(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード、上記ブレードの部品、および生産方法
(51)【国際特許分類】
F03D 1/06 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
F03D1/06 A
(21)【出願番号】P 2019549430
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(86)【国際出願番号】 FR2018050590
(87)【国際公開番号】W WO2018172656
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-12
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボザック, ヴァージニア
(72)【発明者】
【氏名】クレダ, ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ヒームストラ, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ミンネマ, ヘンク
(72)【発明者】
【氏名】コートストラ, ディルク ヤン
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0058864(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0058867(US,A1)
【文献】国際公開第2011/077545(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0062238(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンブレード(1)であって、
熱可塑性ポリマー複合材料のパネル(3)から少なくとも部分的に形成され、風力タービンブレードの前縁(4)および後縁(5)を画定する外側ケーシングと、ポリマー複合材料で作られ、前記風力タービンブレード(1)の内部で風力タービンブレードの長手方向軸(A)に沿って延在する少なくとも1つの補剛部材(6)とを備え、前記
少なくとも1つの補剛部材(6)は、前縁(4)を画定する少なくとも1つのパネルと後縁(5)を画定する少なくとも1つのパネルとの間に配置されて
いる、
風力タービンブレード(1)において、
熱可塑性ポリマー複合材料が、繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含むこと、ならびに、熱可塑性ポリマー複合材料の少なくとも1つのパネル(3)が、溶接タイプ界面(7)によって補剛部材(6)に接続されることを特徴と
し、
かつ、風力タービンブレード(1)が、50重量%以下の熱硬化性ポリマーを含むこと、さらに10重量%以下の熱硬化性接着剤を含むことを特徴とする、
風力タービンブレード(1)。
【請求項2】
繊維強化材が、少なくとも1000のアスペクト比を有する繊維に基づくことを特徴とする、請求項1に記載の風力タービンブレード。
【請求項3】
少なくとも1つの補剛部材(6)が、ウェブ(61)およびウェブ(61)によって互いに接続された2つのフランジ(62)を備える「I」ビームの形態を有することを特徴とする、請求項1
または2に記載の風力タービンブレード。
【請求項4】
フランジ(62)が、好ましくは予備含浸される熱可塑性ポリマー複合材料で作られるストリップ(63)の積み重ね体によって、または、低圧インジェクションまたはインフュージョンによって成形される複合材料部品によって形成されることを特徴とする、請求項
3に記載の風力タービンブレード。
【請求項5】
フランジ(62)が、溶接タイプ界面(7)によってウェブ(61)に接続されることを特徴とする、請求項
3または
4に記載の風力タービンブレード。
【請求項6】
フランジ(62)が、エポキシ接着剤か、ポリエステル接着剤か、またはポリウレタン接着剤によってウェブ(61)に接続されることを特徴とする、請求項
3または
4に記載の風力タービンブレード。
【請求項7】
溶接タイプ界面(7)が、0.5mm以上、好ましくは1mm以上の厚さを有することを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の風力タービンブレード。
【請求項8】
前縁が、補剛部材(6)に溶接される単一モノリシック部品から形成されることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の風力タービンブレード。
【請求項9】
外側ケーシングを形成する熱可塑性ポリマー複合材料のパネル(3)が、木材、ハニカム構造、または発泡プラスチックなどの低密度構造(8)を閉囲することを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の風力タービンブレード。
【請求項10】
溶接タイプ界面(7)に位置決めされた少なくとも1つの抵抗性フィラメントを備えることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の風力タービンブレード。
【請求項11】
溶接タイプ界面(7)が、5メートルより大きい、好ましくは10メートルより大きい長さを有することを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載の風力タービンブレード。
【請求項12】
溶接タイプ界面(7)が、風力タービンブレードの長手方向軸(A)に沿って延在することを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載の風力タービンブレード。
【請求項13】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の風力タービンブレード(1)を形成するための、熱可塑性のポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品(2)であって、熱可塑性のポリマー複合材料が、繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含むことを特徴とする、
ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品(2)。
【請求項14】
熱可塑性ポリマー複合材料が、少なくとも1mm厚の(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層で少なくとも部分的に覆われることを特徴とする、請求項
13に記載のポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品(2)。
【請求項15】
熱可塑性ポリマー複合材料で作られた少なくとも2つの風力タービンブレード部品から、請求項1から12のいずれか一項に記載の風力タービンブレード(1)を製造するためのプロセス(200)であって、熱可塑性ポリマー複合材料は、繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含み、
前記プロセスが、
- 熱可塑性ポリマー複合材料で作られた少なくとも2つの風力タービンブレード部品(2)を組み立て界面(71)において隣接してまたはオーバラップして配置する(220)ステップと、
- 組み立て界面(71)において(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを溶融させるために加熱する(230)ステップと、
- 熱可塑性ポリマー複合材料で作られた少なくとも2つの風力タービンブレード部品をひとつに溶接することにより溶接タイプ界面(7)を形成するために、界面において圧力を加える(240)ステップと
を含む、プロセス(200)。
【請求項16】
風力タービンブレード部品の製造事前ステップ(210)であって、
- 液体(メタ)アクリル組成物を繊維強化材に含浸させる(211)サブステップと、
- 前記繊維強化材に含浸する液体(メタ)アクリル組成物を重合させる(212)サブステップと
を含む、製造事前ステップ(210)も含むことを特徴とする、請求項
15に記載
のプロセス。
【請求項17】
熱可塑性ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品(2)が、低圧射出成形、インフュージョン成形、または、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材料
が予備含侵され
たストリップ
の成形によって製造されることを特徴とする、請求項
15または
16に記載
のプロセス。
【請求項18】
熱可塑性ポリマーマトリクスが、超音波溶接、誘導溶接、抵抗ワイヤ溶接、摩擦撹拌溶接、レーザー溶接、赤外放射または紫外放射による加熱から選択される技法によって、好ましくは抵抗ワイヤ溶接によって溶融される(230)ことを特徴とする、請求項
15から
17のいずれか一項に記載
のプロセス。
【請求項19】
液体(メタ)アクリル組成物が、(メタ)アクリルモノマー、プリカーサー(メタ)アクリルポリマー、およびラジカル開始剤を含むことを特徴とする、請求項16に記載のプロセス。
【請求項20】
熱可塑性ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品(2)が、150℃未満、好ましくは100℃未満の温度で製造されることを特徴とする、請求項15から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンの分野に関係し、より詳細には、熱可塑性ポリマー複合材料から製造される風力タービンのブレードに関係する。本発明は、風力タービンブレード、上記風力タービンブレードの部品、および同様に、上記風力タービンブレードを製造するためのプロセスに関係する。
【背景技術】
【0002】
現在、風力タービンブレードは、ポリマー複合材料で主に構成され、ポリマー複合材料において、繊維強化材がポリマーマトリクス内に組み込まれる。実際には、風力タービンブレードについて要求される特性は、特に、軽量、比較的高い構造的強度、および引っ張り強度である。これは、風力タービンブレードが、風力タービンの運転中に、特に、強い突風の存在下で、高い機械的荷重に耐えなければならないことに主に関連する。繊維強化材の繊維は、通常、ガラス、炭素、セラミックから構成されるが、同様に天然繊維から構成される場合がある。ポリマーマトリクスは、ポリマーを主に含み、繊維が所定の場所で保持されることを保証し、繊維間で張力を伝達し、外部の機械的および化学的影響に対して繊維を保護する。ポリマーマトリクスは、概して熱硬化性であり、熱硬化性ポリマー複合材料で作られる部品は、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ接着剤か、ポリエステル接着剤か、またはポリウレタン接着剤)を使用して互いに連結される。
【0003】
しかしながら、熱硬化性複合材料は、これらの材料を再生利用するときの高いコスト、または、再生利用が可能でない場合の大量の廃棄物の蓄積などの、幾つかの欠点を有する。熱硬化性材料を組み込む風力タービンブレードは、例えば、出願WO2010025830において提案されており;それでも、提案された熱可塑性樹脂は、風力タービンブレードの種々の部品の間の接合部を形成するために本質的に提案され、湿気または高融点に対する比較的高い感度を有する。出願US2017/0058864は、熱硬化性および/または熱可塑性材料から構築される調整可能風力タービンブレードを記載する。熱硬化される熱可塑性界面は溶接される;それでも、ブレードは、熱硬化性材料の大きい部分を含む。その結果、熱可塑性樹脂を主に含み、したがって、風力エネルギー部門の要件を満たす機械的および化学的特性を提供しながら、再生利用可能である風力タービンブレードについての必要性が依然として存在する。
【0004】
例えば、低圧射出成形またはインフュージョン成形によって、ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレードを構築するとき、熱硬化性樹脂の使用は、概して、長いサイクルタイムにつながる。さらに、ポリマー複合材料で作られるこれらの部品は、その後、設置サイトに配送される前に工業プロセス中に組み立てられる。部品の製造中と組み立て中の両方において、熱硬化性ポリマーマトリクスを使用するときに観察される長いサイクルタイムを考慮すると、サイクルタイムを低減し、したがって、風力タービンブレードの生産時間を低減することが可能であることになるポリマーを特定することが必要である。
【0005】
さらに、風力タービンブレードは、概して、約40メートル以上、時として約90または100メートルの長さを有する。そのため、ブレードの配送は、異常な荷重輸送を必要とする。風力タービンブレードの管理および設置を容易にするために、設置サイトにおいて組み立ての少なくとも一部を容易にかつ迅速に実施することができることが望ましい。
【0006】
したがって、本発明は、従来技術の欠点を克服することを目標とする。特に、本発明は、好ましくは、大部分は再生利用可能であり、風力タービンブレードが運転中に受ける機械的および化学的応力に耐性がありながら、従来の風力タービンブレードより迅速に製造され得る、熱可塑性ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレードを提供することを目標とする。
【0007】
本発明の別の目標は、風力タービンブレードおよび風力タービンブレードの部品を既存のプロセスに比べて迅速に製造し、設置サイトにおける迅速かつ容易な組み立て、修理、または調整を可能にするためのプロセスを提供することである。
【発明の概要】
【0008】
そのため、本発明は、風力タービンブレードにおいて、熱可塑性ポリマー複合材料のパネルから少なくとも部分的に形成され、風力タービンブレードの前縁および後縁を画定する外側ケーシング、および、ポリマー複合材料で作られ、上記風力タービンブレードの内部で風力タービンブレードの長手方向軸に沿って延在する少なくとも1つの補剛部材であって、前縁を画定する少なくとも1つのパネルと後縁を画定する少なくとも1つのパネルとの間に配置される、少なくとも1つの補剛部材を備える、風力タービンブレードであって、熱可塑性ポリマー複合材料が、繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含むこと、および、熱可塑性ポリマー複合材料の少なくとも1つのパネルが、溶接タイプ界面によって補剛部材に接続されることを主に特徴とする、風力タービンブレードに関係する。
【0009】
実際には、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーを含むポリマー複合材料の使用は、特にこれらの分野で従来から使用される熱硬化性ポリマーと比較して、サイクルタイムを低減することを可能にする。さらに、本発明の文脈内で使用される(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、最も一般的に使用される工業プロセスで使用される場合があり、したがって、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂と違って、風力タービンブレードの構築において現在使用されている工業機器の修正を必要としない。
【0010】
さらに、これらの風力タービンブレードは、この分野で通常使用される熱硬化性ポリマー複合材料で作られるパネルを備えるブレードと違って、容易に再生利用可能である。最後に、溶接タイプ界面の存在は、界面の温度上昇によって、特定の設置を必要とすることなく設置サイトにおいて、組み立て体を生産する、パネル位置決め調整を実施する、代わりに、修理を実施する可能性を与える。
【0011】
プロセスの他のオプションの特徴によれば:
- 繊維強化材は、少なくとも1000のアスペクト比を有する繊維に基づく。そのようなアスペクト比は、改善された機械的特性を有する風力タービンブレードを得ることを可能にする。
- 風力タービンブレードは、50重量%以下、好ましくは40重量以下、より好ましくは30重量%以下、さらにより好ましくは20重量%以下、より有利には15重量%以下、さらにより有利には10重量%以下の、エポキシ樹脂などの熱硬化性ポリマーを含む。そのため、本発明による風力タービンブレードは、生産時間の点で非常に大幅な利得および再生利用される容量増加を有する。同様に、風力タービンブレードは、10重量%以下、好ましくは8重量%以下、有利には7重量%以下、より有利には6重量%以下、さらにより有利には5重量%以下の、熱硬化性接着剤を含む。
- (メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、「シロップ(syrup)」と一般に呼ばれる熱可塑性ポリマー樹脂から選択され、熱可塑性ポリマー樹脂は、強化材料、例えば、繊維強化材に含浸させるために使用され、また、良好な変換率を伴って急速に(例えば、30秒から3時間の間で)重合して、生産性を上げる。重合すると、熱可塑性ポリマーシロップは、複合材料のマトリクスを構成する。(メタ)アクリルモノマーおよびプリカーサー(メタ)アクリルポリマーを含む液体組成物またはシロップは、WO2013/056845およびWO2014/013028に記載される。これらの(メタ)アクリルポリマーは、風力タービンブレードを製造するための既存の工業プロセスに特に適し、風力タービンブレードに十分な機械的および化学的特性を与える。特に、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA:poly(methyl methacrylate))か、メチルメタクリレート(MMA:methyl methacrylate)のコポリマーか、またはその混合物から選択される。
- 繊維強化材は、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維またはポリマーベース繊維、あるいは植物繊維から、単独でまたは混合物で選択される繊維を含む。
- 熱可塑性ポリマーマトリクスは、1つまたは複数の添加剤または充填材を同様に含む。全てのオプションの添加剤および充填材は、含侵および/または重合の前に液体(メタ)アクリルシロップに添加される。熱可塑性ポリマー複合材料は、他の添加剤および他の充填材を同様に含む。添加剤として、衝撃改質剤またはブロックコポリマー、熱安定剤、UV安定剤、潤滑剤、およびその混合物などの有機添加剤について言及される場合がある。衝撃改質剤は、エラストマーコアおよび少なくとも1つの熱可塑性シェルを有する微細粒子の形態であり、粒子のサイズは、概して、1μm未満、有利には50~300nmである。衝撃強度改質剤は、乳化重合によって調製される。熱可塑性ポリマーマトリクス内の衝撃改質剤の割合は、0~50重量%、好ましくは0~25重量%、有利には0~20重量%である。充填材として、カーボンナノチューブまたは鉱物ナノ充填材(TiO2、シリカ)を含む鉱物充填材について言及される場合がある。
- (メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、50℃と160℃との間、好ましくは70℃と140℃との間、さらにより好ましくは90℃と120℃との間のガラス遷移温度(Tg)を有する。さらに、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーまたは(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの一部分は、20g/10分未満のISO 1133(230℃/3.8kg)によるメルトフローインデックス(MFI:melt flow index)を有する。好ましくは、メルトフローインデックスは、18g/10分未満、より好ましくは16g/10分未満、有利には13g/10分未満である。これは、風力タービンブレードの生産を容易にすることを可能にし、設置サイトにおける容易な組み立て、修理、または調整のための道を同様に開く。
- 補剛部材は、ウェブおよびウェブによって互いに接続された2つのフランジを備える「I」ビームの形態を有する。
- フランジは、好ましくはプレ含浸される熱可塑性ポリマー複合材料で作られるストリップの積み重ね体によって、または、低圧インジェクションまたはインフュージョンによって成形される複合材料部品によって好ましくは形成される。
- フランジは、溶接タイプ界面によってウェブに接続される。
- フランジは、エポキシ接着剤によってウェブに接続される。
- 前縁は、補剛部材に溶接される単一モノリシック部品から形成される。実際には、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーおよび溶接タイプ界面の使用は、新しい風力タービンブレード設計、および、特に、組み立てを容易にし、前縁に関する摩耗抵抗を改善するために補剛部材に溶接される単一モノリシック部品から形成される前縁を有するブレードを想定することを可能にする。
- 外側ケーシングを形成する熱可塑性ポリマー複合材料のパネルは、木材(例えば、バルサ)、ハニカム構造、または発泡プラスチックなどの低密度構造を閉囲する。
- 風力タービンブレードは、溶接タイプ界面に位置決めされる少なくとも1つの抵抗性フィラメントを備える。
- 溶接タイプ界面は、5メートルより大きい、好ましくは10メートルより大きい、より好ましくは20メートルより大きい長さを有する。
- 溶接タイプ界面は、風力タービンブレードの長手方向軸に沿って延在する。
【0012】
本発明は、本発明による風力タービンブレードを形成するための、熱可塑性ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品であって、熱可塑性ポリマー複合材料が、繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含むことを主に特徴とする、風力タービンブレードに同様に関係する。
【0013】
有利には、この風力タービンブレード部品の熱可塑性ポリマー複合材料は、少なくとも0.5mm厚、好ましくは少なくとも1mm厚、より好ましくは少なくとも2mm厚、さらにより好ましくは少なくとも3mm厚の(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層で少なくとも部分的に覆われる。熱可塑性ポリマー複合材料は、例えば、溶接されることを意図される表面上で(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーのこの層で覆われる場合がある。これは、特に、風力タービンブレードの脆化につながる可能性がある溶接タイプ界面における低濃度の樹脂を有するゾーンの出現を回避することを特に可能にする。
【0014】
本発明は、熱可塑性ポリマー複合材料で作られた少なくとも2つの風力タービンブレード部品から本発明による風力タービンブレードを製造するためのプロセスに関係し、熱可塑性ポリマー複合材料は、繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含み、上記プロセスは、
- 熱可塑性ポリマー複合材料で作られた少なくとも2つの風力タービンブレード部品を組み立て界面において隣接してまたはオーバラップして配置するステップと、
- 組み立て界面において(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを溶融させるために加熱するステップと、
- 熱可塑性ポリマー複合材料で作られた少なくとも2つの風力タービンブレード部品をひとつに溶接することにより溶接タイプ界面を形成するために、界面において圧力を加えるステップと
を含む
【0015】
プロセスの他のオプションの特徴によれば:
- プロセスは、風力タービンブレード部品の製造事前ステップを同様に含み、事前ステップは、
- 液体(メタ)アクリル組成物を繊維強化材に含浸させるサブステップと、
- 上記繊維強化材に含浸する液体(メタ)アクリル組成物を重合させるサブステップと
を含み、
- 熱可塑性ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品は、低圧射出成形、インフュージョン成形、または、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材料をプレ含侵されたストリップを成形するによって製造される。
- 熱可塑性ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品は、150℃未満、好ましくは120℃未満、さらにより好ましくは100℃未満の温度で製造される。実際には、熱可塑性ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品の製造中に使用される液体(メタ)アクリル組成物は、従来の熱可塑性樹脂の従来融点より十分に低い温度で液体である。そのため、これは、非常に大きい寸法の風力タービンブレード部品を、上記部品が高温まで加熱されるプロセスを実装する必要なく、生産することを可能にする。
- (メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスは、超音波溶接、誘導溶接、抵抗ワイヤ溶接、摩擦撹拌溶接、レーザー溶接、赤外放射または紫外放射による加熱から選択される技法によって、好ましくは抵抗ワイヤ溶接によって溶融される。
- 加熱ステップ中に、組み立て界面における温度は160℃から300℃の間である。
【0016】
本発明の他の利点および特徴は、添付図を参照して例証的かつ非制限的な例として与えられる以下の説明を読むと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材料および溶接タイプ界面を備える風力タービンブレードの断面斜視図の簡略化され例証である。
【
図3】(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材料パネルと溶接タイプ界面を備える補剛部材との間の接合ゾーンの拡大の簡略化され例証である。
【
図4】本発明による製造プロセスの好ましい実施形態のフローチャートであり、破線のステップはオプションである。
【
図5】風力タービンブレードを構成する異なる部品の分解斜視図を示す簡略化されたダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
説明の残りの部分において、「溶接タイプ界面(weld-type interface)」は、部品間のまたは部品の所定の部分間の溶接される接合部に対応する。溶接タイプ界面は、溶融ゾーン、すなわち、溶接作業中に液体状態になった熱可塑性ポリマーのゾーンを指す。本発明による溶接は、熱可塑性充填材、特に(メタ)アクリル熱可塑性充填材を設ける状態でまたは設けない状態で実施され得る。
【0019】
本発明による「Iビーム(I-beam)」は、IまたはH形態の断面を有する構造に対応する。「I」の水平要素はフランジと呼ばれ、一方、垂直要素はウェブと呼ばれる。本発明によるIビームは、好ましくは熱可塑性ポリマー複合材料から形成される。
【0020】
本発明のために、用語「抵抗性フィラメント(resistive filament)」は、20℃で1×10-2Ωmm2/mより大きい、例えば、20℃で0.1Ωmm2/mより大きい抵抗率を有する材料を含むフィラメントを意味する。抵抗性フィラメントは、例えば、金属または金属合金またはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンに基づく伝導性ポリマーフィルムまたはワイヤなどの炭素に基づく任意の他の有機伝導性要素を含む場合がある。好ましくは、抵抗性フィラメントは、本発明による(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの軟化点または流動点(例えば、ガラス遷移温度)より大きい高融点を有する。抵抗性フィラメントの融点は、好ましくは300℃より大きい、より好ましくは500℃より大きい、例えば750℃より大きい。伝導性ポリマーフィルムまたはワイヤの場合、抵抗性フィラメントは、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの流動点に少なくとも等しい流動点を持たなければならない。
【0021】
本発明のために、表現「ポリマー複合材料(polymer composite)」は、少なくとも2つの不溶性成分を含む多成分材料を示し、少なくとも1つの成分はポリマーであり、他の成分は、例えば、繊維強化材である場合がある。
【0022】
本発明のために、「繊維強化材(fibrous reinforcement)」または「繊維基材(fibrous substrate)」は、複数の繊維、単向性ロービング、または連続フィラメントマット、ストリップ、ウェブ、組み紐、ストランド、または小片の形態である場合がある、織物、フェルト、または不織布を意味する。
【0023】
「マトリクス(matrix)」は、繊維強化材に力を伝達することが可能であるバインダーとして役立つ材料を意味する。「ポリマーマトリクス(polymer matrix)」は、ポリマーを含むが、他の化合物または材料を同様に含む場合がある。そのため、「メタアクリルポリマーマトリクス((meth)acrylic polymer matrix)」は、アクリルとメタアクリルの両方の、任意のタイプの化合物、ポリマー、オリゴマー、コポリマー、またはブロックコポリマーを指す。しかしながら、最大10重量%、好ましくは5重量%未満の他の非アクリルモノマーを含む場合、本発明の範囲から逸脱しないことになる。他の非アクリルモノマーは、例えば、群:ブタジエン、イソプレン、スチレン、α-メチルスチレンまたはtert-ブチルスチレンなどの置換スチレン、シクロシロキサン、ビニルナフタリン、およびビニルピリジンから選択される。
【0024】
「ポリマー(polymer)」はコポリマーまたはホモポリマーを意味する。「コポリマー(copolymer)」は、幾つかの異なるモノマー単位を共にグループ化するポリマーを意味し、「ホモポリマー(homopolymer)」は、同一のモノマー単位を共にグループ化するポリマーを意味する。「ブロックコポリマー(block copolymer)」は、別個のポリマー実体のそれぞれの1つまたは複数の途切れのないシーケンスを含むポリマーを意味し、ポリマーシーケンスは、互いに化学的に異なり、共有結合によって互いに接合される。これらのポリマーシーケンスは、ポリマーブロックとして同様に知られる。
【0025】
本発明のために、用語「ラジカル開始剤(radical initiator)」は、1つまたは複数のモノマーの重合を開始/始動させ得る化合物を示す。
【0026】
本発明のために、用語「重合(polymerization)」は、モノマーまたはモノマーの混合物のポリマーへの変換プロセスを示す。
【0027】
本発明のために、用語「モノマー(monomer)」は、重合を受ける場合がある分子を示す。
【0028】
本発明のために、「熱可塑性ポリマー(thermoplastic polymer)」は、ポリマーであって、概して、室温で固体であり、結晶質、半結晶質、または非晶質である場合があり、温度の上昇中に、特に、そのガラス遷移温度(Tg)を通過した後に軟化し、高温で流れ、その「融(melting)」点(Tm)(半結晶であるとき)を通過すると明らかな溶融を示す場合があり、温度の減少中に、その融点未満でかつそのガラス遷移温度未満で再び固体になる、ポリマーを意味する。これは、軟化点を超えて加熱されると熱成形され得る、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満の重量パーセンテージの、(メタ)アクリル「シロップ」の調製時の多官能性モノマーまたはオリゴマーの存在によってわずかに架橋される熱可塑性ポリマーに同様に当てはまる。
【0029】
本発明のために、「熱硬化性ポリマー(thermosetting polymer)」は、重合によって不溶性ポリマーネットワークに非可逆的に変換)されるプラスチック材料を意味する。
【0030】
「(メタ)アクリルモノマー((meth)acrylic monomer)」は、任意のタイプのアクリルおよびメタアクリルモノマーを意味する。
【0031】
「(メタ)アクリルポリマー((meth)acrylic polymer)」は、(メタ)アクリルポリマーの少なくとも50重量%以上を示す(メタ)アクリルモノマーを本質的に含むポリマーを意味する。
【0032】
本発明のために、用語「PMMA」は、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマーおよびコポリマーを示し、PMMAにおけるMMAの重量比は、好ましくは、MMAコポリマーについて少なくとも70重量%である。
【0033】
説明の残りの部分において、同じ参照が、同じ要素を示すために使用される。
【0034】
第1の態様によれば、本発明は、風力タービンブレードに関係し、その構造は、繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含む熱可塑性ポリマー複合材料を含む。
【0035】
繊維強化材を含浸させるマトリクスの一部を形成する(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、ポリアクリレートなどのアクリルのファミリーのポリマーおよびコポリマーから選択される場合がある。(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、より詳細には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはその誘導体あるいはメチルメタクリレート(MMA)のコポリマーまたはその混合物から選択される。
【0036】
好ましくは、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを形成する(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーは、50℃から160℃の間、好ましくは70℃から140℃の間、さらにより好ましくは90℃から120℃の間のガラス遷移温度(Tg)を有する。この態様は、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーにポリアミンなどの他の熱可塑性ポリマーに勝る利点を与える。実際には、ポリアミンは、概して、非常に高い、すなわち200℃以上の融点を有し、それは、本発明のプロセスによる場合のようにオンサイト組み立てを容易にしない。ガラス遷移温度または融点は、当業者によく知られている方法によって測定され得る。好ましくは、これらの温度は、Tgの場合、規格ISO 11357-2/2013およびTmの場合、規格ISO 11357-3/2011において指定される条件に従って示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry)によって測定される。さらに、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーまたは(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの一部分は、20g/10分未満のISO 1133(230℃/3.8kg)によるメルトフローインデックス(MFI)を有する。好ましくは、メルトフローインデックスは、18g/10分未満、より好ましくは16g/10分未満、有利には13g/10分未満である。
【0037】
さらに、好ましくは、本発明による風力タービンブレードは、50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、有利には20重量%以下、より有利には15重量%以下、さらにより有利には10重量%以下の、エポキシ樹脂か、ポリエステル樹脂か、またはポリウレタン樹脂などの熱硬化性ポリマーを含む。熱硬化性ポリマーは、これまで概して、風力タービンブレードまたは風力タービンブレード部品の形成のために使用されるポリマー複合材料の製造において使用されてきた。同様に好ましくは、本発明による風力タービンブレードは、10重量%以下、より好ましくは9重量%以下、さらにより好ましくは8重量%以下、有利には7重量%以下、より有利には6重量%以下、さらにより有利には5重量%以下の、接着剤、好ましくは熱硬化性接着剤を含む。実際には、異なる風力タービンブレード部品の接着剤接合は、概して、エポキシ樹脂タイプの熱硬化性構造接着剤によって実施される。
【0038】
本発明の文脈において、繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含む熱可塑性ポリマー複合材料パネルの使用は、風力タービンブレード内で使用される熱硬化性ポリマーの量を大幅に低減することを可能にし、熱硬化性ポリマー複合材料のパネルについて考えられてこなかった、大多数のブレードの再生利用ならびに容易にされるオンサイト取り付けまたは修理などの可能性を開く。
【0039】
以下で詳述されるように、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスは、(メタ)アクリルモノマー、または、(メタ)アクリルモノマー、プリカーサー(メタ)アクリルポリマー、および少なくとも1つのラジカル開始剤の混合物を含む液体(メタ)アクリル組成物の重合から得られ得る。
【0040】
(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスは、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーから形成されるが、1つまたは複数の添加剤および/または1つまたは複数の充填材をさらに含む場合がある。
【0041】
炭素質充填材は、特に、活性炭、天然無煙炭、合成無煙炭、カーボンブラック、天然黒鉛、合成黒鉛、炭素質ナノ充填材、またはその混合物である場合がある。炭素質充填材は、好ましくは、炭素質ナノ充填材、特に、グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブおよび/またはカーボンナノフィブリルまたはその混合物から選択される。これらの充填材は、電気および熱を伝導することを可能にし、その結果、加熱されるとポリマーマトリクスの潤滑を改善することを可能にする。これらの充填材は、その後、サイクルタイムの低減の増加を可能にする、または、設置サイトにおける組み立て、調整、または修理を容易にする場合がある。
【0042】
鉱物充填材は、特に、金属水酸化物であって、より詳細にはアルミナ3水和物(Al(OH)3)または水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)または酸化マグネシウム(MgO)の形態である、金属水酸化物、水酸化カルシウム、ならびに、炭酸カルシウム、二酸化チタン、またはシリカなどの鉱物充填材あるいはナノ二酸化チタンまたはナノシリカなどの鉱物ナノ充填材を含む。
【0043】
添加剤として、衝撃強度改質剤またはブロックコポリマー、熱安定剤、UV安定剤、潤滑剤、粘度改質剤、pH改質剤(水酸化ナトリウム)、粒子サイズ改質剤(硫酸ナトリウム)、殺生物剤、およびその混合物などの有機添加剤について言及される場合がある。これらの添加剤は、特に、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスの流動学的特性、化学的特性、および接着特性を改善することを可能にする。
【0044】
(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスの総重量に対する添加剤および充填材の全ての重量パーセンテージは、好ましくは30%未満、好ましくは10%未満である。
【0045】
繊維強化材は、概して、複数の繊維、単向性ロービングまたは連続フィラメントマット、ストリップ、ウェブ、組み紐、ストランド、または小片の形態である場合がある、織物、フェルト、または不織布を指す。
【0046】
繊維強化材は、1つまたは複数の繊維、概して幾つかの繊維の組み立て体を含み、上記組み立て体は、異なる形態および寸法;1次元、2次元、または3次元を有することができる。1次元形態は、直線状の長繊維に対応する。繊維は不連続または連続である場合がある。繊維は、連続フィラメントの形態で、ランダムにまたは互いに平行に配置される場合がある。2次元形態は、不織強化材または繊維マットあるいは繊維の織ロービングまたは繊維束に対応し、これらは組み紐で編まれる場合がある。2次元形態が、或る厚さ、その結果、原理的に3次元を有する場合でも、繊維強化材は、本発明に従って2次元であると考えられる。3次元の形態は、例えば、不織布繊維強化材または繊維マットあるいは積み重ねられるかまたは折り畳まれる繊維の束、あるいはその混合物;3次元における2次元形態の組み立て体に対応する。
【0047】
繊維は、不連続または連続である場合がある。繊維が連続である場合、その組み立て体は織物を形成する。好ましくは、繊維強化材は連続繊維に基づく。繊維は、そのアスペクト比によって規定され、アスペクト比は、繊維の長さと径との比である。本発明で使用される繊維は、連続繊維から得られる長繊維または連続繊維である。繊維は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、より好ましくは少なくとも2000、有利には少なくとも3000、より有利には少なくとも5000、さらにより有利には少なくとも6000、さらにより有利には少なくとも7500、最も有利には少なくとも10000のアスペクト比を有する。連続繊維は少なくとも1000のアスペクト比を有する。繊維の寸法は、当業者によく知られている方法によって測定され得る。好ましくは、これらの寸法は、規格ISO 137に従って顕微鏡検査によって測定される。
【0048】
繊維強化材を構成する繊維の起源は、天然または合成である場合がある。言及される場合がある天然材料は、植物繊維、木材繊維、動物繊維、または鉱物繊維を含む。植物繊維は、例えば、サイザル、ジュート、麻、亜麻、綿、ココナツ繊維およびバナナ繊維である。動物繊維は、例えば羊毛または毛皮である。鉱物繊維は、ガラス繊維、特にタイプE、R、またはS2、バサルト繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、またはシリカ繊維から選択される場合がある。
【0049】
言及される場合がある合成材料は、熱硬化性ポリマー繊維、熱可塑性ポリマー、またはその混合物から選択されるポリマー繊維を含む。ポリマー繊維は、ポリアミド(脂肪族または芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、およびビニルエステルから成る場合がある。
【0050】
好ましくは、本発明の繊維強化材は、植物繊維、木材繊維、動物繊維、鉱物繊維、合成ポリマー繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、および炭素繊維を、単独でまたは混合物で含む。より好ましくは、本発明の繊維強化材は、炭素繊維またはガラス繊維を含む。より好ましくは、本発明の繊維強化材は、本質的に、炭素繊維またはガラス繊維からなる。
【0051】
繊維強化材の繊維は、例えば、0.005μmから100μmの間、好ましくは1μmから50μmの間、より好ましくは5μmから30μmの間、有利には10μmから25μmの間の径を有する。
【0052】
好ましくは、本発明の繊維強化材の繊維は、1次元形態の場合、連続繊維から、または、繊維強化材の2次元および3次元形態の場合、長繊維または連続繊維から選択される。
【0053】
図1は、マスト101、ナセル102、および実質的に水平のローターシャフトを有するローターを備える水平軸を有する従来の風力タービン100を示す。ローターは、ハブ103およびハブ103から半径方向に延在する3つの風力タービンブレード1を備え、風力タービンブレード1のそれぞれは、ハブ103に最も近い風力タービンブレードの根元104およびハブ103から最も遠い風力タービンブレードの先端105を有する。ローターは、風力エネルギーによって駆動される;ローターは、収集されるエネルギーを使用することになる機械システム(ポンプ、発電機など)に直接的にまたは間接的に接続される。
【0054】
図1に見られ得るように、風力タービンブレード1は、概して、取り付けゾーンに対応する、風力タービンブレードの先端105と根元104との間で変化する断面形態を有する。風力タービンブレード1は、外側ケーシングであって、下側表面11および上側表面12ならびに同様に前縁4および後縁5を画定する、外側ケーシングを備える。風力タービンブレード1の外側表面を少なくとも部分的に画定するこの外側ケーシングは、熱可塑性ポリマー複合材料のパネル3から少なくとも部分的に形成される。外側ケーシングは、例えばより詳細には、補剛部材6に連結される熱可塑性ポリマー複合材料のパネル3によって形成される。代替的に、補剛部材6は、熱可塑性ポリマー複合材料のパネル3によって完全に囲まれ、したがって、外側ケーシングの形成に寄与しない場合がある。
【0055】
熱可塑性ポリマー複合材料のパネル3は、ストリップ、シート、プレート、またはよりおおまかに言えば、硬質ポリマー複合材料部品などの種々の形態をとる場合がある。
【0056】
熱可塑性ポリマー複合材料のパネル3は、外側ケーシングを補強し、その機械的および化学的特性を改善することを目標とする後続の処理をさらに受ける場合がある。処理は、例えば、前縁4に沿ってなどで、風力タービンブレード1の外側表面の或るエリア上に特に位置する場合がある。この場合、処理は、前縁4を覆うプラスチックまたは金属の保護層の堆積を含む場合がある。
【0057】
図2に提示されるように、風力タービンブレード1は、上記風力タービンブレード1の内部に、熱可塑性ポリマー複合材料で作られた少なくとも1つの長手方向補剛部材6であって、風力タービンブレードの長手方向軸Aに沿って延在する、少なくとも1つの長手方向補剛部材6を同様に備える。補剛部材6は、前縁4を画定する少なくとも1つのパネルと後縁5を画定する少なくとも1つのパネルとの間に配置される。
【0058】
図2に提示されるように、本発明による風力タービンブレードは、補剛部材6に溶接された単一モノリシック部品から形成される前縁を有する場合がある。実際には、本発明は、繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含む熱可塑性ポリマー複合材料の使用に少なくとも部分的に基づいて、補剛部材6に溶接された単一モノリシック部品から形成される前縁を有する
図2に提示される形態に関してと、以下で詳述されることになる組み立て方法に関しての両方で、新しい風力タービンブレード設計を生み出すことを可能にする。
【0059】
パネル要素3および補剛部材は、風力タービンブレードの外側ケーシングの少なくとも一部分を共に形成するために接続される。
【0060】
補剛部材6は、熱可塑性ポリマー複合材料だけのパネルと比較して増加した安定性および局所的剛性を与える。補剛部材6は、上記風力タービンブレード1の内部で風力タービンブレードの長手方向軸Aに沿って延在して、風力タービンブレードの構造を安定化させる。好ましくは、補剛部材6は熱可塑性ポリマー複合材料を含み、熱可塑性ポリマー複合材料は繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含む。
【0061】
図2に提示されるように、補剛部材6は、ウェブ61およびウェブ61によって互いに接続された2つのフランジ62を備える「I」ビームの形態を有する。ウェブは、低密度構造を閉囲する熱可塑性ポリマー複合材料を含む組み立て体から形成される場合がある。この配置構成は、低密度構造が、熱可塑性ポリマー複合材料の1つまたは複数のパネルによって囲まれるサンドイッチタイプ構造を形成する。代替的に、補剛部材6は、四辺形形状(好ましくは、正方形または長方形)を有するセクションを有するチューブの形態をとり、したがって、2つのウェブおよび2つのフランジを備える補剛部材に対応する。
【0062】
図3に提示されるように、フランジ62は、熱可塑性ポリマー複合材料で作られるストリップ63の積み重ね体によって形成される場合があり、熱可塑性ポリマー複合材料は繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含む。好ましくは、フランジ62は、溶接タイプ界面7によってウェブ61に接続される。代替的に、フランジ62は、エポキシ接着剤か、ポリエステル接着剤か、またはポリウレタン接着剤によってウェブ61に接続される場合がある。
【0063】
図3は、熱可塑性ポリマー複合材料のパネルを補剛部材6に接続する溶接タイプ界面7の拡大図を示す。
【0064】
溶接タイプ界面7は、0.5mm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上の厚さを有する。
【0065】
溶接タイプ界面7の厚さは、例えば、上記溶接タイプ界面7の垂直セクションから、従来の方法によって測定される場合がある。
【0066】
溶接タイプ界面7は、熱可塑性ポリマー複合材料のパネルを補剛部材6に接続することを可能にすると、風力タービンブレードの長手方向軸Aに沿って延在する。
図3は、溶接タイプ界面7の断面図を示すだけであるが、溶接タイプ界面7は、好ましくは、補剛部材6の全長にわたって延在する。そのため、溶接タイプ界面は、5メートルより大きい、好ましくは10メートルより大きい、さらにより好ましくは20メートルより大きい長さを有する場合がある。
【0067】
図3による描写において、熱可塑性ポリマー複合材料の2つのパネル3の間の低密度構造8の存在を識別することが同様に可能である。実際には、好ましくは、外側ケーシングを少なくとも部分的に形成する熱可塑性ポリマー複合材料のパネル3は低密度構造8を閉囲する。この配置構成は、低密度構造8が、熱可塑性ポリマー複合材料の1つまたは複数のパネル3によって囲まれるサンドイッチタイプ構造を形成する。低密度構造は、概して、200kg/m
3未満、好ましくは150kg/m
3未満、さらにより好ましくは75kg/m
3未満の密度を有する。低密度構造は、例えば、木材(バルサなど)、ハニカム構造、あるいは発泡またはフォームドプラスチック(発泡ポリスチレンまたはPET(:polyethylene terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)フォームまたはPVC(ポリ塩化ビニル)フォーム)から選択される。
【0068】
別の態様によれば、本発明は、本発明による風力タービンブレード1を形成するための、熱可塑性ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品2に関係し、熱可塑性ポリマー複合材料は繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含む。
【0069】
好ましくは、風力タービンブレード部品2の熱可塑性ポリマー複合材料は、例えば、溶接されることを意図される表面上で、少なくとも1mm厚、好ましくは少なくとも2mm厚、より好ましくは少なくとも3mm厚の(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層で少なくとも部分的に覆われる。熱可塑性ポリマー複合材料は、より詳細には、将来の溶接タイプ界面を形成することを意図される組み立て界面ゾーンにおいて(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーのこの層で覆われる。これは、特に、低濃度の熱可塑性ポリマーを有するゾーンの出現を回避することを可能にする。代替的に、風力タービンブレード部品2は、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層で覆われる少なくとも1つの面を有する場合がある。
【0070】
別の態様によれば、また、
図5に提示されるように、本発明は、熱可塑性ポリマー複合材料で作られた少なくとも2つの風力タービンブレード部品から本発明による風力タービンブレード1を製造するためのプロセスに関係し、熱可塑性ポリマー複合材料は、繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含み、上記プロセスは、
- 熱可塑性ポリマー複合材料で作られた少なくとも2つの風力タービンブレード部品を組み立て界面(71)において隣接してまたはオーバラップして配置する(220)ステップと、
- 組み立て界面71において(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを溶融させるために加熱する230ステップと、
- 熱可塑性ポリマー複合材料で作られた少なくとも2つの風力タービンブレード部品をひとつに溶接することにより溶接タイプ界面7を形成するために、界面において圧力を加える240ステップと
を含む。
【0071】
(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスは、超音波溶接、誘導溶接、抵抗ワイヤ溶接、摩擦撹拌溶接、レーザー溶接、赤外放射または紫外放射による加熱から選択される技法によって溶融される。(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスは、好ましくは抵抗ワイヤ溶接によって溶融される。本発明による溶接は、熱可塑性充填材を設ける状態でまたは設けない状態で実施され得る。
【0072】
好ましくは、加熱ステップ230中に、組み立て界面71における温度は160℃から300℃の間である。この温度は、従来通り赤外線温度計によって測定され得る。
【0073】
さらに、本発明による風力タービンブレードを製造するためのプロセス200は、熱可塑性ポリマー複合材料で作られた風力タービンブレード部品の製造事前ステップ210を同様に含む場合があり、熱可塑性ポリマー複合材料は、繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含む。
【0074】
風力タービンブレード部品を製造するステップ210は、
- 液体(メタ)アクリル組成物を繊維強化材に含浸させる211サブステップと、
- 上記繊維強化材に含浸する液体(メタ)アクリル組成物を重合させる212サブステップと
を含む。
【0075】
本発明の利点のうちの1つの利点は、熱可塑性ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品2が、150℃未満、好ましくは140℃未満、さらにより好ましくは125℃未満、有利には120℃未満、より有利には110℃未満、さらにより有利には100℃未満の温度で製造され得ることである。例えば、液体(メタ)アクリル組成物を繊維強化材に含浸させるステップは、150℃未満、好ましくは120℃未満、さらにより好ましくは100℃未満または80℃未満の温度で実施される。実際には、熱可塑性ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品2を製造するために使用される液体(メタ)アクリル組成物は、従来の熱可塑性樹脂の従来の融点より十分に低い温度で液体である。そのため、これは、非常に大きい寸法である風力タービンブレード部品を、上記部品が高温まで加熱されるプロセスを実装する必要なく、生産することを可能にする。そのため、これらの部品を製造するために使用される場合があるプロセスが、従来の熱可塑性樹脂の場合にそうであったように、高温で加熱するステップを必要としないことが理解されるべきである。
【0076】
風力タービンブレード部品2を製造するステップ210は、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーの層を堆積するサブステップ213を同様に含む場合がある。この堆積は、好ましくは、将来の溶接タイプ界面を形成することを意図される組み立て界面ゾーンにおいて行われる場合がある。代替的に、堆積は、風力タービンブレード部品2全体にわたって行われる。
【0077】
風力タービンブレード部品を製造するステップ210に関して、これらの部品を製造するために異なるプロセスが使用され得る。真空支援樹脂インフュージョン(VARI:vacuum-assisted resin infusion)、引き抜き成形(pultrusion)、真空インフュージョン成形、加圧インフュージョン成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファー成形(RTM:resin transfer molding)および(HP-RTM、C-RTM、I-RTM)などのその変形、強化反応射出成形(R-RIM:reinforced reaction-injection molding)およびその変形、プレス成形、圧縮成形、液体圧縮成形(LCM:liquid compression molding)またはシート成形(SMC:sheet molding)またはバルク成形(BMC:bulk molding)について言及される場合がある。好ましくは、ポリマー複合材料で作られる風力タービンブレード部品は、低圧射出成形、インフュージョン成形によって、または、(メタ)アクリル熱可塑性ポリマー複合材料のストリップ、例えばプレ含浸されたストリップを成形することによって製造される。
【0078】
風力タービンブレード部品を製造するための第1の好ましい製造プロセスは、プロセスであって、そのプロセスに従って、液体(メタ)アクリル組成物が、モールド内への繊維強化材の含浸によって、繊維強化材上に移送される、プロセスである。モールドを必要とするプロセスは、上記に挙げられ、語、成形を含む。
【0079】
風力タービンブレード部品を製造するための第2の好ましい製造プロセスは、プロセスであって、そのプロセスに従って、液体組成物が引き抜き成形(pultrusion)プロセスにおいて使用される、プロセスである。繊維は、本発明による組成物を含む樹脂のバッチを介して誘導される。繊維強化材の形態の繊維は、例えば、単向性ロービングまたは連続フィラメントマットの形態である。樹脂バッチ内への含浸後に、湿式繊維は、重合が起こる加熱ダイを通して引き抜かれる。
【0080】
第3の好ましい製造プロセスは真空支援樹脂インフュージョン(VARI)である。
【0081】
風力タービンブレード部品であるが同様に機械または構造化部品または生成物を製造するためのプロセスは、後成形するステップをさらに含む場合がある。後成形することは、複合材料部品の形状を屈曲させること、および同様に修正することを含む。風力タービンブレード部品を製造するためのプロセスは、転動させるステップをさらに含む場合がある。
【0082】
本発明によるプロセスによって得られる熱可塑性部品は、本発明の液体組成物の重合後に後成形され得る。成形することは、複合材料部品の形状を屈曲させること、および同様に修正することを含む。
【0083】
液体(メタ)アクリル組成物に関して、液体(メタ)アクリル組成物は、WO2013/056845およびWO2014/013028に記載されるように、(メタ)アクリルモノマー、プリカーサー(メタ)アクリルポリマー、およびラジカル開始剤を含む場合がある。
【0084】
さらに、含侵中に、ポリマー複合材料を調製している間、液体(メタ)アクリル組成物または含浸シロップの粘度は、繊維強化材の各繊維を正しく含浸させるために、過度に流動性がないようにまたは過度に粘性がないように調節され適合されなければならない。シロップが、過度に流動性があるまたは過度に粘性があるため、湿潤が部分的であるとき、「未処理(naked)」ゾーン、すなわち、無含浸ゾーン、および、気泡形成の原因であるポリマーの液滴が繊維上に形成されるゾーンがそれぞれ現れる。これらの「未処理」ゾーンおよびこれらの気泡は、最終複合材料における欠陥の出現をもたらし、その欠陥は、とりわけ、最終複合材料の機械的強度の喪失の原因である。さらに、含侵なしで使用する場合、生産性を上げるために、良好な変換率を伴って急速に重合する液体組成物を有することが望ましい。
【0085】
そのため、上記液体(メタ)アクリル組成物は、好ましくは、25℃において10mPa*sから10000mPa*sの間の粘性係数(dynamic viscosity)を有する。液体組成物または(メタ)アクリルシロップの粘性係数は、10mPa*s~10000mPa*s、好ましくは20mPa*s~7000mPa*s、有利には20mPa*s~5000mPa*sの範囲内である。液体(メタ)アクリル組成物または液体(メタ)アクリルシロップの粘度は、レオメータまたは粘度計によって容易に測定され得る。粘性係数は25℃で測定される。液体(メタ)アクリルシロップが、ずり減粘(shear thinning)がないことを意味するニュートン挙動を示す場合、粘性係数は、レオメータのずりまたは粘度計のスピンドルの速度に無関係である。液体組成物が、非ニュートン挙動、すなわち、ずり減粘を伴うことを示す場合、粘性係数は、25℃で1/sのずり速度で測定される。
【0086】
(メタ)アクリルモノマー、モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマー、ヒドロキシアルキルアクリルモノマー、およびヒドロキシアルキルメタクリルモノマー、ならびにその混合物から選択される。
【0087】
好ましくは、(メタ)アクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシアルキルアクリルモノマー、ヒドロキシアルキルメタクリルモノマー、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマー、およびその混合物から選択され、アルキル基は、1~22の直鎖状、分岐状、または環状炭素を含有し;アルキル基は、好ましくは、1から12の直鎖状、分岐状、または環状炭素を含有する。
【0088】
有利には、(メタ)アクリルモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボロニルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびヒドロキシエチルメタクリレート、ならびにその混合物から選択される。
【0089】
好ましい実施形態によれば、少なくとも50重量%および好ましくは少なくとも60重量%の(メタ)アクリルモノマーはメチルメタクリレートである。
【0090】
第1のより好ましい実施形態によれば、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、有利には少なくとも80重量%、さらにより有利には少なくとも90重量%のモノマーは、メチルメタクリレートと、任意選択で少なくとも1つの他のモノマーとの混合物である。
【0091】
プリカーサー(メタ)アクリルポリマーに関して、ポリアルキルメタクリレートまたはポリアルキルアクリレートについて言及される場合がある。好ましい実施形態によれば、プリカーサー(メタ)アクリルポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)である。
【0092】
一実施形態によれば、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマーまたはコポリマーは、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、有利には少なくとも90重量%、より有利には少なくとも95重量%のメチルメタクリレートを含む。
【0093】
別の実施形態によれば、PMMAは、MMAの少なくとも1つのホモポリマーおよび少なくとも1つのコポリマーの混合物、または、異なる平均分子量(average molecular weight)を有するMMAの少なくとも2つのホモポリマーおよび2つのコポリマーの混合物、または、異なるモノマー組成を有するMMAの少なくとも2つのコポリマーの混合物である。
【0094】
メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーは、70~99.7重量%のメチルメタクリレート、および、0.3~30重量%のメチルメタクリレートと共重合できる少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有する少なくとも1つのモノマーを含む。
【0095】
これらのモノマーは、よく知られており、アクリル酸およびメタクリル酸、ならびアルキル(メタ)アクリレートであって、アルキル基が1~12の炭素原子を含有する、アルキル(メタ)アクリレートについて特に言及される場合がある。例として、アクリル酸メチル、および、エチル、ブチル、または2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートについて言及される場合がある。好ましくは、コモノマーは、アルキル基が1~4の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルである。
【0096】
第1の好ましい実施形態によれば、メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーは、80重量%~99.7重量%、有利には90重量%~99.7重量%まで、より有利には90重量%~99.5重量%のメチルメタクリレート、および、0.3重量%~20重量%、有利には0.3重量%~10重量%、より有利には0.5重量%~10重量%のメチルメタクリレートと共重合できる少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有する少なくとも1つのモノマーを含む。好ましくは、コモノマーは、メチルアクリレートまたはエチルアクリレートまたはその混合物から選択される。
【0097】
プリカーサー(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量は、高くあるべきであり、50000g/molより大きい、好ましくは100000g/molより大きいことを意味する。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)によって測定される場合がある。
【0098】
プリカーサー(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマー内でまたは(メタ)アクリルモノマーの混合物内で完全可溶性である。プリカーサー(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマーまたは(メタ)アクリルモノマーの混合物の粘度が増加することを可能にする。得られる液体組成物または溶液は、概して、「シロップ」または「プレポリマー(prepolymer)」と呼ばれる。液体(メタ)アクリルシロップの粘性係数値は、10mPa*sから10000mPa*sの間である。シロップの粘度は、レオメータまたは粘度計によって容易に測定され得る。粘性係数は25℃で測定される。有利には、液体(メタ)アクリルシロップは、意図的に添加されるさらなる溶媒を含有しない。
【0099】
液体(メタ)アクリル組成物または液体(メタ)アクリルシロップ内の(メタ)アクリルモノマーまたは(メタ)アクリルモノマーの混合物は、液体(メタ)アクリル組成物において、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、有利には少なくとも60重量%、より有利には少なくとも65重量%の量で存在する。
【0100】
液体(メタ)アクリル組成物または液体(メタ)アクリルシロップ内のプリカーサー(メタ)アクリルポリマーは、液体(メタ)アクリル組成物において、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、有利には少なくとも18重量%、より有利には少なくとも20重量%の量で存在する。
【0101】
液体(メタ)アクリル組成物または液体(メタ)アクリルシロップ内のプリカーサー(メタ)アクリルポリマーは、液体(メタ)アクリル組成物において、最大で60重量%、好ましくは最大で50重量%、有利には最大で40重量%、より有利には最大で35重量%の量で存在する。
【0102】
液体(メタ)アクリル組成物またはシロップ、シロップ化合物は、以下の重量パーセンテージで組み込まれる:
・ 液体組成物または液体(メタ)アクリルシロップ内の(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーからなる組成物の40重量%から90重量%の間、好ましくは45重量%から85重量%の間の割合で存在する、
・ 液体組成物または液体(メタ)アクリルシロップ内の(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマー(複数可)および(メタ)アクリルポリマーからなる組成物の10重量%から60重量%の間、有利には15重量%から55重量%の間の割合で存在する;好ましくは、液体組成物内の(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーからなる組成物の18重量%から30重量%の間、より好ましくは20重量%から25重量%の間の割合で存在する。
【0103】
ラジカル開始剤に関して、好ましくは、水溶性ラジカル重合開始剤あるいは脂溶性または部分的脂溶性ラジカル重合開始剤について言及される場合がある。
【0104】
水溶性ラジカル重合開始剤は、特に、単独でまたは還元剤の存在下で使用される過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、または過硫酸アンモニウムである。還元剤は、例えば、ナトリウムメタビサルファイトまたはハイドロサルファイト、ナトリウムチサルフェート、ホルムアルデヒドスルホキラートナトリウム、2-ヒドロキシ-2-スルフィン酢酸のジナトリウム塩、亜硫酸ナトリウム、および2-ヒドロキシ-2-スルホ酢酸のジナトリウム塩の混合物、代わりに、ヒドロキシスルフィン酢酸のジナトリウム塩およびヒドロキシスルホ酢酸のジナトリウム塩の混合物などである。
【0105】
脂溶性または部分的脂溶性ラジカル重合開始剤は、特に、ペルオキシドまたはハイドロペルオキシドおよびアゾビスイソブチロニトリルの誘導体である。ペルオキシドまたはハイドロペルオキシドは、それらの活性化温度を下げるために、上述した還元剤と組み合わせて使用される。
【0106】
モノマー混合物の総重量に対する開始剤の重量パーセンテージは、好ましくは0.05重量%から3重量%の間、好ましくは0.1重量%から2重量%の間である。
【0107】
図5に提示されるように、本発明による風力タービンブレード1は、熱可塑性ポリマー複合材料で作られる複数の部品2を備える場合があり、熱可塑性ポリマー複合材料は繊維強化材および(メタ)アクリル熱可塑性ポリマーマトリクスを含み、上記風力タービンブレード部品2は、組み立て界面ゾーン71を有し、部品2を補剛部材6に迅速にかつ容易に溶接することを可能にする。
【0108】
そのため、本発明は、再生利用可能でありかつ機械的および化学的安定性の観点から十分でありながら、従来の風力タービンブレードより迅速に製造され得る風力タービンブレードを提供する。本発明は、設置サイトにおける容易かつ迅速な組み立て、修理、または調整を同様に可能にする。
【0109】
したがって、全てのこれらの利点は、そのような風力タービンの生産および設置コストを低減することに寄与する。