(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】中心決めされたバタフライ弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/226 20060101AFI20221014BHJP
F16K 1/228 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
F16K1/226 B
F16K1/228
(21)【出願番号】P 2019571050
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2018061051
(87)【国際公開番号】W WO2018233915
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-04-08
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505102407
【氏名又は名称】カーエスベー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】KSB S.A.S.
【住所又は居所原語表記】4 allee des Barbanniers, 92230 Gennevilliers, France
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】アーナル,ファビアン
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-024925(JP,A)
【文献】特表2016-503870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
F16K 27/00-27/12
F02D 9/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・環状の内部シートによって、軸方向の通路を形成する内部エリアを画定するボディ(2)と、
・前記ボディ(2)の内側で、前記通路を露呈する開位置から前記通路をカバーする閉位置まで回転する能力を備えて実装された中心決めされたバタフライ(1)と、
・前記シートと、前記閉位置で前記シートに対向する前記バタフライの面と、によって境界決めされるハウジング内に配置されたシール(3)と、
を含み、前記シートおよび前記面が前記軸方向に沿って内側に向けて互いに近接する、弁であって、
前記閉位置において、前記シール(3)は、その全体が、前記ハウジングの内側で全方向に自由に動く、ことを特徴とする弁。
【請求項2】
前記シール(3)を変形せずに動けるようにすることのみによって、前記ハウジングから離れるのを防止する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記手段は、放出防止リング(4)であることを特徴とする請求項2に記載の弁。
【請求項4】
前記手段は、前記ボディ(2)の内側の円周溝であることを特徴とする請求項2に記載の弁。
【請求項5】
前記軸方向のハウジング寸法は、前記軸方向のシール寸法(3)よりも、前記軸方向の前記シール寸法の1~50%の間だけ大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の弁。
【請求項6】
前記軸方向の最大寸法は、前記ハウジングの任意の他の位置よりも前記内側から最も遠い前記ハウジング上の位置にあることを特徴とする請求項5に記載の弁。
【請求項7】
前記軸方向に垂直な径方向のハウジング寸法は、前記径方向のシール寸法(3)よりも、前記径方向の前記シール寸法の1~50%の間だけ大きいことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の弁。
【請求項8】
前記径方向の最大寸法は、前記ハウジングの任意の他の位置よりも前記内側から最も遠い前記ハウジング上の位置にあることを特徴とする請求項7に記載の弁。
【請求項9】
前記シール(3)は、Oリングまたはリップ・シールで
あることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の弁。
【請求項10】
前記閉位置の前記バタフライの両側に2つのシール(3)が備え付けられることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライ弁に関する。バタフライ弁は、回路内の上流/下流の耐漏出性を確保するために使用される。それは、配管の一部を形成するボディと、流れに垂直な軸に関して回転するバタフライと、を含み、この通路を流れが通過するのを可能にするかまたはこの通路を封鎖する。この文書では、流れ方向は、軸方向である。
【背景技術】
【0002】
これらの構成要素は、剛性があるので、通常、中間シールが付属され、それは、より柔軟であり、また、これらの表面が互いに対して適合されるのを可能にして、適切なシールレベルを保証する。上記シールは、1つの構成要素の一部を形成する静的な耐漏出性を確保する部分と、バタフライ弁が閉じられたときに第2の構成要素と接触する動的な耐漏出性を確保する部分と、を含む。静的な部分は、ボディにまたはバタフライに固定されることがある。
【0003】
バタフライ弁は、システムの外部への流体の漏出を防止するための2つの他のシールを、具体的にはシャフト/ボディシールおよびボディ/配管シールを、通常有することもある。
【0004】
中心決めされたバタフライ弁では、シールは、閉位置のバタフライの正中面に設けられる。この位置では、シールは、(構成に応じてボディまたはバタフライの)動的な接触表面(またはシート)に対して接線方向である。
【0005】
必要なシールレベルを確保するために、提供するのが必要なのは、シールおよび動的なシート間の接触圧である。この接触圧は、設計段階における径方向のクランプ寸法によって提供される。これは、剛性のある動的なシートに対して平らにされる柔軟なシールによって反映され、接触圧は、シールの弾性に依存する。
【0006】
このタイプの弁の対称な設計は、それが両方の流れ方向で同等に機能するのを確保する。米国特許第1,977,351号は、例えば、シールがボディ上に実装される中心決めされたバタフライ弁を説明する。
【0007】
中心決めされたバタフライ弁は、接触力が流体によって生成される力に対して単に垂直であるという理由で、自己シールではない。これが意味するのは、この力がシールの初期クランプに完全に起因するということである。これは、次の不都合をもたらす:
・ バタフライ弁が回転するたびにシールが動的なシートを擦るという理由で、バタフライを作動させるのに必要なトルク;
・ この摺動摩擦に起因した接触面の早期摩耗、および、
・ 現在の材料の物理的限界であり、その理由は、これが、特に、バタフライの閉じた運動学のせいで、材料の引き裂きを伴わずにシールが高い圧縮レベルを受けるのを可能にしないからであり;これは、許容動作圧への制限をもたらす。
【0008】
中心決めされたバタフライ弁の別の不都合は、シール面(閉位置のバタフライ弁の正中面)が駆動シャフト(回転の軸)も含むことである。これは、このシャフトを両側でバイパスするためにシールシステムを作成するのを必要とさせ、それは個々の部品をより複雑にさせる。
【0009】
米国特許出願公開第2014/203201号は、弁を説明しており、ボディ102およびバタフライ104間に配置されたシール106が、リテーナ120とボディ102の表面118との間のハウジング内にクランプされる。同様に、米国特許第4,201,239号、米国特許第4,335,748号、英国特許第1566456号、英国特許第1006377号、ドイツ実用新案第8233785号では、シールは、クランプされ、ロックされ、形式適合するやり方またはアンダーカットで実装され、あるいは、硫化によってボディに組み込まれて、ハウジングの内側でそれの全体について移動するのが防止される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る弁は、環状の内部シートによって、軸方向の通路を形成する内部エリアを画定するボディと、ボディの内側で、通路を露呈する開位置から上記通路をカバーする閉位置まで回転する能力を備えて実装された中心決めされたバタフライと、シートと閉位置でシートに対向するバタフライの面とによって境界決めされるハウジング内に配置されたシールと、を含み、シートおよび面が軸方向に沿って内側に向けて互いに近接する。閉位置において、シールは、その全体が、ハウジングの内側で全方向に自由に動く。
【0011】
シールは、こうして弁のボディやバタフライに静的に連結されず、また、同じようにクランプされたまたは形式適合するやり方で実装されず、2つのエリアが、1つがボディに1つがバタフライに、動的接触して動作するので、開位置における、ストレス、制約、またはプレストレスを受けない、最適な位置が想定される。閉位置では、流体によって制約されるだけであり、こうして、固定やクランプによる制約を何ら経験せず、こうして、それ自体が最適な位置に移動し、その結果、疲労が最小限なものとなる。弁の寿命は、結果として遙かに長くなる。
【0012】
手段は、好ましくは、動かすだけでシールがハウジングから抜けるのを防止するために、設けられる。シールは、ハウジングから引き離す目的で変形されねばならない。これらの手段は、放出防止リングであることがあり、あるいは、ボディの内側の円周溝に相当するものであることがある。
【0013】
本発明の1つの実施形態によれば、軸方向のハウジング寸法は、軸方向のシール寸法よりも、軸方向のシール寸法の1~50%の間だけ大きい。この寸法は、ハウジングの任意の他の位置よりも内側から最も遠いハウジング上の位置で、軸方向において、より大きい。
【0014】
軸方向に垂直な径方向のハウジング寸法は、また、径方向のシール寸法よりも、径方向のシール寸法の1~50%の間だけ大きいこともある。この寸法は、ハウジングの任意の他の位置よりも内側から最も遠いハウジング上の位置で、径方向において、より大きい。
【0015】
シートと閉位置でシートに対向するのバタフライの面とは、好ましくは、交差せずに、連続した様式で、肩部やリッジなどの幾何的な不連続性を伴わずに、互いに近接すべきである。
【0016】
それの最も単純な実施形態では、シールは、Oリングである。シールは、また、リップ・シールであり、好ましくは、弾性コアによって付勢されることもある。
【0017】
Oリング・シールは、バタフライの最大外径よりも小さい内径と、ボディのシートの最小内径よりも大きい外径と、を有する。
【0018】
1つの代替のバージョンでは、弁は、閉位置のバタフライの両側に2つのシールが備え付けられる。
【0019】
添付の図面は、単に一例として模写されているが、次のことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るバタフライ弁の部分破断を備えた斜視図である。
【
図2】弁が閉じられているときの上方の部分断面図である。
【
図3】自由状態の付勢時のリップ・シールの状態を示す図である。
【
図4】このシールの、それが加圧されるときを示す図である。
【
図5】円で囲んだ
図2の左手側だけの拡大図である。
【
図6】円で囲んだ
図2の左手側だけの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るバタフライ弁は、駆動シャフト5の作用を受けて回転する能力を備えた中心決めされたバタフライ1を含み、シート(シール領域)とは反対の面は、傾斜したシール面である。弁は、同じく環状の内部シートを画定するボディ2を含む。バタフライ1は、ボディ2上で中心決めされる。最後に弁は、放出防止リング4によってまたはボディ2の溝内で、ボディ2のシートとシートの反対側のバタフライ1の面との間のハウジング内に確実に保持されたボディ2の一方の側のシール3を含むが、ハウジングの内側でそれの全体について自由に動く。シートおよび面は、軸方向に沿って内側に向けて徐々に互いに近接する。駆動シャフト5/ボディ2のシール8は、弁が開位置にあるときの漏出を防止するために設けられる。
【0022】
シール3は、バタフライ1の最大外径よりも小さい内径と、ボディ2のシートの最小内径よりも大きい外径と、を有する。
【0023】
図5に示されたように、シール3は、流体圧がシールに適用されるときにそれが入っている状態にある間断の無い線によって、また、流体圧がシールに適用されていないときに点付けされた線として、示されているが、シール3のハウジングの軸方向寸法aは、内側により近い別の位置よりも図の更に左側のハウジング位置でのシール3の軸方向寸法cの1~50%に等しいシール3の動きの軸方向自由度bを可能にする。
【0024】
図6に示されたように、シール3は、流体圧がシールに適用されていない予定位置に示されているが、シール3のハウジングの径方向寸法dは、シール3の径方向寸法fの1~50%に等しいシール3の動きの径方向自由度eを可能にする。
【0025】
2つのシールを備えたバージョンでは、弁は、正中面Pに関して対称である(
図2)。上流/下流の方向のシール(バタフライのシートの反対側のボディのシート/シール/面)は、流体流れまたはパイプの軸に関して軸対称である。それは、弁が開位置にあるときに、外部への漏出を防止するためのボディ2および配管T間のシール7と、外部への漏出を防止するためのシャフト5およびボディ2間のシール8と、を含む。シートに対して接線方向の位置にあるときのシール3の正中面とリング4の反対側の面との間の距離は、シール3の断面の直径よりも小さいかまたはそれに等しい。
【0026】
図3は、バタフライが開位置にあるときの通電されたリップ・シールの位置を示す。シールの弾性コア6は、ボディ2とバタフライ1とにシールを適用しない。
図4では、シールの2つのリップは、弾性コア6の復帰力に逆らって作用する流体圧の力によって、バタフライ1とボディ2とにそれぞれ押圧される。