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特許7158315骨セメントドウによって駆動される閉止システムを有する骨セメントアプリケータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】骨セメントドウによって駆動される閉止システムを有する骨セメントアプリケータ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20221014BHJP
   A61M 3/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61B17/56
A61M3/00
A61M5/14 580
【請求項の数】 32
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019038532
(22)【出願日】2019-03-04
(62)【分割の表示】P 2017216748の分割
【原出願日】2017-11-09
(65)【公開番号】P2019107498
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2019-03-29
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】10 2016 121 606.2
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ トーマス
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】栗山 卓也
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/036992(WO,A2)
【文献】特表2004-525678(JP,A)
【文献】特表2009-506798(JP,A)
【文献】特表2008-540014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B17/88
A61F2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨セメントを収容するカートリッジ(3、4、46、50)を開口する方法であり、以下の各ステップは、人体の外で実行される方法であって、閉止システムによって閉止された前記カートリッジ(3、4、46、50)内の骨セメントドウ(44)に圧力を加えるステップと、前記圧力によって前記骨セメントドウ(44)から伝達される力を、前記カートリッジ(3、4、46、50)に対して移動可能な前記閉止システムの部分(7、54、70)に加えるステップと、そうすることで、前記閉止システムの前記部分(7、54、70)を前記カートリッジ(3、4、46、50)に対して移動するステップと、前記閉止システムの前記部分(7、54、70)の前記移動によって前記カートリッジ(3、4、46、50)を開口するステップと、を含み、
前記閉止システムは、気体透過性であるが粉末(1)および液体は透過しない壁(7)を備え、前記壁(7)は、前記骨セメントドウ(44)の前記圧力が前記壁(7)に作用し、
これにより、ストッパ(54)を前記壁(7)と共に前記カートリッジ(50)に対して移動し、前記壁(7)が前記カートリッジ(50)の前方側に当たって固定された状態で、前記ストッパ(54)が前記壁(7)に対して移動することで、前記カートリッジ(50)を開口するか、または、
これにより、排出開口部(48)を前記壁(7)と共に、前記カートリッジ(3、4、46)に対して移動し、そうすることで、前記カートリッジ(3、4、46)に固定して連結されるストッパ(8)を前記排出開口部(48)から外す、
ように前記カートリッジ(3、4、46、50)内に配置される方法。
【請求項2】
前記方法は、骨セメントを混合および施用する骨セメントアプリケータであって、前記アプリケータによって、前記骨セメントの出発成分(1、2)が、骨セメントドウ(44)を形成するために、閉止されたカートリッジ(3、4、46、50)内で混合可能であり、前記カートリッジ(3、4、46、50)は、排出開口部(48)を含む複部構成の閉止システムを有し、前記閉止システムの少なくとも2つの部分(7、8、54、70、74)は、前記混合された骨セメントドウ(44)の移動によって押しやられることによって、互いに対して移動可能であり、前記排出開口部(48)は、前記閉止システムの前記少なくとも2つの部分(7、8、54、70、74)の互いに対する前記移動によって開口され、前記混合された骨セメントドウ(44)の前記移動は、前記骨セメントドウ(44)への圧力によって引き起こすことができる、骨セメントアプリケータを用いて実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カートリッジ(3、4、46、50)において直線的に移動可能な排出ピストン(6)に加えられる力によって、前記骨セメントドウ(44)への前記圧力を増大させるステップであって、人体の外で実行されるステップを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記閉止システムの前記移動可能な部分(7、54、70)は、ストッパ(54)であり、前記ストッパ(54)は、前記カートリッジ(50)に対して固定された、排出開口部を有する壁(74)に対して移動されるか、あるいは、前記閉止システムの前記移動可能な部分は、排出開口部(48)を有する壁(7)であり、開始位置で前記排出開口部(48)を閉止するストッパ(8)は、前記カートリッジ(3、4、46)に対して固定されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カートリッジ(3、4、46、50)の筒状内部において前記カートリッジ(3、4、46、50)の前方側の方向に搬送ピストン(5)を移動するステップであって、前記搬送ピストン(5)と前記カートリッジ(3、4、46、50)の前記前方側との間に排出ピストン(6)が配置される、ステップと、
前記搬送ピストン(5)と前記排出ピストン(6)との間に配置される前記骨セメントの第1の出発成分としてのモノマー液(2)を、前記排出ピストン(6)に向かう前記搬送ピストン(5)の移動によって、前記排出ピストン(6)と、前記骨セメントの第2の出発成分としての粉末(1)を収容する前記前方側との間の前記内部の前方部分に押し込むステップであって、したがって、前記骨セメントドウ(44)が生成される、ステップと、
前記搬送ピストン(5)が前記排出ピストン(6)に接触し、その後、前記搬送ピストン(5)が前記排出ピストン(6)を、前記カートリッジ(3、4、46、50)の前記前方側の前記方向に押すステップであり、人体の外で実行されるステップであって、前記閉止システムは、前記排出ピストン(6)によって前記骨セメントドウ(44)に加えられる前記圧力によって開口される、ステップと、
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記搬送ピストン(5)を前記排出ピストン(6)の方向に移動することによって、前記カートリッジ(3、4、46、50)の前記内部において前記搬送ピストン(5)と前記排出ピストン(6)との間に配置される前記モノマー液(2)用の容器(9)を開口するステップを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記搬送ピストン(5)と前記排出ピストン(6)との間の容器(9)としてのガラスアンプル(9)もしくはプラスチックアンプル(9)が破砕されるか、または、容器(9)としてのフィルムバッグが破って開口されるか、もしくは刺して開口されるか、もしくは裂いて開口され、その後、前記モノマー液が前記フィルムバッグから押し出されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記カートリッジ(3、4、46、50)は押出し器具(40)に挿入され、前記押出し器具(40)のラム(42)が進められ、前記骨セメントドウ(44)への前記圧力は前記ラム(42)を進めることによって生成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
搬送ピストン(5)は、前記ラム(42)によって前記閉止システムの方向に押しやられることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記骨セメントドウ(44)を生成するために、前記骨セメントドウ(44)の第1の出発成分としてのモノマー液(2)が、前記骨セメントドウ(44)の第2の出発成分としての粉末(1)に、前記粉末内の親水性添加剤を用いて分散されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記粉末(1)は、前記カートリッジ(3、4、46、50)の内部の前方部分において機械的圧力下で圧縮されるかまたは収容されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記骨セメントドウ(44)は、その後、前記閉止システムを開口するのに使用される前記圧力と同じ圧力を前記骨セメントドウ(44)に用いることで、前記開口された排出開口部(48)を通して排出可能になることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記閉止システムは、排出開口部(48)を有する壁(7)およびストッパ(8、54)を有し、前記排出開口部(48)は前記カートリッジ(3、4、46、50)の周囲環境に接続され、前記ストッパ(8、54)は、前記カートリッジ(3、4、46、50)が閉止されているときに前記排出開口部(48)を閉止し、前記排出開口部(48)を有する前記壁(7)が前記骨セメントドウ(44)の前記圧力によって移動可能で、かつ、前記ストッパ(8)が前記カートリッジ(3、4、46、50)に対して固定されるか、または、前記ストッパ(54)が前記骨セメントドウ(44)の前記圧力によって移動可能で、かつ、前記壁(7)が前記カートリッジ(3、4、46、50)に対して固定されるかもしくは固定可能であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
排出開口部(48)を有する排出チューブ(18)が、前記カートリッジ(3、4、46、50)に対して移動可能なように装着され、前記排出チューブ(18、66、72、78)を閉止するストッパ(8)が、前記カートリッジ(3、4、46、50)に固定して連結され、前記排出チューブ(18、66、72、78)は、前記骨セメントドウ(44)への前記圧力によって前記ストッパ(54)に対して移動可能であり、したがって、開口可能であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記骨セメントドウ(44)のうちのカートリッジベースを向く側への圧力によって、前記排出チューブ(18、66、72、78)を前記カートリッジベースから離れる方向に押すことが可能であり、そうする際に、前記ストッパ(8、54)は、前記排出チューブ(18、66、72、78)から解除され、したがって、前記カートリッジ(3、4、46、50)を開口することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カートリッジ(3、4、46、50)は、前記骨セメントドウ(44)が混合される筒状内部を有し、前記閉止システムを開口し前記開口されたカートリッジ(3、4、46、50)から前記骨セメントドウ(44)を外に押しやる、前記骨セメントドウ(44)への前記圧力は、前記カートリッジ(3、4、46、50)の前記内部において軸に沿って移動可能なように装着される排出ピストン(6)を、前記閉止システムの方向に、具体的には、前記カートリッジ(3、4、46、50)のカートリッジヘッド(10、64、74)の方向に、直線的に進めることによって発生可能であり、前記閉止システムは、前記カートリッジ(3、4、46、50)の前方側に配設されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記骨セメントドウ(44)を混合するために、前記カートリッジ(3、4、46、50)内の前記骨セメントの第1の出発成分としてのモノマー液(2)を、搬送ピストン(5)によって第2の出発成分としての粉末(1)中に押すことが可能であり、前記搬送ピストン(5)は、前記閉止システムの方向に押され、前記カートリッジ(3、4、46、50)の筒状内部において軸に沿って移動可能なように配置されることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記カートリッジ(3、4、46、50)の前記内部の前方部分には、前記粉末(1)が収容され、前記カートリッジ(3、4、46、50)の前記内部の後方部分には、前記モノマー液(2)を収容する容器(9)が配置され、前記容器(9)と前記粉末(1)との間に前記排出ピストン(6)が配置され、前記閉止システムの反対側のカートリッジベースに前記搬送ピストン(5)が配置され、前記モノマー液(2)および気体は透過し前記粉末(1)は透過しないように前記カートリッジ(3、4)の前記内部の前記前方部分と前記後方部分とを互いに接続する、導管手段(22)が設けられることを特徴とする、請求項16に従属するときの請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記排出ピストン(6)におよび/または前記排出ピストン(6)と前記内部の内壁との間に、導管手段として少なくとも1つの供給孔(22)が設けられ、前記供給孔(22)によって、前記内部の前記前方部分と前記内部の前記後方部分とが互いに接続され、前記粉末(1)は透過せず前記モノマー液(2)および気体は透過するフィルタ(20)が、前記少なくとも1つの供給孔(22)に配置されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記排出ピストン(6)が前記内部の前記前方部分と前記後方部分との間で前記カートリッジ(3、4、46、50)と係止できるように、前記排出ピストン(6)上にデテント手段(38)が配置され、この係止は、前記容器(9)が開口されるときに生じる力および前記搬送ピストン(5)によって前記モノマー液(2)に加えられる圧力によって解除することができないが、前記搬送ピストン(5)から直接的に前記排出ピストン(6)に作用する圧力によって解除可能であることを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記容器(9)の前記モノマー液(2)の体積は、前記カートリッジ(3、4、46、50)の前記内部の前記前方部分の粉末粒子間の空気で満たされた隙間の体積と少なくとも同じ程度の大きさであり、または、前記内部の前記前方部分の前記粉末粒子間の空気で満たされる前記隙間および前記搬送ピストン(5)が前記排出ピストン(6)に当たるときの前記内部の前記後方部分の体積から、前記容器(9)の材料の体積および当てはまる場合は前記内部の前記後方部分の充填材(52)の体積を引いた体積と少なくとも同じ程度の大きさであるかまたは全く同じ大きさであることを特徴とする、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
余分のモノマー液(2)のための受液部が、前記カートリッジ(3、4、46、50)の前方端部に、または前記カートリッジ(3、4、46、50)の前記前方側のカートリッジヘッド(10、64、74)に設けられ、前記粉末(1)は前記受液部に入ることができないことを特徴とする、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記受液部は、親水性のスポンジ構造であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記粉末(1)は、前記内部の前記前方部分に押し込まれることを特徴とする、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記粉末(1)は、前記内部の前記前方部分で圧力下にあることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記カートリッジ(3、4)は、互いに固定して連結される、具体的には、互いにねじ込まれる、前方カートリッジ部分(3)および後方カートリッジ部分(4)から構成されることを特徴とする、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記前方カートリッジ部分(3)にカートリッジヘッド(10)が締結されることを特徴とする、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記カートリッジ(3、4、46、50)には、第1の出発成分としてモノマー液(2)が収容され、第2の出発成分として粉末(1)が収容され、前記出発成分から、前記骨セメントドウ(44)が前記カートリッジ(3、4、46、50)内で混合され、前記粉末(1)には親水性添加剤が分散され、前記添加剤を用いると、前記モノマー液(2)が前記粉末(1)全体にわたって分散可能であることを特徴とする、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記骨セメントが事前に重合して前記粉末(1)に前記モノマー液(2)をさらに分散させるのを妨害することなく、前記モノマー液(2)が前記粉末(1)全体にわたって分散可能であることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
粉末は、ふるい分級が100μm未満の少なくとも1つの粒子状のポリメチルメタクリレートまたはポリメチルメタクリレートコポリマーと、反応開始剤と、メチルメタクリレートに溶解しない少なくとも1つの粒子状または繊維状の添加剤とを含有し、前記添加剤は、室温で添加剤1グラム当たりメチルメタクリレート0.6g以上の吸収能力を有することを特徴とする、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記カートリッジ(3、4、46、50)の内部は、粉末(1)は透過しないが気体は透過する接続部によって、骨セメントアプリケータの周囲環境に接続されることを特徴とする、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記接続部は、前記粉末(1)は透過しないが気体は透過する、ストッパ(8、54)および/またはプラスチックリング(58、76)および/または前記カートリッジ(3、4、46、50)の壁の通路によって形成されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨セメントドウを形成するために骨セメントの出発成分を閉止されたカートリッジ内で混合可能にする、骨セメントを混合および施用するカートリッジシステムに関する。
【0002】
本発明は、骨セメントを施用する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリメチルメタクリレート(PMMA:polymethyl methacrylate)骨セメントを調べると、Charnley氏の先駆的な研究(非特許文献1)にさかのぼることができる。PMMA骨セメントは液体モノマー成分および粉末成分から構成される。モノマー成分は通常、モノマーのメチルメタクリレートおよびその中に溶解された活性化剤(N,N‐ジメチル‐p‐トルイジン)を含有する。骨セメント粉末とも称される粉末成分は、1つまたは複数のポリマーと、X線不透過物質および反応開始剤の過酸化ジベンゾイルとを含み、1つまたは複数のポリマーは、メチルメタクリレートと、スチレン、メチルアクリレート、または同様のモノマーなどのコモノマーとをベースに、重合、好ましくは、懸濁重合によって生成される。粉末成分がモノマー成分と混合されると、メチルメタクリレートの粉末成分のポリマーが膨張することによって、塑性変形可能なドウ(実際の骨セメント)が作られ、通常は骨セメントドウと称される。粉末成分がモノマー成分と混合されると、活性化剤のN,N‐ジメチル‐p‐トルイジンが過酸化ジベンゾイルと反応してラジカルが形成される。形成されたラジカルはメチルメタクリレートのラジカル重合を開始する。ドウが凝固するまでメチルメタクリレートの重合が継続するのと共に、骨セメントドウの粘度が上昇する。
【0004】
ポリメチルメタクリレート骨セメントに最も頻繁に用いられるモノマーはメチルメタクリレートである。レドックス開始剤系は通常、過酸化物と、促進剤と、任意選択で還元剤とから構成される。ラジカルの形成は、レドックス開始剤系の全成分が相互作用するときにだけ起こる。したがって、レドックス開始剤系の成分は、ラジカル重合を誘発できないように別々の出発成分に用意される。そのときに、組成が適切な場合に出発成分は収納が安定する。2つの出発成分が混合されて骨セメントドウが形成されるときに初めて、モノマー液および粉末として予め別々に収納されたレドックス開始剤系の成分が反応し、少なくとも1つのモノマーのラジカル重合を誘発するラジカルが形成される。その後、ラジカル重合によって、モノマーを消費しながらポリマーを形成し、セメントドウが硬化する。
【0005】
PMMA骨セメントは、へらを用いてセメント粉末をモノマー液と混合することによって、適切な混合容器内で混合することができる。その際、骨セメントドウに気泡が捕捉される恐れがあり、気泡が捕捉されると、硬化した骨セメントの機械的特性に悪影響を有することがある。
【0006】
骨セメントドウへの気泡の混入を避けるために、多数の真空セメント混合システムが記載されており、例として特許文献1~14について言及される。
【0007】
特許文献15は、椎骨形成術のためのチキソトロピック性骨セメントを開示しており、チキソトロピック性の性質はいくつかの添加剤を用いることで生み出される。
【0008】
セメント混合技術の発展は、セメント粉末とモノマー液の両方が混合システムの別々の区画に既に詰め込まれており、セメント施用の直前になって初めてセメント混合システム内で互いに混合される、セメント混合システムによってもたらされる。こうした種類の閉止されたフルプリパック式混合システムは特許文献16~22によって提案されてきた。
【0009】
特許文献23は、骨セメントドウを生成するのに必要な出発成分が既に収納混合装置に収納され、収納混合装置内で一緒にして混合できる、フルプリパック式混合システムとして、収納混合装置を開示する。その収納混合装置は、セメントカートリッジを閉止するための2部構成の排出ピストンを有する。ここでは、気体透過性の殺菌ピストンと気体不透過性のシールピストンとの組み合わせが用いられる。閉止された真空混合システムのその原理は、Heraeus Medical GmbH社によって生産および販売される、PALACOS(登録商標)PRO閉止型セメント混合システムで実現される。
【0010】
以前から知られたどのフルプリパック式混合システムを使用する場合にも、医療ユーザは、混合された骨セメントドウが生成され、それを施用できるまで、連続した所定の順番でその装置にいくつかのプロセスステップを実行しなければならない。それらプロセスステップが乱れると、混合システムの不具合を引き起こすことがあり、したがって、手術手順に混乱をもたらす恐れがある。したがって、ユーザによるエラーを避けるために、コストをかけて医療ユーザを訓練することが必要になる。
【0011】
特許文献24は、骨セメント粉末がカートリッジに収納され、セメント粉末がカートリッジの体積全体を満たし、セメント粉末の粒子間の隙間が、カートリッジに収納されたセメント粉末によって骨セメントドウを生成するのに必要なモノマー液の体積に相当する体積である、装置を提案する。こうした装置は、真空の作用によってモノマー液が上方からカートリッジに導入され、そのために、カートリッジの下側の真空連結部に真空が適用されるように構築される。このように、モノマー液はセメント粉末を通して引っ張られ、セメント粒子間の隙間に配設された空気がモノマー液に置き換えられる。ここでは、攪拌器による、形成されたセメントドウの機械的混合は省略される。
【0012】
そのシステムの不利な点は、モノマー液によって急速に膨張するセメント粉末がその装置で混合できないことである。というのは、モノマー液がセメント粉末に約1から2cm浸入すると、急速に膨張するセメント粉末粒子がゲルタイプのバリアを形成し、全体としてセメント粉末を通るモノマー液の浸入を妨げるからである。真空の作用下では、モノマー液がセメント粉末に完全に浸入した後にモノマー液が真空連結部を介して吸い取られる可能性があることを排除することもできない。そのとき、ラジカル重合によって硬化するために利用できるモノマー液が十分でないか、または骨セメントの粘度にも起きる可能性があるように混合比が望ましくない状態に修正される可能性がある。それに加えて従来のセメント粉末は、表面エネルギーが異なるせいでセメント粒子がメチルメタクリレートによって不十分にしか濡らされないという現象も示す。このように、メチルメタクリレートは、比較的ゆっくりとしかセメント粉末に侵入しない。モノマー液よりも明らかに軽い空気が、真空連結部の方向に下向きに移動するのではなく、重力のせいでセメント粉末内を上に向かって移動するので、セメント粉末粒子間に閉じ込められる空気がモノマー液によって上から下に置き換えられるようになることも課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第6,033,105(A)号
【文献】米国特許第5,624,184(A)号
【文献】米国特許第4,671,263(A)号
【文献】米国特許第4,973,168(A)号
【文献】米国特許第5,100,241(A)号
【文献】国際公開第99/67015(A1)号
【文献】欧州特許出願公開第1 020 167(A2)号
【文献】米国特許第5,586,821(A)号
【文献】欧州特許出願公開第1 016 452(A2)号
【文献】独国特許出願公開第36 40 279(A1)号
【文献】国際公開第94/26403(A1)号
【文献】欧州特許出願公開第1 005 901(A2)号
【文献】欧州特許出願公開第1 886 647(A1)号
【文献】米国特許第5,344,232(A)号
【文献】欧州特許出願公開第2 730 296(A2)号
【文献】欧州特許出願公開第0 692 229(A1)号
【文献】独国特許第10 2009 031 178(B3)号
【文献】米国特許第5,997,544(A)号
【文献】米国特許第6,709,149(B1)号
【文献】欧州特許出願公開ドイツ語翻訳第698 12 726(T2)号
【文献】欧州特許出願公開第0 796 653(A2)号
【文献】米国特許第5,588,745(A)号
【文献】独国特許第10 2009 031 178(B3)号
【文献】国際公開第00/35506(A1)号
【非特許文献】
【0014】
【文献】Charnley,J.著「Anchorage of the femoral head prosthesis of the shaft of the femur」The Journal of Bone and Joint Surgery第42巻(1960年)p.28‐30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、従来技術の不利な点を克服することにある。具体的には、本発明の目的は、ポリメチルメタクリレート骨セメントの出発成分を混合し、その後、排出することにも適した、好ましくはさらに、収納することにも適した、骨セメントアプリケータのための閉止システムおよび方法を開発することにある。閉止システムは、カートリッジを外に向かって閉止するものとし、そうすることで、カートリッジの閉止された内部において骨セメントドウが混合可能である。しかし、同時に、ユーザが閉止具をできるだけ簡単にできるだけ少ない追加のプロセスステップで開くことが可能であるものとし、または、好ましくは、そのための追加のプロセスステップが必要ないものとする。
【0016】
骨セメントアプリケータは、骨セメント粉末または骨セメント粉末を含有する粉末と、少なくとも1つのモノマー液とを、互いに別々の空所に収容するものとし、そのモノマー液は、好ましくは、長期間であってもモノマー液を骨セメントアプリケータに収納できるような容器に配置されるものとする。閉止システムは、粉末粒子は透過しないが、殺菌のために一般的なエチレンオキシドなどの気体は透過するように、セメント粉末が収納される空所を閉止するものとする。粉末の収納に使用される空所は、セメント粉末をモノマー液と混合するためにも使用されるものとする。これは、セメント成分を混合した後の空所には骨セメントドウが配設されることを意味する。可能であれば、閉止システムは外側から開口できない。可能であれば、医療ユーザとポリメチルメタクリレート骨セメント粉末およびモノマー液との間の接触はできない。
【0017】
開発される閉止システムを用いることで、ポリメチルメタクリレート骨セメントを収納、混合する、および排出する骨セメントアプリケータも開発される。骨セメントアプリケータの取扱いは、不正確に行われる組立てステップによるユーザのエラーを根本的に避けるように、可能な限り単純化されるものとする。医療ユーザは、包装から取り出した後に骨セメントアプリケータを押出し器具に連結するものとし、その後、アプリケータを作動させるものとする。追加の組立てステップおよびプロセスステップは、骨セメントアプリケータの構造により、可能な限り避けられるものとする。骨セメントアプリケータは、骨セメントアプリケータの収納中の意図しない出発成分の混合が不可能になるように、セメント粉末とモノマー液とを互いに別々の区画に安全に収納することを可能にするものとする。骨セメントアプリケータは気体のエチレンオキシドによる殺菌を可能にするものとする。骨セメントアプリケータに収納されるセメント粉末にはエチレンオキシドがアクセス可能でなければならない。骨セメントアプリケータは、骨セメントアプリケータを押出し器具に押込み係合連結または摩擦係合連結した後に、押出し器具が作動することによって押出し器具のラムが骨セメントアプリケータに作用して、骨セメントアプリケータを起動および駆動するように、手術室で標準的に以前から使用される手動駆動式の押出し器具を用いて起動できるものとする。モノマー液は、可能であれば、外側から手動で移動する必要があるミキサを使用せずに、セメント粉末と混合されるものとする。
【0018】
ポリメチルメタクリレート骨セメント粉末が、医療ユーザによって骨セメントアプリケータ内のモノマー液と一緒にして混合されることが、2つの出発成分が医療ユーザと接触することなく可能であるものとする。開発される骨セメントアプリケータは、好ましくは、フルプリパック式混合システムである。
【0019】
カートリッジまたは閉止具の可能な限り最も単純な開口を可能にする方法も提供するものとする。
【0020】
経済的に製造でき、医療用骨セメントを混合し骨セメントの出発成分を収納するために確実に機能する、骨セメントアプリケータ、ならびに、骨セメントを混合する方法も、提供するものとし、それらアプリ―ケータおよび方法によって、出発成分を混合するために可能な限り最も単純な手動の動作を実装できる。
【0021】
混合材料としてのポリメチルメタクリレート骨セメントの第1の出発成分は粉末であるものとし、第2の出発成分は、モノマー液の形態で存在するものとする。骨セメントの2つの出発成分は、好ましくは、フルプリパック式混合システムに別々に収納されるものとし、骨セメントアプリケータの使用によって確実に一緒にできるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の目的は請求項1に記載の骨セメントアプリケータおよび請求項17に記載の方法によって達成される。本発明による特に有利な変更形態が従属請求項によって特許請求される。
【0023】
それゆえ、本発明の目的は、骨セメントを混合および施用する骨セメントアプリケータであって、アプリケータによって、骨セメントの出発成分が、骨セメントドウを形成するために、閉止されたカートリッジ内で混合可能であり、カートリッジは、排出開口部を含む複部構成の閉止システムを有し、閉止システムの少なくとも2つの部分が、混合された骨セメントドウの移動によって押しやられることによって、互いに対して移動可能であり、排出開口部は、閉止システムの少なくとも2つの部分の互いに対する移動によって開口され、混合された骨セメントドウの移動は、骨セメントドウへの圧力によって引き起こすことができる、骨セメントアプリケータによって達成される。
【0024】
カートリッジは、閉止システムの開口によって外に向かって開口される。閉止システムは、骨セメントドウの推進力によって開口可能であり、そうすることで、閉止具を開口するための追加の推進力が不要になる。
【0025】
本発明によれば、排出開口部を閉止する閉止具だけが本事例の閉止システムと解釈されるのではなく、本発明の意味の範囲内では、閉止システムの動作原理を定める閉止システム全体が閉止システムと解釈される。例えば、カバー、ストッパ、またはバルブのほかに、閉止システムには、閉止される排出開口部および排出開口部を囲繞する少なくとも1つの壁も含まれる。
【0026】
好ましくは、少なくとも2つの部分が互いに対する移動を完了した後の、排出開口部を閉止する部分と排出開口部との距離が少なくとも5mmであることが可能である。その距離は、排出開口部を閉止する部分が骨セメントアプリケータに残る場合に、骨セメントドウの流動抵抗ができるだけ小さくなるが、移動中のストロークも大きくなり過ぎないように、好ましくは、6mmと10mmとの間にすべきである。
【0027】
骨セメントドウはその後、閉止システムを開口するのに使用される圧力と同じ圧力を骨セメントドウに用いることで、開口された排出開口部を通して排出可能になることが可能である。
【0028】
このように、閉止システムも開口でき、完成した骨セメントドウをカートリッジから外に押しやることもできる、単一の推進力だけを骨セメントアプリケータが備えることで十分である。
【0029】
閉止システムは、排出開口部を有する壁およびストッパを有し、排出開口部はカートリッジの周囲環境に接続され、ストッパは、カートリッジが閉止されているときに排出開口部を閉止し、排出開口部を有する壁が骨セメントドウの圧力によって移動可能であり、ストッパがカートリッジに対して固定されるか、または、ストッパが骨セメントドウの圧力によって移動可能であり、壁がカートリッジに対して固定されるかもしくは固定可能であることがさらに可能である。
【0030】
ストッパおよび壁は、そのときに、閉止システムの2つまたは少なくとも2つの部分を形成する。本明細書では、簡単に経済的に実現でき不具合が比較的生じにくい閉止システムが提供される。さらに、骨セメントドウを外に押しやるために使用される力は、カートリッジを開口するためにこのタイプの閉止システムと共に効果的に使用することもできる。
【0031】
排出開口部を有する排出チューブが、カートリッジに対して移動可能なように装着され、排出チューブを閉止するストッパが、カートリッジに固定して連結され、排出チューブは、骨セメントドウへの圧力によってストッパに対して移動可能であり、したがって、開口可能であることがさらに可能である。
【0032】
本明細書では、特に良好に使用できる骨セメントアプリケータが提供され、その骨セメントアプリケータは、排出チューブの移動に基づいて、骨セメントアプリケータの使用の準備ができたこと、および排出チューブから骨セメントドウが排出されつつあることを、ユーザが明確に視認できるという利点を有する。後者は、排出チューブの移動が再び終了したという事実に基づいて確認することもできる。排出チューブおよびストッパは、本事例では、閉止システムの一部である。
【0033】
本明細書では、骨セメントドウのうちのカートリッジベースを向く側への圧力によって、排出チューブをカートリッジベースから離れる方向に押すことが可能であり、そうする際に、ストッパは、排出チューブから解除され、したがって、カートリッジを開口することが可能である。
【0034】
したがって、崩壊しにくい単純な閉止システムを構築することができ、この閉止システムではストッパは骨セメントアプリケータから外に落ちることがない。したがって、骨セメントアプリケータから切り離される閉止システムの部分はない。
【0035】
本発明の好ましい発展形態によって、閉止システムは、気体透過性であるが粉末および液体は透過しない壁を備え、その壁は、骨セメントドウの圧力が壁に作用し、したがって、ストッパもしくはカバーを壁と共にカートリッジに対して移動し、そうすることで、カートリッジを開口するか、または、したがって、排出開口部を壁と共に、カートリッジに対して移動し、そうすることで、カートリッジに固定して連結されるストッパを排出開口部から外すようにカートリッジ内に配置され、壁は好ましくは多孔性プレートを備えることが可能である。
【0036】
この構造の結果、カートリッジの内部は、閉止システムが閉止されている場合でも、カートリッジの内部から空気を抜き、その後、殺菌ガスを供給することによって、骨セメントアプリケータの使用前にエチレンオキシドなどの殺菌ガスで殺菌することができる。
【0037】
本発明によれば、このように、気体透過性であるが粉末粒子は透過しない通気孔プラスチック層を殺菌ピストンに配置することができ、殺菌ピストンは、壁を備えるかまたは壁によって形成され、殺菌ピストンの上側を殺菌ピストンの下側に気体を透過するように接続し、プラスチック層は好ましくはプレートとして形成される。気体のエチレンオキシドは、殺菌のためにカートリッジヘッドの供給孔を通り抜けて殺菌ピストンに到達でき、その後、粉末は透過しない通気孔プラスチック層または通気孔リングシールを通ってカートリッジの前方内部に入ることができ、粉末を殺菌することができる。粒子は透過しない殺菌ピストンの通気孔プラスチック層によって、または粉末は透過しない通気孔リングシールによって、粉末の粒子は、骨セメントアプリケータを殺菌および収納する間に、さらに輸送する間にも、カートリッジの前方内部から出口を通り抜けることが防止される。殺菌が行われると、エチレンオキシドは、脱気中に、前方内部から殺菌ピストンの通気孔プラスチック層およびカートリッジヘッドの供給孔を通って周囲環境に出ることができる。
【0038】
本発明によれば、カートリッジは、骨セメントドウが混合される筒状内部を有し、閉止システムを開口し開口されたカートリッジから骨セメントドウを外に押しやる、骨セメントドウへの圧力は、カートリッジの内部において軸に沿って移動可能なように装着される排出ピストンを、閉止システムの方向に、具体的には、カートリッジのカートリッジヘッドの方向に、直線的に進めることによって発生可能であり、閉止システムはカートリッジの前方側に配設されることが可能である。
【0039】
骨セメントドウを外に押しやるために使用される排出ピストンの移動は、本明細書では、閉止システムを開口するためにも使用することができる。このように、本発明による骨セメントアプリケータは、骨セメントを外に押しやるために、さらに、骨セメントの出発成分を混合する間は閉止されているカートリッジまたは排出開口部を開口するために、排出ピストンに単方向に作用する単一の推進力だけを必要とする。
【0040】
排出ピストンは、カートリッジの内部において軸に沿って移動可能なピストンであり、そのピストンによって、骨セメントドウを内部からカートリッジの外に押しやることができる。骨セメントドウは、モノマー液を粉末と混合することによって生成される。
【0041】
特に好ましい発展形態によれば、骨セメントドウを混合するために、カートリッジ内の骨セメントの第1の出発成分としてのモノマー液を、搬送ピストンによって第2の出発成分としての粉末中に押すことが可能であり、搬送ピストンは、閉止システムの方向に押され、カートリッジの筒状内部において軸に沿って移動可能なように配置されることが可能である。
【0042】
管状のカートリッジの内部は、筒状の形状を有するか、または筒状である。筒状の形状は、カートリッジの内部を作り出すことができる最も単純な形状であり、筒状の形状は、排出ピストンおよび/または搬送ピストンの移動をガイドするのに特に最適である。さらに、内部の前方部分および後方部分は、内部が筒状の形状を有する場合に、移動可能なピストンによって、特に任意の位置で外に向かってかつ互いに対して簡単にシールすることができる。
【0043】
筒状の形状は、形状の観点から、任意の端部面形状を有する概略的に筒状の形状、すなわち、円形の端部面を有する筒だけではないことを意味すると理解すべきである。したがって、内部の範囲を定める内壁は、任意の端部面形状を有する筒とすることができ、カートリッジの側方の面も、必要に応じて、任意の端部面形状、言い換えれば、円形でも丸形でもない端部面を有する筒とすることもできる。しかし、本発明によれば、回転対称の筒状の形状、特に円形の端部面は、第1のカートリッジの内部とって好ましい。というのは、それら形状は、製造が最も単純であり、排出ピストンおよび/または搬送ピストンが、内部を軸に沿って移動される、すなわち、内部を長手方向に移動されるときに、内部で動けなくなることがより難しいからである。ピストンの移動中の、内部の内壁と排出ピストンとの間、さらに、内部の内壁と搬送ピストンとの間から漏れる可能性は、さらに起こりにくくなる。
【0044】
排出ピストンおよび/または搬送ピストンがカートリッジの筒状内部を軸に沿って移動可能であることは、筒状内部の筒の軸に沿って軸方向に移動可能であることを意味する。
【0045】
本発明による骨セメントアプリケータは、内部の前方部分に混合ユニットが設けられないことを特徴とする。外部から操作できる混合羽根などの混合ユニットは、通常、粉末をモノマー液と混合するために必要である。本発明による骨セメントアプリケータにはこれは必要ない。特に親水性添加剤が粉末に分散される場合に混合ユニットを避けることができ、その添加剤を用いるとモノマー液も粉末に分散されることになる。粉末は、さらに、X線不透過物質および/または抗生物質などの薬剤活性物質を含有することもできる。
【0046】
カートリッジの内部の前方部分には、粉末が収容され、カートリッジの内部の後方部分には、モノマー液を収容する容器が配置され、容器と粉末との間に排出ピストンが配置され、閉止システムの反対側のカートリッジベースに搬送ピストンが配置されることがさらに可能である。
【0047】
本明細書では、搬送ピストンは従来の押出し器具によって外側から押しやることができ、従来の押出し器具によって、ラムが搬送ピストンをカートリッジベースから単方向に押し、したがって、まずモノマー液用の容器を開口し、モノマー液を粉末に押し込むことができ、そうすることで、内部の前方部分において骨セメントドウが混合される。その後、搬送ピストンが排出ピストンを押し、そうすることによって、内部の前方部分の骨セメントドウが閉止システムを押して、これを開口し、その後、骨セメントドウは開口した排出開口部を通して外に押しやられる。このことの利点は、セメントカートリッジ用の従来の押出し器具によって行われるようなこれらステップ全てに、単一の線形の推進力だけが必要であるということである。
【0048】
モノマー液の必要体積に応じてカートリッジの内部の前方部分に2つ以上の容器を配置することも可能である。
【0049】
排出ピストンにおよび/または排出ピストンと内部の内壁との間に、導管手段として少なくとも1つの供給孔が設けられ、その供給孔によって、内部の前方部分と内部の後方部分とが互いに接続されることも可能である。本明細書では、粉末は透過せずモノマー液および気体は透過するフィルタを、少なくとも1つの供給孔に配置することができる。
【0050】
本明細書では、搬送ピストンを排出ピストンの方向に押すことによって、カートリッジの閉止された内部のモノマー液を内部の後方部分から、粉末が配設される内部の前方部分に移すことを可能にすることが達成される。
【0051】
あるいは、導管手段は1つまたは複数のラインとすることもでき、ラインは、カートリッジの外部にまたはカートリッジ壁内に配置され、カートリッジ壁の供給孔または開口部によってカートリッジの内部の前方部分を内部の後方部分に接続する。この場合、排出ピストンは通らない。この場合、モノマー液は、これらラインを通して内部の後方部分から前方部分に押すことができ、エチレンオキシドなどの気体は、これらラインを通って内部の前方部分から後方部分に(またはその逆に)流れることができる。
【0052】
好ましくは、少なくとも1つの供給孔が粉末は透過しないがモノマー液は透過するフィルタによってカバーされることが可能である。こうしたフィルタは有孔フィルタとも称される。したがって、粉末が内部の後方部分に入ることを防止でき、そのため、モノマー液との粉末の早まった反応を防止することができる。粉末は透過せずモノマー液は透過するフィルタは、特に好ましくは、排出ピストンと粉末との間に配置され、そうすることで、粉末は少なくとも1つの供給孔に入ることができず、その供給孔はモノマー液との早まった反応の後に詰まることがない。
【0053】
排出ピストンおよび搬送ピストンを有する本発明による骨セメントアプリケータの場合、搬送ピストンを排出ピストンの方向に進めることによって、容器は開口可能であり、モノマー液は粉末中に押し込むことが可能であり、その後、排出ピストンを、搬送ピストンによってカートリッジの前方側の方向に押すことが可能であることが可能である。
【0054】
本明細書では、骨セメントを混合および排出するために必要な骨セメントアプリケータのプロセスステップ全てを、搬送ピストンの単方向の移動だけで引き起こすことができることが達成される。このように、容器を開口すること、粉末にモノマー液を押し込むこと、粉末とモノマー液から混合された骨セメントドウをカートリッジから排出することなどのプロセス全てを引き起こすかまたは行うために、線形の推進力が搬送ピストンに作用できるだけで十分である。本明細書では非常に単純な骨セメントアプリケータが提供され、その骨セメントアプリケータを用いると、骨セメントを生成および施用でき、同時に、骨セメントの出発成分、具体的には、セメント粉末を含有する粉末およびモノマー液を収納することができる。
【0055】
この目的で、搬送ピストンを閉止システムの方向に押すことによって、排出ピストンを閉止システムの方向に押圧可能であり、したがって、内部の前方部分において粉末およびモノマー液から形成される骨セメントドウを、排出開口部を通して押し出すことができることも可能である。
【0056】
モノマー液用の容器は、搬送ピストンの移動によって壊して開口できるガラスアンプルもしくはプラスチックアンプルであるか、またはモノマー液用の容器は、搬送ピストンの移動によって破って開口できるか、もしくは刺して開口できるか、もしくは裂いて開口できるフィルムバッグであることも可能である。
【0057】
この利点は、骨セメントアプリケータにおいてこの種の容器に特に長期間にわたってモノマー液を収納できることである。同じ目的で、フィルムバッグを金属コーティングで、具体的には、アルミニウムで被覆することが可能である。ガラスアンプルには特に長い時間モノマー液を収納できるので、容器は、特に好ましくは、ガラスアンプルである。
【0058】
排出ピストンが内部の前方部分と後方部分との間でカートリッジと係止できるように、排出ピストンにデテント手段が配置され、この係止は、容器が開口されるときに生じる力および搬送ピストンによってモノマー液に加えられる圧力によって解除することができないが、搬送ピストンから直接的に排出ピストンに作用する圧力によって解除可能であることも可能である。
【0059】
本明細書では、前方に進めることができるラムを有する従来の押出し器具によって、搬送ピストンが押しやられることと、モノマー液を介して衝撃の形態で排出ピストンに伝達されることがある異常な圧力衝撃が搬送ピストンに加えられないことが想定される。この種の衝撃の際には、排出ピストンは内部から外れることもある。本発明による方策の結果、まず、搬送ピストンを進めることによって容器を開口でき、その後、流出するモノマー液を搬送ピストンによって、カートリッジの内部の前方部分に、すなわち、粉末に押し込むことができ、排出ピストンがカートリッジおよび内部に対してその位置を維持することが達成される。搬送ピストンが排出ピストンを直接的に(すなわち、容器の各部分または充填材など、それらの間に残る固体から離れる方に)押して前記排出ピストンを押しやることで、排出開口部を開口し、その後、カートリッジの前方部分から、開口された排出開口部を通して骨セメントドウを押すためには、モノマー液の大部分が粉末に押し込まれ、したがって、カートリッジの内部の前方部分に骨セメントドウが存在するときに初めて、そのときに排出ピストンによって骨セメントドウを閉止システムに向かって押すことができる。このように、係止を解除する力は、開口に必要な力よりも大きく、モノマー液の容器を破壊する必要がある場合は、やはりその破壊する力よりも大きい。例えば、容器が、押出し動作のためにその体積を十分に有意に低減するために大幅に圧縮し、したがって、破砕しなければならないガラスアンプルの場合、容器の破壊が好都合なことがある。つまり、モノマー液用の容器全体が、搬送ピストンの軸に沿った移動によって圧縮され、同時に、モノマー液がカートリッジの内部の前方部分または粉末に押し込まれ、そのときに初めて、排出ピストンのデテント要素が、排出ピストンへの搬送ピストンの圧力によって解除され、排出ピストンは、形成された骨セメントドウを閉止システムまたは排出開口部の方向に押圧する。モノマー液用の容器としてプラスチックバッグが用いられる場合は、デテント手段を省略することができる。
【0060】
内部の後方部分のうちの容器の隣に少なくとも1つの充填材が配置され、具体的には、容器と排出ピストンとの間の領域に少なくとも1つの充填材が配置され、充填材は、好ましくは、発泡材料でありかつ/またはプラスチックビーズによって形成されることが可能である。
【0061】
充填材は、容器から流出するモノマー液に取って代わるために用いられる。このように、内部の後方部分のまたは容器と排出ピストンとの間の空の体積は、充填材によって低減される。モノマー液が押し出されると、こうした空の体積は、モノマー液で満たさなければならず、カートリッジの内部の後方部分に残る。この領域の空の体積を低減することで、このようにより少量のモノマー液を使用することが可能になる。これは、コストおよびモノマー液の化学的特性が理由で望ましい。発泡材料の使用は、ガラスアンプルが搬送ピストンによって開口されるときに生成されるガラス破片を発泡材料中に押すことができ、そのときに搬送ピストンの移動がブロックされないので、具体的には、モノマー液用の容器としてガラスアンプルを使用する場合に特に好ましい。
【0062】
本発明によれば、ガラスアンプルと排出ピストンとの間の空の体積においてモノマー液用の容器としてのガラスアンプルのヘッドの周りに配置される発泡材料リングが充填材として使用される場合が特に好ましい。
【0063】
網、ふるい、または破片シールドが、粉末とモノマー液用の容器との間に、好ましくは、排出ピストンと容器との間に配置されるか、または排出ピストンの供給孔に配置されることがさらに可能である。
【0064】
そのために、網、ふるい、または破片シールドは、排出ピストンと容器との間もしくは排出ピストンと粉末との間、または、排出ピストンの少なくとも1つの開口部にもしくは排出ピストンと内部の内壁との間の少なくとも1つの開口部に配置することができる。
【0065】
容器の壊された断片または容器の破片は、網、ふるい、または破片シールドによって保持することができる。モノマー液用の容器の材料による骨セメントドウの汚染は本明細書では防止される。
【0066】
搬送ピストンがカートリッジベースにおいてカートリッジの内部を、具体的には耐圧かつ液密になるように閉止することも可能である。
【0067】
このように、モノマー液が、粉末に押し込まれるときに、カートリッジの後方側で漏出できないことが達成される。そのために、例えば、排出ピストンをカートリッジの内壁に対してシールする周囲シールが2つ使用される。例えば、シールはゴム製とすることができる。
【0068】
排出ピストンがカートリッジの内部の内壁に対してシールされることも可能である。ゴム製の周囲シールはそのために使用することもできる。
【0069】
容器のモノマー液の体積は、カートリッジの内部の前方部分の粉末粒子間の空気で満たされた隙間の体積と少なくとも同じ程度の大きさであり、好ましくは、内部の前方部分の粉末粒子間の空気で満たされる隙間および搬送ピストンが排出ピストンに当たるときの内部の後方部分の体積から、容器の材料の体積および当てはまる場合は内部の後方部分の充填材の体積を引いた体積と少なくとも同じ程度の大きさであるかまたは全く同じ大きさであることがさらに可能である。
【0070】
このように、所望の粘度の骨セメントを生成するために正確な量のモノマー液が骨セメントアプリケータに確実に準備して保持される。このように、粉末は全て、必要な体積のモノマー液で確実に濡れ、均質なセメントドウを確実に生成できる。
【0071】
「全く同じ大きさ(exactly the same size as)」という表現は、この文脈では、好ましくは、差が最大10%以内にあるという意味である。
【0072】
内部の前方部分の体積が、粉末粒子および内部の後方部分から射出されるモノマー液の全体積に少なくとも等しいことも可能である。
【0073】
本発明による骨セメント施用の好ましい発展形態によれば、余分のモノマー液のための受液部が、カートリッジの前方端部に、またはカートリッジの前方側のカートリッジヘッドに設けられ、粉末は受液部に入ることができず、受液部は、好ましくは、親水性のスポンジ構造であることが可能である。
【0074】
したがって、骨セメントドウが所望の粘度に達し、収容するモノマー液が過剰にならないことが達成される。このように、モノマー液は、粉末中に導入されるモノマー液の量に関する不確実性を補償するために、わずかに余分に用いることができる。受液部は閉止システムの一部とすることもできる。
【0075】
好ましい発展形態によれば、粉末は、内部の前方部分に押し込まれ、好ましくは、内部の前方部分で圧力下にあることが可能である。
【0076】
粉末のセメント粒子間の隙間が押し込まれた粉末の25体積%と40体積%との間に相当することが可能である。
【0077】
粉末を押し込むことによって、粉末粒子の配置は非常に密度が高くなるので、粉末に分散される親水性添加剤が低濃度であってもモノマー液を粉末に案内し分散し、したがって、モノマー液が粉末に片側からのみ押し込まれるだけで十分になる。
【0078】
気体用開口部が、カートリッジの壁のうちの搬送ピストンのすぐ上方に配置され、内部の後方部分を周囲の外気に接続することがさらに可能である。
【0079】
こうした気体用開口部は、搬送ピストンが排出ピストンの方向に十分に遠くに移動されるとすぐに搬送ピストンによって閉止される。気体用開口部は、好ましくは、モノマー液が内部の後方部分から漏出することを防止するように、搬送ピストンの移動によってモノマー液用の容器が開口される前に閉止される。カートリッジの内部および内容物は、気体用開口部を用いてエチレンオキシドによって殺菌することができる。エチレンオキシドは、一方でカートリッジヘッドを介して、他方で気体用開口部を介して、カートリッジ中に導入することができる。
【0080】
カートリッジの後方側に連結要素が設けられ、その連結要素によって、骨セメントアプリケータは押出し器具に連結可能であることも可能である。押出し器具は、前方に進むことができるラムまたは前方に進むことができるロッドを有し、ラムまたはロッドによって、搬送ピストンをカートリッジの内部においてカートリッジの前方側の方向に押しやることができる。
【0081】
カートリッジは、互いに固定して連結される、具体的には、互いにねじ込まれる、前方カートリッジ部分および後方カートリッジ部分から構成され、好ましくは、前方カートリッジ部分にカートリッジヘッドが締結されることも可能である。
【0082】
本明細書では、本発明によれば、好ましくは、カートリッジの内部の前方部分は、前方カートリッジ部分およびカートリッジヘッドによって、または場合によってはヘッド部分および前方カートリッジ部分によって、範囲が定められることと、モノマー液用の容器が配置される内部の後方部分は、後方カートリッジ部分およびカートリッジベースまたは搬送ピストンによって範囲が定められることとが可能である。
【0083】
カートリッジが2つまたは3つの部分から構成されるので、骨セメントアプリケータを組み立てること、および、出発成分で、好ましくは、粉末およびモノマー液を収容する容器でカートリッジを満たすことも、単純化される。したがって、生産コストも削減することができる。
【0084】
粉末の漏出、開口した容器から出るモノマー液の漏出、および連結部における骨セメントドウの漏出を防止するために、2つのカートリッジ部分、および該当する場合にヘッド部分は、好ましくは、周囲シールによって互いに対してシールされる。
【0085】
カートリッジには、第1の出発成分としてモノマー液が収容され、第2の出発成分として粉末が収容され、それら出発成分から、骨セメントドウがカートリッジ内で混合され、粉末には親水性添加剤が分散され、添加剤を用いると、好ましくは、骨セメントが事前に重合して粉末にモノマー液をさらに分散させるのを妨害することなく、モノマー液が粉末全体にわたって分散可能であることも可能である。
【0086】
本明細書では、モノマー液は、粉末に含有されるセメント粉末とモノマー液との重合が起きてモノマー液のさらなる分散が抑制される前に、粉末内に急速に分散することができる。詳細には、本発明による構造だけが、モノマー液が片側から粉末に押し込まれ、それにもかかわらず、重合によって粉末内のモノマー液のさらなる分散が抑制される前に粉末全体にわたって分散できることを現実に可能にする。
【0087】
添加剤は、好ましくは、粒子状または繊維状の形態である。添加剤は、好ましくは、少なくとも1つのOH基を有する化学物質を含有する。添加剤は、好ましくは、添加剤1グラム当たりメチルメタクリレート少なくとも0.6gの吸収能力を有する。
【0088】
本発明によれば、粉末は、ふるい分級が100μm未満の少なくとも1つの粒子状のポリメチルメタクリレートまたはポリメチルメタクリレートコポリマーと、反応開始剤と、メチルメタクリレートに溶解しない少なくとも1つの粒子状または繊維状の添加剤とを含有し、添加剤は、室温で添加剤1グラム当たりメチルメタクリレート0.6g以上の吸収能力を有することが可能である。
【0089】
この種の粉末は、粉末内にモノマー液を分散するのに特に最適であり、したがって、骨セメントアプリケータは、カートリッジの内部の狭い側であっても片側からモノマー液を押し込むことを可能にする構造を備えることができる。本明細書では、驚くべきことに、この種の粉末、具体的には、本明細書で以下に定める粉末を、モノマー液と、具体的には、本明細書で以下に定めるモノマー液と単に接触させることによって、セメントドウを手作業でまたは技術的な補助器具の助けを用いて混合する必要なしに、ラジカル重合によって単独で硬化する、粘着性のない塑性変形可能な骨セメントドウを生成することが可能になることが分かった。低粘度骨セメントのセメント粉末を形成するために、メチルメタクリレートに溶解せず、室温で添加剤1グラム当たりメチルメタクリレート0.6g超の吸収能力を有する、粒子状または繊維状の添加剤を加えることによって、少なくとも5cmの距離にわたってモノマー液を押し込むことができる、改質された粉末がセメント粉末として得られることが確認された。驚くべきことに、添加剤は、モノマー液によるセメント粉末のぬれも改善する。本明細書では、添加剤は「吸上げ効果(wick effect)」を有し、既に0.1重量%からの非常に少ない量のモノマー液を粉末中に案内する。添加剤は、粉末のポリマー粒子の凝集も遅らせ、そうすることによって、ブロックするゲル層の形成が遅れ、粉末へのモノマー液の浸透が促進される。本明細書では、モノマー液は、粉末に押し込むことができるか、または粉末に吸引することもできる。
【0090】
本明細書では、好ましくは、添加剤がその表面で共有結合したヒドロキシル基を有することが可能である。本発明によれば、添加剤は、好ましくは、微結晶性セルロース、オキシセルロース、デンプン、二酸化チタン、および二酸化ケイ素からなる群から選択することができ、発熱性二酸化ケイ素が特に好ましい。添加剤は、ふるい分級が100μm未満、好ましくは、ふるい分級が50μm未満、非常に特に好ましくはふるい分級が10μm未満の粒子サイズを有する。好ましくは、粉末の全重量に対して0.1から2.5重量%の量の添加剤が粉末に含有されることも可能である。ポリマー粉末が反応開始剤として過酸化ジベンゾイルを含有することがさらに可能である。
【0091】
モノマー液が少なくとも1つのメチルメタクリレートおよび活性化剤を含有することが可能である。さらに、モノマー液が、芳香族アミンの群から活性化剤を少なくとも1つ含有することが可能である。モノマー液が、キノンまたは立体障害フェノールの群からラジカル安定剤を少なくとも1つ含有することも可能である。
【0092】
添加剤がその表面に共有結合したヒドロキシル基を有する場合が有利である。本明細書で、Si‐OH基およびアルコールのOH基が具体的には特に有利である。OH基が表面に配置されるので、添加剤は高い表面エネルギーを有し、そうすることで、メチルメタクリレートによる添加剤の良好なぬれ性が達成される。焼成シリカAerosil(登録商標)380およびAerosil(登録商標)300が特に適している。さらに、ゾルゲル法によって添加剤として生成される二酸化ケイ素を用いることも可能である。
【0093】
本発明によれば、カートリッジの内部は、粉末は透過しないが気体は透過する接続部によって、骨セメントアプリケータの周囲環境に接続されることが可能である。本明細書では、特に好ましくは、その接続部は、粉末は透過しないが気体は透過する、ストッパおよび/またはプラスチックリングおよび/またはカートリッジの壁の通路によって形成されることを提供することができることが可能である。
【0094】
本明細書では、カートリッジの内部は、エチレンオキシドなどの殺菌ガスを用いて殺菌することができる。気体透過性であるが粉末は透過しない別の通路がカートリッジの内部に設けられる場合が特に好ましい。そのときに、エチレンオキシドは、カートリッジの内部および粉末を通って流れることができ、したがって、カートリッジの内部および粉末の完全な殺菌を達成することができる。この目的で、気体透過性かつ粉末不透過の接続部、および別の気体透過性かつ粉末不透過の通路も、好ましくは、カートリッジ内で互いに反対側に配置される。
【0095】
本発明が取り組む目的は、骨セメントを施用する方法であって、閉止システムによって閉止されたカートリッジ内の骨セメントドウに圧力が加えられ、その圧力によって、骨セメントドウから伝達される力が、カートリッジに対して移動可能な閉止システムの部分に加えられ、そうすることで、閉止システムのその部分がカートリッジに対して移動され、閉止システムのその部分の移動によってカートリッジが開口し、同じ圧力を用いて、開口されたカートリッジから外に骨セメントドウが押しやられる方法によっても達成される。
【0096】
本明細書では、本方法が本発明による骨セメントアプリケータを用いて実行されることが可能である。
【0097】
さらに、カートリッジにおいて直線的に移動可能な排出ピストンに加えられる力によって、骨セメントドウへの圧力が増大されることが可能である。
【0098】
さらに、閉止システムの移動可能な部分はカバーまたはストッパであり、そのカバーまたはストッパが、カートリッジに対して固定された、排出開口部を有する壁に対して移動されるか、あるいは、閉止システムの移動可能な部分は、排出開口部を有する壁であり、開始位置で排出開口部を閉止するカバーまたはストッパが、カートリッジに対して固定されることも可能である。
【0099】
本明細書では、非常に簡単に実装できる方法が提供される。
【0100】
カートリッジの筒状内部においてカートリッジの前方側の方向に搬送ピストンが移動され、搬送ピストンとカートリッジの前方側との間に排出ピストンが配置され、搬送ピストンと排出ピストンとの間に配置される骨セメントの第1の出発成分としてのモノマー液が、排出ピストンに向かう搬送ピストンの移動によって、骨セメントの第2の出発成分としての粉末を収容する、排出ピストンと前方側との間の内部の前方部分に押し込まれ、したがって、骨セメントドウが生成され、搬送ピストンは排出ピストンに接触し、その後、搬送ピストンは排出ピストンを、カートリッジの前方側の方向に押し、閉止システムは、排出ピストンによって骨セメントドウに加えられる圧力によって開口されることも可能である。
【0101】
その結果、搬送ピストンに作用する単方向の推進力を用いて、出発成分から形成される骨セメントを混合し、閉止システムを開口し、骨セメントドウを外に押しやることができる。
【0102】
骨セメントドウは、粉末に含有されるセメント粉末粒子の、モノマー液によるぬれによって形成される。その後、セメント粉末粒子は、モノマー液によって膨張し、反応開始剤との促進剤の反応によってモノマー液のラジカル重合が開始される。促進剤および反応開始剤は、粉末‐モノマー液システムの一部である。骨セメントドウはこれら化学反応によって形成される。
【0103】
本発明によれば、骨セメントドウがせん断力の適用なしで混合されることが可能である。このことは、添加剤と共に粉末を用いることで達成することができる。
【0104】
本発明によれば、粉末中に移されるモノマー液の質量は粉末の質量の1.5倍と2.5倍との間にあることが可能である。
【0105】
骨セメントドウの粉末とモノマー液との所望の混合比を得るために、本発明によれば、カートリッジの前方側で壁の多孔性フィルタとカートリッジヘッドとの間に余分のモノマー液が受けられることが可能である。そのために、モノマー液は、粉末および骨セメントドウを透過しない多孔性フィルタを通して押される。モノマー液が粉末を通り抜けて壁の位置に至るときに余分のモノマー液を受けることによって、骨セメントドウが軟らかくなり過ぎること、したがって、望ましくない粘度に達することを防止することが可能である。さらに、骨セメントドウの粘度が高くなり過ぎるのを避けるために、排出ピストンと搬送ピストンとの間に残る、さらに排出ピストンの通路に残る、モノマー液の残渣によるロスを補償するために、モノマー液が余分に存在することが可能である。
【0106】
搬送ピストンを排出ピストンの方向に移動することによって、カートリッジの内部において搬送ピストンと排出ピストンとの間に配置されるモノマー液用の容器が開口され、搬送ピストンと排出ピストンとの間の容器としてのガラスアンプルもしくはプラスチックアンプルが破砕されるか、または、容器としてのフィルムバッグが破って開口されるか、もしくは刺して開口されるか、もしくは裂いて開口され、その後、モノマー液がフィルムバッグから押し出されることも可能である。
【0107】
本明細書では、本方法は、出発成分、具体的には、モノマー液を長期間であっても事前にカートリッジに収納できるように実行することができる。
【0108】
容器が開口されるときおよびモノマー液が粉末に押し込まれるときは、排出ピストンがカートリッジの内壁と係止され、カートリッジの内壁との排出ピストンの係止は、排出ピストンへの搬送ピストンの圧力によって解除され、その後、搬送ピストンは、排出ピストンをカートリッジヘッドの方向に押すことが可能である。
【0109】
このように、カートリッジから骨セメントドウを押し出すために排出ピストンが搬送ピストンによってカートリッジヘッドの方向に押される前に、モノマー液用の容器がまず開口され、その後、モノマー液が完全にまたは少なくとも所望の量だけ粉末に押し込まれることを保証することができる。
【0110】
本発明による方法は、カートリッジが押出し器具に挿入され、押出し器具のラムが前方に進められ、骨セメントドウへの圧力が、ラムを進めることによって生成され、搬送ピストンが、好ましくは、ラムによって閉止システムの方向に押しやられることを特徴とすることもできる。
【0111】
骨セメントドウを生成するために、骨セメントドウの第1の出発成分としてのモノマー液が骨セメントドウの第2の出発成分としての粉末に、粉末内の親水性添加剤を用いて分散され、粉末は、好ましくは、カートリッジの内部の前方部分において機械的圧力下で圧縮されるかまたは収容されることも可能である。
【0112】
本発明によれば、粉末がカートリッジの内部の前方部分に押し込まれ、カートリッジの内部の前方部分は、好ましくは、内部の前方部分の粉末が機械的圧力下にあり、したがって、圧縮状態に保持されるように、閉止されることが可能である。機械的圧力は、そのようにストレスをかけられたカートリッジ、排出ピストン、およびカートリッジヘッドによって維持される。したがって、圧力を適用する力は、カートリッジ、排出ピストン、およびカートリッジヘッドの弾性または弾性的変形によって加えられる。
【0113】
本発明は、本発明による骨セメントアプリケータおよびその内部に収容される閉止システムを用いると、カートリッジから外に骨セメントドウを押しやるために使用される圧力を、カートリッジまたは閉止システムを加工するためにも使用することが可能になるという驚くべき発見に基づく。本明細書では追加の構成要素を割愛することができ、具体的には、ユーザによる追加のプロセスステップを割愛することができる。排出開口部は、閉止システムへの骨セメントの圧力によって外に向かって開口され、同じ圧力に基づいて、骨セメントドウがカートリッジから流れ出ることができる。本明細書では、閉止具によって、カートリッジが初期段階で閉止されており、そうすることで、カートリッジの内部が周囲環境から隔てられるという利点がもたらされる。したがって、一方で、周囲環境は、閉止システムが開口される前に、カートリッジの内容物で、すなわち、骨セメントドウまたは出発成分で汚染することができず、他方で、内部に収納される出発成分は、より長い期間にわたっても殺菌状態で収納することができる。
【0114】
本発明による骨セメントアプリケータを用いると、好ましくは、混合された骨セメントドウにも圧力を加える同じ力によって他のプロセスステップを行うかまたは引き起こすこともできる。全てのプロセスステップが、特に好ましくは、たった1回の連続した力の適用によって行われる。骨セメントドウを押し出すこと、および閉止システムを開口することに加えて、他のプロセスステップの例には、2つの出発成分から骨セメントドウを混合することと、第2の出発成分としての粉末に第1の出発成分としてのモノマー液を導入することと、モノマー液用の容器を開口することが含まれる。しかし、出発成分の混合は、好ましくは、本発明によれば、詳細には、粉末に分散された親水性添加剤を用いてモノマー液を粉末内に分散することによって達成されるか、または混合は本明細書によって少なくとも補助される。本明細書では、モノマー液の分散は、カートリッジの粉末の圧縮によって補助される。
【0115】
カートリッジの空所における骨セメントドウの移動によってのみ、本発明による骨セメントアプリケータのための閉止システムが空所を単独で開口することができる。骨セメントアプリケータを押出し器具に押込み係合連結または摩擦係合連結した後に、押出し器具のラムは、押出し器具が作動することによって骨セメントアプリケータに作用する。このように、モノマー液を収容する容器が開口され、その後、ラムをさらに移動すると、モノマー液がセメント粉末に押し込まれる。本発明によれば、モノマー液の容器を開口し、続いて、モノマー液をセメント粉末に移し、セメントドウを形成するように出発成分を混合することは、単に押出し器具のラムを前方に移動することによって行うことができる。
【0116】
骨セメントアプリケータは、手動操作式の押出し器具のラムが直線的に前方に移動すること(それ自体は知られている)を利用し、そうすることで、ラムが直線的に前方に移動するときの圧縮力を連続して適用することによって、モノマー液用の容器がまず開口され、その後容器が圧縮され、圧縮されることでモノマー液が容器を出て、締め固められたセメント粉末に押し込まれ、押し込まれたモノマー液によって、セメント粉末粒子間に設けられる空気が置き換えられ、セメント粉末粒子がモノマー液によってぬれるとセメントドウが生成されるという考えに基づく。そのための必須条件は、モノマー液によって非常に効果的にぬれると共に毛管効果によって前記液体を吸収できるように設計されたセメント粉末の使用である。
【0117】
骨セメントアプリケータの考えは、モノマー液用の少なくとも1つの容器をセメント粉末のリザーバの後ろに配置し、そうすることで、その容器の後ろには、軸に沿って移動可能な搬送ピストンが配置され、容器とセメント粉末用リザーバとの間には、液体および気体に対してのみ透過性である排出ピストンが配置されることにある。セメント粉末のリザーバの前方には、気体および液体に対してのみ透過性であるが、混合された骨セメントドウに対して透過性でない殺菌ピストンが配置される。殺菌ピストンは排出チューブに連結され、排出チューブの開口部は、殺菌ピストンの下側で開口する。
【0118】
搬送ピストンおよび排出ピストンを有する本発明による骨セメントアプリケータの特別な利点は、混合システムの単純化された取扱いにある。ユーザは、第1のステップで、粉末およびモノマー液で満たされた骨セメントアプリケータを手動の押出し器具に連結し、第2のステップで、セメントドウが排出チューブから出るまで、カートリッジヘッドを上に向けて押出し器具を作動させるだけでよい。その後、骨セメントドウは、以前の従来の混合システムの場合と同様に押出し器具をさらに作動させることで押し出すことができる。骨セメントアプリケータは、すぐに使えるシステムとして適切な粉末またはセメント粉末を用いて使用できるフルプリパック式混合システムである。
【0119】
以前のフルプリパック式混合システムとは異なり、複雑な組立てステップおよび混合要素が固定された混合ロッドを用いる手作業の混合が必要なくなる。したがって、不正確な組立てステップおよび不正確な手作業による混合によって起こるユーザエラーは、その設計の結果なくなる。
【0120】
閉止システムの移動後に、ストッパまたはカバーと排出開口部との間の距離は少なくとも5mmであることが重要である。その距離は、好ましくは、排出される骨セメントドウの流動抵抗ができるだけ小さくなるように6mmと10mmとの間にすべきである。
【0121】
本発明によれば、気体透過性であるが粉末粒子は透過しない通気孔プラスチック層は、閉止システムに、具体的には、閉止システムの壁に配置され、プラスチック層は、好ましくは、プレートとして形成される。この気体透過性の壁によって、粉末で満たされたカートリッジの内部の前方部分への気体の供給が可能になる。閉止システムのこの部分は、本事例では、特にカートリッジに対して軸に沿って移動可能なようにカートリッジの内部に配置される場合に、殺菌ピストンとも称される。
【0122】
一実施形態では、殺菌ピストンは、カートリッジにおいて軸に沿って移動可能なように配置され、ストッパが、殺菌ピストン内で開口する排出チューブの下側端部を閉止する。ストッパは、径方向のリブを介して軸に沿って変位不能なようにカートリッジに連結される。リブは、好ましくは、リングに接続される。このリングは、カートリッジの内壁にくさび留めすることができる。本明細書で、リングの外径はカートリッジの内径よりもわずかに大きい。カートリッジヘッドがカートリッジにねじ込まれるかまたはデテントシステムによってカートリッジに連結される場合に、カートリッジヘッドとカートリッジとの間の周囲の隙間にリングを締め付けることも可能である。殺菌ピストンは、カートリッジの内壁に解除可能なように連結され、殺菌ピストンは、好ましくは、少なくとも1つのデテント手段によってカートリッジに解除可能なように連結され、少なくとも1つのデテント手段は、カートリッジの軸方向の力の作用によって解除することができる。粉末がモノマー液と混合されると、骨セメントドウは押出し器具の作用によってカートリッジヘッドの方向に押圧される。殺菌ピストンは、骨セメントドウの圧力によってカートリッジヘッドの方向に押される。したがって、殺菌ピストンは、カートリッジヘッドの方向に移動し、さらに、軸に沿って移動不能でありカートリッジに固定されるストッパから取り外されることになる。このように、排出チューブはストッパから取り外され、排出チューブの開口部は空になり、形成された骨セメントドウを開口された排出チューブを通して外に向かって押圧することができる。軸に沿って移動不能なストッパは、軸に沿って移動可能な殺菌ピストンと一緒になって、骨セメントドウの軸に沿った圧力によってカートリッジヘッドの方向に閉止システムの開口部を形成する。
【0123】
代替の実施形態では、殺菌ピストンは、カートリッジ内で軸に沿って変位不能なように配置され(しかし、本事例では、やはり、説明を簡単にするために、殺菌ピストンと称される)、軸に沿って変位可能なストッパが排出チューブに配置される。排出チューブ内の軸に沿って変位可能なストッパは、殺菌ピストンと一緒になって、軸に沿った圧力によって開口されるカートリッジの閉止システムを形成する。つまり、粉末とのモノマー液の混合の後に生成される骨セメントドウは押出し器具の作用によってカートリッジヘッドの方向に押圧される。カートリッジ内で軸に沿って固定される殺菌ピストンは、セメントドウの圧力を生み出すことができない。しかし、排出チューブに配置されるストッパは軸に沿って変位可能である。したがって、セメントドウがストッパを排出チューブから押す。排出チューブは空になり、排出チューブを通して骨セメントドウを押し出すことができる。
【0124】
本発明による閉止システムの特別な利点は、外部のプロセスステップを追加することなしに、専ら混合された骨セメントドウの押出し圧力の結果、排出チューブまたはカートリッジの排出開口部が単独で開口されることである。したがって、出発成分が、具体的には、セメント粉末が、収納中にカートリッジから意図せずに漏出することが防止される。出発成分は、カートリッジに確実に収納される。カートリッジ内の確実な収納にもかかわらず、気体状エチレンオキシドによる殺菌が可能であり、殺菌のために必要である。閉止システムの特別な利点が、閉止システム全体を分解することなく、早まって開口するように外側から操作する機会がないことにある。
【0125】
ポリメチルメタクリレート骨セメント用の本発明による骨セメントアプリケータまたはこの種の骨セメントアプリケータのための閉止システムは、例えば、
a)押出し器具に連結するためにカートリッジ端部に配置される要素を有する、中空筒状カートリッジと、
b)排出チューブと、
c)中空筒状カートリッジを閉止するカートリッジヘッドであって、カートリッジヘッドには排出チューブを受けるための供給孔が配置され、少なくとも1つの供給孔が、カートリッジヘッドの外側をカートリッジヘッドの内側に気体透過性になるように接続する、カートリッジヘッドと、
d)気体透過性であるが粉末粒子は透過しない、カートリッジヘッドの後ろに配置される、殺菌ピストンであって、殺菌ピストンは供給孔を有し、供給孔は、下側から上側に延び、上側で排出チューブに液体透過性になるように接続される、殺菌ピストンと、
e)排出チューブを閉止するストッパと、
から構成され、
f)排出チューブは、ストッパと殺菌ピストンとの間の相対的な移動によって開口される。
【0126】
閉止システムを有するカートリッジシステムも本発明に従って含まれる。カートリッジシステムは、
a)押出し器具に連結するためにカートリッジ端部に配置される要素を有する、中空筒状カートリッジと、
b)中空筒状カートリッジを閉止するカートリッジヘッドであって、カートリッジヘッドには排出チューブを受けるための供給孔が配置され、少なくとも1つの供給孔が、カートリッジヘッドの外側をカートリッジヘッドの内側に気体透過性になるように接続する、カートリッジヘッドと、
c)排出チューブと、
d)気体透過性であるが粉末粒子は透過しない殺菌ピストンであって、殺菌ピストンは供給孔を有し、供給孔は、下側から上側に延び、上側で排出チューブに液体透過性になるように接続される、殺菌ピストンと、
e)排出チューブに対して軸に沿って変位可能なように配置される、筒状の閉止ストッパと、
f)カートリッジ内に軸に沿って移動可能なように配置され、液体不透過になるようにカートリッジベースを閉止する、搬送ピストンと、
g)カートリッジにおいて殺菌ピストンと搬送ピストンとの間に軸に沿って移動可能なように配置される、排出ピストンであって、2つの端部面の間に液体透過性であり粉末粒子は透過しない供給孔を少なくとも1つ有する、排出ピストンと、
h)少なくとも1つのモノマー液容器と、
i)カートリッジの内壁、搬送ピストン、および排出ピストンによって範囲が定められる、モノマー液容器を収納する第1の空所と、
j)セメント粉末と、
k)セメント粉末が配置される第2の空所であって、カートリッジの内壁、殺菌ピストン、および排出ピストンによって範囲が定められる、第2の空所と、
から構成される。
【0127】
添加剤の吸収能力を測定するために、薬学分野で知られるエンスリン装置(Enslin apparatus)(C.‐D.Herzfeldt、J.Kreuter(Hrsg.):Grundlagen der Arzneiformenlehre.Galenik 2、Springer Verlag Berlin Heidelberg New York、1999年、p.79~80)を単純化した。Schott社の1D3ガラスフィルタるつぼを使用した。まず、ガラスフィルタるつぼの風袋重量を測定した。次いで、添加剤3,000gと1,000gを計量して別々のガラスフィルタるつぼに入れた。ガラスフィルタるつぼはそれぞれ吸引フラスコに嵌めた。添加剤を十分に覆うようにメチルメタクリレート20mlを添加剤に加えた。添加剤に吸収されなかったメチルメタクリレートがガラスフィルタるつぼを通って下に流れた。15分後に、添加剤および吸収されたメチルメタクリレートを含むガラスフィルタるつぼを計量し、吸収されたメチルメタクリレートの質量を測定した。測定はそれぞれ3回繰り返し、平均値を判定した。添加剤を加えないメチルメタクリレートに関してガラスフィルタるつぼを参照として同じように処理した。
【0128】
例1:添加剤の吸収能力の測定
以下の開始材料を用いて添加剤の吸収能力を測定した。
メチルメタクリレート(Sigma‐Aldrich社)
デンプン(Sigma‐Aldrich社、ふるい分級<100μm)
セルロース(Sigma‐Aldrich社、ふるい分級<100μm)
Aerosil(登録商標)380(Evonik社、粒子サイズ約7nm)
【0129】
デンプン、セルロース、およびAerosil(登録商標)380から構成される添加剤の吸収能力を測定するために、Schott Mainz社の1D3ガラスフィルタるつぼを使用した。まず、ガラスフィルタるつぼの風袋重量を測定した。次いで、添加剤3,000g、Aerosil(登録商標)の場合は添加剤1,000gを計量してガラスフィルタるつぼに入れた。計量した添加剤を入れたガラスフィルタるつぼを吸引フラスコに嵌めた。添加剤を十分に覆うようにメチルメタクリレート10mlを添加剤に加えた。添加剤によって吸収されなかったメチルメタクリレートはガラスフィルタるつぼを通って下に流れた。15分後に、添加剤および吸収されたメチルメタクリレートを含むガラスフィルタるつぼを計量し、吸収されたメチルメタクリレートの質量を測定した。測定は各事例について3回繰り返し、平均値を判定した。添加剤を加えないメチルメタクリレートに関してガラスフィルタるつぼを参照として同じように処理した。
【0130】
【表1】
【0131】
本発明の他の例示的実施形態を、概略的に示す21の図に基づいて、本発明を限定することなく本明細書で以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0132】
図1】2部構成のカートリッジが開始状態にある、本発明による第1の例示的な骨セメントアプリケータの概略断面図を示す。
図2図1による骨セメントアプリケータの概略斜視図を示す。
図3図1および図2による骨セメントアプリケータの各部分の斜視分解図を示す。
図4】骨セメントドウを生成および施用する間の骨セメントアプリケータの使用順序を示す、第1の例示的な骨セメントアプリケータの5つの概略断面図AからEを示す。
図5】第1の例示的な骨セメントアプリケータの概略部分断面図として閉止システムの拡大詳細を示す。
図6】骨セメントドウを生成および施用する間の骨セメントアプリケータの使用順序を示す、第2の例示的な骨セメントアプリケータの6つの概略断面図AからFを示す。
図7図6による本発明による第2の例示的な骨セメントアプリケータの斜視外観図を示す。
図8図6および図7による第2の骨セメントアプリケータの各部分の斜視分解図を示す。
図9】骨セメントドウを生成および施用する間の骨セメントアプリケータの使用順序を示す、第3の例示的な骨セメントアプリケータの6つの概略断面図AからFを示す。
図10図9による本発明による第3の例示的な骨セメントアプリケータの斜視外観図を示す。
図11図9および図10による本発明による第3の例示的な骨セメントアプリケータの斜視断面図を示す。
図12】開始状態にある第3の例示的な骨セメントアプリケータの概略部分断面図として代替の閉止システムの拡大詳細を示す。
図13】骨セメントドウが押し出された後の、第3の例示的な骨セメントアプリケータの概略部分断面図として代替の閉止システムの拡大詳細を示す。
図14】開始状態にある本発明による第4の例示的な骨セメントアプリケータの概略斜視断面図を示す。
図15】骨セメントドウを生成および施用する間の骨セメントアプリケータの使用順序を示す、第5の例示的な骨セメントアプリケータの5つの概略断面図AからEを示す。
図16】1部構成のカートリッジおよび延長チューブが開始状態にある、図14および図15による本発明による第4の例示的な骨セメントアプリケータの概略断面図を示す。
図17】骨セメントドウを生成および施用する間の骨セメントアプリケータの使用順序を示す、代替の閉止システムを有する第5の例示的な骨セメントアプリケータの6つの概略断面図AからFを示す。
図18】開始状態にある本発明による第5の例示的な骨セメントアプリケータの斜視断面図を示す。
図19】第6の例示的な骨セメントアプリケータの前方側の概略断面図の拡大詳細を示す。
図20】第6の例示的な骨セメントアプリケータのカートリッジの前方部分の斜視断面図を示す。
図21】排出チューブ延長部分を有する第6の例示的な骨セメントアプリケータのカートリッジの前方部分の別の斜視断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0133】
見やすくするためにかつ例示的実施形態を比較できるように、各図において、異なる例示的実施形態でも同じまたは似た構成部品には同じ参照符号を用いる。
【0134】
図1から図5は、本発明による閉止システムを有する本発明による第1の骨セメントアプリケータの例示的実施形態を示す。本明細書で、図1は、開始状態にある本発明による第1の例示的な骨セメントアプリケータの概略断面図を示し、図2は骨セメントアプリケータの概略斜視図を示し、図3は、骨セメントアプリケータの各部分の斜視分解図を示し、図4は、骨セメントドウを生成および施用する間の骨セメントアプリケータの使用順序を示す、骨セメントアプリケータの5つの概略断面図AからEを示し、図5は、骨セメントアプリケータの概略部分断面図として閉止システムの拡大詳細を示す。
【0135】
骨セメントアプリケータの開始状態では、PMMA骨セメントの1つの出発成分としての粉末1と、PMMA骨セメントの別の出発成分としてのモノマー液2が、骨セメントアプリケータに収容される。粉末1は、主成分として骨セメント粉末を含有し、親水性添加剤も含有し、親水性添加剤を用いるとモノマー液2を粉末1に分散することができる。粉末1およびモノマー液2は、2部構成のカートリッジ3、4に収容され、粉末1は、カートリッジ3、4の前方内部を有する前方カートリッジ部分3に配置され、モノマー液2は、後方内部を有する後方カートリッジ部分4に配置される。後方内部と前方内部とは一緒になってカートリッジ3、4の筒状内部の範囲を定める。
【0136】
骨セメントアプリケータの後方側に(図1では下に、図2では後方の右上の角に向かって、図4では右に)搬送ピストン5が配置され、搬送ピストン5は、カートリッジ3、4の内部において軸方向に、骨セメントアプリケータの前方側の方向に(図1では上に、図2では前方の左下の角に向かって、図4では左に)直線的に進むことができるか、または前記方向に移動可能なように装着される。搬送ピストン5はカートリッジ3、4の内部の後方側を閉止する。前方内部の後方端部に、またはカートリッジ3、4の前方内部から後方内部までの連結部に、排出ピストン6が配置され、排出ピストン6は、カートリッジ3、4の内部において軸方向に、骨セメントアプリケータの前方側の方向に直線的に進むことができるか、または前記方向に移動可能なように装着される。このように、排出ピストン6は、カートリッジ3、4の内部において粉末1とモノマー液2との間に配置される。
【0137】
骨セメントアプリケータの前方側には閉止システムが配置され、その閉止システムによって、カートリッジ3、4の内部は前方に向かって閉止されるが、閉止システムは、出発成分1、2から混合される骨セメントドウ44を排出するために開口することができる(図4Dおよび図4E参照)。閉止システムの壁7には中央の円形の排出開口部があり、壁7は、前方カートリッジ部分3の前方内部の軸方向に移動可能なように配置される。排出開口部は内側リングによって範囲が定められる。壁7は、排出開口部の範囲を定める内側リングに外側リングが複数の支柱によって接続された、車輪のようにして構築される。内側リング、外側リング、および支柱は、一体になるようにプラスチックから作製される。閉止システムはストッパ8も備え、排出開口部は、図1に示すように、開始状態においてストッパ8によって閉じられる。
【0138】
モノマー液2は、モノマー液2用の容器9としての閉じられたガラスアンプル9に収容される。モノマー液2は、骨セメントアプリケータのガラスアンプル9内に長期間にわたって収納することができる。
【0139】
骨セメントアプリケータの閉止システムはカートリッジヘッド10に配置され、カートリッジヘッド10は、カートリッジ3、4の前方内部の前方領域または前方カートリッジ部分3の範囲を定める。より正確には、カートリッジヘッド10はカートリッジ3、4の一部である。前方側ではカートリッジヘッド10に気体用開口部11が設けられ、気体用開口部11は、骨セメントアプリケータの収納状態または開始状態でキャップ12によって閉止される。カートリッジ3、4の内部には、気体用開口部11を通してエチレンオキシドなどの殺菌ガスを供給することができ、したがって、カートリッジ3、4の内容物を殺菌することができる。他の気体用開口部(図示せず)も、好ましくは、図9から図18による例示的実施形態と同様に、後方カートリッジ部分4の壁のうちの搬送ピストン5の位置のすぐ隣に設けられ、それら他の気体用開口部は、カートリッジ3、4の内部を周囲環境に接続し、それら開口部を通して、カートリッジ3、4の内部に、外側から殺菌ガスを供給することができる。搬送ピストン5がカートリッジヘッド10の方向に移動するときは、それら後方側の気体用開口部は搬送ピストン5によって閉止され、その結果、アンプル9から出ていくモノマー液2のうち、内部の後方部分から外に向かって進むことができるモノマー液2はない。このように、カートリッジ3、4全体に殺菌ガスを案内することができる。
【0140】
閉止システムのストッパ8は保持リング14によって保持され、ストッパ8は、保持リング14の支柱によって保持リング14の外側リングに接続される。保持リング14は、カートリッジヘッド10と前方カートリッジ部分3との間の連結部において外部に固定される。このように、ストッパ8もカートリッジ3、4に対して固定される。
【0141】
閉止システムの壁7の支柱間に開いた隙間は、穿孔ディスクの形態のフィルタ16によってカバーされ、フィルタ16は、気体透過性であるが、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない。このように、壁7は、エチレンオキシドなどの気体は透過するが、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない。保持リング14と同様に、壁7は、詳細には、径方向内向きに排出開口部に向かって延びるスポークを有する外側リングの形態のフレーム構造によって形成され、したがって、その隙間がフィルタ16によってカバーされなければ透過性である。壁7および保持リング14の構造は図3で最もはっきりと見ることができる。壁7は、フィルタ16と共に、さらにカートリッジ3、4に対して移動不能なように保持されるストッパ8、および保持リング14と共に、本発明による骨セメントアプリケータのための本発明による閉止システムを形成する。
【0142】
排出チューブ18が壁7と一体形成され、排出開口部にまたは排出開口部の範囲を定める壁7の内側リングに配置され、その排出チューブ18を通して、骨セメントドウ44が骨セメントアプリケータを用いて施用される(図4E参照)。このように、排出チューブ18は開口するとカートリッジ3、4の内部の排出開口部になる。したがって、排出チューブ18も壁7と共に移動される。この目的で、排出チューブ18は、カートリッジヘッド10の供給孔によって、長手方向に(すなわち、カートリッジ3、4の筒状内部の軸方向に)移動可能なように装着される。供給孔には突起19が設けられ、そうすることで、排出チューブ18、したがって、フィルタ16を伴う壁7は、抵抗に対抗するときにだけ、カートリッジヘッド10に対して移動することができる。排出チューブ18には周囲溝21が設けられ、その溝は、突起19と一緒になって、カートリッジヘッド10に対する、したがって、カートリッジ3、4に対する、排出チューブ18の、したがって、壁7の、解除可能なロックを形成する。フィルタ16を伴う壁7は殺菌ピストンと称することもできる。粉末1は、圧力下で、フィルタ16を伴う壁7と排出ピストン6との間でカートリッジ3、4の内部の前方部分に押し込まれ、弾性的な機械的圧力下にある。供給孔において突起19を周囲溝21とロックすることによって、圧縮された粉末1によってフィルタ16を伴う壁7に加えられる弾性的な圧力が、カートリッジ3、4の前方側の方向にまたはカートリッジヘッド10によって範囲が定められる内部の前方側に対して、フィルタ16を伴う壁7を動かし、したがって、粉末1への圧力を元通りに軽減するのに十分に強くなることを防止しすることが可能なはずである。
【0143】
粉末1は透過しないがモノマー液2は透過する有孔フィルタ20が、排出ピストン6のうちの粉末1を向く側に配置される。したがって、粉末1は、排出ピストン6に設けられる通路22を通ってカートリッジ3、4の内部の後方部分に進むことができないようにされるはずである。本明細書では、有孔フィルタ20は通路22をカバーし、そうすることで、粉末1はやはり通路22中に進むことができない。アンプル9が開口されたときに、すなわち、モノマー液2が内部の前方部分に押し込まれる前に、既にモノマー液2が粉末1のセメント粉末粒子と早まって反応することが防止される。このように、膨張する骨セメントによって通路22がブロックされることを防ぎ、したがって、粉末1へのモノマー液2のさらなる導入を妨害することを防ぐことが可能である。
【0144】
排出ピストン6のうちの有孔フィルタ20の反対側には、網24またはふるい24が配置され、網24またはふるい24によって、壊されたガラスアンプル9の破片が通路22に入ることが防止される。本明細書ではカートリッジ3、4の内部の後方部分からのモノマー液2を粉末1中に難なく確実に押すこともできるはずである。アンプル9が壊されて開口されるときは、まずアンプルヘッド26が折り取られ、そのときに、アンプル9が開口される(図4B参照)。その後、アンプル9からのモノマー液2は、流出してカートリッジ3、4の内部の前方部分に入ることができ、そのときに、通路22を通して粉末1に押し込むことができる(図4C参照)。本明細書ではアンプル9は破砕されて破片になり、それら破片は非常に小さいので、排出ピストン6のうちのカートリッジベースを向く側に(図1では下向きに、図2では後方の右上の角に向かって、図4では右に)形成される空所に収まる。
【0145】
モノマー液2が排出ピストン6を越えてカートリッジ3、4の内部の前方部分に押されるように、排出ピストン6にはゴム製の周囲リングシール28が2つ設けられ、それら周囲リングシール28によって、排出ピストン6はカートリッジ3、4の内部の壁に対してシールされる。搬送ピストン5にもゴム製の周囲リングシール30が2つ設けられ、それら周囲リングシール30によって、カートリッジベースにおける外に向かうモノマー液2の排出が避けられる。シール30のシーリング効果は、前記モノマー液が網24、通路22、および有孔フィルタ20を通って粉末1に押し込まれるような大きさの圧力が、搬送ピストン5によってモノマー液2に加えられる場合にも、少なくともモノマー液2が排出されない程度の十分なものでなければならない。
【0146】
さらに、壁7は、ゴム製の周囲シール32によって、カートリッジヘッド10の領域の前方内部の壁に対してシールされる。シール32は壁7の外側リングの外周を延びる。2つのカートリッジ部分3、4も、さらに、ゴム製の周囲シール34によって互いに対してシールされる。2つのカートリッジ部分3、4は、ねじ山によって互いにねじ込まれる。この目的で、前方カートリッジ部分3には雌ねじが設けられ、後方カートリッジ部分4には雄ねじが設けられる。同様に、カートリッジヘッド10と、前方カートリッジ部分3の残りの部分とが互いに連結され、本明細書では、ねじ山自体によってまたはそれらの間に締め付けられる保持リング14によってシールが設けられる。
【0147】
押出し器具40を締結するためのリテーナ36(図4参照)が、カートリッジベースにおいて後方カートリッジ部分4の外側に設けられる。
【0148】
排出ピストン6にはデテント手段としてフック38が横向きに複数設けられ、それらフック38は、内部の壁において後方カートリッジ部分4への前方カートリッジ部分3の連結部の適合するくぼみに係合する。その結果生じるカートリッジ3、4への排出ピストン6の係止は、ガラスアンプル9が破砕されるときに生じる力の圧力、および搬送ピストン5が前方に進むときのモノマー液2の圧力に抵抗するのに十分に強い。搬送ピストン5が直接的に排出ピストン6に当たるとき(図4C参照)に初めて、係止連結が解除されるか、またはフック38が変形してカートリッジ3、4の内部の壁のくぼみから摺動し、その後、排出ピストン6は、骨セメントアプリケータの前方側においてカートリッジヘッド10の方向に搬送ピストン5によって押される。
【0149】
発泡材料のインサートおよび/またはプラスチック粒などの充填材(図示せず)を、好ましくは、排出ピストン6の後方側に形成される排出ピストン6の空所に設けることができる。このように、その空所に残り、搬送ピストン5によって粉末1に押し込むことができない、モノマー液2の体積は、可能な限り小さくなるように維持されるものとする。さらに、この充填材はガラスアンプル9のための輸送保護材および衝撃保護材として使用でき、そうすることで、骨セメントアプリケータが開始状態(図1および図2参照)で輸送されるときにガラスアンプル9を誤って破損することがない。この目的で、カートリッジ3、4の内部の後方部分でガラスアンプル9の周りにさらに、圧縮可能な発泡材料を配置することができる。あるいは、弾性プラスチックから形成される機械的に変形可能なスペーサを輸送保護材として用いることもできる。
【0150】
骨セメントドウを生成する本発明による例示的な方法の順序を、上下に示す5つの断面図(図4Aから図4E)によって図4に例示する。骨セメントアプリケータはまず、押出し器具40に挿入され、そのために、カートリッジ3、4は、リテーナ36によって、押出し器具40の適合する相手部品41に締結される(図4A参照)。
【0151】
その後、押出し器具40のラム42が相手部品41に対して進められる。ラム42は搬送ピストン5に当たる。そのとき、搬送ピストン5は、ラム42によって排出ピストン6の方向に押される。搬送ピストン5の移動によって、アンプル9は、デテント手段38によってロックされる排出ピストン6に対して押される。アンプルヘッド26は折り取られ、アンプル9は開口される(図4B参照)。
【0152】
押出し器具40内の骨セメントアプリケータは、好ましくは、本明細書ではカートリッジヘッド10が上を向くように保持され、そうすることで、搬送ピストン5がさらに前方に進み続けると、上部に配置された空気が内部の後方部分から上に向かって押されて、粉末1および気体透過性フィルタ16を通って外に向かう。アンプル9からのモノマー液2は、最終的に、搬送ピストン5によって、網24および/またはふるい24を通して押されて、通路22および有孔フィルタ20を通り、内部の前方部分に至り、粉末1に到達する。そうする際に、アンプル9はさらに圧縮され、したがって、破砕されてより小さい破片になり、それら破片は最終的に排出ピストン6の後方側の空所に集まる。粉末1は親水性添加剤を含有し、親水性添加剤は、水性のモノマー液2と比べて表面エネルギーが大きく、その表面エネルギーは骨セメント粉末の表面エネルギーよりも大きい。同時に、粉末粒子間の隙間が小さいので、圧縮された粉末1のおかげで毛細管力が大きい。加えて、モノマー液2は圧力によって粉末1に押し込まれる。これら全対策の結果、モノマー液2は粉末1中に粉末1を通して急速に案内され、膨張するセメント粉末粒子によってモノマー液2が粉末1にさらに拡散することが妨害される前に、粉末1内に十分に拡散および分散することができる。最後に、搬送ピストン5は排出ピストン6に接触する(図4C参照)。
【0153】
粉末1のセメント粉末はモノマー液2と反応し、そこで骨セメントドウ44を形成する。骨セメントドウ44の粉末1とモノマー液2との所望の混合比を得るために、余分のモノマー液2は、カートリッジ3、4の前方側で壁7の多孔性フィルタ16とカートリッジヘッド10との間に受け入れることができる。そのために、モノマー液2は、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない多孔性フィルタ16を通して押される。モノマー液2が粉末1を通り抜けて壁7の位置に至ると余分なモノマー液2が吸収されるので、骨セメントドウ44は、軟らかくなり過ぎること、したがって、望ましくない粘度に達することが防止される。さらに、骨セメントドウ44の粘度が高くなり過ぎるのを避けるために、モノマー液2が余分に使用され、そうすることで、排出ピストン6と搬送ピストン5との間に残る、さらに排出ピストン6の通路22に残る、モノマー液2の残渣によるロスが相殺される。
【0154】
搬送ピストン5がさらに進むので、排出ピストン6はカートリッジヘッド10の方向に押しやられ、係止手段またはデテント手段38が解除される。排出ピストン6がカートリッジヘッド10の方向に移動するので、骨セメントドウ44によって閉止システムの壁7およびフィルタ16に圧力がかけられる。骨セメントドウ44は、フィルタ16を貫通できず、したがって、骨セメントドウ44の圧力はフィルタ16および壁7に作用する。突起19および周囲溝21によるロックが解除され、したがって、壁7、フィルタ16、および排出チューブ18はカートリッジ3、4またはカートリッジヘッド10に対して移動することができ、そうすることで、閉止システムのそれら部分が前方に押され、一方、保持リング14によってカートリッジ3、4に固定して連結されるストッパ8はそれと同時に移動されることはない。骨セメントドウ44は本明細書では、保持リング14のスポーク間の開口部を通って流れる。その間は壁7の排出開口部は開かれている。壁7、フィルタ16、および排出チューブ18は、壁7の前方側がカートリッジヘッド10の前方の内側面に当たるまで、前方に押しやられる。この状況は図4Dに例示されている。カートリッジ3、4はここで外に向かって開口される。壁7が内部の前方側に当たる場合、壁7とストッパ8との間の距離は非常に大きくなるので、骨セメントドウ44が流出する自由な領域が少なくとも排出チューブ18の断面積と同程度に大きくなり、そうなると、骨セメントドウ44の流れの妨げは最小限に抑えられる。ストッパは気体透過性であり、そうなると、カートリッジ3、4の内部はエチレンオキシドなどの殺菌ガスを用いて殺菌することができる。同時に、ストッパ8はカートリッジ3、4の内部において粉末1を透過しない。
【0155】
搬送ピストン5を、したがって、排出ピストン6をさらに進めることによって、完成した骨セメントドウ44が排出開口部および排出チューブ18を通して外に向かって押圧され、施用することができる(図4E参照)。
【0156】
粉末1に供給される添加剤のおかげで、カートリッジ3、4の筒状内部の前方部分の一方の端部面においてモノマー液2を押し込み、それにもかかわらず、粉末1におけるモノマー液2の完全な分散を実現することが可能である。骨セメントアプリケータの本発明による構造によって、従来の押出し器具40を使用可能にすることができ、ラム42が単方向に直線的に移動することによって、モノマー液2用の容器9を開口すること、モノマー液2を粉末1に押し込み、したがって、骨セメントドウ44を混合すること、ならびに、閉止システムを開口し、混合された骨セメントドウ44を放出および施用することが可能である。閉止システムの本発明による構造を用いると、排出開口部を開口するために、ラム42によって搬送ピストン5にかけられる力を使用可能にすることができる。
【0157】
本発明による第2の例示的な骨セメントアプリケータが図6から図8に示されており、図1から図5による第1の例示的な骨セメントアプリケータと異なる点は、第2の例示的な骨セメントアプリケータが、2つのカートリッジ部分から構成されないカートリッジ46を有することと、カートリッジ46の内部の1つの排出ピストン6がデテント手段によってカートリッジ46に連結されないことであり、ここでもカートリッジヘッド10はカートリッジ46にねじ込まれる。
【0158】
本明細書で、図6は、骨セメントドウ44を生成および施用する間の骨セメントアプリケータの使用順序を示す、1部構成のカートリッジ46を有する第2の例示的な骨セメントアプリケータの6つの概略断面図AからFを示し、図7は、本発明による第2の例示的な骨セメントアプリケータの斜視外観図を示し、図8は、第2の例示的な骨セメントアプリケータの斜視分解図を示す。
【0159】
第2の例示的な骨セメントアプリケータの構造および動作原理は、大半が第1の例示的な骨セメントアプリケータと一致し、したがって、大部分は第1の例示的実施形態を示す図の説明を参照することもできる。具体的には、使用される粉末1および閉止システムは両方の例示的実施形態において同一である。
【0160】
骨セメントアプリケータの開始状態では、PMMA骨セメントの1つの出発成分として、粉末1が骨セメントアプリケータに収容され、PMMA骨セメントの別の出発成分として、モノマー液2が骨セメントアプリケータに収容される。粉末1は、主成分として骨セメント粉末を含有し、親水性添加剤も含有する。親水性添加剤を用いると粉末1内にモノマー液2を分散することができる。粉末1およびモノマー液2はカートリッジ46に収容され、粉末1は、前方内部を有する前方カートリッジ部分に配置され、モノマー液2は、カートリッジ46の後方内部を有する後方カートリッジ部分に配置される。後方内部と前方内部とは一緒になってカートリッジ46の筒状内部の範囲を定める。
【0161】
骨セメントアプリケータの後方側に(図6では右に、図7では後方の右上の角に向かって)搬送ピストン5が配置され、搬送ピストン5は、カートリッジ46の内部において軸方向に、骨セメントアプリケータの前方側の方向に(図6では左に、図7では前方の左下の角に向かって)直線的に進むことができるか、または前記方向に移動可能なように装着される。搬送ピストン5はカートリッジ46の内部の後方側を閉止する。前方内部の後方端部に、またはカートリッジ46の前方内部から後方内部までの接続部分に、排出ピストン6が配置され、排出ピストン6は、カートリッジ46の内部において軸方向に、骨セメントアプリケータの前方側の方向に直線的に進むことができるか、または前記方向に移動可能なように装着される。このように、排出ピストン6は、本実施形態ではカートリッジ46の内部において粉末1とモノマー液2との間に配置される。
【0162】
骨セメントアプリケータの前方側には閉止システムが配置され、その閉止システムによって、カートリッジ46の内部は前方に向かって閉止されるが、閉止システムは、出発成分1、2から混合される骨セメントドウ44を排出するために開口することができる(図6Eおよび図6F参照)。閉止システムの壁7には中央の円形の排出開口部48があり(図8参照)、壁7は、カートリッジ46の内部の軸方向に移動可能なように配置される。排出開口部48は内側リングによって範囲が定められる(図8参照)。壁7は、排出開口部48の範囲を定める内側リングに外側リングが複数の支柱によって接続された、車輪のようにして構築される。内側リング、外側リング、および支柱は、一体になるようにプラスチックから作製される。閉止システムはストッパ8も備え、排出開口部48は、図6Aに示すように、開始状態においてストッパ8によって閉じられる。
【0163】
モノマー液2は、モノマー液2用の容器9としてプラスチックまたはガラスから作製された、閉じられたアンプル9に収容される。アンプル9は、モノマー液2に対して耐薬品性のあるガラスまたはプラスチックから作製される。モノマー液2は、骨セメントアプリケータのアンプル9内に長期間にわたって収納することができる。
【0164】
骨セメントアプリケータの閉止システムはカートリッジヘッド10に配置され、カートリッジヘッド10は、カートリッジ46の内部の前方領域の範囲を定める。より正確には、カートリッジヘッド10はカートリッジ46の一部である。前方側ではカートリッジヘッド10に気体用開口部が設けられ、気体用開口部は、骨セメントアプリケータの収納状態または開始状態でキャップ12によって閉止される。カートリッジ46の内部には、気体用開口部を通してエチレンオキシドなどの殺菌ガスを供給することができ、したがって、カートリッジ46の内容物を殺菌することができる。他の気体用開口部(図示せず)も、好ましくは、図9から図18による例示的実施形態と同様に、カートリッジ46の壁のうちの搬送ピストン5の位置のすぐ隣に設けられ、それら他の気体用開口部は、カートリッジ46の内部を周囲環境に接続し、それら開口部を通して、カートリッジ46の内部に、外側から殺菌ガスを供給することができる。搬送ピストン5がカートリッジヘッド10の方向に移動するときは、それら後方側の気体用開口部は搬送ピストン5によって閉止され、その結果、アンプル9から出ていくモノマー液2のうち、内部の後方部分から外に向かって進むことができるモノマー液2はない。このように、カートリッジ46全体に殺菌ガスを案内することができる。
【0165】
閉止システムのストッパ8は保持リング14によって保持され、ストッパ8は、保持リング14の支柱によって保持リング14の外側リングに接続される。保持リング14は、カートリッジヘッド10とカートリッジ46の残りの部分との間の連結部において外部に固定される。このように、ストッパ8もカートリッジ46に対して固定される。
【0166】
閉止システムの壁7の支柱間に開いた隙間は、穿孔ディスクの形態のフィルタ16によってカバーされ、フィルタ16は、気体透過性であるが、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない。このように、壁7は、エチレンオキシドなどの気体は透過するが、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない。保持リング14と同様に、壁7は、詳細には、径方向内向きに排出開口部48に向かって延びるスポークを有する外側リングの形態のフレーム構造によって形成され、したがって、その隙間がフィルタ16によってカバーされなければ透過性である。壁7および保持リング14の構造は図8で最もはっきりと見ることができる。壁7は、フィルタ16と共に、さらにカートリッジ46に対して移動不能なように保持されるストッパ8、および保持リング14と共に、本発明による骨セメントアプリケータのための本発明による閉止システムを形成する。
【0167】
排出チューブ18が壁7と一体形成され、排出開口部48にまたは排出開口部48の範囲を定める壁7の内側リングに配置され、その排出チューブ18を通して、骨セメントドウ44が骨セメントアプリケータを用いて施用される(図6F参照)。したがって、排出チューブ18も壁7と共に移動される。この目的で、排出チューブ18は、カートリッジヘッド10の供給孔によって、長手方向に(すなわち、カートリッジ46の筒状内部の軸方向に)移動可能なように装着される。供給孔には締付け部として突起19が設けられ、そうすることで、排出チューブ18、したがって、フィルタ16を伴う壁7は、抵抗に対抗するときにだけ、カートリッジヘッド10に対して移動することができる。排出チューブ18には周囲溝21が設けられ、その溝は、突起19と一緒になって、カートリッジヘッド10に対する、したがって、カートリッジ46に対する、排出チューブ18の、したがって、壁7の、解除可能なロックを形成する。粉末1は、圧力下で、フィルタ16を伴う壁7と排出ピストン6との間でカートリッジ46の内部の前方部分に押し込まれ、弾性的な機械的圧力下にある。供給孔において突起19を周囲溝21とロックすることによって、圧縮された粉末1によってフィルタ16を伴う壁7に加えられる弾性的な圧力が、カートリッジ46の前方側の方向にまたはカートリッジヘッド10によって範囲が定められる内部の前方側に対して、フィルタ16を伴う壁7を動かし、したがって、粉末1への圧力を元通りに軽減するのに十分に強くなることを防止しすることが可能なはずである。
【0168】
粉末1は透過しないがモノマー液2は透過する有孔フィルタ20が、排出ピストン6のうちの粉末1を向く側に配置される。したがって、粉末1は、排出ピストン6に設けられる通路22を通ってカートリッジ46の内部の後方部分に進むことができないようにされるはずである。本明細書では、有孔フィルタ20は通路22をカバーし、そうすることで、粉末1はやはり通路22中に進むことができない。アンプル9が開口されたときに、すなわち、モノマー液2が内部の前方部分に押し込まれる前に、既にモノマー液2が粉末1のセメント粉末粒子と早まって反応することが防止される。このように、膨張する骨セメントによって通路22がブロックされることを防ぎ、したがって、粉末1へのモノマー液2のさらなる導入を妨害することを防ぐことが可能である。
【0169】
排出ピストン6のうちの有孔フィルタ20の反対側には、網24またはふるい24が配置され、網24またはふるい24によって、壊されたアンプル9の破片が通路22に入ることが防止される。本明細書ではカートリッジ46の内部の後方部分からのモノマー液2を粉末1中に確実に難なく押すこともできるはずである。アンプル9が壊されて開口されるときは、まずアンプルヘッド26が折り取られ、そのときに、アンプル9が開口される(図6C参照)。その後、アンプル9からのモノマー液2は、流出してカートリッジ46の内部の前方部分に入ることができ、そのときに、通路22を通して粉末1に押し込むことができる(図6D参照)。本明細書ではアンプル9は破砕されて破片になり、それら破片は非常に小さいので、排出ピストン6のうちのカートリッジベースを向く側に(図6では右に、図7では後方の右上に)形成される空所に収まる。
【0170】
押出し器具40を締結するためのリテーナ36(図6参照)が、カートリッジベースにおいて後方カートリッジ部分4の外側に設けられる。
【0171】
排出ピストン6は、プレス嵌めによってカートリッジ46の内部に着座する。2つの周囲リングシール28は、ここで、排出ピストン6が初期段階でしっかりとカートリッジ46の内部に嵌まるように、緊密に圧迫される。その結果生じるカートリッジ46との排出ピストン6の保持は、アンプル9が破砕するときに生じる力の圧力、および搬送ピストン5が前方に進むときのモノマー液2の圧力に抵抗するのに十分に強い。搬送ピストン5が直接的に排出ピストン6に当たるとき(図6D参照)に初めて、排出ピストン6とカートリッジ46の内壁との間の静止摩擦が克服されるのに十分に大きい力が排出ピストン6に伝達され、そうすることで、その後、排出ピストン6は搬送ピストン5によって、骨セメントアプリケータの前方側においてカートリッジヘッド10の方向に押される。
【0172】
発泡材料のインサートおよび/またはプラスチック粒などの充填材(図示せず)を、好ましくは、排出ピストン6の後方側に形成される排出ピストン6の空所に設けることができる。このように、その空所に残り、搬送ピストン5によって粉末1に押し込むことができない、モノマー液2の体積は、可能な限り小さくなるように維持されるものとする。さらに、この充填材はアンプル9のための輸送保護材および衝撃保護材として使用でき、そうすることで、骨セメントアプリケータが開始状態(図6A参照)で輸送されるときにアンプル9を誤って破損することがない。同じ目的で、カートリッジ46の内部の後方部分にあるアンプル9のアンプル本体を、圧縮可能な発泡材料で包むこともできる。
【0173】
本発明による例示的な方法の順序を、上下に示す6つの断面図(図6Aから図6F)によって図6に例示する。図6Aは、出発成分1、2が収納および保存される開始状態の骨セメントアプリケータを示す。骨セメントアプリケータはこの状態で配送することができる。骨セメントアプリケータはまず、押出し器具40に挿入され、そのために、カートリッジ46は、リテーナ36によって、押出し器具40の適合する相手部品41に締結される(図6B参照)。
【0174】
その後、押出し器具40のラム42が相手部品41に対して進められる。ラム42は搬送ピストン5に当たる。そのとき、搬送ピストン5は、ラム42によって排出ピストン6の方向に押される。搬送ピストン5の移動によって、アンプル9は、プレス嵌めによってしっかりと嵌められた排出ピストン6に対して押される。アンプルヘッド26は折り取られ、アンプル9は開口される(図6C参照)。
【0175】
押出し器具40内の骨セメントアプリケータは、好ましくは、本明細書ではカートリッジヘッド10が上を向くように保持され、そうすることで、搬送ピストン5がさらに前方に進み続けると、上部に配置された空気が内部の後方部分から上に向かって押されて、粉末1および気体透過性フィルタ16を通って外に向かう。アンプル9からのモノマー液2は、最終的に、搬送ピストン5によって、網24および/またはふるい24を通して押されて、通路22および有孔フィルタ20を通り、内部の前方部分に至り、粉末1に到達する。そうする際に、アンプル9はさらに圧縮され、したがって、破砕されてより小さい破片になり、それら破片は最終的に排出ピストン6の後方側の空所に集まる。粉末1は親水性添加剤を含有し、親水性添加剤は、水性のモノマー液2と比べて表面エネルギーが大きく、その表面エネルギーは骨セメント粉末の表面エネルギーよりも大きい。同時に、粉末粒子間の隙間が小さいので、圧縮された粉末1のおかげで毛細管力が大きい。加えて、モノマー液2は圧力によって粉末1に押し込まれる。これら全対策の結果、モノマー液2は粉末1中に粉末1を通して急速に案内され、膨張するセメント粉末粒子によってモノマー液2が粉末1にさらに拡散することが妨害される前に、粉末1内に十分に拡散および分散することができる。最後に、搬送ピストン5は排出ピストン6に接触する(図6D参照)。
【0176】
粉末1のセメント粉末はモノマー液2と反応し、そこで骨セメントドウ44を形成する。骨セメントドウ44の粉末1とモノマー液2との所望の混合比を得るために、余分のモノマー液2は、カートリッジ46の前方側で壁7の多孔性フィルタ16とカートリッジヘッド10との間に受け入れることができる。そのために、モノマー液2は、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない多孔性フィルタ16を通して押される。モノマー液2が粉末1を通り抜けて壁7の位置に至ると余分なモノマー液2が吸収されるので、骨セメントドウ44は、軟らかくなり過ぎること、したがって、望ましくない粘度に達することが防止される。さらに、骨セメントドウ44の粘度が高くなり過ぎるのを避けるために、モノマー液2が余分に使用され、そうすることで、排出ピストン6と搬送ピストン5との間に残る、さらに排出ピストン6の通路22に残る、モノマー液2の残渣によるロスが相殺される。
【0177】
搬送ピストン5がさらに進むので、排出ピストン6はカートリッジヘッド10の方向に押しやられ、搬送ピストン5によって排出ピストン6にかけられる圧力が、内部の壁に対する排出ピストン6の静止摩擦を克服し、したがって、排出ピストン6をカートリッジヘッド10の方向に進めるのに十分になる。排出ピストン6がカートリッジヘッド10の方向に移動するので、骨セメントドウ44によって閉止システムの壁7およびフィルタ16に圧力がかけられる。骨セメントドウ44は、フィルタ16を貫通できず、したがって、骨セメントドウ44の圧力はフィルタ16および壁7に作用する。突起19と排出チューブ18の周囲溝21との間のロックはこの圧力によって解除される。ここで壁7、フィルタ16、および排出チューブ18はカートリッジ46またはカートリッジヘッド10に対して移動可能なように装着されているので、閉止システムのそれらの部分は前方に押され、一方、保持リング14によってカートリッジ46に固定して連結されるストッパ8はそれと同時に移動されることはない。骨セメントドウ44は本明細書では、保持リング14のスポーク間の開口部を通って流れる。その間は壁7の排出開口部48は開かれている。壁7、フィルタ16、および排出チューブ18は、壁7の前方側がカートリッジヘッド10の前方の内側面に当たるまで、前方に押しやられる。この状況は図6Eに例示されている。カートリッジ46はここで外に向かって開口される。壁7が内部の前方側に当たる場合、壁7とストッパ8との間の距離は非常に大きくなるので、骨セメントドウ44が流出する自由な領域が少なくとも排出チューブ18または排出開口部48の断面積と同程度に大きくなり、そうなると、骨セメントドウ44の流れの妨げは最小限に抑えられる。
【0178】
搬送ピストン5を、したがって、排出ピストン6をさらに進めることによって、完成した骨セメントドウ44が排出開口部および排出チューブ18を通して外に向かって押圧され、施用することができる(図6F参照)。
【0179】
粉末1に供給される添加剤のおかげで、カートリッジ46の筒状内部の前方部分の一方の端部面においてモノマー液2を押し込み、それにもかかわらず、粉末1におけるモノマー液2の完全な分散を実現することが可能である。骨セメントアプリケータの本発明による構造によって、従来の押出し器具40を使用可能にすることができ、ラム42が単方向に直線的に移動することによって、モノマー液2用の容器9を開口すること、モノマー液2を粉末1に押し込み、したがって、骨セメントドウ44を混合すること、ならびに、閉止システムを開口し、混合された骨セメントドウ44を放出および施用することが可能である。閉止システムの本発明による構造を用いると、排出開口部48を開口するために、ラム42によって搬送ピストン5にかけられる力を使用可能にすることができる。
【0180】
図9から図13は、本発明による第3の例示的な骨セメントアプリケータを示し、これが図1から図5による第1の例示的な骨セメントアプリケータと異なる点は、特に、第3の例示的な骨セメントアプリケータが、2つのカートリッジ部分から構成されないカートリッジ50を有するということと、排出ピストン6の後方側の空所に充填材52が設けられ、具体的には、閉止システムの構造が異なることであり、ここでもカートリッジヘッド10はカートリッジ50にねじ込まれる。
【0181】
本明細書で、図9は、骨セメントドウを生成および施用する間の骨セメントアプリケータの使用順序を示す、代替の閉止システムを有する第3の例示的な骨セメントアプリケータの6つの概略断面図AからFを示し、図10は、骨セメントアプリケータの斜視外観図を示し、図11は、開始状態にある骨セメントアプリケータの斜視断面図を示し、図12は、開始状態にある骨セメントアプリケータの概略部分断面図として代替の閉止システムの拡大詳細を示し、図13は、骨セメントドウ44が押し出された後の、第3の例示的な骨セメントアプリケータの概略部分断面図として代替の閉止システムの拡大詳細を示す。
【0182】
第3の例示的な骨セメントアプリケータの構造および動作原理は、大半が第1の例示的な骨セメントアプリケータと一致し、その結果、大部分は第1の例示的実施形態を示す図の説明を参照することもできる。具体的には、使用される粉末1および2つのピストン5、6の基本的な動作原理は同一である。
【0183】
骨セメントアプリケータの開始状態では、PMMA骨セメントの1つの出発成分として粉末1が骨セメントアプリケータに収容され、PMMA骨セメントの別の出発成分としてモノマー液2が骨セメントアプリケータに収容される。粉末1は、主成分として骨セメント粉末を含有し、親水性添加剤も含有し、親水性添加剤を用いると粉末1内にモノマー液2を分散することができる。粉末1およびモノマー液2はカートリッジ50に収容され、粉末1は、カートリッジ50内部の前方部分に配置され、モノマー液2は、カートリッジ50の内部の後方部分に配置される。後方内部と前方内部とは一緒になってカートリッジ50の筒状内部の範囲を定める。
【0184】
骨セメントアプリケータの後方側に(図9では右に、図10および図11では後方の右上の角に向かって)搬送ピストン5が配置され、搬送ピストン5は、カートリッジ50の内部において軸方向に、骨セメントアプリケータの前方側の方向に(図9では左に、図10および図11では前方の左下の角に向かって)直線的に進むことができるか、または前記方向に移動可能なように装着される。搬送ピストン5はカートリッジ50の内部の後方側を閉止する。前方内部の後方端部に、またはカートリッジ50の前方内部から後方内部までの接続部分に、排出ピストン6が配置され、排出ピストン6は、カートリッジ50の内部において軸方向に、骨セメントアプリケータの前方側の方向に直線的に進むことができるか、または前記方向に移動可能なように装着される。このように、排出ピストン6は、カートリッジ50の内部において粉末1とモノマー液2との間に配置される。
【0185】
骨セメントアプリケータの前方側には閉止システムが配置され、その閉止システムによって、カートリッジ50の内部は前方に向かって閉止されるが、閉止システムは、出発成分1、2から混合される骨セメントドウ44を排出するために開口することができる(図9Eおよび図9F参照)。閉止システムの壁7には中央の円形の排出開口部があり、壁7は、カートリッジ50の前方内部の軸方向に移動可能なように配置される。排出開口部は内側リングによって範囲が定められる。壁7は、排出開口部の範囲を定める内側リングに外側リングが複数の支柱によって接続された、車輪のようにして構築され、このことは図11に暗示的に示される。内側リング、外側リング、および支柱は、一体になるようにプラスチックから作製される。閉止システムはストッパ54も備え、排出開口部は、図9Aおよび図11に示すように、開始状態においてストッパ54によって閉じられる。
【0186】
モノマー液2は、モノマー液2用の容器9としての閉じられたアンプル9に収容される。アンプル9は、モノマー液2に対して耐薬品性のあるガラスまたはプラスチックから作製される。モノマー液2は、骨セメントアプリケータのアンプル9内に長期間にわたって収納することができる。
【0187】
骨セメントアプリケータの閉止システムはカートリッジヘッド10に配置され、カートリッジヘッド10は、カートリッジ50の前方内部の前方領域の範囲を定める。より正確には、カートリッジヘッド10はカートリッジ50の一部である。前方側ではカートリッジヘッド10に気体用開口部が設けられ、気体用開口部は、骨セメントアプリケータの収納状態または開始状態でキャップ12によって閉止される。カートリッジ50の内部には、気体用開口部を通してエチレンオキシドなどの殺菌ガスを供給することができ、したがって、カートリッジ50の内容物を殺菌することができる。カートリッジ50の後方端部の壁のうちの搬送ピストン5の位置のすぐ隣に気体用開口部56が4つ設けられ、それら4つの気体用開口部は、カートリッジ50の内部を周囲環境に接続し、それら開口部を通して、カートリッジ50の内部に、外側から殺菌ガスを供給することができる。搬送ピストン5がカートリッジヘッド10の方向に移動するときは、それら後方側の気体用開口部56は搬送ピストン5によって閉止され、その結果、アンプル9から出ていくモノマー液2のうち、内部の後方部分から外に向かって進むことができるモノマー液2はない。このように、殺菌ガスは、カートリッジヘッド10の前方の気体用開口部および後方の気体用開口部56を通して、カートリッジ50全体にわたって案内することができる。
【0188】
閉止システムの壁7の支柱間に開いた隙間は、穿孔ディスクの形態のフィルタ16によってカバーされ、フィルタ16は、気体透過性であるが、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない。このように、壁7は、エチレンオキシドなどの気体は透過するが、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない。壁7は、径方向内向きに排出開口部に向かって延びるスポークを有する外側リングの形態のフレーム構造によって形成され、したがって、その隙間がフィルタ16によってカバーされなければ透過性である。壁7の構造は、図11で最もはっきり見ることができるが、最初の2つの例示的実施形態による壁の構造と一致する。
【0189】
排出チューブ18が壁7と一体形成され、排出開口部にまたは排出開口部の範囲を定める壁7の内側リングに配置され、その排出チューブ18を通して、骨セメントドウ44が骨セメントアプリケータを用いて施用される(図9F参照)。このように、排出チューブ18は開口するとカートリッジ50の内部の排出開口部になる。排出チューブ18は、カートリッジヘッド10の供給孔において壁7と共に移動可能なように配置される。したがって、排出チューブ18を用いることで壁7がカートリッジ50の内部に押されるという点で、粉末1は、壁7を用いてカートリッジ50の内部の前方部分中に押すことができる。排出チューブ18は、カートリッジヘッド10の供給孔の突起19と、排出チューブ18の外側に上下に配置される複数の溝とによって、引っ込まないように保持される。排出チューブ18は、カートリッジヘッド10の供給孔によって、長手方向に(すなわち、カートリッジ50の筒状内部の軸方向に)移動可能なように装着される。突起19および溝によって、排出チューブ、したがって、壁7は、カートリッジ50に様々な位置の様々な深さに押し込むことができ、したがって、粉末1に圧力をかけることができる。粉末1は、圧力下で、フィルタ16を伴う壁7と排出ピストン6との間でカートリッジ50の内部の前方部分に押し込まれ、弾性的な機械的圧力下にある。供給孔において溝を突起19とロックすることによって、圧縮された粉末1によってフィルタ16を伴う壁7に加えられる弾性的な圧力が、カートリッジ50の前方側の方向にまたはカートリッジヘッド10によって範囲が定められる内部の前方側に対して、フィルタ16を伴う壁7を動かし、したがって、粉末1への圧力を元通りに軽減するのに十分に強くなることを防止することが可能なはずである。壁7は、周囲シール32によってカートリッジ50の内壁に対してシールされる。さらに、ねじ込み式カートリッジヘッド10とカートリッジ50との間の連結部は、周囲リングシール60によってシールされる。シール60によって、骨セメントドウ44がカートリッジヘッド10とカートリッジ50との間で外に向かって押圧されることが防止される。
【0190】
排出開口部がストッパ54によって閉止され、そのストッパ54は、排出チューブ18に挿入され、したがって、カートリッジ50を外に向かって閉止する。ストッパ54は、排出チューブ18に移動可能なように配置され、内側から外に排出チューブ18から押圧することができる。
【0191】
壁7は、フィルタ16および壁7に対して移動可能なように保持されるストッパ54と共に、第3の例示的実施形態による本発明による骨セメントアプリケータのための本発明による閉止システムを形成する。
【0192】
粉末1は透過しないがモノマー液2は透過する有孔フィルタ20が、排出ピストン6のうちの粉末1を向く側に配置される。したがって、粉末1は、排出ピストン6に設けられる通路22を通ってカートリッジ50の内部の後方部分に進むことができないようにされるはずである。本明細書では、有孔フィルタ20は通路22をカバーし、そうすることで、粉末1はやはり通路22中に進むことができない。アンプル9が開口されたときに、すなわち、モノマー液2が内部の前方部分に押し込まれる前に、既にモノマー液2が粉末1のセメント粉末粒子と早まって反応することが防止される。このように、膨張する骨セメントによって通路22がブロックされることを防ぎ、したがって、粉末1へのモノマー液2のさらなる導入を妨害することを防ぐことが可能である。
【0193】
排出ピストン6のうちの有孔フィルタ20の反対側には、網24またはふるい24が配置され、網24またはふるい24によって、壊されたアンプル9の破片62が通路22に入ることが防止される。本明細書ではカートリッジ50の内部の後方部分からのモノマー液2を粉末1中に難なく確実に押すこともできるはずである。アンプル9が壊されて開口されるときは、まずアンプルヘッド26が折り取られ、そのときに、アンプル9が開口される(図9B参照)。その後、アンプル9からのモノマー液2は、流出してカートリッジ50の内部の前方部分に入ることができ、そのときに、通路22を通して粉末1に押し込むことができる(図9C参照)。本明細書ではアンプル9は破砕されて破片62になり、それら破片は非常に小さいので、排出ピストン6のうちのカートリッジベースを向く側に(図9では右に、図10および図11では後方の右上の角に向かって)形成される空所に収まる。
【0194】
押出し器具40を締結するためのリテーナ36(図9参照)が、カートリッジベースにおいてカートリッジ50の外側に設けられる。
【0195】
排出ピストン6にはデテント手段としてフック38が横向きに複数設けられ、それらフック38は、カートリッジ50の内部の壁にある、適合する溝に係合する。その結果生じるカートリッジ50への排出ピストン6の係止は、ガラスアンプル9が破砕されるときに生じる力の圧力、および搬送ピストン5が前方に進むときのモノマー液2の圧力に抵抗し、押し込まれる壁7によって粉末1から排出ピストン6にかけられる圧力に耐えるのに十分に強い。搬送ピストン5が直接的に排出ピストン6に当たるとき(図9C参照)に初めて、係止連結が解除されるか、またはフック38が変形してカートリッジ50の内部の壁の溝から摺動し、その後、排出ピストン6は、骨セメントアプリケータの前方側においてカートリッジヘッド10の方向に搬送ピストン5によって押される。
【0196】
発泡材料のインサートおよび/またはプラスチックのビーズもしくは粒などの充填材(図示せず)を、好ましくは、排出ピストン6の後方側に形成される排出ピストン6の空所に設けることができる。このように、その空所に残り、搬送ピストン5によって粉末1に押し込むことができない、モノマー液2の体積は、可能な限り小さくなるように維持されるものとする。さらに、この充填材はアンプル9のための輸送保護材および衝撃保護材として使用でき、そうすることで、骨セメントアプリケータが開始状態(図9Aおよび図11参照)で輸送されるときにアンプル9を誤って破損することがない。この目的で、カートリッジ50の内部でガラスアンプル9の周りにさらに、圧縮可能な発泡材料を配置することができる。
【0197】
本発明による例示的な方法の順序を、上下に示す6つの断面図(図9Aから図9F)によって図9に例示する。骨セメントアプリケータはまず、押出し器具40に挿入され、そのために、カートリッジ50は、リテーナ36によって、押出し器具40の適合する相手部品41に締結される(図9A参照)。
【0198】
その後、押出し器具40のラム42が相手部品41に対して進められる。ラム42は搬送ピストン5に当たる。そのとき、搬送ピストン5は、ラム42によって排出ピストン6の方向に押される。搬送ピストン5の移動によって、アンプル9は、デテント手段38によってロックされた排出ピストン6に対して押される。アンプルヘッド26は折り取られ、アンプル9は開口される(図9B参照)。
【0199】
押出し器具40内の骨セメントアプリケータは、好ましくは、本明細書ではカートリッジヘッド10が上を向くように保持され、そうすることで、搬送ピストン5がさらに前方に進み続けると、上部に配置された空気が内部の後方部分から上に向かって押されて、粉末1および気体透過性フィルタ16を通って外に向かう。アンプル9からのモノマー液2は、最終的に、搬送ピストン5によって、網24および/またはふるい24を通して押されて、通路22および有孔フィルタ20を通り、内部の前方部分に至り、粉末1に到達する。そうする際に、アンプル9はさらに圧縮され、したがって、破砕されてより小さい破片62になり、それら破片は最終的に排出ピストン6の後方側の空所に集まる。粉末1は親水性添加剤を含有し、親水性添加剤は、水性のモノマー液2と比べて表面エネルギーが大きく、その表面エネルギーは骨セメント粉末の表面エネルギーよりも大きい。同時に、粉末粒子間の隙間が小さいので、圧縮された粉末1のおかげで毛細管力が大きい。加えて、モノマー液2は圧力によって粉末1に押し込まれる。これら全対策の結果、モノマー液2は粉末1中に粉末1を通して急速に案内され、膨張するセメント粉末粒子によってモノマー液2が粉末1にさらに拡散することが妨害される前に、粉末1内に十分に拡散および分散することができる。最後に、搬送ピストン5は排出ピストン6に接触する(図9C参照)。
【0200】
粉末1のセメント粉末はモノマー液2と反応し、そこで骨セメントドウ44を形成する。骨セメントドウ44の粉末1とモノマー液2との所望の混合比を得るために、余分のモノマー液2は、カートリッジ50の前方側で壁7の多孔性フィルタ16とカートリッジヘッド10との間に受け入れることができる。そのために、モノマー液2は、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない多孔性フィルタ16を通して押される。モノマー液2が粉末1を通り抜けて壁7の位置に至ると余分なモノマー液2が吸収されるので、骨セメントドウ44は、軟らかくなり過ぎること、したがって、望ましくない粘度に達することが防止される。さらに、骨セメントドウ44の粘度が高くなり過ぎるのを避けるために、モノマー液2が余分に使用され、そうすることで、排出ピストン6と搬送ピストン5との間に残る、さらに排出ピストン6の通路22に残る、モノマー液2の残渣によるロスが相殺される。
【0201】
搬送ピストン5がさらに進むので、排出ピストン6はカートリッジヘッド10の方向に押しやられ、係止手段またはデテント手段38が解除される。排出ピストン6がカートリッジヘッド10の方向に移動するので、骨セメントドウ44によって閉止システムの排出開口部の壁7、フィルタ16、およびストッパ54に圧力がかけられる。骨セメントドウ44は、フィルタ16を貫通できず、したがって、骨セメントドウ44の圧力はフィルタ16および壁7に作用する。
【0202】
壁7、フィルタ16、および排出チューブ18が初期段階でカートリッジ50またはカートリッジヘッド10に対して移動可能なように装着されるので、突起19と、排出チューブ18の外周の溝との間のロックが解除された後に、壁7が内側からカートリッジヘッド10に当たり、そのときに、カートリッジヘッド10に、したがって、カートリッジ50に固定されるまで、閉止システムのこれら部分がストッパ54と一緒に前方に押される(図9D参照)。このように壁7が内側からカートリッジヘッド10に当たる場合は、本特許出願の意味の範囲内ではカートリッジ50に対して固定されるという。ストッパ54は、骨セメントドウ44の圧力が、カートリッジヘッド10の方向に閉止システム7、16、54を全体として変位させるのに既に十分である場合に、ストッパ54を排出チューブ18に対して移動するのに十分ではなくなるように、排出チューブ18に固定して挿入される。言い換えれば、壁7をカートリッジ50に対して移動するかまたはカートリッジ50に対する壁7の静止摩擦を克服するために必要な骨セメントドウ44の圧力は、ストッパ54を壁7および排出チューブ18に対して移動するかまたは排出チューブ18に対するストッパ54の静止摩擦を克服するために必要な骨セメントドウ44の圧力よりも小さい。
【0203】
壁7が内側からカートリッジヘッド10に当たり、搬送ピストン5がそれに当たる排出ピストン6と一緒にカートリッジヘッド10の方向にさらに進められるとすぐに、ストッパ54が前方に押されて排出チューブ18から出る(図9E参照)。骨セメントドウ44の接触圧力によってカートリッジ50の前方側に固定して当たる壁7は、このように骨セメントドウ44と共に移動されず、ストッパ54は、壁7に対して移動され、そのときに、排出開口部から外に押しやられ、したがって、壁7の排出開口部が開口される。最後に、ストッパ54は、排出チューブ18の外に落ち、骨セメントドウ44が排出チューブ18から出る。カートリッジ50はここで外に向かって開口される。搬送ピストン5を、したがって、排出ピストン6をさらに進めることによって、完成した骨セメントドウ44が排出開口部および排出チューブ18を通して外に向かって押圧され、施用することができる(図9F参照)。
【0204】
粉末1に供給される添加剤のおかげで、カートリッジ50の筒状内部の前方部分の一方の端部面においてモノマー液2を押し込み、それにもかかわらず、粉末1におけるモノマー液2の完全な分散を実現することが可能である。骨セメントアプリケータの本発明による構造によって、従来の押出し器具40を使用可能にすることができ、ラム42が単方向に直線的に移動することによって、モノマー液2用の容器9を開口すること、モノマー液2を粉末1に押し込み、したがって、骨セメントドウ44を混合すること、ならびに、閉止システムを開口し、混合された骨セメントドウ44を放出および施用することが可能である。閉止システムの本発明による構造を用いると、排出開口部48を開口するために、ラム42によって搬送ピストン5にかけられる力を使用可能にすることができる。
【0205】
本発明による第4の例示的な骨セメントアプリケータが図14から図16に示されており、これが図1から図5による第1の例示的な骨セメントアプリケータとは異なる点は、第4の例示的な骨セメントアプリケータは第2および第3の例示的な骨セメントアプリケータと同様に、2つのカートリッジ部分から構成されないカートリッジ50を有することと、ここでは第2および第3の実施形態とは異なり、カートリッジ50のカートリッジヘッド64がカートリッジ50と一体形成されることである。第4の例示的な骨セメントアプリケータは、図6から図8による第2の例示的な骨セメントアプリケータと同様に、やはりカートリッジ50の内部でデテント手段によってカートリッジ50に連結されない排出ピストン6を有する。本特許出願にとって重要な第1および第2の例示的実施形態との違いは、閉止システムが第3の実施形態と同様に移動可能なストッパ54を用いて形成され、第3の実施形態とは異なり、中央排出開口部が設けられる壁7が、開始状態で既にカートリッジ50の前方側に当たるように配置され、したがって、固定されているという点である。
【0206】
本明細書で、図14は、開始状態にある骨セメントアプリケータの斜視断面図を示し、図15は、骨セメントドウ44を生成および施用する間の骨セメントアプリケータの使用順序を示す、代替の閉止システムを有する第4の例示的な骨セメントアプリケータの5つの概略断面図AからEを示し、図16は、開始状態にある骨セメントアプリケータの概略断面図を示す。
【0207】
第4の例示的な骨セメントアプリケータの構造および動作原理は、大半が第1および第3の例示的な骨セメントアプリケータと一致し、したがって、大部分は他の例示的実施形態を示す図の説明を参照することもできる。具体的には、使用される粉末1および2つのピストン5、6の基本的な動作原理は同一である。
【0208】
骨セメントアプリケータの開始状態では、PMMA骨セメントの1つの出発成分として粉末1が骨セメントアプリケータに収容され、PMMA骨セメントの別の出発成分としてモノマー液2が骨セメントアプリケータに収容される。粉末1は、主成分として骨セメント粉末を含有し、親水性添加剤も含有し、親水性添加剤を用いると粉末1内にモノマー液2を分散することができる。粉末1およびモノマー液2はカートリッジ50に収容され、粉末1は、カートリッジ50内部の前方部分に配置され、モノマー液2は、カートリッジ50の内部の後方部分に配置される。後方内部と前方内部とは一緒になってカートリッジ50の筒状内部の範囲を定める。
【0209】
骨セメントアプリケータの後方側に(図14では後方の右上の角に向かって、図15では右に、図16では下に)搬送ピストン5が配置され、搬送ピストン5は、カートリッジ50の内部において軸方向に、骨セメントアプリケータの前方側の方向に(図14では前方の左下の角に向かって、図15では左に、図16では上に)直線的に進むことができるか、または前記方向に移動可能なように装着される。搬送ピストン5はカートリッジ50の内部の後方側を閉止する。前方内部の後方端部に、またはカートリッジ50の前方内部から後方内部までの接続部分に、排出ピストン6が配置され、排出ピストン6は、カートリッジ50の内部において軸方向に、骨セメントアプリケータの前方側の方向に直線的に進むことができるか、または前記方向に移動可能なように装着される。このように、排出ピストン6は、カートリッジ50の内部において粉末1とモノマー液2との間に配置される。
【0210】
骨セメントアプリケータの前方側には閉止システムが配置され、その閉止システムによって、カートリッジ50の内部は前方に向かって閉止されるが、閉止システムは、出発成分1、2から混合される骨セメントドウ44を排出するために開口することができる(図15Dおよび図15E参照)。閉止システムの壁7には中央の円形の排出開口部があり、壁7は、カートリッジ50の前方内部の軸方向においてカートリッジヘッド64の内側に当たる。排出開口部は内側リングによって範囲が定められる。壁7は、排出開口部の範囲を定める内側リングに外側リングが複数の支柱によって接続された、車輪のようにして構築され、このことは図14に暗示的に示される。内側リング、外側リング、および支柱は、一体になるようにプラスチックから作製される。閉止システムはストッパ54も備え、排出開口部は、図14図15A、および図16に示すように、開始状態においてストッパ54によって閉じられる。
【0211】
モノマー液2は、モノマー液2用の容器9としての閉じられたアンプル9に収容される。アンプル9は、モノマー液2に対して耐薬品性のあるガラスまたはプラスチックから作製される。モノマー液2は、骨セメントアプリケータのアンプル9内に長期間にわたって収納することができる。
【0212】
骨セメントアプリケータの閉止システムはカートリッジヘッド64に配置され、カートリッジヘッド64は、カートリッジ50の前方内部の前方領域の範囲を定める。カートリッジヘッド64はカートリッジ50の一部である。前方側にはカートリッジヘッド64に気体用開口部11が設けられる。気体用開口部11は、骨セメントアプリケータの収納状態または開始状態で閉止具によって閉止することができる。カートリッジ50の内部には、気体用開口部11を通してエチレンオキシドなどの殺菌ガスを供給することができ、したがって、カートリッジ50の内容物を殺菌することができる。カートリッジ50の後方端部の壁のうちの搬送ピストン5の位置のすぐ隣に気体用開口部56が複数設けられ、それら気体用開口部は、カートリッジ50の内部を周囲環境に接続し、それら開口部を通して、カートリッジ50の内部に、外側から殺菌ガスを供給することができる。搬送ピストン5がカートリッジヘッド64の方向に移動するときは、それら後方側の気体用開口部56は搬送ピストン5によって閉止され、その結果、アンプル9から出ていくモノマー液2のうち、内部の後方部分から外に向かって進むことができるモノマー液2はない。このように、殺菌ガスは、カートリッジヘッド64の前方の気体用開口部11および後方の気体用開口部56を通して、カートリッジ50全体にわたって案内することができる。
【0213】
閉止システムの壁7の支柱間に開いた隙間は、フィルタ16によってカバーされ、フィルタ16は、気体透過性であるが、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない。このように、壁7は、エチレンオキシドなどの気体は透過するが、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない。壁7は、径方向内向きに排出開口部に向かって延びるスポークを有する外側リングの形態のフレーム構造によって形成され、したがって、その隙間がフィルタ16によってカバーされなければ透過性である。壁7の構造は、図14で最もはっきり見ることができるが、最初の2つの例示的実施形態による壁の構造と一致する。
【0214】
雄ねじを有する排出チューブ連結部材66が壁7と一体形成され、排出開口部にまたは排出開口部の範囲を定める壁7の内側リングに配置され、その排出チューブ連結部材66を通して骨セメントドウ44が骨セメントアプリケータを用いて施用される(図15E参照)。このように、排出チューブ連結部材66は開口するとカートリッジ50の内部の排出開口部になる。アクセスの難しい領域には排出チューブ延長部分68によって骨セメントドウ44を施用でき、排出チューブ延長部分68は、排出チューブ連結部材66にねじ込むことができる。排出チューブ連結部材66は、カートリッジヘッド64の供給孔に壁7と共に配置され、論理的には、カートリッジヘッド64に固定して連結することもできる。排出ピストン6がカートリッジ50の内部にカートリッジヘッド64の方向に押されるという点で、粉末1は、排出ピストン6を用いてカートリッジ50の内部の前方部分中に押すことができる。排出ピストン6は、カートリッジ50の内部の壁との嵌合によって引っ込まないように保持され、かつ/または、カートリッジ50においてアンプル9および搬送ピストン5によって支持されることで保持される。粉末1は、圧力下で、フィルタ16を伴う壁7と排出ピストン6との間でカートリッジ50の内部の前方部分に押し込まれ、弾性的な機械的圧力下にある。カートリッジ50の内壁との排出ピストン6の嵌合ならびに/またはアンプル9および搬送ピストン5による支持によって、圧縮される粉末1によって排出ピストン6にかけられる弾性的な圧力が、排出ピストン6を移動し、粉末1への圧力を元通りに軽減するのに十分に強くなることを防止することが可能なはずである。壁7は、周囲シール32によってカートリッジ50の内壁に対してシールされる。
【0215】
排出開口部がストッパ54によって閉止され、そのストッパ54は、排出チューブ連結部材66に挿入され、したがって、カートリッジ50を外に向かって閉止する。ストッパ54は、排出チューブ連結部材66に移動可能なように配置され、内側から外に排出チューブ連結部材66から押圧することができる。ストッパ54は、プラスチックシール58によって排出開口部に対してシールされる。ストッパ54および/またはプラスチックシール58は、気体は透過するが粉末1は透過せず、そうなると、カートリッジ50の内部はエチレンオキシドなどの殺菌ガスを用いて内部の粉末1と共に殺菌することができる。
【0216】
内側からカートリッジヘッド64に当たり、したがって、カートリッジ50に固定される壁7は、フィルタ16と、壁7に対して移動可能なように保持されるストッパ54と共に、第4の例示的実施形態による本発明による骨セメントアプリケータのための本発明による閉止システムを形成する。
【0217】
粉末1は透過しないがモノマー液2は透過する有孔フィルタ20が、排出ピストン6のうちの粉末1を向く側に配置される。したがって、粉末1は、排出ピストン6に設けられる通路22を通ってカートリッジ50の内部の後方部分に進むことができないようにされるはずである。本明細書では、有孔フィルタ20は通路22をカバーし、そうすることで、粉末1はやはり通路22中に進むことができない。アンプル9が開口されたときに、すなわち、モノマー液2が内部の前方部分に押し込まれる前に、既にモノマー液2が粉末1のセメント粉末粒子と早まって反応することが防止される。このように、膨張する骨セメントによって通路22がブロックされることを防ぎ、したがって、粉末1へのモノマー液2のさらなる導入を妨害することを防ぐことが可能である。
【0218】
排出ピストン6のうちの有孔フィルタ20の反対側には、網24またはふるい24が配置され、網24またはふるい24によって、壊されたアンプル9の破片が通路22に入ることが防止される。本明細書ではカートリッジ50の内部の後方部分からのモノマー液2を粉末1中に難なく確実に押すこともできるはずである。アンプル9が壊されて開口されるときは、まずアンプルヘッド26が折り取られ、そのときに、アンプル9が開口される(図15B参照)。その後、アンプル9からのモノマー液2は、流出してカートリッジ50の内部の前方部分に入ることができ、そのときに、通路22を通して粉末1に押し込むことができる(図15C参照)。本明細書ではアンプル9は破砕されて破片になり、それら破片は非常に小さいので、排出ピストン6のうちのカートリッジベースを向く側に(図14では後方の右上の角に向かって、図15では右に、図16では下に向かって)形成される空所に収まる。
【0219】
押出し器具40を締結するためのリテーナ36(図15参照)が、カートリッジベースにおいてカートリッジ50の外側に設けられる。
【0220】
ストッパ54は、排出チューブ連結部材66に非常にしっかりと嵌合するので、搬送ピストン5が前方に進むときのモノマー液2の圧力に耐え、押し込まれる壁7によって粉末1から排出ピストン6にかけられる圧力に耐えるように、アンプル9が破砕されるときに生じる力によって移動されることはない。モノマー液2が導入されるときおよび搬送ピストン5が前方に進むときに置き換えられる空気は、気体用開口部11を通って逃げることができる。搬送ピストン5が直接的に排出ピストン6に当たるとき(図15C参照)に初めて、ストッパ54と排出チューブ連結部材66(64)との間の静止摩擦が克服され、ストッパ54が排出チューブ連結部材66から押され、したがって、骨セメントドウ44のためのカートリッジ50が外に向かって開口される。
【0221】
発泡材料のインサートおよび/またはプラスチックのビーズもしくは粒などの充填材(図示せず)を、好ましくは、排出ピストン6の後方側に形成される排出ピストン6の空所に設けることができる。このように、その空所に残り、搬送ピストン5によって粉末1に押し込むことができない、モノマー液2の体積は、可能な限り小さくなるように維持されるものとする。さらに、この充填材はアンプル9のための輸送保護材および衝撃保護材として使用でき、そうすることで、骨セメントアプリケータが開始状態(図1および図2)で輸送されるときにアンプル9を誤って破損することがない。この目的で、カートリッジ50の内部でガラスアンプル9の周りにさらに、圧縮可能な発泡材料を配置することができる。
【0222】
本発明による例示的な方法の順序を、上下に示す5つの断面図(図15Aから図15E)によって図15に例示する。骨セメントアプリケータはまず、押出し器具40に挿入され、そのために、カートリッジ50は、リテーナ36によって、押出し器具40の適合する相手部品41に締結される(図15A参照)。
【0223】
骨セメントアプリケータを挿入した後に、押出し器具40のラム42がカートリッジ50に対して進められる。ラム42は搬送ピストン5に当たる。そのとき、搬送ピストン5は、ラム42によって排出ピストン6の方向に押される。搬送ピストン5の移動によって、アンプル9は、押圧される粉末1およびカートリッジヘッド64によって保持される排出ピストン6に対して押される。アンプルヘッド26は折り取られ、アンプル9は開口される(図15B参照)。
【0224】
押出し器具40内の骨セメントアプリケータは、好ましくは、本明細書ではカートリッジヘッド64が上を向くように保持され、そうすることで、搬送ピストン5がさらに前方に進み続けると、上部に配置された空気が内部の後方部分から上に向かって押されて、粉末1を通り、気体透過性フィルタ16を通り、さらに気体用開口部11を通って外に向かう。アンプル9からのモノマー液2は、最終的に、搬送ピストン5によって、網24および/またはふるい24を通して押されて、通路22および有孔フィルタ20を通り、内部の前方部分に至り、粉末1に到達する。そうする際に、アンプル9はさらに圧縮され、したがって、破砕されてより小さい破片になり、それら破片は最終的に排出ピストン6の後方側の空所に集まる。粉末1は親水性添加剤を含有し、親水性添加剤は、水性のモノマー液2と比べて表面エネルギーが大きく、その表面エネルギーは骨セメント粉末の表面エネルギーよりも大きい。同時に、粉末粒子間の隙間が小さいので、圧縮された粉末1のおかげで毛細管力が大きい。加えて、モノマー液2は圧力によって粉末1に押し込まれる。これら全対策の結果、モノマー液2は粉末1中に粉末1を通して急速に案内され、膨張するセメント粉末粒子によってモノマー液2が粉末1にさらに拡散することが妨害される前に、粉末1内に十分に拡散および分散することができる。最後に、搬送ピストン5は排出ピストン6に接触する(図15C参照)。
【0225】
粉末1のセメント粉末はモノマー液2と反応し、そこで骨セメントドウ44を形成する。骨セメントドウ44の粉末1とモノマー液2との所望の混合比を得るために、余分のモノマー液2は、カートリッジ50の前方側で壁7の多孔性フィルタ16とカートリッジヘッド64との間に受け入れることができる。そのために、モノマー液2は、粉末1および骨セメントドウ44は透過しない多孔性フィルタ16を通して押される。モノマー液2が粉末1を通り抜けて壁7の位置に至ると余分なモノマー液2が吸収されるので、骨セメントドウ44は、軟らかくなり過ぎること、したがって、望ましくない粘度に達することが防止される。さらに、骨セメントドウ44の粘度が高くなり過ぎるのを避けるために、モノマー液2が余分に使用され、そうすることで、排出ピストン6と搬送ピストン5との間に残る、さらに排出ピストン6の通路22に残る、モノマー液2の残渣によるロスが相殺される。
【0226】
搬送ピストン5がさらに進むので、排出ピストン6はカートリッジヘッド64の方向に押しやられる。排出ピストン6がカートリッジヘッド64の方向に移動するので、骨セメントドウ44によって閉止システムの排出開口部のストッパ54に圧力がかけられる。
【0227】
壁7が内側からカートリッジヘッド64に当たり、したがって、カートリッジヘッド(had)64の方向にさらに移動することができず、搬送ピストン5が、それに当たる排出ピストン6と一緒にカートリッジヘッド64の方向に前方に進むので、ストッパ54は、前方方向に排出チューブ連結部材66から外に押される(図15Dおよび図15E参照)。骨セメントドウ44の接触圧力によってカートリッジ50の前方側に固定して当たる壁7は、このように骨セメントドウ44と共に移動されず、ストッパ54は、壁7に対して移動され、そのときに、排出開口部から外に押しやられ、したがって、壁7の排出開口部が開口される。最後に、ストッパ54は、排出チューブ連結部材66の外に落ち、骨セメントドウ44が排出チューブ連結部材66から出る。カートリッジ50はここで外に向かって開口される。搬送ピストン5を、したがって、排出ピストン6をさらに進めることによって、完成した骨セメントドウ44が排出開口部および排出チューブ連結部材66を通して外に向かって押圧され、施用することができる(図15E参照)。
【0228】
粉末1に供給される添加剤のおかげで、カートリッジ50の筒状内部の前方部分の一方の端部面においてモノマー液2を押し込み、それにもかかわらず、粉末1におけるモノマー液2の完全な分散を実現することが可能である。骨セメントアプリケータの本発明による構造によって、従来の押出し器具40を使用可能にすることができ、ラム42が単方向に直線的に移動することによって、モノマー液2用の容器9を開口すること、モノマー液2を粉末1に押し込み、したがって、骨セメントドウ44を混合すること、ならびに、閉止システムを開口し、混合された骨セメントドウ44を放出および施用することが可能である。閉止システムの本発明による構造を用いると、排出開口部を開口するために、ラム42によって搬送ピストン5にかけられる力を使用可能にすることができる。
【0229】
本発明による第5の例示的な骨セメントアプリケータが図17および図18に示されており、これは特に経済的な構造のものであり、図1から図5による第1の例示的な骨セメントアプリケータと異なる点は、分割壁が設けられておらず、その代わりに、プラスチックから一体形成されたカートリッジ50のカートリッジヘッド74によって壁74が形成されることである。したがって、第5の例示的な骨セメントアプリケータは、第2、第3、および第4の例示的な骨セメントアプリケータと同様に、2つのカートリッジ部分から構成されないカートリッジ50を有し、ここでは第2および第3の実施形態と異なるが第4の実施形態と同様に、カートリッジ50のカートリッジヘッド74もカートリッジ50と一体形成される。第5の例示的な骨セメントアプリケータは、図6から図8による第2の例示的な骨セメントアプリケータおよび図14から図16による第4の例示的実施形態と同様に、やはり、カートリッジ50の内部においてデテント手段によってカートリッジ50に連結されない排出ピストン6を有する。本特許出願にとって重要な第1および第2の例示的実施形態との違いは、閉止システムが第4の実施形態と同様に移動可能なストッパ70を用いて形成され、第3および第4の実施形態とは異なり、中央排出開口部が設けられる壁74が、カートリッジ50と一体形成され、したがって、カートリッジ50に常に連結され、したがって、固定されることである。
【0230】
本明細書で、図17は、骨セメントドウ44を生成および施用する間の骨セメントアプリケータの使用順序を示す、代替の閉止システムを有する第5の例示的な骨セメントアプリケータの6つの概略断面図AからFを示し、図18は、開始状態にある骨セメントアプリケータの斜視断面図を2つ示す。
【0231】
第5の例示的な骨セメントアプリケータの構造および動作原理は、大半が第1および第4の例示的な骨セメントアプリケータと一致し、したがって、大部分は他の例示的実施形態を示す図の説明を参照することもできる。具体的には、使用される粉末1および2つのピストン5、6の基本的な動作原理は同一である。
【0232】
骨セメントアプリケータの開始状態では、PMMA骨セメントの出発成分として粉末1が骨セメントアプリケータに収容され、PMMA骨セメントの別の出発成分としてモノマー液2が骨セメントアプリケータに収容される。粉末1は、主成分として骨セメント粉末を含有し、親水性添加剤も含有し、親水性添加剤を用いると粉末1内にモノマー液2を分散することができる。粉末1およびモノマー液2はカートリッジ50に収容され、粉末1は、カートリッジ50内部の前方部分に配置され、モノマー液2は、カートリッジ50の内部の後方部分に配置される。後方内部と前方内部とは一緒になってカートリッジ50の筒状内部の範囲を定める。
【0233】
骨セメントアプリケータの後方側に(図17では右に)搬送ピストン5が配置され、搬送ピストン5は、カートリッジ50の内部において軸方向に、骨セメントアプリケータの前方側の方向に(図17では左に)直線的に進むことができるか、または前記方向に移動可能なように装着される。搬送ピストン5はカートリッジ50の内部の後方側を閉止する。前方内部の後方端部に、またはカートリッジ50の前方内部から後方内部までの接続部分に、排出ピストン6が配置され、排出ピストン6は、カートリッジ50の内部において軸方向に、骨セメントアプリケータの前方側の方向に直線的に進むことができるか、または前記方向に移動可能なように装着される。このように、排出ピストン6は、カートリッジ50の内部において粉末1とモノマー液2との間に配置される。
【0234】
骨セメントアプリケータの前方側には閉止システムが配置され、その閉止システムによって、カートリッジ50の内部は前方に向かって閉止されるが、閉止システムは、出発成分1、2から混合される骨セメントドウ44を排出するために開口することができる(図17D図17E、および図17F参照)。閉止システムの一部である壁74には中央の円形の排出開口部があり、壁74は、カートリッジ50のカートリッジヘッド74を形成する。カートリッジ50は壁74と一緒にプラスチックから一体形成される。閉止システムはストッパ70も備え、排出開口部は、図17Aおよび図18に示すように、開始状態においてストッパ70によって閉じられる。
【0235】
モノマー液2は、モノマー液2用の容器9としての閉じられたアンプル9に収容される。アンプル9は、モノマー液2に対して耐薬品性のあるガラスまたはプラスチックから作製される。モノマー液2は、骨セメントアプリケータのアンプル9内に長期間にわたって収納することができる。
【0236】
骨セメントアプリケータの閉止システムは壁74およびストッパ70によって形成される。ピストン5、6が壁74に向かって進むときに気体がカートリッジ50の内部から出ることができるように、さらに、殺菌ガスをカートリッジ50の内部に導入できるように、ストッパ70は、周囲の多孔性プラスチックリング76によって、排出開口部に対してまたは排出チューブ72の内壁に対してシールされる。多孔性プラスチックリング76は、気体は透過し粉末1は透過せず、ポリエチレンから作製される。このように形成される気体用開口部は、ストッパ70の前方の円形プレートによって、骨セメントアプリケータの収納状態または開始状態において気体を透過するようにカバーされる。カートリッジ50の内部には、プラスチックリング76を通して、該当する場合はさらに気体透過性のストッパ70を通して、エチレンオキシドなどの殺菌ガスを供給することができ、したがって、カートリッジ50の内容物を殺菌することができる。カートリッジ50の後方端部の壁のうちの搬送ピストン5の位置のすぐ隣に気体用開口部56が複数設けられ、それら気体用開口部は、カートリッジ50の内部を周囲環境に接続し、それら開口部を通して、カートリッジ50の内部に、外側から殺菌ガスを供給することができる。搬送ピストン5が壁74の方向に移動するときは、それら後方側の気体用開口部56は搬送ピストン5によって閉止され、その結果、アンプル9から出ていくモノマー液2のうち、内部の後方部分から外に向かって進むことができるモノマー液2はない。このように、殺菌ガスは、多孔性プラスチックリング76および後方の気体用開口部56を通して、カートリッジ50全体にわたって案内することができ、したがって、粉末1全体に流れることができる。
【0237】
雄ねじを有する排出チューブ72がカートリッジ50および壁74と一体形成され、排出開口部に配置され、その排出チューブ72を通して、骨セメントドウ44が骨セメントアプリケータを用いて施用される(図17F参照)。排出チューブ72上の雄ねじには排出チューブ延長部分68をねじ込むことができ(図18参照)、したがって、アクセスの難しい領域に骨セメントドウ44を施用することができる。
【0238】
粉末1は、排出ピストン6を用いて、排出ピストン6をカートリッジ50の内部において壁74の方向に押すことによって、カートリッジ50の内部の前方部分中に押すことができる。排出ピストン6は、カートリッジ50の内部の壁との嵌合によって引っ込まないように保持され、かつ/または、カートリッジ50内でアンプル9および搬送ピストン5によって支持される状態に保持される。粉末1は、圧力下で、壁74と排出ピストン6との間でカートリッジ50の内部の前方部分に押し込まれ、弾性的な機械的圧力下にある。カートリッジ50の内壁との排出ピストン6の嵌合ならびに/またはアンプル9および搬送ピストン5による支持によって、圧縮される粉末1によって排出ピストン6にかけられる弾性的な圧力が、排出ピストン6を移動し、粉末1への圧力を元通りに軽減するのに十分に強くなることを防止することが可能なはずである。
【0239】
排出開口部がストッパ70によって閉止され、そのストッパ70は、排出チューブ72に挿入され、したがって、カートリッジ50を外に向かって閉止する。ストッパ70は、排出チューブ72に移動可能なように配置され、内側から外に排出チューブ72から押すことができる。
【0240】
排出ピストン6には他の例示的実施形態にも設けられるように通路22が設けられ、その通路を通して、搬送ピストン5を用いてモノマー液2を粉末1に押し込むことができる。排出ピストン6のうちの粉末1を向く側には、粉末1は透過しないがモノマー液2は透過する有孔フィルタが通路22を覆うように配置され、通路22をカバーする。したがって、粉末1は、通路22を通ってカートリッジ50の内部の後方部分に進むこと、または通路22に進むことが防止されるものとする。したがって、モノマー液2は、アンプル9が開封されたときに、すなわち、モノマー液2が内部の前方部分に押し込まれる前に、粉末1のセメント粉末粒子と早まって既に反応することが防止される。このように、膨張する骨セメントによって通路22がブロックされることを防ぎ、したがって、粉末1へのモノマー液2のさらなる導入を妨害することを防ぐことが可能である。
【0241】
排出ピストン6のうちの有孔フィルタ20の反対側には、通路22を覆うようにくぼみに嵌まる網24が配置され、それら網によって、壊されたアンプル9の破片が通路22に入ることが防止される。本明細書ではカートリッジ50の内部の後方部分からのモノマー液2を粉末1中に難なく確実に押すこともできるはずである。アンプル9が壊されて開口されるときは、まずアンプルヘッド26が折り取られ、そのときに、アンプル9が開口される(図17B参照)。その後、アンプル9からのモノマー液2は、流出してカートリッジ50の内部の前方部分に入ることができ、そのときに、通路22を通して粉末1に押し込むことができる(図17C参照)。本明細書ではアンプル9は破砕されて破片になり、それら破片は非常に小さいので、排出ピストン6のうちのカートリッジベースを向く側に(図17では右に)形成される空所に収まる。
【0242】
押出し器具40を締結するためのリテーナ36(図17参照)が、カートリッジベースにおいてカートリッジ50の外側に設けられる。
【0243】
ストッパ70は、排出チューブ72に非常にしっかりと嵌合するので、搬送ピストン5が前方に進むときのモノマー液2の圧力に耐え、粉末1から排出ピストン6にかけられる圧力に耐えるように、アンプル9が破砕されるときに生じる力によって移動されない。モノマー液2が導入されるときおよび搬送ピストン5が前方に進むときに置き換えられる空気は、多孔性プラスチックリング76を通って逃げることができる。搬送ピストン5が直接的に排出ピストン6に当たるとき(図17D参照)に初めて、ストッパ70と排出チューブ72との間の静止摩擦が克服され、そのときにストッパ70が排出チューブ72から押され、したがって、骨セメントドウ44のためのカートリッジ50が外に向かって開口される。
【0244】
発泡材料のインサートおよび/またはプラスチックのビーズもしくは粒などの充填材(図示せず)を、好ましくは、排出ピストン6の後方側に形成される排出ピストン6の空所に設けることができる。このように、その空所に残り、搬送ピストン5によって粉末1に押し込むことができない、モノマー液2の体積は、可能な限り小さくなるように維持されるものとする。さらに、この充填材はアンプル9のための輸送保護材および衝撃保護材として使用でき、そうすることで、骨セメントアプリケータが開始状態(図17Aおよび図18参照)で輸送されるときにアンプル9を誤って破損することがない。この目的で、カートリッジ50の内部でガラスアンプル9の周りにさらに、圧縮可能な発泡材料を配置することができる。
【0245】
本発明による例示的な方法の順序を、上下に示す6つの断面図(図17Aから図17F)によって図17に例示する。骨セメントアプリケータはまず、押出し器具40に挿入され、そのために、カートリッジ50は、リテーナ36によって、押出し器具40の適合する相手部品41に締結される(図17A参照)。
【0246】
骨セメントアプリケータを挿入した後に、押出し器具40のラム42がカートリッジ50に対して進められる。ラム42は搬送ピストン5に当たる。そのとき、搬送ピストン5は、ラム42によって排出ピストン6の方向に押される。搬送ピストン5の移動によって、アンプル9は、押圧される粉末1および壁74によって保持される排出ピストン6に対して押される。アンプルヘッド26は折り取られ、アンプル9は開口される(図17B参照)。
【0247】
押出し器具40内の骨セメントアプリケータは、好ましくは、本明細書では排出チューブ72が上を向くように保持され、そうすることで、搬送ピストン5がさらに前方に進み続けると、上部に配置された空気が内部の後方部分から上に向かって押されて、粉末1を通り、気体透過性フィルタ16を通り、さらに多孔性プラスチックリング76を通って外に向かう。アンプル9からのモノマー液2は、最終的に、搬送ピストン5によって、網24を通して押されて、通路22および有孔フィルタ20を通り、内部の前方部分に至り、粉末1に到達する(図17C参照)。そうする際に、アンプル9はさらに圧縮され、したがって、破砕されてより小さい破片になり、それら破片は最終的に排出ピストン6の後方側の空所に集まる。粉末1は親水性添加剤を含有し、親水性添加剤は、水性のモノマー液2と比べて表面エネルギーが大きく、その表面エネルギーは骨セメント粉末の表面エネルギーよりも大きい。同時に、粉末粒子間の隙間が小さいので、圧縮された粉末1のおかげで毛細管力が大きい。加えて、モノマー液2は圧力によって粉末1に押し込まれる。これら全対策の結果、モノマー液2は粉末1中に粉末1を通して急速に案内され、膨張するセメント粉末粒子によってモノマー液2が粉末1にさらに拡散することが妨害される前に、粉末1内に十分に拡散および分散することができる。最後に、搬送ピストン5は排出ピストン6に接触する(図17D参照)。
【0248】
粉末1のセメント粉末はモノマー液2と反応し、そこで骨セメントドウ44を形成する。搬送ピストン5がさらに進むので、排出ピストン6は壁74の方向に押しやられる。排出ピストン6が壁74の方向に移動するので、骨セメントドウ44によって閉止システムの排出開口部のストッパ70に圧力がかけられる。
【0249】
壁74がカートリッジ50にしっかりと固定され、搬送ピストン5が、それに当たる排出ピストン6と一緒に壁74の方向に前方に進むので、ストッパ70は、前方方向に排出チューブ72から外に押される(図17Eおよび図17F参照)。壁74はこのように骨セメントドウ44と共に移動されず、ストッパ70は壁74に対して移動され、したがって、排出開口部から外に押しやられ、したがって、壁74の排出開口部が開口される。最後に、ストッパ70は、排出チューブ72の外に落ち、骨セメントドウ44は、排出チューブ72から、または排出チューブ72にねじ込まれた排出チューブ延長部分68から出る。カートリッジ50はここで外に向かって開口される。搬送ピストン5を、したがって、排出ピストン6をさらに進めることによって、完成した骨セメントドウ44が排出開口部および排出チューブ72を通して外に向かって押圧され、施用することができる(図17F参照)。
【0250】
粉末1に供給される添加剤のおかげで、カートリッジ50の筒状内部の前方部分の一方の端部面においてモノマー液2を押し込み、それにもかかわらず、粉末1におけるモノマー液2の完全な分散を実現することが可能である。本発明による骨セメントアプリケータの構造によって、従来の押出し器具40を使用可能にすることができ、ラム42が単方向に直線的に移動することによって、モノマー液2用の容器9を開口すること、モノマー液2を粉末1に押し込み、したがって、骨セメントドウ44を混合すること、ならびに、閉止システムを開口し、混合された骨セメントドウ44を放出および施用することが可能である。本発明による閉止システムの構造を用いると、排出開口部を開口するために、ラム42によって搬送ピストン5にかけられる力を使用可能にすることができる。
【0251】
本発明による骨セメントアプリケータの別の変更形態が図19から図21に示されている。骨セメントアプリケータの前方部分だけがこれら図のそれぞれに示されている。そのときその構造の残り(具体的には、排出ピストンおよび搬送ピストン)は、例えば、最初の5つの例示的実施形態のうちの1つと同一である。
【0252】
図19および図21による両断面図では、本実施形態において骨セメントアプリケータの第5の実施形態と同様に、カートリッジヘッド74によって形成される壁74が設けられることを理解することができる。連結部材79には排出チューブ78がねじ込まれる。この目的で、連結部材79は雌ねじを有し、排出チューブ78は雄ねじを有する。連結部材79は、壁74およびカートリッジ50と一体形成される。排出チューブ78と連結部材79との間にはシールとして多孔性プラスチックリング80が設けられる。多孔性プラスチックリング80は、粉末1に対しては密であるが、気体は透過する。したがって、出ていく気体82がカートリッジ50の内部から外に向かって出ることができ、エチレンオキシドなどの殺菌ガスが入ることができる。気体の貫通する流れがねじ山によってあまり厳しく妨げられることのないように、連結部材79に開口部84が設けられ、それら開口部はねじ山を完全に貫通はしないが、気体の貫通する流れを可能にする(図20参照)。排出チューブ78は排出チューブ延長部分86を有することもでき、排出チューブ延長部分86は、所定の切断点によって排出チューブ78の残りに連結されている。その後、骨セメントドウは、要件に応じて、排出チューブ延長部分86(図21参照)を通してまたはより短い切り取られた排出チューブ78(図19参照)を通して施用することができる。
【0253】
本発明による骨セメントアプリケータの主な構成要素は、押出し成形によってプラスチックから経済的に生産することができる。
【0254】
図1から図21による様々な骨セメントアプリケータ全てにおいて、排出チューブ18、72または排出チューブ連結部材66上もしくは連結部材79に弾性的なホース(図示せず)が配置され、その弾性的なホースはトロカール内で終端できることを提供することができる。このように、骨セメントアプリケータは椎骨形成術のために使用することができる。
【0255】
骨セメントドウが流出し続けるのを防止するために、骨セメントドウ44を受け入れるチャンバを有する圧力リリーフ弁(図示せず)を、排出チューブ18、72または排出チューブ連結部材66もしくは連結部材79に本発明に従って設けることができる。圧力リリーフ弁を開くことによって、骨セメントドウが長期間にわたって施用先端部で流れ続けることなく、内部の骨セメントドウ44に作用する圧力を低下することができる。チャンバを用いることで、骨セメントドウは周囲環境に入ることが防止される。
【0256】
粉末1は、いずれの例示的実施形態でも、X線不透過物質を0.0~15.0重量%、過酸化ジベンゾイルを0.4~3.0重量%、ポリメチルメタクリレートおよび/もしくはポリメチルメタクリレートコポリマーを79.5~99.3重量%、添加剤を0.1~2.5重量%含有するか、または、粉末1は、抗感染薬もしくは防腐剤を1.0~10重量%、X線不透過物質を0.0~15.0重量%、過酸化ジベンゾイルを0.4~3.0重量%、ポリメチルメタクリレートおよび/もしくはポリメチルメタクリレートコポリマーを69.5~98.3重量%、添加剤を0.1~2.5重量%含有する。
【0257】
上記の説明、請求項、図、および例示的実施形態で開示した本発明の特徴は、本発明をその様々な実施形態で実現するために、個別でも組み合わせでも不可欠である可能性がある。
【符号の説明】
【0258】
1 粉末
2 モノマー液
3 前方カートリッジ部分
4 後方カートリッジ部分
5 搬送ピストン
6 排出ピストン
7 閉止システムの可動壁
8 閉止システムのストッパ
9 モノマー液用の容器/アンプル
10 カートリッジヘッド
11 気体用開口部
12 キャップ
14 閉止システムの保持リング
16 気体透過性フィルタ
18 排出チューブ
19 突起
20 液体透過性有孔フィルタ
21 周囲溝
22 供給孔
24 網/ふるい
26 カートリッジヘッド
28、30 周囲リングシール
32、34 周囲リングシール
36 押出し器具を締結するためのリテーナ
38 デテント手段/フック
40 押出し器具
41 押出し器具を締結するための相手部品
42 ラム/ロッド
44 骨セメントドウ
46 カートリッジ
48 排出開口部
50 カートリッジ
52 充填材
54 ストッパ
56 気体用開口部
58 周囲シール
60 周囲シール
62 容器/アンプルの破片
64 カートリッジヘッド
66 排出チューブ連結部材
68 排出チューブ延長部分
70 ストッパ
72 排出チューブ
74 壁/カートリッジヘッド
76 多孔性プラスチックリング
78 排出チューブ
79 連結部材
80 多孔性プラスチックリング
82 出ていく気体
84 開口部
86 排出チューブ延長部分
図1
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