(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】摩擦撹拌溶接の間の溶接プロセスの中断、特に摩擦ピンの破損、を回避する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
B23K20/12 340
(21)【出願番号】P 2020544538
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(86)【国際出願番号】 DE2019000044
(87)【国際公開番号】W WO2019170182
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】102018001774.6
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】314014416
【氏名又は名称】グレンツェバッハ・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイグル,マルクス
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-512658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0073409(US,A1)
【文献】国際公開第2017/002762(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦撹拌溶接の間
の摩擦ピンの破
損を回避する装置であって、
g)
断面視ウェッジ型
のツールドーム(7)と、前記ツールドーム(7)の中心軸にマウントされた溶接ピン(19)と、前記ツールドーム(7)内に設置され前記溶接ピン(19)をガイドするツール受入コーン(28)と、前記ツールドーム(7)の下端に保持された溶接シュー(11)と、前記溶接シュー(11)内に設けられ前記溶接ピン(19)を通してガイドするための丸穴(27)と、前記ツールドーム(7)の長手側辺上において互いに120度ずつ角度を隔てて配置された少なくとも3つのストリップ様センサ(8)
と、を備え、前記センサ(8)は、
前記ツールドーム(7)の動きを検出可能とするためのひずみゲージであり、
h)前記ツール受入コーン(28)の下方領域に設けられ、前記溶接ピン(19)における軸力、トルク及び曲げモーメントを検出するためのセンサ(22)を受け入れるのに用いられるコーンくびれを備え、
i)
前記ツールドーム(7)に取り付けられた固定アンテナ(16)の高さで前記溶接ピン(19)
の位置を垂直調整する装置(17)を備え、
j)前記溶接シュー(11)の領域に設けら
れたレーザ測定センサ(10)と、前記レーザ測定センサ(10)の反対側に配置された空気伝送音センサ(30)と、溶接シュー温度センサと、を備え、
k)
前記センサ(22)により検出されたすべての測定値を受信、増幅及び送信するための回転アンテナを有するセンサシグナル増幅器(23)
が前記ツール受入コーン(28)に取り付けられ、これら測定値は、前記固定アンテナ(16)により機械制御部に送信され、
l)
前記ツール受入コーン(28)に取り付けられた可動二次コイル(2
5)及び
前記ツールドーム(7)に取り付けられた固定一次コイル(2
4)から測定システムに電力を供給するための誘導電力供給システムを備え
、
前記レーザ測定センサ(10)により前記溶接シュー(11)と前記溶接ピン(19)先端のピンチップ(12)との間の距離を測定し、前記空気伝送音センサ(30)により前記溶接シュー(11)及び前記ツールドーム(7)での振動を測定することで、前記丸穴(27)内における中心位置からの前記ピンチップ(12)及び溶接ピン(19)の逸脱を検出して摩擦ピンの破損を回避することを特徴とする装置。
【請求項2】
固体伝搬音センサ(29)が
、前記溶接ピン(19)と前記溶接シュー(11)
の内周との間の間隙で作用するように前記ツール受入コーン(28)に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
渦電流センサ(31)が、前記溶接ピン(19)と前記溶接シュー(11)の内周との間の間隙で作用するように前記溶接シュー(11)の外側境界に配置され、
該間隙における材料の方向が測定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
摩擦撹拌溶接の間の摩擦ピンの破損を回避する方法であって、
g)断面視ウェッジ型のツールドーム(7)と、前記ツールドーム(7)の中心軸にマウントされた溶接ピン(19)と、前記ツールドーム(7)内に設置され前記溶接ピン(19)をガイドするツール受入コーン(28)と、前記ツールドーム(7)の下端に保持された溶接シュー(11)と、前記溶接シュー(11)内に設けられ前記溶接ピン(19)を通してガイドするための丸穴(27)と、前記ツールドーム(7)の長手側辺上において互いに120度ずつ角度を隔てて配置された少なくとも3つのストリップ様センサ(8)と、を備え、前記センサ(8)は、前記ツールドーム(7)の動きを検出可能とするためのひずみゲージであり、
h)前記ツール受入コーン(28)の下方領域に設けられ、前記溶接ピン(19)における軸力、トルク及び曲げモーメントを検出するためのセンサ(22)を受け入れるのに用いられるコーンくびれを備え、
i)前記ツールドーム(7)に取り付けられた固定アンテナ(16)の高さで前記溶接ピン(19)の位置を垂直調整する装置(17)を備え、
j)前記溶接シュー(11)の領域に設けられたレーザ測定センサ(10)と、前記レーザ測定センサ(10)の反対側に配置された空気伝送音センサ(30)と、溶接シュー温度センサと、を備え、
k)前記センサ(22)により検出されたすべての測定値を受信、増幅及び送信するための回転アンテナを有するセンサシグナル増幅器(23)が前記ツール受入コーン(28)に取り付けられ、これら測定値は、前記固定アンテナ(16)により機械制御部に送信され、
l)前記ツール受入コーン(28)に取り付けられた可動二次コイル(25)及び前記ツールドーム(7)に取り付けられた固定一次コイル(24)から測定システムに電力を供給するための誘導電力供給システムを備え、
前記レーザ測定センサ(10)により前記溶接シュー(11)と前記溶接ピン(19)先端のピンチップ(12)との間の距離を測定し、前記空気伝送音センサ(30)により前記溶接シュー(11)及び前記ツールドーム(7)での振動を測定することで、前記丸穴(27)内における中心位置からの前記ピンチップ(12)及び溶接ピン(19)の逸脱を検出して摩擦ピンの破損を回避することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦撹拌溶接の間の溶接プロセスの中断、特に摩擦ピンの破損、を回避する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前世紀の90年代初頭に、摩擦撹拌溶接は開発された。摩擦撹拌溶接は、今では産業の多くの分野、とりわけ、アルミニウム合金の溶接に首尾良く利用されている。
【0003】
その適用は、個々のピース及び小さなバッチから大きなバッチにまで及ぶ。溶接継ぎ目の優れた品質に加えて、高い再現性、準備作業の少なさ、そして後処理コストの低さといった他の要因も、市場での成功に寄与している。
【0004】
摩擦撹拌溶接では、摩擦により接合される材料の連結領域において、並進移動する回転ツールと圧力が課される材料との間で摩擦熱が生ずる。このツールは、連結領域に沿って移動し、接合される材料の継ぎ目内部で可塑化された材料を撹拌する。課された圧力は、可塑化された材料を圧縮する。溶接継ぎ目形成の最後に、ツールは連結領域から退避され、溶接継ぎ目は直ちに荷重を付加され得る。
【0005】
従来技術として、本出願人から出願されたDE 10 2014 005 315 B3を参照する。
【0006】
この文献は、摩擦撹拌溶接の操作の間の溶接ピンチップにおける機械力を検出するための方法及び装置、また、同方法を実行するためのコンピュータプログラム及び同プログラムを有する機械可読媒体に関する。
【0007】
この文献で与えられる発明は、3Dアプリケーションであってもツールの軸力や溶接ピンチップのトルク及び温度といった決定的なプロセスパラメータが正確に検出され得るように、摩擦撹拌溶接の間の溶接操作を最適化するという目的に基づいている。
【0008】
特許クレーム1では、この目的を達成するために、決定的なプロセスパラメータを以下のようにすることで、摩擦撹拌溶接の操作の間の溶接ピンチップにおける機械力を検出するための装置の最適化を課題としている。
a)ツール受入コーン(14)及び溶接シュー(11)によりピンシャフト(13)を介して溶接ピン(12)を保持するツールドーム(9)の長手辺上に設けられたストリップ様センサ(3)を備え、前記センサ(3)は、力、圧力又は軌道を決定するように設計されると共に、溶接プロセスのフロー方向と反対側になるようにして前記ツールドーム(9)の側部にマウントされ、
b)前記ツール受入コーン(14)の幅広領域に設けられ前記溶接ピン(12)における軸力、トルク及び曲げモーメントを検出するためのセンサ(18)を受け入れるコーンくびれ(20)を備え、
c)前記ツール受入コーン(14)の先端領域に設けられ120度ずつ角度を隔てて周囲に配置された少なくとも3つのセンサ(24)を有する更なるくびれと、前記ピンシャフト(13)の長軸に設けられた圧電力測定センサ(25)と、を備え、
d)検出されたすべての測定値を受信、増幅及び送信するための回転アンテナ(19)を有するセンサシグナル増幅器を備え、これら測定値は、固定アンテナ(17)により機械制御部に送信され、
e)可動二次コイル(22)及び固定一次コイル(23)から測定システムに電力を供給する誘導電力供給システムを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、例えば、鋳込材料の場合には硬度の違いのように、溶接アセンブリ内での材料の局所的変化の結果として、摩擦撹拌溶接でのシステム操作の間に摩擦ピンの破損が起こり得る。
【0010】
そのため、本発明は、摩擦撹拌溶接のための商業操作システムを確立すると共に、溶接プロセスでの摩擦ピンの破損を回避するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、以下のような特許クレーム1の特性、
摩擦撹拌溶接の間の摩擦ピンの破損を回避する装置であって、
a)断面視ウェッジ型のツールドーム(7)と、前記ツールドーム(7)の中心軸にマウントされた溶接ピン(19)と、前記ツールドーム(7)内に設置され前記溶接ピン(19)をガイドするツール受入コーン(28)と、前記ツールドーム(7)の下端に保持された溶接シュー(11)と、前記溶接シュー(11)内に設けられ前記溶接ピン(19)を通してガイドするための丸穴(27)と、前記ツールドーム(7)の長手側辺上において互いに120度ずつ角度を隔てて配置された少なくとも3つのストリップ様センサ(8)と、を備え、前記センサ(8)は、前記ツールドーム(7)の動きを検出可能とするためのひずみゲージであり、
b)前記ツール受入コーン(28)の下方領域に設けられ、前記溶接ピン(19)における軸力、トルク及び曲げモーメントを検出するためのセンサ(22)を受け入れるのに用いられるコーンくびれを備え、
c)前記ツールドーム(7)に取り付けられた固定アンテナ(16)の高さで前記溶接ピン(19)の位置を垂直調整する装置(17)を備え、
d)前記溶接シュー(11)の領域に設けられたレーザ測定センサ(10)と、前記レーザ測定センサ(10)の反対側に配置された空気伝送音センサ(30)と、溶接シュー温度センサと、を備え、
e)前記センサ(22)により検出されたすべての測定値を受信、増幅及び送信するための回転アンテナを有するセンサシグナル増幅器(23)が前記ツール受入コーン(28)に取り付けられ、これら測定値は、前記固定アンテナ(16)により機械制御部に送信され、
f)前記ツール受入コーン(28)に取り付けられた可動二次コイル(25)及び前記ツールドーム(7)に取り付けられた固定一次コイル(24)から測定システムに電力を供給するための誘導電力供給システムを備え、
前記レーザ測定センサ(10)により前記溶接シュー(11)と前記溶接ピン(19)先端のピンチップ(12)との間の距離を測定し、前記空気伝送音センサ(30)により前記溶接シュー(11)及び前記ツールドーム(7)での振動を測定することで、前記丸穴(27)内における中心位置からの前記ピンチップ(12)及び溶接ピン(19)の逸脱を検出して摩擦ピンの破損を回避することを特徴とする装置、
そして、以下のような特許クレーム4に係る方法により達成される。
摩擦撹拌溶接の間の摩擦ピンの破損を回避する方法であって、
a)断面視ウェッジ型のツールドーム(7)と、前記ツールドーム(7)の中心軸にマウントされた溶接ピン(19)と、前記ツールドーム(7)内に設置され前記溶接ピン(19)をガイドするツール受入コーン(28)と、前記ツールドーム(7)の下端に保持された溶接シュー(11)と、前記溶接シュー(11)内に設けられ前記溶接ピン(19)を通してガイドするための丸穴(27)と、前記ツールドーム(7)の長手側辺上において互いに120度ずつ角度を隔てて配置された少なくとも3つのストリップ様センサ(8)と、を備え、前記センサ(8)は、前記ツールドーム(7)の動きを検出可能とするためのひずみゲージであり、
b)前記ツール受入コーン(28)の下方領域に設けられ、前記溶接ピン(19)における軸力、トルク及び曲げモーメントを検出するためのセンサ(22)を受け入れるのに用いられるコーンくびれを備え、
c)前記ツールドーム(7)に取り付けられた固定アンテナ(16)の高さで前記溶接ピン(19)の位置を垂直調整する装置(17)を備え、
d)前記溶接シュー(11)の領域に設けられたレーザ測定センサ(10)と、前記レーザ測定センサ(10)の反対側に配置された空気伝送音センサ(30)と、溶接シュー温度センサと、を備え、
e)前記センサ(22)により検出されたすべての測定値を受信、増幅及び送信するための回転アンテナを有するセンサシグナル増幅器(23)が前記ツール受入コーン(28)に取り付けられ、これら測定値は、前記固定アンテナ(16)により機械制御部に送信され、
f)前記ツール受入コーン(28)に取り付けられた可動二次コイル(25)及び前記ツールドーム(7)に取り付けられた固定一次コイル(24)から測定システムに電力を供給するための誘導電力供給システムを備え、
前記レーザ測定センサ(10)により前記溶接シュー(11)と前記溶接ピン(19)先端のピンチップ(12)との間の距離を測定し、前記空気伝送音センサ(30)により前記溶接シュー(11)及び前記ツールドーム(7)での振動を測定することで、前記丸穴(27)内における中心位置からの前記ピンチップ(12)及び溶接ピン(19)の逸脱を検出して摩擦ピンの破損を回避することを特徴とする方法。
【0012】
本発明に係る装置は、以下で更に詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
【0015】
ここで1は、固定フランジ2と、ギア機構及びツールを回転させるためのドライブ3と、の間の圧力を測定するセンサを示している。ドライブ3の側面には、摩擦溶接ヘッド全体への制御ラインが4で示されている。ドライブ3の下面には、ツールドーム7を保持するツールドームフランジ6のための固定プレート5が見られる。
【0016】
器具計測によりツールドーム7の動きを検出可能とするために、温度補償を有するひずみゲージ8が、縦方向に一定間隔をおいてツールドーム7の周囲にマウントされている。これは、ひずみゲージ8の領域で、溶接の間に起こる温度変化及びその結果生じるシグナルシフトを補償するという目的に適う。ユニオンナット9は、摩擦溶接ヘッドの中心軸上にツールドーム7を保持する。
【0017】
ピンチップ12は、溶接シュー11中にガイドされている。レーザ測定センサ10は、溶接シュー11とピンチップ12との間の距離を測定するのに用いられる。
【0018】
接合された部材13に形成された溶接継ぎ目15は、溶接継ぎ目15をチェックするためのカメラ14により観察される。
【0019】
図2は、本発明に係るツールドーム7の側断面図を示す。ここでは、ツールドーム7と接続されたツールドームフランジ6が詳細に見られ、
図1でも示したひずみゲージ形態のセンサ8が、断面においてツールドーム7の両側に見られる。溶接ピン19は、ツールドーム7の中心軸にマウントされ、固定アンテナ16の高さで溶接ピン19を圧電垂直調整する装置17を有する。溶接ピン19上に作用する操作圧は、センサ18により測定される。
【0020】
同領域に設置され溶接ピン19をガイドするツール受入コーン28の断面狭窄部分のセンサ22は、この部分に作用する軸力、トルク及び曲げモーメントを測定するのに用いられる。
【0021】
センサ22により検出された測定値のシグナル伝送は、ツール受入コーン28と共に回転可能なシグナル増幅器及び回転アンテナ23により行われる。
【0022】
センサ22により検出された測定値の受信及び送信は、静的な固定アンテナ16により行われる。
【0023】
誘導電力供給システムは、上述した測定システムに電力を供給するのに用いられ、その固定一次コイルは25で示され、その可動二次コイルは24で示される。
【0024】
溶接ピン19上において接合される部材から生じたスモーク残渣を流出させるための開口20と、接合される部材からの材料流出を測定するためのセンサ21と、がピンチップ12の領域に設けられている。
【0025】
溶接ピン19をガイドする溶接シュー11が、ユニオンナット9により保持されている。
【0026】
カメラ14は、溶接操作の間の操作を記録及び録画するのに用いられる。
【0027】
ピンチップ12から離れて固体伝搬音センサ29が、その方向性効果を溶接ピン19と溶接シュー11との間の領域に向けた状態で、ユニオンナット9の上端領域に設置されている。この点については、
図3を参照されたい。
【0028】
レーザ測定センサ10の反対側に配置されているのは、空気伝送音センサ30である。
【0029】
【0030】
渦電流センサ31は、極めて小さな距離を測定するのに用いられ得る。渦電流センサ31は、溶接方向の横に配置されるのが有利である。
【0031】
図3は、レーザ測定センサ10及び空気伝送音センサ30の平面における部分表示図を示す。
【0032】
ここでは、溶接シュー11の丸穴27内における通常中心位置からのピンチップ12及び溶接ピン19の逸脱が、いかにして検出可能とされるか、また、いかにしてレーザ測定センサ10及びその反対側に配置された空気伝送音センサ30により正確に測定されるかが示されている。
【0033】
また、
図2で示した渦電流センサ31及び固体伝搬音センサ29は、溶接ピン19と溶接シュー11の内周との間の間隙で作用する。
【0034】
矢印26は、溶接ピン19の移動方向を示している。特定の実施形態では、ここでは具体的に図示していない特別な溶接シュー温度センサが設けられている。ショルダボアに対して回転するピンが完全に接触してしまうと(最悪の場合のシナリオ)、約100セ氏温度の温度上昇が起こる。これは、実際の溶接操作と比較して、かなりの温度上昇である。
【0035】
図4は、溶接ピンの破損へと繋がる溶接ピンの摩損の概要を示している。
【0036】
外側から内側に向かって見ていくと、同心円は、ツールドーム7の縁、溶接シュー11の外側境界、そして、特異的には限定されないものの溶接シュー11の内側境界を示している。溶接シュー11の外側境界の周囲において、右に向かう矢印26が指す方向に示されているのはセンサ8である。ツールドーム7の外周に配置されたセンサ8は、
図1及び
図2でも見られる。
図4に示した更なるセンサ8a、8bは、ここでは左後方センサ及び右後方センサとして示されている。
【0037】
溶接シュー11の内側境界にスケッチされているのは、
図3で示した固体伝搬音センサ29であり、溶接シュー11の外側境界に示されているのは、
図3で示した渦電流センサ31と、水平線の左側及び右側に示された空気伝送音センサ30及びレーザ測定センサ10である。
【0038】
記載された円に偏心して、ピンチップ12を有する溶接ピン19が種々の距離線と共に示され、線33は、溶接シュー11の内側境界から溶接ピン19までの距離の理想線、いわゆるギャップゾーンを示している。
【0039】
ギャップゾーンの境界線は、32及び35により示され、溶接ピン19の破損を引き起こし得る危険領域は、34から始まる。溶接ピン19と溶接シュー11との間の最短距離は、アクティブゾーンとして表される。この領域で、溶接シュー11の内側境界と溶接ピン19との間の摩擦が最大となる。この距離は、摩擦溶接ヘッドの進行速度(矢印26)及び溶接ピン19の回転速度に依存している。側方に発生する力は、ツールドーム7又はもっと厳密に言えばそれに固定されたセンサ8、8a、8bにより検出される。
【0040】
以下のセンサにより、発生する更なる力が測定される。
1.レーザ測定センサ10により、溶接ショルダから溶接ピン19までの距離が測定される。
2.固体伝搬音センサ29により、溶接ピン19での振動が測定される。
3.空気伝送音センサ30により、溶接シュー11及びツールドーム7での振動が測定される。
4.渦電流センサ31により、境界線32、35との間のギャップにおける材料の方向が測定される。
【0041】
ピンチップ12が最長耐用寿命を達成する理想線は、線33で達成される。これは、最適な進行とツール回転速度との間の最適化を意味する。
【0042】
図5は、溶接ピンの破損までの時系列概要を示している。
図5のY軸は、正及び負の方向において、時間の関数としてのピンチップに生ずる3つの異なる力の変化を示している。
【0043】
溶接深さは4.3mmであり、ピンチップの進行速度は0.85m/mmである。ピンチップの測定可能な抵抗の開始が左のマーキングラインに見られ、予防時間が約1.7秒後に終了して、破損までに更に0.8秒が過ぎる。
【0044】
この期間に機械制御部は緩和を与え、これによりピンの弾性「スプリングバック」が達成される。そのため、不利な損傷は起こらない。
【0045】
恒久的な損傷は、この期間の後に起こる。
【0046】
図6は、接合される部材13の摩耗状況を示している。
【0047】
図6aでは、ピンチップ12及び溶接ピン19を有する溶接シュー11が、接合される部材13の上又は中において断面で見られ、互いに対向配置された2つのセンサ21が、開口20において溶接ピン19で生じたスモーク残渣の摩耗36(量、強度及び速度)を検出する。
【0048】
図6bは、溶接シュー11における溶接ピン19のピンチップ12を示している。ピン側の境界を示すギャップゾーン32(
図3参照)と溶接シュー側の境界を示すギャップゾーン35により、最大0.8mmの距離Zが定義される。この幅であれば、摩耗36は流入することができる。
【0049】
寸法Xは、溶接シュー11に入ることができる残りのショルダの寸法である。
【0050】
残りのショルダYは、溶接される材料がギャップZを通って流れるのに十分な可塑性を獲得するのに必要な温度を受けるために重要である。温度が低すぎるとビルドアップが起こり、ピンシャフト19が損傷する。
【0051】
寸法X(0.01から0.1mm)は、材料(合金)によって設定される。残りのショルダは、完成された溶接継ぎ目上での溶接シュー11による円滑な操作にも影響を与える熱を発生させる。
【符号の説明】
【0052】
1 フランジ2とドライブ3との間の圧力を測定するためのセンサ
2 ロボットアーム又はガントリブリッジのための固定フランジ
3 ツールのためのギア機構を有するドライブ
4 摩擦溶接ヘッドのための制御ライン
5 ツールドームフランジのための固定プレート
6 ツールドームフランジ
7 ツールドーム
8 ツールドーム7上のセンサ(ひずみゲージ)
8a 左後方センサ
8b 右後方センサ
9 ユニオンナット
10 溶接ピンと溶接シューとの間の距離を測るレーザ測定センサ
11 溶接シュー
12 ピンチップ
13 接合される部材
14 溶接継ぎ目をチェックするためのカメラ
15 溶接継ぎ目
16 固定アンテナ
17 溶接ピン19を圧電垂直調整する装置
18 溶接ピン19への垂直圧力を測定するためのセンサ
19 溶接ピン
20 溶接ピン19上で接合される部材から生じたスモーク残渣材料を流出させるための開口
21 接合される部材の材料流出を測定するためのセンサ
22 ツール受入コーンのためのセンサ(例えば、ひずみゲージ)
23 センサシグナル増幅器及び回転アンテナ
24 誘導電力供給、二次コイル
25 誘導電力供給、一次コイル
26 溶接ピンの移動方向
27 溶接シュー11内の溶接ピン19を通すための丸穴
28 ツール受入コーン
29 固体伝搬音センサ
30 空気伝送音センサ
31 渦電流センサ
32 溶接ピン19の側方におけるギャップゾーン境界
33 溶接シュー11から溶接ピン19までの距離の理想線
34 ギャップゾーンにおける危険領域の始まり
35 溶接シュー11の側方におけるギャップゾーン境界
36 接合される部材13の材料摩耗