(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】車両用スポイラー
(51)【国際特許分類】
B62D 37/02 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
B62D37/02 C
(21)【出願番号】P 2019055921
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000100366
【氏名又は名称】しげる工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】青山 暉
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-064671(JP,A)
【文献】特開平08-150962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のアッパー部材とロア部材を備え、溶着により組み付けることにより構成され、上記ロア部材が、上方に突出して車幅方向に延びる複数の溶着リブと、下方に突出する中空のボス部とを有し、上記溶着リブが上記アッパー部材の下面に溶着されることにより上記アッパー部材と上記ロア部材が組み付けられ、上記ボス部が車両の車体パネルに固定される車両用スポイラーにおいて、
上記複数の溶着リブは、上記ボス部の車長方向前側に位置する前側溶着リブを含み、
上記ロア部材の上面には、上記前側溶着リブと協働して、上記アッパー部材と上記ロア部材の前端縁から浸入してくる水が上記ボス部の内部空間へと入り込むのを防ぐための防水リブが、形成されており、
上記前側溶着リブの端部は上記ボス部の車長方向前側を通りさらに上記ボス部から車幅方向に延長されており、
上記防水リブは、その一部が上記前側溶着リブの延長された端部の車長方向後側に離間して位置するとともに、この延長された端部から車幅方向に突出しており、
上記防水リブは車幅方向と平行に延びるか、又は車幅方向に上記ボス部から遠ざかるにしたがって後方に傾斜していることを特徴とす
る車両用スポイラー。
【請求項2】
樹脂製のアッパー部材とロア部材を備え、溶着により組み付けることにより構成され、上記ロア部材が、上方に突出して車幅方向に延びる複数の溶着リブと、下方に突出する中空のボス部とを有し、上記溶着リブが上記アッパー部材の下面に溶着されることにより上記アッパー部材と上記ロア部材が組み付けられ、上記ボス部が車両の車体パネルに固定される車両用スポイラーにおいて、
上記複数の溶着リブは、上記ボス部の車長方向前側に位置する前側溶着リブを含み、
上記ロア部材の上面には、上記前側溶着リブと協働して、上記アッパー部材と上記ロア部材の前端縁から浸入してくる水が上記ボス部の内部空間へと入り込むのを防ぐための防水リブが、形成されており、
上記複数の溶着リブは、上記ボス部の車長方向後側に位置する後側溶着リブを含み、
上記前側溶着リブは上記ボス部の車長方向前側を通りさらに上記ボス部から車幅方向に延長されており、
上記防水リブは、その一端が上記後側溶着リブに連なるとともに、車幅方向に上記ボス部から遠ざかるように延びており、
上記前側溶着リブと上記防水リブの車長方向の間隔は、車幅方向に上記ボス部から遠ざかるにしたがって、狭くなるように形成されていることを特徴とす
る車両用スポイラー。
【請求項3】
樹脂製のアッパー部材とロア部材を備え、溶着により組み付けることにより構成され、上記ロア部材が、上方に突出して車幅方向に延びる複数の溶着リブと、下方に突出する中空のボス部とを有し、上記溶着リブが上記アッパー部材の下面に溶着されることにより上記アッパー部材と上記ロア部材が組み付けられ、上記ボス部が車両の車体パネルに固定される車両用スポイラーにおいて、
上記複数の溶着リブは、上記ボス部の車長方向前側に位置する前側溶着リブを含み、
上記ロア部材の上面には、上記前側溶着リブと協働して、上記アッパー部材と上記ロア部材の前端縁から浸入してくる水が上記ボス部の内部空間へと入り込むのを防ぐための防水リブが、形成されており、
上記防水リブは、上記前側溶着リブと交差する方向に延びるとともに上記ボス部の車幅方向の片側又は両側に配置されており、上記防水リブの前端が上記前側溶着リブに連なっていることを特徴とす
る車両用スポイラー。
【請求項4】
上記防水リブは、上記アッパー部材に溶着されていることを特徴とする請求項1~
3の何れか1項に記載の車両用スポイラー。
【請求項5】
上記ボス部の底壁は、後方に向って下方に傾斜しており、上記ボス部の底壁の後端近傍には、上記ボス部の内部空間から外部に連なる水抜き穴が形成されていることを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の車両用スポイラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に取り付けられるスポイラーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両にスポイラーを取り付け、その空気整流作用により燃費の向上を図ったり、装飾的効果を高めたりすることが知られている。このような車両用スポイラーの一例として、下記特許文献1には、自動車のルーフの後方に取り付けられたルーフスポイラーが開示されている。
【0003】
図9に示すように、特許文献1に開示されたルーフスポイラー1は、ルーフ2の後方でリアゲート3の上端部に取り付けられている。ルーフスポイラー1は、樹脂製のアッパー部材4とロア部材5を備え、これらを組み付けることにより構成されている。ロア部材5は、上方に突出して車幅方向に延びる複数の溶着リブ6と、下方に突出する中空のボス部7とを有している。ロア部材5の溶着リブ6がアッパー部材4の下面に溶着されることにより、アッパー部材4とロア部材5は組み付けられている。ロア部材5のボス部7は、その底壁7aの取付孔7bを挿通させたボルト8によりリアゲート3の車体パネル3aに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたルーフスポイラー1では、アッパー部材4とロア部材5の前端縁の隙間Gから、雨等の水がルーフスポイラー1の内部に浸入し、ボス部7の内部空間Sに溜まる恐れがあった。ボス部7内に溜まった水は、底壁7aの取付孔7bからリアゲート3の車室側に漏れる恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題の少なくとも1つを解決するためになされたもので、樹脂製のアッパー部材とロア部材を備え、溶着により組み付けることにより構成され、上記ロア部材が、上方に突出して車幅方向に延びる複数の溶着リブと、下方に突出する中空のボス部とを有し、上記溶着リブが上記アッパー部材の下面に溶着されることにより上記アッパー部材と上記ロア部材が組み付けられ、上記ボス部が車両の車体パネルに固定される車両用スポイラーにおいて、
上記複数の溶着リブは、上記ボス部の車長方向前側に位置する前側溶着リブを含み、
上記ロア部材の上面には、上記前側溶着リブと協働して、上記アッパー部材と上記ロア部材の前端縁から浸入してくる水が上記ボス部の内部空間へと入り込むのを防ぐための防水リブが、形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、アッパー部材とロア部材の前端縁から浸入してくる水は、前側溶着リブと防水リブによりボス部に流れることを阻止される。そのため、ボス部に入り込んだ水がボス部と車体パネルとの固定箇所を通って車室内に浸入することを防止できる。
【0008】
好ましくは、上記前側溶着リブの端部は上記ボス部の車長方向前側を通りさらに上記ボス部から車幅方向に延長されており、上記防水リブは、その一部が上記前側溶着リブの延長された端部の車長方向後側に離間して位置するとともに、この延長された端部から車幅方向に突出しており、上記防水リブは車幅方向と平行に延びるか、又は車幅方向に上記ボス部から遠ざかるにしたがって後方に傾斜している。
上記構成によれば、前側溶着リブと防水リブによる簡単なラビリンス構造によりボス部への防水効果を得ることができる。
【0009】
好ましくは、上記複数の溶着リブは、上記ボス部の車長方向後側に位置する後側溶着リブを含み、上記前側溶着リブは上記ボス部の車長方向前側を通りさらに上記ボス部から車幅方向に延長されており、上記防水リブは、その一端が上記後側溶着リブに連なるとともに、車幅方向に上記ボス部から遠ざかるように延びており、上記前側溶着リブと上記防水リブの車長方向の間隔は、車幅方向に上記ボス部から遠ざかるにしたがって、狭くなるように形成されている。
上記構成によれば、ボス部より遠ざかった位置では、前側溶着リブと防水リブとの間隔が狭くなっているで、これらのリブの間に水が入り難くなり、ボス部への防水効果を得ることができる。
【0010】
好ましくは、上記防水リブは、上記前側溶着リブと交差する方向に延びるとともに上記ボス部の車幅方向の片側又は両側に配置されており、上記防水リブの前端が上記前側溶着リブに連なっている。
上記構成によれば、ボス部の前側と車幅方向の片側又は両側とを遮断することにより、ボス部への防水効果を高めることができる。
【0011】
好ましくは、上記防水リブは、上記アッパー部材に溶着されている。
上記構成によれば、防水リブが、溶着用リブとしてアッパー部材とロア部材の接合に寄与するとともに、溶着によりアッパー部材との間隔を有さなくなる。これにより、ボス部への防水効果を高めることができる。
【0012】
好ましくは、上記ボス部の底壁は、後方に向って下方に傾斜しており、上記ボス部の底壁の後端近傍には、上記ボス部の内部空間から外部に連なる水抜き穴が形成されている。
上記構成によれば、例えボス部の内部空間内に水が入り込んだ場合であっても、水は下方に流れ水抜き穴から外部に排出されるので、ボス部の内部空間内に溜まることがない。そのため、ボス部と車体パネルとの固定箇所から車体パネルの車室側へ水が浸入することを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アッパー部材とロア部材の前端縁からスポイラー内に浸入してくる水が、ボス部と車体パネルとの固定箇所から車室内に漏れ出ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るルーフスポイラーの斜視図である。
【
図2】同ルーフスポイラーのロア部材の平面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う同ルーフスポイラーの断面図である。
【
図4】
図2の円部IVに相当する同ロア部材の要部拡大平面図である。
【
図5】(A)
図4のVA-VA線に沿う前側溶着リブの断面図である。(B)
図4のVB-VB線に沿う防水リブの断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るルーフスポイラーのロア部材の要部拡大平面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るルーフスポイラーのロア部材の要部拡大平面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係るルーフスポイラーのロア部材の要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を
図1~
図5を参照して説明する。この実施形態は、本発明を自動車のルーフスポイラーに適用したものである。
図1に示すルーフスポイラー10は車体に取り付けられ、空気整流作用により燃費の向上を図ったり、自動車の外観の装飾的効果を高めたりするものであって、車幅方向に長い左右対称形状をなしている。
【0016】
図3に示すように、ルーフスポイラー10は、自動車の車体後方に開閉可能に設置されたリアゲート20の上端部に取り付けられ、図示しないルーフの後方でリアゲート20のルーフ部21の車幅方向に沿って配置されている。
図1に示すように、ルーフスポイラー10の前縁の形状は、
図3に示すルーフ部21の後端部の形状に対応したU字形状をなしている。
【0017】
図1~
図3に示すように、ルーフスポイラー10は、アッパー部材30と、このアッパー部材30の下側に組み付けられるロア部材40とを有している。アッパー部材30及びロア部材40は、例えば、ABS樹脂やAES樹脂等の合成樹脂材料からなり、射出成形等によってそれぞれ一体的に成形される。
【0018】
図1、
図3に示すように、アッパー部材30は、ルーフスポイラー10の意匠面を構成する部材であり、上壁部31と、この上壁部31の後縁から下方に延びる立壁部32とを有している。
【0019】
図2、
図3に示すように、ロア部材40は、アッパー部材30の上壁部31の裏側の下面と対向する接合面41(上面)と、この接合面41から下方に突出する中空のボス部42とを有している。接合面41は後方に向かって下方にわずかに傾斜している。
【0020】
図2、
図3に示すように、ロア部材40の接合面41には、車幅方向に延びるとともに上方に突出する溶着リブ43が適宜な位置に複数設けられている。これら溶着リブ43がアッパー部材30の上壁部31の下面に振動溶着によって接合されることにより、アッパー部材30とロア部材40が組み付けられている。
【0021】
上記ボス部42は、
図3に示すように、ルーフスポイラー10をリアゲート20のアウタパネル22(車体パネル)に機械的に固定するための固定部であって、
図2に示すように、ロア部材40の長手方向である車幅方向に離間して複数設けられている。本実施形態では、左右に2つずつ、全部で4つのボス部42が左右対称に配置されている。各ボス部42の底壁42aはアウタパネル22の外面に対応して、後方に向って下方に傾斜している。
【0022】
底壁42aには、取付孔42bが形成されている。
図3に示すように、この取付孔42bには、ナット51が配置されている。アウタパネル22の取付孔22aを貫通したボルト52がナット51に螺合されることにより、ボス部42がアウタパネル22に固定され、ひいてはルーフスポイラー10がリアゲート20に固定されている。
【0023】
底壁42aとアウタパネル22との間には、シール性を有する緩衝部材61がボルト52を取り囲むようにして設けられている。これにより、アウタパネル22の外側からその取付孔22aに水が浸入することが阻止されている。
【0024】
図3に示すように、ボス部42の前方では、ルーフスポイラー10の前端縁とアウタパネル22との間にシール性を有する緩衝部材62が設けられている。緩衝部材62は、アッパー部材30とロア部材40の前端縁の隙間Gを塞ぐようにして取り付けられている。ボス部42の後方では、リアゲート20に窓ガラス70が接着剤63を介して設けられている。窓ガラス70とロア部材40との間には、緩衝部材64が設けられている。
【0025】
上記構成のルーフスポイラー10のリアゲート20への固定状態では、ボス部42の取付孔42b及びアウタパネル22の取付孔22aを通ってアウタパネル22の内側の車室に水が浸入し得る。そのため、本実施形態では車室内への漏水を防ぐための対策が施されている。
漏水対策の1つとしては、ボス部42への防水構造が設けられ、アッパー部材30とロア部材40の前端縁の隙間Gからルーフスポイラー10内に水が浸入した場合、浸入した水が、ボス部42の内部空間S内に入り込まないようにしている。
【0026】
図2に示すように、ロア部材40の接合面41上で、上記複数の溶着リブ43のうちボス部42の前方に位置するものは前側溶着リブ43Fとなっている。前側溶着リブ43Fは、4つのボス部42が存在する領域にわたって車幅方向に延びている。
【0027】
図4に示すように、前側溶着リブ43Fの端部43Faは、ボス部42の左側縁42cから車幅方向左方向に延長されている。前側溶着リブ43Fの後側には、上方に突出して車幅方向に延びる防水リブ44が形成されている。
【0028】
防水リブ44の右側の一端部44aは前側溶着リブ43Fの端部43Faから後方に離間して配置されている。防水リブ44の右端は、車幅方向から見たとき、ボス部42の前縁42dより前方に位置している。
【0029】
防水リブ44は、前側溶着リブ43Fの端部43Faから車幅方向左方向に突出して延びている。防水リブ44はその一端部44aから車幅方向左方向に進むにしたがって後方に傾斜している。すなわち、防水リブ44の他端部44bは一端部44aより後方に位置している。防水リブ44の左端は、車幅方向から見たとき、ボス部42の前縁42dより後方に位置している。
【0030】
上記の説明では
図4に示す、車幅方向左側における前側溶着リブ43Fの端部43Fa及び防水リブ44について述べたが、
図2に示すように前側溶着リブ43Fの車幅方向右側においても端部43Fa及び防水リブ44が形成され、左側の端部43Fa及び防水リブ44と左右対称をなしている。
【0031】
以上のことから、防水リブ44と前側溶着リブ43Fは、簡単なラビリンス構造を構成している。これにより、
図3に示すアッパー部材30とロア部材40の前端縁の隙間Gから水が浸入したとしても、防水リブ44が、前側溶着リブ43Fと協働してボス部42の内部空間Sへの水の入り込みを規制することができる。すなわち、ボス部42への防水効果を得ることができ、ひいては、車室内への漏水を防ぐことができる。
【0032】
防水リブ44は、前側溶着リブ43Fと同様に振動溶着に供され、アッパー部材30の上壁部31の下面に接合される。すなわち、防水リブ44は、溶着用リブとしてアッパー部材30とロア部材40の組付けに寄与している。また、接合により防水リブ44とアッパー30との間には隙間がなくなるため、ボス部42への防水効果を高めることができる。
【0033】
ところで、アッパー部材30とロア部材40とを接合するための振動溶着は、溶着リブ43の延び方向である車幅方向にアッパー部材30とロア部材40とを圧接状態で相対的に振動させることによりなされる。溶着リブ43は、
図5(A)の断面図に示すように、ロア部材40の接合面41から上方に突出する幅広の台座部43aと、台座部43aから上方に突出する幅狭の先端部43bとを有し、先端部43bが主に溶着に供される。
【0034】
振動方向(車幅方向)と同じ方向に延びる溶着リブ43に対して、防水リブ44は、振動方向と交差する方向に延びている。そのため、防水リブ44を溶着リブ43と同様の断面形状に形成した場合、振動溶着の際アッパー部材30に強くあたり、溶融温度を高めて上壁部31の表面にヒケを生じさせ、ルーフスポイラー10の外観に影響を与える恐れがある。
【0035】
そこで、防水リブ44は、
図5(B)の断面図に示すように、溶着リブ43よりも幅が狭く先端に向かって細くなるように形成されており、先端部44cのみが溶着に供されるようにしてある。すなわち、防水リブ44とアッパー部材30とのラップ量が少なくなるようにして、上壁部31の表面におけるヒケの発生を防止し、ルーフスポイラー10の外観が悪化する不都合を回避している。
尚、本実施形態では、前側溶着リブ43Fの端部43Fa(
図4)についても、前側溶着リブ43Fの中間部に比べ振動溶着の際アッパー部材30に強く当たり得るため、防水リブ44と同様の断面形状(
図5(B))に形成している。
【0036】
次に、他の漏水対策について説明する。これは、万が一、ボス部42の内部空間S内に水が入り込んだ場合に、排水し、内部空間S内に水が溜まらないようしている。
【0037】
図3、
図4に示すように、ボス部42において、後方に向って下方に傾斜する底壁42aの後端近傍には、内部空間Sと外部とを連通する水抜き穴42eが形成されている。これにより、アッパー部材30とロア部材40の前端縁の隙間Gから浸入した水が、万が一、ボス部42の内部空間Sに入り込んだとしても、水は下方に流れ水抜き穴42eから排出されるので、内部空間S内に溜まることがない。そのため、内部空間Sに水が溜まり底壁42aの取付孔42b及びアウタパネル22の取付孔22aを介して車室内に漏れることを防止することができる。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態については、上記実施形態と異なる構成だけを説明することとし、同様な構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0039】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態を示す。この実施形態では、上記第1の実施形態とは異なるラビリンス構造によりボス部42への防水構造を構成している。
【0040】
車幅方向に延びる前側溶着リブ43Fは、ボス部42の左側縁42cよりさらに左方向に延びており、ボス部42の幅の2倍以上の長さ分延びている。
【0041】
上記複数の溶着リブ43のうちボス部42の後縁42fの後側に配置されたものは後側溶着リブ43Rとなっている。後側溶着リブ43Rの端部43Raには、防水リブ44が連なっており、ボス部42から遠ざかるとともに前側溶着リブ43Fに近づくように傾斜して延びている。そのため、ボス部42より遠ざかった位置で前側溶着リブ43Fと防水リブ44の間隔は狭くなっている。
【0042】
防水リブ44は、ボス部42に近い側の第1傾斜部44xとボス部42から離れた側の第2傾斜部44yとを有している。第1傾斜部44xより第2傾斜部44yは緩やかに傾斜している。車幅方向における第2傾斜部44yの先端44yaは、前側溶着リブ43Fの端部Faの後方で狭小な間隔を有して車長方向に離間している。
【0043】
上記の説明では
図6に示す、車幅方向左側における前側溶着リブ43F及び防水リブ44によるラビリンス構造について述べたが、4つのボス部42の存在領域にわたって車幅方向に延びる前側溶着リブ43Fの車幅方向右側(この実施形態では図示しない)においても左側と左右対称に前側溶着リブ43F及び防水リブ44によりラビリンス構造が設けられている。
【0044】
尚、この実施形態の防水リブ44の形状は、溶着リブ43と同様に
図5(A)に示すような台座部(43a)とそこから突出する先端部(43b)を有する断面形状をなしているが、
図5(B)に示すような幅の狭い先細の断面形状をなすようにしてもよい。
【0045】
この実施形態によれば、ボス部42より遠ざかった位置で前側溶着リブ43Fと防水リブ44とを狭小な間隔で配置させている。これにより、ルーフスポイラー10の前端縁の隙間G(
図3)から浸入した水が前側溶着リブ43Fと防水リブ44との間に入り難くなり、ボス部42の内部空間Sへの水の入り込みを規制することができる。
【0046】
尚、前側の溶着リブ43Fを後方に傾斜させてもよく、前側の溶着リブ43Fの端部43Faを防水リブ44の先端44yaより車幅方向にボス部42から遠ざかるように突出させてもよい。
【0047】
[第3実施形態]
図7は、本発明の第3実施形態を示す。この実施形態においては、ルーフスポイラー10の前端縁の隙間Gから内部に浸入した水に対するボス部42への防水構造を、第1、第2実施形態のラビリンス構造とは異なる構造により構成している。
【0048】
図7に示すように、防水リブ44は、ボス部42の左側に配置され、接合面41から上方に突出して前側溶着リブ43Fと交差する方向に延びている。本実施形態では、防水リブ44は、車長方向(前後方向)であって前側溶着リブ43Fとほぼ直交する方向に延びている。防水リブ44の前端は前側溶着リブ43Fの端部43Faに連なっている。ボス部42の後縁42fの後側に配置された後側溶着リブ43Rは、車幅方向においてボス部42より突出して延びている。防水リブ44の後端は後側溶着リブ43Rの端部43Raに連なっている。
【0049】
前側溶着リブ43F、後側溶着リブ43R及び防水リブ44により、ボス部42は、その前方、後方及び側方が遮断されている。これにより、ボス部42の内部空間Sへ水が入り込みにくくなっており、ボス部42への防水効果が高められている。
【0050】
上記の説明では
図7に示す、車幅方向左側における前側溶着リブ43Fの端部43Fa、防水リブ44及び後側溶着リブ43Rについて述べたが、4つのボス部42の存在領域にわたって車幅方向に延びる前側溶着リブ43Fの車幅方向右側(この実施形態では図示しない)においても端部43Fa、防水リブ44及び後側溶着リブ43Rが形成され、左側の端部43Fa、防水リブ44及び後側溶着リブ43Rと左右対称をなしている。
【0051】
[第4実施形態]
図8は、本発明の第4実施形態を示す。上記第3実施形態では、4つのボス部42に対して1つの前側溶着リブ43Fを設け、前側溶着リブ43Fの両端側に防水リブ44を設けているが、第4実施形態では、各ボス部42に対して車幅方向の両側に防水リブ44を設けて、各ボス部42がリブで囲まれるようにしている。
【0052】
防水リブ44はボス部42の左右両側に配置され、各防水リブ44は、車長方向(前後方向)であって前側溶着リブ43Fとほぼ直交する方向に延びており、前端が前側溶着リブ43Fに連なり、後端が後側溶着リブ43Rの端部43Raに連なっている。これにより、前側溶着リブ43F、後側溶着リブ43R及び2つの防水リブ44が、ボス部42の四方を囲んでいる。この実施形態では図示しない他の3つのボス部42についても同様に、前側溶着リブ43F、後側溶着リブ43R及び2つの防水リブ44が四方を囲んでいる。
【0053】
この実施形態によれば、溶着リブ43と防水リブ44により各ボス部42の四方が囲まれるので、ボス部42へのあらゆる方向からの水の入り込みを遮断することができる。
【0054】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
上記第1実施形態では、前側溶着リブの端部から車幅方向に突出して延びる防水リブを車幅方向に進むにしたがって後方に傾斜するように形成したが、車幅方向と平行に形成してもよい。
上記第1実施形態では、1つの前側溶着リブの一端側でその端部と1つの防水リブとによりラビリンス構造を構成したが、溶着リブ及び防水リブのうちの一方又は双方を複数用いて構成してもよく、その場合、溶着リブと防水リブを互い違いに配置してもよい。
上記実施形態では、防水リブは振動溶着用のリブを兼ねているが、振動溶着に供されなくてもよい。
上記第1、第2実施形態では、ボス部への防水対策として、4つのボス部に対して1つの前側溶着リブとその両端側に防水リブを設けてラビリンス構造を構成しているが、各ボス部に対して個別に前側溶着リブとその両端側の防水リブとを設けてラビリンス構造を構成してもよい。
ボス部毎に異なる実施形態の防水構造を適用してもよい。
上記実施形態におけるボス部の数及び配置は、一例であってボス部の数及び配置は上記実施形態に限定されない。
本発明のスポイラーは、リヤスポイラ等、ルーフスポイラー以外の車両用スポイラーにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、自動車等の車両に取り付けられるスポイラーに適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 ルーフスポイラー
20 リアゲート
21 ルーフ部
22 アウタパネル(車体パネル)
22a 取付孔
30 アッパー部材
31 上壁部
40 ロア部材
41 接合面
42 ボス部
42a 底壁
42b 取付孔
42c 左側縁
42d 前縁
42e 水抜き穴
42f 後縁
43 溶着リブ
43a 台座部
43b 先端部
43F 前側溶着リブ
43Fa 前側溶着リブの端部
43R 後側溶着リブ
43Ra 後側溶着リブの端部
44 防水リブ
44a 防水リブの端部
44b 防水リブの端部
44c 先端部
44x 第1傾斜部
44y 第2傾斜部
44ya 第2傾斜部の先端
51 ナット
52 ボルト
61,62,63 64 緩衝部材
G 隙間
S ボス部の内部空管