(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】健診車、健診システム、およびセルフ健診システム
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20221014BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20221014BHJP
B60P 3/34 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B60P3/00 N
G16H10/00
B60P3/34 Z
(21)【出願番号】P 2020085755
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2019167723
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506075919
【氏名又は名称】一般財団法人 淳風会
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛利 元三
(72)【発明者】
【氏名】草地 広実
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 孝史
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0201239(US,A1)
【文献】特開平02-008463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0066850(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017220500(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0246876(US,A1)
【文献】特表2007-537097(JP,A)
【文献】中国実用新案第208947183(CN,U)
【文献】中国実用新案第206914204(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00
G16H 10/00
B60P 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上を移動可能
で自走可能な車両からなる健診車であって、
前記車両の中央部から側方の幅方向へ可動する可動式の伸展機構が配設され、
前記車両の進行方向の後部に
鉛板で囲う必要のあるレントゲン測定部が配設され、
前記車両の進行方向の前部に
重量を要する発電機が配設されて
、車両の重量バランスが保たれ、
前記可動式の伸展機構が設けられた前記車両の中央部には、着脱可能な複数の入室可能な領域が形成され、
前記複数の入室可能な領域において被健診者が自ら計測可能な装置がそれぞれ設けられ、
前記車両に備えられ、身体計測部、血圧計測部、視力計測部、聴力計測部、採血部、および診察部からなる群から選択される少なくとも1つの健診部と、心電図測定部と、レントゲン測定部と、を含み、
前記伸展機構は、前記車両の少なくとも床板、側壁および天井板を含む中央部を、幅方向へ移動させ、
前記可動式の伸展機構は、
前記車両の中央部を側方へ突出するため水平方向に設けられた複数の支柱と、
前記伸展機構における複数の支柱を移動させるためのアクチュエータと、
前記支柱を水平方向へスライド移動させるレール部と、
前記アクチュエータを稼働させるための制御部と、をさらに含み、
前記制御部は、前記アクチュエータを駆動させて前記レール部に沿って前記複数の支柱をスライドさせ、前記中央部が側方へ突出されて、前記車両内の空間スペースが拡張され、
さらに被検者のための出入口が設けられ、前記出入口は前記伸展機構の位置よりも進行方向の前側に設けられ、
前記心電図測定部と前記出入口とは、前記車両の幅方向に隣接するように配設された、健診車。
【請求項2】
道路上を移動可能
で自走可能な車両からなる健診車であって、
前記車両の中央部から側方の幅方向へ可動する可動式の伸展機構が配設され、
前記車両の進行方向の後部に
鉛板で囲う必要のあるレントゲン測定部が配設され、
前記車両の進行方向の前部に
重量を要する発電機が配設されて
、車両の重量バランスが保たれ、
前記可動式の伸展機構が設けられた前記車両の中央部には、着脱可能な複数の入室可能な領域が形成され、
前記複数の入室可能な領域において被健診者が自ら計測可能な装置がそれぞれ設けられ、
前記車両に備えられ、身体計測部、血圧計測部、視力計測部、聴力計測部、採血部、および診察部からなる群から選択される少なくとも1つの健診部と、心電図測定部と、レントゲン測定部と、を含み、
前記伸展機構は、前記車両の少なくとも床板、側壁および天井板を含む中央部を、幅方向へ移動させる、健診車。
【請求項3】
前記複数の支柱の長さ寸法は、前記車両の幅寸法に等しく、幅方向に沿って設けられた、請求項1に記載の健診車。
【請求項4】
前記健診部、前記レントゲン測定部、および前記心電図測定部のいずれか1つには、
被健診者の入室有無を検知して該領域の外部へ光により報知する光報知部と、
被健診者に対して該領域へ指向性スピーカから音により報知する音報知部と、
被健診者へ該被健診者の動きを指示する説明表示部と、の少なくとも1つを含み、
前記レントゲン測定部は、胸部X線測定部であり、空調機は、車両中央部の天井埋込型であり、空調機の室外機を床面に配置し、空調機の噴き出し口は、健診部の天井に配置した、請求項1または2に記載の健診車。
【請求項5】
前記健診部のうちの少なくとも1つに、医療機器に対する被健診者の操作を検知する後付けのセンサと、前記音報知部および/または前記説明表示部と、制御部と、を備え、
前記センサが被健診者の医療機器に対する操作を検知した場合、前記制御部が、前記操作に対応する説明を前記説明表示部に表示する、または、前記音報知部から報知する、請求項4に記載の健診車。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載の健診車を用いて、複数の健診のうち一部の健診項目をセルフ健診させる、健診システム。
【請求項7】
請求項1から請求項5に記載の健診車を用いて、被健診者が自ら計測可能なセルフ健診部のうちの少なくとも一つに、医療機器と、前記医療機器を制御する制御部と、前記医療機器に対する前記被健診者の操作を検知する後付けのセンサと、音報知部および/または説明表示部と、を含み、
前記センサが前記被健診者の前記医療機器に対する操作を検知した場合、前記制御部が、前記操作に対応する説明を前記説明表示部に表示する、または、前記音報知部から報知する、セルフ健診システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動先において、健康診断を実施することができる健診車健診システム、およびセルフ健診システムに関する。
【背景技術】
【0002】
疾病の早期発見や生活習慣病の予防などを目的として、移動先において健康診断を実施することができる検診車が研究開発されている。
特許文献1(特開2014-149746号公報)には、集団検診を行う為の検診機器の稼働状態を把握し、検診機器の負荷の偏りをなくすために稼働状態を均一化し、以てシステム全体を長寿命化させる集団検診システムについて開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の集団検診システムは、集団検診の検診項目ごとの検診データを計測する複数の検診端末と、検診端末から端末稼働情報および検診データを含む検診情報を収集して蓄積するデータサーバと、データサーバの端末稼働情報を解析し、検診端末の稼働時間が均一となるよう検診端末の稼働/非稼働を管理すると共に、検診端末の検診項目ごとの稼働時間が均一となるよう検診端末への検診項目の割り当てを管理する制御端末と、を備えているものである。
【0004】
特許文献2(特開2011-126504号公報)には、省スペースであり、車両の後方側に乗降口およびステップを設置するための改造が容易な検診車について開示されている。
【0005】
特許文献2に記載の検診車は、車両の内部に配置され、車両の床下機器が収納される床下空間と、検診が行われる床上空間を仕切る床面と、床面に下端が沿うように、車両の後輪の後方に配置され、該下端を中心として回動することで開閉可能に構成され、開いた状態においてステップとして用いられる第1扉と、第1扉よりも前方に配置された第2扉とを備えたものである。
【0006】
特許文献3(特開2007-301377号公報)には、検診を定期的又は不定期に、さらには検診を希望している者が、現地で、総合的な検診を受けることができる巡回移動式検診システムについて開示されている。
【0007】
特許文献3に記載の巡回移動式検診システムは、超音波検査手段及びX線直接撮影検査手段を装備した移動検診車システムと検診の検査項目毎の検診にわたる検診者個人の長期の健康監視の業務についての一貫したシステムとを備えている検診者のための定期又は不定期に健康状態を診断する巡回移動式検診システムにおいて、1.検診結果から読み出されたデータを通信回線を介して通信制御手段により送信する通信制御手段、2.通信制御手段によってデータが送信される通信回線手段、3.通信回線を介して送信されたデータが検診車本部の通信制御手段によって受信され、該受信されたデータが記録される検診者毎の検診者の蓄積記録手段、4.蓄積記録手段から読み出された現在及び過去又は現在のデータを通信回線手段を介してデータの読影者に送信する通信制御手段、5.該通信制御手段によってデータが読影者に送信される通信回線手段、6.通信回線を介して送信されたデータが読影者の通信制御手段により受信され、受信されたデータが記録される読影者の記録手段、7.記録手段から読み出されたデータが読影しやすくするためのデータ変換手段、8.変換手段から読み出されたデータを表示する表示手段により表示されたデータが必要な場合に読影者が判断をした個所に印を付し、表示されたデータと共に読影者の所見が記録される上記記録手段、9.記録手段から読み出されたデータを通信回線を介して送信する上記通信制御手段10.該通信制御手段によってデータが送信される通信回線手段、及び11.通信回線手段を介して送信されたデータが検診車本部の上記通信制御手段により受信され、受信されたデータが記録される上記検診者毎の検診者の蓄積記録手段を有するものである。
【0008】
特許文献4(特開2004-237084号公報)には、健康診断の結果を迅速に集計することができる健康診断システム、検査方法および健康診断車両について開示されている。
【0009】
特許文献4に記載の健康診断システムは、採取された血液を検査し血液検査データを出力する血液検査装置に接続される血液検査コンピュータと、血液以外の部位の検査および測定を行い検査測定データを出力する検査測定装置に接続される検査測定コンピュータと、医師による診察結果としての診断データを入力する診断データ入力手段を備えた診断コンピュータと、血液検査コンピュータ、検査測定コンピュータおよび診断コンピュータにそれぞれ接続され、各受診者を識別するための識別情報を取得する識別情報取得手段と、血液検査の基準範囲データを格納する比較データファイルを記憶するとともに、血液検査データ、検査測定データおよび診断データを格納する検査データファイルを記憶する記憶手段を備え、血液検査コンピュータ、検査測定コンピュータおよび診断コンピュータに接続されるメインサーバとを有し、血液検査コンピュータは、血液検査装置から血液検査データを取得する血液検査データ取得手段と、取得した血液検査データを、この血液検査コンピュータに接続された識別情報取得手段により取得した識別情報に関連づけてメインサーバに送信する送信手段と、メインサーバから識別情報とこの識別情報に関連づけられた追加の検査項目を受信する受信手段とを備え、検査測定コンピュータは、検査測定装置から検査測定データを取得する検査測定データ取得手段と、取得した検査測定データを、この検査測定コンピュータに接続された識別情報取得手段により取得した識別情報に関連づけてメインサーバに送信する送信手段とを備え、診断コンピュータは、メインサーバから識別情報とこの識別情報に関連づけられた血液検査データおよび検査測定データを受信する受信手段と、診断データ入力手段により入力された診断データを、この診断コンピュータに接続された識別情報取得手段により取得した識別情報に関連づけてメインサーバに送信する送信手段とを備え、メインサーバは、血液検査装置により行われる血液検査の基準範囲データを、血液検査の各検査項目に対応させて比較データファイルに格納する比較データ格納手段と、血液検査コンピュータから送信された血液検査データ、検査測定コンピュータから送信された検査測定データおよび診断コンピュータから送信された診断データを、識別情報に関連づけて検査データファイルに格納する検査データ格納手段と、検査データファイルに格納された血液検査データと、比較データファイルに格納された基準範囲データとを読み出して、検査項目ごとに比較し、血液検査データが対応する基準範囲データの基準範囲に含まれていないときには異常値と判定し、読み出した血液検査データに異常値データを加えて検査データファイルに書き込む比較手段と、検査データファイルの血液検査データを検索して、異常値データが含まれていない場合には、この識別情報に関連づけられた検査データファイルを識別情報とともに診断コンピュータに送信し、異常値データが含まれている場合には、血液検査コンピュータに、追加する検査項目を識別情報に関連づけて送信する再検査処理手段とを備えたものである。
【0010】
特許文献5(特開2005-224448号公報)には、放射線画像の記録条件の設定に要する時間を短縮し、効率的に記録処理を遂行することのできる放射線画像記録装置について開示されている。
【0011】
特許文献5に記載の放射線画像記録装置は、放射線源から出力された放射線を、被写体を介して記録部に配設された記録媒体に照射し、記録媒体に放射線画像を記録する放射線画像記録装置において、被写体の体型情報を検出する体型情報検出部と、体型情報に従い、放射線画像の記録条件を設定する記録条件設定部と、記録条件に従い、放射線源及び/又は記録部を制御する制御部と、を備えるものである。
【0012】
特許文献6(特開2002-306430号公報)には、定期的又は不定期に、さらには検診を希望している者が、現地で、総合的な検診を受けることができる巡回移動式検診システムについて開示されている。
【0013】
特許文献6に記載の巡回移動式検診システムは、検診者のための定期又は不定期に健康状態を診断する検診手段において、検査手段を移動検診車に装備及び/又は運搬により現場に設置せしめ、検診者の現場で検診を行い、精度の高い装置で撮影された画像の判定により疾病や生活習慣病を早期発見するものである。
【0014】
特許文献7(実公平3-100535号公報)には、医療用検診車の検診器具装置との組合せ並びに該装置に用いる大型展開扉について開示されている。
【0015】
特許文献7に記載の大型展開扉は、大型自動車の側面の一部を床に使用して、医療用検診器具を多く装置できるよう考案した大型展開扉である。
【0016】
特許文献8(実公昭63-13104号公報)には、レントゲン検診車について開示されている。
【0017】
特許文献8に記載のレントゲン検診車は、1台の車両に2台のレントゲン装置を搭載するレントゲン検診車において、車室内にX栓を遮蔽する遮蔽部材により互いに独立且つ格別に入出可能な2つのレントゲン室を画成し、これらの各レントゲン室に夫々レントゲン装置を配設したものである。
【0018】
特許文献9(実公昭61-28586号公報)には、野外手術車セットについて開示されている。
【0019】
特許文献9に記載の野外手術セットは、左右方向に進退自在な左右の側壁を有し駆動装置によって左右に拡張される箱状の荷台に手術設備を備えた手術車と、診断設備および手術用機器を備えた手術準備車と、滅菌設備を備えた滅菌車とから成り、上記手術車、手術準備車、滅菌車は外壁で周囲を覆われるとともに伸縮自在に形成された連絡通路を介して相互に係脱自在に連結されたことを特徴とするものである。
【0020】
特許文献10(特表2007-537097号公報)には、複数の患者を治療することができ、かつ大規模な運搬手段を必要とすることなく道路上を運搬されることが可能である移動式の医療施設が提案されている。
【0021】
特許文献10に記載の移動式の医療施設は、トレーラーを備えている。トレーラーは、床領域を画成し、少なくとも第1及び第2の形態を有している。第1の形態では、床領域は、公共道路上でのトレーラーの運搬を可能にするために縮小されるようになっている。第2の形態では、トレーラーの床領域は、拡張され、患者を治療するための複数のベッドを支持するのに充分な大きさを有している。いくつかの実施形態では、第2の形態における床領域は、第1の形態における床領域の少なくとも2倍の大きさを有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】特開2014-149746号公報
【文献】特開2011-126504号公報
【文献】特開2007-301377号公報
【文献】特開2004-237084号公報
【文献】特開2005-224448号公報
【文献】特開2002-306430号公報
【文献】実公平3-100535号公報
【文献】実公昭63-13104号公報
【文献】実公昭61-28586号公報
【文献】特表2007-537097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
特許文献1から特許文献8に記載のように、健診システムまたは健診車について種々の開発が成されている。特に、特許文献7記載の大型展開扉を設けた健診車は、画期的な装置である。
しかしながら、大型展開扉を設けることで、被健診者の出入するための場所が狭くなったり、大型展開扉のために車両の重量が大幅に増加したり、という問題が存在した。さらに、そもそも健診車は、移動先で健診を行うため、移動が円滑で、少人数で対応することができることが望ましい。また、健診車が単独ではなく、複数台で対応することが多かった。
【0024】
さらに、健診車には検査機器の積載スペースの制限があり、また胸部X線測定装置のように、放射線を用いた測定機器のように法規制で遮蔽の定められた検査機器がある。
そこで、特許文献9では、車両内の医療器具の設置スペースを広くすることが提案されているが、特許文献9に記載の野外手術車セットは、複数台の手術車、診断設備および手術用機器を備えた手術準備車、および滅菌設備を備えた滅菌車からなっており、一台の健診車で健診を実施することはできない。
また、特許文献10に記載の医療施設10では、車両の走行時の安定性について考慮されていない。
また、従来の移動型の健康診断においては、健診車およびレントゲン車の2台の車両を用いて健康診断が行われていた。
【0025】
本発明の主な目的は、伸展機構を有する健診車および健診システムを提供することである。
本発明の他の目的は、伸展機構を有し、容易に移動ができるよう重量バランスを確立させた、健診車および健診システムを提供することである。
本発明の他の目的は、1台の車両で健康診断を完結することができる健診車および健診システムを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、13t車両に機能を配置することで、移動または取り回しが容易な健診車および健診システムを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、13t車両の乗車定員6名を確保するために軽量な健診車および健診システムを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、健診車を用いた、または健診施設における健康診断において、被健診者が自ら計測可能なセルフ健診をスムーズに行うことができるセルフ健診システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
(1)
一局面に従う健診車は、移動可能な車両からなる健診車であって、車両の中央部から側方の幅方向へ可動する可動式の伸展機構が配設され、車両の進行方向の後部にレントゲン測定部が配設され、車両の進行方向の前部に発電機が配設されたものである。
【0027】
この場合、車両の中央部から側方へ可動式の伸展機構により車両内部の空間スペースを広げることができる。また、重量を要する発電機および鉛板で囲う必要のあるレントゲン測定部を車両の前後に分離して配設することにより、伸展機構と三位で車両の全体のバランスを取ることができる。具体的に両方とも前部または後部のいずれかに配設した場合、車両の重量バランスが悪くなり、走行および操作に支障が出る。本発明においては、これらを防止することができる。
【0028】
従来の移動型の健康診断においては、心電図車とレントゲン撮影を行うレントゲン車との2台を用いて健康診断が行われていた。すなわち、レントゲン測定器は電源装置など重量と体積が大きな装置であるため、従来は伸展機構を設けた車両に心電図測定部とレントゲン測定部を設けることはできなかった。しかし、本発明のように、伸展機構を車両の中央部に限定し、車両の前部に発電機を配設し、車両の後部にレントゲン測定部を配設することによって、1台で健康診断を完結することができる健診車とすることができる。
【0029】
(2)
第2の発明にかかる健診車は、一局面に従う健診車であって、健診車は、道路上を移動可能な車両からなり、車両に備えられ、身体計測部、血圧計測部、視力計測部、聴力計測部、採血部、および診察部からなる群から選択される少なくとも1つの健診部と、心電図測定部と、レントゲン測定部と、を含む健診車であって、伸展機構は、車両の少なくとも床板、側壁および天井板を含む中央部を、幅方向へ移動させてもよい。
【0030】
この場合、道路上を走行可能な車両の前部に心電図測定部が配設され、車両の後部にレントゲン測定部が配設され、車両の中央部に健診部が配設され、車両の前後に比較的大重量の発電機およびレントゲン測定部が配設されることで、車両の走行安定性を向上させることができる。
【0031】
車両を静止させて健診を行う場合には、車両の前部および後部を移動させることなく、車両の中央部のみを伸展機構によって車両の幅方向へ移動させるので、車両の構造が比較的簡単になり、生産コストを低減することができる。
また、車両の中央部を車両の幅方向へ移動させると、車両の中央部のスペースが広がるので、中央部に配設された健診部に医療機器を設置できるようになり、また被健診者、看護師などが車内を動き回りやすくなり、効率のよい健診を実施することができる。なお、この場合の医療機器とは、健診に用いられる、身長体重計、血圧計、視力計、および聴力検査装置などを示す。
【0032】
(3)
第3の発明にかかる健診車は、一局面または第2の発明にかかる健診車であって、可動式の伸展機構は、車両の中央部を側方へ突出するため水平方向に設けられた複数の支柱と、伸展機構における複数の支柱を移動させるためのアクチュエータと、支柱を水平方向へスライド移動させるレール部と、アクチュエータを稼働させるための制御部と、をさらに含み、制御部は、アクチュエータを駆動させてレール部に沿って複数の支柱をスライドさせ、中央部が側方へ突出されて、車両内の空間スペースが拡張されてもよい。
【0033】
この場合、車両の中央部を支持する支柱は金属から構成される。車両の中央部が複数の支柱で支持されるので、車両内部の空間スペースを堅固に形成することができる。その結果、被健診者が複数存在しても耐久性に問題が生じない。また、支柱が車両の中央部に配設され、また車幅方向に沿って配設されているので、車両の重量バランスが良くなり、走行安定性が向上する。
【0034】
(4)
第4の発明にかかる健診車は、第3の発明にかかる健診車であって、複数の支柱の長さ寸法は、車両の幅寸法に等しく、幅方向に沿って設けられてもよい。
【0035】
この場合、車両の移動時には、車幅を一定とすることができる。この場合においても、車両の左右バランスを取ることが可能である。また、健診を実施する場合、車両の中央部を車体の側面から突出させることができる。
【0036】
(5)
第5の発明にかかる健診車は、一局面から第4のいずれか1項に記載の健診車であって、可動式の伸展機構が設けられた車両の中央部には、着脱可能な1または複数の領域が形成され、1または複数の領域において被健診者が自ら計測可能な装置が設けられてもよい。
【0037】
この場合、着脱可能な1または複数の領域において被健診者が自ら装置を用いて計測することができる。また、着脱可能な領域を形成することで、健診の種類を容易に変更することができる。
【0038】
(6)
第6の発明にかかる健診車は、一局面から第5の発明にかかる健診車であって、健診部、レントゲン測定部、および心電図測定部のいずれか1つには、被健診者の入室有無を検知して該領域の外部へ光により報知する光報知部と、被健診者に対して該領域へ指向性スピーカから音により報知する音報知部と、被健診者へ該被健診者の動きを指示する説明表示部と、の少なくとも1つを含んでもよい。
【0039】
この場合、光報知部、音報知部、説明表示部の少なくとも1つが含まれる。その結果、健診者は、光報知部、音報知部、説明表示部にしたがって、複数の領域を移動することができる。
【0040】
(7)
第7の発明にかかる健診車は、第6の発明にかかる健診車であって、健診部のうちの少なくとも1つに、医療機器に対する被健診者の操作を検知する後付けのセンサと、音報知部および/または説明表示部と、を備え、センサが被健診者の医療機器に対する操作を検知した場合、制御部が、操作に対応する説明を説明表示部に表示する、または、音報知部から報知してもよい。
【0041】
従来の医療機器を用いたセルフ健診においては、被健診者の計測開始などの操作に連動して音声、アニメーション等により簡潔かつタイムリーな説明をすることが困難であり、このために被健診者が戸惑うことが多かった。
しかし、各医療機器自体への電子的改造は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」上、および機器保守契約上行うことができないため、従来は、被健診者の操作を検知することは容易でなかった。
これに対して、第7の発明にかかる健診車では、被健診者が医療機器を操作したことを検知するセンサを後付けで医療機器に取り付けることで、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、または機器保守契約に抵触することなく、被健診者の操作に連動したタイムリーな説明を行うことができ、被健診者はスムーズにセルフ健診をすることができる。
【0042】
(8)
他の局面に従う健診システムは、請求項1から請求項7に記載の健診車を用いて、複数の健診のうち一部の健診項目をセルフ健診させるものである。
【0043】
この場合、複数の健診のうち一部の健診項目をセルフ健診させることができるため、健診車のスタッフの人数を削減することができる。
【0044】
(9)
さらに他の局面に従うセルフ健診システムは、被健診者が自ら計測可能なセルフ健診部のうちの少なくとも一つに、医療機器と、医療機器を制御する制御部と、医療機器に対する被健診者の操作を検知する後付けのセンサと、音報知部および/または説明表示部と、を含み、
センサが被健診者の医療機器に対する操作を検知した場合、制御部が、操作に対応する説明を説明表示部に表示する、または、音報知部から報知するものである。
【0045】
この場合、例えば、出張型健診および健診施設内健診など、健診車以外での健康診断においても、被健診者がスムーズにセルフ健診を行うことができる。
【0046】
(A)
前記健診車は、さらに被検者のための出入口が設けられ、前記出入口は前記伸展機構の位置よりも進行方向の前側に設けられている、健診車。この場合、伸展機構のレール部と階段状の出入口とは互いに干渉するため、位置をずらすことにより問題を解決している。
【0047】
(B)
前記心電図室と前記出入口とは、前記車両の幅方向に隣接するように配設された、健診車。この場合、レントゲン装置は大きく狭めることができない。健診部は車両両側に設けて通路も確保するため狭められない。一方で、心電図室はベッド(人の伸長2m程)を設けても車両の幅(約2.33m)に対してゆとり(0.33m)があるため、出入口と心電図室とは幅方向一列に配設可能である。このように配置することによって、健診車両内のスペースを有効に活用することができる。
【0048】
(C)
前記レントゲン測定部は、胸部X線測定部である、健診車。この場合、従来の健診車(レントゲン車)は、胸部X線および胃部X線の両方の測定装置を載せていた。しかし本発明の健診車は、胸部X線に特化することにより、1台で他の健診も同時にすることができるようになった。(従来はレントゲン車・心電図車の2台で健診していた。)
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本実施の形態にかかる健診車の内部構造の一例を示す模式図である。
【
図2】健診車の可動式の伸展機構を駆動させた一例を示す模式図である。
【
図3】健診車の制御システムの一例を示す模式図である。
【
図4】入口表示部の一例を示す模式的拡大図である。
【
図6】身体計測部、血圧計測部、視力計測部、聴力計測部の一例を示す模式的斜視図である。
【
図7】第2の実施形態の身体計測部の模式図である。
【
図8】第2の実施形態の血圧測定部の模式図である。
【
図9】第2の実施形態の視力測定部の模式図である。
【
図10】第2の実施形態の聴力測定部の模式図である。
【
図11】第3の実施形態の健診施設の配置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0051】
(一実施形態)
図1は、本実施形態にかかる健診車100の内部構造の一例を示す模式図であり、
図2は、健診車100の可動式の伸展機構300を駆動させ車両の中央部を側方へ突出させた状態の一例を示す模式図である。
【0052】
(健診車100の内部領域説明)
図1および
図2に示すように、健診車100は、出入口領域110、受付検体領域120、問診入力領域130、身体計測部140、血圧計測部150、視力計測部160、聴力計測部170、胸部X線計測部180、心電図計測部190、採血部210、および診察部220を含む。
【0053】
本実施の形態において、受付検体領域120、身体計測部140、血圧計測部150、視力計測部160、聴力計測部170においては、被健診者がセルフチェックを行えるように自己チェック機器を配設している。ここで、セルフチェックおよび自己チェックとは、看護師等の介助人員がなくとも、被験者が単独で測定できることをいう。また、身体測定とは、身長、体重および体脂肪等の測定をいう。
なお、健診車100の内部構成は、胸部X線計測部180および心電図計測部190を除いて健診内容に応じて変更することができる。ここで、X線計測とは、X線写真の撮影をいう。
【0054】
(胸部X線計測部180の配置位置)
本実施の形態にかかる健診車100の最後部には、胸部X線計測部180が設けられている。胸部X線計測部180は、その性質上、室内が鉛板等のX線を遮蔽する遮蔽板により包囲される必要がある。そのため、一般的な健診車100においては、胸部X線計測部180の重量が大きくなるという課題が有った。
【0055】
しかしながら、本実施の形態にかかる健診車100では、車両前部に発電機200を設け、車両後部に最大荷重の胸部X線計測部180を配置させることとしている。その結果、健診車100の運転を円滑に実施することができる。特に、胸部X線計測部180は、鉛板等のみではなく、胸部X線測定装置(X線撮影台)、X線高電圧発生装置、X線管装置、X線制御卓など重量の大きな装置が多く存在するので大重量となり、しかも大きな設置スペースを必要とする。
また、胸部X線の撮影には多くの電力を必要とするため、車両前部の下側には、電力を供給するための発電機200を備える。
【0056】
また、従来のレントゲン車においては、胸部X線および胃部X線の両方が測定できるものが多かったが、健康診断において胃部X線撮影は必ずしも全ての被健診者が測定するものではなかった。そこで本実施の形態にかかる健診車100においては、レントゲン撮影は、胸部X線撮影に特化するものとした。
【0057】
なお、本実施の形態においては、取り回しに優れている13tクラスの車両を用いた。また、13tクラスの車両を用いたため、胸部X線計測部180を狭スペースに効率よく配設する必要がある。
本実施の形態においては、胸部X線計測部180の機器を制御する制御端末および、電源供給ユニット、無停電電源装置を健診車100の天井に配置した。さらに、エアコンの室外機を床面に配置した。
さらにエアコンの噴き出し口は、採血部210、および診察部220の天井に配置した。
以上のように、健診車100においては、胸部X線計測部180をコンパクト化することに成功し、健診車100の車両内の空間を開放することができる。
【0058】
また、伸展機構300の支柱610は、軽量化のため、主にアルミニウム素材により形成した。また、伸展機構300には、天井板を含む屋根を設けた。さらに、採血部210および診察部220のスライドドアは、軽量化のため木製素材により形成した。
以上のように、健診車100自体の重量を軽くするとともに、健診スタッフを6名以下で対応することが可能なように、設計した。
【0059】
(心電図計測部190の配置位置)
また、本実施の形態にかかる健診車100の運転席の後ろ、すなわち、健診車100の走行方向の最前部には、心電図計測部190が設けられている。心電図計測部190には、被健診者の心電図を計測するための装置および被健診者が横たわるためのベッドまたはソファなどが配置される。
また、心電図計測部190をエンジン上部に配設することで、本実施の形態においては健診部の配設が容易となるため、健診車100の運転席の後ろ、すなわち、健診車100の走行方向の最前部に心電図計測部190が設けられている。
【0060】
また、本実施の形態にかかる健診車100の運転席の後ろ、すなわち、健診車100の走行方向の最前部の下部には、伸展機構300の支柱610と交差しない位置に発電機200が設けられている。すなわち、健診車100の走行方向の下部の最前部に発電機200が設けられている。
【0061】
このように、胸部X線計測部180の重量および発電機200の重量を、採血部210,診察部220と三位一体で健診車100の前後にバランスよく配置させている。その結果、健診車100の運転が安定したものとなり、健診車100を運転して移動するスタッフの労力を低減することができる。
【0062】
(伸展機構300の支柱610の配置位置)
さらに、本実施の形態にかかる健診車100は、車両の中央部を車両側方へ突出させるための可動式の伸展機構300を有する。
図2に示すように、可動式の伸展機構300は、後述するアクチュエータ590(
図3参照)を駆動させることにより、健診車100の床板、側壁、および天井板を含む中央部が側方へ移動し、その結果、健診車100の中央部の空間スペース(空間領域)ARが拡張される。
【0063】
本実施の形態にかかる健診車100においては、伸展機構300は、車両に連結された支持レールと、中央部に連結され支持レールにスライド可能に設置される支柱610と、支柱610を車幅方向に往復移動可能に移動させるアクチュエータ590と、を含む。
【0064】
支柱610は、車両の構造体である前後方向に長いシャーシに直交する方向に沿って配置されている。支柱610は、車幅方向に沿って、かつ車幅と同寸法の金属フレームにて構成されている。
また、支持レールは、車両の構造体である前後方向に長いシャーシに直交する方向に連結されていてもよい。すなわち、支持レールは車幅方向に沿って、かつ車幅と同寸法の金属フレームにて構成されていてもよい。
支柱610は長尺な金属部材にて構成され、中央部の下部に連結され、支持レールに沿ってスライド可能に設置されている。そして、伸展機構300は、支柱610を車幅方向に往復移動可能に移動させるアクチュエータ590を含む。
【0065】
具体的には、可動式の伸展機構300の構成要素として、3本の支柱610が健診車100の車体下部に設けられている。すなわち、車両のシャーシに車両の幅方向に長い支持レールが固定され、この支持レールに支柱610が車両の幅方向へ移動可能に設置されている。中央部の下部に支柱610が連結されており、支柱610により中央部がスライド可能に支持されている。
支柱610は、支持レール上にローラ、軸受け、ベアリングなどの移動機構を介して移動可能に設置することができる。
【0066】
支柱610は、心電図計測部190と胸部X線計測部180との間に複数本が配設されている。なお、本実施の形態において、支柱610は、3本の場合について説明しているが、これに限定されず、2本、あるいは4本以上の複数本であればよく、任意の本数から構成されてもよい。
【0067】
また、本実施の形態において、支柱610は、心電図計測部190と胸部X線計測部180との間に3本が等間隔に配設されているが、健診車100の大きさなどに応じて、また中央部の荷重などに応じて、支柱610の本数、間隔は適宜設定すればよい。
【0068】
また、伸展機構300は健診車両内の床の直下に設けられる。一方で、被検者のための出入口には、路面からスムーズに健診車両に昇降できるように階段が設けられている。本実施の形態における出入口は、伸展機構300よりも進行方向の前側に配設される。これにより、階段を含む出入口と伸展機構300との干渉を防ぐことができる。
また、本実施の形態における出入口と心電図室とは、車両の幅方向に隣接するように配置される。すなわち、レントゲン装置は体積が大きいものであり、かつ、健診部は車両両側側に設けられて通路も確保する必要があるため、出入口を設けることが困難である。一方で、本実施の形態における車両の幅は約2.33mであるのに対して心電図室の幅は約2mを確保すれば良いので、出入口と心電図室とは車両の幅方向に隣接するよう配置することができる。このように配置することによって、健診車両内のスペースを有効に活用することができる。
【0069】
本実施の形態にかかる健診車100においては、
図1および
図2に示すように、支柱610は、健診車100の左右バランスが取れるように、健診車100の幅と同幅寸法に形成されている。その結果、さらに健診車100の運転が安定したものとなり、健診車100を運転して移動するスタッフの労力を低減することができる。
【0070】
また、本実施の形態にかかる健診車100においては、空調機(エアコン)は、天井埋込型の空調機を車両中央部に設置することができる。従来の健診車両においては、壁設置型のエアコンが用いられていたが、この場合は拡幅された中央部の空間スペースARに十分に冷温風が行き渡らないという問題があった。本実施の形態のように、天井埋込型の空調機を車両中央部に設置して、かつ空調機から四方に冷温風を出すことによって、拡幅された空間スペースARにも十分に冷温風を行き渡らせることができる。また、天井埋込型とすることによって、健診車両内の窮屈感を低減することができる。
【0071】
(健診車100の制御システム500)
図3は、健診車100の制御システム500の一例を示す模式図である。
図3に示すように、健診車100の制御システム500は、制御部510、入口表示部520、問診表示部530、人感検知センサ540、指向性スピーカ550、入室有無報知部560、無線通信部570、1または複数のタブレット端末580およびアクチュエータ590を含む。
【0072】
制御部510は、入口表示部520、問診表示部530、人感検知センサ540、1または複数のタブレット端末580からの情報を、無線通信部570を介して受信し、入口表示部520、問診表示部530、指向性スピーカ550、入室有無報知部560、1または複数のタブレット端末580へ送信する。制御部510の詳細動作については、健診説明において具体的に説明を行う。
【0073】
一方、制御システム500の制御部510は、可動式の伸展機構300のためのアクチュエータ590に駆動指示を行う。その結果、
図1および
図2に示した3本の支柱610が水平方向に移動される。また、支柱610により支持されるため床上に被健診者が多数存在しても床を保持することができる。
アクチュエータ590としては、油圧ポンプ、油圧シリンダ、制御弁などを備えた一般的な油圧装置を採用することができる。
その結果、可動式の伸展機構300により空間スペースARが大きく形成される。
【0074】
また、車両の前部、中央部、および後部に通じる通路が車両内に形成されるので、被健診者の移動が容易になり各健診部にて健診を実施することができる。
なお、車両の側方へ突出した中央部を支持するため、支柱610に加え、さらに支柱610を支持する支持部材を支柱610あるいは中央部と地面との間に鉛直支持できるよう配設してもよい。支持部材は、例えばヒンジにより支柱610あるいは中央部に回動可能に連結され、適宜回動、固定できるように構成してもよい。
【0075】
また、拡張された空間スペースARを伸展機構300によって縮小する場合には、安全のために、健診車両内部に警告音が鳴るようにしてもよいし、また、人感センサを用いて健診車両内部に人が居る場合は空間スペースARが縮小しないよう制御してもよい。また、非常時に備えて、健診車両内部に伸展機構300の非常停止ボタンが設けられていても良い。
【0076】
(本実施の形態にかかる健診)
本実施の形態にかかる健診車100は、一般的な健診を受けることができるように構成されている。すなわち、健診車100には、身体計測部140、血圧計測部150、視力計測部160、聴力計測部170、採血部210、および/または診察部220が備えられているので、これらの中から選択される少なくとも1つの健診部にて各健診を受けることができる。
また心電図計測部190、胸部X線計測部180にてそれぞれの健診を受けることができる。
また、本実施の形態において、被健診者は、複数のタブレット端末580を持ち、健診車100内を移動しつつ、一般的な健診を受ける場合について説明する。
【0077】
図4は、入口表示部520の一例を示す模式的拡大図である。ここでは、健診車100のスタッフ(3名から5名前後)が、健診車100を設置し、健診を開始した直後の状態を基に説明を行う。
【0078】
図4に示すように、制御部510は、入口表示部520に『入室してください。』と表示させる。なお、入室した被健診者は、入室し、受付検体領域120に検体を提出した場合、タブレット端末580を受け取る。
また、制御部510は、入口表示部520の表示を『しばらくお待ちください。』と表示させる。すなわち、制御部510は、入口表示部520から入室した被健診者が、健診車100に乗り込み、タブレット端末580を受け取り、受付検体領域120前に存在すると判定できるからである。
なお、本実施の形態においては、タブレット端末580を渡すこととしているが、それに限定されず、他のスマートフォン、ビーコンセンサ等、任意の指示通信装置(合図指示装置等)であってもよい。
【0079】
図5は、問診表示部530の一例を示す模式図である。
制御部510は、タブレット端末580に『問診表示部530へ移動し、問診データを送信してください。』と表示させる。この場合、被健診者は、
図5に示すように、個人の携帯端末(スマートフォン)、企業内パーソナルコンピュータ(企業PC)、または健診車100のタブレット端末580を用いて、事前に入力された問診項目の確認と当日問診項目の入力を行い、そのデータを問診表示部530へ送信する。
この場合、健診車100のスタッフAが、問診項目の過不足を確認し、被健診者へ再通知してもよく、問診表示部530がデータを受信し、制御部510が過不足を判断して、タブレット端末580に不足の通知を行っても良い。
【0080】
図6は、身体計測部140、血圧計測部150、視力計測部160、聴力計測部170の一例を示す模式的斜視図である。
図6は、
図1および
図2に示した身体計測部140、血圧計測部150、視力計測部160、聴力計測部170の具体例である。
【0081】
制御部510は、タブレット端末580に『身体計測部140に入室ください。』と表示させる。この場合、
図6の身体計測部140内に人が存在する場合には、身体計測部140に設けられた人感検知センサ540による信号を受信し、制御部510は、入室有無報知部560を点灯させる。すなわち、被健診者は、タブレット端末580の指示を確認しつつ、他の人が身体計測部140内に存在することを認識することができる。
なお、制御部510は、人感検知センサ540の信号を受信し、入室有無報知部560を消灯させた場合に、タブレット端末580に『身体計測部140に入室ください。』と表示させてもよい。特に、性別が異なる場合には、後者を採用し、性別が同一の場合には、前者の制御を用いて無駄時間の削減を実施しても良い。
また、人感検知センサ540の代わりに、被健診者にビーコンを配布し、ビーコンにより被健診者の詳細位置を認識するシステムであってもよい。
【0082】
次に、制御部510は、タブレット端末580に『身体計測部140内の装置に乗ってください。』と表示させる。または制御部510は、指向性スピーカ550から当該音声を報知させてもよい。指向性スピーカ550は、身体計測部140内にのみ聞こえ、血圧計測部150、視力計測部160、聴力計測部170には、音が漏れないように形成されているからである。指向性スピーカ550としては、パラメトリックスピーカを用いることができる。超音波を使うことで鋭い指向性を持たせることができるため、特定の狭い範囲にいる被健診者のみに選択的に音声を伝えることができる。
さらに、健診ブースの壁および床には、ガラス繊維などの吸音素材を用いることができる。これにより、指向性スピーカ550から発した音声が反響することがないため、特定の被健診者のみに選択的に音声を伝えることができる。
制御部510は、タブレット端末580を有する被健診者の身長体重データを記録する。
また、身体計測部140内に液晶パネル525(
図7参照)または表示画面を設け、当該画面等に計測手法をアニメーション化、または映像化して映し出してもよい。
【0083】
次に、制御部510は、身体計測部140で実施したのと同様に、血圧計測部150、視力計測部160、聴力計測部170と、被健診者のセルフ健診を実施させつつ、移動を促しても良い。
その結果、被健診者は、身体計測部140を出て、次の血圧計測部150へ移動し、血圧測定を行う。次に被健診者は、血圧計測部150を出て、次の視力計測部160へ移動し、視力測定装置を覗き込む。続いて、被健診者は、聴力計測部170へ移動し、ヘッドフォンをつけて聴力計測を行う。
【0084】
なお、本実施の形態においては、身体計測部140、血圧計測部150、視力計測部160、聴力計測部170をそれぞれ別途の領域として説明をしているが、技術発展により、身体計測部140、血圧計測部150、視力計測部160、聴力計測部170の複数を同時に計測できるようになった場合には、一の領域で複数の計測を実施してもよい。
【0085】
続いて、被健診者は、同様に、胸部X線計測部180に入り、健診車100のスタッフBの指示に従い、胸部X線計測装置でX線検査を行う。次いで、被健診者は、心電図計測部190に入り、健診車100のスタッフAの指示に従い、心電図の計測を行う。
次に、被健診者は、採血部210に入り、健診車100のスタッフCに従い、採血を行う。最後に、被健診者は、診察部220に入り、健診車100の医師(スタッフD)による診察を受ける。
【0086】
(第2の実施形態における健診システム)
以下、第2の実施の形態について説明を行う。従来の医療機器では、セルフ健診を主としていないため、健診時に操作説明者または看護師が寄り添って居る必要があった。そのため、従来の医療機器を用いてセルフ健診を行う場合、被健診者の計測開始などの操作に連動して音声、アニメーション等により簡潔かつタイムリーな説明をすることが困難であり、その結果、被健診者が戸惑うことが多かった。
被健診者の操作に連動してタイムリーな説明をするためには、被健診者が操作したことを検知することが必要である。もちろん、医療機器には被健診者の操作に対応する信号は含まれているが、各医療機器自体への電子的改造は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」上、および機器保守契約上行うことができないという問題がある。また、改造した医療機器を特注することも費用的にあるいは時間的に現実的ではない。
なお、この場合の医療機器とは、健診に用いられる、身長体重計141、全自動血圧計151、全自動視力計161、および全自動聴力検査装置171などを示す。
【0087】
第2の実施形態における健診では、被健診者が医療機器を操作したことを検知するセンサを後付けで医療機器に取り付け、当該センサが被健診者の医療機器に対する操作を検知した場合、制御部510が、操作に対応する説明を液晶パネル525に表示するか、または、指向性スピーカ550で報知する。
なお、第2の実施形態における健診においても、被健診者の医療機器に対する操作の検知とそれに伴う液晶パネル525への被健診者への説明表示以外の部分については、第1の実施形態と同一である。
以下、各健診部について後付けのセンサと説明表示との連動方法を説明する。
【0088】
(身体計測部)
図7は、第2の実施形態の健診車100の身体計測部140の模式図である。図に示すように、身体計測部140のシステムは、身長体重計141、身長体重計141の体重計測板の上に後付けで敷設された圧力センサ142、制御部510、液晶パネル525を含む。
身長体重計141は、被健診者が、身長体重計141の体重計測板の上にのることによって、身長体重計141が体重および身長、または体重のみを計測する。
第2の実施形態の身体計測部140では、被健診者が体重計測板の上にのったことを圧力センサ142で検知し、制御部510が液晶パネル525に、例えば『計測中です。背筋を伸ばして10秒間動かないでください。』などの説明を表示させる。そして、被健診者は液晶パネル525の上記表示を見ることにより、戸惑うことなく身体計測を行うことができる。
また、身長体重計141が、ゼロ点復帰する前に、被健診者が体重計測板の上にのったことを圧力センサ142が検知した場合、制御部510が液晶パネル525に、例えば『一度、降りてください。』その後、『準備ができました。お乗りください。』などの説明を表示させる。
【0089】
(血圧計測部)
図8は、第2の実施形態の健診車100の血圧計測部150の模式図である。図に示すように、血圧計測部150のシステムは、全自動血圧計151、全自動血圧計151のスタートボタンに後付けで貼付した光センサ152、制御部510を含む。
全自動血圧計151は、被健診者がスタートボタンを押すと、スタートボタンが例えば緑色に点滅し、同時に計測が開始される。第2の実施形態の血圧計測部150では、スタートボタンが押されたことを光センサ152で検知し、制御部510が液晶パネル525に、例えば『計測を開始します。話さず動かないでください。』との説明を表示させる。そして、被健診者は液晶パネル525の上記表示を見ることにより、戸惑うことなく血圧計測を行うことができる。
なお、血圧計測部150においても、ゼロ点復帰する前に、被健診者が、操作を行った場合には、身長体重計141と同様にやり直しを報知させてもよい。
【0090】
(視力計測部)
図9は、第2の実施形態の健診車100の視力計測部160の模式図である。図に示すように、視力計測部160のシステムは、全自動視力計161、全自動視力計161のスタートボタンの上に後付けで貼付したタクトスイッチ162、制御部510を含む。タクトスイッチ162はスタートボタンとほぼ同じ力(例えば2.55N)でオンとなるものを選択することが好ましい。全自動視力計161ではスタートボタンを押した後、被健診者がのぞき込むと視力検査が自動的に開始される。第2の実施形態の視力計測部160では、スタートボタンが押されたことをタクトスイッチ162で検知し、制御部510が液晶パネル525に、例えば『計測を開始します。両眼を添えて覗き込んでください』との説明を表示させる。そして、被健診者は液晶パネル525の上記表示を見ることにより、戸惑うことなく視力計測を行うことができる。
なお、視力計測部160においても、ゼロ点復帰する前に、被健診者が、操作を行った場合には、身長体重計141と同様にやり直しを報知させてもよい。
【0091】
図10は、第2の実施形態の健診車100の聴力計測部170の模式図である。図に示すように、聴力計測部170のシステムは、全自動聴力検査装置171、全自動聴力検査装置171のスタートボタンの上に後付けで貼付したタクトスイッチ172、制御部510を含む。タクトスイッチ172はスタートボタンとほぼ同じ力(例えば1.27N)でオンとなるものを選択することが好ましい。全自動聴力検査装置171ではスタートボタンを押すと聴力検査が自動的に開始される。第2の実施形態の聴力計測部170では、スタートボタンが押されたことをタクトスイッチ172で検知し、制御部510が液晶パネル525に、例えば『音が聞こえたら手に持っているボタンを押してください。』との説明を表示させる。そして、被健診者は液晶パネル525の上記表示を見ることにより、戸惑うことなく視力計測を行うことができる。
なお、聴力計測部170においても、ゼロ点復帰する前に、被健診者が、操作を行った場合には、身長体重計141と同様にやり直しを報知させてもよい。
【0092】
以上の説明では、被健診者への説明は液晶パネル525に表示しているが、指向性スピーカ550で報知してもよい。
また、聴力計測部170においては、音で報知できない。また、例えば聴力計測部170等において、スタートボタンを押すとボタンが点灯する場合には、タクトスイッチ172の代わりに光センサを用いてもよい。
【0093】
(第3の実施形態におけるセルフ健診システム)
以下、第3の実施の形態について説明を行う。
第2の実施形態の健診システムは、被健診者が健診車100内でのセルフ健診をスムーズに行うための健診システムであるが、第3の実施形態のセルフ健診システムは、健診車100以外、例えば、出張型健診および健診施設内健診でのセルフ健診をスムーズに行うための健診システムである。
図11は、第3の実施形態の健診施設400の配置の一例を示す模式図である。図に示すように、健診施設400は、身体計測部140、血圧計測部150、視力計測部160、聴力計測部170を含むセルフ健診部410と、受付検体領域120と、心電図計測部190と、採血部210と、診察部220とを含む。なお、
図11には図示されていないが、健診施設400にさらに問診入力領域130または胸部X線計測部180等を含んでもよい。
また、出張型健診の場合は、身体計測部140等の健診部はすべて移動可能であり、胸部X線計測部180は通常胸部レントゲン車である。
【0094】
第3の実施形態の健診施設400のセルフ健診部410では、第2の実施形態の健診システムと同様に、被健診者が医療機器を操作したことを検知する圧力センサ142、光センサ152、タクトスイッチ162、またはタクトスイッチ172をそれぞれ、後付けで、身長体重計141、全自動血圧計151、全自動視力計161、または全自動聴力検査装置171に取り付け、当該センサが被健診者の医療機器に対する操作を検知した場合、制御部510が、操作に対応する説明を液晶パネル525に表示するか、または、指向性スピーカ550で報知する。
【0095】
以上のように、本実施の形態にかかる健診車100においては、伸展機構300を有するため、一般健診を容易に実施することができる。また、重量バランスが最適な健診車100であるため、操作性移動性能を高く維持することができる。
さらに、健診車100のスタッフ数は、医師一人およびスタッフA、スタッフB、スタッフCの合計4名で対応ができるため、効率よく健診を実施することができる。
なお、スタッフ人数が少なく対応できるため、コスト削減を実現することができる。
また、第2の実施形態、および第3の実施形態における健診システムでは、被健診者がスムーズにセルフ健診を行うことができる。
【0096】
本発明において、伸展機構300が、『可動式の伸展機構』に相当し、胸部X線計測部180が、『レントゲン測定部』に相当し、心電図計測部190が、『心電図測定部』に相当し、健診車100が、『健診車』に相当し、支柱610が、『複数の支柱』に相当し、空間スペースARが、『空間スペース』に相当し、アクチュエータ590が、『アクチュエータ』に相当し、制御部510が『制御部』に相当し、身体計測部140、血圧計測部150、視力計測部160、聴力計測部170が、『1または複数の領域』に相当し、入室有無報知部560が『光報知部』に相当し、圧力センサ142、光センサ152、およびタクトスイッチ162,172が『センサ』に相当し、液晶パネル525が『説明表示部』に相当し、指向性スピーカ550が『音報知部』に相当する。
【0097】
本発明にかかるいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
100 健診車
140 身体計測部
142 圧力センサ
150 血圧計測部
152 光センサ
160 視力計測部
162 タクトスイッチ
170 聴力計測部
172 タクトスイッチ
180 胸部X線計測部
190 心電図計測部
300 伸展機構
510 制御部
525 液晶パネル
550 指向性スピーカ
560 入室有無報知部
590 アクチュエータ
610 支柱
AR 空間スペース