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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20221014BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20221014BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20221014BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20221014BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20221014BHJP
   C11D 3/34 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/46
A61K8/81
A61Q19/10
C11D1/04
C11D3/37
C11D3/34
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019543607
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2018034108
(87)【国際公開番号】W WO2019059111
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2017178605
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100125313
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 浩幸
(74)【代理人】
【識別番号】100067644
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 裕
(72)【発明者】
【氏名】平山 奈津美
(72)【発明者】
【氏名】河野 佐代子
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2004/098558(JP,A1)
【文献】特開平09-157688(JP,A)
【文献】特開2009-242274(JP,A)
【文献】国際公開第2012/161214(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/003114(WO,A1)
【文献】Shiseido, Japan,Cleansing Soap,Mintel GNPD,2015年12月,[検索日 2018.12.06],ID:3673929,http://portal.mintel.com/,インターネット<http://portal.mintel.com/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/04
C11D 1/18
C11D 3/37
C11D 3/34
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高級脂肪酸をN-メチルタウリンナトリウムで中和することにより得られる石鹸と、分子量20万以下の塩化ジメチルジアリルアンモニウム-アクリルアミド共重合体又は分子量20万以下のアクリルアミド-アクリル酸-塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体と、を含有することを特徴とする洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質膜を内蔵し、空気とともに内容物を泡状にして吐出するポンプフォーマー容器や狭小の流路を経て液化ガスとともに内容物を泡状に噴射するエアゾール容器に収容するための洗浄剤組成物であって、繰り返しの使用によっても多孔質膜や流路の目詰まりが生じることなく、泡の持続性、弾力性及び洗い落とし易さに優れる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メーキャップ等を手軽に洗い落とすため、洗浄剤をポンプフォーマー容器あるいはエアゾール容器に収容し、泡状にして噴出する洗浄剤製品が知られている。
【0003】
このような洗浄剤製品においては、噴出した泡を顔全体に塗り広げる必要があるため、泡に適度な弾力性や持続性を備えることが求められる。泡に適度な弾力性、持続性を付与するためには、洗浄剤にカチオンポリマーを配合することが効果的であるが、カチオンポリマーの分子量が大き過ぎると、多孔質膜や流路に目詰まりが生じ易くなり、洗浄剤を噴出できなくなるおそれがある。
【0004】
また洗浄剤には、洗浄成分として、高級脂肪酸を中和処理することにより得られる石鹸が配合されるが、中和処理に用いる中和剤の種類によっては、カチオンポリマーを配合しても、十分な泡の弾力性が得られず、洗い流した後の使用感も満足できるものではなかった。
【0005】
したがって、繰り返しの使用によってもポンプフォーマー容器等の目詰まりが生じることなく、泡の弾力性、持続性及び洗い流した後の使用感に優れる洗浄剤組成物を開発するためには、適正なカチオンポリマーと、高級脂肪酸を中和処理する中和剤について検討することが重要となる。
【0006】
【文献】特開2017-88555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポンプフォーマー容器等に収容し、繰り返し使用しても目詰まりによる作動不良が生じることなく、泡の弾力性、持続性及び洗い流した後の使用感に優れる洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明者らが検討を行った結果、高級脂肪酸をN-メチルタウリンナトリウムで中和することにより得られる石鹸と、分子量20万以下の塩化ジメチルジアリルアンモニウム-アクリルアミド共重合体又は分子量20万以下のアクリルアミド-アクリル酸-塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体と、を配合することにより、ポンプフォーマー容器等による繰り返しの使用が可能となり、しかも泡の持続性、弾力性に富み、洗い流した後の使用感にも優れた洗浄剤を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、高級脂肪酸をN-メチルタウリンナトリウムで中和することにより得られる石鹸と、分子量20万以下の塩化ジメチルジアリルアンモニウム-アクリルアミド共重合体又は分子量20万以下のアクリルアミド-アクリル酸-塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体と、を含有することを特徴とする洗浄剤組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗浄剤組成物によれば、ポンプフォーマー容器等による繰り返しの使用が可能であり、しかも泡の弾力性、持続性に富み、洗い流した後の使用感にも優れた洗浄剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の洗浄剤組成物は、高級脂肪酸をN-メチルタウリンナトリウムで中和することにより得られる石鹸と、塩化ジメチルジアリルアンモニウムをモノマー単位として含む分子量20万以下の重合体と、を含有することを特徴とする。
【0012】
本発明に用いる高級脂肪酸は、炭素数5~25程度の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪酸であり、例えば、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、ラウロレイン酸、2-エチルブタン酸、イソペンタン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、トリデカン酸、テトラメチルノナン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、ゴンドイン酸、エルカ酸、セラコレイン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、アラキドン酸、2-ヘキシルデカン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、硬化ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、硬化パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、硬化パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸等が挙げられが、中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数12~18の直鎖状飽和脂肪酸が好ましい。
【0013】
高級脂肪酸を中和処理するための中和剤として、N-メチルタウリンナトリウムを用いる。中和率は100~150%が好ましい。中和率が100%より小さいと、低温下において高級脂肪酸の結晶が析出し、ポンプフォーマーの多孔質膜等で目詰まりを起こす危険性がある。一方、中和率が150%をこえると、時間の経過とともに洗浄剤が変色するなどの問題が生じる可能性がある。中和処理は、N-メチルタウリンナトリウムを反応容器に入れ、約60℃に加熱し、混合脂肪酸を加えて中和し、石鹸を生成する。
【0014】
本発明に用いる、塩化ジメチルジアリルアンモニウムをモノマー単位とする重合体としては、例えば、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体等が挙げられる。
【0015】
また、塩化ジメチルジアリルアンモニウムをモノマー単位とする重合体の分子量は20万以下とする。分子量が20万をこえると、ポンプフォーマーに内蔵される多孔質膜やエアゾール容器における狭小な流路において、許容外の流動抵抗となり、また、目詰まりによるポンプフォーマー容器等の作動不良を引き起こすおそれがある。このため、繰り返しによる泡の噴出を可能としながら、適度な弾力性を備えた泡を得るためには、重合体の分子量を20万以下に調整する必要がある。尚、このような塩化ジメチルアリルアンモニウム-アクリルアミド共重合体(分子量12万)の市販品としては、日本ルーブリゾール社製商品「マーコート740」(化粧品の成分表示では、「ポリクオタニウム-7」に相当する。)等があり、アクリルアミド-アクリル酸-塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体(分子量15万)の市販品としては、日本ルーブリゾール社製商品「マーコート3940」(化粧品の成分表示では、「ポリクオタニウム-39」に相当する。)等がある。
【0016】
本発明の洗浄剤組成物には、上記必須成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で化粧料や医薬品に通常配合される他の成分を1種又は2種以上配合することができる。下記にその具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
保湿剤として、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、イソプレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン等を配合することができる。増粘剤として、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアガム、ポリビニルアルコール、モンモリロナイト、ラポナイト等を配合することができる。また溶剤としてエタノール等を配合することができる。
【0018】
酸化防止剤として、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン酸等、抗菌防腐剤として、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、ヘキサクロロフェン等を配合することができる。
【0019】
界面活性剤として、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリコールジエステル、ラウロイルジエタノールアマイド、脂肪酸イソプロパノールアマイド、マルチトールヒドロキシ脂肪族エーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、シュガーエステル、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体等の非イオン性界面活性剤、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン性界面活性剤、パルミチン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸トリエタノールアミン、ロート油、リニアドデシルベンゼン硫酸塩、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油マレイン酸、ヤシ脂肪酸アルギニン、アシルメチルタウリン塩等のアニオン性界面活性剤、ヤシ油脂肪酸ヒドロキシプロピルベタイン、ラウリルベタイン等の両性界面活性剤を配合することができる。
【0020】
その他成分として、色素、香料、安定剤等を適宜配合することができる。
【0021】
本発明の洗浄剤組成物は、ポンプフォーマー容器等に収容された毛髪や皮膚の洗浄剤として、洗顔料、ボディソープ、ハンドソープ、シャンプーなどの形態で好適に提供される。
【実施例
【0022】
以下、実施例に沿って本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。なお、表中の数値は、特に記載のない限り質量%を示す。
【0023】
下記表の各例に記載する組成で洗浄剤を常法により調整した。調製した洗浄剤は、多孔質膜を有するポンプフォーマー容器に収容した。ポンプフォーマー容器にはポンプ機構が内蔵されており、ポンプ機構に連結するキャップの上面を指で押圧すると、容器内に収容された洗浄剤組成物は空気と混合され、多孔質膜(200メッシュと305メッシュの2枚)を通過することにより、容器吐出口から泡状に吐出される。
【0024】
ポンプフォーマー容器から吐出した洗浄剤は、専門パネルにより、「吐出時の泡のキメ細かさ」、「泡の弾力性」、「洗い流しやすさ」及び「洗い流した後のしっとり感」の4項目について8段階で評価を行った。尚、8段階中4~8は合格、1~3は不合格と判断する。
【0025】
【表1】
【0026】
表1は、洗浄剤に配合するカチオンポリマーの種類及び量について検討した結果を示す。分子量12万のポリクオタニウム-7(塩化ジメチルジアリルアンモニウム-アクリルアミド共重合体)を0.01~3%配合した実施例1~5と、分子量15万のポリクオタニウム-39(アクリルアミド-アクリル酸-塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体)を0.01~2%配合した実施例6~10については、すべての評価項目において良好な結果を確認することができた。尚、分子量160万のポリクオタニウム-7(塩化ジメチルジアリルアンモニウム-アクリルアミド共重合体)を配合した比較例4は、許容外の流動抵抗となりポンプフォーマー容器の作動不良が生じたため、評価を行うことは不可能であった。
【0027】
【表2】
【0028】
表2は、高級脂肪酸を中和するための中和剤とカチオンポリマーとの組み合わせを検討した結果を示す。中和剤として水酸化カリウムを用いた場合には、泡の弾力性が不足し、また洗い流した後のしっとり感についても劣る結果であったが(比較例5,6)、中和剤としてN-メチルタウリンナトリウムを配合し、カチオンポリマーとして分子量12万のポリクオタニウム-7(塩化ジメチルジアリルアンモニウム-アクリルアミド共重合体)を配合した実施例11では、すべての項目で良好な結果を得ることができた。