(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】インスリン受容体との結合力が減少された、インスリンアナログ及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 14/62 20060101AFI20221014BHJP
C12N 15/17 20060101ALI20221014BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221014BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221014BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20221014BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20221014BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C07K14/62 ZNA
C12N15/17
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12P21/02 E
A61K38/28
A61P3/10
(21)【出願番号】P 2019515862
(86)(22)【出願日】2017-09-22
(86)【国際出願番号】 KR2017010504
(87)【国際公開番号】W WO2018056764
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2016-0122484
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】チェ インヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ソンヨプ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・コルン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ゲスレーゲン
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・テナーゲルス
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-510003(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006963(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/199511(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/108398(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/183038(WO,A1)
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1997年05月16日,Vol. 272, No. 20,pp. 12978-12983,https://doi.org/10.1074/jbc.272.20.12978
【文献】Biochemistry,2008年04月01日,47. 16,4743-4751,https://doi.org/10.1021/bi800054z
【文献】Biochemistry,1990年08月21日,Vol. 29, No. 33,7727-7733,https://doi.org/10.1021/bi00485a022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00-14/825
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 1/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリンアナログであって
、
下記一般式(1)で表される配列番号:55のA鎖と下記一般式(2)で表される配列番号:56のB鎖を含む、インスリンアナログ(ただし、前記インスリンアナログのうち、そのA鎖が配列番号:53と一致しながら、同時に、B鎖が配列番号:54と一致するものは除く。):
一般式(1)
【化1】
前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はアスパラギン酸であり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンである。
一般式(2)
【化2】
前記一般式(2)において、Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである。
【請求項2】
前記インスリンアナログは、配列番号
:46のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載のインスリンアナログ。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のインスリンアナログをコードする分離された核酸。
【請求項4】
請求項
3に記載の核酸を含む、組換え発現ベクター。
【請求項5】
請求項
4に記載の組換え発現ベクターを含む、形質転換体。
【請求項6】
前記形質転換体が大腸菌である、請求項
5に記載の形質転換体。
【請求項7】
下記段階を含む請求項1
または2に記載のインスリンアナログを製造する方法:
a)請求項1
または2に記載のインスリンアナログをコードする核酸を含む形質転換体を培養して、インスリンアナログを発現させる段階;及び
b)発現されたインスリンアナログを分離及び精製する段階。
【請求項8】
前記分離及び精製が、
b‐1)前記a)段階の培養液から形質転換体を収穫して破砕する段階;
b‐2)破砕された細胞溶解物から発現されたインスリンアナログを回収してリフォールディング(refolding)する段階;
b‐3)リフォールディングされたインスリンアナログを陽イオン交換クロマトグラフィーで精製する段階;
b‐4)精製されたインスリンアナログをトリプシン及びカルボキシペプチダーゼBで処理する段階;
b‐5)処理されたインスリンアナログを陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーまたは逆相クロマトグラフィーで順次精製する段階を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
有効成分として請求項1
または2に記載のインスリンアナログを含む、糖尿病治療用薬学的組成物。
【請求項10】
有効成分として請求項1
または2に記載のインスリンアナログを含む、組成物。
【請求項11】
糖尿病治療用薬剤を製造するための、請求項1
または2に記載のインスリンアナログまたはこれを含む組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なインスリンアナログ、その用途及び前記アナログを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内のタンパク質は血中のタンパク質分解酵素によって分解されたり、腎臓を介して排泄もしくは受容体により除去されるなど、いくつかの経路を経て除去されることが知られている。そこで、前記のようなタンパク質除去機序を回避して生理活性タンパク質の半減期を増加させて治療的効能を高めようとする様々な試みが行われている。
【0003】
一方、インスリンは、人体の膵臓から分泌される血糖調節ホルモンであって、血液内の余剰ブドウ糖を細胞に移して細胞にエネルギー源を供給する一方、血糖を正常なレベルに維持させてくれる役割をする。しかし、糖尿病患者の場合、これらのインスリンが不足したり、インスリン抵抗性及びベータ細胞の機能消失によりインスリンが正常な機能を行っていない。そのため、糖尿病患者は血液内のブドウ糖をエネルギー源として用いることなく血液中のブドウ糖のレベルが高い高血糖症状を示して、結局、尿に糖を排出するようになり、これはさまざまな合併症の原因となっている。したがって、インスリンの生成に異常があったり(Type I)、インスリン抵抗性による(Type II)糖尿病患者はインスリン治療が必要であり、インスリンを投与することによって血糖を正常レベルに調節することができる。
【0004】
しかし、インスリンの場合、他のタンパク質やペプチドホルモンのように生体内半減期が極めて短く、継続的な治療効果を示さず、効果を発揮するためには継続的に反復投与をしなければならないという欠点がある。このような頻繁な投与は、患者に多大な苦痛や不便さを引き起こすことになるので、患者の順応性、安全性及び利便性の面で改善が求められている。
【0005】
よって、インスリンのようなタンパク質薬物の生体内の半減期を増加させて投与回数を減らすことにより、患者の生活の質と治療的効果を高めるための様々なタンパク質の剤形化研究と化学的な結合体(例えば、脂肪酸結合体)などに対する研究が進められている。既存の報告によると、50%以上のインスリンは腎臓から除去され、残りのインスリンは筋肉、脂肪、肝臓などの作用部位(target site)で受容体媒介クリアランス(receptor mediated clearance、RMC)工程を介して除去される。
【0006】
これに関連して、非特許文献1~3などでインスリンのRMCを避けるためにインビトロ活性を弱めることにより、血中の濃度を増加させるなどのいくつかの報告があるが、 非特許文献1及び2の場合、提示されたインスリンアナログは2つ以上のアミノ酸を置換したり、具体的な結果を提示しておらず、非特許文献3の場合、インスリンアナログは受容体結合力で変化がないことや、インスリン受容体に直接関与するアミノ酸を置換して活性が減少したことが報告された。
【0007】
本明細書では、インスリン受容体結合に直接的に関与しないアミノ酸を置換して、インスリン受容体の結合力だけを減少させるアナログを開発し、インスリン受容体との結合の減少を示すことを確認して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】J Pharmacol Exp Ther (1998) 286: 959
【文献】Diabetes Care (1990) 13: 923
【文献】Diabetes (1990) 39: 1033
【文献】Scheit, Nucleotide Analogs, John Wiley, New York, 1980; Uhlman
【文献】Peyman, Chemical Reviews, 90: 543-584, 1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一つの目的は、新規なインスリンアナログを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記インスリンアナログをコードする分離された核酸、それを含む組換え発現ベクター、及び前記発現ベクターを含む形質転換体を提供することにある。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、前記インスリンアナログを製造する方法を提供することにある。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、前記インスリンアナログを有効成分として含む組成物、例えば、薬学的組成物を提供することにある。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、前記インスリンアナログを有効成分として含むインスリン関連疾患、例えば、糖尿病の治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、前記インスリンアナログまたはこれを有効成分として含む薬学的組成物を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、インスリン関連疾患、例えば、糖尿病を治療する方法を提供することにある。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、薬剤の製造において、前記インスリンアナログの用途を提供することにある。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、インスリン関連疾患、具体的に糖尿病の治療において、前記インスリンアナログの用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するための本発明の一つの様態は、新規なインスリンアナログ、具体的には、天然型インスリンB鎖の16番目のアミノ酸、B鎖の25番目のアミノ酸、A鎖の14番目のアミノ酸及びA鎖の19番目のアミノ酸からなる群から選択された一つ以上のアミノ酸の変異を含む、インスリンアナログである。
【0018】
一つの具体例として、前記変異は、天然型インスリンB鎖の16番目のアミノ酸であるチロシンのグルタミン酸、セリン、トレオニン、またはアスパラギン酸への変異;天然型インスリンB鎖の25番目のアミノ酸であるフェニルアラニンのアスパラギン酸またはグルタミン酸への変異;天然型インスリンA鎖の14番目のアミノ酸であるチロシンのヒスチジン、リジン、アラニン、またはアスパラギン酸への変異;または天然型インスリンA鎖の19番目のアミノ酸であるチロシンのグルタミン酸、セリン、またはトレオニンへの変異であることを特徴とする。
【0019】
他の具体例として、前記インスリンアナログは、下記一般式(1)で表される配列番号:55のA鎖と下記一般式(2)で表される配列番号:56のB鎖のすべての組み合わせを含むインスリンアナログであって、天然型インスリンを除くもの、すなわちA鎖が配列番号:53と一致しながら、同時に、B鎖も配列番号:54と一致するペプチドを除くものである。
【0020】
【0021】
前記一般式(1)において、
Xaa1が、アラニン、グリシン、グルタミン、ヒスチジン、グルタミン酸またはアスパラギンであり、
Xaa5が、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、またはアスパラギンであり、
Xaa12が、アラニン、セリン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、またはアスパラギンであり、
Xaa14が、チロシン、ヒスチジン、リジン、アラニン、またはアスパラギン酸であり、
Xaa16が、アラニン、ロイシン、チロシン、ヒスチジン、グルタミン酸またはアスパラギンであり、
Xaa19が、チロシン、グルタミン酸、セリン、またはトレオニンであり、
Xaa21が、アスパラギン、グリシン、ヒスチジン、またはアラニンである。
【0022】
【0023】
前記一般式(2)において、
Xaa16が、チロシン、グルタミン酸、セリン、トレオニン、またはアスパラギン酸であり、
Xaa25が、フェニルアラニン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸であり、
Xaa27が、トレオニンであるか、不存在であり、
Xaa28が、プロリン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸であるか、不存在である。
【0024】
他の具体例として、前記インスリンアナログは、
前記一般式(1)で表される配列番号:55のA鎖と、配列番号:54のB鎖を含む、インスリンアナログであることを特徴とする。
【0025】
他の具体例として、前記インスリンアナログは、前記配列番号:53のA鎖と一般式(2)で表される配列番号:56のB鎖を含む、インスリンアナログであることを特徴とする。
【0026】
他の具体例として、
前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシン、ヒスチジン、リジン、アラニン、またはアスパラギン酸であり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシン、グルタミン酸、セリン、またはトレオニンであり、Xaa21はアスパラギンであり、
前記一般式(2)において、Xaa16はチロシン、グルタミン酸、セリン、トレオニン、またはアスパラギン酸であり、Xaa25はフェニルアラニン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸であり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、インスリンアナログであることを特徴とする。
【0027】
他の具体例として、
前記一般式(1)において、
Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシン、グルタミン酸、またはセリンであり、Xaa21はアスパラギンであり、
前記一般式(2)において、
Xaa16はチロシン、グルタミン酸、セリン、またはアスパラギン酸であり、Xaa25はフェニルアラニン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸であり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、インスリンアナログであることを特徴とする。
【0028】
他の具体例として、
前記インスリンアナログは、
(1)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はヒスチジンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(2)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はリジンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(3)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はグルタミン酸であり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(4)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はセリンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(5)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はトレオニンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(6)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はグルタミン酸であり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(7)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はセリンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(8)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はトレオニンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(9)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はアラニンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(10)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はアスパラギン酸であり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)で、Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(11)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はアスパラギン酸であり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(12)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はアスパラギン酸であり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(13)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はグルタミン酸であり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、インスリンアナログであることを特徴とする。
【0029】
他の具体例として、前記インスリンアナログは、配列番号:28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、及び52からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むインスリンアナログであることを特徴とする。
【0030】
本発明を具現するための他の様態は、前記インスリンアナログをコードする分離された核酸である。
【0031】
本発明を具現するための他の様態は、前記核酸を含む、組換え発現ベクターである。
【0032】
本発明を具現するための他の様態は、前記組換え発現ベクターを含む、形質転換体である。
【0033】
一つの具体例として、前記形質転換体が大腸菌であることを特徴とする。
【0034】
本発明を具現するための他の様態は、下記段階を含む前記インスリンアナログを製造する方法である:
a)前記インスリンアナログをコードする核酸を含む形質転換体を培養して、インスリンアナログを発現させる段階;及び
b)発現されたインスリンアナログを分離及び精製する段階。
【0035】
一つの具体例として、
前記分離及び精製が、
b‐1)前記a)段階の培養液から形質転換体を収穫して破砕する段階;
b‐2)破砕された細胞溶解物から発現されたインスリンアナログを回収してリフォールディングする段階;
b‐3)リフォールディングされたインスリンアナログを、陽イオン交換クロマトグラフィーで精製する段階;
b‐4)精製されたインスリンアナログをトリプシン及びカルボキシペプチダーゼBで処理する段階;
b‐5)処理されたインスリンアナログを陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーまたは逆相クロマトグラフィーで順次精製する段階を含むことを特徴とする。
【0036】
本発明を具現するための他の様態は、有効成分として前記インスリンアナログを含む組成物、例えば、薬学的組成物である。
【0037】
本発明を具現するための他の様態は、有効成分として前記インスリンアナログを含むインスリン関連疾患、例えば、糖尿病の治療用薬学的組成物である。
【0038】
本発明を具現するための他の様態は、前記インスリンアナログまたはこれを有効成分として含む薬学的組成物を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、インスリン関連疾患、例えば、糖尿病を治療する方法である。
【0039】
本発明を具現するための他の一つの様態は、薬剤の製造において、前記インスリンアナログの用途である。
【0040】
一つの様態として、前記薬剤はインスリン関連疾患の予防または治療用であることを特徴とする。
【0041】
他の様態としては、糖尿病の予防または治療用であることを特徴とする。
【0042】
本発明を具現するための他の一つの様態は、インスリン関連疾患、具体的に糖尿病の治療において、前記インスリンアナログの用途である。
【発明の効果】
【0043】
本発明の非天然型インスリンアナログは、インスリン投与を必要とする患者の利便性を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】インスリンアナログの純度をタンパク質電気泳動で分析した結果を示した。代表として、インスリンアナログである9、10、11、12番のアナログに対する結果である。 1番レーン:サイズマーカー、2番レーン:天然型インスリン、3番レーン:インスリンアナログ9番、4番レーン:インスリンアナログ10番、5番レーン:インスリンアナログ11番、6番レーン:インスリンアナログ12番
【
図2a】インスリンアナログの純度を高圧クロマトグラフィーで分析した結果である。代表として、インスリンアナログ9、10、11、12番のアナログに対する結果を示した。各図面で、上から順番にRP‐HPLC(C18)、RP‐HPLC(C4)及びSE‐HPLCの結果を示す。
【
図2b】インスリンアナログの純度を高圧クロマトグラフィーで分析した結果である。代表として、インスリンアナログ9、10、11、12番のアナログに対する結果を示した。各図面で、上から順番にRP‐HPLC(C18)、RP‐HPLC(C4)及びSE‐HPLCの結果を示す。
【
図2c】インスリンアナログの純度を高圧クロマトグラフィーで分析した結果である。代表として、インスリンアナログ9、10、11、12番のアナログに対する結果を示した。各図面で、上から順番にRP‐HPLC(C18)、RP‐HPLC(C4)及びSE‐HPLCの結果を示す。
【
図2d】インスリンアナログの純度を高圧クロマトグラフィーで分析した結果である。代表として、インスリンアナログ9、10、11、12番のアナログに対する結果を示した。各図面で、上から順番にRP‐HPLC(C18)、RP‐HPLC(C4)及びSE‐HPLCの結果を示す。
【
図3】ヒトインスリンとインスリンアナログ10のグルコース吸収能を確認した実験結果を示す。
【
図4】ヒトインスリンとインスリンアナログ10の細胞の安定性を確認した実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下では、本発明をさらに詳細に説明する。
【0046】
一方、本願で開示された各説明及び実施様態は、それぞれの他の説明及び実施様態にも適用されてもよい。つまり、本願で開示された様々な要素のすべての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、下記記述される具体的な叙述によって、本発明の範疇が限定されることはない。
【0047】
また、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験のみを使用して本出願に記載された本発明の特定の様態に対する多数の等価物を認知するか、確認することができる。さらに、これらの同等物は、本発明に含まれるものと意図される。
【0048】
本明細書全般を通じて、アミノ酸に対する通常の1文字及び3文字コードが用いられる。また、本明細書で略語で言及されたアミノ酸は、IUPAC‐IUB命名法に基づいて記載された。
【0049】
本発明を具現するための一つの様態は、新規なインスリンアナログ、具体的には、天然型インスリンB鎖の16番目のアミノ酸、B鎖の25番目のアミノ酸、A鎖の14番目のアミノ酸及びA鎖の19番目のアミノ酸からなる群から選択された一つ以上のアミノ酸の変異を含むインスリンアナログを提供する。
【0050】
本発明において、用語、「インスリンアナログ(insulin analog)」とは、天然型インスリンとは異なる非天然型インスリンを意味する。前記インスリンアナログは、天然型ヒトインスリンとは異なる非天然型ヒトインスリンを含む。
【0051】
これらのインスリンアナログは、天然型インスリンの一部のアミノ酸を付加、欠失または置換の形態に変形させたアナログを含む。
【0052】
具体的には、本発明のインスリンアナログは、天然型インスリン配列と配列同一性を比較したとき、少なくとも60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、 91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、または95%以上の配列同一性を有するものであってもよい。また、本発明のインスリンアナログは、天然型インスリン配列と前記の配列同一性を有しながら、天然型インスリンに比べて受容体結合能力が低下されたものであってもよい。また、前記インスリンアナログは、天然型インスリンのようにグルコース吸収能を有するものであってもよい、または/あってもよく、生体内で血中グルコースを降下させる能力を保有してもよい。
【0053】
より具体的には、本発明のインスリンアナログは、天然型インスリンのインスリン受容体結合力(100%)と比較して約99%またはそれ以下、約95%またはそれ以下、約90%またはそれ以下、約85%またはそれ以下、約80%またはそれ以下、約75%またはそれ以下、約70%またはそれ以下、約65%またはそれ以下、約60%またはそれ以下、約55%またはそれ以下、約50%またはそれ以下、約45%またはそれ以下、約40%またはそれ以下、約35%またはそれ以下、約30%またはそれ以下、約25%またはそれ以下、約20%またはそれ以下、約15%またはそれ以下、約10%またはそれ以下、約9%またはそれ以下、約8%またはそれ以下、約7%またはそれ以下、約6%またはそれ以下、約5%またはそれ以下、約4%またはそれ以下、約3%またはそれ以下、約2%またはそれ以下、約1%またはそれ以下、または約0.1%またはそれ以下のインスリン受容体の結合力を示しうる(ただし、本発明のインスリンアナログは、インスリン受容体に対する結合力が0%には該当しない)。
【0054】
インスリンアナログの受容体結合能力は、組換えヒトインスリン受容体を過発現する細胞膜でのインスリンアナログとヨウ素125が結合されたインスリン間の競争反応を利用するSPA(Scintillation Proximity Assay)法を用いて評価しうる。これらの方法は、また、インスリンアナログの受容体結合能力の評価に用いてもよい。前記方法の具体的な例として、実施例8で用いられた方法が用いられる。
【0055】
本発明において、用語、「約」は、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などをすべて含む範囲であり、約という用語の後に出てくる数値と同等または類似の範囲の数値をすべて含むが、これに制限されない。
【0056】
また、本発明のインスリンアナログは、天然型インスリンのようにグルコース吸収能を保有することができる。
【0057】
具体的には、本発明に係るインスリンアナログは、天然型インスリンのグルコース吸収能(100%)に比べ、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約110%以上、約120%以上、約130%以上、約140%以上、約150%以上、約160%以上、約170%以上、約180%以上、約190%以上、または約200%以上のグルコース吸収能を有するものであってもよい。
【0058】
グルコース吸収能の測定は、当業界に公知された様々なグルコース吸収能の測定方法を用いて達成することができ、その例として、実施例9に記載されたグルコース吸収能の測定方法を介して測定することができる。しかし、これに制限されるものではない。
【0059】
具体的には、前記インスリンアナログは短鎖であるか、二重鎖(two polypeptide chains)の形態であってもよく、より好ましくは、二重鎖の形態であるが、特にこれに限定されない。
【0060】
前記二重鎖形態であるインスリンアナログは、天然型インスリンのA鎖に対応するポリペプチドと天然型インスリンのB鎖に対応するポリペプチド、2つのポリペプチドで構成されるものであってもよい。ここで、前記天然型インスリンのA鎖もしくはB鎖に対応するということは、前記の二重鎖のポリペプチドのいずれか一つの鎖を天然型インスリンのA鎖またはB鎖と配列同一性を比較したとき、少なくとも60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、または95%以上の配列同一性を有する場合を挙げることができ、特にこれに制限されず、二重鎖を構成する配列と天然型インスリンのA鎖もしくはB鎖の配列との比較を通じて、当業者が容易に把握することができる。
【0061】
天然型インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンで、一般的に細胞内グルコースの吸収を促進し、脂肪の分解を抑制して体内の血糖を調節する役割をする。インスリンは血糖の調節機能がないプロインスリン(proinsulin)前駆体の形態でプロセッシングを経て、血糖の調節機能を有するインスリンになる。インスリンは、2つのポリペプチド鎖、すなわち、それぞれ21個及び30個のアミノ酸残基を含むA鎖及びB鎖から構成されており、これらは2つのジスルフィド橋で相互連結されている。天然型インスリンのA鎖及びB鎖は、それぞれに配列番号:53及び54で表されるアミノ酸配列を含む。
【0062】
A鎖:
Gly‐Ile‐Val‐Glu‐Gln‐Cys‐Cys‐Thr‐Ser‐Ile‐Cys‐Ser‐Leu‐Tyr‐Gln‐Leu‐Glu‐Asn‐Tyr‐Cys‐Asn(配列番号:53)
B鎖:
Phe‐Val‐Asn‐Gln‐His‐Leu‐Cys‐Gly‐Ser‐His‐Leu‐Val‐Glu‐Ala‐Leu‐Tyr‐Leu‐Val‐Cys‐Gly‐Glu‐Arg‐Gly‐Phe‐Phe‐Tyr‐Thr‐Pro‐Lys‐Thr(配列番号:54)
【0063】
本発明の一実施様態によれば、本願に記述されたインスリンアナログは、天然型インスリンのように、生体内で血糖の調節機能を保有しながら、受容体結合能力が低下されたものであってもよい。より具体的には、前記インスリンアナログは、生体内での血中グルコースを降下させる能力を保有することができる。
【0064】
また、本発明の一実施様態において、前記インスリンアナログは低受容体媒介内在化(recetor-mediated internalization)または受容体媒介クリアランス(recetor-mediated clearance)を示すことができれば、特にその種類及びサイズに制限されなくてもよい。これにより、本発明のインスリンアナログは、天然型インスリンに比べて増加された血中半減期を示すことができる。
【0065】
本発明のインスリンアナログは、逆方向インスリン、天然型インスリンの誘導体、天然型インスリンの断片などを含む。このようなインスリンアナログは、遺伝子組換え法だけでなく、固相(solid phase)方法でも製造することができ、これに制限されるものではない。
【0066】
本発明において、用語、「天然型インスリンの誘導体」は、天然型インスリンに比べてアミノ酸配列に1つ以上の違いがあるペプチド、天然型インスリン配列を改質(modification)を介して変形させたペプチド、天然型インスリンのように生体内血糖の調節機能を調節する天然型インスリンの模倣体を含む。このような天然型インスリンの誘導体は、生体内血糖の調節機能を有するものであってもよい。
【0067】
具体的には、天然型インスリンの誘導体は天然型インスリンの一部のアミノ酸が置換(substitution)、追加(addition)、削除(deletion)及び修飾(modification)のいずれかの方法またはこれらの方法の組み合わせを介して変形させることができる。
【0068】
具体的には、天然型インスリンのA鎖、B鎖と、それぞれ少なくとも80%以上のアミノ酸配列から相同性を示すものであってもよく/よい、または、インスリンのアミノ酸残基の一部のグループが、化学的に置換(例えば、アルファ‐メチル化、アルファ‐ヒドロキシル化)、削除(例えば、脱アミノ化)または修飾(例えば N-メチル化)された形態であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0069】
誘導体の製造のためのいくつかの方法の組み合わせで、本発明に適用される天然型インスリンの誘導体を製造することができる。
【0070】
また、天然型インスリンの誘導体の製造のためのこれらの変形は、L型またはD型アミノ酸、及び/または非天然型アミノ酸を用いた変形;及び/または天然型配列を改質あるいは翻訳後の変形(例えば、メチル化、アシル化、ユビキチン化、分子内共有結合など)することにより、変形するものをすべて含む。
【0071】
また、天然型インスリンのアミノ及び/またはカルボキシ末端に1つまたはそれ以上のアミノ酸が追加されたものをすべて含む。
【0072】
前記置換または追加されたアミノ酸は、ヒトタンパク質で通常観察される20個のアミノ酸だけでなく、非定型または非自然発生アミノ酸を使用してもよい。非定型アミノ酸の商業源はSigma‐Aldrich、ChemPepとGenzyme pharmaceuticalsが含まれる。これらのアミノ酸が含まれているペプチドと定型的なペプチド配列は、商業化されたペプチド合成会社、例えば、米国のAmerican peptide companyやBachem、または韓国のAnygenを通じて合成及び購入できるが、特にこれに制限されない。
【0073】
本発明において、用語、「天然型インスリンもしくは天然型インスリンの誘導体の断片」は、天然型インスリンもしくは天然型インスリンの誘導体のアミノ末端もしくはカルボキシ末端に1つまたはそれ以上のアミノ酸が除去された形態をいう。このようなインスリン断片は、体内で血糖調節機能を保有しうる。
【0074】
また、本発明のインスリンアナログは、前記天然型インスリンの誘導体及び断片の製造に用いられたそれぞれの製造方法が、独立的に用いられたり、組み合わされて用いられて製造されてもよい。
【0075】
具体的には、本発明に係るインスリンアナログは、前記のような天然型インスリンのA鎖及びB鎖で特定のアミノ酸残基の変形を含むもので、具体的には、天然型インスリンのA鎖の特定のアミノ酸残基が変形されて/したり、B鎖の特定のアミノ酸残基が変形され
たものであってもよい。
【0076】
具体的には、前記インスリンアナログは、天然型インスリンB鎖の16番目のアミノ酸、B鎖の25番目のアミノ酸、A鎖の14番目のアミノ酸、及びA鎖の19番目のアミノ酸からなる群から選択された1つまたはそれ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたものであってもよく、具体的には、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、またはアラニンに置換されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0077】
具体的には、前記記述されたアミノ酸のうち1以上、2以上、3以上、または4つが本来のアミノ酸以外のアミノ酸に置換されたものであってもよい。
【0078】
具体的には、前記変異は、インスリンB鎖の16番目のアミノ酸であるチロシンのグルタミン酸、セリン、トレオニン、またはアスパラギン酸への変異;インスリンB鎖の25番目のアミノ酸であるフェニルアラニンのアスパラギン酸またはグルタミン酸への変異;インスリンA鎖の14番目のアミノ酸であるチロシンのヒスチジン、リジン、アラニン、またはアスパラギン酸への変異;またはインスリンA鎖の19番目のアミノ酸であるチロシンのグルタミン酸、セリン、またはトレオニンへの変異であってもよい。
【0079】
したがって、前記インスリンアナログは、天然型インスリンB鎖の16番目のアミノ酸であるチロシンのグルタミン酸、セリン、トレオニン、またはアスパラギン酸への変異;及び/または天然型インスリンB鎖の25番目のアミノ酸であるフェニルアラニンのアスパラギン酸またはグルタミン酸への変異;及び/または天然型インスリンA鎖の14番目のアミノ酸であるチロシンのヒスチジン、リジン、アラニン、またはアスパラギン酸への変異;及び/または天然型インスリンA鎖の19番目のアミノ酸であるチロシンのグルタミン酸、セリン、またはトレオニンへの変異を含んでもよい。しかし、これに制限されるものではない。
【0080】
より具体的には、前記インスリンアナログは、下記一般式(1)で表される配列番号:55のA鎖と下記一般式(2)で表される配列番号:56のB鎖を含むインスリンアナログであってもよい。このようなインスリンアナログは、A鎖とB鎖の配列がジスルフィド結合で相互連結された形態であるか、プロインスリンの形態であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0081】
【0082】
前記一般式(1)において、
Xaa1が、アラニン、グリシン、グルタミン、ヒスチジン、グルタミン酸またはアスパラギンであり、
Xaa5が、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、またはアスパラギンであり、
Xaa12が、アラニン、セリン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、またはアスパラギンであり、
Xaa14が、チロシン、ヒスチジン、リジン、アラニン、またはアスパラギン酸であり、
Xaa16が、アラニン、ロイシン、チロシン、ヒスチジン、グルタミン酸またはアスパラギンであり、
Xaa19が、チロシン、グルタミン酸、セリン、またはトレオニンであり、
Xaa21が、アスパラギン、グリシン、ヒスチジン、またはアラニンである。
【0083】
【0084】
前記一般式(2)において、
Xaa16が、チロシン、グルタミン酸、セリン、トレオニン、またはアスパラギン酸であり、
Xaa25が、フェニルアラニン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸であり、
Xaa27が、トレオニンであるか、不存在であり、
Xaa28が、プロリン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸であるか、不存在である。
【0085】
ここで、配列番号:53のA鎖及び配列番号:54のB鎖を含むペプチドは、除外されてもよい。
【0086】
また、前記記述した特徴的なアミノ酸残基、特にA鎖の14番目のアミノ酸、及び/または19番のアミノ酸及び/またはB鎖の16番目のアミノ酸及び/または25番目のアミノ酸に対する特徴的な変異(すなわち、天然型インスリンに存在しないアミノ酸残基)を含みつつ、前記一般式(1)のA鎖及び一般式(2)のB鎖を含むインスリンアナログと70%以上、具体的には、80%以上、より具体的には、90%以上、より具体的には、95%以上の相同性を有し、天然型インスリンに比べて受容体結合能力が減少したペプチドも本発明の範疇に含まれる。
【0087】
本発明において、用語、「相同性(homology)」は、天然型(wild type)タンパク質のアミノ酸配列またはそれをコードするポリヌクレオチド配列との類似度を示すためのものであり、本発明のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列と前記のようなパーセント以上の同一配列を有する配列を含む。このような相同性は2つの配列を肉眼で比較して決定してもよいが、比較対象となる配列を並べて相同性の程度を分析してくれる生物情報アルゴリズム(bioinformatic algorithm)を用いて決定してもよい。前記2つのアミノ酸配列間の相同性はパーセントで示すことができる。便利な自動化されたアルゴリズムは、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group、Madison、W、USA)のGAP、BESTFIT、FASTAとTFASTAコンピュータソフトウェアモジュールで利用可能である。前記モジュールの自動化された配列アルゴリズムは、Needleman&WunschとPearson&Lipman及びSmith&Waterman配列アルゴリズムを含む。他の有用な配列に対するアルゴリズムと相同性の決定は、FASTP、BLAST、BLAST2、PSIBLASTとCLUSTAL Wを含むソフトウェアで自動化されている。
【0088】
具体的な一つの様態において、前記インスリンアナログは、前記一般式(1)で表される配列番号:55のA鎖と、配列番号:54のB鎖を含むものであってよく、前記配列番号:53のA鎖と一般式(2)で表される配列番号:56のB鎖を含む、インスリンアナログであってもよいが、特にこれに制限されるものではない。
【0089】
より具体的には、前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシン、ヒスチジン、リジン、アラニン、またはアスパラギン酸であり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシン、グルタミン酸、セリン、またはトレオニンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、Xaa16はチロシン、グルタミン酸、セリン、トレオニン、またはアスパラギン酸であり、Xaa25はフェニルアラニン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸であり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンであるインスリンアナログであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0090】
より具体的には、前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシン、グルタミン酸、またはセリンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、Xaa16はチロシン、グルタミン酸、セリン、またはアスパラギン酸であり、Xaa25はフェニルアラニン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸であり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0091】
より具体的には、前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンまたはアスパラギン酸であり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシン、グルタミン酸、セリン、またはトレオニンであり、 Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸であり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0092】
具体的な一実施様態によれば、本発明に係るインスリンアナログは、下記に該当してもよい:
(1)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はヒスチジンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(2)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はリジンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(3)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はグルタミン酸であり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンで
あり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(4)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はセリンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(5)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はトレオニンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(6)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はグルタミン酸であり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(7)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はセリンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(8)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はトレオニンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(9)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はアラニンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(10)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はアスパラギン酸であり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)で、Xaa16はチロシンであり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(11)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はアスパラギン酸であり、Xaa25はフェニルアラニンであり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(12)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はアスパラギン酸であり、Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、または;
(13)前記一般式(1)において、Xaa1はグリシンであり、Xaa5はグルタミンであり、Xaa12はセリンであり、Xaa14はチロシンであり、Xaa16はロイシンであり、Xaa19はチロシンであり、Xaa21はアスパラギンであり、前記一般式(2)において、 Xaa16はチロシンであり、Xaa25はグルタミン酸であり、
Xaa27はトレオニンであり、Xaa28はプロリンである、インスリンアナログ。
【0093】
また、具体的な一実施様態によれば、前記インスリンアナログは、配列番号:28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、及び52からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むインスリンアナログであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0094】
本発明に係るインスリンアナログは、前記記述された特定の配列を含むペプチド、前記記述された特定配列で(必須で)構成されたペプチドであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0095】
一方、本願で「特定の配列番号で構成される」ペプチドまたはインスリンアナログと記載されている場合でも、その配列番号のアミノ酸配列からなるペプチドまたはインスリンアナログと同一あるいは対応する活性を有する場合は、その配列番号のアミノ酸配列の前後の無意味な配列を追加または自然に発生しうる突然変異、あるいはそのサイレント突然変異(silent mutation)を除くものではなく、このような配列を追加、あるいは突然変異を有する場合でも、本願の範囲内に属することが自明である。
【0096】
一方、前記インスリンアナログは、ペプチドそれ自体、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、またはその溶媒和物の形態をすべてを含む。
【0097】
また、ペプチドまたはインスリンアナログは、薬学的に許容される任意の形態であってもよい。
【0098】
前記塩の種類は特に制限されない。ただし、個体、例えば哺乳類に安全かつ効果的な形態であることが望ましいが、特にこれに制限されるものではない。
【0099】
前記用語、「薬学的に許容される」は、医薬学的な判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、またはアレルギー反応などを引き起こすことなく、目的の用途に効果的に使用可能な物質を意味する。
【0100】
本発明において、用語、「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、または塩基から誘導された塩を含む。適切な酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン‐p‐スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン‐2‐スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを挙げることができる。適切な塩基から誘導された塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土金属、及びアンモニウムなどを含むことができる。
【0101】
また、本発明で使用される用語、「溶媒和物」は、本発明に係るペプチドまたはその塩が溶媒分子と複合体を形成したものをいう。
【0102】
本発明を具現するための他の様態は、前記インスリンアナログをコードする分離された核酸、前記核酸を含む組換え発現ベクター、及び前記組換え発現ベクターを含む、形質転換体を提供する。
【0103】
前記インスリンアナログについては、先に説明した通りである。
【0104】
本発明において、用語、「核酸」は、一本鎖または二本鎖の形態で存在するデオキシリボヌクレオチド(DNA)またはリボヌクレオチド(RNA)であり、ゲノムDNA、cDNA、及びこれから転写されたRNAを含む意味を有し、核酸分子において基本的な構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドだけでなく、糖または塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む(非特許文献4及び5)。本発明の核酸は、標準的な分子生物学技術を用いて分離または製造することができる。例えば、適切なプライマー配列を用いて天然型インスリンの遺伝子配列(NM_000207.2、NCBI)からPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を介して増幅することができ、自動化されたDNA合成器を用いる標準的な合成技術を用いて製造することができる。
【0105】
本発明の核酸は、具体的には、配列番号:27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、及び51に記載されている塩基配列を含む。本発明は、一実施様態で配列番号:27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、及び51に記載されている塩基配列だけでなく、前記配列と70%以上の相同性、具体的には、80%以上の相同性、より具体的には、90%以上の相同性、より具体的には、95%以上の相同性、最も具体的には、98%以上の相同性を示す配列であって、実質的に核酸がコードしたペプチドが生体内の血糖調節機能を保有しつつ、天然型インスリンに比べて受容体結合能力が低下したものをすべて含む。
【0106】
本発明に係る組換えベクターは、典型的にはクローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築することができ、原核細胞または真核細胞を宿主細胞にして構築することができる。
【0107】
本発明において、用語、「ベクター」とは適当な宿主細胞で目的タンパク質を発現することができる組換えベクターであって、核酸挿入物が発現されるように動作可能に連結された必須的な調節要素を含む核酸構造物(construct)を意味する。本発明は、インスリンアナログをコードする核酸を含む組換えベクターを製造することができるが、前記組換えベクターを宿主細胞に形質転換(transformation)または形質感染(transfection)させることで、本発明のインスリンアナログを収得することができる。
【0108】
本発明でインスリンアナログをコードする核酸は、プロモーターに作動可能に連結されてもよい。
【0109】
本発明において、用語、「作動可能に連結された(operatively linked)」は、核酸の発現調節配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、リボソーム結合部位、転写終結配列など)と他の核酸配列との機能的な結合を意味し、これにより前記調節配列は、前記他の核酸配列の転写及び/または解読を調節することになる。
【0110】
本発明において、用語、「プロモーター」は、ポリメラーゼに対する結合部位を含み、プロモーターの下位遺伝子のmRNAへの転写開始活性を有する、通常、コーディング領域の上位(upstream)に位置する非解読の核酸配列、すなわち、ポリメラーゼが結合して遺伝子の転写を開始するようにするDNA領域をいい、mRNA転写開始部位の5’部位に位置することができる。
【0111】
例えば、本発明のベクターが組換えベクターであり、原核細胞を宿主とする場合に、転写を進行させることができる強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター、及びT7プロモーターなど)、解読の開始のためのリボソーム結合部位及び転写/解読終結配列を含むことが一般的である。
【0112】
また、本発明に用いられるベクターは、当業界でよく使用されているプラスミド(例えば、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズ、pPICZαシリーズ、pUC19など)、ファージ(例えば、λgt4・λB、λ‐Charon、λΔz1及びM13など)またはウイルス(例えば、SV40など)を操作して製作されてもよい。
【0113】
一方、本発明のベクターが組換えベクターであり、真核細胞を宿主とする場合に、哺乳動物細胞のゲノムから由来したプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター及びHSVのtkプロモーター)が用いられてもよく、転写終結配列としてポリアデニル化配列(例えば、小成長ホルモンターミネーター及びSV40由来のポリアデニル化配列)を一般的に有する。
【0114】
また、本発明の組換えベクターは、選択マーカーとして当業界で通常的に利用されている抗生剤耐性遺伝子を含み、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子が用いられてもよい。
【0115】
本発明の組換えベクターは、回収される目的タンパク質、すなわち、短鎖インスリンアナログ、プロインスリンまたはインスリンアナログの精製を容易にするために、必要に応じて他の配列をさらに含んでもよい。前記さらに含まれる配列は、タンパク質精製のためのタグ配列であってもよく、例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ(Pharmacia、USA)、マルトース結合タンパク質(NEB、USA)、FLAG(IBI、USA)及び6つのヒスチジン(hexahistidine)などがあるが、前記例によって目的タンパク質の精製のために必要な配列の種類が制限されるものではない。
【0116】
前記のようなタグ配列を含む組換えベクターによって発現された融合タンパク質は、アフィニティー・クロマトグラフィーによって精製されてもよい。例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼが融合した場合には、この酵素の基質であるグルタチオンを用いることができ、6つのヒスチジンタグが用いられた場合には、Ni‐NTAカラムを用いて、必要な目的タンパク質を容易に回収することができる。
【0117】
本発明において、用語、「形質転換(transformation)」とは、DNAを宿主細胞内に導入してDNAが染色体の因子として、または染色体統合完成によって複製可能になることで、外部のDNAを細胞内に導入して人為的に遺伝的な変異を起こす現象を意味する。本発明の形質転換方法は、任意の形質転換方法が使用されてもよく、当業界の通常の方法によって容易に行うことができる。一般的に、形質転換の方法は、CaCl2沈殿法、CaCl2沈殿法にDMSO(dimethyl sulfoxide)と呼ばれる還元物質を使用することにより効率を高めたHanahan方法、電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム沈殿法、原形質融合法、シリコンカーバイド繊維を用いた攪拌法、アグロバクテリア媒介形質転換法、PEGを用いた形質転換法、デキストラン硫酸、リポフェクタミン及び乾燥/抑制媒介された形質転換法などがある。
【0118】
本発明に係るインスリンアナログをコードする核酸を含む組換えベクターを形質転換させるための方法は前記例に限定されず、当業界で一般的に使用される形質転換または形質感染方法が制限なく使用されてもよい。
【0119】
目的核酸であるインスリンアナログをコードする核酸を含む組換えベクターを宿主細胞内に導入することにより、本発明の形質転換体(transformant)を獲得することができる。
【0120】
本発明に適した宿主は、本発明の核酸を発現するようにする限り、特に制限されない。本発明に用いられる宿主の特定の例としては、大腸菌(E. coli)のようなエシェリキア(Escherichia)属細菌;バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)のようなバチルス(Bacillus)属細菌;シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)のようなシュードモナス(Pseudomonas)属細菌;ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)のような酵母;スポドプテラ・フルギペルダ(SF9)のような昆虫細胞;及びCHO、COS、BSCなどの動物細胞がある。具体的には、宿主細胞に大腸菌を用いてもよいが、これに制限されない。
【0121】
本発明を具現するための他の様態は、前記形質転換体を用いてインスリンアナログを製造する方法を提供する。
【0122】
具体的には、下記段階を含む前記インスリンアナログを製造する方法を提供する:
a)前記インスリンアナログをコードする核酸を含む形質転換体を培養してインスリンアナログを発現させる段階;及び
b)発現されたインスリンアナログを分離及び精製する段階。
【0123】
本発明で形質転換体の培養に用いられる培地は、適切な方法で宿主細胞培養の要件を満たす必要がある。宿主細胞の生長のために培地中に含まれうる炭素源は、製造された形質転換体の種類に応じて当業者の判断により適宜選択することができ、培養時期及び量を調節するために適当な培養条件を採用することができる。
【0124】
用いられる糖源としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デンプン、セルロースなどの糖及び炭水化物、大豆油、ひまわり油、ヒマシ油、ココナッツ油などの油及び脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸のような脂肪酸、グリセロール、エタノールなどのアルコール、酢酸などの有機酸が含まれる。これらの物質は、個別的に、または混合物として用いられてもよい。
【0125】
用いられる窒素源としては、ペプトン、酵母抽出物、肉汁、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、大豆、小麦、及び尿素または無機化合物、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムが含まれる。窒素源も、個別的に、または混合物として 用いられてもよい。
【0126】
用いられるリン源としては、リン酸二水素カリウムまたはリン酸水素二カリウムまたは相応するナトリウム含有塩が含まれる。また、培養培地は成長に必要な硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄のような金属塩を含有してもよい。
【0127】
最後に、前記物質に加えて、アミノ酸及びビタミンのような必須成長物質が用いられてもよい。また、培養培地に適切な前駆体が用いられてもよい。前記された原料は、培養中に培養物に適切な方法によって回分式または連続式で添加されてもよい。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのような塩基性化合物またはリン酸または硫酸のような酸化合物を適切な方法で用いて培養物のpHを調節してもよい。また、脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡生成を抑制してもよい。好気状態を維持するために培養物内の酸素または酸素含有ガス(例えば、空気)を注入する。
【0128】
本発明に係る形質転換体の培養は、通常20℃~45℃、具体的には、25℃~40℃の温度で行われる。また、培養は、所望のインスリンアナログの生成量が最大に得られるまで継続されるが、このような目的のために培養は、通常、10~160時間持続してもよい。
【0129】
前述したように、宿主細胞に応じて適切な培養条件を造成することによって、本発明に係る形質転換体はインスリンアナログを生産するようになり、ベクターの構成及び宿主細胞の特徴に基づいて生産されたインスリンアナログは、宿主細胞の細胞質内、原形質膜空間(periplasmic space)または細胞外に分泌される。
【0130】
宿主細胞内または外に発現されたタンパク質は、通常の方法で精製することができる。精製方法の例としては、塩析(例えば、硫酸アンモニウム沈殿、リン酸ナトリウム沈殿など)、溶媒沈殿(例えば、アセトン、エタノールなどを用いたタンパク質画分沈殿など)、透析、ゲルろ過、イオン交換、逆相カラムクロマトグラフィーのようなクロマトグラフィー及び限外ろ過などの手法を単独または組み合わせて適用することができる。
【0131】
本発明の具体例では、形質転換体から封入体形態で発現されたインスリンアナログを分離及び精製するために、下記段階をさらに含んでもよい:
b‐1)前記a)段階の培養液から形質転換体を収穫して破砕する段階;
b‐2)破砕された細胞溶解物から発現されたインスリンアナログを回収してリフォールディングする段階;
b‐3)リフォールディングされたインスリンアナログを、陽イオン交換クロマトグラフィーで精製する段階;
b‐4)精製されたインスリンアナログをトリプシンとカルボペプチダーゼBで処理する段階;
b‐5)処理されたインスリンアナログを陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーまたは逆相クロマトグラフィーで順次精製する段階。
【0132】
本発明を具現するための他の様態は、有効成分として前記インスリンアナログを含む組成物、例えば、薬学的組成物を提供する。
【0133】
前記薬学的組成物は、インスリン関連疾患、例えば、糖尿病の治療用薬学的組成物であってもよい。
【0134】
前記インスリンアナログについては、先に説明した通りである。
【0135】
本発明において、用語、「インスリン関連疾患」は、インスリンの生理活性がないか、または低いため発生するか進行する疾患であって、例えば、糖尿病が挙げられるが、特にこれに制限されない。
【0136】
本発明に係るインスリンアナログを含む薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。
【0137】
本発明において、用語、「薬学的に許容可能な」とは、治療効果を示すことができるほどの十分な量と副作用を起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合または同時使用される薬物など医学分野でよく知られている要素に応じて、当業者によって容易に決定することができる。
【0138】
薬学的に許容される担体は、経口投与時には結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、及び香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤及び安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、及び保存剤などを使用することができる。本発明の薬学的組成物の剤形は、上述したような薬学的に許容される担体と混合して多様に製造することができる。例えば、経口投与の際には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ及びウエハーなどの形態で製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多数回投薬形態で製造することができる。その他にも溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル及び徐放性製剤などで剤形化することができる。
【0139】
一方、剤形化に適合した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用されることができる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、及び防腐剤などをさらに含むことができる。
【0140】
また、本出願のインスリンアナログは、本出願の組成物の総重量に対して0.001重量%~10重量%で含まれてもよいが、特にこれに制限されるものではない。
【0141】
本発明を具現するための他の様態は、前記インスリンアナログまたはこれを有効成分として含む薬学的組成物を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、インスリン関連疾患、例えば、糖尿病を治療する方法を提供する。
【0142】
前記インスリンアナログ及び薬学的組成物については、先に説明した通りである。
【0143】
本発明で、「投与」は、任意の適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記アナログの投与経路は、薬物が目的の組織に到達することができる限り、いかなる一般的な経路を通じて投与されてもよい。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、及び直腸内投与などが挙げえられるが、これらに制限されない。しかし、経口投与時のペプチドは消化されるので、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングしたり、胃での分解から保護されるように剤形化することが望ましい。好ましくは注射剤の形態で投与してもよい。また、薬学的組成物は、有効成分が標的細胞に移動することができる任意の装置によって投与してもよい。
【0144】
また、本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重、及び疾患の重症度などのいくつかの関連因子と一緒に、有効成分である薬物の種類に応じて決定される。本発明の薬学的組成物は、生体内の持続性が優れているので、本発明の薬学的組成物の投与回数及び頻度を著しく減少させることができる。
【0145】
本発明の組成物の総有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与されてもよく、複数の投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与されてもよい。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度に応じて有効成分の含量を異にすることができる。具体的には、本発明のインスリンアナログの好ましい全体容量は、一日に患者の体重1kg当たり約0.0001mg~500mgであってもよい。
【0146】
しかし、前記インスリンアナログの容量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食物や排泄率など、さまざまな要因を考慮して、患者の有効投与量が決定されるので、このような点を考慮すると、当分野の通常の知識を有する者であれば、前記本発明の組成物の特定の用途に応じた適切な有効投与量を決定することができる。本発明に係る薬学的組成物は、本発明の効果を示す限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特に制限されない。
【0147】
本発明を具現するための他の一つの様態は、薬剤の製造において、前記インスリンアナログの用途である。
【0148】
一つの様態として、前記薬剤は、インスリン関連疾患の予防または治療用であるが、特にこれに制限されない。
【0149】
他の様態として、糖尿病の予防または治療用であるが、特にこれに制限されない。
【0150】
本発明を具現するための他の一つの様態は、インスリン関連疾患、具体的には、糖尿病の治療において、前記インスリンアナログの用途である。
【0151】
前記インスリンアナログ、インスリン関連疾患については、先に説明した通りである。
【0152】
以下、下記実施例により本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0153】
実施例1:短鎖インスリンアナログ発現ベクターの製作
保有している天然型インスリン発現ベクターを鋳型とし、A鎖またはB鎖のアミノ酸を一つずつ変形させたインスリンアナログを製作するために順方向及び逆方向オリゴヌクレオチドを合成した後(表2)、PCRを行い、それぞれのアナログ遺伝子を増幅した。
【0154】
下記表1に、それぞれのA鎖またはB鎖のアミノ酸の変化配列及びアナログ名を示した。つまり、アナログ1の場合は、A鎖の14番チロシン(Y)がヒスチジン(H)に置換、アナログ6の場合、B鎖の16番チロシンがグルタミン酸(E)に置換された形態である。
【0155】
【0156】
インスリンアナログ増幅のためのプライマーは、表2に示した。
【0157】
【0158】
【0159】
インスリンアナログ増幅のためのPCR条件は、95℃で30秒、55℃で30秒、68℃で6分であり、このプロセスを18回繰り返した。このような条件で得られたインスリンアナログ断片は、細胞内の封入体形態で発現させるためにpET22bベクターに挿入されており、このように得られた発現ベクターをpET22bインスリンアナログ1~13と命名した。前記発現ベクターは、T7プロモーターの調節下にインスリンアナログ1~13のアミノ酸配列をコードする核酸を含む。前記発現ベクターを含む宿主内でのインスリンアナログのタンパク質を封入体形態で発現させた。
【0160】
表3に、それぞれのインスリンアナログ1~13のDNA配列及びタンパク質配列を示した。
【0161】
それぞれの配列変更確認はDNA配列分析を通じて確認し、その結果、それぞれのインスリンアナログが目的とするところにより、配列が変更されたことが確認できた。
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
実施例2:組換えインスリンアナログの融合ペプチドの発現
T7プロモーター調節下の組換えインスリンアナログの発現を行った。それぞれの組換えインスリンアナログの発現ベクターとしてE.coli BL21‐DE3( E. coli B F-dcm ompT hsdS(rB-mB-) gal λDE3);Novagen)を形質転換した。形質転換の方法は、Novagen社で推薦する方法に従った。各組換え発現ベクターが形質転換された個々の単一コロニーをとり、アンピシリン(50μg/ ml)が含まれた2Xルリアブロス(Luria Broth、LB)培地に接種し、37℃で15時間培養した。組換え菌株の培養液と30%グリセロールを含む2X LB培地を1:1(v/v)の割合で混合して、各1mlずつクライオチューブに分注して-140℃に保管した。これを組換え融合タンパク質の生産のための細胞ストック(cell stock)として使用した。
【0172】
遺伝子組換えインスリンアナログの発現のためには、各細胞ストック1バイアルを溶か
し、500 mlの2Xルリアブロスに接種し、37℃で14~16時間振とう培養した。 OD600の値が5.0以上を示すと培養を終了し、これを種培養液として使用した。50L発酵器(MSJ‐U2、B.E.MARUBISHI、日本)を用いて、種培養液を17Lの発酵培地に接種し、初期バス(bath)発酵を開始した。培養条件は、温度37℃、空気量20L/分(1 vvm)、攪拌速度500rpm及び30%アンモニア水を使用してpH 6.70に維持した。発酵の進行は、培養液内の栄養素が制限されたとき、追加の培地(feeding solution)を添加して流加培養を行った。菌株の成長は、OD値によってモニタリングし、OD値が100以上で最終濃度500μMのIPTGで導入した。培養は導入後、約23~25時間までさらに進行し、培養終了後に遠心分離器を用いて組換え菌株を収得して使用時まで-80℃で保管した。
【0173】
実施例3:組換えインスリンアナログの回収及びリフォールディング(refolding)
前記実施例2で発現させた組換えインスリンアナログを可溶性の形態に変えるために細胞を破砕してリフォールディングした。細胞ペレット100g(wet weight)を1Lの溶解緩衝液(50 mM Tris‐HCl(pH9.0)、1 mM EDTA(pH8.0)、0.2 M NaClと0.5%トリトンX‐100)に再浮遊した。微細溶液化プロセッサMicrofluidizer(Microfluidic Corp. Model M‐110EH‐30)を使用して、15,000psiの圧力で実行して細胞を破砕した。破砕された細胞溶解物を7,000rpmで4~8℃で20分間遠心分離して上澄液を捨て、3Lの洗浄緩衝液(0.5%トリトンX‐100と50mM Tris‐HCl(pH8.0)、0.2M NaCl、1mM EDTA)に再浮遊した。7,000 rpmで4~8℃で20分間遠心分離してペレットを蒸留水に再浮遊した後、同様の方法で遠心分離した。ペレットをとり、緩衝液(1M L‐グリシン、3.78 g L‐システイン‐HCl、pH 10.6)に再浮遊して、常温で1時間攪拌した。再浮遊された遺伝子組換えインスリンアナログの回収のために8Mウレアを追加した後、3~5時間攪拌した。可溶化された組換えプロインスリンアナログのリフォールディング(refolding)のために7,000 rpmで4~8℃で30分間遠心分離した後、上澄液を取った後、還元剤(15mM L‐システイン‐HCl)を1時間処理し、ここに一定の倍数の蒸留水を蠕動ポンプ(peristaltic pump)を用いて入れながら4~8℃で12時間以上攪拌した。
【0174】
実施例4:陽イオン交換クロマトグラフィー精製
45%エタノールを含む20mMクエン酸ナトリウム(pH2.0)緩衝液で平衡化されたSP FF(GE healthcare社)カラムに再接合が終わった試料を結合させた後、塩化カリウム0.5 Mと45%エタノールを含む20 mMクエン酸ナトリウム(pH2.0)緩衝液を用いて濃度が0%から100%になるように10カラム容量の直線濃度勾配でインスリンアナログタンパク質を溶出した。
【0175】
実施例5:トリプシン(Trypsin)とカルボキシペプチダーゼB(Carboxypeptidase B)の処理
溶出された試料を限外ろ過膜で塩を除去し、緩衝溶液(10mM Tris‐HCl、pH8.0)に交替した。得られた試料タンパク量の約30,000モル比に該当するトリプシンと約3,000モル比に該当するカルボキシペプチダーゼBを添加した後、4~8℃で16時間以上攪拌した。
【0176】
実施例6:陽イオン交換クロマトグラフィー精製
反応が終わった試料を45%エタノールを含む20mMクエン酸ナトリウム(pH2.0)緩衝液で平衡化されたSP HP(GE healthcare社)カラムに再度結合させた後、塩化カリウム0.5 M と45%エタノールを含む20mMクエン酸ナトリウム(pH2.0)緩衝液を用いて濃度が0%から100%になるように10カラム容量の直線濃度勾配でインスリンアナログタンパク質を溶出した。
【0177】
実施例7:逆相クロマトグラフィー精製
前記実施例6で得られた試料から純粋なインスリンアナログを純粋分離するためにリン酸ナトリウムとイソプロパノールを含む緩衝液で平衡化された逆相クロマトグラフィーSource30RPC(GE healthcare、米国)に結合させた後、リン酸ナトリウムとイソプロパノールを含む緩衝液を用いて直線濃度勾配でインスリンアナログタンパク質を溶出した。
【0178】
このように精製されたインスリンアナログは、タンパク質電気泳動(SDS‐PAGE、
図1)及び高圧クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析し、この中で代表としてインスリンアナログ9番、10番、11番、12番の純度分析の結果を示した(
図2)。
【0179】
実施例8:インスリンアナログのインスリン受容体の結合力の比較
インスリンアナログのインスリン受容体結合力を測定するために、SPA(Scintillation Proximity assay)方法を用いて分析した。96ウェルピコプレート(pico‐plate)にインスリン受容体が発現されたCHO細胞株の細胞膜とPVT SPAビーズを一緒に入れた。インスリン受容体に対する結合力を確認するために、10個以上の濃度に希釈したヒトインスリン及びそれぞれのインスリンアナログ、そして競争相手として、放射性同位元素である125ヨウ素が付着したインスリンを一緒に入れた後、常温で4時間の競争反応させた。4時間後、ベータカウンターを用いてインスリン受容体の結合力を測定した。各物質の結合力は、GraphPad Prism 6ソフトウェアを使用してIC50に算出し、ヒトインスリンのインスリン受容体結合力に対する相対的なインスリンアナログのインスリン受容体結合力に数値化した。
【0180】
その結果、ヒトインスリンに比べてインスリンアナログ(1番)は90%、インスリンアナログ(2番)は95%、インスリンアナログ(3番)は1.0%、インスリンアナログ(4番)は<0.1%、インスリンアナログ(6番)は20%、インスリンアナログ(7番)は8.5%、インスリンアナログ(9番)は79%、インスリンアナログ(10番)は79%、インスリンアナログ(11番)は24%、インスリンアナログ(12番)は<0.1%、インスリンアナログ(13番)は<0.1%の受容体結合力が確認された(表4)。このように、本発明のインスリンアナログは、天然型インスリンに比べてインスリン受容体結合力が減少したことを観察した。
【0181】
【0182】
実施例9:インスリンアナログ10のインビトロ効力の比較
インスリンアナログ10のインビトロ効力を測定するために、脂肪細胞に分化させたマウス由来の3T3‐L1細胞株を用いたグルコース吸収能(Glucose uptake、または脂質合成)試験を実施した。3T3‐L1細胞を10%NBCS(新生仔牛血清)を含むDMEM(Dulbeco's Modified Eagle's Medium、Gibco、Cat.No、12430)培地を用いて、週2~3回継代培養し維持した。3T3‐L1細胞を分化用培地(10%FBSを含むDMEM)を用いて懸濁した後、48ウェルのプレートにウェル当り5×104個になるように接種して48時間培養した。脂肪細胞への分化のために、分化用培地に1μg/mLヒトインスリン(Sigma, Cat. No. I9278)、0.5μMIBMX(3-isobutyl-1-methylxanthine, Sigma, Cat. No.I5879)、及び1μMデキサメタゾン(Sigma, Cat. No. D4902)を混合し、既存培地を除去した後、ウェル当り250μlずつ入れた。48時間後、分化用培地に1μg/mLのヒトインスリンのみを添加した培地に再度交換した。以後、48時間ごとに1μg/mLのヒトインスリンを添加した分化用培地に交換しながら、12日間脂肪細胞への分化が誘導されることを確認した。グルコース吸収能の試験のために、分化が終わった細胞を無血清DMEM培地で1回水洗した後、250μlずつ無血清DMEMを入れて4時間血清の枯渇を誘導した。ヒトインスリンとインスリンアナログ10を10μMから0.001nMまで無血清DMEM培地で10倍に順次希釈して用意した。用意された試料を細胞にそれぞれ250μlずつ添加した後、24時間、37℃、5%CO2培養器で培養した。培養が終わった培地のグルコース残量を測定するために、200μlの培地を取って、D‐PBSでそれぞれ5倍に希釈してGOPOD(GOPOD Assay Kit, Megazyme, Cat. No. K-GLUC)分析を行った。グルコース標準溶液の吸光度を基準に培地の残りのグルコース濃度を換算してグルコース吸収能に対するEC50をそれぞれ算出した。
【0183】
総3回の試験を繰り返し、その結果、ヒトインスリンとインスリンアナログ10の EC
50はそれぞれ14.4±1.0nMと7.8±0.7nMに算出された。つまり、ヒトインスリンに比べてインスリンアナログ10は185.5±25.7%のグルコース吸収能を有することが確認された(
図3)。
【0184】
実施例10:インスリンアナログ10の細胞安定性の比較
インスリンアナログ10の細胞安定性を確認するためにヒト由来のHepG2細胞株を用いて試験を実施した。まず、HepG2細胞を、10%FBSを含むDMEM培地を用いて、週2~3回継代培養し維持した。24ウェルのプレートにポリ‐L‐リジン(Trevigen, Cat.No. 3438-100-01)をウェル当り300μlずつ入れて37℃で2時間コーティングした。冷たいD‐PBSで2回水洗した後、HepG2細胞を培養用培地(10%FBSを含むDMEM)を用いて懸濁した後、24ウェルのプレートのウェル当り1×105個となれるように接種して24時間培養した。試験用培地(2%FBS を含むDMEM)を用いて細胞を水洗した後、ヒトインスリンとインスリンアナログ10を500nMずつ含む試験用培地を各ウェル当り500μlずつ入れた。以降、0、2、6、9、24、48時間、37℃、5%CO2培養器で培養した後、培養が終わったら培地を回収して冷凍保管した。培地内インスリン残量を測定するためにPBS‐Tで100倍に希釈して、ヒトインスリンELISAキット(Alpco, Cat.No. 80-INSHU-E10.1)を用いて分析を行った。
【0185】
総3回の試験を繰り返し、その結果、0時間に比べて48時間培養後、培地内インスリンの残量がヒトインスリンとインスリンアナログ10それぞれ20.9±11.4%と72.7±5.7%と算出された。つまり、ヒトインスリンと比べてインスリンアナログ10は、より優れた細胞の安定性を示すことが確認された(
図4)。
【0186】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施されることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないものとして理解しなければならない。本発明の範囲は、前記の詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【配列表】