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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】部材製造方法、及び、部材製造装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 17/16 20060101AFI20221014BHJP
   B41F 9/00 20060101ALI20221014BHJP
   B41F 17/14 20060101ALI20221014BHJP
   B41M 1/10 20060101ALI20221014BHJP
   B41M 1/34 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B41F17/16
B41F9/00 Z
B41F17/14 E
B41M1/10
B41M1/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019105549
(22)【出願日】2019-06-05
(62)【分割の表示】P 2015553632の分割
【原出願日】2014-12-22
(65)【公開番号】P2019194023
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2019-07-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2013264055
(32)【優先日】2013-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511039500
【氏名又は名称】阪本 順
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】阪本 行
【合議体】
【審判長】吉村 尚
【審判官】藤本 義仁
【審判官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-126038(JP,A)
【文献】特開2001-335729-(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2001-0007773(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/40,1/34
B41F 17/14,17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル状の被転写体にインクを転写することにより、前記ボトル状の被転写体から部材を製造する部材製造方法であって、
印刷版から転写体へ前記インクを転移する工程と、
前記転写体を回転させるとともに、弾性変形した前記転写体によって、前記ボトル状の被転写体の肩と、前記ボトル状の被転写体のボディーの周面とを覆って、前記肩に、紫外線を吸収する特性を有する前記インクを転写する工程と
を含
前記インクを転写する前記工程では、前記ボトル状の被転写体を前記ボトル状の被転写体の軸の周りに回転させる、部材製造方法。
【請求項2】
ボトル状の被転写体にインクを転写することにより、前記ボトル状の被転写体から部材を製造する部材製造方法であって、
印刷版から転写体へ前記インクを転移する工程と、
前記転写体を回転させるとともに、弾性変形した前記転写体によって、前記ボトル状の被転写体の肩と、前記ボトル状の被転写体のボディーの周面とを覆って、前記肩に、紫外線を反射する特性を有する前記インクを転写する工程と
を含
前記インクを転写する前記工程では、前記ボトル状の被転写体を前記ボトル状の被転写体の軸の周りに回転させる、部材製造方法。
【請求項3】
前記インクを転写する前記工程では、前記ボトル状の被転写体の前記肩に、前記インクが円環状に転写される、請求項1又は請求項2に記載の部材製造方法。
【請求項4】
前記ボトル状の被転写体は、ガラス製のボトルである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の部材製造方法。
【請求項5】
ボトル状の被転写体にインクを転写することにより、前記ボトル状の被転写体から部材を製造する部材製造装置であって、
前記インクが供給される印刷版と、
前記印刷版から前記インクが転移される転写体と
を備え、
前記転写体は、回転するとともに、弾性変形して、前記ボトル状の被転写体の肩と、前記ボトル状の被転写体のボディーの周面とを覆って、前記肩に、紫外線を吸収する特性を有する前記インクを転写
前記転写体が前記インクを転写する際には、前記ボトル状の被転写体が前記ボトル状の被転写体の軸の周りに回転される、部材製造装置。
【請求項6】
ボトル状の被転写体にインクを転写することにより、前記ボトル状の被転写体から部材を製造する部材製造装置であって、
前記インクが供給される印刷版と、
前記印刷版から前記インクが転移される転写体と
を備え、
前記転写体は、回転するとともに、弾性変形して、前記ボトル状の被転写体の肩と、前記ボトル状の被転写体のボディーの周面とを覆って、前記肩に、紫外線を反射する特性を有する前記インクを転写
前記転写体が前記インクを転写する際には、前記ボトル状の被転写体が前記ボトル状の被転写体の軸の周りに回転される、部材製造装置。
【請求項7】
前記転写体は、前記ボトル状の被転写体の前記肩に、前記インクを円環状に転写する、請求項5又は請求項6に記載の部材製造装置。
【請求項8】
前記ボトル状の被転写体は、ガラス製のボトルである、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の部材製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被転写体にインクを転写することにより、被転写体から部材を製造する部材製造方法、部材製造装置、及び部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液晶ディスプレイを保護するためのガラス基板が開示されている。ガラス基板は、液晶ディスプレイよりも視聴者の側に配置される。ガラス基板の主面には、オフセット印刷法によって反射防止膜が形成される。ガラス基板の側面(端面)に反射防止膜を形成する必要性はないため、反射防止膜は側面には形成されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-150418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガラス基板の側面に膜を形成したいとの要望がある。また、ガラス基板のような板状部材に限らず、様々な部材の側面に膜を形成したいとの要望もある。
【0005】
一方、オフセット印刷法は、インクを印刷版から転写体に転移し、転写体から被転写体(被印刷体)にインクを転写する印刷法である。即ち、オフセット印刷法は、媒介物(転写体)を介して印刷を行う印刷法である。
【0006】
具体的には、転写体の形状は円筒状であり、転写体の周面を被転写体の主面に接触させることにより、インクの転写が行われる。従って、オフセット印刷法は、被転写体の側面に膜を形成することを本来的に意図していない。
【0007】
本願の発明者は、オフセット印刷法に基づいて、つまり、媒介物を介して、被転写体の側面に膜を形成するという新規な課題を見出した。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、媒介物を介して被転写体の側面に簡易に膜を形成することにより、被転写体から部材を製造することができる部材製造方法、部材製造装置、及び部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点によれば、部材製造方法は、被転写体にインクを転写することにより、前記被転写体から部材を製造する。部材製造方法は、印刷版から転写体へ前記インクを転移する工程と、前記転写体を前記被転写体に押し付け、弾性変形した前記転写体によって前記被転写体の側面を覆う工程とを含む。
【0010】
本発明の部材製造方法において、前記転写体は弾性体を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の部材製造方法において、前記印刷版には、前記インクが付着されるパターンが形成されることが好ましい。前記パターンは、前記パターンから前記転写体に転移された前記インクが前記被転写体の前記側面の全部又は一部を覆うように形成されることが好ましい。
【0012】
本発明の部材製造方法において、前記パターンの形状は直線状であることが好ましい。
【0013】
又は、本発明の部材製造方法において、前記パターンの形状は額縁状であることが好ましい。
【0014】
本発明の部材製造方法において、前記パターンは、前記パターンから前記転写体に転移された前記インクが前記被転写体の主面を覆うように形成されることが好ましい。
【0015】
本発明の部材製造方法において、前記パターンの形状は矩形状であることが好ましい。
【0016】
本発明の部材製造方法において、前記転写体はブランケットを含むことが好ましい。前記ブランケットのゴムショア硬度は、前記被転写体の厚さに応じて、20以上30以下、又は1以上5以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、部材製造装置は、被転写体にインクを転写することにより、前記被転写体から部材を製造する。部材製造装置は、印刷版と、転写体とを備える。印刷版には、前記インクが供給される。転写体には、前記印刷版から前記インクが転移される。前記転写体は、前記被転写体に押し付けられることによって弾性変形し、前記被転写体の側面を覆う。
【0018】
本発明の部材製造装置は、圧胴をさらに備えることが好ましい。前記転写体と前記圧胴とで前記被転写体を挟むことが好ましい。
【0019】
本発明の第3の観点によれば、部材は、被転写体と、膜とを備える。膜は、前記被転写体の側面を覆う。前記膜は、転写体が弾性変形して前記側面を覆うことによって前記転写体から前記側面に転写されたインクにより形成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、弾性変形した転写体(媒介物)で被転写体の側面を覆うことによって、被転写体の側面に簡易にインクを転写することができる。その結果、インクにより被転写体の側面に膜が形成され、被転写体から部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】本発明の実施形態1におけるオフセット印刷装置(部材製造装置)を模式的に示す側面図である。
図1B図1Aの被転写体及び部材を示す斜視図である。
図2A図1Aのオフセット印刷装置によって被転写体の側面(搬送方向に直交する側面)にインクが転写される仕組みを示す斜視図である。
図2B図2AのIIB-IIB線による断面図である。
図3A図1Aのオフセット印刷装置によって被転写体の側面(搬送方向に平行な側面)にインクが転写される仕組みを示す斜視図である。
図3B図3AのIIIB-IIIB線による断面図である。
図4A図1Aの印刷版を示す斜視図である。
図4B図4Aの版の展開図である。
図5A図1Aの版の第1変形例を示す展開図である。
図5B図1Aの版の第2変形例を示す展開図である。
図5C図1Aの版の第3変形例を示す展開図である。
図6A図1Aのオフセット印刷装置によって被転写体の一方側面(搬送方向に平行な側面)にインクが転写される仕組みを示す斜視図である。
図6B図6AのVIB-VIB線による断面図である。
図7A図1Aの被転写体の側面(搬送方向に直交する側面)が凸状曲面である場合に側面にインクが転写される仕組みを示す断面図である。
図7B図1Aの被転写体の側面(搬送方向に平行な側面)が凸状曲面である場合に側面にインクが転写される仕組みを示す断面図である。
図8】本発明の実施形態2におけるオフセット印刷方法(部材製造方法)を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態3におけるオフセット印刷装置(部材製造方法)を模式的に示す側面図である。
図10A】本発明の実施形態4におけるオフセット印刷装置によって円柱状の被転写体の側面にインクが転写される仕組みを示す斜視図である。
図10B図10AのXB-XB線による断面図である。
図11A】本発明の実施形態4におけるオフセット印刷装置によってボトル状の被転写体の側面にインクが転写される仕組みを示す斜視図である。
図11B図11AのXIB-XIB線による断面図である。
図12A】本発明の一実施形態における転写体を示す模式図である。
図12B図12Aに記載の凹部形成領域の模式的な拡大図である。
図12C図12BのXIIC-XIIC線に沿った模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0023】
(実施形態1)
[基本原理]
図1図2、及び図3を参照して、本発明の実施形態1におけるオフセット印刷装置1の基本原理を説明する。図1Aは、オフセット印刷装置1を模式的に示す側面図である。図1Bは、被転写体17及び被転写体17から製造された部材19を示す斜視図である。図2Aは、被転写体17の側面E(側面E1)にインクIが転写される仕組みを示す斜視図である。図2Bは、図2AのIIB-IIB線による断面図である。図3Aは、被転写体17の側面E(側面E2及び側面E4)にインクIが転写される仕組みを示す斜視図である。図3Bは、図3AのIIIB-IIIB線による断面図である。
【0024】
オフセット印刷装置1は部材製造装置として機能する。オフセット印刷装置1は、被転写体17にインクIを転写することにより、被転写体17から部材19を製造する。オフセット印刷装置1は、印刷版3と、転写体5とを備える。印刷版3にはインクIが供給される。転写体5には印刷版3からインクIが転移される。転写体5は、被転写体17に押し付けられることによって弾性変形し、被転写体17の側面Eを覆う。例えば、転写体5は、被転写体17の主面F1に垂直な方向に沿って被転写体17に押し付けられることによって弾性変形し、被転写体17の側面Eを覆う。その結果、被転写体17の側面EにインクIが転写され、インクIによって膜(層)Cが形成される。
【0025】
本実施形態1によれば、弾性変形した転写体5(媒介物)で被転写体17の側面Eを覆うことによって、被転写体17の側面Eに簡易にインクIを転写することができる。その結果、インクIにより被転写体17の側面Eに膜Cが形成され、被転写体17から部材19を製造することができる。なお、本明細書において、側面Eは、側面Eと主面F1とが交差する角領域又は曲面領域を含む。ただし、側面Eは、角領域及び曲面領域を含まなくてもよい。
【0026】
以下、本実施形態1において、特に明示しない限り、被転写体17の例として板状の被転写体を説明し、部材19の例として板状の部材を説明する。被転写体17及び部材19は、例えば、ガラス板である。また、特に明示しない限り、被転写体17の側面Eの例として、板状の被転写体17の端面について説明する。以下、側面Eを端面Eと記載する。
【0027】
[搬送及び配置]
図1を参照して、被転写体17の搬送、並びに印刷版3、転写体5、及び被転写体17の配置を三次元座標系に基づき説明する。本実施形態1では、Z軸は鉛直方向に沿っている。X軸及びY軸は水平面に平行である。オフセット印刷装置1は搬送部15をさらに備えることができる。搬送部15は、例えば、ベルトコンベアである。搬送部15はX軸に沿って延びている。搬送部15には被転写体17が載置される。搬送部15は、被転写体17をX軸に沿った搬送方向A1へ搬送する。なお、搬送方向A1に直交する方向はY軸に沿っている。
【0028】
被転写体17の形状は、本実施形態1では、矩形状である。被転写体17は、平坦な、主面F1、主面F2、端面E1、端面E2、端面E3、及び端面E4を有する。主面F1は主面F2に対向する。端面E1及び端面E3は、被転写体17の短辺に対応する端面であり、搬送方向A1に直交する。端面E2及び端面E4は、被転写体17の長辺に対応する端面であり、搬送方向A1に平行である。被転写体17は、主面F1がZ軸に垂直になるように、かつ、端面E2がX軸と平行になるように、搬送部15に載置される。
【0029】
印刷版3の形状は、本実施形態1では、円筒状である。印刷版3は、円筒軸(軸線)の周りに矢印方向A3に回転する。円筒軸はY軸に沿っている。印刷版3は、印刷版3の円筒軸が転写体5の円筒軸よりも搬送部15から離れるように配置される。印刷版3の周面は転写体5の周面に接触する。
【0030】
転写体5の形状は、本実施形態1では、円筒状である。転写体5は、円筒軸(軸線)の周りに矢印方向A2に回転する。円筒軸はY軸に沿っている。従って、転写体5の円筒軸と印刷版3の円筒軸とは平行である。また、図3に示すように、転写体5のY軸に沿った幅は、被転写体17の短辺の長さW1(図1B参照)より長い。そして、転写体5は、転写体5の一方端縁と他方端縁との間に被転写体17の端面E2及び端面E4が位置するように配置される。
【0031】
[印刷版]
図1及び図4を参照して印刷版3の詳細を説明する。図4Aは印刷版3を示す斜視図である。印刷版3は版7及び版胴9を含む。図4Bは版7の展開図である。版7及び版胴9は、例えば、金属により形成される。金属は、例えば、アルミニウム又は鉄である。版胴9の形状は円筒状である。版7は版胴9の周面に取り付けられる。版7には、額縁状のパターン21aが形成される。パターン21aは、版7のうちインクIが付着する部分である。本実施形態1では、版7は凹版であるため、パターン21aは凹部(例えば、溝)である。従って、オフセット印刷装置1はグラビアオフセット印刷を実行する。
【0032】
パターン21aの幅d2は、例えば、被転写体17の厚さ(端面Eの厚さ)d1と略同一である。本実施形態1では、被転写体17の形状は矩形状である。そこで、パターン21aの内縁を形成する長辺の長さL2は、例えば、被転写体17の長辺の長さL1と略同一である。パターン21aの内縁を形成する短辺の長さW2は、例えば、被転写体17の短辺の長さW1と略同一である。ただし、幅d2は、厚さ(端面Eの厚さ)d1より大きくてもよい。この場合、長さL2は長さL1より小さく、長さW2は長さW1より小さい。幅d2が厚さd1より大きいと、端面Eだけでなく、主面F1のうち4辺に沿った領域にもインクIが転写され、膜Cが形成される。
【0033】
なお、回転している印刷版3の版7の周面には、インク供給部(不図示)からインクIが供給される。その結果、パターン21aにインクIが付着(充填)される。
【0034】
次に、図1及び図5を参照して、版7の第1変形例、第2変形例、及び第3変形例を説明する。図5A図5B、及び図5Cは、それぞれ、第1変形例、第2変形例、及び第3変形例を示す展開図である。第1変形例~第3変形例において、パターン21b~パターン21dの各々は凹部である。なお、パターン21b~パターン21dにはパターン21aと同様にしてインクIが付着される。
【0035】
第1変形例に係る版7には、2つの直線状のパターン21bが、被転写体17の端面E1及び端面E3に対応して形成される。従って、第1変形例に係る版7を使用することによって、端面E1及び端面E3にインクIが転写される。
【0036】
第2変形例に係る版7には、2つの直線状のパターン21cが、被転写体17の端面E2及び端面E4に対応して形成される。従って、第2変形例に係る版7を使用することによって、端面E2及び端面E4にインクIが転写される。
【0037】
なお、第1変形例及び第2変形例において、例えば、幅d2、長さL2、及び長さW2は、それぞれ、被転写体17の厚さd1、長辺の長さL1、及び短辺の長さW1と略同一である。ただし、幅d2は、厚さ(端面Eの厚さ)d1より大きくてもよい。この場合、例えば、第1変形例では、長さL2は長さL1より小さく、長さW2は長さW1と略同一であり、第2変形例では、長さL2は長さL1と略同一であり、長さW2は長さW1より小さい。幅d2が厚さd1より大きいと、端面Eだけでなく、主面F1のうち辺に沿った領域にもインクIが転写され、膜Cが形成される。
【0038】
第3変形例に係る版7には、矩形状のパターン21dが、被転写体17の主面F1及び端面E1~端面E4に対応して形成される。パターン21dの長辺の長さL3は、例えば、長さ(d1+L1+d1)と略同一である。パターン21dの短辺の長さW3は、例えば、長さ(d1+W1+d1)と略同一である。従って、第3変形例に係る版7を使用することによって、主面F1及び端面E1~端面E4にインクIが転写される。
【0039】
[転写体]
図1図3を参照して転写体5の詳細を説明する。転写体5は、ブランケット11及びブランケット胴13を含む。ブランケット胴13の形状は円筒状である。ブランケット胴13は、例えば、金属により形成される。金属は、例えば、アルミニウム又は鉄である。ブランケット11はブランケット胴13の周面に取り付けられる。従って、ブランケット11は円筒状になる。ブランケット11は弾性体である。弾性体は、例えば、ゴムである。ゴムは、例えば、シリコーンゴムである。
【0040】
ブランケット11の硬度及び厚さTは、被転写体17の厚さd1に応じて決定される。被転写体17の厚さd1が厚いほど、ブランケット11の硬度を小さくし、及び/又はブランケット11の厚さTを厚くする。一方、被転写体17の厚さd1が薄いほど、ブランケット11の硬度を大きくし、及び/又はブランケット11の厚さTを薄くする。例えば、被転写体17の厚さd1が10mmの場合、ブランケット11のゴムショア硬度を1以上5以下に設定し、及び/又はブランケット11の厚さTを30mmに設定することが好ましい。例えば、被転写体17の厚さd1が0.7mmの場合、ブランケット11のゴムショア硬度を20以上30以下に設定し、及び/又はブランケット11の厚さTを10mmに設定することが好ましい。
【0041】
印刷版3から転写体5へのインクIの転移について説明する。回転している転写体5のブランケット11には、回転している印刷版3から、版7のパターン21aに付着されたインクIが転移される。なお、転写体5の直径は、例えば、印刷版3の直径と略同一である。また、転写体5が回転する際の角速度は、例えば、印刷版3が回転する際の角速度と略同一である。
【0042】
次に、ブランケット11から被転写体17の端面EにインクIが転写される仕組みを詳細に説明する。まず、図2を参照して、端面Eのうち端面E1にインクIが転写される仕組みを説明する。端面E1は平面である。転写体5は矢印方向A2に回転している。一方、被転写体17は、端面E1を先頭とし、端面E3を末尾として、転写体5に向かって(搬送方向A1に沿って)搬送される。そして、ブランケット11と搬送部15とで端面E1が挟まれる。ブランケット11は、被転写体17に押し付けられているため、弾性変形して被転写体17の端面E1を覆う。その結果、ブランケット11から被転写体17の端面E1にインクIが転写される。
【0043】
次に、図3を参照して、端面E2~端面E4にインクIが転写される仕組みを説明する。端面E2~端面E4は平面である。被転写体17が図2に示す状態からさらに搬送方向A1に沿って前進すると、被転写体17はブランケット11と搬送部15とで挟まれる。ブランケット11は、被転写体17に押し付けられているため、弾性変形して被転写体17の端面E2及び端面E4を覆う。その結果、被転写体17の端面E2及び端面E4にインクIが転写される。被転写体17の前進に伴って、端面E2及び端面E4の全体にインクIが転写される。そして、末尾の端面E3が、ブランケット11と搬送部15とで挟まれると、端面E1と同様にして、端面E3にインクIが転写される。
【0044】
次に、図6を参照して、被転写体17の一対の端面E2及び端面E4のうちの一方にインクIを転写する例を説明する。以下、端面E4にインクIを転写する。端面E4は平面である。図6Aは、オフセット印刷装置1によって被転写体17の端面E4にインクIが転写される仕組みを示す斜視図である。図6Bは、図6AのVIB-VIB線による断面図である。
【0045】
転写体5は、転写体5の一方端縁と他方端縁との間に被転写体17の端面E4が位置するように配置される。ただし、転写体5の一方端縁は、主面F1上、つまり、端面E4と端面E2との間に配置される。転写体5のY軸に沿った幅は、被転写体17の短辺の長さW1(図1B参照)と略同一又は長さW1より大きい。ただし、転写体5のY軸に沿った幅は長さW1より小さくてもよい。また、例えば、版7は、端面E4に対応する直線状のパターン(凹部)を有する。
【0046】
被転写体17が搬送方向A1に沿って前進すると、被転写体17はブランケット11と搬送部15とで挟まれる。ブランケット11は、被転写体17に押し付けられているため、弾性変形して被転写体17の端面E4を覆う。その結果、被転写体17の端面E4にインクIが転写される。被転写体17の前進に伴って、端面E4の全体にインクIが転写される。
【0047】
次に、図7を参照して、被転写体17の端面Eが凸状曲面である場合のインクIの転写について説明する。例えば、平坦な端面E(図1参照)に面取加工を施すことによって、凸状曲面となる端面Eを形成できる。図7Aは、端面E1が凸状曲面である場合に端面E1にインクIが転写される仕組みを示す断面図である。図7Bは、端面E2及び端面E4が凸状曲面である場合に端面E2及び端面E4にインクIが転写される仕組みを示す断面図である。端面E1~端面E4の各々は、第1斜面US及び第2斜面LSを含む。
【0048】
被転写体17の端面E1がブランケット11と搬送部15とで挟まれると、ブランケット11は、被転写体17に押し付けられているため、弾性変形して端面E1の第1斜面USを覆う。その結果、ブランケット11から端面E1の第1斜面USにインクIが転写される。同様に、被転写体17がブランケット11と搬送部15とで挟まれると、ブランケット11は弾性変形して端面E2及び端面E4の各々の第1斜面USを覆う。その結果、ブランケット11から端面E2及び端面E4の第1斜面USにインクIが転写される。また、端面E1の第1斜面USと同様にして、端面E3の第1斜面USにインクIが転写される。
【0049】
なお、版7として、例えば、図4及び図5に示した版7を使用できる。ただし、例えば、パターン21a~21cの各々の幅d2は、第1斜面USを覆うに足る幅に設定される。ただし、幅d2は、厳密に第1斜面USを覆う幅でなくてもよく、第1斜面USに加えて主面F1の一部を覆う幅でもよい。また、例えば、パターン21dの長さL2及び長さW2は、主面F1及び第1斜面USを覆うに足る幅に設定される。
【0050】
また、第1斜面USだけでなく第2斜面LSにもインクIを転写する場合は、被転写体17の主面F1が下面、主面F2が上面となるように、被転写体17を裏返して搬送部15に載置する。そして、被転写体17をブランケット11と搬送部15との間に搬送する。その結果、第1斜面USにインクIが転写される場合と同様にして、第2斜面LSにインクIが転写される。第2斜面LSにインクIを転写する場合、例えば、第1斜面USにインクIを転写する場合と同じ版7を使用する。例えば、第1斜面US及び第2斜面LSのための版7として、図5Cに示した版7を使用することで、被転写体17の主面F1、主面F2、第1斜面US、及び第2斜面LSにインクIを転写できる。その結果、被転写体17の全面に膜Cを形成できる。
【0051】
以上、図1図7を参照して説明したように、本実施形態1によれば、転写体5(媒介物)を介して、被転写体17の端面Eに簡易に膜Cを形成することにより、被転写体17から部材19を製造することができる。
【0052】
また、図1を参照して説明したように、本実施形態1では、端面Eに膜Cが形成されるため、例えば、被転写体17(部材19)の端面Eを強化及び/又は保護することができる。その結果、端面Eの破損を防止できる。また、端面Eが破損した場合に破片が飛散することを防止できる。
【0053】
例えば、被転写体17(部材19)がガラス板の場合、本実施形態1は特に有効である。一般的に、ガラス板の端面には微小な傷が存在する。従って、端面に対する僅かな衝撃でも、微小な傷からクラックが発生し易い。そして、クラックがガラス板の主面にまで拡大し、ガラス板が割れたり、ガラス板にひびが入ったりする。従って、被転写体17がガラス板の場合、本実施形態1におけるオフセット印刷装置1によって端面Eに膜Cを形成して、被転写体17(部材19)の端面Eを強化等することは、ガラス板の割れ及び/又はひびの発生の抑制に役立つ。
【0054】
例えば、膜Cを形成するインクIは、端面Eを強化及び/又は保護する成分を含む。インクIの成分は、例えば、樹脂である。樹脂は、例えば、光硬化樹脂、又は熱硬化樹脂である。光硬化樹脂は、例えば、ラジカル系硬化系、又はカチオン系硬化系である。ラジカル系硬化系は、例えば、アクリル系、エン/チオール系、又はビニルエーテル系である。カチオン系硬化系は、例えば、エポキシ系、オキセタン系、又はビニルエーテル系である。また、熱硬化樹脂は、例えば、エポキシ系、フェノール系、又はポリエステル系である。また、インクIの成分は、例えば、2液混合反応液である。
【0055】
さらに、図4Bを参照して説明したように、パターン21aを有する版7を使用することにより、1回の転写工程により、被転写体17の端面EにインクIを転写できる。さらに、図5Cに示すように、パターン21dを有する版7を使用することにより、1回の転写工程により、被転写体17の端面Eに加えて、主面F1にもインクIを転写できる。その結果、主面F1及び端面Eに簡易に膜Cを形成して、主面F1及び端面Eを強化及び/又は保護できる。
【0056】
さらに、図3を参照して説明したように、1回の転写工程により、対向する2つの端面E2及び端面E4にインクIを転写できるし、また、図6を参照して説明したように、1回の転写工程により、1つの端面E4にインクIを転写することもできる。本実施形態1によれば、1回の転写工程により、目的に応じて所望の端面EにインクIを転写できる。
【0057】
(実施形態2)
図1図3、及び図8を参照して、本発明の実施形態2におけるオフセット印刷方法を説明する。オフセット印刷方法は、図1を参照して説明した実施形態1のオフセット印刷装置1によって部材製造方法として実行される。図8は、オフセット印刷方法を示すフローチャートである。オフセット印刷方法は、被転写体17にインクIを転写することにより、被転写体17から部材19を製造する方法である。オフセット印刷方法は、工程S1と、工程S3とを含む。
【0058】
工程S1では、印刷版3から転写体5へインクIを転移する。工程S3では、転写体5を被転写体17に押し付け、弾性変形した転写体5によって被転写体17の側面Eを覆う。その結果、被転写体17の側面EにインクIが転写され、インクIによって膜Cが形成される。
【0059】
例えば、工程S3では、被転写体17の主面F1に垂直な方向に沿って転写体5を被転写体17に押し付け、弾性変形した転写体5によって被転写体17の側面Eを覆う。なお、例えば、被転写体17及び部材19は板状である。例えば、被転写体17及び部材19はガラス板である。例えば、被転写体17の側面Eは、板状の被転写体17の端面である。
【0060】
本実施形態2によれば、転写体5(媒介物)を介して、被転写体17の側面Eに簡易に膜Cを形成することにより、被転写体17から部材19を製造することができる。
【0061】
(実施形態3)
図9を参照して、本発明の実施形態3におけるオフセット印刷装置1を説明する。図9は、オフセット印刷装置1を模式的に示す側面図である。オフセット印刷装置1は、印刷版3と、転写体5と、圧胴23と、印圧調整機構25とを備える。
【0062】
圧胴23の形状は円筒状である。圧胴23は、円筒軸(軸線)の周りに矢印方向A4に回転する。円筒軸はY軸に沿っている。圧胴23の直径は、例えば、転写体5の直径と略同一である。また、圧胴23が回転する際の角速度は、例えば、転写体5が回転する際の角速度と略同一である。圧胴23は、例えば、金属により形成される。金属は、例えば、アルミニウム又は鉄である。
【0063】
転写体5と圧胴23とで、搬送部15上の被転写体17を挟む。被転写体17の側面EにインクIが転写される仕組みは、図2図3図6、及び図7を参照して説明した仕組みと同様である。また、オフセット印刷装置1は、図8を参照して説明したオフセット印刷方法を実行する。
【0064】
本実施形態3では、例えば、転写体5の位置は固定される。印圧調整機構25は、圧胴23に接続され、圧胴23を転写体5へ近づける方向及び圧胴23を転写体5から離す方向に圧胴23を移動可能である。印圧調整機構25は、圧胴23を移動させることによって、転写体5を被転写体17に押し付ける際の圧力(以下、「印圧」と記載する。)を調整する。
【0065】
本実施形態3によれば、転写体5(媒介物)を介して、被転写体17の側面Eに簡易に膜Cを形成することにより、被転写体17から部材19を製造することができる。
【0066】
(実施形態4)
図1図8図9図10、及び図11を参照して、本発明の実施形態4におけるオフセット印刷装置1について説明する。オフセット印刷装置1の構成は、実施形態1におけるオフセット印刷装置1又は実施形態3におけるオフセット印刷装置1の構成と同じである。また、オフセット印刷装置1が実行するオフセット印刷方法は、実施形態2におけるオフセット印刷方法と同じである。本実施形態4では、板状の被転写体17ではなく、円柱状の被転写体17の側面E又はボトル状の被転写体17の側面EにインクIを転写する。
【0067】
まず、図10を参照して、円柱状の被転写体17にインクIを転写する例を説明する。図10Aは、円柱状の被転写体17の側面E5及び側面E6にインクIが転写される仕組みを示す斜視図である。図10Bは、図10AのXB-XB線による断面図である。
【0068】
転写体5は、転写体5の一方端縁と他方端縁との間に被転写体17の側面E5及び側面E6が位置するように配置される。また、例えば、版7は、図5B示す2つのパターン21cを有する。
【0069】
被転写体17が搬送方向A1に沿って前進すると、被転写体17はブランケット11と搬送部15とで挟まれる。ブランケット11は、被転写体17の周面P1に押し付けられているため、弾性変形して被転写体17の側面E5の一部及び側面E6の一部を覆う。さらに、被転写体17を被転写体17の軸の周りに回転させる。その結果、被転写体17の側面E5及び側面E6の各々に、インクIが円環状に転写され、円環状の膜が形成される。
【0070】
次に、図11を参照して、ボトル状の被転写体17にインクIを転写する例を説明する。被転写体17は、例えば、ビール瓶である。図11Aは、ボトル状の被転写体の側面E7にインクIが転写される仕組みを示す斜視図である。図11Bは、図11AのXIB-XIB線による断面図である。
【0071】
転写体5は、転写体5の一方端縁と他方端縁との間に被転写体17の側面E7及び側面E8が位置するように配置される。側面E7は被転写体17の肩であり、側面E8は被転写体17の底面である。また、例えば、版7は、直線状のパターン(凹部)を有する。
【0072】
被転写体17が搬送方向A1に沿って前進すると、被転写体17はブランケット11と搬送部15とで挟まれる。ブランケット11は、被転写体17のボディーの周面P2に押し付けられているため、弾性変形して被転写体17の側面E7の一部を覆う。さらに、被転写体17を被転写体17の軸の周りに回転させる。その結果、被転写体17の側面E7に、インクIが円環状に転写され、円環状の膜が形成される。
【0073】
本実施形態4によれば、転写体5(媒介物)を介して、円柱状又はボトル状の被転写体17の側面Eに簡易に膜Cを形成することにより、被転写体17から部材19を製造することができる。特に、清涼飲料又はアルコール(例えば、ビール)を収容するガラス製のボトルに有効である。一般的に、ボトルの肩から紫外線が入射し、収容された清涼飲料又はアルコールを酸化させ、品質が劣化することが知られている。そこで、図11に示したように、側面E7(ボトルの肩)に、紫外線を吸収又は反射する特性を有するインクIを転写して膜を形成し、品質の劣化を抑制する。
【0074】
以上、本発明の実施形態について、図面(図1図11)を参照しながら説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である((1)~(5))。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0075】
(1)図1を参照して説明した被転写体17の例としてガラス板を挙げた。ガラス板は、例えば、ディスプレイ用ガラス板(例えば、スマートフォンのディスプレイ用ガラス板)、又は建築用ガラス板である。ディスプレイ用ガラス板は、例えば、タッチパネル用ガラス基板、又は液晶ディスプレイ用ガラス基板である。また、被転写体17の材質は、ガラスに限られない。例えば、材質は、合成樹脂、又はセラミックである。また、図1図10、及び図11では、被転写体17の形状は、板状、円柱状、又はボトル状であった。ただし、形状はこれらに限定されない。例えば、形状は、多面体、錐体、錐台、柱体、曲面で形成される立体、又は曲面と平面とで形成される立体である。
【0076】
(2)図4及び図5を参照して版7に形成する各種パターン21a~パターン21dを例示した。ただし、版7に形成するパターンは、これらに限定されない。パターンは、例えば、パターンから転写体5に転移されたインクIが被転写体17の側面Eの全部又は一部を覆うように形成される。パターンは、例えば、パターンから転写体5に転移されたインクIが、被転写体17の側面Eの全部又は一部に加えて、主面F1の縁(例えば、辺)に沿った領域を覆うように形成される。パターンは、例えば、パターンから転写体5に転移されたインクIが被転写体17の主面F1、及び側面Eの全部又は一部を覆うように形成される。
【0077】
(3)図9を参照して説明した実施形態3では、印圧調整機構25は圧胴23を移動して印圧を調整した。ただし、印圧の調整方法は、これに限定されない。例えば、圧胴23を固定する。そして、印圧調整機構25は、転写体5に接続され、転写体5を圧胴23へ近づける方向及び転写体5を圧胴23から離す方向に転写体5を移動可能である。印圧調整機構25は、転写体5を移動させることによって印圧を調整する。
【0078】
(4)図1に示すように、本発明の一実施形態における部材19は、被転写体17と、膜Cとを備える。膜Cは被転写体17の側面Eを覆う。膜Cは、転写体5が弾性変形して側面Eを覆うことによって転写体5から側面Eに転写されたインクIにより形成される。本実施形態では、端面Eに膜Cが形成されるため、部材19の端面Eを強化及び/又は保護することができる。その結果、端面Eの破損を防止できる。また、端面Eが破損した場合に破片が飛散することを防止できる。
【0079】
(5)図1図11を参照して説明した転写体5の具体例を説明する。図12Aは、本発明の一実施形態における転写体5を示す模式図である。図12Bは、図12Aに記載の凹部形成領域30の模式的な拡大図である。図12Cは、図12BのXIIC-XIIC線に沿った模式的な断面図である。
【0080】
図12Aを参照して、転写体5は、ブランケット11とブランケット胴13とを有する。ブランケット胴13は、周面36を有する。ブランケット11は、ブランケット胴13の周面36に取り付けられる。
【0081】
ブランケット11の表面Hには、凹部形成領域30が形成されている。凹部形成領域30は、複数の凹部領域32と複数の上部領域31とを含んでいる。複数の凹部領域32のそれぞれは、凹部を規定する。複数の凹部は、格子状に並ぶ。上部領域31は、複数の凹部領域32を連絡する。
【0082】
図12Bおよび図12Cを参照して、凹部形成領域30を説明する。凹部形成領域30は、複数の凹部領域32(凹部領域32a、凹部領域32bおよび凹部領域32c)と複数の上部領域31(上部領域31aおよび上部領域31b)とを含んでいる。複数の凹部領域32のそれぞれは、凹部(凹部35a、凹部35bおよび凹部35c)を有する。上部領域31は、隣接する凹部領域32によって規定される。複数の凹部(凹部35a、凹部35bおよび凹部35c)は、上面部(上面部33aおよび上面部33b)と平行な底面部(底面部34a、底面部34bおよび底面部34c)を有している。
【0083】
凹部形成領域30内において、複数の凹部領域32は、上部領域31よりも大きい。凹部形成領域30のうち複数の凹部領域32が占める割合は、例えば、50%~95%である。ブランケット胴13にブランケット11を取り付けると、底面部は周面36に沿う。ブランケット胴13にブランケット11を取り付けると、上面部は周面36に沿う。
【0084】
複数の凹部35の深さD1は、例えば、0mmより大きく3mm以下である。好ましくは、深さD1は、0.3mm以上0.4mm以下である。複数の凹部35の大きさD2は、例えば、30μm以上1000μm以下である。複数の凹部の間隔D3は、例えば、30μm以上1000μm以下である。
【0085】
以上、図12を参照して説明したように、転写体5が有するブランケット11において、複数の上部領域は、上面部を有し、複数の凹部は、上面部と平行な底面部を有している。したがって、複数の凹部にもインクIを貯めることができるため、一度の印刷で転写できるインクIの量を多くすることができる。その結果、被転写体17に厚い膜を一度で印刷することができる。
【0086】
また、凹部形成領域内において、複数の凹部領域は上部領域よりも大きい。したがって、より多くのインクIを複数の凹部に貯めることができる。その結果、被転写体17に厚い膜を印刷することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、部材を強化及び/又は保護する工程を実行する分野、及び側面を有する部材に利用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 オフセット印刷装置
3 印刷版
5 転写体
7 版
9 版胴
11 ブランケット
13 ブランケット胴
15 搬送部
17 被転写体
19 部材
21a パターン
21b パターン
21c パターン
21d パターン
23 圧胴
25 印圧調整機構
C 膜
E(E1~E8) 側面
F1 主面
F2 主面
P1 周面
P2 周面
I インク
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C