差である光量差が所定の値以上であるか否かを判定する。マーク検出部103は、例えば、第1受光量に対応して検出する第1電圧値と、第2受光量に対応して検出する第2電圧値との差である電圧差が所定の値以上であるか否かを判定する。所定の値は、予め設定されており、記憶装置に記憶されている。所定の値以上の場合には、マーク82A~82Dの位置が検出される。一方、所定の値未満の場合には、マーク82A~82Dの位置が検出されない。マーク検出部103は、マーク82A~82Dを検出するまで、被加工物5に対しセンサ39を二次元的に走査する。
【0065】
マーク検出部103によってマーク82A~82Dの位置が検出されると、このマーク82A~82Dを位置基準にして、第一印刷制御部101は、第1印刷データに基いて印刷を実施する。また、このマーク82A~82Dを位置基準にして、第二印刷制御部102は、第2印刷データに基いて印刷を実施する。ここで、第一印刷制御部101および/または第二印刷制御部102は、印刷に先立って、ディスペンサ32および/またはインクヘッド42の位置決めを行う。位置決めとは、例えば、印刷開始位置の決定や、印刷基準位置の決定であり得る。例えば、ディスペンサ32の位置決めは、4つのマーク82A~82Dのうちの3つ以上を利用して行われる。すなわち、第一印刷制御部101は、4つのマーク82A~82Dのうちの3つ以上の位置に基いて、ディスペンサ32の位置決めを行う。なお、センサ39を利用してマーク82A~82Dの位置を検出し、検出されたマーク82A~82Dを利用してディスペンサ32の位置決めを行う方法は周知であるため、ここではその具体的な説明は省略する。第一印刷制御部101は、ディスペンサ32の位置が決定された後、加飾インクの印刷を開始する。第二印刷制御部102についても、同様である。
【0066】
次に、粒子加飾方法と、この粒子加飾方法における粒子加飾プリンタ10の動作例について説明する。
図10は、第一実施形態に係る粒子加飾方法のフローチャートである。
図10は、制御装置100による粒子加飾プリンタ10の各部の制御例を含む。
【0067】
ステップS10において、作業者は、被加工物5をテーブル20上に載置する。被加工物5が、例えば塩化ビニルシートである場合、塩化ビニルシートの厚みによって被加工物5の加飾面の高さが異なり得る。また、被加工物5の素材によっては被加工物5がテーブル20上で滑りやすい可能性がある。そこで、作業者は、被加工物5をテーブル20の所定の位置に配置したのち、減圧ポンプを作動させて減圧室26によりテーブル20内の空間を負圧とする。すると被加工物5はテーブル20の所定の位置に吸引固定される。これにより、加飾工程においてテーブル20が副走査方向Xや高さ方向Zに移動した場合であっても、被加工物5の位置ずれを抑制することができる。また作業者は、被加工物5の上面がディスペンサユニット30の下端および印刷ヘッドユニット40の下端と適切な距離となるよう、第二モータを駆動して、テーブル20の高さ方向の位置を調整することができる。そして作業者は、例えば、外部のコンピュータ70を操作して、粒子加飾プリンタ10に対し、被加工物5に加飾インクによって画像80を印刷するように指示をする。これにより、コンピュータ70から制御装置100に第1印刷データを含む印刷データが送信される。送信された各データは、記憶装置に記憶される。
【0068】
ステップS20において、制御装置100は、第一印刷制御部101に加飾インクを用いた印刷を実行させる。第一印刷制御部101は、記憶装置に記憶された第1印刷データを参照し、ディスペンサユニット30を使用して、被加工物5の表面の加飾を施すべき位置に加飾インクを供給する。このとき、加飾インクは非ニュートン流体であることから、たとえ被加工物5が吸水性の低い樹脂シートであっても、加飾インクは被加工物5の表面でダレることなく立体的な供給厚さを維持し得る。また、加飾インクは適度な粘性を有することから、被加工物5の加飾面が平坦でなく凹凸面であっても、その凹凸面に留まることが可能となる。これにより、被加工物5の表面に、加飾インクによる印刷膜が形成される。ディスペンサユニット30によるインク供給量は、加飾インクにおける加飾粒子の添加量や、ディスペンサからのインク供給量、テーブル20に対するディスペンサ32の相対的な走査速度、等によって決定され調整することができる。
【0069】
ステップS30において、制御装置100は、第一印刷制御部101に紫外線ランプ38を点灯させて、被加工物5の表面に供給された加飾インクに紫外線を照射する。このことにより、加飾インクによる印刷膜は硬化して、加飾粒子を被加工物5に固定することができる。また、例えば、厚みをもって供給された加飾インクを硬化させて、膨らみを持った立体的な加飾を実現することができる。なお、第一印刷制御部101は、このステップS30を、ステップS20の後に実施してもよいし、ステップS20と同時に実施してもよいし、あるいはステップS20と並行して実施してもよい。また、第一印刷制御部101は、第1印刷データを参照し、加飾面積に対して加飾インクの供給量が多いときは、紫外線ランプ38の点灯時間を延長して、加飾インクへの紫外線照射時間および紫外線照射量を増大させてもよい。これにより、被加工物5の表面の所望の位置に、加飾粒子による加飾を施すことができる。
【0070】
以上のように、ここに開示される技術によると、平均粒子径が1μm以上の大きな加飾粒子を含むインクを使用し、パソコン等で作成したデジタルデータを基に、被加工物に印刷することができる。この技術によると、スクリーン製版等を作製する必要なく、オンデマンドで(必要なときに必要な数だけ)、被加工物に加飾粒子による加飾を施すことができる。その結果、例えば、余分な在庫を抱えることなく、また、コスト割れすることなく、短時間で、所望の数の被加工物5に加飾粒子を用いた加飾を実施することができる。また、加飾インクは非ニュートン流体であることから、例えば、単位面積当たりに少量のインクを供給した場合は平面的な加飾を行うことができ、単位面積当たりに多量にインクを供給した場合は立体的な加飾を行うことができる。これにより、例えばインクジェットプリンタではこれまで表現できなかった多様な加飾を実現することができる。
【0071】
上記構成によると、加飾粒子は、メタリック顔料、パール顔料、ホログラムグリッター、および、金属酸化物粒子の少なくとも1種を含む。これにより、金属メタリック調、パール調、ホログラムラメ調、および金属光沢質の意匠を、オンデマンドで加飾することができる。
【0072】
上記構成によると、粒子加飾プリンタ10において、ディスペンサ32が収容する加飾インクの総質量に占める加飾粒子の割合は、1質量%以上20質量%以下である。粒子加飾プリンタ10のインク供給手段としてディスペンサ32を採用したことにより、インクジェットプリンタでは対応できない固形分濃度の高い加飾インクを用いて印刷を実施することができる。その結果、例えば従来よりも加飾粒子による加飾効果の高い意匠を実現することができる。例えば、人の視覚に鮮明に映る加飾を施すことができる。
【0073】
また、本実施形態の粒子加飾プリンタ10のディスペンサ32は、インクを吐出する吐出口を備え、吐出口の口径は、50μm以上600μm以下である。一般に、ディスペンサ32から吐出する流体は、口径の1/10以下程度の粒子径のものであると、流動性よく吐出管理できるために好ましい。したがって、粒子加飾プリンタ10は、例えば、1~100μmという大粒径の加飾粒子を含む加飾インクであっても、加飾粒子の目詰まり等の問題を気にせず好適に加飾することができる。このことは、例えば、加飾インクが従来よりも寸法の大きいメタリック顔料やホログラムグリッター等を含むことを許容し、かかる加飾による光の散乱効果を高めたり、ホログラム意匠のデザイン性を高めたりすることができる。
【0074】
なお、上記第一実施形態で、作業者は、被加工物5の上面がディスペンサユニット30の下端および印刷ヘッドユニット40の下端と適切な距離となるよう、第二モータを駆動して、テーブル20の高さ方向の位置を調整していた。しかしながら、テーブル20の高さ方向の位置を調整は、制御装置100が自動的に実施するように構成されていてもよい。すなわち、センサ39は、発光素子が被加工物5に対して照射したレーザ光の反射光を、受光素子で受光する。そしてこのとき、制御装置100は、発光素子がレーザ光を出射してから、受光素子が反射光を受光するまでので時間に基いて、ディスペンサユニット30の下端と被加工物5の表面との距離を測定できるように構成されていてもよい。そして制御装置100は、測定されたディスペンサユニット30の下端と被加工物5の表面との距離が加飾に適した距離となるように、第二モータを作動して、テーブル20の高さ位置を調整してもよい。
【0075】
<第二実施形態>
次に、他の粒子加飾方法と、この粒子加飾方法における粒子加飾プリンタ10の他の動作例について説明する。
図11は、第二実施形態に係る粒子加飾方法の他のフローチャートである。
図11は、制御装置100による粒子加飾プリンタ10の各部の他の制御例を含む。なお、上記第一実施形態では、粒子加飾に際し、ディスペンサユニット30のみを用いて印刷した。そのため、粒子加飾プリンタ10は、印刷ヘッドユニット40、ロック装置93、ディスペンサユニット30の連結部材91、第二印刷制御部102等を付加的に備えていたものの、これらは必須の構成ではなく、これらを備えていない構成であってもよかった。そこで、第二実施形態では、ディスペンサユニット30に加えて、印刷ヘッドユニット40を使用して印刷を行う方法について説明する。
【0076】
ここに開示される加飾インクは、硬化後も透明な重合性化合物を含むものであった。そのため、加飾インクの印刷体(加飾部)において、加飾粒子が埋設される硬化樹脂は透明であり、印刷体の視認性は下地ともいえる被加工物5の色調に大きく左右される。例えば、被加工物5が色彩を備えていると加飾部にも当該色彩が反映され得る。具体的には、例えば、ピンク色の色彩を備える被加工物5にパール顔料を含む加飾インクで加飾を施すと、形成される加飾部は、ピンクパール調に視認され得る。そこで、加飾インクによる加飾を行う前に、予め被加工物5(下地)の色を調整することで、その視認性を大きく多様化することができる。かかる多様性を持たせる印刷方法について、以下に説明する。
【0077】
まず、作業者は、上記第一実施形態と同様に、ステップS10を実行する。すなわち、作業者は、ステップS10において、被加工物5をテーブル20上に載置する。そして、例えば、減圧ポンプを駆動させることで、テーブル20上で被加工物5が移動しないように固定する。また、作業者は、例えば、外部のコンピュータ70を操作して被加工物5に対し、加飾インクによる印刷と、カラーインクによる印刷とを実行するように指示を送る。これにより、コンピュータ70から制御装置100に、第1印刷データと第2印刷データとを含む印刷データが送信される。送信された各データは、記憶装置に記憶される。
【0078】
ステップS20において、制御装置100は、第二印刷制御部102にカラーインクを用いた印刷を実行させる。第二印刷制御部102は、キャリッジ31とキャリッジ41を連結させ、ロック装置93を解除する。これにより、印刷ヘッドユニット40を用いた印刷を実行する。具体的には、第二印刷制御部102は、記憶装置に記憶された第2印刷データを参照し、印刷ヘッドユニット40を使用して、被加工物5の表面の画像を印刷すべき位置に、カラーインクを供給する。これにより、被加工物5の表面に、カラーインクによる印刷膜を形成することができる。
【0079】
ステップS30において、制御装置100は、第二印刷制御部102に紫外線ランプ48を点灯させて、被加工物5の表面に供給されたカラーインクに紫外線を照射する。このことにより、カラーインクによる印刷膜は硬化して、加飾粒子を被加工物5に固定することができる。これにより、被加工物5の表面を所望の色調に着色することができる。
【0080】
なおここで、第2印刷データは、画像80に対応する情報と、マーク82A~82Dに対応する情報を含み得る。第2印刷データがマーク82A~82Dに対応する情報を含むとき、印刷ヘッドユニット40は、被加工物5に、画像80と、マーク82A~82Dとを印刷してもよい。これにより、被加工物5の表面に、画像80と、マーク82A~82Dとに対応する形状のカラーインクによる印刷膜が形成される。
【0081】
ステップS40において、マーク検出部103は、被加工物5の画像の印刷領域の四隅周辺を検出するように、センサ39の移動を制御する。このとき、センサ39の発光素子からは所定の発光量の光が照射され、受光素子はマーク82A~82Dおよび周辺領域83において反射された反射光を受光する。マーク検出部103は、センサ39の受光素子において受光された第1受光量と第2受光量との差である光量差が所定の値以上であるか否かを判定する。光量差が所定の値未満である場合には、センサ39を被加工物5に対してさらに二次元的に走査させる。マーク検出部103は、第1受光量と第2受光量との差である光量差が所定の値以上である場合に、発光素子による光照射部を印刷基準位置として、ステップS50に進む。
【0082】
ステップS50において、制御装置100は、第一印刷制御部101に加飾インクを用いた印刷を実行させる。第一印刷制御部101は、記憶装置に記憶された第1印刷データを参照し、ディスペンサユニット30を使用して、被加工物5の表面の加飾を施すべき位置に加飾インクを供給する。このとき、第一印刷制御部101は、マーク検出部103によって検出された印刷基準位置を基準として、印刷を実施する。これにより、ステップS20にてカラーインクにより印刷された印刷膜上に、加飾インクによる印刷膜が形成される。
【0083】
ステップS60において、制御装置100は、第一印刷制御部101に紫外線ランプ38を点灯させて、被加工物5の表面に供給された加飾インクに紫外線を照射する。このことにより、加飾インクによる印刷膜は硬化して、加飾粒子を被加工物5に固定することができる。このことにより、被加工物5の表面を所望の色調に調整してから、加飾インクによる表面の加飾を実施することができる。その結果、加飾インクによる金属メタリック調、パール調、ホログラムラメ調、光沢質の加飾に、様々な色合いを簡単に付与することができる。これにより、従来にない多様な特殊加飾を、簡便かつ手軽に実施することができる。
【0084】
以上のように、本実施形態の粒子加飾プリンタ10は、ニュートン流動性を示す第二インクを吐出可能な吐出ヘッド(印刷ヘッドユニット40)をさらに備えている。制御装置100は、第2印刷データに基いて移動装置によって吐出ヘッドを載置台に対して相対的に移動させるとともに、前記出力データに基づく所定の位置において前記吐出ヘッドから前記第二インクを吐出するように構成されている。これにより、粒子加飾プリンタ10は、印刷ヘッドユニット40を移動させる移動装置を新たに備える必要なく、一台の装置で、ディスペンサユニット30と印刷ヘッドユニット40とによる印刷を実施することができる。これにより、少ない設置面積で、粒子加飾と、カラー印刷とを実施できる粒子加飾プリンタ10が実現される。
【0085】
また、ここに開示される技術において、出力データは、被加工物5を加工するための位置基準となるクロップマークに関する情報を含む。そして粒子加飾プリンタ10は、クロップマークを検出する検出装置をさらに備えている。そして、制御装置100は、載置台に載置された被加工物5に備えられたクロップマークを検出装置によって検出するとともに、クロップマークを位置基準として、ディスペンサ32および吐出ヘッドの少なくとも一方を前記載置台に対して相対的に移動させるように構成されている。これにより、粒子加飾プリンタ10は、ディスペンサユニット30と印刷ヘッドユニット40とによる印刷を、印刷ズレを生じることなく実施することができる。
【0086】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0087】
例えば、上記第二実施形態において、被加工物5はテーブル20上に吸引固定されていた。しかしながら、被加工物5の固定方法はこれに限定されない。例えば、テーブル20は、図示しない固定治具を装着可能に構成されていてもよい。固定治具は、例えば、予め定められた寸法の被加工物5を、挟持したり、嵌め込んだりして固定できるように構成されている。例えば被加工物5が、携帯電話ケースや電子タバコ等であるとき、固定治具には、これらの携帯電話ケースや電子タバコが嵌め込み固定できるように嵌め込み穴が形成されている。このような固定治具を利用することで、例えば、立体形状を有する等して吸引固定ができない被加工物5を、テーブル20に固定することができる。
【0088】
また例えば、上記第二実施形態で、作業者は、ステップS10にてテーブル20上に被加工物5を載置したのち、ステップS20にて加飾インクによる印刷を実行していた。ここで、被加工物5の所望の位置に、加飾インクによる印刷を適切に実行するために、被加工物5は予めクロップマーク82A~82Dを備えていてもよい。そして、ステップS10の後、ステップS20の前に、ステップS15として、クロップマーク82A~82Dを検出する工程を実施してもよい。ステップS15は、上記ステップS30と同様であるために、重ねての説明は省略する。これにより、粒子加飾プリンタ10は、検出したクロップマーク82A~82Dを位置基準として、ステップS20による加飾インクを用いた印刷を実施することができる。
【0089】
また、上述のステップS15においては、マーク検出部103が、マーク82A~82Dを検出できない事態が起こり得る。例えば、クロップマーク82A~82Dを備えた被加工物5が、粒子加飾プリンタ10の印刷可能領域に適切に載置されていない場合が生じ得る。例えば、クロップマーク82A~82Dが、センサ39の走査可能領域よりも大きく外れた位置に配置されることがあり得る。このような場合、粒子加飾プリンタ10は、被加工物5に対して適切な印刷を行うことができない。
【0090】
そこで、粒子加飾プリンタ10は、被加工物5がテーブル20上の適切な位置に配置されていないことを、作業者に知らせるよう作動することができる。例えば、粒子加飾プリンタ10は、表示装置72に被加工物5の載置状態が適切でないことを示す載置エラー警告を表示してもよい。すなわち、粒子加飾プリンタ10の載置台には、ディスペンサおよび吐出ヘッドの少なくとも一方による印刷可能領域Pyが設定されている。また、粒子加飾プリンタ10には、載置台の平面視を表示可能な表示装置72をさらに備えている。そして制御装置100は、載置台に載置された被加工物5に備えられたクロップマーク82A~82Dを、検出装置によって検出することにより、クロップマーク82A~82Dを位置基準とした出力データの出力位置が、印刷可能領域Pyに納まるか否かを判断するように構成されている。制御装置100は、判断結果を表示装置72に表示してもよい。これにより、作業者に、被加工物5をテーブル20上のより適切な位置に載置し直すよう指示することができる。また、制御装置100は、表示装置72に、撮像装置76によって撮像された載置台に対する被加工物5の配置状態と、印刷可能領域Pyとを表示することで、作業者が被加工物5の配置をどのように修正して良いかを視認できるようにしてもよい。このことは、被加工物5が、樹脂シート等の所定の形状を備える材料ではなく、アクセサリ等の不定形の物品等である場合に特に有用となる。これにより、被加工物5のより適切な位置への印刷が可能な粒子加飾プリンタ10が提供される。
【0091】
また、上記第二実施形態で、粒子加飾プリンタ10は、ディスペンサユニット30と印刷ヘッドユニット40とにそれぞれ、紫外線ランプ38、48を備えていた。しかしながら、紫外線ランプ38、48は、例えば複数の紫外線ランプが主走査方向Yに配列されたライン光源によって構成されていてもよい。ライン光源は、例えば、支持壁14に支持するとよい。ライン光源は、例えば、主走査方向Yにおいて、テーブル20の長さに対応する長さに延設されているとよい。このようなライン光源によると、制御装置100が支持壁14に固定された紫外線ライン光源の下を通過するように、テーブル20を副走査方向Xに移動させることで、テーブル20に固定された被加工物5ならびに加飾インクおよびカラーインクの印刷体に対して、紫外線を照射することができる。
【0092】
上述した第一実施形態では、粒子加飾プリンタ10は、印刷ヘッドユニット40を備えていたが、これに限定されない。粒子加飾プリンタ10は、ディスペンサユニット30のみを備えており、印刷ヘッドユニット40を備えていなくてもよい。この場合、粒子加飾プリンタ10のセンサ39は、被加工物5に予め設けられたマーク82A~82Dを検出するとよい。
【0093】
上述した各実施形態では、マーク82A~82Dは、予め被加工物5に設けられているか、ディスペンサユニット30により印刷されていた。しかしながら、マーク82A~82Dの形成はこれに限定されない。マーク82A~82Dは、粒子加飾プリンタ10の印刷ヘッドユニット40によって印刷することによって形成してもよい。あるいは、マーク82A~82Dは、被加工物5への直接印刷によって形成するのではなく、例えば、シール等を被加工物5に張り付けることによって設けてもよい。
【符号の説明】
【0094】
10 粒子加飾プリンタ
20 テーブル
30 ディスペンサユニット
40 印刷ヘッドユニット
80 画像
100 制御装置
101 第一印刷制御部
102 第二印刷制御部