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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】製品搬出装置及び製品搬出方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/08 20060101AFI20221014BHJP
   B21D 45/04 20060101ALI20221014BHJP
   B23K 26/60 20140101ALI20221014BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B65H5/08 C
B21D45/04 K
B23K26/60
B65H7/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019054825
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020152562
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕之
(72)【発明者】
【氏名】楢原 陽生
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-184998(JP,A)
【文献】特開平05-097272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/08
B21D 45/04
B23K 26/60
B65H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークから切り出された製品を吸着して上昇する複数の吸着パッド部と、
前記複数の吸着パッド部のうち、対象とする少なくとも1つの前記吸着パッド部が前記製品を吸着しているか否かを検出するセンサと、
前記吸着パッド部で吸着され上昇した前記製品に対し、上方に離隔した第1の位置と接触して下方に付勢する第2の位置との間を昇降するタッチプレートと、
前記タッチプレートの昇降を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記センサの検出結果に基づいて、前記対象とする前記吸着パッド部のうち前記製品を吸着していない前記吸着パッド部があると判定したら、上昇した前記製品に対し、前記タッチプレートを前記第1の位置から前記第2の位置に下降させて前記タッチプレートによって前記製品を下方に付勢することを特徴とする製品搬出装置。
【請求項2】
前記対象とする前記吸着パッド部は、前記センサを備えた検出対象吸着パッド部であることを特徴とする請求項1記載の製品搬出装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記タッチプレートを前記第2の位置に下降させた後、再び前記センサの検出結果に基づいて、前記対象とする前記吸着パッド部のうち前記製品を吸着していない前記吸着パッド部があると判定したら、前記タッチプレートを、前記製品から離隔する第3の位置まで上昇させた後、再び前記第2の位置に下降させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の製品搬出装置。
【請求項4】
板状のワークから切り出した製品を、複数の吸着パッド部によって吸着して上昇させ、
前記複数の吸着パッド部のうちの少なくとも1つを検出対象吸着パッド部として、前記検出対象吸着パッド部が前記製品を吸着しているか否かをセンサによって検出し、
前記センサの検出結果に基づいて前記製品を吸着していない前記検出対象吸着パッド部があるか否かを判定し、
前記製品を吸着していない前記検出対象吸着パッド部があると判定された場合、上昇させた前記製品に対して上方に離隔した第1の位置に配置されているタッチプレートを前記製品に接触する第2の位置へと下降させて、前記タッチプレートによって前記製品を下方に付勢する
ことを特徴とする製品搬出方法。
【請求項5】
前記タッチプレートによって前記製品を下方に付勢した後、
前記センサによって前記検出対象吸着パッド部が前記製品を吸着しているか否かを再び検出し、かつ、前記センサの検出結果に基づいて前記製品を吸着していない前記検出対象吸着パッド部があるか否かを再び判定し、
前記製品を吸着していない前記検出対象吸着パッド部があると再び判定された場合、前記タッチプレートを、前記第1の位置に上昇させた後、前記第2の位置へと下降させて前記タッチプレートによって前記製品を下方に再び付勢する
ことを特徴とする請求項4記載の製品搬出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工によってワークから切り出した製品をワーク残材であるスケルトンから分離して取り出し搬出する製品搬出装置及び製品搬出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ加工によってワークから切り出した製品を吸着パッドで吸着し、ワーク残材であるスケルトンから分離して取り出すことが記載されている。
特許文献2には、レーザ加工において、製品を支持する複数のスキッドの一部がレーザ光の熱で溶けるなどしてスキッドに高低差が生じ、支持する製品に傾きが生じることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-97272号公報
【文献】特開2011-018205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高低差が生じているスキッドによって傾いて支持されている製品を、複数の吸着パッドで吸着して取り出そうとした場合、製品の低くなっている部位に対応した吸着パッドが製品を吸着できなくなることが多く、取り出し作業の効率が低下する。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、高低差のあるスキッドによって傾いて支持されている製品の取り出し作業の効率が向上する製品搬出装置及び製品搬出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成、手順を有する。
1) 板状のワークから切り出された製品を吸着して上昇する複数の吸着パッド部と、
前記複数の吸着パッド部のうち、対象とする少なくとも1つの前記吸着パッド部が前記製品を吸着しているか否かを検出するセンサと、
前記吸着パッド部で吸着され上昇した前記製品に対し、上方に離隔した第1の位置と接触して下方に付勢する第2の位置との間を昇降するタッチプレートと、
前記タッチプレートの昇降を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記センサの検出結果に基づいて、前記対象とする前記吸着パッド部のうち前記製品を吸着していない前記吸着パッド部があると判定したら、上昇した前記製品に対し、前記タッチプレートを前記第1の位置から前記第2の位置に下降させて前記タッチプレートによって前記製品を下方に付勢することを特徴とする製品搬出装置である。
2) 前記対象とする前記吸着パッド部は、前記センサを備えた検出対象吸着パッド部であることを特徴とする1)に記載の製品搬出装置である。
3) 前記制御装置は、前記タッチプレートを前記第2の位置に下降させた後、再び前記センサの検出結果に基づいて、前記対象とする前記吸着パッド部のうち前記製品を吸着していない前記吸着パッド部があると判定したら、前記タッチプレートを、前記製品から離隔する第3の位置まで上昇させた後、再び前記第2の位置に下降させることを特徴とする1)又は2)に記載の製品搬出装置である。
4) 板状のワークから切り出した製品を、複数の吸着パッド部によって吸着して上昇させ、
前記複数の吸着パッド部のうちの少なくとも1つを検出対象吸着パッド部として、前記検出対象吸着パッド部が前記製品を吸着しているか否かをセンサによって検出し、
前記センサの検出結果に基づいて前記製品を吸着していない前記検出対象吸着パッド部があるか否かを判定し、
前記製品を吸着していない前記検出対象吸着パッド部があると判定された場合、上昇させた前記製品に対して上方に離隔した第1の位置に配置されているタッチプレートを前記製品に接触する第2の位置へと下降させて、前記タッチプレートによって前記製品を下方に付勢する
ことを特徴とする製品搬出方法である。
5) 前記タッチプレートによって前記製品を下方に付勢した後、
前記センサによって前記検出対象吸着パッド部が前記製品を吸着しているか否かを再び検出し、かつ、前記センサの検出結果に基づいて前記製品を吸着していない前記検出対象吸着パッド部があるか否かを再び判定し、
前記製品を吸着していない前記検出対象吸着パッド部があると再び判定された場合、前記タッチプレートを、前記第1の位置に上昇させた後、前記第2の位置へと下降させて前記タッチプレートによって前記製品を下方に再び付勢する
ことを特徴とする4)に記載の製品搬出方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高低差のあるスキッドによって傾いて支持されている製品の取り出し作業の効率が向上する、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る製品搬出装置の実施例である製品搬出装置52を含む加工システムSTを示す外観斜視図である。
図2図2は、加工システムSTの構成を示すブロック図である。
図3図3は、製品搬出装置52が有するテイクアウトローダ51を示す斜視図である。
図4図4は、テイクアウトローダ51が備える吸着ユニット5を示す側面図である。
図5図5は、テイクアウトローダ51の下面図である。
図6図6は、テイクアウトローダ51が備える振動ユニット6を示す斜視図である。
図7図7は、テイクアウトローダ51による製品WPの吸着動作を説明するための第1の動作図である。
図8図8は、テイクアウトローダ51による製品WPの吸着動作を説明するための第2の動作図である。
図9図9は、テイクアウトローダ51による製品WPの吸着動作を説明するための第3の動作図である。
図10図10は、テイクアウトローダ51による製品WPの吸着動作のフロー図である。
図11図11は、テイクアウトローダ51による製品WPの吸着動作の変形例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る製品搬出装置を、その実施例である製品搬出装置52により説明する。図1に示されるように、製品搬出装置52はテイクアウトローダユニット51を有し、製品搬出装置52とレーザ加工機53とを含んでレーザ加工システムSTが構成される。以下、テイクアウトローダユニット51をTKユニット51と称する。
【0010】
(実施例)
レーザ加工システムSTの全体構成を、外観斜視図の図1及びブロック図の図2を参照して説明する。説明の便宜上、上下左右前後の各方向を図1の矢印の方向で規定する。上下方向は鉛直方向であり、前方は作業者の立ち位置側である。
【0011】
レーザ加工システムSTは、レーザ加工機53と、レーザ加工機53の左右いずれか(図1では右側)に隣接して配置された製品搬出装置52と、システム全体の動作を制御する制御装置54と、を含んで構成されている。
【0012】
レーザ加工機53は、レーザ発振器53aと、レーザ発振器53aで生成されたレーザ光を射出する不図示のレーザ加工ヘッドとを有する。
レーザ発振器53aは、例えばファイバレーザであり、レーザ発振器53aで生成されたレーザ光は、プロセスファイバ53bを介してレーザ加工ヘッドに供給される。
【0013】
レーザ加工機53は、ワークWを載置したワークパレット31を内部で左右方向に移動可能、かつレーザ加工ヘッドを前後方向及び上下方向に移動可能としている。
レーザ加工機53は、図1における右側面に、ワークパレット31を出入りさせるパレット出入口53cを有し、レーザ加工機53の内外にパレット出入口53cを通してワークパレット31を出し入れできるようになっている。
図1では、レーザ加工機53から製品搬出装置52側に排出されたワークパレット31が、二点鎖線で記載されたワークWを載置した状態で示されている。
レーザ加工機53は、ワークパレット31に載置されたワークWの任意の位置に対し、レーザ加工ヘッドからレーザ光を照射してレーザ加工を行う。
【0014】
製品搬出装置52は、レーザ加工機53のパレット出入口53cに対応した位置に備えられたパレットテーブル52aと、パレットテーブル52aの前方に並設された移し替えテーブル52bと、を有する。図1において、ワークパレット31は、パレットテーブル52aに移送された状態で示されている。
【0015】
製品搬出装置52は、複数の支柱52e及び壁部52fによって支持され、左右方向に平行に離隔し前後方向に延在する一対のトップフレーム52c,52dを備えている。
【0016】
一対のトップフレーム52c,52dは、パレットテーブル52aの幅に対応した位置に配設されており、少なくともパレットテーブル52a及び移し替えテーブル52bの前後方向長さに対応した範囲それぞれに、レール52g,52hが設けられている。
レール52g,52hには、左右方向に延びる可動フレーム52jが、矢印DRaで示される前後方向に移動可能に支持されている。
可動フレーム52jには、TKユニット51が、矢印DRbで示される左右方向に移動可能に支持されている。
【0017】
図2に示されるように、製品搬出装置52は、TKユニット駆動部52m及びパレット駆動部52nを備えている。
TKユニット駆動部52mは、レール52g,52hに対する可動フレーム52jの前後移動、及び可動フレーム52jに対するTKユニット51の左右移動を、制御装置54の制御の下で実行する。
TKユニット駆動部52mの動作により、TKユニット51は、パレットテーブル52a及び移し替えテーブル52bにおける任意の水平位置の上方に移動可能となっている。
【0018】
図3は、TKユニット51を前方右斜め上方から見た斜視図である。図3に示されるように、TKユニット51は、本体部1と基部2とを有する。基部2は、下部に、製品などの板状部材を吸着可能な吸着ユニット5を複数有する吸着部51aを備える。TKユニット51は、可動フレーム52jに対し吸着部51aを昇降させる昇降駆動部51bを有している。昇降駆動部51bの動作は、制御装置54によって制御される。
【0019】
図2に示されるように、制御装置54は、中央処理装置(CPU)54a,記憶部54d,及び入出力部54eを含んで構成されている。CPU54aは、吸着判定部54b及び振動制御部54cを有する。
【0020】
以上の構成により、製品搬出装置52は、レーザ加工機53から搬送されたワークパレット31上の製品WP及び図7に示される残材のスケルトンWSから、製品WPを取り出して移し替えテーブル52bに移送する。
具体的には、TKユニット51を移動して基部2を製品WPの上方に位置させて、吸着部51aを下降させる。そして、吸着ユニット5によって製品WPを吸着し吸着部51aを有する基部2を上昇させる。次いでTKユニット51を水平移動により移し替えテーブル52bの上方に移動し、基部2を下降させて吸着ユニット5による製品WPの吸着を解除する。
これにより、製品WPは、ワークパレット31上から移し替えテーブル52b上に移送される。
ここで、製品WPは加工の最終形態のものに限定されず、レーザ光による切断で切り出された中間部材であって、次工程に搬送されて加工に供される部材を含む。
【0021】
図1に示されるように、ワークパレット31は、複数枚のスキッド31aが並設された矩形のパレットである。スキッド31aは、上方に尖った複数の尖突部31bを有する金属板である。
【0022】
次に、TKユニット51を、図3図6を参照して詳述する。
図3において、TKユニット51を支持する可動フレーム52jは、鎖線で示されている。
【0023】
TKユニット51は、昇降駆動部51b,本体部1,及び基部2を有する。
昇降駆動部51bは、不図示のサーボモータを有し可動フレーム52jに支持されている。
本体部1は、昇降駆動部51bのサーボモータを動力源として昇降駆動部51bに対し昇降するように支持されている。
基部2は、下部に吸着部51aを有し本体部1の下部に取り付けられている。
吸着部51aには、吸着ユニット5が上下方向を軸として複数配置されている。
【0024】
図4は、吸着ユニット5の単体を示す側面図である。
吸着ユニット5は、エアシリンダ5aと、エアシリンダ5aの動作によりその下部から出入りするロッド5bと、ロッド5bの先端に取り付けられた吸着パッド部5cと、を有する。
吸着パッド部5cには、負圧を発生するポンプ52p(図2も参照)が気路52saを介して接続されており、先端のゴム製の吸盤部5ckの内部を負圧にして製品WPなどの平板部材を吸着できるようになっている。ポンプ52pの動作は制御装置54により制御される。
【0025】
吸着パッド部5cとポンプ52pとを繋ぐ気路52saには、気路52sa内の圧力の高/低に応じてOFF/ONとなる吸着スイッチ52sが設けられている。吸着スイッチ52sは、吸着パッド部5cによって製品WPの吸着が行われている場合にONとなり、吸着有無を検出するセンサとして機能する。
【0026】
図2に示されるように、吸着スイッチ52sからは、そのON/OFFの状態を示す吸着情報J1が制御装置54の吸着判定部54bに向けて出力される。吸着判定部54bは、吸着有無の検出結果である吸着情報J1に基づいて、吸着パッド部5cが製品WPを吸着しているか否かを判定する。
【0027】
吸着スイッチ52sは、複数の吸着ユニット5のうちの少なくとも1つを対象として設けられている。吸着スイッチ52sによって吸着有無を検出する吸着ユニット5を、検出対象吸着パッド部52tと称する。
図2は、吸着パッド部5cの数をm(m:正の整数)個としたときに、吸着スイッチ52sとして、1≦n≦mを満たすn個の吸着スイッチ52s1,52s2…52snがある場合を示している。
【0028】
図5は、基部2の下面図である。図5において、吸着ユニット5は、十字を付した円形形状で示されている。図5に示されるように、基部2では、複数の吸着パッド部5cのうち、上下方向の中央位置において左右方向に離隔して配置された7つの吸着パッド部5ca~5cgが検出対象吸着パッド部52tとされている。TKユニット51は、検出対象吸着パッド部52tとされた吸着パッド部5ca~5cgそれぞれに対応して吸着スイッチ52sを有する。
【0029】
吸着判定部54bは、検出対象吸着パッド部52tとした吸着スイッチ52sが複数ある場合、吸着情報J1において、全ての検出対象吸着パッド部52tがONとなっているときにONと判定し、OFFとなっている検出対象吸着パッド部52tが1つでもあればOFFと判定する。
【0030】
図3及び図4に示されるように、複数の吸着ユニット5は、吸盤部5ckの先端面である吸着面の高さ位置が、基部2の下面から下方に所定の距離Haとなる位置で揃うようになっている。
【0031】
図5及び図6に示されるように、基部2には振動ユニット6が備えられている。
振動ユニット6は、1枚の平板状のタッチプレート7,4つの昇降シリンダ9,及び2つのバイブレータ8(8a,8b)を有する。
タッチプレート7は、矩形の樹脂板であり、四隅の角部はR付けされている。
昇降シリンダ9は、基部2の下部に取り付けられており、動作によって下面からロッド9aが出入りするようになっている。4つの昇降シリンダ9それぞれのロッド9aは、先端がタッチプレート7の四隅に連結されている。
2つのバイブレータ8a,8bは、タッチプレート7の対向する二辺の縁部近傍において、左右方向にずれて取り付けられている。
【0032】
タッチプレート7には、タッチプレート7と重なる位置にある吸着パッド部5cそれぞれを挿通させる開口部7aが設けられている。
複数の昇降シリンダ9は、ロッド9aの出入り動作を同調して行う。すなわち、タッチプレート7は、昇降シリンダ9の動作により水平姿勢のまま昇降する。昇降シリンダ9によるタッチプレート7の昇降動作は、制御装置54によって制御される。
【0033】
バイブレータ8は、圧縮空気で振動を発生するエアバイブレータである。詳しくは、偏心錘の付いた羽根車を圧縮空気で回転させることにより振動を発生するタービンバイブレータとも称される汎用品であり、不図示のボルトによってタッチプレート7の上面7cに取り付けられている。
供給する圧縮空気の圧力(例えば0.2~0.6MPa)に応じ、振幅及び振動周波数が可変とされ、振動周波数の可変範囲は約100~数百Hzである。
【0034】
次に、上述のレーザ加工システムSTにおいて、複数のスキッド31aのうちの一部のスキッドの高さが、ワークWなどとの摩耗或いはレーザ光の照射による溶融などで低くなっている場合の、製品WPの製品搬出方法における取り出し動作について、図7図9の動作図及び図10のフロー図を参照して説明する。
図7図9は、4枚のスキッド31a(31a1~31a4),スキッド31aに支持された製品WP及びスケルトンWS,及びTKユニット51の一部などを模式的に示した側面視の動作図である。
【0035】
図7に示されているように、スキッド31a1~31a4は、スキッド31a2の高さが摩耗や溶融などによって他のスキッド31a1,31a3,31a4よりも低く、先端位置に高低差が生じているものとする。
そのため、スキッド31a2及びスキッド31a3で支持する製品WPは、低いスキッド31a2で支持される部分が下がり、全体に左下がりに傾いた状態になっている。
【0036】
また、基部2に備えられている吸着パッド部5cは吸着パッド部5c1~5c4の4つとし、それぞれに対応して吸着スイッチ52s1~52s4が備えられているものとする。
【0037】
まず、図7及び図10に示されるように、CPU54aは、基部2又はエアシリンダ5aを動作させて、吸着パッド部5cを、その先端が所定の基準吸着位置LNaに位置するまで、矢印DRcのように下降させる(Step1)。
基準吸着位置LNaは、正規の高さのスキッド31aに支持されたワークW及び製品WPの上面WPbの高さ位置である。より詳しくは、吸着パッド部5cの吸盤部5ckの下端面が、正規高さのスキッド31aに支持されたワークW及び製品WPの上面WPbに接触する位置である。
【0038】
CPU54aは、ポンプ52pを動作させ、吸着パッド部5c(5c1~5c4)によって製品WPを吸着させる(Step2)。
次いで、図8に示されるように、CPU54aは、基部2を上昇させて吸着パッド部5cを基準吸着位置LNaから所定の距離Hbだけ矢印DRdのように上昇させる(Step3)。所定の距離Hbは、例えば30mmである。
【0039】
次に、CPU54aの吸着判定部54bは、吸着スイッチ52sによる吸着有無の検出結果として入来する吸着情報J1に基づいて、吸着スイッチ52sのすべてがONになっているか否かを判定する(Step4)。
【0040】
スキッドに高低差がなく製品WPが水平姿勢の場合及びスキッドに高低差があっても製品WPの傾きがわずかである場合などでは、全ての吸着パッド部5cによる製品WPの吸着が成功し吸着スイッチ52sのすべてがONとなる(Step4:Yes)。
(Step4)の判定がYesの場合、CPU54aは、基部2をより高い搬送位置まで上昇させ(Step5)、製品WPを所定の場所に搬送し(Step6)、製品取り出し動作を終了する。
【0041】
一方、スキッド31aに顕著な高低差があり製品WPの傾きが顕著な場合などでは、一部の吸着パッド部5cで吸着に失敗する場合がある。
例えば、図7及び図8に示されるように、正規の高さのスキッド31a3で支持された側を吸着する吸着パッド部5c3,5c4は吸着に成功し、製品WPにおける低いスキッド31a2によって支持された側を吸着する吸着パッド部5c1,5c2は、製品WPの吸着に失敗する。
すなわち、吸着パッド部5c3,5c4それぞれに対応して設けられた吸着スイッチ52s3,52s4はONとなり、吸着パッド部5c1,5c2それぞれに対応して設けられた吸着スイッチ52s1,52s2はOFFとなる。
従って、吸着判定部54bは、(Step4)においてNoと判定する。
【0042】
(Step4)の判定がNoの場合、CPU54aは、図9に示されるように、昇降シリンダ9を動作させて、製品WPの上方の離隔した第1の位置にあるタッチプレート7を所定の距離Hcだけ矢印DReのように下降させて第2の位置にする(Step7)。
【0043】
第1の位置から第2の位置までの所定の距離Hcは、吸着パッド部5c3,5c4による製品WPの吸着を解消させずに、タッチプレート7により製品WPの最も高い部位である右端部を下方に押すことができる位置である。
吸着パッド部5c3,5c4による製品WPの吸着力は比較的強いため、タッチプレート7によって製品WPを矢印DReのように下方に付勢しても、吸引で上方につぶれるように変形した吸盤部5ckが下方に延びるだけで吸盤部5ckによる製品WPの吸着保持はしっかりと維持される。
【0044】
タッチプレート7が製品WPを押す位置は、製品WPを吸着している吸着パッド部5c4よりも外側の一縁部である。そのため、製品WPは、タッチプレート7によって一縁部が押されると、自身の剛性によって吸着パッド部5c4の吸着位置Paを中心として図9における時計まわりに回動し、押された側とは反対側である他縁部は、矢印DRfのように上昇する。
これにより、吸着に失敗していた吸着パッド部5c1,5c2に対し製品WPが接触して吸着に成功する場合が生じ得る。
図9では、(Step7)を実行することで吸着パッド部5c1,5c2による製品WPの吸着が成功し、吸着スイッチ52s1,52s2がONになったことが示されている。
【0045】
CPU54aは、(Step7)においてタッチプレート7を下降させたら、再び、入来する吸着情報J1に基づいて吸着スイッチ52sのすべてがONか否かを判定する(Step8)。
【0046】
(Step8)の判定がYesの場合、CPU54aは(Step5)に移行する。
(Step7)を実行するもなお(Step8)の判定がNoの場合、CPU54aは、タッチプレート7の下降開始からの時間が所定の時間tsを経過したかを判定する(Step9)。
【0047】
(Step9)の判定がNoの場合、(Step8)へ移行する。
所定の時間tsは、タッチプレート7の下降速度及びタッチプレート7の下降開始から製品WPに接触するまでの時間を考慮して、タッチプレート7が製品WPを確実に押す時間を確保できるように設定する。(Step8)及び(Step9)を実行することで、吸着パッド部5c1,5c2による製品WPの吸着が成功する確度が高められる。
【0048】
(Step9)の判定がYesとなった場合、吸着対象の製品WPの吸着は困難として、CPU54aはポンプ52pを停止して製品WPを吸着から開放する(Step10)。
【0049】
以上詳述した方法によれば、製品WPが傾いていることによって製品WPの吸着に失敗した吸着パッド部5cに対し、吸着が成功する機会が与えられる。
これにより、製品WPが傾いていても、製品WPを吸着して搬送可能となる率が向上し、製品WPの取り出し作業の効率が向上する。
【0050】
本発明の実施例は、上述した手順、構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0051】
図10のフローに示される手順は、図11に示されるフローのように変形してもよい。
具体的には、タッチプレート7により製品WPを押す回数を1回ではなく複数回行うものである。
図11に示される変形例のフローは、図10に示される実施例のフローに対し、(Step1)~(Step10)は同じであり、(Step11a)~(Step11d)が付加されたものである。
【0052】
変形例では、予めタッチプレート7により製品WPを押す回数の上限値ksを設定しておく。ここでksは2以上の整数である。
図11に示されるように、(Step4)でNoとなった場合、k=1として(Step11a)、(Step7)を実行する。
タッチプレート7による製品WPの押し下げを1回実行して所定の時間ts内に吸着スイッチ52sのすべてがONにならなかった場合、CPU54aは、k=k+1とし(Step11b)、さらにkが(ks+1)に達したか否かを判定する(Step11c)。
【0053】
(Step11c)がYesの場合、上限値ksの回数だけタッチプレート7による製品WPの押し下げが完了しているので、CPU54aは、製品WPを開放し吸着搬送は中止とする(Step10)。
(Step11c)がNoの場合、タッチプレート7による製品WPの押し下げ回数は上限値ksに達していないので、CPU54aは、タッチプレート7を上昇させ(Step11d)、再度の押し下げ付勢を実行すべく(Step7)へ移行する。
【0054】
この変形例によれば、タッチプレート7による製品WPの押し下げが複数回実行されるので、製品WPを吸着して搬送可能となる率が、1回だけ実行する場合よりも向上する。
【0055】
CPU54aは、タッチプレート7が製品WPを押し下げているときに、バイブレータ8を動作させてタッチプレート7を振動させてもよい。
タッチプレート7を振動させることで、製品WPがスケルトンWSと干渉して持ち上がっていない部分がある場合に、その部分の干渉が解消して持ち上がり、吸着ができていない吸着パッド部5cによる吸着が可能になる場合がある。
【0056】
吸着判定部54bは、吸着情報J1に基づいて複数の吸着スイッチ52sのうち、OFFとなっているものを特定するようにしてもよい。
これにより、吸着スイッチ52sがOFFになるのが偶発的な理由によるものか、或いは定常的に生じるものなのかが判別できる。
定常的に生じる場合は、該当する吸着スイッチ52sの故障や該当する吸着スイッチ52sに対応するスキッド31aの高さが低くなっているなどの異常が推測されるので、メンテナンス効率が向上する。
吸着を検出するセンサは、吸着スイッチ52sに限定されない。吸着ユニット5に電気接点を設け、製品WPが導電性を有する場合に導通が確保されているか否かで吸着を検出するセンサであってもよく、他の方式で吸着を検出できるセンサであってもよい。
【0057】
同じワークWに複数の製品WPが割り付けられている場合、実施例における(Step10)で製品WPを開放した後、次の動作を実行する変形例2としてもよい。
すなわち、変形例2の搬出動作では、(Step10)で製品WPを開放した後、同じワークWに面付けされた他の製品WPそれぞれに対して同様の搬出動作を実行する。すなわち、実施例の搬出動作で搬出可能な製品WPは搬出し、搬出できなかった製品WPは開放した状態で維持しておく。
そして、同じワークWに面付けされたすべての製品WPに対し、図10のフローによる搬出動作を実行した後、搬出できずに開放維持された製品WPそれぞれに対し、再度、実施例の搬出動作又は変形例の搬出動作を実行する。
【0058】
製品WPが搬出できなかった場合にさらに継続して複数回押す動作を実行する変形例を実行した場合、スケルトンWSの位置がずれるなどして、同じワークに面付けされた他の直ちに搬出可能な製品WPが搬出できなくなる可能性があるが、変形例2を実行することでその可能性はほぼ無視できる程度となり、搬出できる製品WPが確実に搬出できて生産効率が維持される。
【0059】
製品WPの吸着有無を検出するセンサとして吸着スイッチ52sを用いる例を説明したが、これに限るものではない。例えば、吸着パッド部5cの近傍に設けた光電センサなどによって吸着有無を検出してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 本体部
2 基部
5 吸着ユニット
5a エアシリンダ
5b ロッド
5c,5ca~5cg,5c1~5c4 吸着パッド部
5ck 吸盤部
6 振動ユニット
7 タッチプレート
7a 開口部
7c 上面
8,8a,8b バイブレータ
9 昇降シリンダ
9a ロッド
31 ワークパレット
31a,31a1~31a4 スキッド
31b 尖突部
51 テイクアウトローダユニット(TKユニット)
51a 吸着部
51b 昇降駆動部
52 製品搬出装置
52a パレットテーブル
52b 移し替えテーブル
52c,52d トップフレーム
52e 支柱
52f 壁部
52g,52h レール
52j 可動フレーム
52m TKユニット駆動部
52n パレット駆動部
52p ポンプ
52t 検出対象吸着パッド部
52s,52s1~52s4 吸着スイッチ
52sa 気路
53 レーザ加工機
53a レーザ発振器
53b プロセスファイバ
53c パレット出入口
54 制御装置
54a 中央処理装置(CPU)
54b 吸着判定部
54c 振動制御部
Ha,Hb,Hc 所定の距離
J1 吸着情報
LNa 基準吸着位置
ST レーザ加工システム
W ワーク
WP 製品
WPb 上面
WS スケルトン
図1
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図11