(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】改善された開始剤系調剤を用いるイソオレフィンポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 10/10 20060101AFI20221014BHJP
C08F 4/52 20060101ALI20221014BHJP
C08F 210/12 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C08F10/10
C08F4/52
C08F210/12
(21)【出願番号】P 2020501275
(86)(22)【出願日】2018-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2018068389
(87)【国際公開番号】W WO2019011813
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-07
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-インゴルフ・パウル
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・フェルラー
(72)【発明者】
【氏名】ウド・ヴィースナー
(72)【発明者】
【氏名】カルステン・クロイダー
(72)【発明者】
【氏名】アダム・グロノウスキー
(72)【発明者】
【氏名】リカルダ・ライベリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・リッター
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-522262(JP,A)
【文献】特表2004-521164(JP,A)
【文献】特表2003-514928(JP,A)
【文献】特開2014-051543(JP,A)
【文献】特表2005-535746(JP,A)
【文献】特表2004-526855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 2/60
4/00- 4/58
4/72- 4/82
6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソオレフィンポリマーの調製方法であって、少なくとも以下の工程:
a)反応器に、アルカンから選択される有機希釈剤、及びイソオレフィンを含む少なくとも一つのモノマーを含む反応媒体を提供する工程、
b)前記反応器に、別に、
●アルカンから選択される有機希釈剤中の、少なくとも1つのホウ素またはアルミニウム化合物の溶液と
●水及び塩化水素から選択される少なくとも1つの開始剤と
を接触させることによって調製される開始剤系を提供する工程;並びに
c)少なくとも1つのモノマーを、反応媒体内にて開始剤系の存在下で重合させ、イソオレフィンポリマー、有機希釈剤、及び任意の残留モノマーを含む製品媒体を生成させる工程を含み、
前記開始剤系が、少なくとも一つのホウ素またはアルミニウム化合物を含む第一の流れと、少なくとも一つの開始剤を含む第二の流れとを連続的に接触させることで形成される、方法。
【請求項2】
前記イソオレフィンが、4から16個の炭素原子を有するイソオレフィンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イソオレフィンがイソブテンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応媒体が、一つ以上のマルチオレフィンをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応媒体がイソプレンをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応媒体が、イソブテンを単独のモノマーとして含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ホウ素またはアルミニウム化合物が、式MX
3により表され、ここでMはホウ素またはアルミニウムであり、Xはハロゲンであるか、または式MR
(m)X
(3-m)により表され、ここでMはホウ素またはアルミニウムであり、Xはハロゲンであり、RはC
1-C
12アルキル及びC
7-C
14アルキルアリール基からなる群から選択される一価炭化水素基であり;mは1または2であり、ここで「アルキルアリール」なる語が、脂肪族と芳香族の両方の構造を含む基を意味し、この基の結合位が脂肪族の位置にある、請求項1から6のいずれか一項の方法。
【請求項8】
前記ホウ素またはアルミニウム化合物には、二臭化メチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二臭化ブチルアルミニウム、二塩化ブチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジブチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、二塩化イソブチルアルミニウム、及び塩化ジイソブチルアルミニウムが含まれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記開始剤が、水である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
使用されるホウ素またはアルミニウム化合物のホウ素及びアルミニウム原子の合計に対する開始剤のモル比が、0.005から1.900である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
アルミニウムまたはホウ素化合物を開始剤と連続的に接触させて開始剤系を形成する工程と、前記開始剤系とイソオレフィン
を含む少なくとも一つのモノマーとを反応媒体内で接触させる工程との間の時間である滞留時間が、5秒から30分間である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
提供工程a)及びb)並びに重合工程c)が連続的に実施される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程b)が、-100℃から-60℃の範囲の温度で実施される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
●アルカンから選択される有機希釈剤中の、少なくとも一つのホウ素またはアルミニウム化合物の溶液と
●水及び塩化水素から選択される少なくとも一つの開始剤と
を連続的に接触させることにより調製される開始剤系を使用してアルカンから選択される有機希釈剤中で調製されるイソオレフィンポリマーの製品特性の、
●開始剤系の滞留時間及び/または
●開始剤系を形成するために使用される、少なくとも一つのホウ素またはアルミニウム化合物と少なくとも一つの開始剤のモル比
を調整することによる制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソオレフィンポリマー、例えば、ポリイソブテンまたはブチルゴムの、少なくとも一つのホウ素またはアルミニウム化合物と少なくとも一つの開始剤とを連続的に接触させることにより調製される開始剤系の存在下での、イソブテンと任意のさらなるモノマーとの重合による調製のための効率的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソオレフィンから誘導された繰り返し単位を含むポリマーは、カルボカチオン重合法によって工業的に調製される。特に重要なのはポリイソブテンであり、イソブチレンと少量のマルチオレフィン、例えばイソプレンとのコポリマーであるブチルゴムである。
イソオレフィンのカルボカチオン重合及びマルチオレフィンとの共重合は、機構的に複雑である。開始剤系は、典型的には2つの成分:ルイス酸、例えば大規模な商業的プロセスで頻繁に使用される三塩化アルミニウム、及び開始剤で構成される。
開始剤の例には、プロトン源、例えば、ハロゲン化水素、アルコール、フェノール、カルボン酸、スルホン酸、及び水が含まれる。
開始工程中、イソオレフィンは、ルイス酸、特にホウ素またはアルミニウム化合物及び開始剤を含む開始剤系と反応して、カルベニウムイオンを生成し、これはいわゆる生長段階において新たなカルベニウムイオンを形成するモノマーとさらに反応する。
【0003】
モノマーの種類、希釈剤または溶媒の種類及びその極性、重合温度、並びに、ルイス酸と開始剤との特定の組み合わせは、生長の化学に影響し、しかるに成長中のポリマー鎖へのモノマーの取り込みに影響する。
工業界は、一般に、希釈剤としての塩化メチル中に、ポリイソブチレン、ブチルゴム、及びさらにイソオレフィンポリマーを製造するためのスラリー重合法の広範な使用を受け入れてきた。典型的には、重合法は、低温で、一般的には-90℃より低い低温で実施される。塩化アルキル、特に塩化メチルは、モノマー及び塩化アルミニウム触媒を溶解するがポリマー製品を溶解しないなどの様々な理由で使用される。塩化メチルは、低温重合と、ポリマー及び未反応モノマーからの効果的な分離とをそれぞれ可能にする、適切な氷点及び沸点を有する。
【0004】
あるいは、ノルマルペンタン及びイソペンタン及びヘキサン並びにこれらの混合物などの脂肪族溶媒は、後処理、例えば、ポリマーの化学変性において顕著な利点を有し、例えば、国際公開第2010/006983号公報及び国際公開第2011/089092号公報に開示の例のように重合に使用される。
イソオレフィンポリマー、例えば、重合中に調製されるポリイソブテンまたはブチルゴムは、これらの脂肪族媒体に溶解するため、これらの方法は通常、溶解法と呼称される。
【0005】
スラリー法と溶解法との両方に共通する特徴は、開始剤系の、高いが典型的にはほとんど予測不可能な反応性のため、温度制御と重合媒体の不均一性によるいわゆる「ホットスポット」の回避とが困難であるが、所望の製品品質を達成し、且つ反応器の汚染、すなわち反応器の表面上のポリマー堆積物の形成を回避するためには重要であるということである。こうした堆積物は、その断熱効果により、冷却効率を低下させ、反応器内の温度の急速な上昇を引き起こし、それによって発熱重合の速度を上昇させ、これも除去が不十分なさらなる熱の急速な生成を増大させる。最後に、これは、熱暴走さえもたらしうる。
【0006】
開始剤系の調製におけるわずかな変更でさえ、有意に異なる反応性をもたらし得ることが知られている(例えば、国際公開第2012/45597号を参照)。典型的なパラメータは、ルイス酸及び開始剤の量と種類、温度、投与計画、及び使用前の滞留時間である。
【0007】
連続重合において、再現性を持たせ、且つ開始剤系反応性の大きな変動を低減してポリイソブテンまたはブチルゴムを製造するために、開始剤は、典型的には、重合反応で使用する前に大量にバッチ式で製造される。
カナダ特許第1,019,095号公報は、ベンゼン及びイソペンタン中に溶解させたエチルアルミニウムセスキクロライドを加湿窒素で活性化させること、すなわち、水を5℃及び500リットルスケールの閉回路における6.5時間以上のバッチ反応における開始剤とすることによる、開始剤系の調製を開示している。
ソ連特許1807699号公報は、ガソリン及びイソペンタンに溶解させたエチルアルミニウムセスキクロライドを、5℃の加湿器中、開始剤として水で活性化することによる、同様の開始剤系の調製を開示している。
いずれの文書でも、エチルアルミニウムセスキクロライドの水に対するモル比は1:0.9になるように選択された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2010/006983号公報
【文献】国際公開第2011/089092号公報
【文献】国際公開第2012/45597号
【文献】カナダ特許1,019,095号公報
【文献】ソ連特許1807699号公報
【文献】国際公開第2011/000922号公報
【文献】国際公開第2012/089823号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Encyclopedia of Chemical Technology, Kirk Othmer, 4th Edition, pp. 8-311
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの試みには、商業的な大規模生産を満たすのに十分な再現性がない。
したがって、優れたプロセス制御を備えた高品質のイソオレフィンポリマーの調製のための汎用的な方法を提供する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様により、ここに、イソオレフィンポリマーの調製方法であって、少なくとも以下の工程:
a)有機希釈剤、イソオレフィンである少なくとも一つのモノマー、及び、
●少なくとも1つのホウ素またはアルミニウム化合物と
●少なくとも1つ開始剤と
を接触させることによって調製される開始剤系を含む反応媒体を提供する工程;及び
b)反応媒体内で開始剤系の存在下において、少なくとも1つのモノマーを重合させ、イソオレフィンポリマー、有機希釈剤、及び任意の残留モノマーを含む製品媒体を形成する工程を含み、これにより、少なくとも一つのホウ素またはアルミニウム化合物と少なくとも一つの開始剤とを連続的に接触させることで開始剤系が形成される方法が提供される。
【0012】
本発明はまた、本明細書中にこれより開示される好ましい実施態様、範囲、パラメータの、互いとのまたは開示された最も広い範囲またはパラメータとの、全ての組み合わせを包含する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
イソオレフィン及び別のモノマー
工程a)において、有機希釈剤、イソオレフィンである少なくとも一つのモノマー、及び開始剤系を含む反応媒体が提供される。
本明細書で使用されるイソオレフィンなる語は、炭素-炭素二重結合を含む化合物を意味し、ここで、二重結合の一方の炭素原子は二つのアルキル基で置換され、他方の炭素原子は二つの水素原子または一つの水素原子と一つのアルキル基とで置換されている。
【0014】
適切なイソオレフィンの例には、4から16個の炭素原子、好ましくは4から7個の炭素原子を有するイソオレフィン、例えば、イソブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテンが含まれる。好ましいイソオレフィンはイソブテンである。
反応媒体は、少なくとも一つのイソオレフィンと共重合するさらなるモノマーを含んでもよい。こうしたさらなるモノマーには、マルチオレフィンが含まれる。
本明細書で使用されるマルチオレフィンなる語は、共役または非共役の一つ以上の炭素-炭素二重結合を含む化合物を示す。
【0015】
適切なマルチオレフィンの例には、イソプレン、ブタジエン、2-メチルブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリリン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、4-ブチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジブチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、及び1-ビニルシクロヘキサジエンが含まれる。
好ましいマルチオレフィンは、イソプレン及びブタジエンである。イソプレンが特に好ましい。
【0016】
反応媒体は、追加的または代替的に、少なくとも一つのイソオレフィンと共重合する、イソオレフィンでもマルチオレフィンでもないさらなるモノマーを含んでもよい。こうしたさらなるモノマーには、β-ピネン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、o-、m-、及びp-アルキルスチレン、例えば、o-、m-、及びp-メチルスチレンが含まれる。
一実施態様では、イソブテンが唯一のモノマーとして使用され、ここで、本明細書中に使用される「唯一の」なる語は、使用される全モノマーの99.9質量%以上の割合を示す。
【0017】
別の実施態様では、工程a)で使用されるモノマーは、使用される全モノマーの合計質量に基づいて、80質量%から99.5質量%、好ましくは85質量%から98.0質量%、より好ましくは85質量%から96.5質量%、さらにより好ましくは85質量%から95.0質量%の範囲の少なくとも一つのイソオレフィン、及び0.5質量%から20質量%、好ましくは2.0質量%から15質量%、より好ましくは3.5質量%から15質量%、さらによりいっそう好ましくは5.0質量%から15質量%の少なくとも一つのマルチオレフィンを含んで良い。
【0018】
別の実施態様では、モノマー混合物は、使用される全モノマーの合計質量に基づいて、90質量%から95質量%の範囲の少なくとも一つのイソオレフィン及び5質量%から10質量%の範囲のマルチオレフィンを含む。さらにより好ましくは、モノマー混合物は、使用される全モノマーの合計質量に基づいて、92質量%から94質量%の範囲の少なくとも一つのイソオレフィン及び6質量%から8質量%の範囲の少なくとも一つのマルチオレフィンモノマーを含む。イソオレフィンは好ましくはイソブテンであり、マルチオレフィンは好ましくはイソプレンである。
【0019】
少なくとも一つのマルチオレフィンが反応媒体に使用される場合、生成される最終コポリマーのマルチオレフィン含有量は、典型的には0.1モル%以上、好ましくは0.1モル%から15モル%であり、別の実施態様では0.5モル%以上、好ましくは0.5モル%から10モル%、別の実施態様では0.7モル%以上、好ましくは0.7から8.5モル%、特に0.8から1.5、あるいは、特にイソブテン及びイソプレンが使用される場合、4.5から8.5モル%、または2.5から4.5モル%、または1.5から2.5モル%である。
別の実施態様において、本発明に従って製造されるコポリマーのマルチオレフィン含有量は、特にイソブテン及びイソプレンが使用される場合、0.1モル%以上、好ましくは0.1モル%から3モル%である。
【0020】
一実施態様では、モノマーは、特にこれらが任意の工程c)からリサイクルされる場合、工程a)における使用の前に精製される。モノマーの精製は、適切なモレキュラーシーブまたはアルミナベースの吸着材料を入れた吸着カラムを通過させることで実施して良い。重合反応への干渉を最小限に抑えるために、反応に対して毒物として作用する水並びにアルコール及び他の有機酸素化物などの物質の合計濃度は、好ましくは、質量基準で約10ppm以下に低減される。
【0021】
有機希釈剤
有機希釈剤なる語は、反応条件下で液体である希釈性または溶解性の有機化学物質を包含する。開始剤系のモノマーまたは成分と感知されるほどまたは全く反応しない、任意の適切な有機希釈剤を使用してよい。
しかしながら、当業者は、希釈剤と開始剤系のモノマーまたは成分との間の潜在的な相互作用について認識している。
さらに、有機希釈剤なる語には、少なくとも二つの希釈剤の混合物が含まれる。
有機希釈剤の例には、ハイドロクロロカーボン、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、または塩化エチルが含まれる。
【0022】
有機希釈剤のさらなる例には、式:CxHyFzで表されるハイドロフルオロカーボンが含まれ、式中、xは1から40、あるいは1から30、あるいは1から20、あるいは1から10、あるいは1から6、あるいは2から20、あるいは3から10、あるいは3から6、最も好ましくは1から3の整数であり、y及びzは整数であり、少なくとも1の値を有する。
【0023】
一実施態様では、前記ハイドロフルオロカーボンは、飽和ハイドロフルオロカーボン、例えば、フルオロメタン;ジフルオロメタン;トリフルオロメタン;フルオロエタン;1,1-ジフルオロエタン;1,2-ジフルオロエタン;1,1,1-トリフルオロエタン;1,1,2-トリフルオロエタン;1,1,2,2-テトラフルオロエタン;1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン;1-フルオロプロパン;2-フルオロプロパン;1,1-ジフルオロプロパン;1,2-ジフルオロプロパン;1,3-ジフルオロプロパン;2,2-ジフルオロプロパン;1,1,1-トリフルオロプロパン;1,1,2-トリフルオロプロパン;1,1,3-トリフルオロプロパン;1,2,2-トリフルオロプロパン;1,2,3-トリフルオロプロパン;1,1,1,2-テトラフルオロプロパン;1,1,1,3-テトラフルオロプロパン;1,1,2,2-テトラフルオロプロパン;1,1,2,3-テトラフルオロプロパン;1,1,3,3-テトラフルオロプロパン;1,2,2,3-テトラフルオロプロパン;1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン;1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン;1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン;1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン;1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロパン;1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン;1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン;1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン;1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン;1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン;1-フルオロブタン;2-フルオロブタン;1,1-ジフルオロブタン;1,2-ジフルオロブタン;1,3-ジフルオロブタン;1,4-ジフルオロブタン;2,2-ジフルオロブタン;2,3-ジフルオロブタン;1,1,1-トリフルオロブタン;1,1,2-トリフルオロブタン;1,1,3-トリフルオロブタン;1,1,4-トリフルオロブタン;1,2,2-トリフルオロブタン;1,2,3-トリフルオロブタン;1,3,3-トリフルオロブタン;2,2,3-トリフルオロブタン;1,1,1,2-テトラフルオロブタン;1,1,1,3-テトラフルオロブタン;1,1,1,4-テトラフルオロブタン;1,1,2,2-テトラフルオロブタン;1,1,2,3-テトラフルオロブタン;1,1,2,4-テトラフルオロブタン;1,1,3,3-テトラフルオロブタン;1,1,3,4-テトラフルオロブタン;1,1,4,4-テトラフルオロブタン;1,2,2,3-テトラフルオロブタン;1,2,2,4-テトラフルオロブタン;1,2,3,3-テトラフルオロブタン;1,2,3,4-テトラフルオロブタン;2,2,3,3-テトラフルオロブタン;1,1,1,2,2-ペンタフルオロブタン;1,1,1,2,3-ペンタフルオロブタン;1,1,1,2,4-ペンタフルオロブタン;1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン;1,1,1,3,4-ペンタフルオロブタン;1,1,1,4,4-ペンタフルオロブタン;1,1,2,2,3-ペンタフルオロブタン;1,1,2,2,4-ペンタフルオロブタン;1,1,2,3,3-ペンタフルオロブタン;1,1,2,4,4-ペンタフルオロブタン;1,1,3,3,4-ペンタフルオロブタン;1,2,2,3,3-ペンタフルオロブタン;1,2,2,3,4-ペンタフルオロブタン;1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,2,2,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,2,3,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,2,4,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,3,3,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,3,4,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロブタン;1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,2,2,4,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,2,3,3,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,2,3,4,4-ヘキサフルオロブタン;1,2,2,3,3,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,2,4,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,3,3,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,3,4,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,3,3,4,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,3,4-オクタフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,4,4-オクタフルオロブタン;1,1,1,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン;1,1,1,2,2,4,4,4-オクタフルオロブタン;1,1,1,2,3,4,4,4-オクタフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,4,4,4-ノナフルオロブタン;1-フルオロ-2-メチルプロパン;1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン;1,3-ジフルオロ-2-メチルプロパン;1,1,1-トリフルオロ-2-メチルプロパン;1,1,3-トリフルオロ-2-メチルプロパン;1,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)プロパン;1,1,1,3-テトラフルオロ-2-メチルプロパン;1,1,3,3-テトラフルオロ-2-メチルプロパン;1,1,3-トリフルオロ-2-(フルオロメチル)プロパン;1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-2-メチルプロパン;1,1,3,3-テトラフルオロ-2-(フルオロメチル)プロパン;1,1,1,3-テトラフルオロ-2-(フルオロメチル)プロパン;フルオロシクロブタン;1,1-ジフルオロシクロブタン;1,2-ジフルオロシクロブタン;1,3-ジフルオロシクロブタン;1,1,2-トリフルオロシクロブタン;1,1,3-トリフルオロシクロブタン;1,2,3-トリフルオロシクロブタン;1,1,2,2-テトラフルオロシクロブタン;1,1,3,3-テトラフルオロシクロブタン;1,1,2,2,3-ペンタフルオロシクロブタン;1,1,2,3,3-ペンタフルオロシクロブタン;1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロシクロブタン;1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタン;1,1,2,3,3,4-ヘキサフルオロシクロブタン;1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロブタンからなる群より選択される。
【0024】
特に好ましいHFCには、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、フルオロメタン、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタンが含まれる。
【0025】
さらなる一実施態様では、ハイドロフルオロカーボンは、不飽和ハイドロフルオロカーボン、例えば、フッ化ビニル;1,2-ジフルオロエテン;1,1,2-トリフルオロエテン;1-フルオロプロペン、1,1-ジフルオロプロペン;1,2-ジフルオロプロペン;1,3-ジフルオロプロペン;2,3-ジフルオロプロペン;3,3-ジフルオロプロペン;1,1,2-トリフルオロプロペン;1,1,3-トリフルオロプロペン;1,2,3-トリフルオロプロペン;1,3,3-トリフルオロプロペン;2,3,3-トリフルオロプロペン;3,3,3-トリフルオロプロペン;2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン;1-フルオロ-1-ブテン;2-フルオロ-1-ブテン;3-フルオロ-1-ブテン;4-フルオロ-1-ブテン;1,1-ジフルオロ-1-ブテン;1,2-ジフルオロ-1-ブテン;1,3-ジフルオロプロペン;1,4-ジフルオロ-1-ブテン;2,3-ジフルオロ-1-ブテン;2,4-ジフルオロ-1-ブテン;3,3-ジフルオロ-1-ブテン;3,4-ジフルオロ-1-ブテン;4,4-ジフルオロ-1-ブテン;1,1,2-トリフルオロ-1-ブテン;1,1,3-トリフルオロ-1-ブテン;1,1,4-トリフルオロ-1-ブテン;1,2,3-トリフルオロ-1-ブテン;1,2,4-トリフルオロ-1-ブテン;1,3,3-トリフルオロ-1-ブテン;1,3,4-トリフルオロ-1-ブテン;1,4,4-トリフルオロ-1-ブテン;2,3,3-トリフルオロ-1-ブテン;2,3,4-トリフルオロ-1-ブテン;2,4,4-トリフルオロ-1-ブテン;3,3,4-トリフルオロ-1-ブテン;3,4,4-トリフルオロ-1-ブテン;4,4,4-トリフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3-テトラフルオロ-1-ブテン;1,1,2,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,1,3,3-テトラフルオロ-1-ブテン;1,1,3,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,1,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,2,3,3-テトラフルオロ-1-ブテン;1,2,3,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,2,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,3,3,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,3,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,4,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;2,3,3,4-テトラフルオロ-1-ブテン;2,3,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;2,4,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;3,3,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;3,4,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,2,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,3,3,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,2,3,3,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,2,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,2,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;2,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;2,3,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;3,3,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,3,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン;1,1,2,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン;1,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン;1,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン;2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,3,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン;1,1,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン;1,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン;1-フルオロ-2-ブテン;2-フルオロ-2-ブテン;1,1-ジフルオロ-2-ブテン;1,2-ジフルオロ-2-ブテン;1,3-ジフルオロ-2-ブテン;1,4-ジフルオロ-2-ブテン;2,3-ジフルロ-2-ブテン;1,1,1-トリフルオロ-2-ブテン;1,1,2-トリフルオロ-2-ブテン;1,1,3-トリフルオロ-2-ブテン;1,1,4-トリフルオロ-2-ブテン;1,2,3-トリフルオロ-2-ブテン;1,2,4-トリフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2-テトラフルオロ-2-ブテン;1,1,1,3-テトラフルオロ-2-ブテン;1,1,1,4-テトラフルオロ-2-ブテン;1,1,2,3-テトラフルオロ-2-ブテン;1,1,2,4-テトラフルオロ-2-ブテン;1,2,3,4-テトラフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,3-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,4-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,1,3,4-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,1,4,4-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,2,3,4-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,2,4,4-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,3,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン;1,1,1,3,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン;1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン;1,1,2,3,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,3,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン;及びこれらの混合物からなる群から選択される。
有機希釈剤のさらなる例には、ハイドロクロロフルオロカーボンが含まれる。
【0026】
有機希釈剤のさらなる例には、炭化水素、好ましくはアルカンが含まれ、これはさらに好ましい実施態様では、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、メチルシクロペンタン、イソヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2-メチルブタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2 -メチルヘプタン、3-エチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン、オクタン、ヘプタン、ブタン、ノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、1,1-ジメチルシクロペンタン、シス-1,2-ジメチルシクロペンタン、トランス-1,2-ジメチルシクロペンタン、トランス-1,3-ジメチル-シクロペンタン、エチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンからなる群から選択されるものである。
【0027】
炭化水素希釈剤のさらなる例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、オルトキシレン、パラキシレン、及びメタキシレンが含まれる。
【0028】
適切な有機希釈剤は、ハイドロクロロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、及び炭化水素の群から選択される少なくとも2つの化合物の混合物をさらに含む。特定の組み合わせには、ハイドロクロロカーボンとハイドロフルオロカーボンとの混合物、例えば、塩化メチルと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、特に、40から60体積%の塩化メチルと40から60体積%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物であって、前記二つの希釈剤は合計で全希釈剤の90から100体積%、好ましくは95から100体積%となり、100体積%までの潜在的な残量には、別のハロゲン化炭化水素;または塩化メチルと少なくとも一つのアルカンとの混合物、または複数のアルカンの混合物、例えば、1013hPaの圧力で-5℃から100℃、別の実施態様では35℃から85℃の沸点を有するアルカンを少なくとも90質量%、好ましくは95質量%含む混合物が含まれる。別の実施態様では、少なくとも99.9質量%、好ましくは100質量%のアルカンが、1013hPaの圧力で100℃以下、好ましくは35℃から100℃の範囲、さらに好ましくは90℃以下、さらにより好ましくは35から90℃の範囲の沸点を有する
【0029】
工程b)を目的とする重合化の性質に応じて、有機希釈剤は、スラリー重合または溶液重合が可能となるように選択される。
【0030】
開始剤系
反応媒体内のモノマーは、開始剤系の存在下で重合されて、イソオレフィンポリマー、有機希釈剤、及び任意の残留モノマーを含む製品媒体を形成する。
開始剤系は、
●少なくとも一つのホウ素またはアルミニウム化合物と
●少なくとも1つの開始剤と
を反応させることによって調製される。
適切な1つのホウ素またはアルミニウム化合物は、式MX3によって表されるものであり、ここで、Mはホウ素またはアルミニウムであり、Xはハロゲンである。こうした化合物の例には、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、及び三臭化ホウ素が含まれ、三塩化アルミニウムが好ましい。
【0031】
さらに適切なホウ素またはアルミニウム化合物は、式MR(m)X(3-m)で表されるものであり、Mはホウ素またはアルミニウム、Xはハロゲン、RはC1-C12アルキル及びC7-C14アルキルアリール基からなる群より選択される一価の炭化水素基であり;mは1または2である。「アルキルアリール」なる語は、脂肪族構造と芳香族構造との両方を含む基を意味し、前記基は脂肪族の位置にある。
こうした化合物の例には、二臭化メチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二臭化ブチルアルミニウム、二塩化ブチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジブチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、二塩化イソブチルアルミニウム、及び塩化ジイソブチルアルミニウムが含まれる。
【0032】
好ましいのは、塩化ジイソブチルアルミニウム(iBu2AlClまたはiBuAC)、イソブチルアルミニウムセスキクロライド(iBu1.5AlCl1.5またはiBuSC)、二塩化イソブチルアルミニウム(iBuAlCl2またはiBuADC)、塩化ジエチルアルミニウム(Et2AlClまたはDEAC)、エチルアルミニウムセスキクロライド(Et1.5AlCl1.5またはEASC)、二塩化エチルアルミニウム(EtAlCl2またはEADC)、臭化ジエチルアルミニウム(Et2AlBrまたはDEAB)、エチルアルミニウムセスキブロマイド(Et1.5AlBr1.5またはEASB)、及び二臭化エチルアルミニウム(EtAlBr2またはEADB)である。
特に好ましいアルミニウム化合物は、エチルアルミニウムセスキクロライド(Et1.5AlCl1.5またはEASC)である。
【0033】
少なくとも1つの開始剤は、選択されたホウ素またはアルミニウム化合物と反応して、モノマーと反応することにより生長ポリマー鎖を形成する錯体を生成することのできるものから選択される。
好ましい実施態様では、こうした開始剤は、水、アルコール、フェノール、ハロゲン化水素、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、スルホン酸、スルホン酸ハロゲン化物、アルキルハロゲン化物、アルキルアリールハロゲン化物、及び高分子ハロゲン化物からなる群より選択される。
【0034】
好ましいアルコールには、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、2-メチルプロパン-2-オール、シクロヘキサノール、及びベンジルアルコールが含まれる。
好ましいフェノールには、フェノール;2-メチルフェノール;2,6-ジメチルフェノール;p-クロロフェノール;p-フルオロフェノール;2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノール;及び2-ヒドロキシナフタレンが含まれる。
好ましいハロゲン化水素には、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素が含まれる。特に好ましいハロゲン化水素は、塩化水素である。
好ましいカルボン酸には、脂肪族と芳香族の両方のカルボン酸が含まれる。本発明において有用なカルボン酸の例には、酢酸、プロパン酸、ブタン酸;ケイ皮酸、安息香酸、1-クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、p-クロロ安息香酸、及びp-フルオロ安息香酸が含まれる。特に好ましいカルボン酸には、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、及びp-フルオロ安息香酸が含まれる。
【0035】
本発明において有用なカルボン酸ハロゲン化物は、酸のOHがハロゲン化物に置換されたカルボン酸と構造が類似している。ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物であってもよく、塩化物が好ましい。
本発明において有用なカルボン酸ハロゲン化物には、塩化アセチル、臭化アセチル、塩化シンナミル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、塩化トリクロロアセチル、塩化トリフルオロアセチル、塩化トリフルオロアセチル、及び塩化p-フルオロベンゾイルが含まれる。特に好ましい酸ハロゲン化物には、塩化アセチル、臭化アセチル、塩化トリクロロアセチル、塩化トリフルオロアセチル、及び塩化p-フルオロベンゾイルが含まれる。
カルボン酸エステルには、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸アリル、酢酸ベンジル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸アリル、安息香酸ブチリデン、安息香酸ベンジル、安息香酸フェニルエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、及びフタル酸ジオクチルが含まれる。
【0036】
カルボン酸アミドには、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、及びN,N-ジエチルアセトアミドが含まれる。好ましい第三級アルキル及びアラルキル開始剤には、下式で表される第三級化合物が含まれ:ここで、Xはハロゲン、擬ハロゲン、エーテル、またはエステル、あるいはこれらの混合物、好ましくはハロゲン、好ましくは塩化物であり、R1、R2、及びR3は、独立して任意の直鎖、環状、または分枝状鎖アルキル、アリール、またはアリールアルキルであって、好ましくは1から15の炭素原子、より好ましくは1から8の炭素原子を含む。nは、開始剤部位の数であり、1以上、好ましくは1から30の数であり、より好ましくはnは1から6の数である。アリールアルキルは、置換されていても未置換でもよい。本発明及びその特許請求の範囲において、アリールアルキルとは、芳香族構造と脂肪族との両方の構造を含む化合物を意味すると定義される。開始剤の好ましい例には、2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-ブロモ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-クロロ-2-メチルプロパン;2-ブロモ-2-メチルプロパン;2-クロロ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;2-ブロモ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;1-クロロ-1-メチルエチルベンゼン;1-クロロアダマンタン;1-クロロエチルベンゼン;1,4-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼン;5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼン;2-アセトキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-ベンゾイルオキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-アセトキシ-2-メチルプロパン;2-ベンゾイルオキシ-2-メチルプロパン;2-アセトキシ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;2-ベンゾイル-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;1-アセトキシ-1-メチルエチルベンゼン;1-アセトキシアダマンタン;1-ベンゾイルオキシエチルベンゼン;1,4-ビス(1-アセトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン;5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-アセトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン;2-メトキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-イソプロポキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-メトキシ-2-メチルプロパン;2-ベンジルオキシ-2-メチルプロパン;2-メトキシ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;2-イソプロポキシ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;1-メトキシ-1-メチルエチルベンゼン;1-メトキシアダマンタン;1-メトキシエチルベンゼン;1,4-ビス(1-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン;5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、及び1,3,5-トリス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼンが含まれる。
【0037】
本発明において開始剤として有用なスルホン酸には、脂肪族スルホン酸と芳香族スルホン酸の両方が含まれる。好ましいスルホン酸の例には、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸が含まれる。
本発明において有用なスルホン酸ハロゲン化物は、親酸のOHをハライドが置換しているスルホン酸と構造が類似している。ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物であってもよく、塩化物が好ましい。親スルホン酸からのスルホン酸ハロゲン化物の調製は従来技術で知られており、当業者はこれらの手順に精通しているはずである。本発明に有用な好ましいスルホン酸ハロゲン化物には、塩化メタンスルホニル、臭化メタンスルホニル、塩化トリクロロメタンスルホニル、塩化トリフルオロメタンスルホニル、及び塩化p-トルエンスルホニルが含まれる。
【0038】
本発明において有用なハロゲン化アルキルには、2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン、及び2-クロロ-2-メチルプロパンが含まれる。
本発明において有用なハロゲン化アルキルアリールには、1-クロロ-1-メチルエチルベンゼンが含まれる。
本発明において有用なポリマーハロゲン化物には、ポリマーの鎖末端またはポリマーの骨格に沿ってもしくは骨格内に位置する、少なくとも2つのハロゲン化第三級炭素を有するものが含まれる。
好ましい開始剤は、水、メタノール、エタノール、塩化水素、臭化水素、及び2-クロロ-2-メチルプロパンからなる群から選択され、ここで、水、メタノール、及び塩化水素がより好ましく、水がさらにより好ましい。
【0039】
使用されるホウ素またはアルミニウム化合物のホウ素及びアルミニウム原子の合計に対する開始剤の好ましいモル比は、一般的に0.005から1.900、好ましくは0.500から1.500、より好ましくは0.800から1.1.200、さらにより好ましくは0.900から1.050である。
少なくとも一つのホウ素またはアルミニウム化合物及び少なくとも一つの開始剤を含む開始剤系は、好ましくは、反応混合物中に、使用されるモノマーの質量に基づいて0.002から5.0質量%、好ましくは0.1から0.5質量%の量で存在する。
【0040】
別の実施態様において、特に三塩化アルミニウムが使用される場合には、ホウ素またはアルミニウム化合物、特に三塩化アルミニウムに対して使用されるモノマーの質量比は、500から20000、好ましくは1500から10000の範囲内である。
特に好ましい開始剤系では、ホウ素またはアルミニウム化合物は、好ましくは等モル量の塩化ジエチルアルミニウムと二塩化エチルアルミニウムを混合することにより生成されるエチルアルミニウムセスキクロライドであり、開始剤は水である。
一実施態様では、ハロゲン化アルミニウム、特に三塩化アルミニウムがホウ素またはアルミニウム化合物として使用され、水及び/またはアルコール、好ましくは水が開始剤として使用される。
【0041】
本発明によれば、開始剤系は、少なくとも1つのホウ素またはアルミニウム化合物と少なくとも1つの開始剤とを連続的に接触させることにより形成される。
これは、例えば、ホウ素またはアルミニウム化合物のそれぞれの溶液を、選択された開始剤の溶液またはそれぞれの開始剤からなるかこれを含むガス流と連続的に接触させることによって実施してよい。
【0042】
再現性を確保するために、既知の濃度のホウ素またはアルミニウム化合物の溶液を、選択された開始剤の既知の濃度の溶液と、または開始剤の既知の分圧でそれぞれの開始剤からなるか開始剤を含むガス流と、連続的に接触させることが好ましい。
溶液は、好ましくは上記の有機希釈剤を使用して調製され、ここで、炭化水素、特に上記のアルカンが好ましい。当業者であれば、どの有機希釈剤がホウ素またはアルミニウム化合物または開始剤の溶液を調製するのに適切かを認識している。
【0043】
開始剤として水が使用される場合、これは、例えば、n-ヘキサンまたはヘキサンの混合物中の溶液として、例えば、質量にして100ppmの濃度で使用可能である。
ガス流が好ましい場合、開始剤は、重合条件下で不活性または実質的に不活性であるキャリアガスの流れから蒸発させ、開始剤で富化することができる。重合条件下で不活性または実質的に不活性である適切なキャリアの例は、例えば、窒素、アルゴン、及び別の希ガスである。選択された開始剤は、温度とその沸点に応じて、広範囲の分圧でガス流中に存在してよく、ここで、当業者であれば何らの困難なく理想的な条件を決定する。
【0044】
開始剤系の連続調製は、かかる目的のために当業者に知られている任意の適切な容器で行うことができる(以下の重合条件と題する章も参照のこと)。
一実施態様において開始剤として水が使用される場合、キャリアガスを、液体の水と、所与の温度にてガス流の水飽和が少なくとも50%、好ましくは80%を達成するために十分な長さで接触させる。例えば、20℃における水の分圧は、23.4hPaである。
【0045】
一般的に反応性に影響を与える別の特徴は、滞留時間である。滞留時間は、アルミニウムまたはホウ素化合物を開始剤と連続的に接触させて開始剤系を生成させる工程と、前記開始剤系を反応媒体内でイソオレフィンである少なくとも1つのモノマーと接触させる工程との間の時間を示す。
一実施態様において、開始剤系は、工程a)で反応媒体を提供すると同時に連続的に生成される。滞留時間は0秒である。これは、例えば、適切な重合反応器に、有機希釈剤及びモノマーの流れ、アルミニウム及びホウ素化合物の溶液の流れ、及び開始剤の溶液の流れ、または開始剤を含むかまたは開始剤からなるガス流を、連続的かつ同時に供給することにより達成される。
【0046】
別の実施態様では、開始剤系は、工程a)において反応媒体が提供される前に連続的に生成される。次いで、滞留時間は、>0秒、好ましくは1秒から24時間、より好ましくは5秒から30分、さらにより好ましくは5秒から20分である。
この実施態様は、例えば、適切な重合反応器に、有機希釈剤とモノマーの流れ、及び上記の有機希釈剤中の開始剤系の流れを供給することにより機能する。この実施態様では、開始剤系が連続的に提供されて、工程a)における反応媒体が形成される。
本発明によって調製される開始剤系もまた、有機希釈剤との組み合わせであるか否かによらず、本発明に包含される。
【0047】
反応媒体
モノマーは、反応媒体中に、0.01質量%から80質量%、好ましくは0.1質量%から65質量%、より好ましくは10.0質量%から65.0質量%、さらにより好ましくは25.0質量%から65.0質量%、または別の実施態様では10.0質量%から40.0質量%の量で存在してもよい。 有機希釈剤は、反応媒体中に、0.01質量%から80質量%、好ましくは0.1質量%から65質量%、より好ましくは10.0質量%から65.0質量%、さらにより好ましくは25.0質量%から65.0質量%、または別の実施態様では10.0質量%から40.0質量%の量で存在してもよい。
【0048】
有機希釈剤、モノマー、及び開始剤系の量は、これらが工程b)で使用される反応媒体の少なくとも95質量%、好ましくは97から100質量%、より好ましくは99から100質量%を構成するように選択される。
100%までの残量は、存在する場合には、別の有機もしくは無機化合物、好ましくは重合反応に実質的に影響を及ぼさないものを含んでよい。
【0049】
重合条件
一実施態様では、使用される有機希釈剤及びモノマーは実質的に水を含まない。本明細書で使用する場合、実質的に水を含まないとは、反応媒体の総重量に基づいて30ppm未満、好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満、さらにより好ましくは5ppm未満、最も好ましくは1ppmと定義される。
当業者は、開始剤系が、例えば開始剤として機能するなどの目的で添加されるのではない付加的な量の水によって影響されないことを確実にするためには、希釈剤及びモノマー中の水分含有量が低くなければならないことを認識している。
【0050】
工程a)及びb)はそれぞれ、連続プロセスまたはバッチプロセスで実施することができ、連続操作が好ましい。典型的には、工程a)における反応媒体の供給及びb)における重合の開始は、同時に実現される。
本発明の一実施態様では、工程b)による重合は、重合反応器を使用して達成される。適切な反応器は、当業者に既知のものであり、フロースルー重合反応器、栓流(plug flow)反応器、撹拌槽反応器、移動ベルトまたはドラム反応器、ジェットまたはノズル反応器、管型反応器、及び自動冷却・沸騰プール型反応器が含まれる。特定の適切な例は、国際公開第2011/000922号公報及び国際公開第2012/089823号公報に開示されている。
【0051】
有機希釈剤の選択に応じて、工程b)による重合は、スラリー重合または溶液重合のいずれかとして実施される。
スラリー重合においては、モノマー、開始剤系は全て典型的には希釈剤または希釈剤混合物に可溶であり、すなわち単一相を構成する。一方、コポリマーは、生成時に有機希釈剤から沈殿する。望ましくは、ポリマーのTg抑制が僅かであるか皆無であること、及び/または有機希釈剤物質の取り込みが僅かであるか皆無であることによって示される、ポリマーの「膨潤」が低減されるか皆無である。
【0052】
溶液重合においては、モノマー、開始剤系は全て典型的には希釈剤または希釈剤混合物に可溶であり、すなわち、重合の間に生成するコポリマーと同様に単一相を構成する。
上述の有機希釈剤中の所望のポリマーの溶解度並びにその膨張挙動は、当業者には周知である。
スラリー重合と対比した溶液重合の長所及び短所は、文献中において徹底的に議論されており、したがって、当業者にも既知である。
【0053】
工程b)は、好ましくは溶解プロセスとして実施される。
一実施態様では、工程b)は、-100℃から-60℃の範囲、好ましくは-96℃から-80℃の範囲、さらにより好ましくは-95℃から-85℃の範囲の温度で実施される。
工程b)における反応圧は、典型的には500から100,000hP、好ましくは1100から20,000hPa、より好ましくは1300から5,000hPaである。
工程b)による重合がスラリープロセスとして実施される場合、工程b)におけるスラリーの固形分含有量は、好ましくは1から45質量%、より好ましくは3から40質量%、さらにより好ましくは、15から40質量%の範囲内である。
【0054】
本明細書で使用される「固形分含有量」または「固形分濃度」なる語は、イソオレフィンポリマー、有機希釈剤、及び任意に工程b)に従って得られる残留モノマーを含む製品媒体中のイソオレフィンポリマーの質量パーセントを指す。
一実施態様では、工程b)の反応時間は2分間から2時間、好ましくは10分間から1時間、より好ましくは20から45分間である。
【0055】
工程a)及びb)によるプロセスは、バッチ式でまたは連続的に実施することができる。連続反応が行われる場合、上記の反応時間は重合の平均滞留時間を表す。
一実施態様において、反応は、クエンチ剤、例えば、1質量%の水酸化ナトリウム水溶液、メタノール、またはエタノールによって停止される。
別の実施態様において、反応は工程c)における水性媒体との接触によってクエンチされ、これは、一実施態様においては、20℃及び1013hPaで測定して5から10、好ましくは6から9、より好ましくは7から9のpH値を有し得る。
【0056】
所望の場合のpH調整は、好ましくは多価金属イオンを含まない酸またはアルカリ化合物の添加により実施して良い。より高いpH値へのpH調整は、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの添加によって実施される。
特に溶液重合の場合、転化は、典型的には、最初に使用されたモノマーの5質量%から25質量%、好ましくは10質量%から20質量%のモノマー消費後に停止される。
モノマー転化は、重合中のオンライン粘度測定または分光モニタリングにより追跡できる。
【0057】
任意の工程c)の一実施態様において、特に工程b)がスラリープロセスとして実施された場合、工程b)で得られた製品媒体を水性媒体と接触させ、有機希釈剤を少なくとも部分的に、媒体中に存在する程度まで除去し、残留モノマー及び二酸化炭素を少なくとも部分的に除去して、しばしばゴム粉末と呼称される粒子の形のイソオレフィンポリマーを含む水性スラリーを得る。前記接触は、この目的に適した任意の容器で実施でき、バッチ式または連続的に実施でき、ここでは連続プロセスが好ましい。工業的には、こうした接触は、典型的には、蒸気ストリップ、フラッシュドラム、または液相と蒸気の分離について既知である任意の別の容器で実施される。
【0058】
有機希釈剤及び任意のモノマーの除去には、残留モノマー及び有機希釈剤を所望の程度まで引き続きまたは一緒に除去するために別のタイプの蒸留を利用してもよい。様々な沸点の液体を分離するための蒸留プロセスは、当技術分野で周知であり、例えば、Encyclopedia of Chemical Technology, Kirk Othmer, 4th Edition, pp. 8-311に記載されており、これは参照により本明細書中に準用される。一般に、未反応のモノマー及び希釈剤は、別々にまたは一緒に、本発明による方法の工程a)に再利用してよい。
【0059】
任意の工程c)及び一実施態様におけるスチームストリッパまたはフラッシュドラムの圧力は、工程b)で使用される有機希釈剤及びモノマーに依存する。任意の工程c)の温度は、有機希釈剤を少なくとも部分的に、残存モノマーがまだ存在する程度に除去するために十分であるように選択される。
工程c)で除去された有機希釈剤及び/またはモノマーは、工程a)及び/またはb)に再循環されてもよい。
【0060】
一実施態様では、温度は、10から100℃、好ましくは50から100℃、より好ましくは60から95℃、さらにより好ましくは75から95℃である。
工程b)が水との接触による溶液重合として行われた場合、有機希釈剤が蒸発して、イソオレフィンポリマーが水性スラリー中に懸濁した不連続の粒子を形成する。
【0061】
さらなる任意の工程d)では、工程c)に従って得られた水性スラリーに含まれるイソオレフィンポリマーを分離して、イソオレフィンポリマーを得ることができる。分離は、浮上分離、遠心分離、ろ過、脱水押出機での脱水、または流体から固体を分離するために当業者に知られる任意の別の手段によって達成され得る。
さらなる任意の工程e)では、工程d)に従って得られたイソオレフィンポリマー粒子を、揮発物の残留含有量が好ましくは7,000ppm以下、好ましくは5,000ppm以下、さらにより好ましくは4,000ppm以下となるまで、別の実施態様では2,000ppm以下、好ましくは1,000ppm以下となるまで乾燥させる。
【0062】
本明細書で使用する揮発物なる語は、標準圧で沸点が250℃未満、好ましくは200℃以下の化合物を指し、水並びに残りの有機希釈剤を含む。
乾燥は、当業者に既知の従来の手段を利用して実施することができ、これには、加熱メッシュコンベアベルト上または押出機内での乾燥が含まれる。
本発明による方法が、連続的で、しかるに高度に再現性である開始剤系調製によって、独自のプロセス制御を可能にすることが見出された。これは特に、開始剤系の調製条件の意図的な変動によって得られる、ムーニー粘度、分子量、ゲル含有量などのポリマー製品パラメーターの高い変動性に反映される。
【0063】
実験部分
(実施例)
実験的検討を、壁掻き取りアンカー攪拌機を備えた冷却された2容器カスケード(Buchi、VRは容積2L)で行い、すべての実験において10から28分の重合滞留時間を使用した。新たなモノマー(イソブテン99.91%、Lyondell)及びヘキサン(n-ヘキサン95%及び技術等級)を、3Aモレキュラーシーブ及びイソプレンの阻害剤除去剤を充填したカラムを使用して乾燥させた。供給物は、反応器に入る前に冷却された。混合供給物のモノマー含有量は約60質量%であった。ポリマー含有量は15%に制限され、約25から30%のモノマ-モノマー転化をもたらした。重合は、メタノールを重合停止剤(short stopper)として添加することにより停止させた。
【0064】
【0065】
実施例1、5から8:水をヘキサンに添加し、含有量をカール・フィッシャー滴定により決定した。
実施例2から4:気体HClをヘキサンに加え、含有量を元素分析により決定した。
実施例9:ヘキサン中20質量%のEADC90g及びヘキサン中17質量%のDEAC100gを、20℃及び周囲圧にて1,810gのヘキサンで希釈した。EASC(A1に対して0.2M)を含む生成溶液を、20g/hの速度で連続的に攪拌容器に注入し、ここに含湿窒素ガス流(すなわち、23hPaの水分圧、しかるに20℃で約95%の相対湿度を有する)を1.861/hの速度で(または1hあたり1.90mmolの水を)通過させる。これにより、アルミニウム化合物(ここではEASC)は開始剤(ここでは水)と接触する。
次いで、開始剤系を含む溶液をオーバーフローによって分離ボトルに移し、そこで不溶性残留物を除去した。次に、溶液を反応器に注入した。
【0066】
【0067】
記:活性化のために含湿N2を使用した連続開始剤-構成により、開始剤1gあたり1,000から4,500gのポリマーとの非常に高い活性が示された。