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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】導電性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20221014BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221014BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20221014BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20221014BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20221014BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20221014BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20221014BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20221014BHJP
   B65D 85/86 20060101ALI20221014BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20221014BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
C08L23/08
C08L25/08
C08L51/06
C08L55/02
H01B1/24 B
H01B5/14 Z
B65D85/86 100
B32B7/02
B32B27/18 H
B32B27/18 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019539652
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2018032286
(87)【国際公開番号】W WO2019045030
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2017168436
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勝
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雄志
(72)【発明者】
【氏名】荒井 亨
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-178263(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136534(WO,A1)
【文献】特開2017-141370(JP,A)
【文献】特開2011-153214(JP,A)
【文献】特開2003-073541(JP,A)
【文献】特開2002-355935(JP,A)
【文献】特開2011-012111(JP,A)
【文献】特開2016-188189(JP,A)
【文献】特開2014-215470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B32B 1/00-43/00
B65D 85/30-85/48、85/86、85/90
H01B 1/00-1/24、5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100質量部に対し、カーボンブラック5~60質量部、クロス共重合体10~100質量部を含有し、その表面固有抵抗値が10~1010Ωである導電性樹脂組成物であって、前記クロス共重合体が、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖を有する共重合体であり、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖が芳香族ポリエン単量体単位を介して結合する構造を有している、導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂及びABS樹脂から選ばれる一種以上である、請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記クロス共重合体が、以下の(1)~(3)の条件を満足する共重合体である、請求項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
(1)エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が5モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエン単量体単位の含量が0.01モル%以上0.2モル%以下、残部がエチレン単量体単位の含量である。
(2)エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の重量平均分子量が5万以上30万以下、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以上6以下である。
(3)クロス共重合体中に含まれるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の含量が50質量%以上95質量%以下の範囲にある。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂から選ばれる単数の樹脂、または複数の樹脂であり、さらにポリエチレン系樹脂を、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し1~30質量部含む、請求項1又は3に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物を用いた電子部品包装容器。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物を用いた電子部品包装体。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物を用いたシート。
【請求項8】
ポリスチレン系樹脂及びABS系樹脂から選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる基材層の、少なくとも片面に請求項1~4のいずれか一項記載の導電性樹脂組成物を積層した多層シート。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のシートを用いた電子部品包装容器。
【請求項10】
請求項7又は8に記載のシートを用いた電子部品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性樹脂組成物に関し、該導電性樹脂組成物は例えば電子部品包装用に好適に用いる事ができる。
【背景技術】
【0002】
IC等の電子部品の包装容器にはインジェクショントレー、真空成形トレー、マガジン、エンボスキャリアテープ、カバーテープなどがある。これら電子部品の包装容器には電子部品と容器との摩擦により、あるいは容器から蓋材を剥離する際に発生する静電気により収納しているIC等が破壊されることを防止するために導電性樹脂組成物が用いられる。導電性樹脂組成物としては熱可塑性樹脂と導電性フィラーからなるものが知られている。導電性フィラーとしては金属微粉末、カーボンファイバー、カーボンブラックなどがあるが、カーボンブラックが混練条件等の検討により均一に分散させることが可能であり、安定した表面固有抵抗値が得られ易いことから多く使用されている。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂およびABS系樹脂が、また100℃以上での耐熱用としてポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが用いられている。これらの樹脂のなかで耐熱用においてはポリフェニレンエーテル系樹脂が、一般用としてはポリスチレン系樹脂およびABS系樹脂が、他の樹脂に比べカーボンブラックを多量に添加しても流動性や成形性の著しい低下がなく、さらにコストの面でも優れている。
【0003】
しかしながらカーボンブラックを多量に添加した組成物の成形品は、摩耗により成形品の表面から、カーボンブラックが脱離し易いという欠点がある。従来、SEBS等のエラストマー成分を添加して本課題に対応してきたが十分とはいえない状況であった(特許文献1~3)。本発明は、かかる欠点を解決するものであり、ポリスチレン系樹脂及びABS系樹脂から選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂およびカーボンブラックからなる導電性樹脂組成物において、この導電性樹脂組成物にクロス共重合体を含有させることにより、樹脂としての力学物性を維持しつつIC等との接触時の摩耗によるカーボンブラック等の脱離が原因となるIC等の汚染を著しく減少させた導電性樹脂組成物を提供しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-76425号
【文献】特開2003-73541号
【文献】特開2002-355935号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IC等との接触時の摩耗によるカーボンブラック等の脱離が原因となるIC等の汚染を著しく減少させた導電性樹脂組成物およびシート、並びに当該シートを成形してなる電子部品包装容器や電子部品包装体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決する手段は以下の通りである。
〔1〕熱可塑性樹脂100質量部に対し、カーボンブラック5~60質量部、クロス共重合体10~100質量部を含有し、その表面固有抵抗値が10~1010Ωである導電性樹脂組成物。
〔2〕前記熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂及びABS樹脂から選ばれる一種以上である、〔1〕記載の導電性樹脂組成物。
〔3〕前記クロス共重合体が、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖を有する共重合体であり、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖が芳香族ポリエン単量体単位を介して結合する構造を有しており、かつ以下の(1)~(3)の条件を満足する共重合体である、〔1〕または〔2〕に記載の導電性樹脂組成物。
(1)エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が5モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエン単量体単位の含量が0.01モル%以上0.2モル%以下、残部がエチレン単量体単位の含量である。
(2)エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の重量平均分子量が5万以上30万以下、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以上6以下である。
(3)クロス共重合体中に含まれるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の含量が50質量%以上95質量%以下の範囲にある。
〔4〕さらにポリエチレン系樹脂を、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し1~30質量部含む、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物。
〔5〕〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物を用いた電子部品包装容器。
〔6〕〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物を用いた電子部品包装体。
〔7〕〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物を用いたシート。
〔8〕ポリスチレン系樹脂及びABS系樹脂から選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる基材層の、少なくとも片面に〔1〕~〔4〕のいずれか一項記載の導電性樹脂組成物を積層した多層シート。
〔9〕〔7〕又は〔8〕に記載のシートを用いた電子部品包装容器。
〔10〕〔7〕又は〔8〕に記載のシートを用いた電子部品包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性樹脂組成物は、良好な力学物性や成形加工性を示し、さらに、接触や摩擦によるカーボンブラックの脱離が非常に少ないという点で、たとえばシートとして電子部品包装容器として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の導電性樹脂組成物を詳細に説明する。
【0009】
本発明は熱可塑性樹脂100質量部に対し、カーボンブラック5~60質量部、クロス共重合体10~100質量部を含有し、その表面固有抵抗値が10~1010Ωである導電性樹脂組成物である。ここで、熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂から選ばれる単数の樹脂、または複数の樹脂組成物が好ましく、特に好ましくは前記熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂から選ばれる単数の樹脂、または複数の樹脂組成物である。ここでポリスチレン系樹脂としては、スチレンから誘導される構造を主成分とする樹脂で、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレンが例示できる。耐衝撃性ポリスチレンとはHIPSを包含し、ゴム成分により補強されたポリスチレンである。また、ABS系樹脂とはアクリルニトリル、ブタジエン、スチレンの三成分を主体とした共重合体を主成分とするものをいう。
【0010】
カーボンブラックは、例えば、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラックが挙げられる。これらの平均粒径は分散性等の点から、20~70nmが好ましい。添加量が5質量部未満では十分な導電性が得られず表面固有抵抗値が高くなりすぎ、60質量部を越えると樹脂との均一分散性の悪化、成形加工性の著しい低下、機械的強度等の特性値が低下してしまう。また、表面固有抵抗値が1010Ωを越えると十分な帯電防止効果が得られず、10Ω未満では外部から静電気等による電気の流入を容易にし、電子部品が破壊してしまう可能性がある。これらカ-ボンブラックは、これらの範囲内での導電率向上のため、カーボンブラック100質量部に対し、最大30質量部までの単層または多層のカーボンナノファイバーを含んでも良い。単層または多層のカーボンナノファイバーが30質量部より多いと経済的に好ましくない。
【0011】
クロス共重合体は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、10~100質量部、好ましくは15質量部~60質量部を用いる。ここでクロス共重合体とは、配位重合工程とこれに続くアニオン重合工程からなる重合工程からなる製造方法により得られ、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてエチレン単量体、芳香族ビニル化合物単量体及び芳香族ポリエン単量体の共重合を行い、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖を合成し、次にアニオン重合工程として、このエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物単量体の共存下、アニオン重合開始剤を用いて重合することで得られるクロス共重合体であることが好ましく、より好ましくは、さらに以下の(1)~(3)の条件をすべて満足する共重合体である。
(1)配位重合工程で得られるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が5モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエン単量体単位の含量0.01モル%以上0.2モル%以下、残部がエチレン単量体単位の含量である。
(2)配位重合工程で得られるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の重量平均分子量が3万以上30万以下、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以上6以下である。
(3)クロス共重合体中に含まれるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の含量が50質量%以上95質量%以下の範囲にある。
【0012】
クロス共重合体は、好ましくはエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖を有する共重合体であり、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖が芳香族ポリエン単量体単位を介して結合する構造を有しており、かつ以下の(1)~(3)の条件を満足する共重合体である。
(1)エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が5モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエン単量体単位の含量0.01モル%以上0.2モル%以下、残部がエチレン単量体単位の含量である。
(2)エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の重量平均分子量が5万以上30万以下、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以上6以下である。
(3)クロス共重合体中に含まれるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の含量が50質量%以上95質量%以下の範囲にある。
【0013】
さらにクロス共重合体が、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖を有する共重合体であり、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖が芳香族ポリエン単量体単位を介して結合する構造を有しており、かつ以下の(1)~(3)の条件をすべて満足するクロス共重合体であることが好ましい。
(1)エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が5モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエン単量体単位の含量0.01モル%以上0.2モル%以下、残部がエチレン単量体単位の含量である。
(2)エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の重量平均分子量が5万以上30万以下、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以上6以下である。
(3)クロス共重合体中に含まれるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の含量が50質量%以上95質量%以下の範囲にある。
【0014】
さらに、クロス共重合体が、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖のグラフトスルー共重合体であり、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖が芳香族ポリエン単量体単位を介して結合しており、かつ以下の(1)~(3)の条件をすべて満足するクロス共重合体であることが好ましい。
(1)エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が5モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエン単量体単位の含量0.01モル%以上0.2モル%以下、残部がエチレン単位の含量である。
(2)エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の重量平均分子量が5万以上30万以下、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以上6以下である。
(3)クロス共重合体中に含まれるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の含量が50質量%以上95質量%以下の範囲にある。
【0015】
以下、本発明に用いるクロス共重合体について説明する。本クロス共重合体は、マクロモノマーに由来するエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖を有する共重合体であり、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖が芳香族ポリエン単量体単位を介して結合している構造を有することを特徴としている。エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖が芳香族ポリエン単量体単位を介して結合していることは、以下の観察可能な現象で証明できる。ここでは代表的なエチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体鎖とポリスチレン鎖がジビニルベンゼン単位を介して結合している例について示す。すなわち配位重合工程で得られたエチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体マクロモノマーと、本共重合体とスチレンの存在下でのアニオン重合を経て得られるクロス共重合体の1H-NMR(プロトンNMR)を測定し、両者のジビニルベンゼン単位のビニル基水素(プロトン)のピーク強度を適当な内部標準ピーク(エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体に由来する適当なピーク)を用いて比較する。ここで、クロス共重合体のジビニルベンゼン単位のビニル基水素(プロトン)のピーク強度(面積)が、エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体マクロモノマーのジビニルベンゼン単位の同ピーク強度(面積)と比較して50%未満、好ましくは20%未満である。アニオン重合(クロス化工程)の際にスチレンの重合と同時にジビニルベンゼンも共重合し、エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体鎖とポリスチレン鎖がジビニルベンゼン単位を介して結合されるために、アニオン重合後のクロス共重合体ではジビニルベンゼン単位のビニル基の水素(プロトン)のピーク強度は大きく減少する。実際にはジビニルベンゼン単位のビニル基の水素(プロトン)のピークはアニオン重合後のクロス共重合体では実質的に消失している。詳細は公知文献「ジビニルベンゼンユニットを含有するオレフィン系共重合体を用いた分岐型共重合体の合成」、荒井亨、長谷川勝、日本ゴム協会誌、p382、vol.82(2009)に記載されている。
【0016】
別な観点から、クロス共重合体において、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖が芳香族ポリエン単量体単位を介して結合している(一例としてエチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体鎖とポリスチレン鎖がジビニルベンゼン単位を介して結合している)ことは、以下の観察可能な現象で証明できる。すなわち本クロス共重合体に対し、適当な溶媒を用いソックスレー抽出を十分な回数行った後においても、含まれるエチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体鎖とポリスチレン鎖を分別することができない。通常、本クロス共重合体に含まれるエチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体鎖と同一組成のエチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体とポリスチレンは、沸騰アセトンによるソックスレー抽出を行うことで、アセトン不溶部としてエチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体に、アセトン可溶部としてポリスチレンに分別できる。しかし、本クロス共重合体に同様のソックスレー抽出を行った場合、アセトン可溶部として本クロス共重合体に含まれる比較的少量のポリスチレンホモポリマーが得られるが、大部分の量を占めるアセトン不溶部には、NMR測定を行うことでエチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体鎖とポリスチレン鎖が共に含まれていることが示され、これらはソックスレー抽出で分別することができないことがわかる。これについてもその詳細は公知文献「ジビニルベンゼンユニットを含有するオレフィン系共重合体を用いた分岐型共重合体の合成」、荒井亨、長谷川勝、日本ゴム協会誌、p382、vol.82(2009)に記載されている。
【0017】
以上から本発明のクロス共重合体を規定する表現としては、クロス共重合体は、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖を有し、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖が芳香族ポリエン単量体単位を介して結合している構造を有する共重合体であることが好ましい。本クロス共重合体には、比較的少量の芳香族ビニル化合物(ポリスチレン)ホモポリマーが含まれていても良い。
さらに好ましくは以下の(1)~(3)の条件をすべて満たす共重合体である。
(1)配位重合工程で得られるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の芳香族ビニル単量体単位の含量が5モル%以上30モル%以下、好ましくは10モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエン単量体単位の含量0.01モル%以上0.2モル%以下、残部がエチレン単位の含量である。
(2)配位重合工程で得られるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の重量平均分子量が5万以上30万以下、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以上6以下である。
(3)クロス共重合体中に含まれるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の含量が50質量%以上95質量%以下の範囲にある。
【0018】
さらに別な観点から、本クロス共重合体を説明する。本クロス共重合体は、配位重合工程とアニオン重合工程からなる重合工程を含む製造方法で得られ、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてエチレン、芳香族ビニル化合物単量体および芳香族ポリエン単量体の共重合を行ってエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖を合成し、次にアニオン重合工程として、このエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物単量体の共存下、アニオン重合開始剤によるアニオン重合により製造される共重合体であることが好ましい。アニオン重合工程において使用される芳香族ビニル化合物単量体としては、配位重合工程で重合液中に残留する未反応モノマーを用いても、これに新たに芳香族ビニル化合物モノマーを添加しても良い。重合液へのアニオン重合開始剤の添加により、アニオン重合が開始されるが、この場合、重合液中にエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の芳香族ポリエン単量体単位と比較し、圧倒的に多く含まれる芳香族ビニル化合物単量体から実質的にアニオン重合が開始し、芳香族ビニル単量体を重合しながら、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖の芳香族ポリエン単量体単位のビニル基も共重合しつつ、重合は進行する。そのため、得られるクロス共重合体は、公知文献及び当業者の知識からは、主鎖であるエチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖とクロス鎖である芳香族ビニル化合物重合体鎖がグラフトスルー形式で結合した構造(交差結合)が多く含まれると考えられる。以上からクロス共重合体を規定する表現としては、エチレン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体鎖と芳香族ビニル化合物重合体鎖のグラフトスルー共重合体であることが好ましい。
【0019】
芳香族ビニル化合物単量体としては、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp-メチルスチレン、m-メチルスチレン、o-メチルスチレン、o-t-ブチルスチレン、m-t-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、o-クロロスチレン等の各スチレン系単量体に由来する単量体が挙げられる。工業的には好ましくはスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、特に好ましくはスチレンが用いられる。これら芳香族ビニル化合物単量体は、1種類でもよく2種類以上の併用であってもよい。
【0020】
芳香族ポリエン単量体とは、10以上30以下の炭素数を持ち、複数の二重結合(ビニル基)と単数または複数の芳香族基を有し、二重結合(ビニル基)の1つが配位重合に用いられて重合した状態であっても残りの二重結合がアニオン重合可能な芳香族ポリエンである。好ましくは、オルトジビニルベンゼン、パラジビニルベンゼン及びメタジビニルベンゼンのいずれか1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。
【0021】
クロス共重合体及びその製造方法の詳細は、その全体の記載をそれぞれ出典明示によりここに援用する、WO2000/37517号、WO2007/139116号、または特開2009-120792号公報に記載されている。
【0022】
本発明の導電性樹脂組成物には必要に応じて、さらにポリエチレン系樹脂を添加してもよい。その添加量は、好ましくは前記熱可塑性樹脂100質量部に対し1~30質量部である。ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されないが、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)に代表されるポリエチレン系樹脂を使用するのが好ましい。
【0023】
ポリエチレン系樹脂のメルトフローインディックスは、190℃、荷重2.16kg(JIS-K-7210に準じ測定)で0.1g/10分以上が好ましい。ポリエチレン系樹脂を添加することで、カーボンブラックの脱離をさらに低減させることが可能になる。添加量が1質量部未満ではその効果が不十分であり、30質量部を越えるとポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂中に均一に分散させることが困難となり、効果が発現しない場合がある。
【0024】
本発明の導電性樹脂組成物は、十分な成形加工性を維持するために、表面固有抵抗値が10~1010Ωとなるようにカーボンブラックを充填した場合、メルトフローインディックス(JIS-K-7210に準じて測定)が、ポリスチレン系樹脂の場合、200℃、荷重5kgの条件で、ABS系樹脂の場合、220℃、荷重10kgの条件で、それぞれ、0.1g/10分以上であることが好ましい。また、本導電性樹脂組成物は、電子部品包装容器として適当な引張弾性率、破断点強度、耐折強度を有する。具体的には、いずれもMD方向で、引張弾性率として、おおむね1000MPa以上3000MPa以下、破断点強度25MPa以上50MPa以下、耐折強度として100回以上、好ましくは300回以上である。
【0025】
本発明の導電性樹脂組成物には、必要に応じて組成物の流動特性および成形品の力学特性を改善するために、滑剤、可塑剤、加工助剤、補強剤、安定剤など、通常樹脂に用いられる各種添加剤や他の樹脂成分を添加することが可能である。
【0026】
本発明において、原料を混練、ペレット化し樹脂組成物を得るためには、バンバリーミキサー、押出機等の公知の方法を用いることができる。混練の順序は任意であり、混練に際しては、原料を一括して混練することも可能であるし、また例えば、クロス共重合体とカーボンブラック、熱可塑性樹脂とクロス共重合体の混合物を別々に混練し、その混練物を最後に一括して混練するといった様に段階的に混練することも可能である。
【0027】
本発明の導電性樹脂組成物は、良好な力学物性や成形加工性を示し、さらに、接触や摩擦によるカーボンブラックの脱離が非常に少ないという点で、電子部品包装容器として好適に使用できる。本導電性樹脂組成物は、任意の公知の方法で成形し、電子部品包装容器として好適に用いることが出来る。電子部品包装容器とは電子部品の包装容器であるが、例えば射出成型や、シート状に成形したものを真空成形、圧空成形、熱板成形等の公知の方法によりトレー、マガジンチューブ、キャリアテープ(エンボスキャリアテープ)等の電子部品包装容器として用いることが出来る。特にキャリアテープ、トレーに好適に用いられる。電子部品包装容器に電子部品を収納することにより電子部品包装体となる。この場合容器には必要に応じ蓋がされる。例えばキャリアテープについては、電子部品を収納した後にカバーテープによる蓋が施される。電子部品包装体にはこのようなものも含む。
【0028】
導電性樹脂組成物のシートとしては単層のシート、多層のシートがある。多層のシートとは熱可塑性樹脂からなる基材層の少なくとも片面に導電性樹脂組成物の層を有するものである。基材層の熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えばポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を使用することができ、好ましくはポリスチレン系樹脂及びABS系樹脂から選ばれる一種以上を使用する。基材層の熱可塑性樹脂は、本発明の導電性樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂と同じ樹脂であることが、層間の接着性という観点からは好ましい。シートの肉厚は0.1~3.0mmであることが好ましく、多層のシートにおいては、全体の肉厚に占める導電性樹脂組成物の層の肉厚は2%~80%とするとよい。
【0029】
電子部品としては特に限定されず、例えば、IC、抵抗、コンデンサ、インダクタ、トランジスタ、ダイオード、LED(発光ダイオード)、液晶、圧電素子レジスター、フィルター、水晶発振子、水晶振動子、コネクター、スイッチ、ボリュウム、リレー等がある。ICの形式にも特に限定されず、例えばSOP、HEMT、SQFP、BGA、CSP、SOJ、QFP、PLCC等がある。
【実施例
【0030】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例、比較例に用いた原料樹脂、製法は以下の通りである。
【0031】
評価は以下の方法によって実施した。
【0032】
<表面固有抵抗値>
三菱ケミカルアナリティック社製ロレスターGX、MCPを用いて、端子間距離を10mmとし、シートを巾方向に等間隔に10箇所、表裏各2列計40箇所の表面抵抗値を測定し、対数平均値を表面固有抵抗値とした。
【0033】
<引張特性>
JIS-K-7127に準拠して、4号試験片を使用しインストロン型引張試験機により10mm/minの引張速度で引張試験を行い、流れ方向と幅方向の測定値の平均を評価結果とした。
【0034】
<カーボン脱離性>
真空成形により得られた20mm×30mmのトレーシートの中にQFP14mm×20mm×64pinのICを挿入し、ストローク20mmで20万回往復振動させた後ICのリード部へのカーボンブラック等黒色付着物の有無をマイクロスコープで観察した。評価は4個のICに対し下記基準で5段階評価を行いその合計を結果とした。20点満点。本発明においては、15点以上が好ましい。
1:リード全部のシートに接していた部分全体に付着がある
2:リード全部に付着がみられる
3:21~63個に付着がみられる
4:付着のあるリードが20個以下である
5:全く付着がみられない
【0035】
<耐折強度>
JIS-P-8115に準拠し速度175r.p.m.、折り曲げ角度135度、荷重500gで評価を行った。
【0036】
<熱可塑性樹脂>
用いた熱可塑性樹脂は以下の通りである。
ポリスチレン:東洋スチレン社製 HRM-12
耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS):東洋スチレン社製 HI-E4
ABS:デンカ株式会社製 デンカABS SE-10
【0037】
<カーボンブラック>
用いたカーボンブラックはデンカ株式会社製、デンカブラック粒状品である。
【0038】
<クロス共重合体>
下記クロス共重合体1~3を使用した。
これらのクロス共重合体は、WO2000/37517号、WO2007/139116号、特開2009-120792号公報記載の実施例あるいは比較例の製造方法で製造したもので、下記組成は、同様にこれら公報記載の方法で求めた。なお、クロス共重合体を規定するために、用いられるエチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体のスチレン含量、ジビニルベンゼン含量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、クロス共重合体中のエチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体の含量、ポリスチレン鎖の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を示す。
【0039】
クロス共重合体1
・エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体のスチレン含量16モル%、ジビニルベンゼン含量0.083モル%、重量平均分子量100000、分子量分布2.3、
・エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体の含量:83質量%、
・ポリスチレン鎖の重量平均分子量28000、分子量分布1.2
・A硬度74
【0040】
クロス共重合体2
・エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体のスチレン含量25モル%、ジビニルベンゼン含量0.070モル%、重量平均分子量115000、分子量分布2.2、
・エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体の含量:83質量%、
・ポリスチレン鎖の重量平均分子量18000、分子量分布1.2
・A硬度64
【0041】
クロス共重合体3
・エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体のスチレン含量20モル%、ジビニルベンゼン含量0.065モル%、重量平均分子量161000、分子量分布2.5、
・エチレン-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体の含量:84質量%、
・ポリスチレン鎖の重量平均分子量18000、分子量分布1.2
・A硬度56
【0042】
<ポリエチレン系樹脂>
・EEA(エチレン-エチルアクリレート樹脂):NUCコポリマーDPDJ-6169(日本ユニカー社製)
・HDPE(高密度ポリエチレン樹脂)ハイゼックス5000H(プライムポリマー社製)
【0043】
<SEBS>
・SEBS(水素添加スチレン-ブタジエン共重合体樹脂)A:タフテックH-1052(旭化成社製)
【0044】
<EVA>
・EV-260(三井-デュポンポリケミカル社製)
【0045】
<導電性樹脂組成物および単層シートの作成>
原料組成割合にて各々計量し、高速混合機により均一混合した後、φ45mmベント式二軸押出機を用いて混練し、ストランドカット法によりペレット化し導電性樹脂組成物を得た。次にペレット化した樹脂組成物をφ65mm押出機(L/D=28)とTダイを用いて厚さ300μmのシート状に成形した。得られたシートを真空成形しQFP14mm×20mm/64pinのIC包装用真空成形トレー及び同エンボスキャリアテープを得た。
【0046】
実施例、比較例の配合および評価結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
<多層シートの作成>
さらに、実施例8記載の導電性樹脂組成物を用い、基材層にABS樹脂(デンカ株式会社製 デンカABS SE-10)を用い、φ65mm押出機と2台のφ40mm押出機を使用しフィードブロック法により全体の厚みが300μmで、導電性樹脂組成物の層を基材層の両面に各30μmの厚さで積層したシートを製造した。本多層シートの表面固有抵抗値は、6×10Ωであった。この多層のシートをヒータープレートにより接触加熱した後圧空にて成形する熱成形法にてキャリアテープとし、ICの包装に好適に用いる事ができた。前記に準じてカーボン脱離性試験を行ったところ、評価合計点数は17点であった。
【0049】
本発明の導電性樹脂組成物は、良好な力学物性(引張弾性率、破断点強度、耐折強度)と適切な範囲の表面抵抗値を示しつつ、非常に良好なカーボン脱離性(低いカーボン脱離性)を示す。そのため、電子部品包装容器用の材料として好適である。