(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】刻印ホルダー
(51)【国際特許分類】
B41K 3/36 20060101AFI20221014BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B41K3/36 D
B21C51/00 A
(21)【出願番号】P 2019000995
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】大橋 義満
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-255624(JP,A)
【文献】特開平06-127105(JP,A)
【文献】実開平04-033415(JP,U)
【文献】特開平11-170109(JP,A)
【文献】実開昭55-098111(JP,U)
【文献】特開平09-141331(JP,A)
【文献】実開昭59-059284(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 3/36
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刻印体により刻印される被刻印体の円柱状面に当接する凸状の円弧面をもつ脚部と、
前記脚部が連結され、前記刻印体が刻印する方向に移動自在に支持される支持部とを備え、
前記脚部は、それぞれ同形状の前記凸状の円弧面を有し、かつ、
前記凸状の円弧面は、
刻印に際しての前記被刻印体の中心軸方向から見て、前記刻印体の中心軸に対して、対称またはほぼ対称に2つ形成され、かつ、当該2つの前記凸状の円弧面の各曲率中心と前記被刻印体
の中心軸との成す角は鋭角を成し、
刻印に際しての前記中心軸に垂直な方向から見て、前記刻印体の中心軸に対して、対称またはほぼ対称に2つ形成されている
ことを特徴とする刻印ホルダー。
【請求項2】
請求項1に記載の刻印ホルダーにおいて、
前記凸状の円弧面は、刻印に際しての前記被刻印体の前記中心軸に、平行またはほぼ平行な中心軸をもつ円柱状面である
ことを特徴とする刻印ホルダー。
【請求項3】
請求項1に記載の刻印ホルダーにおいて、
前記凸状の円弧面は、球面である
ことを特徴とする刻印ホルダー。
【請求項4】
請求項1に記載の刻印ホルダーにおいて、
前記凸状の円弧面は、4つまたは3つ形成されている
ことを特徴とする刻印ホルダー。
【請求項5】
請求項1に記載の刻印ホルダーにおいて、
前記凸状の円弧面は、前記被刻印体より硬度が低い金属または樹脂で形成されている
ことを特徴とする刻印ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刻印ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼鉄材料の材料識別に用いる刻印方法の一つとして手打ち刻印がある。
図11に、従来の鋼管101に手打ち刻印を行っている状態の斜視図を示す。
手打ち刻印を用いて、鋼管101の外面の円弧面101eに刻印する場合、刻印(ローストレス刻印102)を鋼管101の外面の円弧面101eに垂直にハンドリングしながら打つ方法が一般的である。
【0003】
具体的には、作業者が、ローストレス刻印102が保持されるホルダー103の取っ手103tを把持し、ローストレス刻印102の中心軸102cが鋼管101の中心101cを通るように、ローストレス刻印102の一方端部の刻印文字部102iを鋼管101の外面の円弧面101eに接触させ、ローストレス刻印102の位置を決める。
【0004】
その際、作業者は、刻印文字部102iが鋼管101の外面の円弧面101eに平行に接している状態、つまり外面(円弧面101e)の接線に位置付けるように目視しつつ、ホルダー103を取っ手103tで保持し、ハンマー104でローストレス刻印102の他方端部102tを打って、打刻する(
図11の矢印α1)必要がある。
【0005】
打刻方法に関する特許文献として、特許文献1 、2、3がある。
特許文献1 には、定めた円弧面の複数位置への機械刻印方法が記載されている。
特許文献2には、刻印を間接的にホールドする手打ち刻印方法が記載されている。
特許文献3には、樹脂被膜面への印字方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平06-127105号公報
【文献】特開2012-240298号公報
【文献】特開2000-263476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1には円筒部の中心を向く3つの貫通穴を有し、一撃で打刻できる刻印装置が記載されている。しかし、特許文献1に記載された打刻装置では指定された貫通穴部にしか打刻できない問題がある。
【0008】
一方、
図11に示す刻印方法は、ローストレス刻印102で刻印する際に作業者が手でローストレス刻印102を保持する。そのため、左右前後に倒れ易く不安定であるという問題がある。例えば、10回刻印作業を行うと1回程度、刻印不良が生じるおそれがある。
【0009】
特許文献1 ~3の何れも、管の外面の円弧面の各所へ自在に手打ち打刻する際、上述の刻印不良を解消する方法については記載がない。
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の刻印ホルダーは、刻印体により刻印される被刻印体の円柱状面に当接する凸状の円弧面をもつ脚部と、前記脚部が連結され、前記刻印体が刻印する方向に移動自在に支持される支持部とを備え、前記脚部は、それぞれ同形状の前記凸状の円弧面を有し、かつ、前記凸状の円弧面は、刻印に際しての前記被刻印体の中心軸方向から見て、前記刻印体の中心軸に対して、対称またはほぼ対称に2つ形成され、かつ、当該2つの前記凸状の円弧面の各曲率中心と前記被刻印体の中心軸との成す角は鋭角を成し、刻印に際しての前記中心軸に垂直な方向から見て、前記刻印体の中心軸に対して、対称またはほぼ対称に2つ形成されている。
【0011】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、任意の円弧面に対して自在に精確に打刻できる刻印ホルダーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明の刻印ホルダーは、刻印体により刻印される被刻印体の円柱状面に当接する円弧面をもつ脚部と、前記脚部が連結され、前記刻印体が刻印する方向に移動自在に支持される支持部とを備え、前記脚部は、それぞれ同形状の前記円弧面を有し、かつ、前記円弧面は、刻印に際しての前記被刻印体の中心軸方向および前記中心軸に垂直な方向から見て、前記刻印体の中心軸に対して対称またはほぼ対称に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、任意の円弧面に対して自在に精確に打刻できる刻印ホルダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る実施形態1の刻印ホルダーHを示す図。
【
図2】実施形態1の原理図であり、
図1のI方向矢視図。
【
図3】円弧面垂直手打ち刻印ホルダーを用いて配管5に刻印を行う際の設置状態を示す配管の軸方向に見た図。
【
図4】円弧面垂直手打ち刻印ホルダーを用いて配管5に刻印を行う際の設置状態を示す
図3のII方向矢視図。
【
図5A】円弧面垂直手打ち刻印ホルダーを用いてハンマーで刻印を打って刻印する状態を示す図。
【
図6】変形例1の円弧面垂直手打ち刻印ホルダーを示す斜視図。
【
図7】変形例2の円弧面垂直手打ち刻印ホルダーを示す斜視図。
【
図8】変形例2の他例の円弧面垂直手打ち刻印ホルダーを示す斜視図。
【
図9】変形例3の円弧面垂直手打ち刻印ホルダーを示す斜視図。
【
図10】変形例3の他例の円弧面垂直手打ち刻印ホルダーを示す斜視図。
【
図11】従来の鋼管に手打ち刻印を行っている状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、金属材の円弧面(例えば、配管の外面)への刻印打刻方法に係わり、打刻不良を抑制して作業効率向上を図るものである。
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
<<実施形態1>>
図1に、本発明に係る実施形態1の刻印ホルダーHを示す。なお、
図1を含む以下の図では、左右前後を図示する方向とする。
【0017】
図2に、実施形態1の原理図の
図1のI方向矢視図を示す。
実施形態1の刻印ホルダーHは、鋼管等の円柱状の外面に刻印を行う際に使用される。
【0018】
刻印ホルダーHは、刻印支持部1と4つの円柱体2と2つの連結部材3 とを備えている。
刻印支持部1は、扁平な直方体形状を有している。刻印支持部1には、中央に刻印体4が上下方向に摺動自在に支持される四角い穴1aが貫通されている。
【0019】
刻印支持部1は、刻印体4(
図2参照)の側壁4sの径と若干大きい寸法のほぼ同径、つまり刻印体4との隙間が限りなく0mmに近い径を有している。換言すれば、刻印支持部1の穴1aと刻印体4の側壁4sとは摺動する程度のはめ合いで嵌合されている。このはめ合いにより、刻印体4の打刻時の衝撃による振れを防止できる。
【0020】
<連結部材3 >
図1に示すように、連結部材3は、右連結部材3aと左連結部材3bとを有している。
右連結部材3aは、刻印支持部1と2つの右円柱体2aとを繋ぐように形成されている。左連結部材3bは、刻印支持部1と2つの左円柱体2bを繋ぐように形成されている。
【0021】
<刻印体4>
図2に示す刻印体4の一方端には、文字が彫られている刻印文字部4mが設けられる。刻印文字部4mの先端は曲率が設けられ、配管5を傷付けないように構成されている。
刻印体4の刻印文字部4mは、配管5に刻印するために配管5よりも硬い表面処理を施した材料で形成されている。
【0022】
配管5が炭素鋼配管である場合には、刻印文字部4mは当該炭素鋼配管よりも硬い材料で形成されたものが用いられる。例えば、配管5がS45Cで形成される場合には、刻印文字部4mはS45Cより硬度が高いクロム鋼を使用した合金鋼等で形成されたものが用いられる。
【0023】
<円柱体2>
円柱体2は、前後方向に軸をもつ円柱形状を有している。4つの円柱体2は同形状に形成されている。円柱体2は、刻印ホルダーHの下部の左右にそれぞれ2つの左円柱体2bと2つの右円柱体2aとが配設されている。
【0024】
円柱体2は、円弧状の鋼鉄材料と接触しても滑らかに滑る摺動面を有している。
円柱体2は、刻印体4が嵌合された刻印ホルダーHを配管5の上に配置した場合、
図2に示すように、刻印体4の芯(中心軸4c)が配管5の円弧面5eに対して、常に円弧面5eの中心軸5cに交差する方向を持つ。また、円柱体2の中心軸2a0、2b0は、配管5の中心軸5cに平行またはほぼ平行な方向をもつ。
【0025】
つまり、刻印ホルダーHを前方視または後方視した場合、右円柱体2aと左円柱体2bは、刻印体4の中心軸4cに対して、左右対称またはほぼ左右対称に形成されている。
具体的には、右円柱体2aと左円柱体2bとは、刻印体4の中心軸4cからほぼ等距離に配置されている。刻印支持部1と2つの右円柱体2aとを繋ぐ右連結部材3aの長さs1と、刻印支持部1と2つの左円柱体2bを繋ぐ左連結部材3b長さs2とは、ほぼ同じ長さを有している。また、刻印体4の中心軸4cに対して、 右連結部材3aと左連結部材3bとはほぼ同じ傾斜角θa、θbを成している。
【0026】
なお、右円柱体2aと左円柱体2bは、刻印体4の中心軸4cに対して、左右対称またはほぼ左右対称に形成されれば、上記以外の構成を採用してもよい。
また、刻印ホルダーHを右方視または左方視した場合、右円柱体2aは、刻印体4の中心軸4cに対して、前後対称またはほぼ前後対称に形成され、左円柱体2bは、刻印体4の中心軸4cに対して、前後対称またはほぼ前後対称に形成されている。
【0027】
右円柱体2aと左円柱体2bとが、刻印体4の中心軸4cに対して、左右対称またはほぼ左右対称および前後対称またはほぼ前後対称に形成されることで、右円柱体2aと左円柱体2bとが配管5の円弧面5eに配置された際(
図2、
図4参照)に、刻印体4の中心軸4cが配管5の中心軸5cに垂直に交差する方向となる。これにより、配管5への刻印を精確に行える。
【0028】
また、
図2に示すように、右円柱体2aと左円柱体2bは、刻印体4の中心軸4cの方向に同位置またはほぼ同位置に形成されている。
【0029】
図3、
図4は 、刻印ホルダーHを用いて配管5に刻印を行う際の設置状態を示す図であり、
図3に配管5の中心軸5c方向に見た図を示し、
図4に
図3のII方向矢視図を示す。
【0030】
図3に示すように、刻印体4の中心軸4cが配管5の中心軸5cに垂直に交差するように構成されている。
【0031】
また、
図4では、配管5の中心軸5cに垂直な方向(
図3の矢印II方向)から見て、前の右円柱体2aと後の右円柱体2aとが刻印体4の中心軸4cに対して対称またはほぼ対称になるように構成され、前の左円柱体2bと後の左円柱体2bとが刻印体4の中心軸4cに対して対称またはほぼ対称になるように構成されている。なお、図面作製上、
図4では、右円柱体2aの幅が、
図1での幅よりも狭く書かれている。
【0032】
上記構成により、被刻印円弧体である配管5の円弧面5eとの右円柱体2aおよび左円柱体2bの接触面2a1、2b1を、刻印体4の中心軸4cより左右均等に振り分けされた脚(左連結部材3b、左円柱体2bおよび右連結部材3a、右円柱体2a)の円体面としている。
【0033】
これにより、
図2に示すように、被刻印円弧体である配管5の大小に関わらず、被刻印円弧体の配管5の中心軸5cと脚円体面(右円柱体2aおよび左円柱体2b)が互いの円体の中心軸2a0、2b0のそれぞれを結ぶ線上で、右円柱体2aおよび左円柱体2bが配管5に接し、刻印に際して常に刻印体4の中心軸4cが被刻印円弧体の配管5の中心軸5cに交差する原理をもつ。
【0034】
<刻印ホルダーHの製作>
刻印ホルダーHは、一体構造か部品による組立構造としている。刻印ホルダーHの材料は、配管5より柔らかく、加工性がある材料が使用される。刻印ホルダーHが配管5より柔らかいことで、配管5の上に右円柱体2aと左円柱体2bとを当接させた際、配管5の外面が傷付くことが抑制される。
【0035】
刻印ホルダーHの材料は、例えばMCナイロン(商標登録)樹脂(6ナイロンと呼ばれるポリアミド樹脂)やテフロン樹脂を含むプラスチック素材、金属・アルミニウム等の非鉄金属等で形成される。
刻印ホルダーHは、極力一体で製作される。刻印ホルダーHが組立構造の場合、以下のように製作される。
【0036】
材料が樹脂の場合、はめ合い公差で各部を製作し、打ち込んで組み立てる。
材料が金属の場合、冷間はめ合いまたは熱間はめ合いを用いて、凹凸になった状態の部材同士が噛み合うインローのはめ合いで打ち込んで製作する。
【0037】
<刻印ホルダーHを用いた刻印作業>
刻印ホルダーHには、配管5に刻印するための刻印体4が嵌合される。
そして、
図3、
図4に示すように、刻印体4が嵌合された刻印ホルダーHは、その右円柱体2aおよび左円柱体2bが配管5の外面の円弧面5eに配置される。この際、刻印体4の中心軸4cは、配管5の中心軸5cと垂直なるように、刻印ホルダーHが構成されている。
図2に示すように、刻印体4の中心軸4cは、配管5の中心軸5cに垂直に交差する方向をもつ。
【0038】
図5Aに、刻印ホルダーHを用いてハンマー6で刻印体4を打って刻印する状態を示し、
図5Bに、
図5AのIII方向矢視図を示す。
刻印ホルダーHの右円柱体2aおよび左円柱体2bは、配管5の円弧面5eから離れないように、作業者が例えば手hで抑える。これにより、
図2に示すように、刻印体4の中心軸4cが配管5の中心軸5cを通るように刻印体4が配管5に対して位置決めされるとともに、刻印体4の一方側の刻印文字部4mが円弧面5eに接触または対向する。
【0039】
続いて、作業者がハンマー6で、刻印体4の他方側4tを打つことで、配管5の円弧面5eに刻印体4の刻印文字部4mにより刻印される。
この際、
図5Aの矢印α11方向に外力が加わった際には、右円柱体2aが配管5に当たり抵抗する(
図5Aの矢印β11)ことで、刻印ホルダーHの安定が保たれる。同様に、
図5Aの矢印α12方向に外力が加わった際には、左円柱体2aが配管5に当たり抵抗する(
図5Aの矢印β12)ことで、刻印ホルダーHの安定が保たれる。
【0040】
一方、
図5Bの矢印α13方向に外力が加わった際には、前の右円柱体2aと前の左円柱体(図示せず)とが配管5に当たり抵抗する(
図5Bの矢印β13)ことで、刻印ホルダーHの安定が保たれる。同様に、
図5Bの矢印α14方向に外力が加わった際には、後の右円柱体2aと後の左円柱体(図示せず)とが配管5に当たり抵抗する(
図5Bの矢印β14)ことで、刻印ホルダーHの安定が保たれる。
【0041】
ところで、従来、
図11に示すように、手打ち刻印(102)を用いて配管(101)の円弧面101eに刻印する場合は刻印(102)を円弧面101eに垂直にホルダー103でハンドリングしながらハンマー104で打刻する必要があった。
【0042】
しかし、本実施形態の刻印ホルダーHの構成によれば、
図5A、
図5Bに示すように、配管5の円弧面5eに刻印ホルダーHの右円柱体2aと左円柱体2bとを配置することで、配管5の円弧面5eの中心軸5cに対して常に刻印体4の芯(中心軸4c)が垂直に交差する(
図2参照)。
【0043】
図2、
図4に示すように、刻印ホルダーHを用いて、どの円筒面でも垂直に当てられるので、間違えること(打刻不良)が少なく、失敗確率が低い。つまり、刻印ホルダーHを配管5の円弧面5eにきちんと当てれば、配管5に対する垂直度が保たれるので誤りが少ない。
図5Aに示すように、刻印ホルダーHを配管5の円弧面5eにきちんと当て、刻印体4をハンマー6で打てばよい。
【0044】
そのため、欠損した打刻つまり打刻不良を抑制することが可能となる。
例えば、従来、刻印作業を10回行うと、ぼほ1回は作業不良が発生していたが、本刻印ホルダーHを用いれば、刻印作業の作業不良が限りなく抑制される。
【0045】
そのため、再打刻に必要な移設申請処理や誤刻印磨き処理の低減が可能で、作業効率が向上する。従って、刻印作業において、コスト換算で3割~5割のコスト低減効果がある。さらに、刻印ホルダーHは、プラント等の修理、補修にも使われ、失敗費用が少なくなり、コスト低減に役立つ。
【0046】
従って、配管5等の外面の円弧面5eに対して刻印体4の中心軸4cが管等の中心軸5cに向く(垂直に交差する)ような刻印支持部1を有し、任意の円弧面5eに対して自在に精確に打刻できる刻印ホルダーHを実現できる。
【0047】
<<変形例1>>
図6に、変形例1の刻印ホルダーH1の斜視図を示す。
変形例1の刻印ホルダーH1は、円柱体12を3つとしたものである。
【0048】
その他の構成は、実施形態1と同様であるから、同様な構成要素には、同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
変形例1の刻印ホルダーH1は、刻印支持部1と3つの円柱体12と2つの連結部材3とを備えている。
【0049】
円柱体12は、それぞれ前後方向に軸をもつ外面が円柱形状を有しており、同形状を有している。円柱体12は、刻印ホルダーH1の下部の左右にそれぞれ2つの左円柱体12b、12cと、1つの右円柱体12aとが配設されている。
【0050】
円柱体12は、前後方向に見て、実施形態1の
図2と同様に、刻印ホルダーH1に嵌合される刻印体4の中心軸4cに対して、左右対称またはほぼ左右対称に形成されている。
そして、
図6のIV方向に見て、刻印ホルダーH1の前後方向に2つの左円柱体12bと左円柱体12cとの中間の位置に1つの右円柱体12aが設けられている。
【0051】
また、
図6のIV方向(右左方向)に見て、刻印ホルダーH1に嵌合される刻印体4の中心軸4cに対して、2つの左円柱体12bと左円柱体12cとは、前後方向に対称またはほぼ対称に設けられ、1つの右円柱体12aは、前後方向に対称またはほぼ対称に設けられている。
【0052】
そして、2つの左円柱体12bと左円柱体12cと1つの右円柱体12aとを配管5の上に配置した際、刻印体4の中心軸4cと配管5の中心軸5cとは垂直に交差するように構成されている。
【0053】
上記構成によれば、刻印ホルダーH1に
図6の矢印α15の外力が加わった際には、右円柱体12aが配管5に当たり抵抗することで、刻印ホルダーH1の安定が保たれる。同様に、刻印ホルダーH1に
図6の矢印α16の外力が加わった際には、左円柱体12b、12cが配管5に当たり抵抗することで、刻印ホルダーH1の安定が保たれる。
【0054】
一方、刻印ホルダーH1に
図6の矢印α17の外力が加わった際には、左円柱体12bが配管5に当たり抵抗することで、刻印ホルダーH1の安定が保たれる。同様に、刻印ホルダーH1に
図6の矢印α18の外力が加わった際には、左円柱体12cが配管5に当たり抵抗することで、刻印ホルダーH1の安定が保たれる。
【0055】
そのため、刻印ホルダーH1を用いれば、刻印作業に際して、刻印ホルダーH1を刻印体4の中心軸4cが配管5の中心軸5cを通るように、配管5に対して位置決めすることが容易である。したがって、刻印作業の作業不良が限りなく抑制される。
【0056】
なお、刻印ホルダーH1を1つの左円柱体と2つの右円柱体とで構成してもよい。
【0057】
<<変形例2>>
図7に、変形例2の刻印ホルダーH2の斜視図を示す。
変形例2の刻印ホルダーH2は、実施形態1の4つの円柱体2(
図1参照)を4つの球体22(22a、22a、22b、22b)としたものである。
【0058】
その他の構成は、実施形態1と同様であるから、同様な構成要素には、同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
変形例2の刻印ホルダーH2は、刻印支持部1と4つの球体22と2つの連結部材3 (3a、3b)とを備えている。
【0059】
球体22は、球形状を有している。4つの球体22は同形状を有している。球体22は、刻印ホルダーH2の下部の左右に、2つの左球体22bと2つの右球体22aとが配設されている。
球体22は、円弧状の鋼鉄材料で形成される配管5と接触しても滑らかに滑る摺動面を有している。
【0060】
球体22は、刻印体4が嵌合された刻印ホルダーH2を配管5の上に配置した場合、刻印体4の芯(中心軸4c)が配管5の円弧面5eに対して、常に該円弧面5eの中心軸5cに垂直に交差する特徴を持つ。
【0061】
図2と同様に、刻印ホルダーH2を前方視または後方視した場合、右球体22aと左球体22bとは、刻印ホルダーH2に嵌合された刻印体4の中心軸4cに対して、左右対称またはほぼ左右対称に形成されている。また、刻印ホルダーH2を右方視または左方視した場合、右球体22aと左球体22bとは、刻印ホルダーH2に嵌合された刻印体4の中心軸4cに対して、前後対称またはほぼ前後対称に形成されている。
【0062】
そして、上述したように、右球体22aと左球体22bを配管5の上に配置した際、刻印体4の中心軸4cと配管5の中心軸5cとは垂直に交差するように構成されている。
【0063】
変形例2の構成によれば、刻印作業の作業不良が限りなく抑制される。従って、刻印作業において、コスト換算で3割~5割のコスト低減効果がある。
図8に、変形例2の他例の刻印ホルダーH21の斜視図を示す。
変形例2の構成を変形例1と同様に、
図8に示すように、2つの左球体22bと1つの右球体22aまたは1つの左球体22bと2つの右球体22aで構成してもよい。
【0064】
<<変形例3>>
図9に、変形例3の刻印ホルダーH3の斜視図を示す。
変形例3の刻印ホルダーH3は、実施形態1の4つの円柱体2(
図1参照)を4つの半球体32としたものである。
【0065】
その他の構成は、実施形態1と同様であるから、同様な構成要素には、同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
変形例3の刻印ホルダーH3は、刻印支持部1と4つの半球体32(32a、32a、32b、32b)と2つの連結部材3 (3a、3b)とを備えている。
【0066】
半球体32は、配管5に当接する下方が丸い半球形状を有している。4つの半球体32は同形状を有している。半球体32は、刻印ホルダーH3の下部の左右にそれぞれ2つの左半球体32bと2つの右球体32aとが配設されている。
【0067】
半球体32は、円弧状の鋼鉄材料で形成される配管5と接触しても滑らかに滑る摺動面を有している。
半球体32は、
図2と同様、刻印体4が嵌合された刻印ホルダーH3を半球体32の球面を介して配管5の上に配置した場合、刻印体4の芯(中心軸4c)が配管5の円弧面5eに対して、常に該円弧面5eの中心軸5cに交差する方向を持つ。
【0068】
図2と同様に、刻印ホルダーH3を前方視または後方視した場合、右半球体32aと左半球体32bとは、刻印体4の中心軸4cに対して、左右対称またはほぼ左右対称に形成されている。
また、刻印ホルダーH3を右方視または左方視した場合、2つの右半球体32aは、刻印体4の中心軸4cに対して、前後対称またはほぼ前後対称に形成され、2つの左半球体32bは、刻印体4の中心軸4cに対して、前後対称またはほぼ前後対称に形成されている。
【0069】
ここで、2つの左半球体32bと2つの右球体32aとを配管5の上に配置した際、刻印体4の中心軸4cと配管5の中心軸5cとは垂直に交差するように構成されている。
変形例3の構成によれば、刻印作業の作業不良が限りなく抑制される。従って、刻印作業において、コスト換算で3割~5割のコスト低減効果がある。
【0070】
図10に、変形例3の他例の刻印ホルダーH31の斜視図を示す。
変形例3の構成を変形例1と同様に、
図10に示すように、2つの左半球体32bと1つの右球体32a、または1つの左半球体32bと2つの右半球体32aで構成してもよい。
【0071】
なお、変形例3では、配管5に当たる面が球状である半球体32を例示して説明したが、配管5に当たる面が球状であれば、半球体以外の一部球体でもよい。
【0072】
<<その他の実施形態>>
1.前記実施形態では、様々な構成を説明したが、少なくとも一部を採用してもよい。例えば、説明した構成を、適宜構成を組み合わせて構成してもよい。
【0073】
2.前記実施形態で説明した構成は、本発明の一例であり、特許請求の範囲で記載した範囲内でその他の様々な形態が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 刻印支持部(支持部)
2 円柱体(円弧面、円柱状面)
2a 右円柱体(円弧面、円柱状面)
2b 左円柱体(円弧面、円柱状面)
2a0、2b0 円柱体の中心軸(円弧面の中心軸)
3 連結部材(脚部)
3a 右連結部材(脚部)
3b 左連結部材(脚部)
4 刻印体
4c 刻印体の中心軸
5 配管(被刻印体)
5c 配管の中心軸(被刻印体の中心軸)
5e 円弧面(円柱状面)
12 円柱体(円弧面、円柱状面)
12a 右円柱体(円弧面、円柱状面)
12b、12c 左円柱体(円弧面、円柱状面)
22 球体(円弧面、球面)
22a 右球体(円弧面、球面)
22b 左球体(円弧面、球面)
32 半球体(円弧面、球面)
32a 右半球体(円弧面、球面)
32b 左半球体(円弧面、球面)
H、H1、H2、H21、H3 刻印ホルダー