(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】炭素フォーム、複合体及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20221014BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20221014BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20221014BHJP
C04B 35/52 20060101ALI20221014BHJP
C04B 35/80 20060101ALI20221014BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20221014BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20221014BHJP
H01M 8/1004 20160101ALI20221014BHJP
H01M 8/18 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
B32B5/18
C01B32/05
C04B35/52
C04B35/80 600
C25B9/23
H01M4/96 B
H01M4/96 M
H01M8/1004
H01M8/18
(21)【出願番号】P 2020539637
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2019034194
(87)【国際公開番号】W WO2020045645
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2018163652
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】金田 由香
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦仁
(72)【発明者】
【氏名】山下 順也
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/096895(WO,A1)
【文献】特開2006-097221(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103884551(CN,A)
【文献】特開平10-312815(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069570(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110885069(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/020-35/84,38/00-38/10
C01B 32/05
H01M 4/96,8/1004,8/18
C25B 9/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と第2の表面を持つイオン交換膜と、
炭素繊維である線状部と、該線状部を結合する結合部とからなる骨格を有し、任意の20箇所の中の90%以上において、前記線状部の太さが、平均太さの±20%以内に含まれる炭素フォームと、を備え、
2片以上の前記炭素フォームの少なくとも一部が、前記イオン交換膜における前記第1の表面及び前記第2の表面の少なくとも一
つの表面に接着されて積層化され
、
前記炭素フォームは、150cm
2
以上の主面を有するシート状であり、
前記結合部の数に対する線状部の数の割合は、1.4以上1.55以下である
複合体。
【請求項2】
前記炭素繊維の平均繊維径が0.1μm以上5.0μm以下である
請求項
1に記載の複合体。
【請求項3】
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、黒鉛の割合が70at%以上80at%以下である
請求項1
又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、ヒドロキシ基を有する炭素原子の割合が5at%以上15at%以下である
請求項1から
3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項5】
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、カルボニル基を構成する炭素原子の割合が9at%以上15at%以下である
請求項1から
4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、カルボキシ基を構成する炭素原子の割合が0.1at%以上5.0at%以下である
請求項1から
5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
前記第1の表面、及び前記第2の表面に、前記炭素フォームが接着されている積層体である
請求項1から
6のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項8】
前記炭素フォームの表面の30%以上が前記イオン交換膜に接着されている積層体である
請求項1から
7のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項9】
前記2片以上の炭素フォームの中で、互いに隣接する2片の炭素フォーム間の空隙が10mm以下である
請求項1から
8のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項10】
前記2片以上の炭素フォームの中で、互いに隣接する2片の炭素フォーム間の空隙割合が5%以下である
請求項1から
9のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項11】
前記イオン交換膜の膜厚が、1μm以上100μm以下である
請求項1から
10のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項12】
前記イオン交換膜の膜厚が、平均膜厚の±20%以内である
請求項1から
11のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項13】
前記炭素フォームと前記イオン交換膜との接着面において、該イオン交換膜への該炭素フォームの埋め込み深度が5μm以下である。
請求項1から
12のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項14】
炭素表面の酸化状態が異なる2片以上の前記炭素フォームが、前記イオン交換膜の少なくとも一つの表面に接着されている
請求項1から
13のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項15】
前記イオン交換膜のTg+50℃以下の温度条件で、前記イオン交換膜と前記炭素フォームとを熱圧着させる
請求項1から
14のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年8月31日に、日本国に特許出願された特願2018-163652の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体をここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、炭素フォームに関し、特に均質な炭素フォームに関する。
【背景技術】
【0003】
炭素フォームは、例えばメラミン樹脂フォーム(発泡体)を不活性ガス雰囲気中で熱処理して炭素化することにより得られる材料であり(例えば、特許文献1参照)、その多孔性、柔軟性および電気的特性により様々な用途に使用されている。この炭素フォームは、繊維径が細いため比表面積が広いという点と、繊維のすべてが繋がった一体の構造を有する点で一般的な炭素繊維不織布と大きな違いを有する。
【0004】
例えば、特許文献2には、高温または薬剤使用といった特殊な条件下で使用されるフィルタとして炭素フォームを使用することが記載されている。また、特許文献3には、高温下でも高い断熱性を有する断熱材として炭素フォームを使用することが記載されている。さらに、特許文献4には、電気的活性および導電性の高い電極として炭素フォームを使用することが記載されている。また、特許文献5には、大きい面積で良好な特性を有する炭素フォームの製造法方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-349178号公報
【文献】特開2002-326871号公報
【文献】特開2004-217446号公報
【文献】特開平9-167621号公報
【文献】国際公開2018/096895号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、炭素フォームを上述のような電極として用いる場合には、セルをある程度の大きさで作成することが多く、良好なセル抵抗である炭素フォームが必要とされる。また、炭素フォームを大口径のフィルタとして使用する際にも、必要な阻止性能を確保しながら良好な透過性能を有する炭素フォームが必要とされる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法で炭素フォームを製造すると、炭素フォームの構造にムラが発生し、良好なセル抵抗性を有する炭素フォームや、良好な阻止性能および透過性能を有する炭素フォームを製造できないことが判明した。
【0008】
そこで本発明の目的は、全体的に均質な炭素フォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決する方途について鋭意検討した。上述のように、特許文献1の方法により、全体的に均質な炭素フォームを作製することは困難であることが判明した。
【0010】
そこで本発明者らは、全体的に均質な炭素フォームを作製する方法を確立するために、特許文献1の方法で炭素フォームを作製した際に不均質になるメカニズムについて解析し、検討した。
【0011】
炭素フォームを作製する際に、原料となる樹脂フォームを不活性ガス雰囲気下、あるいは真空中において炭素化する理由は、主に空気中に含まれる酸素と、炭素化により得られた炭素繊維とが反応して、炭素繊維が焼失するのを防ぐことにある。特許文献1の方法では、こうした炭素繊維の焼失が防止されているにもかかわらず、部分的な焼失により不均質化が生じたと考えられる。
【0012】
そこで本発明者らは、特許文献1の方法で不均質化が生じた原因を詳細に調査した。その結果、原料である樹脂フォームを加熱した際に、樹脂フォームから脱離ガスが発生し、この脱離ガスが活性ガスとして機能して、炭素繊維と反応して分解したことが、不均質化の原因であることが判明した。
【0013】
炭素フォームを作製する際には、樹脂フォームの内部で発生した分解性脱離ガスがフォーム構造外に拡散する前に炭素繊維と反応して部分的に分解し、不均質化が発生したものと考えられる。
【0014】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
第1の表面と第2の表面を持つイオン交換膜と、
炭素繊維である線状部と、該線状部を結合する結合部とからなる骨格を有し、任意の20箇所の中の90%以上において、前記線状部の太さが、平均太さの±20%以内に含まれる炭素フォームと、を備え、
2片以上の前記炭素フォームの少なくとも一部が、前記イオン交換膜における前記第1の表面及び前記第2の表面の少なくとも一つの表面に接着されて積層化され、
前記炭素フォームは、150cm
2
以上の主面を有するシート状であり、
前記結合部の数に対する線状部の数の割合は、1.4以上1.55以下である
複合体。
[2]
前記炭素繊維の平均繊維径が0.1μm以上5.0μm以下である
[1]に記載の複合体。
[3]
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、黒鉛の割合が70at%以上80at%以下である
[1]又は[2]に記載の複合体。
[4]
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、ヒドロキシ基を有する炭素原子の割合が5at%以上15at%以下である
[1]から[3]のいずれか1つに記載の複合体。
[5]
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、カルボニル基を構成する炭素原子の割合が9at%以上15at%以下である
[1]から[4]のいずれか1つに記載の複合体。
[6]
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、カルボキシ基を構成する炭素原子の割合が0.1at%以上5.0at%以下である
[1]から[5]のいずれか1つに記載の複合体。
[7]
前記第1の表面、及び前記第2の表面に、前記炭素フォームが接着されている積層体である
[1]から[6]のいずれか1つに記載の複合体。
[8]
前記炭素フォームの表面の30%以上が前記イオン交換膜に接着されている積層体である
[1]から[7]のいずれか1つに記載の複合体。
[9]
2片以上の前記炭素フォームが、前記イオン交換膜の1つの表面に接着されており、
前記2片以上の炭素フォームの中で、互いに隣接する2片の炭素フォーム間の空隙が10mm以下である
[1]から[8]のいずれか1つに記載の複合体。
[10]
2片以上の前記炭素フォームが、前記イオン交換膜の1つの表面に接着されており、
前記2片以上の炭素フォームの中で、互いに隣接する2片の炭素フォーム間の空隙割合が5%以下である
[1]から[9]のいずれか1つに記載の複合体。
[11]
前記イオン交換膜の膜厚が、1μm以上100μm以下である
[1]から[10]のいずれか1つに記載の複合体。
[12]
前記イオン交換膜の膜厚が、平均膜厚の±20%以内である
[1]から[11]のいずれか1つに記載の複合体。
[13]
前記炭素フォームと前記イオン交換膜との接着面において、該イオン交換膜への該炭素フォームの埋め込み深度が5μm以下である。
[1]から[12]のいずれか1つに記載の複合体。
[14]
炭素表面の酸化状態が異なる2片以上の前記炭素フォームが、前記イオン交換膜の少なくとも一つの表面に接着されている
[1]から[13]のいずれか1つに記載の複合体。
[15]
前記イオン交換膜のTg+50℃以下の温度条件で、前記イオン交換膜と前記炭素フォームとを熱圧着させる
[1]から[14]のいずれか1つに記載の複合体の製造方法。
【0015】
また、本発明の炭素フォームは炭素の繊維径が細く表面積が大きいこと、炭素繊維が3次元的に連続した構造をしており、電子の移動が性能に関与する電極等の用途に適している。例えばレドックスフロー電池、固体高分子膜水分解装置、直接メタノール燃料電池等の様々な用途に使用することができる。これらの電池の電極は、イオン交換膜の両面に多孔質電極を配置し、さらにその外側に集電板を配置した構造が一般的であり、電極と集電板の電気的な接触を確保することが電池性能に大きく影響する。本発明の均質な炭素フォームとイオン交換膜を接合させた膜電極複合体を用いることで、電極表面と集電板との接触を十分確保することができ、セル抵抗が低い良好な電池を形成することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
第1の表面と第2の表面を持つイオン交換膜の少なくとも1つの表面に、炭素繊維である線状部と、該線状部を結合する結合部とからなる骨格を有する炭素フォームであって、任意の20箇所の中の90%以上において、前記線状部の太さが、平均太さの±20%以内に含まれる炭素フォームの少なくとも一部が接着した積層体であり、
2片以上の前記炭素フームが前記イオン交換膜の1つの表面に接着されている
複合体。
[2]
前記炭素フォームは、150cm2以上の主面を有するシート状である
[1]に記載の複合体。
[3]
前記炭素繊維の平均繊維径が0.1μm以上5.0μm以下である
[1]又は[2]に記載の複合体。
[4]
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、黒鉛の割合が70at%以上80at%以下である
[1]から[3]のいずれか1つに記載の複合体。
[5]
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、ヒドロキシ基を有する炭素原子の割合が5at%以上15at%以下である
[1]から[4]のいずれか1つに記載の複合体。
[6]
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、カルボニル基を構成する炭素原子の割合が9at%以上15at%以下である
[1]から[5]のいずれか1つに記載の複合体。
[7]
前記炭素フォームにおいて、X線光電子分光法による表面分析によって測定される炭素原子のうち、カルボキシ基を構成する炭素原子の割合が0.1at%以上5.0at%以下である
[1]から[6]のいずれか1つに記載の複合体。
[8]
前記第1の表面、及び前記第2の表面に、前記炭素フォームが接着されている積層体である
[1]から[7]のいずれか1つに記載の複合体。
[9]
前記炭素フォームの表面の30%以上が前記イオン交換膜に接着されている積層体である
[1]から[8]のいずれか1つに記載の複合体。
[10]
2片以上の前記炭素フォームが、前記イオン交換膜の1つの表面に接着されており、
前記2片以上の炭素フォームの中で、互いに隣接する2片の炭素フォーム間の空隙が10mm以下である
[1]から[9]のいずれか1つに記載の複合体。
[11]
2片以上の前記炭素フォームが、前記イオン交換膜の1つの表面に接着されており、
前記2片以上の炭素フォームの中で、互いに隣接する2片の炭素フォーム間の空隙割合が5%以下である
[1]から[10]のいずれか1つに記載の複合体。
[12]
前記イオン交換膜の膜厚が、1μm以上100μm以下である
[1]から[11]のいずれか1つに記載の複合体。
[13]
前記イオン交換膜の膜厚が、平均膜厚の±20%以内である
[1]から[12]のいずれか1つに記載の複合体。
[14]
前記炭素フォームと前記イオン交換膜との接着面において、該イオン交換膜への該炭素フォームの埋め込み深度が5μm以下である。
[1]から[13]のいずれか1つに記載の複合体。
[15]
炭素表面の酸化状態が異なる2片以上の前記炭素フォームが、前記イオン交換膜の少なくとも一つの表面に接着されている
[1]から[14]のいずれか1つに記載の複合体。
[16]
前記イオン交換膜のTg+50℃以下の温度条件で、前記イオン交換膜と前記炭素フォームとを熱圧着させる
[1]から[15]のいずれか1つに記載の複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、全体的に均質な炭素フォームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本実施形態に含まれる炭素フォームの一例を示す図である。
【
図1B】本実施形態に含まれる炭素フォームの別の一例を示す図である。
【
図1C】本実施形態に含まれない炭素フォームの一例を示す図である。
【
図2】本実施形態による炭素フォームの製造方法のフローチャートである。
【
図3】レドックスフロー電池の一般的な構造の模式図である。
【
図4A】
図3における一般的なセル構造の第1の模式図である。
【
図4B】
図3における一般的なセル構造の第2の模式図である。
【
図5】本実施形態による膜電極複合体を示す図である。
【
図6】比較例1による炭素フォームの外観図である。
【
図7】実施例9の複合体における炭素フォームとNafion211との接合部分のSEM像である。
【
図8】実施例11の複合体における2種類の炭素フォームのサンプルの、正極側用と負極側用における配置を示す図である。
【
図9】実施例14の複合体における炭素フォームとNafion212との接合部分のSEM像である。
【
図10】実施例1による炭素フォームのSEM像である。
【
図11A】実施例3による炭素フォームの断面のSEM像である。
【
図11B】実施例3による炭素フォームの表面のSEM像である。
【
図12】実施例1の炭素フォームにより得られるX線CT解析画像である。
【
図13】
図12の画像のラインおよびノード検出を行った画像処理後の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0020】
<本発明の第一の実施形態>
(炭素フォーム)
本発明による炭素フォームは、炭素繊維からなる炭素フォームである。さらに、本発明による炭素フォームは、全体的に均質であることを特徴としている。全体的に均質とは、例えば、以下に説明するように、炭素繊維の繊維径、および単位面積当たりの重量の少なくともいずれかが、全体的に均質である。
【0021】
<繊維径の均質性>
本発明による炭素フォームでは、任意の20箇所の中の90%以上、言換えると18箇所以上において、炭素繊維の繊維径が、平均繊維径の±20%以内に含まれる。なお、平均繊維径は、当該任意の20箇所における炭素繊維の繊維径の平均値である。なお、任意の20箇所は、炭素フォームの表面上であっても内部であってもよい。例えば、任意の20箇所は、炭素フォームの端部および中央部のいずれからも選択される。
【0022】
<単位面積当たりの重量の均質性>
本発明による炭素フォームでは、炭素フォームの板面における任意の5箇所における3cm×3cmの単位面積当たりの重量が、単位面積当たりの重量の平均値の±50%以内に含まれる。なお、単位面積当たりの重量の平均値は、当該任意の5箇所における単位面積当たりの重量の平均値である。例えば、任意の5箇所は、例えば炭素フォームが矩形である構成において、四辺それぞれの端部および中央部のそれぞれから選択される。
【0023】
<結合部密度>
本発明による炭素フォームは線状部と当該線状部を結合する結合部とを有することが好ましい。さらに、炭素フォームの結合部の密度は、圧縮荷重を印加された際の復元性の観点から、15,000個/mm3以上であることが好ましく、より好ましくは20,000個/mm3以上であり、さらに好ましくは30,000個/mm3以上である。また、炭素フォームの結合部の密度は、炭素フォームの柔軟性の観点から、5,000,000個/mm3以下であることが好ましく、より好ましくは4,000,000個/mm3以下であり、さらに好ましくは3,000,000個/mm3以下である。
【0024】
本実施形態の炭素フォーム中の少なくとも一部に上記結合部の密度範囲を満たす箇所があることが好ましく、50体積%で上記の密度範囲を満たしていることがより好ましく、75体積%で上記の密度範囲を満たしていることがさらに好ましく、炭素フォームの任意の箇所で上記の密度範囲を満たしていることが特に好ましい。
【0025】
<表面積>
本実施形態における炭素フォームは、150cm2以上の表面を有してよい。炭素フォームの表面の面積は、225cm2以上であることがさらに好ましく、600cm2以上であることがいっそう好ましい。なお、本実施形態における表面積とは、炭素フォームのシート面積のことを示しており、定規等で測ることができる。
【0026】
なお、炭素フォームは、例えば、板状であってよい。板状である構成において、150cm2以上である表面は、例えば、平面であってよい。また、炭素フォームの形状は板状に限定されず、例えば、円筒状であってよい。円筒状である構成において、150cm2以上である表面は曲面であってよい。さらに、150cm2以上である表面に、エンボス加工などの表面処理が施されていてもよい。このような構成において、表面の面積は、エンボス加工によって増加した表面積は加味されず、表面の垂直方向から見た面積とする。
【0027】
<炭素繊維の繊維径>
本実施形態における炭素フォームでは、炭素繊維の平均繊維径が0.1μm以上5.0μm以下であってよい。本発明において、炭素繊維の繊維径は、結合部を繋ぐ線状部の太さである。炭素繊維の平均繊維径が0.1μm以上であれば、物理的な強度と導電性が確保され得る。平均繊維径は、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.5μm以上、いっそう好ましくは2μm以上である。また、炭素繊維の平均繊維径が5μm以下であれば、圧縮挙動時の変形性や復元性が確保され得る。平均繊維径は、好ましくは4μm以下、より好ましくは3.5μm以下である。
【0028】
<表面官能基濃度>
本実施形態における炭素フォームでは、X線光電子分光法によって測定される炭素原子のうち、黒鉛の割合が70at%以上80at%以下であってよい。当該割合が70at%以上であることにより、炭素フォームを二次電池の電極に用いる構成において長期充放電に対して安定的に抵抗が低く維持され得る。また、当該割合が80at%以下であることにより、電解液への濡れ性が良好となり得る。
【0029】
さらに、代替的または付加的に、本実施形態における炭素フォームでは、X線光電子分光法によって測定される炭素原子のうち、ヒドロキシ基を有する炭素原子の割合が5at%以上15at%以下であってよい。当該割合が5at%以上であることにより、電解液への濡れ性が良好となり得、7at%以上であることがより好ましく、10at%以上であることがさらに好ましい。また、当該割合が15at%以下であることにより、炭素フォームを二次電池の電極に用いる構成において長期充放電に対して安定的に抵抗が低く維持され得、14at%以下であることがより好ましく、13at%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
さらに、代替的または付加的に、本実施形態における炭素フォームでは、X線光電子分光法によって測定される炭素原子のうち、カルボニル基を構成する炭素原子の割合が9at%以上15at%以下であってよい。当該割合が9at%以上であることにより、電解液への濡れ性が良好となり得る。また、当該割合が15at%以下であることにより、炭素フォームを二次電池の電極に用いる構成において長期充放電に対して安定的に抵抗が低く維持され得る。
【0031】
さらに、代替的または付加的に、本実施形態における炭素フォームでは、X線光電子分光法によって測定される炭素原子のうち、カルボキシ基を構成する炭素原子の割合が0.1at%以上5at%以下であってよい。当該割合が0.1at%以上であることにより、電解液への濡れ性が良好となり得、0.5at%以上であることがより好ましく、1.0at%以上であることがさらに好ましい。また、当該割合が5at%以下であることにより、炭素フォームを二次電池の電極に用いる構成において長期充放電に対して安定的に抵抗が低く維持され得る。
【0032】
さらに、代替的または付加的に、本実施形態における炭素フォームでは、X線光電子分光法によって測定される炭素原子のうち、ヒドロキシ基を有する炭素原子、カルボニル基を構成する炭素原子、およびカルボキシ基を構成する炭素原子の割合の合計が10at%以上40at%以下であってよい。当該合計が10at%以上であることにより、電解液の濡れ性が向上し良好な電池性能が得られる。当該合計は、17at%以上であることがより好ましく、21at%以上であることがさらに好ましい。また、当該合計が40at%以下であることにより、炭素フォームの強度低下が抑制され得る。当該合計は35at%以下であることがより好ましく、30at%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
本実施形態において、均質な炭素フォームを形成した後、例えば乾燥空気等酸素を含むガスの存在下で、加熱処理することで、表面官能基濃度を調節することができる。一般的に、炭素材料の表面酸化に関しては、表面が侵食されることで酸化が進行する。本実施形態の炭素フォームは柔軟性と高い表面積を発現させるため、細い繊維径であることが肝要である。そのため、強度低下を抑制し、低抵抗な炭素フォームを得る観点から、原料樹脂フォームを均質に炭化することが重要で、さらに、酸化処理条件を充分制御し、繊維の細径化を抑制することが重要である。
【0034】
本実施形態の炭素フォームの炭素含有率は、導電性の観点から51質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。炭素含有率の上限は、特に限定されないが、100質量wt%以下であってもよく、99質量wt%以下であってもよい。
【0035】
<欠陥>
本実施形態による炭素フォームは、欠陥のない単一の部材で構成された炭素フォームであってよい。欠陥とは、上記面積が150cm2以上である表面を通り、炭素フォームを貫通する貫通孔であって、上記表面における面積が10mm2以上のものを意味している。つまり、本実施形態による炭素フォームは、上記表面における面積が10mm2以上の貫通孔を含まない炭素フォームである。なお、上記表面は、単一の面で構成された表面を意味しており、例えば多面体表面の隣接する複数の面で構成された表面は含まない。
【0036】
図1Aは、本実施形態に含まれる炭素フォームの一例を示している。
図1Bは、本実施形態に含まれる炭素フォームの別の一例を示している。
図1Cは、本実施形態に含まれない炭素フォームの一例を示している。
図1Aに示した炭素フォームは、貫通孔Hがなく、欠陥のない炭素フォームである。また、
図1Bに示した炭素フォームには、複数の貫通孔Hが存在するが、それらの面積がすべて10mm
2未満である。こうした小さな面積の貫通孔であれば、炭素フォームを電池の電極として使用した際に、炭素フォーム中を流れる電流が貫通孔を少し迂回するだけですむため、導電性への影響は小さい。そこで、
図1Aおよび
図1Bに示した炭素フォームは本実施形態に含めうる。
【0037】
これに対して、
図1Cに示した炭素フォームには、1つの貫通孔Hが存在するが、その面積が10mm
2以上である。この場合、炭素フォームを電池の電極として使用した際に、炭素フォーム中を流れる電流が貫通孔を大きく迂回することになるため、抵抗値が上昇して導電性が悪化する。そこで、
図1Cに示した炭素フォームは本実施形態に含めない。
【0038】
<結合部の数に対する線状部の数の割合>
本実施形態における炭素フォームにおいて、結合部の数に対する線状部の数の割合は、1.4以上1.55以下であってよい。割合は、換言すれば、結合部にて分岐する枝分かれの平均数である。当該割合が1.4以上であることにより、線状部が結合部で結合した三次元網目状構造を有さず、不織布のように結合していない線状部が接触している構造が本実施形態の炭素フォームから排除され得る。また、当該割合が1.55以下であることにより、線状部が帯状の様になった、例えば蜂の巣の様な壁面で覆われた多孔性構造が本実施形態の炭素フォームから排除され得る。当該割合は、好ましくは1.42以上1.53以下、より好ましくは1.44以上1.50以下である。
【0039】
<線状部の配向角度>
炭素フォームは、熱処理炉において、例えばメラミン樹脂フォームを熱処理して炭素化すると、炭素フォームの骨格を構成する炭素繊維がすべての方向に均等に広がった等方的な構造を有するものとなる。このような炭素フォームでは、線状部の互いに直交する三方向の各々に対する配向角度の平均値について、一方向に対する配向角度の平均値と、他の方向に対する配向角度の平均値の差θは通常は1°以下である。
【0040】
ただし、メラミン樹脂フォームを熱処理して炭素化する際に、炭素フォームの原料となる樹脂フォームに圧縮応力を印加すると、炭素繊維の拡がりに異方性を有する骨格構造の炭素フォームが得られる。このような炭素フォームでは、圧縮荷重が印加された際にも、炭素繊維(線状部)の破断を抑制して粉落ちが低減され得、高い復元性が実現され得る。この効果を得るために、本実施形態における炭素フォームでは、配向角度の平均値の差が3°以上であってよい。当該差は、好ましくは5°以上であり、より好ましくは8°以上である。なお、上記三方向は、例えば、x、y、z方向としてよく、炭素フォームに対して任意に設定されてよい。
【0041】
<空隙率>
本実施形態の炭素フォームの空隙率は、柔軟性の観点から50%以上であってよく、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。また、本実施形態の炭素フォームの空隙率は、表面積が向上し且つセル抵抗が低減する観点から、99%以下であってよく、98%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましい。なお、本実施形態において、空隙率は、かさ密度および真密度から求めた値である。かさ密度は、炭素フォームに含まれる空隙も含めた体積に基づいた密度である。これに対して、真密度は、炭素フォームの材料が占める体積に基づいた密度である。
【0042】
<繊維径の測定方法>
本明細書において、炭素フォームを構成する炭素繊維の繊維径は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)像を画像解析することによって求められる。具体的には、走査型電子顕微鏡を用いて10,000倍の倍率で炭素フォームが観察される。断面形状が円形であると仮定して、炭素繊維の太さが繊維径とみなされる。なお、平均繊維径は、任意の20箇所において、上述のように測定した繊維径の平均値である。
【0043】
<単位面積当たりの重量の測定方法>
本明細書において、炭素フォームの単位面積当たりの重量は、例えば面積が150cm2以上である表面積において、3cm×3cmの大きさで炭素フォームを切出し、精密天秤を用いて当該炭素フォームの重量を測定する。測定した重量から、1m×1mあたりの重量を算出した重量である。
【0044】
<結合部密度、結合部および線状部それぞれの数、ならびに配向角度の測定方法>
本明細書において、結合部密度、結合部および線状部それぞれの数、ならびに配向角度は、X線CT(Computerized Tomography)装置を用いて炭素フォームを撮影し、得られた断層像データから、前処理としてMedian filterを使用した後に、大津の二値化アルゴリズム(大津 展之著、「判別および最小2乗規準に基づく自動しきい値選定法」、電子情報通信学会論文誌D、Vol.J63-D、No.4、pp.346-356(1980)参照)を用いて構造と空間に領域分割し、炭素フォームの内部を含めた構造の三次元画像を作製し、得られた三次元画像から構造解析ソフトウェアを用いて求めた値である。
【0045】
具体的には、結合部および線状部それぞれの数は、上述のように得られた三次元画像に含まれる結合部および線状部を検出し、その数をカウントすることにより求められる。結合部密度は、1mm×1mm×1mmの単位体積当たりの結合部の数をカウントすることにより求められる。結合部の数に対する線状部の数の割合は、同一の炭素フォームに対して上述のようにしてカウントされた結合部および線状部それぞれの数に基づいて求められる。
【0046】
また、線状部の配向角度θは、線状部の両端の結合部を結ぶ直線と各方向との間の角度であり、三次元画像において互いに直交する三方向の各々に対して求め、各方向について、線状部の配向角度の平均値が求められる。
【0047】
炭素フォームの構造解析に用いるCT装置としては、低エネルギー高輝度X線によるCT装置、例えば株式会社リガク製の高分解能3DX線顕微鏡nano3DXを用いることができる。また、画像処理並びに構造解析には、例えば株式会社JSOL社製のソフトウェアsimplewareのCenterline editorを用いることができる。
【0048】
<表面積の測定方法>
本明細書において、炭素フォームの表面積は、例えばノギスなどを用いて表面の寸法が測定され、得られた寸法から表面積が求められる。
【0049】
<官能基濃度の測定方法>
本明細書において、炭素フォームのX線光電子分光法による表面分析は以下のように行われる。炭素フォーム表面の含酸素官能基濃度はX線光電子分光計(パーキンエルマー,ESCA-5500MT)を用いて測定することができる。得られたC1sピークを、結合エネルギー284.4eV(黒鉛)、285.6eV(C-OH)、287.0eV(C=O)および288.6eV(COOH)をピークとする4つのガウス分布によってフィッティングし、4つのピークの合計面積に対する各ピークの面積の割合を算出することで、各表面官能基濃度を求めることができる。また、4つのピーク合計面積に対する、結合エネルギーが285.6eV(C-OH)、287.0eV(C=O)および288.6eV(COOH)における3つのピーク合計面積の割合から、全表面官能基濃度を求めることができる。
【0050】
<貫通孔Hの確認方法>
本明細書において、貫通孔の有無は、目視検査、並びに光源および光検出器を備える検査装置(例えば、ピンホール検査機)を用いた検査により評価される。具体的には、まず炭素フォームの表面が目視で観察され、貫通孔の有無が評価される。目視により貫通孔の存在が確認できなかった場合には、検査装置を用いた検査が行われる。具体的には、炭素フォームの表面側に光源が、表面Sの反対側の表面に光検出器がそれぞれ配置される。そして、光源から光が炭素フォームの表面Sに向けて照射される。すると、炭素フォームに貫通孔が存在する場合には、照射された光が貫通孔Hを通過して光検出器に到達する。こうして、貫通孔が検出され得る。なお、光源および光検出器の配置は、逆にしてもよい。現在市販されているピンホール検査機等の検査装置を用いることにより、数μm径のピンホールを検出することが可能であり、面積が10mm2以上の貫通孔であれば、万一上記目視検査で見逃していたとしても確実に検出することができる。
【0051】
上述の検査により貫通孔が検出された場合には、表面での貫通孔の面積が測定される。この面積の測定は、マイクロスコープ又は電子顕微鏡を用いて測定することができる。本明細書においては、上述の光源および光検出器を用いた検査によって貫通孔が検出されなかった炭素フォーム、および貫通孔が検出されたものの、その面積が10mm2未満である炭素フォームは、欠陥のない炭素フォームとみなされ得る。これに対して、貫通孔の面積が10mm2以上の炭素フォームは、欠陥のある炭素フォームとみなされる。
【0052】
なお、貫通孔の形状は限定されず、亀裂状や線状のものも貫通孔に含まれる。また、炭素フォーム表面に複数の貫通孔が存在し且つそれらすべての面積が10mm2未満の炭素フォームは欠陥のない炭素フォームとみなされる。一方、炭素フォーム表面に複数の貫通孔が存在し且つ1つでも面積が10mm2以上の炭素フォームは欠陥のある炭素フォームとみなされる。
【0053】
<空隙率の算出>
本明細書では、以下に説明するように求めたかさ密度ρbulkおよび真密度ρrealから、下記の式(1)を用いて空隙率Vf,poreを求めることができる。
Vf,pore=((1/ρbulk)-(1/ρreal))/(1/ρbulk)×100 (%) ・・・(1)
【0054】
[かさ密度の測定]
まず、ノギス等を用いて炭素フォームの寸法を測定し、得られた寸法から、炭素フォームのかさ体積Vbulkが求められる。次に、精密天秤を用いて、炭素フォームの質量Mが測定される。得られた質量Mおよびかさ体積Vbulkから、下記の式(2)を用いて炭素フォームのかさ密度ρbulkを求めることができる。
ρbulk=M/Vbulk ・・・(2)
【0055】
[真密度の測定]
炭素フォームの真密度ρrealは、n-ヘプタン、四塩化炭素および二臭化エチレンからなる混合液を用いて浮沈法によって求めることができる。具体的には、まず、共栓試験管に適当なサイズの炭素フォームが入れられる。次に、3種の溶媒が適宜混合して試験管に加えられ、30℃の恒温槽に漬けられる。試料片が浮く場合は、低密度であるn-ヘプタンが加えられる。一方、試験片が沈む場合は、高密度である二臭化エチレンが加えられる。この操作を繰返して、試験片が液中に漂うようにする。最後に、液の密度がゲーリュサック比重瓶を用いて測定される。
【0056】
炭素フォームの炭素含有率は、蛍光X線測定から求めることができ、具体的には炭素含有率は実施例に記載の方法で測定するものとする。
【0057】
本発明による炭素フォームは、上述のような全体的に均質な炭素フォームであるため、例えば電池の電極として使用する場合には、不均質な炭素フォームに比べて、良好なセル抵抗性を有する。また、フィルタとして使用する場合には、不均質な炭素フォームに比べて、良好な、阻止性能および透過性能を有する。
【0058】
(炭素フォームの製造方法)
本実施形態の炭素フォームの製造方法は、炭素フォームの原料となる樹脂フォームを熱処理炉内に導入する原料フォーム導入工程と、熱処理炉内の温度を第1の昇温速度で熱処理温度まで昇温する昇温工程と、上記熱処理温度で所定の時間保持して樹脂フォームを炭素化して炭素フォームとする炭素化工程と、熱処理炉内の温度を室温まで降温する降温工程と、熱処理炉から炭素フォームを搬出する炭素フォーム搬出工程とを備えていてよい。ここで、上記昇温工程は、少なくとも樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量が多い第1の温度領域において、熱処理炉内を減圧排気しながら行われてよい。
【0059】
図2は、本発明による炭素フォームの製造方法のフローチャートを示している。まず、ステップS1において、炭素フォームの原料となる樹脂フォームが熱処理炉内に導入される(原料フォーム導入工程)。
【0060】
炭素フォームの原料となる樹脂フォームとしては、炭素フォームの原料として公知の任意の樹脂フォームを用いることができる。例えば、原料の樹脂フォームとしてメラミン樹脂フォームを用いる場合、このメラミン樹脂フォームとしては、例えば特開平4-349178号公報に開示されている方法により製造されるメラミン/ホルムアルデヒド縮合発泡体を用いることができる。なお、樹脂フォームとしては、メラミン樹脂フォームに限定されず、ウレタン樹脂フォームおよびフェノール樹脂フォームであってもよい。
【0061】
上記方法によれば、まず、メラミン/ホルムアルデヒド前縮合物と、乳化剤、気化性発泡剤、硬化剤、および必要に応じて周知の充填剤とを含有する水溶液または分散液を発泡処理した後、硬化処理を施すことによりメラミン/ホルムアルデヒド縮合フォームを得ることができる。
【0062】
上記方法において、メラミン/ホルムアルデヒド前縮合物としては、例えばメラミン:ホルムアルデヒド=1:1.5~1:4、平均分子量が200~1000のものを使用することができる。また、乳化剤としては、例えば、0.5~5質量%(メラミン/ホルムアルデヒド前縮合物基準、以下同じ)のアルキルスルホン酸やアリールスルホン酸のナトリウム塩などが挙げられる。また、気化性発泡剤としては、例えば、1~50質量%のペンタンやヘキサンなどが挙げられる。また、硬化剤としては、0.01~20質量%の塩酸や硫酸などが挙げられる。発泡処理および硬化処理では、使用した気化性発泡剤などの種類に応じて設定される温度に、上記成分からなる溶液が加熱されればよい。
【0063】
また、原料の樹脂フォームを炭素化するための熱処理炉としては、樹脂フォームを炭素化して炭素フォームが得られる炉であれば限定されず、例えば原料の樹脂フォームを収容する反応炉と、反応炉内を加熱するヒーターと、反応炉内に不活性ガスを導入するガス導入口と、反応炉内からガスを排出するガス排出口と、反応炉内を減圧して真空にする真空ポンプとを備える熱処理炉を用いることができる。
【0064】
次に、ステップS2において、熱処理炉内の温度が第1の昇温速度で所定の熱処理温度まで昇温される(昇温工程)。その際、樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量が多い第1の温度領域において、熱処理炉内を減圧排気しながら行うことが肝要である。
【0065】
上述のように、炭素フォームの原料である樹脂フォームを加熱すると、樹脂フォームから発生した活性な分解性脱離ガスが、炭素フォームを構成する炭素繊維と反応して局所的に分解し、炭素フォームに不均質性を生じさせる。分解性脱離ガスの発生量は、炉内の温度に依存する。そこで、本実施形態においては、昇温工程における、樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量が多い温度領域(第1の温度領域)において、熱処理炉内が減圧排気される。これにより、樹脂フォームの内部で発生した分解性脱離ガスの樹脂フォーム外への拡散が促進されて、炭素フォームにおける不均質性の発生を防止することができる。
【0066】
なお、本実施形態において、樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量が多い温度領域(第1の温度領域)は、昇温工程における原料の樹脂フォームの重量を0℃から100℃間隔で予めモニタリングし、樹脂フォームの重量が100℃当たり初期重量の5%以上減少する温度領域とする。例えば、300℃以上400℃未満、400℃以上500℃未満および500℃以上600℃未満のすべての温度領域において、樹脂フォームの重量が100℃当たり初期重量の5%以上減少した場合には、第1の温度領域は300℃以上600℃未満である。
【0067】
本発明者らによる検討の結果、樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、分解性脱離ガスの発生量が多い温度領域(第1の温度領域)は、200℃以上800℃未満の温度領域であることが分かった。そこで、例えば樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合には、少なくとも上記第1の温度領域において、熱処理炉内が減圧排気される。
【0068】
上述の減圧排気は、真空ポンプ等の排気手段を用いて行うことができるが、これは、少なくとも炉内の圧力を10分以内に1Pa以下にできる排気能力を有するポンプを用いて行われる。
【0069】
熱処理温度までの昇温速度(第1の昇温速度)は、例えば、原料の樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、分解性脱離ガスの発生量を抑制する観点から、10℃/分以下であることが好ましい。また、全体の生産性の観点から、第1の昇温速度は1℃/分以上であることが好ましい。
【0070】
また、昇温工程は、上記樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量が多い温度領域(第1の温度領域)においては、熱処理温度までの昇温速度(第1の昇温速度)よりも低い昇温速度(第2の昇温速度)で行うことが好ましい。これにより、樹脂フォーム内で発生する単位時間当たりの分解性脱離ガスの発生量を低減して、フォーム構造外への分解性脱離ガスの拡散をより促進することができる。第1の温度領域において昇温速度を低減した場合(すなわち、第2の昇温速度に変更した場合)、炉内の温度が第1の温度領域の上限を超えた後には、昇温速度を第1の昇温速度に戻して昇温すればよい。
【0071】
さらに、昇温工程は、脱離ガスの発生量が多い第1の温度領域内の、分解性脱離ガスの発生量の増加率が高い領域(第2の温度領域)において、第2の昇温速度よりも低い昇温速度(第3の昇温速度)で行うことが好ましい。これにより、樹脂フォーム内で発生する単位時間当たりの分解性脱離ガスの発生量をさらに低減して、フォーム構造外への分解性脱離ガスの拡散をさらに促進することができる。
【0072】
なお、本実施形態において、樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量の増加率が高い温度領域(第2の温度領域)は、昇温工程における原料の樹脂フォームの重量を0℃から100℃間隔で予めモニタリングし、樹脂フォームの重量が100℃当たり初期重量の20%以上減少する温度領域としてよい。例えば、300℃以上400℃未満および400℃以上500℃未満の温度領域において、樹脂フォームの重量が100℃当たり初期重量の20%以上減少した場合には、第2の温度領域は300℃以上500℃未満である。
【0073】
原料の樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、樹脂フォームからの脱離ガスの発生量が多い温度領域(第1の温度領域)は、上述のように200℃以上800℃未満の温度領域である。また、本発明者らによる検討の結果、樹脂フォームからの脱離ガスの発生量の増加率が高い温度領域(第2の温度領域)は、300℃以上400℃未満の温度領域であることが分かった。そこで、原料の樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、昇温速度は、第1の温度領域において5℃/分以下であることがより好ましく、さらに第2の温度領域において3℃/分以下であることが特に好ましい。
【0074】
また、本昇温工程および後述する炭素化工程において、酸素と炭素フォームを構成する炭素繊維との分解反応を防止するために、炉内の雰囲気を不活性ガス雰囲気または真空としてよい。ここで、炉内が真空であるとは、炉内の真空度が1Pa未満であることを指す。また、不活性ガス雰囲気は、炭素フォームの原料となる樹脂フォームを熱処理炉内に導入した後(原料フォーム導入工程)、炉内を減圧排気して酸素が含まれる空気が抜かれる。そして、炉内が1Pa未満の真空度に達して十分に空気が脱気された後、窒素ガスが導入される。こうして炉内を窒素ガス雰囲気にすることができる。このように、炉内を不活性ガス雰囲気又は真空とした後、昇温を開始し、第1の温度領域においては炉内が減圧排気される。
【0075】
さらに、メラミン樹脂フォームの脱離ガス量が多い200℃以上800℃未満の領域(第1の温度領域)においては、炉内に不活性ガスを導入しながら減圧排気し続けることが好ましい。これにより、炉内に窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスの流れを発生させて、樹脂フォーム内で発生した分解性脱離ガスの排出を促進することができる。
【0076】
不活性ガスの導入の際、不活性ガスの流量は1L/分以上であることが好ましく、3L/分以上であることがより好ましく、5L/分以上であることが特に好ましい。また、不活性ガスの流量は40L/分以下であることが好ましく、30L/分以下であることがより好ましく、20L/分以下であることが特に好ましい。
【0077】
続いて、ステップS3において、昇温して到達した熱処理温度で所定の時間保持し、樹脂フォームを炭素化して炭素フォームが得られる(炭素化工程)。本実施形態においては、熱処理温度は原料の樹脂フォームの軟化点以上の温度とする。例えば、樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、メラミン樹脂フォームの軟化点は300℃~400℃であるため、熱処理温度は軟化点以上の温度である。メラミン樹脂フォームに対する熱処理温度は、好ましくは800℃以上であり、より好ましくは1000℃以上である。また、高い結晶性による物理的な脆弱性の観点から、メラミン樹脂フォームに対する熱処理温度は、好ましくは3000℃以下であり、より好ましくは2500℃以下である。
【0078】
また、熱処理温度で保持する時間(熱処理時間)は、原料の樹脂フォームが完全に炭素化する時間であってよい。例えば、原料の樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、保持時間は0.5時間以上とする。メラミン樹脂フォームに対する保持時間は、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは2時間以上である。また、生産性の点から、メラミン樹脂フォームに対する保持時間は、好ましくは5時間以下であり、より好ましくは4時間以下である。
【0079】
次に、ステップS4において、熱処理炉内の温度が室温まで降温される(降温工程)。メラミン樹脂フォームの炭素化の際の温度の降温速度は、急冷による炉内のヒーターや断熱材へのダメージを緩和する観点から20℃/分以下であることが好ましい。メラミン樹脂フォームに対する降温速度は、より好ましくは、15℃/分以下である。また、全体の生産性の点から、メラミン樹脂フォームに対する降温速度は、5℃/分以上が好ましい。メラミン樹脂フォームに対する降温速度は、より好ましくは、10℃/分以上である。
【0080】
最後に、ステップS5において、熱処理炉から炭素フォームが搬出される(炭素フォーム搬出工程)。こうして、上記した本発明による炭素フォームを製造することができる。
【0081】
なお、昇温工程および炭素化工程を、原料の樹脂フォームに圧縮荷重を印加しながら行うことにより、炭素繊維の拡がりに異方性を有する骨格構造の炭素フォームを得ることができる。上述のように、異方性を有する炭素フォームは、圧縮荷重が印加された際にも、炭素繊維の破断を抑制して粉落ちを低減したり、高い復元性を実現したりすることができる。
【0082】
上記圧縮荷重の印加は、原料の樹脂フォーム上に、例えば黒鉛板等のおもりを載せることによって行うことができる。印加する圧縮荷重は、好ましくは50Pa以上であり、より好ましくは200Pa以上である。また、印加する圧縮荷重は、好ましくは2000Pa以下であり、より好ましくは1500Pa以下である。
【0083】
また、真空プレス装置等を用いて圧縮を行う際には、プレス荷重での制御ではなく、スペーサーにてプレス後の膜厚を定め、元の厚みをスペーサーの厚みで割り返した圧縮倍率による制御を行ってもよい。この場合、圧縮倍率は、異方性を持たせる点から、好ましくは4倍以上であり、より好ましくは10倍以上である。また、圧縮倍率は、3次元構造を保つ点から、好ましくは100倍以下であり、より好ましくは50倍以下である。この真空プレス装置は、活性ガスの排出が可能で、樹脂フォームを加熱して圧縮できる装置、または炭素フォームの積層体を圧縮できる装置であれば特に限定されず、例えば、樹脂フォームをプレスする天板と、当該天板を加熱するヒーターと、装置内からガスを排出するガス排出口と、装置内を減圧して真空にする真空ポンプを備える熱処理炉を用いることができる。
【0084】
原料の樹脂フォームに圧縮荷重を印加する場合、分解性脱離ガスの拡散が、黒鉛板等のおもりによって抑制される。そのため、昇温工程では、圧縮荷重を印加しない場合に比べて、昇温速度を低減し、かつ不活性ガスを炉内に供給しながら減圧排気し続けて、分解性ガスの排出促進を行うことが特に好ましい。
【0085】
例えば、原料の樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、200℃以上800℃未満の温度領域(第1の温度領域)においては、昇温速度は5℃/分以下にすることが好ましく、脱離ガスの発生量の増加率が高い300℃以上400℃未満の温度領域(第2の温度領域)においては、2℃/分以下にすることがより好ましい。また、200℃以上800℃未満の温度領域(第1の温度領域)において、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを熱処理炉内に供給することが好ましい。
【0086】
なお、原料の樹脂フォームへの圧縮応力は、一方向のみならず、二方向から印加してもよい。
【0087】
<本発明の第二の実施形態>
本実施形態による膜電極複合体は、例えば、レドックスフロー電池、固体高分子膜水分解装置、直接メタノール燃料電池、燃料電池等に好適に用いることができ、中でも、上述の第一実施形態の炭素フォームの柔軟性、高表面積、3次元的に連続した構造の観点から、レドックスフロー電池に適している。
【0088】
(レドックスフロー電池)
図3に示すように、一般的なレドックスフロー電池100は、電解槽101と、電解液を貯蔵するタンク102、103と、電解液をタンク─電解槽間で循環させるポンプ104、105とを備える。また、電解槽101は、イオン交換膜111によって隔てられた正極112aおよび負極112bとからなる電極112を有し、電源106に接続されている。
【0089】
上記レドックスフロー電池100においては、ポンプ104、105により電解液をタンク102、103と電解槽101との間を循環させつつ、電解槽101の電極112上で電気化学的なエネルギー変換を行わせて、充放電を行う。
【0090】
レドックスフロー電池100においては、イオン交換膜111と電極112とは離して構成されている。電極の単位面積当たりの電流密度を増加させるために、
図4Aに示すように、イオン交換膜11と電極12とを接合して膜電極複合体10を構成し、この膜電極複合体10をセパレータ13を介して集電板14によって挟み込むことにより、
図4Bに示すセル20を形成し、このセル20を複数設けて電池を構成することが多い。
【0091】
図4Bに示したセル20において、電極12としては、導電性、電気化学的安定性および電解液の流通性を担保する必要があることから、本実施形態においては、上述の第一実施形態の炭素フォームが用いられる。
【0092】
(膜電極複合体)
図5に示すように、本実施形態による膜電極複合体1は、第一の表面と第二の表面を持つイオン交換膜2の少なくとも一つの表面に、均一な炭素フォーム3の少なくとも一部を接着させた複合体である。
【0093】
均一な炭素フォームとイオン交換膜の複合体とすることで、レドックスフロー電池のセルを形成した際に、電極と集電板の接触を十分確保することができ、セル抵抗の低い良好な性能の電池を得ることができる。前述のイオン交換膜の少なくとも一つの表面に均一な炭素フォームがあればよく、第一の表面および第二の表面に均一な炭素フォームが接着されていることがより好ましい。
【0094】
レドックスフロー電池のセルを組み上げる際、イオン交換膜と電極である炭素フォームとの良好な位置合わせが、セルからの電解液の液漏れの抑制に寄与する観点から、均一な炭素フォームとイオン交換膜は少なくとも一部が接着した接合体であることが好ましい。また、レドックスフロー電池の長期耐久性が良好である観点から、炭素フォームの表面の30%以上がイオン交換膜と接着していることが好ましく、50%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
【0095】
本実施形態による膜電極複合体では、第一の表面と第二の表面を持つイオン交換膜の少なくとも一つの表面に、均一な炭素フォームが2片以上接着していることが好ましい。一般的にレドックスフロー電池では、活物質が多孔質炭素電極の中を通過し、電極外に排出されるまでの過程において、例えば、酸化還元等の反応が進行することで、電池としての充放電が行われる。そのため、電極の入口側と出口側では、電解液の粘度の違いや、未反応活物質の濃度が異なり、電極の位置により電極に必要とされる空隙率や表面積、表面活性といった特性が異なる。しかし、単一の多孔質電極の中で、密度差をつけることは容易ではなく、部分的に表面特性を変更するとなると更に困難である。実際に前述の特許文献1~5では単一の密度、表面性質を持つ炭素フォームや多孔質炭素電極のみが開示されている。このような背景から、複数の多孔質炭素電極を同一面内に配置できることが好ましい。
【0096】
また、同一面内に配置された複数の多孔質炭素電極について、異なる特性を有する炭素フォームが配置されていることが好ましい。具体的には、レドックスフロー電池の圧損の低減がエネルギー効率を向上させるという観点から、異なる空隙率を持つ炭素フォームが用いられることが好ましい。また、電池の反応抵抗の低減がエネルギー効率を向上させるという観点から、異なる表面活性を持つ炭素フォームが用いられることが好ましい。
【0097】
同一平面内に接着した複数の炭素フォーム間の空隙は、特に制限されないが、セル抵抗を低減させ、エネルギー効率が良好である観点から、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがさらに好ましく、1mm以下であることがいっそう好ましい。なお、炭素フォーム間の空隙は、炭素フォームが接着される平面の法線方向から見て、互いに向かい合う炭素フォームの直線状の端に挟まれた帯状の空隙、言換えると2片の炭素フォームそれぞれの対向面の間隔が一定である空隙を含む。また、炭素フォーム間の空隙は、当該法線方向から見て炭素フォームの曲線状の端で囲まれ電極が存在しない空間、言換えると、2片の炭素フォームそれぞれの対向面の間隔が変動する空間も含む。対向面の間隔が変動する空間は、例えば、一方の対向面が平面であり且つ他方の対向面が曲面に囲まれた空間である。また、対向面の間隔が変動する空隙は、一部において間隔がなく両方の対向面の一部が平面で、他の部分が当該平面に対して凹む曲面を有し、平面同士で接合させながら曲面同士の間に生じる空間も含む。当該法線方向から見て前述の帯状の空隙であれば、直線同士の幅を炭素フォーム間の空隙とし、当該法線方向から見て前述の電極が存在しない空間の場合は、曲線内の最も離れた距離を炭素フォーム間の空隙とする。
【0098】
また、同一平面内に接着した複数の炭素フォーム間の空隙の割合は、特に制限されないが、セル抵抗の低減がエネルギー効率を向上させるという観点から、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。この割合は、同一平面内に存在する炭素フォーム電極のシートサイズの一片の長さに対する上述の炭素フォーム間の空隙の割合を示している。
【0099】
本実施形態による膜電極複合体は、炭素フォームとイオン交換膜との接着がエネルギー効率を向上させるという観点から、炭素フォーム繊維のイオン交換膜への埋め込み深度が5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましく、2μm以下であることがいっそう好ましい。炭素フォームの埋め込み深度は、膜電極複合体の炭素フォームとイオン交換膜が接着している任意の箇所において、膜厚方向に対して平行に切断した複合体断面の倍率2000倍にしたSEM(Scanning Electron Microscope)像から評価することができる。
【0100】
膜電極複合体は、例えばホットプレス法で接着することにより製造されることができる。ホットプレス法による方法は、まずイオン交換膜と炭素フォームを積層し、目的とする厚さのスペーサーと共にホットプレス機の圧板間に置く。次に、圧板を所定の温度まで加熱した後、プレスする。所定の時間保持した後、圧板を開放し、膜電極複合体を取り出し、室温まで冷却することで、膜電極複合体を得ることができる。
【0101】
ホットプレス法での加熱温度は、炭素フォームの埋め込み深度の制御がイオン交換膜の劣化を抑制するという観点から、イオン交換膜のガラス転移温度+50℃以下であることが好ましい。また、スペーサーの厚さは、使用する炭素フォームとイオン交換膜の合計厚さに対して、30%以上90%以下であることが好ましく、50%以上80%以下であることがより好ましい。プレス時の保持時間は、0.5分以上30分以下であることが好ましく、2分以上10分以下であることがより好ましい。
【0102】
本実施形態に用いられるイオン交換膜は、目的とするイオンを透過させる構造を持つ膜であることが好ましく、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体やイオン交換基を有する炭化水素膜が挙げられる。イオン交換基としては、特に限定されないが、例えば、-COOH基、-SO3H基、-PO3H2基又はこれらの塩が挙げられる。塩としては特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン類塩が挙げられる。また、樹脂としては、例えば、パーフルオロカーボン重合体、炭化水素膜等が挙げられ、長期耐久性が良好である観点から、パーフルオロカーボン重合体が好ましい。
【0103】
(当量質量EW)
イオン交換膜は、活物質イオンの透過の抑制が電流効率を向上させるという観点、およびプロトン伝導性の向上が抵抗を低減させるという観点から、600g/eq以上2000g/eq以下のイオン交換基の当量質量EWを有する。
【0104】
本実施形態で用いるイオン交換膜の当量質量EWは、活物質イオンの透過の抑制が電流効率を向上させるという観点から、600g/eq以上であり、好ましくは700g/eq以上であり、より好ましくは800g/eq以上であり、さらに好ましくは900g/eq以上である。また、イオン交換膜の当量質量EWは、プロトン伝導性の向上が抵抗を低減させるという観点から、2000g/eq以下であり、好ましくは1700g/eq以下であり、より好ましくは1500g/eq以下であり、さらに好ましくは1200g/eq以下である。
【0105】
なお、当量質量EWは、イオン交換基1当量あたりのイオン交換膜の乾燥質量(g)を意味する。イオン交換膜の当量質量EWは、イオン交換膜を塩置換し、その溶液をアルカリ溶液で逆滴定することにより測定することができる。当量質量EWは、イオン交換膜の原料であるモノマーの共重合比、モノマー種の選定等により調整されることができる。
【0106】
(膜厚)
本実施形態に用いるイオン交換膜の膜厚は、電池として用いたときの活物質の遮蔽性が良好である観点から1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましく、12μm以上であることがいっそう好ましい。また、イオン交換膜の膜厚は、抵抗を低減することにより電池性能が良好となる観点から、100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましく、25μm以下であることがいっそう好ましい。
【0107】
本実施形態に用いるイオン交換膜の膜厚均一性は、膜電極複合体全面の性能の均一化のために、イオン交換膜の厚みムラの低減が膜電極複合体の電極と集電板との全面的な接触性を向上させる観点から、平均膜厚の±20%以内であることが好ましく、±15%以内であることがより好ましく、±10%以内であることがさらに好ましい。
【0108】
イオン交換膜の膜厚均一性は、イオン交換膜を23℃、相対湿度65%の恒温室で12時間以上静置した後、接触式の膜厚計(例えば株式会社東洋精機製作所製)を用いて、任意の20箇所の膜厚を測定することで評価することができる。
【実施例】
【0109】
以下、具体的な実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0110】
<炭素フォームの作製>
(実施例1)
まず、炭素フォームの材料としてメラミン樹脂フォーム(寸法:400mm×400mm×40mm)を用意し、熱処理炉内に導入した。次いで、真空ポンプにより炉内を減圧排気して炉内の真空度を1Pa未満とした。続いて、減圧排気しつつ炉内に窒素ガスを流量:2L/分で供給しながら、炉内の温度を昇温速度:5℃/分で800℃まで昇温した。炉内の温度が800℃に到達した時点での炉内の減圧度は約700Paであった。炉内の温度が800℃に到達した時点で窒素ガスの供給を停止し、昇温速度:5℃/分で2000℃の熱処理温度まで昇温し、2時間保持してメラミン樹脂フォームを炭素化した。炉内の温度が2000℃に到達した時点での炉内の減圧度は10Pa未満であった。その後、炉内の温度を室温まで降温した後、真空ポンプを停止し、炉から炭素化したメラミン樹脂フォームを取り出した。得られた炭素フォームの表面積を表1に示す。続いて、得られた炭素フォームを乾燥空気気流下600℃にて1時間熱処理することにより、表面を酸化させた炭素フォームを得た。酸化した炭素フォームの表面積は、炭化後から変動しなかった。なお、乾燥空気流速は1L/minとした。こうして実施例1による炭素フォームを作製した。得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。なお、測定した繊維径は、全ての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。
【0111】
【0112】
(実施例2)
実施例1と同様に、実施例2による炭素フォームを作製した。ただし、メラミン樹脂フォームの上に黒鉛板(寸法:400mm×400mm×4mm)、BASF社製、商品名「BASOTECT W」)を乗せて圧縮荷重70Paを加えた状態で熱処理炉内に導入した。また、300℃以上400℃未満の温度領域(第2の温度領域)においては、昇温速度を2.5℃/分とした。その他の条件は実施例1とすべて同じである。得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。なお、測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。また、酸化した炭素フォームの表面積は、炭化後から変動しなかった。
【0113】
(実施例3)
実施例2と同様に、実施例3による炭素フォームを作製した。ただし、メラミン樹脂フォームの寸法を400mm×400mm×10mmとし、黒鉛板(寸法:400mm×400mm×16mm)を乗せて圧縮荷重280Paを加えた状態で熱処理炉内に導入した。その他の条件は実施例2とすべて同じである。得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。なお、測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。また、酸化した炭素フォームの表面積は、炭化後から変動しなかった。
【0114】
(実施例4)
実施例1と同様に、実施例4による炭素フォームを作製した。ただし、炉内への窒素ガスの供給を行わなかった。その他の条件は実施例1とすべて同じである。得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。なお、測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。また、酸化した炭素フォームの表面積は、炭化後から変動しなかった。
【0115】
(実施例5)
実施例4と同様に、実施例5による炭素フォームを作製した。ただし、200℃以上800℃未満の温度領域(第1の温度領域)では、昇温速度を3℃/分とした。その他の条件は実施例4とすべて同じである。得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。なお、測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。また、酸化した炭素フォームの表面積は、炭化後から変動しなかった。
【0116】
(実施例6)
実施例5と同様に、実施例6による炭素フォームを作製した。ただし、300℃以上400℃未満の温度領域(第2の温度領域)では、昇温速度を1℃/分とした。その他の条件は実施例5とすべて同じである。得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。なお、測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。また、酸化した炭素フォームの表面積は、炭化後から変動しなかった。
【0117】
(実施例7)
実施例3と同様に、実施例7による炭素フォームを作製した。ただし、炭素化後、乾燥空気気流下での酸化を行わなかった。その他の条件は実施例3とすべて同じである。得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。なお、測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。
【0118】
(実施例8)
実施例3と同様に、実施例8による炭素フォームを作製した。ただし炭素化に於いて、800℃に到達した時点で窒素ガスの供給を停止し、昇温速度:5℃/分で1100℃の熱処理温度まで昇温し、1時間保持してメラミン樹脂フォームを炭素化した。炉内の温度が1100℃に到達した時点での炉内の減圧度は10Pa未満であった。また炭素化後、乾燥空気気流下での酸化を行わなかった。その他の条件は実施例3とすべて同じである。得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。なお、測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。
【0119】
(比較例1)
実施例1と同様に、比較例1による炭素フォームを作製した。ただし、減圧排気を行わずに窒素ガス供給(流量:2L/分)のみを行い、炉内からのガスの排出は自然排出により行った。また、乾燥空気気流下での酸化を行わなかった。その他の条件は実施例1とすべて同じである。なお、この条件においては、炉内は大気圧以上の圧力環境になっている。
図6に示すように、得られた炭素フォームは中央部が一部消失していた。繊維径の50%が、平均繊維径の80%未満の繊維径であった。得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。
【0120】
(比較例2)
比較例1と同様に炭素フォームを作成し、続いて、乾燥空気気流下600℃にて1時間熱処理することにより、表面を酸化させた炭素フォームを得た。なお、乾燥空気流速は1L/minとした。得られた炭素フォームは、酸化処理前よりも消失部分が増加していた。また、消失部分表面が劣化し、脆くなっていた。得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。なお、酸化処理後は、更にシート面積が減少し、347cm2となっていた。
【0121】
(実施例9)
炭素フォームの材料としてメラミン樹脂フォーム(寸法:400mm×400mm×20mm)を用意し、厚さ0.6mmのSUS板をスペーサーとしてサンプルの周囲に配置し、上下から厚さ10mmの黒鉛板で挟み込んで北川精機社製真空熱プレス機(KVHC-II)に導入した。次いで、真空ポンプにて減圧排気しつつプレス機内の温度を昇温速度:5℃/分で360℃まで昇温し、5分間保持した。昇温中及び360℃で保持する間、3.0MPaの圧力でプレスを行った。その後、機内の温度を50℃まで降温した後、真空ポンプを停止し、プレスを解除した。
【0122】
次いで、得られたサンプルを熱処理炉内に投入し、実施例2と同じ昇温条件でメラミン樹脂フォームの炭素化を行った。得られた炭素フォームの表面積を表2に示す。その後、得られた炭素フォームを乾燥空気気流下600℃にて1.5時間熱処理することにより、表面を酸化させた炭素フォームを得た。得られた炭素フォームの詳細を表2に示す。同じ条件で更にもう1枚サンプルを作成した。なお、どちらの炭素フォームでも、測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。得られた炭素フォームの寸法は220×220×0.3mmであった。また、酸化した炭素フォームの表面積は、炭化後から変動しなかった。
【0123】
【0124】
得られた2つのサンプルを150×120mmに切り出し、200×160mmに切り出したNafion211とプレス機で125℃3分の条件で接合した。尚、SUSスペーサーは500μmとし、2MPaの圧力を印加した。こうして実施例9による複合体を作製した。得られた複合体の詳細を表2に示す。得られた複合体の炭素フォームが、表面でのみ接着している様子を
図7に示す。
【0125】
(実施例10)
実施例9と同様に炭素化までを行い、炭素フォームを2つ作製した。その後、得られたサンプルのうち、1つを実施例9と同じ条件で酸化し、残りのもう1つを乾燥空気気流下610℃にて1.0時間熱処理することにより、2種類の表面処理をした実施例10の炭素フォームを得た。尚、乾燥空気流速を1L/minとした。乾燥空気気流下610℃にて1.0時間熱処理して得た炭素フォームの詳細を表2に示す。測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。また、2種類の条件で酸化した炭素フォームの表面積は、いずれも炭化後から変動しなかった。
【0126】
得られた2種類のサンプルを長辺100mm、短辺50mm、高さ120mmの直角台形形状に2枚ずつ切り出し、複合体における正極側用および負極側用、共に2種類のサンプルを用いて、一方のサンプルの長辺と他方のサンプルの短辺とが連続するように互いの直角台形形状の斜辺同士を対向させて、150×120mmに収まるよう配置した。また、
図8に示すように、正極側用の2種類のサンプルの境界と、負極側用の2種類のサンプルの境界とが、サンプルの主面の法線方向から見て、交差するように配置を行った。その後、200×160mmに切り出したNafion212とプレス機で125℃3分の条件で接合した。尚、SUSスペーサーは500μmとし、2MPaの圧力を印加した。こうして実施例10による複合体を作製した。得られた複合体の詳細を表2に示す。
【0127】
また、複合体をセルに組む際には、610℃で処理したサンプル側が液の入り口側になるように配置してセルを組み、測定を行った。
【0128】
(実施例11)
実施例10と同じ炭素フォームを、実施例11による炭素フォームとして作製した。なお、測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。また、酸化した炭素フォームの表面積は、炭化後から変動しなかった。得られた酸化処理温度の異なる2種類のサンプル1枚ずつを、長辺100mm、短辺50mm、高さ120mmの直角台形形状に1枚ずつ切り出し、電極の片側用に2種類のサンプルを用いて、実施例10と同様に、150×120mmに収まるよう配置した。その後、200×160mmに切り出したNafion212とプレス機で125℃3分の条件で接合した。尚、SUSスペーサーは300μmとし、2MPaの圧力を印加した。こうして実施例11による、Nafion212の片面にのみ炭素フォームを接合した複合体を作製した。得られた複合体の詳細を表2に示す。
【0129】
また、複合体をセルに組む際には、負極に前述の複合体の炭素フォームを、正極に実施例11で作成した乾燥空気気流下600℃で処理した炭素フォームを配置し、負極は610℃で処理したサンプル側が液の入り口側になるように配置してセルを組み、測定を行った。
【0130】
(実施例12)
実施例10と同様に、実施例12による炭素フォームを作製した。ただし、乾燥空気で酸化して得られた2種類のサンプルのうち、600℃で酸化したサンプルのみ長辺99mm、短辺49mm、高さ120mmの台形形状に切り出し、両極側共に2種類のサンプルを用いて、150×120mmに収まるよう配置した。200×160mmに切り出したNafion212とプレス機で125℃3分の条件で接合した。その際に、接合部に幅1mmのスペースを設けた。それ以外は、実施例10と同じ条件で複合体の作製を実施した。得られた複合体の詳細を表2に示す。
【0131】
(実施例13)
実施例10と同様に、実施例13による炭素フォームを作製した。ただし、乾燥空気で酸化して得られた2種類のサンプルのうち、600℃で酸化したサンプルのみ長辺96mm、短辺46mm、高さ120mmの台形形状に切り出し、両極側共に2種類のサンプルを用いて、150×120mmに収まるよう配置した。200×160mmに切り出したNafion212とプレス機で125℃3分の条件で接合した。その際に、接合部に幅4mmのスペースを設けた。実施例10と同じ条件で複合体の作製を実施した。得られた複合体の詳細を表2に示す。
【0132】
(実施例14)
実施例10と同様に、実施例14による炭素フォームを作製した。ただし、乾燥空気で酸化したサンプルとNafion212とをプレス機で140℃3分の条件で接合した。それ以外は、実施例10と同じ条件で複合体の作成を実施した。得られた複合体の詳細を表2に示す。得られた複合体の炭素フォームが、膜に埋め込まれていて接着している様子を
図8に示す。
【0133】
(実施例15)
実施例10と同様に、実施例15による炭素フォームを作製した。ただし、乾燥空気で酸化したサンプルとNafion212をプレス機で115℃3分の条件で接合した。それ以外は、実施例10と同じ条件で複合体の作成を実施した。得られた複合体の詳細を表2に示す。得られた複合体の端部で剥離が見られ、電極全体のうち60%が膜と接着していた。
【0134】
(実施例16)
炭素フォームの材料としてメラミン樹脂フォーム(寸法:400mm×400mm×25mm、BASF社製、商品名「BASOTECT W」)を、厚さ0.6mmのSUS板をスペーサーとしてサンプルの周囲に配置し、上下から厚さ10mmの黒鉛板で挟み込んで北川精機社製真空熱プレス機(KVHC-II)に導入した。それ以外は実施例9と同じ条件で炭素化まで行い、実施例16による高密度な炭素フォームを作製した。その後、乾燥空気気流下600℃にて1.5時間熱処理した。得た炭素フォームの詳細を表2に示す。測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。また、酸化した炭素フォームの表面積は、炭化後から変動しなかった。
【0135】
上述の実施例16による高密度な炭素フォームのサンプルと、更に、実施例9と同じ方法で作成したサンプル(原料寸法:400mm×400mm×20mm)とを2種類のサンプルとして用いて、実施例10と同様に複合体を作成した。得られた複合体の詳細を表2に示す。
【0136】
また、複合体をセルに組む際には、実施例16で新たに作成した高密度な炭素フォームのサンプル側が、液の入り口側になるように配置、言換えるとNafion212の主面の法線方向から見て両面に接合された高密度な炭素フォームのサンプルの大部分が互いに重なるように配置してセルを組み、測定を行った。
【0137】
(実施例17)
実施例10と同様に、実施例17による複合体を作製した。ただし、実施例10における乾燥空気気流下610℃1.0時間で熱処理する表面処理を行ったサンプルの代わりに、炭素化後の酸化条件を乾燥空気気流下550℃にて1時間熱処理する表面処理を行ったサンプルを用いたこと以外は、実施例10とすべて同じである。複合体に用いた炭素フォームの詳細を表2に示す。測定した繊維径は、すべての繊維で平均繊維径の±20%以内に含まれていた。また、酸化した炭素フォームの表面積は、炭化後から変動しなかった。得られた複合体の詳細を表2に示す。
【0138】
(比較例3)
実施例9と同様に、比較例3による炭素フォームを作成した。ただし、プレス工程では真空排気をせず、常圧窒素雰囲気下でプレスを行い、炭素化工程は比較例1と同じ条件で行った。得た炭素フォームの詳細を表2に示す。得られた炭素フォームは中央部が一部消失していた。繊維径の50%が、平均繊維径の80%未満の繊維径であった。
【0139】
また、酸化を実施例9と同様に行い、目視にて炭素フォームの均一性がより高い面をNafionとの接触面に酸化した炭素フォームを配置して複合化した。得られた複合体の詳細を表2に示す。なお、酸化処理後は、更にシート面積が減少し、230cm2となっていた。
【0140】
(比較例4)
比較例3と同様に、比較例4による炭素フォームを作製した。得られた炭素フォームは中央部が一部消失していた。繊維径の50%が、平均繊維径の80%未満の繊維径であった。実施例10と同様に乾燥空気で酸化し、2種類のサンプルを得た。乾燥空気気流下610℃にて1.0時間熱処理して得た炭素フォームの詳細を表2に示す。なお、酸化処理後は、更にシート面積が減少し、228cm2となっていた。
【0141】
600℃で酸化したサンプルのみ長辺89mm、短辺39mm、高さ120mmの台形形状に切り出し、両極側共に2種類のサンプルを用いて、150×120mmに収まるよう配置した。200×160mmに切り出したNafion212とプレス機で125℃3分の条件で接合した。その際に、接合部に幅11mmのスペースを設けた。それ以外は、実施例10と同じ条件で複合体の作成を実施した。得られた複合体の詳細を表2に示す。
【0142】
(比較例5)
比較例4と同様に酸化までを行い、比較例5による炭素フォームを作製した。得られた2種類のサンプルの切り出しを実施例10と同様に行い、両極側共に2種類のサンプルを用いて、150×120mmに収まるよう配置した。その後Nafion212と接合せずにレドックスフロー電池セルに組み込み評価を行ったが、電解液の液漏れが発生したため、測定を中断した。
【0143】
<SEM観察>
実施例1の炭素フォーム表面上の、2辺それぞれの端部から2cm程度の部分を各1箇所(合計2箇所)、中央部2箇所を切出し、各サンプルにおいて、表面2箇所、断面3箇所の合計20箇所に対して、走査型電子顕微鏡を用いて10,000倍の倍率でSEM像を撮像した。各箇所のSEM像に含まれる炭素繊維像の中の任意の一本の炭素繊維の繊維径を測定し、当該各箇所の繊維径とみなした。20箇所の繊維径を平均化して、平均値を算出した。得られた平均値を、20箇所の繊維径の最大値および最小値の内、当該平均値からの変量がより大きな値とともに表1に示す。実施例2~17および比較例1~5それぞれの炭素フォームに対しても、実施例1と同様にSEM像を撮像して、繊維径の平均値と、最小値または最大値とを求めた。ただし、比較例1において一部焼失した箇所に関しては、実施例1で撮像した箇所とは異なり、焼失部の外周をサンプリングし、撮像を行った。
【0144】
図9は、実施例1による、断面に関する炭素フォームのSEM像を示している。
図10Aは、実施例3による、断面(圧縮荷重の印加方向の断面)に関する炭素フォームのSEM像を示している。
図10Bは、実施例3による、表面(圧縮荷重の印加方向に垂直な面)に関する炭素フォームのSEM像を示している。また、倍率は、何れのSEM像についても500倍である。
【0145】
図10Aおよび
図10Bから明らかなように、実施例3による炭素フォームにおいては、炭素繊維の線状部同士が結合部で結合しており、線状部が圧縮荷重の印加方向に対して垂直な方向に配向していることが分かる。これに対して、
図9に示した実施例1による炭素フォームにおいては、炭素繊維の線状部は等方的に配向している。
【0146】
<X線CTによる構造解析>
実施例1~17および比較例1~5による炭素フォームに対して、X線CTによる構造解析を行った。具体的には、X線画像を撮像しやすくするため、実施例および比較例の各々に無電解銅めっきを行った後、試験片を採取し、高分解能3DX線顕微鏡nano3DX(株式会社リガク製)を用いて、採取した試験片に対して構造解析を行った。具体的な無電解めっき条件、X線CT解析条件は以下の通りである。
図11に実施例1の炭素フォームより得られるX線CT解析画像を、
図12に
図11の画像のライン、ノード検出を行った画像処理後の図を結果の一例として示す。
【0147】
[無電解めっき条件]
サンプルをOPCコンディクリーンMA(奥野製薬工業社製、100mL/Lに蒸留水で希釈)に70℃で5分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPCプリディップ49L(奥野製薬工業社製、10mL/Lに蒸留水で希釈、98%硫酸を1.5mL/L添加)に70℃で2分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPCインデューサー50AM(奥野製薬工業社製、100mL/Lに蒸留水で希釈)および、OPCインデューサー50CM(奥野製薬工業社製、100mL/Lに蒸留水で希釈)を1:1で混合した溶液中に45℃で5分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPC-150クリスタMU(奥野製薬工業社製、150mL/Lに蒸留水で希釈)に室温で5分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPC-BSM(奥野製薬工業社製、125mL/Lに蒸留水で希釈)に室温で5分間浸漬した。続いて化学銅500A(奥野製薬工業社製、250mL/Lに蒸留水で希釈)および、化学銅500B(奥野製薬工業社製、250mL/Lに蒸留水で希釈)を1:1で混合した溶液中に室温で10分間浸漬した後、蒸留水で5分間洗浄した。その後90℃で12時間真空乾燥を行い、水分を乾燥させた。
【0148】
[X線条件]
X線ターゲット:Cu
X線管電圧:40kV
X線管電流:30mA
【0149】
[撮影条件]
投影数:1500枚
回転角度:180°
露光時間:20秒/枚
空間解像度:0.54μm/ピクセル
【0150】
[X線CT解析条件]
得られた3次元画像を、Median filterで隣接する1pixelにて処理し、大津のアルゴリズムを用いて二値化した。続いて、JSOL社製のソフトウェアsimplewareのCenterline editor(Ver.7)をデフォルトの設定値で使用して、2.16μm以下の線をノイズとして除去した後、測定視野300μm×300μm×300μm内の結合部および線状部それぞれの数を検出した。比較例1~5に関しては、目視にて均一性の高い部分を使用して解析を行った。
【0151】
上記構造解析により、試験片に含まれる結合部および線状部それぞれの数Nn、Nl、結合部密度、互いに直交する3方向(x、y、z)に対する配向角度の平均値を求めた。得られた結果を表1および表2に示す。なお、表1および表2における配向角度は、圧縮荷重の印加方向をx方向とし、圧縮荷重の印加方向に垂直な方向にy方向およびz方向を設定して求めた値である。また、表1および表2におけるθdの最小値は、x方向に対する配向角度とy方向またはz方向に対する配向角度との差に関するものである。
【0152】
表1および表2から、炭素フォームである実施例1~17および比較例1~5に対する、結合部の数Nnに対する線状部の数Nlの割合Rは1.4~1.55の範囲内にある。他の材料として、例えば炭素繊維不織布の様な構造体では、結合部の数Nnに対する線状部の数Nlの割合Rは、1.29以下であり、1.4~1.55の範囲になく、この範囲は本願炭素フォームの構造に起因する特徴的な数値である事を示している。
【0153】
<かさ密度の測定>
ノギスを用いて炭素フォームの寸法を測定し、得られた寸法から、炭素フォームのかさ体積Vbulkを求めた。次に、精密天秤を用いて、炭素フォームの質量Mを測定した。得られた質量Mおよびかさ体積Vbulkから、上述の式(2)を用いて炭素フォームのかさ密度ρbulk(kgm-3)を求めた。得られた結果を表1および表2に示す。
【0154】
<単位面積当たりの重量の測定>
実施例1~8および比較例1、2それぞれの炭素フォーム表面において、矩形の四辺それぞれの中央、当該表面の中心の5箇所において3cm×3cmの大きさで、炭素フォームを切出した。切出した炭素フォームの重量を、精密天秤を用いて測定した。測定した重量を3cm×3cmで除して、単位面積(m2)当たりの重量を得た。5箇所の単位面積当たりの重量を平均化して、平均値を算出した。得られた平均値を、5箇所の単位面積当たりの重量の最大値および最小値の内、当該平均値からの変量がより大きな値とともに表1に示す。なお、切出す箇所がすべて焼失している場合には単位面積当たりの重量をゼロとみなした。
【0155】
<炭素含有率>
炭素フォームの炭素含有率は、株式会社リガク製の蛍光X線分析装置ZSX-100E(波長分散型、Rh管球)を用いた蛍光X線測定から求めた。サンプル面積は20mmφ以上を用いた。得られた結果を表1および表2に示す。
【0156】
<酸素原子濃度>
炭素フォームの酸素含有率は、蛍光X線測定から求めた。蛍光X線測定は、株式会社リガク製の蛍光X線分析装置ZSX-100E(波長分散型、Rh管球)を用いた。サンプルは20mmφ以上のサイズを用いた。得られた結果を表1および表2に示す。
【0157】
<表面官能基濃度>
炭素フォーム表面の含酸素官能基濃度はX線光電子分光計(パーキンエルマー、ESCA-5500MT)を用いて測定した。C1sピークを、結合エネルギー284.4eV(黒鉛)、285.6eV(C-OH)、287.0eV(C=O)および288.6eV(COOH)をピークとする4つのガウス分布によってフィッティングした。4つのピークの合計面積に対する各ピークの面積の割合が、全炭素原子数に対する各官能基に含まれる炭素原子数の割合に相当し、この値を表面官能基濃度として示した。得られた結果を表1および表2に示す。
【0158】
<導電性の評価>
実施例1~8および比較例1、2による炭素フォームの抵抗値を測定した。具体的には、抵抗測定に用いる2つの電極の先端のそれぞれに10mm×10mmの銅板を接合し、2つの電極の、電極に接合した表面とは反対側の銅板の表面を、10cmの間隔をあけて炭素フォームに押し当て、デジタルマルチメーター7461Aにて抵抗値を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0159】
表1から、実施例1および実施例3と比較例1との結果を比較すると、炭素フォームの均一性が良好な実施例1、3の方の抵抗値が低く、高い導電性を有していることが分かる。
【0160】
<レドックスフロー電池評価1>
実施例1~8および比較例1、2による炭素フォームのレドックスフロー電池評価には、以下の評価セルを用いた。バイトンゴム製ガスケット、テフロン(登録商標)製流路枠、黒鉛製セパレータ、ステンレス製エンドプレートから構成されるセルを用いた。イオン交換膜にはAldrichから購入したNafion211を用いた。ガスケットは電極の圧縮率が52%になるように膜厚を調節した。50x80mmに切り出した膜、33x30mmに切り出した2枚の炭素フォーム、並びにセル構成部材を所定の順番に従って組み合わせ、ステンレス製ボルトを用いて所定のトルクにて締結した。組み立てたセルを、電解液タンクと送液ポンプから構成される電解液循環装置に接続した。電解液タンクにバナジウムイオン濃度1.5M、バナジウムイオン価数3.5価、硫酸イオン濃度4.5Mのバナジウム硫酸溶液を30ml加え、流速100ml/minにて循環した。充放電試験はBioLogic社製ポテンショスタットVSPを用いて、定電流法にて行った。電圧範囲は1.00-1.55V、電流密度は80mA/cm2とした。充電および放電時における平均電圧VcおよびVdから、次式によってセル抵抗を求めた。得られた結果を表1に示す。
(Vc-Vd)/(2x0.08)(Ωcm2)
【0161】
<レドックスフロー電池評価2>
実施例9~17および比較例3~5による炭素フォームのレドックスフロー電池評価には、以下の評価セルを用いた。バイトンゴム製ガスケット、塩化ビニル製フレーム、黒鉛製セパレータ、ステンレス製エンドプレートから構成されるセルを用いた。イオン交換膜にはAldrichから購入したNafion211又はNafion212を用いた。ガスケットは電極の圧縮率が67%になるように膜厚を調節した。作成した複合体、又は、5200x160mmに切り出した膜と150x120mmに切り出した炭素フォーム、並びに、セル構成部材を所定の順番に従って組み合わせ、ステンレス製ボルトを用いて所定のトルクにて締結した。組み立てたセルを、電解液タンクと送液ポンプから構成される電解液循環装置に接続した。電解液タンクにバナジウムイオン濃度1.5M、バナジウムイオン価数3.5価、硫酸イオン濃度4.5Mのバナジウム硫酸溶液を4L加え、流速200ml/minにて循環した。充放電試験は菊水電子社製バイポーラー電源を用いて、定電流法にて行った。電圧範囲は1.00-1.55V、電流密度は80mA/cm2とした。10サイクル時点の充電容量Qcおよび放電容量Qd、充電および放電時における平均電圧VcおよびVdから、次式によって電流効率CE、電圧効率VE、電力効率EEをそれぞれ求めた。
CE:Qd/Qc(%)
VE:Vd/Vc(%)
EE:CExVE(%)
【0162】
<埋め込み深度>
炭素フォームと膜の複合体の界面の埋め込み深度を、走査型電子顕微鏡を用いて2,000倍の倍率で撮像したSEM画像から求めた。複合体を切断し、膜厚方向の画像を任意で3点撮像した。撮像したSEM画像から、イオン交換膜側が変形して炭素フォームが埋め込んでいた場合、接合界面からの埋め込み深さの平均値を埋め込み深度とした。また、3点の画像とも埋め込みが見られない場合は、埋め込み深度0μmとし、炭素表面のみで接着していると判断した。
【0163】
<接合状態>
複合体化した後、接合した炭素フォームを下面にして、イオン交換膜の部分のみを手で持って持ち上げた。その際に、接合した面の全ての複合体で、電極の自重でイオン交換膜と電極の界面が剥離している様子が無ければ全面接着(100%)とし、接合した面の複合体が1つでも剥離して電極が落下したら接着なしと判断した。また、イオン交換膜がたわんで端部の一部に剥離が見られた場合には一部接着とし、剥離している面積の合計から接着面積比率を計算した。
【0164】
<濡れ性評価>
実施例1~17および比較例1~5それぞれの炭素フォーム表面において、蒸留水を含んだスポイトの先端を、炭素フォーム表面から1mm上の位置に配置し、スポイトを押圧して液滴を作り、炭素フォーム表面に液滴を接触させて、スポイトを離した。その際、10秒以内に炭素フォームに液滴の蒸留水がすべて含浸した場合は濡れ性を○と判定した。また、10秒後に液滴の蒸留水が一部のみ含浸したもの、又は、炭素フォーム上と蒸留水の液滴の接触角が90度未満だったものを△と判定した。炭素フォーム上と蒸留水の液滴の接触角が90度以上だったものを×と判定した。得られた結果を表1、2に示す。
【0165】
<イオン交換膜のガラス転移温度(Tg)評価>
実施例、比較例で使用したイオン交換膜のガラス転移温度は、TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置RSA-G2を用いて測定した。長さ20mm、幅5mmの短冊状に切り出した膜に、周波数1Hz、振幅0.2%の交流ひずみを印加しながら、窒素気流下で室温から200℃まで、5℃/分にて昇温した。印加した交流ひずみに対する交流応力応答から、各温度における貯蔵弾性率、損失弾性率、および損失正接を求めた。得られた損失正接―温度曲線のピーク温度をガラス転移温度とした。得られたガラス転移温度は、nafion211で104℃、nafion212で104℃であった。
【0166】
<イオン交換膜の膜厚>
イオン交換膜の膜厚は、23℃、相対湿度65%の恒温室で12時間以上静置した後、使用するサンプルの任意の6箇所を接触式の膜厚計(株式会社東洋精機製作所製)を用いて測定した。nafion211の平均膜厚は25μmで、全測定箇所で平均膜厚±20%以内であった。nafion212の平均膜厚は50μmで、全測定箇所で平均膜厚±20%であった。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明によれば、全体的に均質な炭素フォームを得ることができるため、電極用途やフィルタ用途において有用である。
【符号の説明】
【0168】
1、10 膜電極複合体
2、11、111 イオン交換膜
3 炭素フォーム
12、112 電極
13 セパレータ
14 集電板
20 セル
100 レドックスフロー電池
101 電解槽
102、103 タンク
104、105 ポンプ
106 電源
112a 正極
112b 負極
H 貫通孔
S 表面