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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】車体フレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/02 20060101AFI20221014BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20221014BHJP
   B60T 17/06 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B62D21/02 Z
F16B2/08 B
B60T17/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018246352
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020104749
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和駿
(72)【発明者】
【氏名】西澤 直之
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-028177(JP,U)
【文献】特開2009-286312(JP,A)
【文献】特開平11-105704(JP,A)
【文献】実開平02-038326(JP,U)
【文献】特開2011-88550(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013110203(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
F16B 2/00- 2/26
B60T 15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に間隔をあけて配置された一対のサイドメンバと、該サイドメンバ同士を架け渡すクロスメンバと、を備える車体フレーム構造であって、
前記クロスメンバは、上下方向に延設されたウェブと、該ウェブの上部から車体前方に延出された上部フランジと、該ウェブの下部から車体前方に延出された下部フランジと、によって断面コ字状をなすものであって、且つ、筒状をなすエアタンクに巻き掛けられるバンドが取り付けられるものであり、
前記下部フランジに、前記エアタンクの外周面が当接される円弧状の当接座が一体的に設けられ、
前記バンドが、前記当接座に当接された前記エアタンクに巻き掛けられて前記クロスメンバに取り付けられることにより、該エアタンクは該当接座の下方に吊り下げ保持される、ことを特徴とする車体フレーム構造。
【請求項2】
前記当接座は、下方に凸状に形成された中央部と、該中央部の左右の外縁からそれぞれ上方に延出された後に車幅方向に延出される一対の端部とを有し、
前記バンドが前記エアタンクに巻き掛けられた際、前記中央部の上面に該バンドが配置され、該中央部の下面は該エアタンクの外周面に当接し、一対の前記端部は該エアタンクの外周面から離間している、ことを特徴とする請求項1に記載の車体フレーム構造。
【請求項3】
一対の前記サイドメンバの間にSCRタンクが配置され、
前記SCRタンクの一端部は、前記上部フランジと前記下部フランジの間に挿入されて該下部フランジに当接し、
前記SCRタンクの他端部は、前記サイドメンバに取り付けられたブラケットに支持される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車体フレーム構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向に間隔をあけて配置された一対のサイドメンバと、これらサイドメンバ同士を架け渡すクロスメンバとを備える車体フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のブレーキのように空気圧を利用する装置には、空気を貯蔵したエアタンクが接続される。例えば大型トラックのトラクター車のように、車幅方向に間隔をあけて配置された一対のサイドメンバと、これらサイドメンバ同士を架け渡すクロスメンバとを備える梯子状の車体フレーム構造を備える車両においては、例えば図6に示すように、車体フレーム構造の後端にエアタンク101を固定している。図6に示した車両では、車体フレーム構造の後端に位置するクロスメンバ102の下面にブラケット103が取り付けられていて、このブラケット103の下面にエアタンク101を当て付け、更に、ブラケット103に取り付けられるバンド104をエアタンク101の周囲に巻き掛けることによって、エアタンク101を固定している。
【0003】
エアタンクを固定する他の構造としては、例えば特許文献1に示されているように、梯子状の車体フレーム構造に対して着脱可能な横フレームと、この横フレームに対して一端が固着されるとともに他端は車体フレーム構造のクロスメンバに対して着脱可能な複数の縦フレームとを備え、縦フレームの上に横向きのエアタンクが固定できるようにしたものも知られている。
【0004】
一方、車両の排ガス処理装置で使用する尿素水を収容したSCRタンクは、例えば図6に示すように、サイドメンバ105の車幅方向外側にブラケット106を取り付けておき、このブラケット106に取り付けられるバンド108をSCRタンク107の周囲に巻き掛けることによって固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-105704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように従来のエアタンクやSCRタンクは、車体フレーム構造とは別の部材となるブラケット等を介して固定されている。すなわち、部品点数が増えるとともに質量の増加が不可避であるうえ、コストアップも招いている。また、車両に必要な装置は多数あることから、車体フレーム構造にはこれらが密に取り付けられている。従って、SCRタンクを取り付けるために、車体フレーム構造の長さを伸ばしているため、質量増加、商品性低下を招いていた。
【0007】
このような従来の課題に着目し、本発明では、部品点数や質量の増加を抑えるとともにコストも抑制することができる車体フレーム構造を提供することを目的とする。また、車体フレーム構造に取り付けられる各種装置の配置スペースについても改善を図ることとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車幅方向に間隔をあけて配置された一対のサイドメンバと、該サイドメンバ同士を架け渡すクロスメンバと、を備える車体フレーム構造であって、前記クロスメンバは、上下方向に延設されたウェブと、該ウェブの上部から車体前方に延出された上部フランジと、該ウェブの下部から車体前方に延出された下部フランジと、によって断面コ字状をなすものであって、且つ、筒状をなすエアタンクに巻き掛けられるバンドが取り付けられるものであり、前記下部フランジに、前記エアタンクの外周面が当接される円弧状の当接座が一体的に設けられ、前記バンドが、前記当接座に当接された前記エアタンクに巻き掛けられて前記クロスメンバに取り付けられることにより、該エアタンクは該当接座の下方に吊り下げ保持される、ことを特徴とする。
【0009】
そして、前記当接座は、下方に凸状に形成された中央部と、該中央部の左右の外縁からそれぞれ上方に延出された後に車幅方向に延出される一対の端部とを有し、前記バンドが前記エアタンクに巻き掛けられた際、前記中央部の上面に該バンドが配置され、該中央部の下面は該エアタンクの外周面に当接し、一対の前記端部は該エアタンクの外周面から離間していることが好ましい。
【0010】
また、一対の前記サイドメンバの間にSCRタンクが配置され、前記SCRタンクの一端部は、前記上部フランジと前記下部フランジの間に挿入されて該下部フランジに当接し、前記SCRタンクの他端部は、前記サイドメンバに取り付けられたブラケットに支持されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車体フレーム構造では、エアタンクの外周面が当接する当接座をクロスメンバの下部フランジに一体的に設けているため、ブラケットを使用してエアタンクを固定していた従来のものに比して部品点数を削減することができる。また、部品点数が減ることから、質量の増加が抑えられるとともにコストも抑制することができる。
【0012】
また当接座に、下方に凸状に形成された中央部と、中央部の左右の外縁からそれぞれ上方に延出された後に車幅方向に延出される一対の端部とを設ける場合は、中央部に配置されたバンドが車幅方向にずれることがない、という利点がある。また、車両が悪路を走行した際にバンドで保持されたエアタンクが揺すられても、当接座の端部でエアタンクの外周面が傷つけられる事態を防止することができる。
【0013】
そして、一対のサイドメンバの間にSCRタンクが配置されるとともに、SCRタンクの一端部が、上部フランジと下部フランジの間に挿入されて下部フランジに当接し、SCRタンクの他端部が、サイドメンバに取り付けられたブラケットに支持される場合は、一対のサイドメンバの間の空間とともに、断面コ字状のクロスメンバの内側空間をSCRタンクの配置スペースとして利用できる。すなわち、従来SCRタンクが占めていた配置スペースが空くため、このスペースに他の装置を配置することもできるし、このスペースを詰めることによって車体フレーム構造をよりコンパクトにすることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従う車体フレーム構造の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示した車体フレーム構造の側面図(クロスメンバ、バンド、エアタンクは断面図)である。
図3図1に示した車体フレーム構造の分解斜視図である。
図4図1に示した状態からSCRタンク等を取り外してエアタンク保持状態を示した斜視図である。
図5図1に示した車体フレーム構造における当接座について示した正面図である。
図6】従来の車体フレーム構造におけるエアタンクとSCRタンクの保持状態について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に従う車体フレーム構造の一実施形態について説明する。なお、本明細書等における「上」「下」「前」「後」「左」「右」とは、車体フレーム構造を適用した車両において、運転席に着座した者を基準とした場合の向きをいう。
【0016】
まず、本実施形態の車体フレーム構造によって保持されるエアタンク10とSCRタンク11について説明する。本実施形態のエアタンク10は、図示したように円筒状に形作られていて、ブレーキなどの空気圧を利用する装置に供給するための空気を貯蔵することができるように構成されている。またSCRタンク11は、排ガス処理装置で使用する尿素水が収容されるものであり、本実施形態では概略矩形状に形作られている。
【0017】
そして本実施形態の車体フレーム構造は、図1に示すように、前後方向に延設されるとともに車幅方向に間隔をあけて配置された一対のサイドメンバ1と、前後方向に間隔をあけて配置され、サイドメンバ1同士を架け渡す複数のクロスメンバ2とによって所謂梯子状になるものである。なお、図示したクロスメンバ2は、複数のうちの最後方に位置するものである。
【0018】
一対のサイドメンバ1は、それぞれが、上下方向に延設されたウェブ1aと、ウェブ1aの上部から車幅方向内側に延出された上部フランジ1bと、ウェブ1aの下部から車幅方向内側に延出された下部フランジ1cとを備えて断面コ字状をなすように形成されているものであって、断面の開口同士が向き合うようにして配置される。
【0019】
またクロスメンバ2は、図2図4に示すように、上下方向に延設されたウェブ2aと、ウェブ2aの上部から車体前方に延出された上部フランジ2bと、ウェブ2aの下部から車体前方に延出された下部フランジ2cとを備えて断面コ字状をなすように形成されている。
【0020】
下部フランジ2cの前方には、前方に向かうにつれて下方に湾曲するように延設された円弧状の当接座2dが、下部フランジ2cに対して一体的に設けられている。また本実施形態の当接座2dは、下部フランジ2cに対して車幅方向に間隔をあけて2つ設けられている。
【0021】
このような当接座2dは何れも、図5に示すような形態をなすものであって、下方に凸状に形成された中央部2eと、中央部2eの左右の外縁からそれぞれ上方に延出された後に車幅方向に延出される一対の端部2fとを備えている。なお、中央部2eの上面には、図示したようにエアタンク10を保持するためのエアタンク用バンド3が配置される。また中央部2eの上面における幅は、エアタンク用バンド3の幅よりも若干広めになっている。そして中央部2eの下面は、エアタンク10の外周面が当接する部位であって、エアタンク10の外径と略同一の内径になるように円弧状に形作られている。なお、中央部2eの下面にエアタンク10の外周面が当接した際、一対の端部2fはそれぞれ、エアタンク10の外周面から離間している。
【0022】
そして中央部2eの延長線上後方には、図3に示すように、下部フランジ2cを貫く貫通孔2gが設けられている。なお貫通孔2gは、図4に示すようにエアタンク10を保持した際にエアタンク用バンド3が挿通される孔である。
【0023】
更に、本実施形態の車体フレーム構造には、図2図3に示すようにクロスメンバ2の後方に取り付けられる後側ブラケット4が設けられている。後側ブラケット4は、上下方向に延設された部分と、この部分の上部から後方に向かうにつれて上方に傾くように延出された部分とを組み合わせた形状をなすものである。本実施形態においては一対の後側ブラケット4が、クロスメンバ2に対して車幅方向に間隔をあけて2つ設けられている。なお、詳細な図示は省略するが、後側ブラケット4には、図2に示すようにSCRタンク11を保持するためのSCRタンク用バンド5を挿通させる一方、SCRタンク用バンド5の後端に設けた円形状の後端側ストッパー5aが抜け止めされる孔が設けられている。
【0024】
また、図3に示すようにクロスメンバ2の前方には、L字状をなし、各サイドメンバ1の下部フランジ1cに取り付けられる一対の前側第一ブラケット6が設けられている。また、一対の前側第一ブラケット6の間には、SCRタンク11を下方から支持する前側第二ブラケット7が設けられている。ここで前側第二ブラケット7には、図3に示すように、SCRタンク用バンド5の前端に設けた円形状の前端側ストッパー5bが装着される凹部7aが設けられている。
【0025】
このような部材によって構成される本実施形態の車体フレーム構造は、クロスメンバ2の車幅方向両端部がサイドメンバ1の上部フランジ1bと下部フランジ1cとの間に差し込まれる状態で、これらのサイドメンバ1とクロスメンバ2を結合させている。また、クロスメンバ2の後方に後側ブラケット4を結合させ、クロスメンバ2の前方では、それぞれのサイドメンバ1の下部フランジ1cに前側第一ブラケット6を結合させるとともに、前側第一ブラケット6と前側第二ブラケット7とを結合させている。
【0026】
そしてエアタンク10を保持するにあたっては、当接座2dの中央部2eの下面にエアタンク10の外周面を当接させつつ、エアタンク用バンド3は貫通孔2gに挿通して中央部2eの上面を沿わせ、更にエアタンク10に巻き掛けて、これを当接座2dの下面に吊り下げ保持することができる。なお図示は省略するが、エアタンク用バンド3には緊締具が設けられているため、エアタンク10に巻き掛けたエアタンク用バンド3が不用意に緩むことはない。
【0027】
またSCRタンク11は、その後端部11aを、クロスメンバ2における上部フランジ2bと下部フランジ2cの間に挿入して下部フランジ2cに当接させ、またその前端部11bは、前側第二ブラケット7に当接させることによって下方から支持される。そして、後側ブラケット4に取り付けられたSCRタンク用バンド5を後方から前方に向かってSCRタンク11に架け渡し、更にSCRタンク用バンド5の前端側ストッパー5bを前側第二ブラケット7の凹部7aに装着して、SCRタンク11を保持することができる。
【0028】
このように、本実施形態の車体フレーム構造によれば、エアタンク10を吊り下げ保持する当接座2dをクロスメンバ2の下部フランジ2cに一体的に設けているため、ブラケットを使用してエアタンクを固定していた従来の車体フレーム構造に比して部品点数を削減することができる。また、部品点数が減ることから、質量の増加が抑えられるとともにコストも抑制することができる。また、エアタンク10に巻き掛けられたエアタンク用バンド3は中央部2eの上面に配置されていて、中央部2eの両側にはこれよりも上方に位置する端部2fが設けられているため、車両走行中にエアタンク用バンド3が車幅方向にずれることがない。また、エアタンク10が当接座2dによって吊り下げ保持される際、端部2fはエアタンク10の外周面から離間しているため、例えば車両が悪路を走行した際にエアタンク用バンド3で保持されたエアタンク10が揺すられても、端部2fでエアタンク10の外周面が傷つけられる事態を防止することができる。
【0029】
また本実施形態の車体フレーム構造では、一対のサイドメンバ1の間の空間と断面コ字状になるクロスメンバ2の内側空間を、SCRタンク11の配置スペースとして利用している。すなわち、従来SCRタンクが占めていた配置スペース(例えば図6に示す、サイドメンバの車幅方向外側のスペース)が空くため、このスペースに他の装置を配置することもできるし、このスペースを詰めることによって車体フレーム構造をよりコンパクトにすることも可能になる。
【0030】
以上、本発明に従う車体フレーム構造の一実施形態について説明したが、本実施形態は一例に過ぎず、本発明には特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含まれる。例えば当接座2dは、図示したように2つに限られず、3つ以上であってもよい。なお当接座2dは、例えば下部フランジ2cの車幅方向中央部において幅が広いものを設けるなど、エアタンク10を安定的に保持できるものであれば1つでもよい。
【符号の説明】
【0031】
1:サイドメンバ
2:クロスメンバ
2a:ウェブ
2b:上部フランジ
2c:下部フランジ
2d:当接座
2e:中央部
2f:端部
2g:貫通孔
3:エアタンク用バンド(バンド)
4:後側ブラケット
5:SCRタンク用バンド
6:前側第一ブラケット(ブラケット)
7:前側第二ブラケット(ブラケット)
10:エアタンク
11:SCRタンク
11a:SCRタンクの後端部(一端部)
11b:SCRタンクの前端部(他端部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6