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特許7158284がんを前処置するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】がんを前処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/19 20060101AFI20221014BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K31/19
A61K39/395 N
A61K9/16
A61K31/573
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2018555545
(86)(22)【出願日】2017-04-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2017059480
(87)【国際公開番号】W WO2017182611
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-01-30
(31)【優先権主張番号】16166455.2
(32)【優先日】2016-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513235533
【氏名又は名称】ヴァルキュリア アクチアボラグ
【氏名又は名称原語表記】Valcuria AB
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100203769
【弁理士】
【氏名又は名称】大沢 勇久
(72)【発明者】
【氏名】ドロット,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ドロット,クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】ウルヴェンルンド,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】サロモンソン,カタリーナ
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-535518(JP,A)
【文献】特表2014-510102(JP,A)
【文献】特表2011-513391(JP,A)
【文献】特表2014-526503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00-45/08
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを前処置する方法に使用するための、経口投与用に製剤化される医薬組成物であって、バルプロ酸バルプロ酸セミナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、およびバルプロ酸マグネシウムからなる群から選択されるHDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩、または該酸と該塩との混合物を含み、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供され、該HDAC阻害剤の70~90重量%は即時放出形態で提供され、該HDAC阻害剤の残部は徐放性形態で提供される、上記医薬組成物。
【請求項2】
前記HDAC阻害剤の75~85重量%が即時放出形態で提供され、前記HDAC阻害剤の残部が徐放性形態で提供される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記HDAC阻害剤の75重量%が即時放出形態で提供され、前記HDAC阻害剤の残部が徐放性形態で提供される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記即時放出形態および前記徐放性形態の両方が、ヒト対象により経口摂取された後、幽門括約筋を通過した後で前記HDAC阻害剤を放出するように製剤化されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記即時放出形態および前記徐放性形態の両方が、小腸中で前記HDAC阻害剤を放出するように製剤化されている、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記徐放性形態が、腸溶コーティングされた顆粒または腸溶コーティングされた微小顆粒を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記腸溶コーティングされた顆粒または前記腸溶コーティングされた微小顆粒の最大寸法が、500~1000μmである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記腸溶コーティングされた顆粒または前記腸溶コーティングされた微小顆粒の最大寸法が、600~800μmである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ステロイドまたはその塩をさらに含み、該ステロイドは、プレドニゾン、ブレドニゾロン、デキサメタゾン、およびベタメタゾンからなる群から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ステロイドが、即時放出形態で提供される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
がんを前処置する方法に使用するためのキットであって、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供されバルプロ酸バルプロ酸セミナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、およびバルプロ酸マグネシウムからなる群から選択されるHDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩、または該酸と該塩との混合物の複数回の用量を含、該複数回の用量のうち少なくとも1つの用量において、該HDAC阻害剤の70~90重量%は、即時放出形態で提供され、該HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供され、前記複数回の用量のそれぞれが、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、上記キット。
【請求項12】
前記複数回の用量の回数、ならびに各用量において徐放性形態および即時放出形態で提供される前記HDAC阻害剤の量は、がんを前処置するセッション1回の間に前記キットの前記用量が連続して投与されるヒトにおいて、前記HDAC阻害剤の望ましい濃度が少なくとも提供されかつ維持されるように構成されている、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
HDAC阻害剤は、がんを罹っているヒトに経口投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項11または12に記載のキット。
【請求項14】
前記ヒトが、前記前処置の後に、化学療法および/または免疫療法で処置される、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記HDAC阻害剤が、1日2回または3回投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項13または14に記載のキット。
【請求項16】
前記HDAC阻害剤が、単回の1日用量として投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項13または14に記載のキット。
【請求項17】
がんを罹っているヒトを前処置する方法が、前処置のセッションを少なくとも2回含み、
前記HDAC阻害剤の血漿濃度は、1回目の前処置のセッションの後に決定され、2回目の前処置のセッションの間に前記ヒトに投与される前記HDAC阻害剤の総量の調整ならびに/または前記即時放出形態および前記徐放性形態で提供される前記HDAC阻害剤の量の調整に決定された血漿濃度が使用される、
請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項13~16のいずれか1項に記載のキット。
【請求項18】
1以上の化学療法用組成物または免疫療法用組成物と組み合わせた、がんの併用処置方法に使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項13~17のいずれか1項に記載のキット。
【請求項19】
モノクローナル抗体を含む免疫療法用組成物と組み合わせた、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項18に記載のキット。
【請求項20】
モノクローナル抗体がリツキシマブである、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項19に記載のキット。
【請求項21】
がんが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病、T細胞リンパ腫、骨髄腫、およびホジキンリンパ腫からなる群より選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項13~20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項22】
がんが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項21に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんを前処置する組成物および方法の分野に関し、すなわち、処置の作用を強化する、または処置の副作用を和らげるために、1つまたはそれより多くの組成物が、他の処置の前に前処置としてがん処置が必要な個体に投与されることに関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、制御不能な増殖と乱れたプログラム細胞死の兆候を呈する細胞の異常成長と定義することができる。古典的な見解によれば、連続的な遺伝学的事象により悪性転換が起こり、その結果として他の細胞および組織の完全性を無視した細胞クローンが生じ、最終的に転移する場合がある。がんは、体のあらゆる組織で発生する可能性があり、それぞれの体の領域で多くの様々な形態を有する。
【0003】
悪性リンパ腫は、造血系のリンパ細胞の悪性転換と定義することができる。リンパ腫は、中悪性度リンパ腫と低悪性度リンパ腫に分けることができる。中悪性度リンパ腫は、迅速な成長パターンを特徴とし、劇的な臨床徴候を示す可能性がある。しかしながら、中悪性度リンパ腫は、化学療法、放射線治療およびモノクローナル抗体での処置により完治に至る可能性がある。対照的に、低悪性度リンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫)は、遅い成長パターンを有し、より軽度の臨床症状を通常示す。しかしながら低悪性度リンパ腫は、標準的なリンパ腫処置では完治に至らないにもかかわらず、時にこれらは同種幹細胞移植によって治癒する場合がある。濾胞性リンパ腫の場合の生存時間中央値は、8~10年である。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫およびホジキンリンパ腫は、中悪性度リンパ腫のグループに属するが、濾胞性リンパ腫および慢性リンパ性白血病は、低悪性度リンパ腫である。骨髄腫は、悪性転換した形質細胞からなる。骨髄腫は低悪性度リンパ腫と関連するが、これとは別個のものと通常考えられている。予後は悲観的であり、生存時間中央値は5~7年である。
【0004】
悪性リンパ腫の最も頻度の高いサブタイプの1つは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)であり、その発生率は、スウェーデンにおいて約500症例/年である。DLBCLは、中悪性度リンパ腫のグループのうち60~70%を構成する。診断時の年齢の中央値は、70歳であり、DLBCLは、女性より男性でわずかに多くみられる。
【0005】
標準的な第一線のDLBCL処置は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾンの組合せ(CHOP)からなる化学療法である。近年、CD20抗体であるリツキシマブを追加することが、国際的な臨床基準になりつつあり(R-CHOP)、それにより改善された無増悪、無発症、無病の全生存がもたらされる(Morrison、Expert Rev Anticancer Ther、2008;8(10):1651~1658頁)。それでもなおDLBCL患者の45%もがこの疾患のために死亡することから、DLBCL患者において無増悪生存を増加させる明白な臨床上の必要性がある。
【0006】
がん疾患研究における1つの重要な分野は、DNA転写の調節である。これは複雑なプロセスであり、関与するメカニズムは、部分的にしかわかっていない。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、腫瘍サプレッサー遺伝子の発現、およびがんの起始と進行の両方に関与する転写因子の活性を調節することができる。HDACは、ヒストンの脱アセチル化によるDNAまたはクロマチンの構成成分のいずれかの変更を介して作用し、その結果、DNAの配列を変化させたりこれを中断したりすることなくDNAの3次元コンフォメーションに影響を与える(エピジェネティックな改変)。またHDACは、DNAに損傷を与える化学療法に対する感受性をクロマチン構造の調節を介して変更する可能性があることも示唆されている。これらの線に沿って、数々のインビトロの研究が、HDACの阻害は化学療法と相乗作用を示す可能性があることを示唆してきた。
【0007】
それゆえに、ここ数年の間に多数のHDAC阻害剤が開発されてきた。これらは、4つのクラス、すなわちヒドロキサム酸/カルバミン酸、環状ペプチド、脂肪酸およびベンズアミドに分けることができる。がん処置に関して承認済みのHDAC阻害剤の例としては、ボリノスタットおよびロミデプシンが挙げられ、これらはFDA(食品医薬品局)により皮膚T細胞リンパ腫の処置に関して承認されており、他の悪性腫瘍の処置については現在評価中である。
【0008】
臨床上最もよく知られているHDAC阻害剤は、抗痙攣薬であるバルプロ酸であり、これは、1970年代からてんかんの処置で利用されている。バルプロ酸は、阻害剤としては脂肪酸のクラスに属する。
【0009】
本発明者らはこれまでに(WO2012/128709を参照)HDAC阻害剤とステロイドとの組合せが、がん処置が必要なヒトに他の処置の前に前処置として投与される場合に有用であり、その結果は処置の作用の強化であることを示した。
【0010】
WO2012/128709で教示されているように、HDAC阻害剤を使用した前処置の出現によってより有効ながん処置の見込みが出てきたにもかかわらず、HDAC阻害剤を使用したがん前処置の可能性をより完全に実現するために克服すべき問題が依然として存在する。
【0011】
生じる問題の1つは、HDAC阻害剤の前処置使用の必要条件を満たすためには、HDAC阻害剤をどのようにしたら最も効果的に投与できるかということである。一部のHDAC阻害剤、特にバルプロ酸については、1970年代から臨床用途が見出されているが、この臨床用途は、がんのための前処置という新しい分野ではなく、異なる医療分野、すなわちてんかん処置の分野に関するものである。結果として、HDAC阻害剤をがんの前処置として投与する場合、HDAC阻害剤をどのように投与するかに関し初期に得られた知見は、最も有効であるとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、HDAC阻害剤を即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で含む医薬組成物によって、がんの前処置に好適なHDAC阻害剤の血漿濃度を得ることができるという発見に関する。HDAC阻害剤の70~90重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される。組成物中の2つの放出形態からのHDAC阻害剤の放出は、迅速に望ましい濃度に到達し、望ましい濃度またはそれを超える濃度に血漿濃度を少なくとも48時間維持するような血漿濃度プロファイルをもたらす。1日2回または3回の組成物の投与が、この望ましい濃度を維持することを可能にし、さらに、迅速に望ましい濃度に到達することが、前処置を近接して実行する、例えば処置の2~3日前に実行することにより、組成物に対するヒトの曝露を制限して副作用を最小化することを可能にする。これは、HDAC阻害剤の望ましい濃度に到達するのに最大14日またはそれ以上の長い期間が必要とされまたは容認されるという、HDAC阻害剤の初期に報告された臨床用途とは著しく異なる。しかしながらこのような長い期間は、HDAC阻害剤をがんの前処置に使用する場合には非効率的であると予想され、それゆえに、この分野における従来技術の教示は、HDAC阻害剤を使用したがんの前処置の可能性の実現をこれまで妨げるかまたは困難にしていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、第1の側面において、本発明は、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供される、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物を含む医薬組成物であって、HDAC阻害剤の70~90重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される、上記医薬組成物に関する。
【0014】
第2の側面において、本発明は、本発明の第1の側面に係る組成物を含むデバイスに関する。
【0015】
第3の側面において、本発明は、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供される、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物の複数回の用量を含むキットに関する。このキットは、がんを前処置するセッション1回の間に、HDAC阻害剤の有効な濃度を提供し維持するのに有用である。
【0016】
第4の側面において、本発明は、がんを前処置する方法での使用のための、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供される、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物に関する。
【0017】
第5の側面において、本発明は、がんを前処置する方法であって、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供される、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物をがんに罹っているヒトに投与することを含む、上記方法に関する。
【0018】
第6の側面において、本発明は、がんの併用処置方法での使用のための、1つまたはそれより多くの化学療法用組成物または免疫療法用組成物と組み合わせた、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供される、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物に関する。
【0019】
第7の側面において、本発明は、がんの処置を1つまたはそれより多く実行する前に、本発明の第5の側面に係るがんを前処置する方法を実行することを含む、がんの併用処置方法に関する。
【0020】
前処置を有効にするには、がんに罹っているヒトは、HDAC阻害剤の好適な用量を達成するために、意図された通りまたは処方された通りに本発明の第1の側面に係る医薬組成物を摂取するようコンプライアンスに準拠していることが重要である。
【0021】
このようなコンプライアンスは、壊れやすい封止シートで封止された複数の崩壊可能なブリスターを含むブリスターパックから医薬品を分配するためのディスペンサーに関する本発明の第8の側面によって保証されるか、または少なくとも簡易化され、本ディスペンサーは、
複数の開口部を含む下のハウジング部分、および
下のハウジング部とつながった、細長い開口部を含む上のハウジング部分
を含み、
前記細長い開口部は、前記複数の開口部の各開口部を連続して通過する蛇行トラックを画定し、
それによって下のハウジング部分および上のハウジング部分は、それらの間に空洞を画定し、前記空洞は、封止シートが下のハウジング部分に向かって配向され、さらにブリスターが上のハウジング部分に向かって配向され、複数の開口部に合わせて配置されるようにブリスターパックを受け入れる構成を有し、本ディスペンサーは、
上のハウジング部中の細長い開口部を介して空洞内から空洞の外側に伸長するプレス部をさらに含み、このプレス部は、蛇行するトラックに沿って動くことができるような構成を有し、それにより、前記ブリスターパックを前記空洞中に受け入れたときに、プレス部が前記ブリスターパックの前記複数のブリスターに連続して物理的に衝突し、それを崩壊させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第1の側面に係る組成物の複数回の用量を含むブリスターパックを示す。
図2図2は、本発明の第8の側面に係るディスペンサーを示す。
図3図3は、ブリスターパックがディスペンサーに挿入される状態を示す。
図4図4は、ブリスターパック中の複数回の用量を分配するのにどのようにディスペンサーが使用されるのかを示す。
図5図5は、ディスペンサーに挿入されたブリスターパックを断面図で示す。
図6A図6Aは、複数単位の腸溶コーティングされた放出調節製剤の異なる組成物を経口投与した後の、バルプロ酸(VPA)血漿濃度のシミュレーションからの結果を示す。
図6B図6Bは、複数単位の腸溶コーティングされた放出調節製剤の異なる組成物を経口投与した後の、バルプロ酸(VPA)血漿濃度のシミュレーションからの結果を示す。
図6C図6Cは、複数単位の腸溶コーティングされた放出調節製剤の異なる組成物を経口投与した後の、バルプロ酸(VPA)血漿濃度のシミュレーションからの結果を示す。
図6D図6Dは、複数単位の腸溶コーティングされた放出調節製剤の異なる組成物を経口投与した後の、バルプロ酸(VPA)血漿濃度のシミュレーションからの結果を示す。
図6E図6Eは、複数単位の腸溶コーティングされた放出調節製剤の異なる組成物を経口投与した後の、バルプロ酸(VPA)血漿濃度のシミュレーションからの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[項目1] 即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供される、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩または該酸と該塩との混合物を含む医薬組成物であって、該HDAC阻害剤の70~90重量%は、即時放出形態で提供され、該HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される、上記医薬組成物。
[項目2] 前記HDAC阻害剤の75~85重量%、例えば75重量%が、即時放出形態で提供され、前記HDAC阻害剤の残部が、徐放性形態で提供される、項目1に記載の医薬組成物。
[項目3] 前記即時放出形態および前記徐放性形態の両方が、ヒト対象により経口摂取された後、幽門括約筋を通過した後、例えば小腸中で前記HDAC阻害剤を放出するように製剤化されている、項目1または2に記載の医薬組成物。
[項目4] 前記徐放性形態が、腸溶コーティングされた顆粒または腸溶コーティングされた微小顆粒を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目5] 前記腸溶コーティングされた顆粒または前記腸溶コーティングされた微小顆粒の最大寸法が、500~1000μm、例えば600~800または700μmである、項目4に記載の医薬組成物。
[項目6] 前記HDAC阻害剤が、バルプロ酸、またはバルプロ酸セミナトリウム、バルプロ酸ナトリウムもしくはバルプロ酸マグネシウムからなる群から選択される、項目1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目7] ステロイドまたはその塩をさらに含み、該ステロイドは、プレドニゾン、ブレドニゾロン、デキサメタゾンおよびベタメタゾンからなる群から選択される、項目1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目8] 前記ステロイドが、即時放出形態で提供される、項目7に記載の医薬組成物。
[項目9] 即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供される、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩または該酸と該塩との混合物の複数回の用量を含むキットであって、該複数回の用量のうち少なくとも1つの用量において、該HDAC阻害剤の70~90重量%は、即時放出形態で提供され、該HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される、上記キット。
[項目10] 前記複数回の用量のそれぞれが、項目1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、項目9に記載のキット。
[項目11] 前記複数回の用量の回数、ならびに各用量において徐放性形態および即時放出形態で提供される前記HDAC阻害剤の量は、がんを前処置するセッション1回の間に前記キットの前記用量が連続して投与されるヒトにおいて前記HDAC阻害剤の望ましい濃度が少なくとも提供されかつ維持されるように構成されている、項目9または10に記載のキット。
[項目12] がんを前処置する方法での使用のための、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩または該酸と該塩との混合物であって、該HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩または該酸と該塩との混合物は、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供され、該HDAC阻害剤の70~90重量%は、即時放出形態で提供され、該HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供され、該HDAC阻害剤は、がんに罹っているヒトに投与される、上記HDAC阻害剤。
[項目13] 前記HDAC阻害剤が、項目1~8のいずれか1項に記載の組成物または項目9~11のいずれか1項に記載のキットとして提供される、項目12に記載の使用のためのHDAC阻害剤。
[項目14] 前記ヒトが、前記前処置の後に、化学療法および/または免疫療法で処置される、項目12または13に記載の使用のためのHDAC阻害剤。
[項目15] 前記HDAC阻害剤が、1日2回または3回投与される、項目12~14のいずれか1項に記載の使用のためのHDAC阻害剤。
[項目16] 前記HDAC阻害剤が、単回の1日用量として投与される、項目12~14のいずれか1項に記載の使用のためのHDAC阻害剤。
[項目17] がんに罹っているヒトを前処置する方法が、前処置のセッションを少なくとも2回含み、前記HDAC阻害剤の血漿濃度は、1回目の前処置のセッションの後に決定され、2回目の前処置のセッションの間に前記ヒトに投与される、前記HDAC阻害剤の総量の調整、ならびに/または前記即時放出形態および前記徐放性形態で提供される前記HDAC阻害剤の量の調整に使用される、項目12~16のいずれか1項に記載の使用のためのHDAC阻害剤。
[項目18] がんの併用処置方法での使用のための、1つまたはそれより多くの化学療法用組成物または免疫療法用組成物と組み合わせた、項目12~17のいずれか1項に記載の使用のためのHDAC阻害剤。
[項目19] リツキシマブなどのモノクローナル抗体を含む免疫療法用組成物と組み合わせた、項目18に記載の使用のためのHDAC阻害剤。
本発明の第1の側面は、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供される、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物を含む医薬組成物であって、HDAC阻害剤の70~90重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される、上記医薬組成物に関する。
【0024】
即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物を提供することによって、HDAC阻害剤の組み合わされた放出は、本発明の第1の側面に係る医薬組成物が投与されたヒト患者において少なくとも望ましい血漿中濃度を迅速に提供し、次いでこの望ましい濃度は、所定期間維持される。
【0025】
本発明の状況において、医薬的に許容されるとは、そのように述べられた物事が非毒性でなくてはならないことを意味する。
【0026】
本発明の状況において、HDAC阻害剤への全ての言及は、HDAC阻害剤の医薬的に許容される酸もしくは塩、またはHDAC阻害剤の酸と塩との混合物も網羅するとして理解されるものとする。
【0027】
本発明の状況において、即時放出形態という用語は、即時放出相という用語を包含する。
【0028】
本発明の状況において、徐放性形態という用語は、持続放出形態、徐放性相、および持続放出相という用語を包含する。
【0029】
HDAC阻害剤は、即時放出形態および徐放性形態の両方において同じであってもよいし、または代替としてHDAC阻害剤は、即時放出形態および徐放性形態において異なっていてもよいことが理解されるものとする。
【0030】
組成物ががんに罹っているヒトに投与されるかまたはそのようなヒトにより摂取されてから30分以内に、即時放出形態は、例えば、即時放出形態で提供されるHDAC阻害剤の少なくとも50%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも90、95または99%を放出することができる。
【0031】
即時放出形態は、例えば、USP711のデバイスを使用して37℃およびpH6.8でPBS中に入れたときに、4~12分以内、例えば7分以内に、即時放出形態で提供されるHDAC阻害剤の50%を放出することができる。
【0032】
組成物ががんに罹っているヒトに投与されるかまたはそのようなヒトにより摂取されてから30分以内に、徐放性形態は、例えば、徐放性形態のHDAC阻害剤の40%未満、例えば33%未満、例えば25%未満、例えば20%未満、例えば15、12.5、10、8.125、5%または4%を放出することができる。
【0033】
徐放性形態は、例えば、USP711のデバイスを使用して37℃およびpH6.8でPBS中に入れたときに、120~220分以内、例えば170分以内に、徐放性形態で提供されるHDAC阻害剤の最大で50%、例えば50%を放出することができる。
【0034】
典型的には、徐放性形態がHDAC阻害剤の50%を放出した時間は、即時放出形態がHDAC阻害剤の50%を放出した時間より10~20倍長い。即時および徐放性形態の量は必ずしも等しくなくてもよく、むしろ即時放出形態は、徐放性形態より大きい体積および/または重量を有していてもよいし、または逆もまた同様である。
【0035】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の一実施態様において、HDAC阻害剤の1~99重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される。
【0036】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の他の実施態様において、HDAC阻害剤の10~90重量%、例えば20~80重量%、例えば25~75重量%、例えば30~70重量%、例えば40~60重量%、例えば45~55重量%、例えば50%重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される。
【0037】
HDAC阻害剤の好ましくは50~90重量%、例えば75重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される。
【0038】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物のさらなる実施態様において、HDAC阻害剤の5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、または95重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される。
【0039】
現時点で好ましいのは、HDAC阻害剤の70~90重量%が、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部が、徐放性形態で提供されることである。
【0040】
具体的には70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、または90重量%が、即時放出形態で、HDAC阻害剤の残部が、徐放性形態で提供されていてもよい。
【0041】
しかしながら、本発明の文脈において、この即時放出形態で提供されるHDAC阻害剤の比率を60~95重量%に拡張し、HDAC阻害剤の残部を徐放性形態で提供することが考えられる。
【0042】
したがって、HDAC阻害剤の60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、または95%重量%を即時放出形態で提供し、HDAC阻害剤の残部を徐放性形態で提供してもよいことが考えられる。
【0043】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物中に1つより多くの異なるHDAC阻害剤が存在する場合、本明細書中に記載した重量%および上述した残部は、組成物中のHDAC阻害剤の総量(重量基準)に関する。
【0044】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の好ましい実施態様において、HDAC阻害剤の75~85重量%、例えば75重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される。
【0045】
このようにHDAC阻害剤を即時放出形態と徐放性形態とに配分することによって、HDAC阻害剤の血漿濃度が、望ましい濃度に、またはそれを超えた濃度まで迅速に上昇することが示された。実施例の項目における結論を参照されたい。
【0046】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の好ましい実施態様において、即時放出形態および徐放性形態の両方とも、ヒト対象により経口摂取された後、幽門括約筋を通過した後、例えば小腸中でHDAC阻害剤を放出するように製剤化されている。
【0047】
これは、HDAC阻害剤が、胃を通過した後に、例えば上部腸管で放出されるように、即時放出形態および徐放性形態を製剤化することを包含する。
【0048】
この目的のために、腸溶コーティングに使用される材料で腸溶コーティングすること、または腸溶コーティングに使用される材料をHDAC阻害剤と混合することによって、即時放出形態および徐放性形態を製剤化してもよい。
【0049】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の好ましい実施態様において、徐放性形態は、腸溶コーティングされた顆粒または腸溶コーティングされた微小顆粒を含む。
【0050】
これは、本発明の第1の側面に係る医薬組成物の簡単な実現手段を提供する。さらに即時放出形態が腸溶コーティングされていない顆粒または微小顆粒を含む場合、医薬組成物は、コーティングされた顆粒および/または微小顆粒およびコーティングされていない顆粒および/または微小顆粒の両方を含む単一のカプセルとして、容易に実現することができる。
【0051】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の他の実施態様において、徐放性形態は、HDAC阻害剤が埋め込まれた不溶性物質のマトリックスを含み、HDAC阻害剤はマトリックス中の空隙を通って外に出ないと放出されないようになっている。この実施態様の改変型において、マトリックスは、膨潤するように構成されており、それによって膨潤はさらに、HDAC阻害剤が放出される速度に影響を与える。本発明の第1の側面に係る医薬組成物のさらなる実施態様において、徐放性形態は、一方の側にレーザーであけた穴を有し、他方の側に多孔質膜を有するポリマーベースの錠剤または本体を含む。胃酸は多孔質膜を押しながらこれを通過し、それによってHDAC阻害剤はレーザーであけた穴を通って押し出される。
【0052】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物のさらなる実施態様において、徐放性形態は、不活性コアを有するマイクロスフェアを含み、不活性コアの上に、HDAC阻害剤の1つまたはそれより多くの層と不溶性物質または徐々に溶解する物質の1つまたはそれより多くの層とがコーティングされる。
【0053】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物のさらなる実施態様において、医薬組成物は、一方の層に即時放出形態が存在し、他方の層に徐放性形態が存在する二重層錠剤として製剤化されてもよい。
【0054】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の好ましい実施態様において、腸溶コーティングされた顆粒または腸溶コーティングされた微小顆粒の最大寸法は、500~1000μm、例えば600~800または700μmである。
【0055】
この最大直径の範囲は、顆粒が、液体のように通過すること、すなわち幽門括約筋の活動に妨害されることなく胃を通過することを確実にするものである。
【0056】
顆粒は、好ましくは球状または長方形である。
【0057】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の一実施態様において、HDAC阻害剤は、ボリノスタット、ロミデプシン、バルプロ酸、アズパノビノスタット(aspanobinostat)、パノビノスタット、ベリノスタット、エンチノスタットおよびレスミノスタットからなる群から選択される。
【0058】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の好ましい実施態様において、HDAC阻害剤は、バルプロ酸、またはバルプロ酸セミナトリウム、バルプロ酸ナトリウムもしくはバルプロ酸マグネシウムからなる群から選択される。
【0059】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の好ましい実施態様において、医薬組成物は、ステロイドまたはその塩をさらに含み、ステロイドは、プレドニゾン、ブレドニゾロン、デキサメタゾンおよびベタメタゾンからなる群から選択される。
【0060】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の好ましい実施態様において、HDAC阻害剤は、バルプロ酸であり、ステロイドは、プレドニゾンである。
【0061】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の好ましい実施態様において、ステロイドは、即時放出形態で提供される。
【0062】
このケースにおいて、即時放出形態は、上部腸管の小腸でHDAC阻害剤およびステロイドを放出するように製剤化する必要があり、そのためには例えば500~1000μmの最大寸法を有する顆粒または微小顆粒として製剤化して、腸溶コーティングすればよい。
【0063】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の実施態様において、医薬組成物は、医薬的に許容される添加剤、希釈剤、担体、賦形剤または緩衝液をさらに含んでいてもよい。
【0064】
このような医薬的に許容される添加剤、希釈剤、緩衝液、担体または賦形剤は、当業界において周知である(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、A.R Gennaro編、Mack Publishing社(1990)およびhandbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、A.Kibbe編、Pharmaceutical Press(2000)を参照)。
【0065】
用語「緩衝液」は、pHを安定化する目的で酸と塩基との混合物を含有する水溶液を意味することを意図している。緩衝剤の例は、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張塩類溶液;リンゲル液;エチルアルコール;pH緩衝化溶液;ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;ならびに医薬製剤で採用される他の非毒性の相溶性物質である。
【0066】
用語「希釈剤」は、医薬配合物中の化合物の希釈を目的とする水性または非水性溶液を意味することを意図している。希釈剤は、塩類溶液、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはエタノールの1つまたはそれより多くであり得る。
【0067】
賦形剤は、炭水化物、界面活性剤、ポリマー、脂質および無機物質の1つまたはそれより多くであり得る。炭水化物の例としては、ラクトース、スクロース、マンニトール、およびシクロデキストリンが挙げられ、これらは、例えば凍結乾燥を容易にするために組成物に添加される。ポリマーの例は、デンプン、セルロースエーテル、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルギネート、カラギーナン、ヒアルロン酸およびそれらの誘導体、ポリアクリル酸、ポリスルホネート、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、様々な加水分解度を有するポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル、ならびにポリビニルピロリドンであり、これらは全ての様々な分子量を有するもので、例えば、粘度の制御のために、生体接着性を達成するために、または化学分解およびタンパク質分解から脂質を保護するために組成物に添加される。脂質の例は、脂肪酸、リン脂質、モノ、ジ、およびトリグリセリド、セラミド、スフィンゴ脂質ならびに糖脂質(これらは全ての様々なアシル鎖長と飽和度を有する)、さらに卵黄レシチン、ダイズレシチン、水素添加卵黄レシチンおよび水素添加ダイズレシチンであり、これらの脂質は、ポリマーの場合と類似した理由で組成物に添加される。無機物質の例は、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛および酸化チタンであり、これらは、例えば液体の蓄積の低減または有利な着色特性などの利益を得るために組成物に添加される。
【0068】
本発明の医薬組成物で採用され得る好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および同種のもの)、および好適なそれらの混合物、植物油、例えばオリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えばレシチンなどの使用によって、分散液のケースでは必要な粒度の維持によって、さらに界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0069】
これらの組成物はまた、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有していてもよい。対象化合物に対する微生物の作用は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、および同種のものを含有させることにより確実に予防することができる。また、組成物に、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム、および同種のものを含有させることが望ましい場合もある。加えて、注射可能な医薬の形態の長期の吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収遅延剤を含有させることによって達成することができる。
【0070】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の実施態様において、医薬組成物は、顆粒、粉末、錠剤、コーティング錠剤、マイクロカプセル、微小顆粒および発泡性の形態からなる群から選択される形態である。
【0071】
顆粒、微小顆粒および粉末は、第1および第2のタイプの顆粒、微小顆粒および粉末を含んでいてもよく、この場合、即時放出形態は、第1のタイプを含み、徐放性形態は、第2のタイプを含む。
【0072】
顆粒および微小顆粒は、カプセルまたはマイクロカプセル中に集められていてもよい。
【0073】
代替として、顆粒および微小顆粒は、小容器中に集められていてもよい。小容器を壊して開くことにより、顆粒および微小顆粒を放出し、飲用液体と混合することができる。
【0074】
粉末は、例えば圧縮し錠剤に成形してもよく、このような錠剤は、さらにコーティングされてもよい。錠剤は、結合剤、滑沢剤、乳化剤、フィラー、界面活性剤(例えば、ポリソルベート80およびラウリル硫酸ナトリウム)、矯味矯臭剤、アロマ(味を付与する成分の例)(例えばオレンジ、レモン、ベルガモット(bergamon)、グレープフルーツ、バナナ、アンズおよびイチゴなど)および天然または合成着色剤を含む着色剤、ビタミン類、甘味料(味を付与する成分の例)(アセスルファムカリウム、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビアおよびスクラロース(surcalose))、栄養添加剤(例えば抗酸化剤、ペプチド)、ならびにそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでいてもよい。
【0075】
加えて、錠剤は、水分散性滑沢剤、水溶性滑沢剤、水不溶性滑沢剤およびそれらの組合せなどの、組成物中での使用に好適な様々な滑沢剤を含有していてもよい。有用な水溶性滑沢剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、L-ロイシン、アジピン酸、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0076】
また錠剤はさらに、水不溶性滑沢剤を包含していてもよく、その例としては、例えば、ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸亜鉛)、油性物質(例えば、鉱油、水素添加された、および部分的に水素添加された植物油、ならびに綿実油)およびそれらの組合せが挙げられる。
【0077】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物の一実施態様において、医薬組成物は、発泡性の形態を含む。発泡は、二酸化炭素を生成する酸×塩基反応(水中)である。この反応で使用される酸の例は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、酸性クエン酸塩、コハク酸およびそれらの混合物である。クエン酸は、最も一般的に使用され、柑橘類のような味を生成物に付与する。発泡反応で使用される塩基の例は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸マグネシウム、ナトリウムグリコカーボネート(sodium glycocarbonate)、カルボキシリシン(carboxylysine)およびそれらの混合物である。炭酸水素ナトリウムは、発泡性の配合で非常によく用いられる。
【0078】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物は、好ましくは全身投与用に製剤化される。したがって、好ましい投与経路は、経口投与および非経口(静脈内、皮下、および筋肉内)投与である。
【0079】
本発明の第2の側面は、本発明の第1の側面に係る医薬組成物を含む、バイアル、アンプル、パウチまたは点滴バッグからなる群から選択されるデバイスに関する。
【0080】
本発明の第1の側面に係る医薬組成物を含むデバイスを提供することによって、医薬組成物の取り扱いおよび投与がより簡単になる。
【0081】
本発明の第3の側面は、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供される、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物の複数回の用量を含むキットであって、複数回の用量のうち少なくとも1つの用量において、HDAC阻害剤の70~90重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される、上記キットに関する。
【0082】
本発明の第3の側面に係るキットは、がんを前処置するセッション1回の間に、HDAC阻害剤の有効な濃度を提供し維持するのに有用である。がんを前処置するセッション1回とは、例えば、少なくとも12時間、例えば24時間または少なくとも36時間または少なくとも48時間、および96時間未満、例えば84時間未満、例えば72時間未満の期間を含んでいてもよい。
【0083】
さらに、本発明の第2の側面に係るキットは、がんの前処置の実行をより簡単にし、さらに前処置のコンプライアンスを高める。
【0084】
キットは、好ましくは、がんを前処置するセッション中の24時間当たり2回の用量の投与に十分な複数回の用量を含む。キット中の複数回の用量は、2回から最大8回の用量まで可能である。
【0085】
本発明の第3の側面に係るキットの好ましい実施態様において、複数回の用量のそれぞれは、本発明の第1の側面に係る医薬組成物または本発明の第2の側面に係るデバイスを含む。
【0086】
本発明の第3の側面に係るキットの好ましい実施態様において、用量の回数、ならびに各用量において徐放性形態および即時放出形態で提供されるHDAC阻害剤の量は、がんを前処置するセッション1回の間にキットの用量が連続して投与されるヒトにおいてHDAC阻害剤の望ましい濃度が少なくとも提供されかつ維持されるように構成されている。
【0087】
がんを前処置するセッションは、好ましくは、がん処置が始まる48時間前に開始される。
【0088】
典型的には、6回の用量が含まれる。典型的には、HDAC阻害剤の75%は、各用量において即時放出形態で提供される。
【0089】
本発明の第3の側面に係るキットの一部の実施態様において、徐放性形態および即時放出形態で提供されるHDAC阻害剤の量は、複数回の用量の個々の用量間で異なる。
【0090】
これは、がんをより効果的に前処置することを可能にするので有利である。一実施態様において、初回用量は、即時放出形態で提供されるHDAC阻害剤をより多くの量含み、一方で初回に続く用量は、徐放性形態のHDAC阻害剤をより多くの量含み、これにより望ましい濃度をより短い時間で達成することが可能となる。この実施態様の改良形では、前処置セッションの終了時にHDAC阻害剤の濃度が迅速に減少するように、最後の用量は、初回用量に類似している。
【0091】
用量の少なくとも1つは、ステロイドまたはその塩をさらに含んでいてもよく、ステロイドは、プレドニゾン、ブレドニゾロン、デキサメタゾンおよびベタメタゾンからなる群から選択される。このケースにおいて、ステロイドは、必ずしも各用量に存在していなくてもよい。
【0092】
本発明の第3の側面に係るキットの一部の実施態様において、複数回の用量は、好適な容器中に、および/または好適なパッケージングを用いて提供され、キットは、好ましくは、どのように、およびいつ用量を投与するかに関する説明書をさらに含む。
【0093】
したがって、キットは、例えば、用量を保持するための1つまたはそれより多くのブリスターを含んでいてもよい。
【0094】
好ましくは、キットは、壊れやすい封止シートで封止された複数の崩壊可能なブリスターを含むブリスターパックを含み、各ブリスターは、1つまたはそれより多くの用量を保持する。
【0095】
キットは、追加の部材、例えば、適切な希釈用溶液(例えば、生理食塩水、グルコース溶液など)、試薬(例えば、pHを調整するための)、およびアセンブリおよび使用のためのデバイス(例えば、バッグ、チューブ、シリンジ、ニードル、トランスファーセット)などをさらに含んでいてもよい。
【0096】
本発明の第3の側面に係るキットの一部の実施態様において、キットは、がんを前処置するセッションを複数回、例えば6回、行うのに十分なだけの複数回の用量を含む。またこの実施態様においても、徐放性形態および即時放出形態で提供されるHDAC阻害剤の量は、ある1つのセッションで投与する各用量内で異なっていてもよいし、および/または異なるセッションの用量間で、複数回の用量の個々の用量間で異なっていてもよい。
【0097】
したがって、単一のキットを使用して、14~21日の間隔を置いて各セッションを6回行うというがん処置の典型的なサイクルに必要な全ての用量を投与することができ、この場合、各セッションにおいて、HDAC阻害剤は、他の化学療法または免疫療法の前に前処置として投与される。
【0098】
本発明の対応する第4の側面は、がんを前処置する方法での使用のための、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物に関し、ここで、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物は、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供され、HDAC阻害剤の70~90重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供され、HDAC阻害剤は、がんに罹っているヒトに投与され、
さらに、本発明の対応する第5の側面は、
即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供される、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物を、がんに罹っているヒトに投与することを含むがんを前処置する方法に関し、ここで、HDAC阻害剤の70~90重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供される。
【0099】
HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物は、組成物、例えば医薬組成物などで提供することができる。
【0100】
本発明の状況において、前処置および前処置することは、後続の処置または処置することの作用を強化する、またはその副作用を緩和する目的で、後続の処置の前に実行される処置および処置することを指す。本発明の状況において、前処置は、他の処置の作用を強化するために、またはその副作用を緩和するために、他の処置の前に実行される処置として理解されるものとする。より特定すると、がんの前処置は、がん細胞を他の処置で処置する前にがん細胞を感作することにより、他の処置の作用を強化することを包含する。前処置そのものは、典型的には、がん細胞への限定的な作用しかない。むしろ前処置と他の処置との組合せによりがん細胞の有効な処置が提供されるのである。
【0101】
HDAC阻害剤の投与は、好ましくは、例えば経口投与または非経口(静脈内、皮下、および筋肉内)投与による全身投与である。
【0102】
即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供される、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物は、医薬的に有効な量で投与される必要がある。「医薬的に有効な量」は、投与される目的となる状態に関して望ましい作用を生じさせるのに十分な用量を意味する。正確な用量は、投与方式、障害の性質および重症度、ならびに患者の全身の健康状態、性別、年齢および体重に依存する。HDAC阻害剤の総量、さらにそれぞれ即時放出形態および徐放性形態で提供されるHDAC阻害剤の量、加えて用量の回数および用量間の時間間隔は、患者におけるHDAC阻害剤の血漿濃度が、特定のHDAC阻害剤にとって望ましい濃度またはそれを超える濃度になるように選択する必要がある。
【0103】
例えばバルプロ酸の望ましい濃度は、500~1500μM、例えば好ましくは600~1000μMの血漿濃度に相当する。しかしながら、前処置の間に、500~2500μMの血漿濃度に達する可能性があることが予測される。
【0104】
実施例で示されるように、これらのレベルは、60mg/kg(体重)/日より低い用量でバルプロ酸(バルプロ酸ナトリウムおよびバルプロ酸セミナトリウムを包含する)を投与することによって達成することができる。
【0105】
一例において、HDAC阻害剤は、1日1回投与され、例えば午前中の時間中に、午前中の5~8時頃に投与される。しかしながら、HDAC阻害剤の投与は、1日1回、2回、3回、4回行ってもよく、または最大5回まで行ってもよい。HDAC阻害剤の投与は、処置、例えば免疫および/または化学療法の少なくとも24~72時間前、例えば処置の30~60、40~50または48時間前におこなうことができる。
【0106】
また所定用量で投与されるHDAC阻害剤の総量は、HDAC阻害剤の種類にも依存する。
【0107】
したがって、バルプロ酸は、約500mg~約15000mg/日、例えば約4000mg~約15000mg/日、例えば約400mg~約3000mg/日の範囲で、経口または静脈内投与することができる。例えば、経口での投薬量は、約800、約1600、約2400、約3000、約6000、約9000、約15000mg/日であり得る。上記量は、1つまたはそれより多くの用量で投与されてもよい。好ましくは、HDAC阻害剤は、ヒトの体表面積に基づき投与される。ヒトの体表面積は、好ましくは以下の式(Dubois&Dubois):0.20247×身長(m)0.725×体重(kg)0.425を使用して計算される。
【0108】
ベリノスタットは、約6mg~約3000mg/日、例えば約40mg~約3000mg/日、例えば約400mg~約3000mg/日の範囲で経口投与することができる。例えば、経口での投薬量は、約4、約40、約400、約800、約1600、約2400、約2800または約3000mg/日であり得る。上記量は、1つまたはそれより多くの用量で投与されてもよい。
【0109】
本発明の第4の側面に係る使用のためのHDAC阻害剤、および本発明の第5の側面に係る方法の一部の実施態様において、ステロイドまたはその塩も、がんに罹っているヒトに投与され、その場合、ステロイドは、プレドニゾン、ブレドニゾロン、デキサメタゾンおよびベタメタゾンからなる群から選択される。
【0110】
プレドニゾンまたはブレドニゾロンは、20~200mg/日、例えば50~200、100~150、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170,180、190または200mg/日の量で投与されてもよい。上記量は、1つまたはそれより多くの用量で投与されてもよい。
【0111】
ベタメタゾンは、4~32mg/日、例えば10~25、10~20、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31または32mg/日の量で投与されてもよい。上記量は、1つまたはそれより多くの用量で投与されてもよい。
【0112】
デキサメタゾンは、10~80mg/日、例えば20~70、10、20、30、40、50、60、70または80mgの量で投与されてもよい。上記量は、1つまたはそれより多くの用量で投与されてもよい。
【0113】
本発明の第4の側面に係る使用のためのHDAC阻害剤および本発明の第5の側面に係る方法の一部の実施態様において、HDAC阻害剤は、本発明の第1の側面に係る組成物として、本発明の第2の側面に係るデバイスとして、または本発明の第3の側面に係るキットとして提供される。
【0114】
本発明の第4の側面に係る使用のためのHDAC阻害剤および本発明の第5の側面に係る方法のさらなる実施態様において、がんは、肉腫、悪性黒色腫、皮膚がん、エストロゲン受容体依存性および非依存性乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、結腸および結腸直腸がん、膵臓がん、頭頸部がん、小細胞および非小細胞肺癌、ならびに血液細胞のがんからなる群から選択される。
【0115】
本発明の第4の側面に係る使用のためのHDAC阻害剤および本発明の第5の側面に係る方法の好ましい実施態様において、がんは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病、T細胞リンパ腫、骨髄腫およびホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0116】
本発明の第4の側面に係る使用のためのHDAC阻害剤および本発明の第5の側面に係る方法の一部の実施態様において、ヒトは、前処置をされた後に、化学療法および/または免疫療法で処置される。
【0117】
化学療法および/または免疫療法は、ヒトが罹っているがんのタイプに基づき選択する必要がある。
【0118】
化学療法は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾンの組合せであるCHOPの投与を含んでいてもよく、これは、シクロホスファミドを750±10%mg/m、ドキソルビシンを50±10%mg/m、1.ビンクリスチンを4±10%mg/mおよびプレドニゾンを50±10%mg/mの量で投与してもよく、ここでmは、ヒトの体表面積を指す。
【0119】
免疫療法は、抗体、モノクローナル抗体またはそれらの機能的なフラグメント、例えばリツキシマブ、オファツムマブ、GA101、トシツモマブ(tositumumab)、イブリツモマブ(ibritumumab)、オクレリズマブ(ocraluzumab)、ベルツズマブ、エプラツズマブ、FTBA05、AME-133VまたはR603を投与することを含んでいてもよい。全ての上述された抗体は、B細胞上に存在するCD20に結合する。抗体は、375±10%mg/m2の量で投与してもよい。
【0120】
前処置の後に行うことができる処置の他の例は、外科手術、放射線、および遺伝子治療を含む。
【0121】
本発明の第4の側面に係る使用のためのHDAC阻害剤および本発明の第5の側面に係る方法の好ましい実施態様において、HDAC阻害剤は、1日2回または3回投与される。
【0122】
本発明の第4の側面に係る使用のためのHDAC阻害剤および本発明の第5の側面に係る方法の代替の実施態様において、HDAC阻害剤は、単回の1日用量として投与される。
【0123】
本発明の第4の側面に係る使用のためのHDAC阻害剤および本発明の第5の側面に係る方法のさらなる実施態様において、本方法は、前処置のセッションを少なくとも2回含み、HDAC阻害剤の血漿濃度は、1回目の前処置のセッションの後に決定され、これを使って、2回目の前処置のセッションの間にヒトに投与されるHDAC阻害剤の総量、ならびに/または即時放出形態および徐放性形態で提供されるHDAC阻害剤の量を調整する。
【0124】
これは、2回目の前処置のセッションの間にHDAC阻害剤がよりよく代謝されること、すなわちがんに罹っているヒトの体がHDAC阻害剤を認識することによりそれを迅速に代謝すること、を防いで、2回目の前処置のセッションの間にHDAC阻害剤の血漿濃度が極端に低下しないようにするのに有利である。2回目の前処置のセッションの間にヒトに投与される、HDAC阻害剤の総量、ならびに/または即時放出形態および徐放性形態で提供されるHDAC阻害剤の量を好適に調整することによって、例えば総量を増加させることによって、2回目の前処置のセッションの間のHDAC阻害剤の血漿濃度を望ましい濃度またはそれを超える濃度に確実に保つことができる。
【0125】
本発明の対応する第6の側面は、がんの併用処置方法での使用のための、1つまたはそれより多くの化学療法剤または免疫療法用組成物と組み合わせた、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物に関し、ここで、HDAC阻害剤、その医薬的に許容される酸もしくは塩またはその酸と塩との混合物は、即時放出形態および徐放性形態の両方の形態で提供され、HDAC阻害剤の70~90重量%は、即時放出形態で提供され、HDAC阻害剤の残部は、徐放性形態で提供され、
さらに、本発明の対応する第7の側面は、がんの併用処置方法に関し、このがんの併用処置方法は、1つまたはそれより多くのがんの処置を実行する前に、本発明の第5の側面に係るがんを前処置する方法を実行することを含む。
【0126】
1つまたはそれより多くのがんの処置は、本発明の第4のおよび第5の側面に関連して上記で論じられたような化学療法および/または免疫療法であってもよい。
【0127】
本発明の第6の側面に係る使用のためのHDAC阻害剤および本発明の第7の側面に係る方法のさらなる実施態様において、HDAC阻害剤は、リツキシマブまたは他のCD-20結合抗体などのモノクローナル抗体を含む免疫療法用組成物と組み合わせて使用される。
【0128】
本発明の第8の側面は、壊れやすい封止シートで封止された複数の崩壊可能なブリスターを含むブリスターパックから医薬品を分配するためのディスペンサーに関し、本ディスペンサーは、
複数の開口部を含む下のハウジング部分、および
下のハウジング部とつながった、細長い開口部を含む上のハウジング部分
を含み、
前記細長い開口部は、前記複数の開口部の各開口部を連続して通過する蛇行トラックを画定し、
それによって下のハウジング部分および上のハウジング部分は、それらの間に空洞を画定し、前記空洞は、封止シートが下のハウジング部分に向かって配向され、さらにブリスターが上のハウジング部分に向かって配向され、複数の開口部に合わせて配置されるようにブリスターパックを受け入れる構成を有し、本ディスペンサーは、
上のハウジング部中の細長い開放部分を介して空洞内から空洞の外側に伸長するプレス部をさらに含み、このプレス部は、蛇行するトラックに沿って動くことができるような構成を有し、それにより、ブリスターパックを前記空洞に受け入れたとき、プレス部が前記ブリスターパックの前記複数のブリスターに連続して物理的に衝突し、それを崩壊させる。
【0129】
下のハウジング部分および上のハウジング部分は、好ましくはそれらの周囲のエッジで互いに合体している。代替として、下のハウジング部分および上のハウジング部分は、互いに一体的に成形されていてもよい。
【0130】
複数の開口部は、好ましくは6~10個の開口部である。開口部は、四角形または円形であってもよく、各ブリスターの寸法および形状に対応するように構成する必要がある。
【0131】
細長い開口部は、好ましくは、開口部の直径より小さい幅を有する。
【0132】
好ましくは、細長い開口部は、蛇行するトラックが方向を変える前に通過する隣接する開口部が2つ以下になるように配置される。この配置は、ブリスターの内容物を分配させようとする毎にプレス部を新しい方向に移動させる必要があり、その結果、2つ以上のブリスターの内容物が同時に分配されることを防ぐことができるので有利である。
【0133】
空洞は、内部寸法をブリスターパックの外部寸法と少なくとも同等の大きさにすることによって、ブリスターパックを受け入れるように構成されていてもよい。
【0134】
プレス部は、空洞内に提供されたプレスプレート、および空洞外部に伸長するプレスハンドルを含んでいてもよい。プレスプレートは、例えば空洞の天井と面一になるように配置されていてもよく、プレスハンドルは、細長い開口部を通過できるように構成された直径を有するステム、およびこのステムにディスペンサーの外側で取り付けられたハンドルまたはボタンを含んでいてもよい。
【0135】
細長い開口部を通過する際のプレス部の直径を細長い開口部の幅より小さくすることによって、さらに、蛇行するトラックに沿ってプレス部を動かす際に、空洞内のプレスプレートの部分が空洞の壁に衝突しないようにすることによって、蛇行するトラックに沿ってプレス部が可動になるように構成されていてもよい。
【0136】
プレス部が複数のブリスターに連続して物理的に衝突しそれを崩壊させると、薬物、すなわちブリスター中の錠剤、カプセルまたは他の内容物が、破れた封止シートを通ってブリスターから押し出され、重力により下のハウジング部中の開口部を通ってディスペンサーから落下する。
【0137】
本発明の第8の側面に係るディスペンサーは、好ましくは、本発明の第3の側面に係るキットのブリスターパックタイプの実施態様と一緒に、すなわちそれと組み合わせて使用される。この場合、キットは、壊れやすい封止シートで封止された複数の崩壊可能なブリスターを含むブリスターパックを含み、ブリスターのそれぞれが1つまたはそれより多くの用量を保持する。このブリスターパックタイプの実施態様において、第1のブリスターは、前処置の初日の午前中に投与しようとする1つまたは複数の用量を含有していてもよく、第2のブリスターは、前処置の初日の夕方に投与しようとする1つまたは複数の用量を含有していてもよく、第3のブリスターは、前処置の2日目の午前中に投与しようとする1つまたは複数の用量を含有していてもよく、以下同様である。この組合せによれば、患者のコンプライアンスは高められ、しかも、ディスペンサーは必ずブリスターパックのブリスターを正しい順番で、すなわち第1のブリスター、第2のブリスター、第3のブリスターなどの順番で崩壊させるので、誤った順番で用量を摂取するリスクは低くなる。
【0138】
本発明の第8の側面に係るディスペンサーの好ましい実施態様を、以下に図1~5を参照しながらより詳細に説明する。
【0139】
図1は、複数の、本例の場合、光学的に透明なプラスチックブリスターを含む、全体的に平面状のブリスターパック2を示し、ここでブリスターの1つは、参照番号4で表示される。ブリスター4は、プラスチックシート6から成形され、アルミニウム箔8の形態の封止シートにより裏面で封止されている。各ブリスター4は、1つの用量を含み、例えば、本発明の第1の側面に係る組成物の用量を含み、本例の場合、用量は錠剤10の剤形を有する。
【0140】
医薬品の包装および保存のためのブリスターパックの使用は、それ自身、従来技術であるが、ブリスターパックには二つ以上のブリスターを例えば誤って同時に崩壊させるというリスクが常にある。
【0141】
図2は、本発明の第8の側面に係るディスペンサー20の好ましい実施態様を示す。ディスペンサー20は、複数の開口部を含む全体的に平面状の下のハウジング部22を含み、複数の開口部の1つは参照番号24で表示されており、さらに、蛇行するトラック28を画定する細長い開口部28を含む全体的に平面状の上のハウジング部26を含む。ハウジング部22および26の間に、ブリスターパック2を受け入れるための空洞30が画定される。都合のよい形態としては、ただし必ずというわけではないが、ディスペンサー20は、下のハウジング部22において、上のハウジング部26において、またはそれらの間に、ブリスターパック2の長手方向エッジをガイドするための細長い平行なトラックまたは溝を含み、そのうち1つは、参照番号32で表示されている。
【0142】
また、ディスペンサーの1つの端部において、空洞30内から伸長するプレス部34も提供され、このプレス部は、プレスの足またはプレスプレート36から、細長い開口部28を通って空洞30の外側に、すなわちプレスハンドル38まで延在している。空洞30は、ブリスターパック2を受け入れる第1の部材と、ブリスターパック2がディスペンサー20中にないとき支持体40上にプレス部34を「留める」ことができる第2の部材とに分けられる。
【0143】
図2で明らかに示されるように、細長い開口部28およびそれによって画定された蛇行するトラックは、下のハウジング部22の各開口部24を連続して通過している。蛇行するトラックは、90°(直角に)曲がる前に、最大2つの隣接する開口部24を通過する。
【0144】
図3は、ブリスターパック2がその長さの4分の3だけディスペンサー20の空洞30に挿入された時点での状態を示す。この図面からわかるように、ブリスター6の位置は、開口部24とぴったり合っており、さらに開口部24は、ブリスター4の内容物、すなわち錠剤10が通り抜けるような寸法になっていることがわかる。
【0145】
ここでディスペンサー20がどのように機能するかは、図4および図5から明らかになると思われる。図4において、患者またはディスペンサー20の使用者が、蛇行するトラックに沿ってプレス部34を合計5回動かしたところ、それによりブリスター4のうち5つのブリスターの内容物が分配された。蛇行するトラックに沿ってプレス部34を新しい位置に動かすと、プレスプレート36がブリスター4と係合し、これを崩壊させ、その結果ブリスター4の内容物、すなわち錠剤10が、アルミニウム箔8を押し破って通過し、さらに崩壊したブリスター4に対応する開口部24を通ってブリスター4から外に押し出される。例えば、そのようにして崩壊した空のブリスター4’を参照されたい。特に、蛇行するトラックが90°(直角に)曲がる前に通過する開口部24は最大2つしかないという事実から、毎回、1つのブリスター24のみ、結果として1つの錠剤10のみを分配することができる。これは、複数のブリスターが崩壊して、複数の錠剤10が同時に分配されることを防ぎ、さらに、錠剤10を確実に正しい順番で摂取することを可能にし、これは、例えば奇数番号のブリスター(1、3、5、7)が、午前中に摂取されるべき錠剤を含み、偶数番号のブリスター(2、4、6、8)が、夕方に摂取されるべき錠剤を含む場合、誤った順番で錠剤を摂取するリスクは低くなることを意味する。ブリスターパック2の全てのブリスター4が崩壊したら、ブリスターパック2は、空洞30から容易に引き出すことができ、その代わりに新しいブリスターパックが挿入される。
【0146】
本発明のさらなる形態において、上述したようなHDAC阻害剤、好ましくはバルプロ酸、バルプロ酸ナトリウムまたはバルプロ酸セミナトリウムは、関節炎を前処置する方法で使用することができ、その場合、HDAC阻害剤が関節炎に罹った患者に投与され、その後、CD-20特異的モノクローナル抗体、例えばリツキシマブが患者に投与される。
【0147】
HDAC阻害剤は、本発明の第1の側面に従って製剤化されてもよいし、または本発明の第2および第3の側面に係るデバイスまたはキットとして提供されてもよい。
【0148】
関節炎の前処置としてHDAC阻害剤を投与することは、それに続くCD-20特異的モノクローナル抗体を用いた関節炎の処置の効率を増加させる。
【実施例
【0149】
実施例1-複数単位の腸溶コーティングされた放出調節製剤を異なる組成でを経口投与した後の、バルプロ酸(VPA)血漿濃度のシミュレーション
本発明の第1の側面に係る組成物のシミュレーションにおいて、HDAC阻害剤の例として、バルプロ酸が使用された。このシミュレーションは、2016年に、以下の会社:ESヘルス・アンド・ファーマシューティクスAB(ES Health & Pharmaceutics AB)(ウプサラ、スウェーデン)およびハンス・レネーナス・バイオメディカルAB(Hans Lennernas BioMedical AB)(ウプサラ、スウェーデン)によって実行された。
【0150】
背景
バルプロ酸(VPA)(MW144.2;log P=2.8、PSA=37.3Å)は、経口投与後、消化(GI)管で迅速かつ完全に吸収されることが報告されている。消化管および肝臓で低い初回通過抽出率を示す即時放出製剤、放出調節製剤および徐放性製剤の場合、生物学的利用率(F)は高い(ほぼ100%)(DuttaおよびZhang-Biopharm. Drug Dispos. 25(8)、345~352、2004;Chunら、J. Clin. Pharmacol. 20(1)、30~36、1980;Carriganら、J. Clin. Pharmacol. 30(8)、743~747、1990;Fischerら、Neurology 38(8)、1319~1322、1988)。VPAの腸管吸収を、22時間までのデコンボリューションによって測定し、それによれば、VPAは、結腸を包含する消化(GI)管全長に沿って吸収されることが示された(DuttaおよびZhang、2004)。VPAは、水中で容易に可溶性になることが報告されている(シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)によれば50mg/ml)。これらの報告値に基づいて、VPAは、生物薬剤学分類システム(BCS)に従ってクラスIの化合物に分類される(Amidonら、Pharm Res. 1995年3月;12(3):413~20、1995)。
【0151】
適用されたモデルアプローチ
コンパートメントモデル構造を採用して、VPA経口投与後の血漿-濃度プロファイルをシミュレートした。図6Aを参照されたい(Buxtonら、The Pharmacological Basis of Therapeutics、第12版、2011;Teorell、Arch Int Pharmacodyn et Ther 57:205~225、1937)。このモデル構造は、1つの即時放出(IR)成分および1つの徐放性(ER)成分を含有する製剤のシミュレーションを可能にした。絶食または給餌状態に従って胃内容を排出させることによりシミュレーションを実行した。絶食状態では、胃の通過時間を、絶食状態での流体通過に従って15分に設定した(1次)(Sjogrenら、Eur J Pharm Sci. 2014年6月16日;57:99~151 2014)。給餌状態では、胃から腸への物質の移動を、標準的な食事の消費(咀嚼)後の胃の糜粥通過に従って、用量の30%/時間(ゼロ次)に設定した(Olaussonら、Diabetes Res Clin Pract. 2008年5月;80(2):231~7、2008)。両方の配合成分を、腸溶コーティングされた微粒子にモデル化したが、このモデルでは、腸溶コーティングされた微粒子は糜粥と共に輸送され、糜粥から薬物が放出されて腸のコンパートメントに達すると仮定される。小腸と大腸の両方を通る通過時間を、20時間(すなわち末端の結腸を除いた腸に沿って起こるVPAの吸収を表す)に設定した。放出された薬物の吸収速度を、DuttaおよびReed、Epilepsy Res. 2007年3月;73(3):275~83により提供されたデータに基づき一次プロセス(kabs=6時間-1)によってモデル化した。全身血漿濃度を、単一コンパートメントモデルによって記述した。全身薬物動態(70kgのヒトの場合)を記述するパラメーター、すなわちVd=10.6L、CL=0.61L/時、F=100%を文献から収集した(GuglerおよびUnruh、Clin Pharmacokinet. 1980年1月~2月;5(1):67~83、1980)。
【0152】
このシミュレーション研究で評価された仮想VPA経口製剤は、IR部とER部の組み合わせに基づいていた。このシミュレーション研究の主要な目的は、VPAの総用量のうち2つの配合部に割り当てられた比率を決定することであった。血漿濃度-時間プロファイルをシミュレートすることによって様々な比率を評価した。この報告に示された全てのシミュレーションは、以下の式に従って配合成分(即時放出(IR)および徐放性(ER))からの一次解離動態学を採用することにより実行した:
kIR=6時-1(t1/2.放出=7分)
kER=0.25時-1(t1/2.放出=170分)。
【0153】
モデルの評価
絶食状態モデルの簡単な精度評価を、単回および繰り返しの(6時間毎=1000mg/日)用量投与として投与された250mgのVPAについて報告されているデータ(DuttaおよびReed、2007年、Husseinら、J Clin Pharmacol. 1994年7月;34(7):754~9、1994)に対しておこなった。図6Bおよび6Cを参照されたい。繰り返しの経口投与後の全身血漿濃度を十分に記述した。単回用量投与と比較してわずかに過小評価されたが、これは全身性体内動態(PK)の差が原因の可能性がある(CL=0.52L/時 V=7.1L)。全体として、以上の評価から、モデルが十分適切に機能すること、および採用された全身性PKパラメーターが妥当性を有することが示される。評価は、100%IRのモデル配合を用いてなされた。
【0154】
シミュレーション
70kgの個体に給餌状態で総用量60mg/kg/日のVPAを1日2回の服用レジメン(2100mg/12時間=約14500μmol/12時間)で経口投与したときのVPAの全身曝露をシミュレートした。IR成分が総用量の100%、75%、50%、12%および0%を占め、ER成分がそれぞれのケースにおいて残りの用量(0%、25%、50%、88%および100%)を占める場合のシミュレーションを実行した。3回(最大36時間)および14回(最大168時間)の連続した服用後の結果、及び3日の処置(6回の用量)+4日のウォッシュアウト後の結果を、絶食状態(図6D)および給餌状態(図6E)の2つの採用された胃の通過時間設定につき示す。
【0155】
結論
VPAは、徐放性部を含有する二重の放出配合で、しかも、結腸を含む消化管全長に沿って吸収される製剤をうまく調製できるという優れた生物薬剤学的特性を有することは明らかである。
【0156】
採用されたモデルの精度は、これまでに公開された研究のVPAの濃度×時間プロファイルを再現する能力を持つことにより示された。
【0157】
給餌状態において、VPAの血漿濃度1000~600μMが望ましい場合、この血漿濃度は、IR/ERの関係が75%/25%である配合の1回目の投与後に最も迅速に達成されると予想される。
【0158】
シミュレートされた投薬レジメン(60mg/kg/日)の場合、定常状態におけるVPA濃度は、配合の組成に応じて1500から2500μMの間で変動すると予測される。用量を減少させること、または投与間のインターバルを長くすることにより、定常状態でのVPAの濃度を、たとえ変動したとしても、望ましい最小血漿濃度よりは高く、ただし望ましい濃度を過剰に超えないように、低くすることが可能になる。
【0159】
実施例2-バルプロ酸ナトリウムカプセル
バルプロ酸ナトリウムカプセルの製造は、一連の連続した単位操作、即ち湿式造粒、押出し、球形化、乾燥、コーティングおよびカプセル充填からなる。各単位操作を以下に記述する。
【0160】
湿式造粒
HDAC阻害剤であるバルプロ酸ナトリウムを、遊星型ブレンダーまたは高剪断ブレンダーなどの従来の手段によって、好適な品質(例えば微結晶性または粉末化した品質)のセルロースと共に、投薬強度、充填の再現性および許容できるカプセルサイズに関して好適な数の微小顆粒中に必要な量の薬物を送達できる比率で乾式混合する。望ましい放出速度の達成を容易にするために、乾燥ブレンドに、他の賦形剤、例えばラクトースおよび/またはデンプンなどを添加してもよい。次いで乾燥ブレンドを、連続的に混合しながら、水のみ、またはポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤を含有する水を添加することによって湿潤ペーストに変える。
【0161】
押出し
湿式造粒によって得られた湿潤ペーストに圧力をかけて規定の直径を有するオリフィスを通って流動させることによって、ペーストを円柱状に成形する。好適な押出し手段は、従来の押出機であり、例えばラム押出機またはスクリュー押出機などである。
【0162】
球形化
バルプロ酸ナトリウム/賦形剤ブレンドからなる円柱状の成形体を、底部に回転ディスクを有するシリンダーからなるスフェロナイザーに移す。底部のディスクが高速で回転すると、円柱状の成形体は球状の微小顆粒に成形される。微小顆粒の直径は、押出し工程で使用されるオリフィスの直径によって規定される。
【0163】
乾燥
球形化工程によって生産された微小顆粒を、流動層乾燥などの従来の手段によって乾燥させる。この工程では、加熱空気を微小顆粒層に通過させることにより微小顆粒の水分レベルを低減させる。
【0164】
コーティング
乾燥した微小顆粒を、2つのサブバッチに分割して、これらをさらにIR(即時放出)またはER(徐放性)微小顆粒のいずれかに加工する。両方のサブバッチを、薄いポリマー層でコーティングし、ここでポリマーは、それぞれの望ましい放出特性が達成されるように選ばれる。IR微小顆粒の場合、腸溶コーティングに好適なポリマーが使用され、このようなポリマーは、例えば好適な水性または非水性媒体中に分散された市販のアクリル酸/メタクリル酸コポリマー(例えばオイドラギット(Eudragit)L100)などである。IR微小顆粒の場合、ゆっくり侵食するように設計されたポリマーが使用され、このようなポリマーは、例えば市販のエチルセルロースポリマー(例えばアクアコート(Aquacoat)ECD)などであり、これもまた好適な媒体内に分散される。IRおよびER微小顆粒の両方を、流動床型塗布装置などの従来の手段によってコーティングし、ここで微小顆粒層は、1つまたは複数のスプレーノズルを備えた円錐型の容器に供給される。加熱空気を通過させることによって微小顆粒層を流動化し、前記スプレーノズルを介してポリマー分散液を噴霧することによってコーティング層を積層させる。まで、コーティング層はその厚みを次第に増し、やがてコーティングされた微小顆粒の望ましい放出特性が達成される。
【0165】
カプセル充填
総合的な目標放出特性を有する最終的な投薬単位が達成されるような、重量測定により決定された望ましい比率で、IRおよびER微小顆粒を標準的なハードカプセルに充填する。
【符号の説明】
【0166】
2 ブリスターパック
4 ブリスター
4’ 空のブリスター
6 プラスチックシート
8 アルミニウム箔
10 錠剤
20 ディスペンサー
22 下のハウジング部
24 開口部
26 上のハウジング部
28 蛇行トラック
28 細長い開口部
30 空洞
34 プレス部
36 プレスプレート
38 プレスハンドル
40 支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E