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特許7158512適応的探索空間を用いた、パラメータ最適化のためのシステムおよび方法、ならびにそれを用いたユーザインターフェース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】適応的探索空間を用いた、パラメータ最適化のためのシステムおよび方法、ならびにそれを用いたユーザインターフェース
(51)【国際特許分類】
   G06N 99/00 20190101AFI20221014BHJP
【FI】
G06N99/00 180
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021015175
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022086962
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】109142024
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】17/135,349
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ ▲博▼▲ゆう▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 俊方
(72)【発明者】
【氏名】古 宏麒
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲徳▼銘
(72)【発明者】
【氏名】▲頼▼ 建良
(72)【発明者】
【氏名】張 森嘉
【審査官】大桃 由紀雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/179627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の動作パラメータとターゲットパラメータとの複数組の実行値を取得するように構成されたデータ取得部と、
適応的調整部であって、
前記複数組の実行値に応じて、前記動作パラメータのパラメータ空間に対して空間変換を行うように構成されたパラメータ空間変換器、および
前記複数組の実行値に応じて、変換されたパラメータ空間においてパラメータ探索範囲を定義するように構成された探索範囲定義器
を含む適応的調整部と、
前記パラメータ探索範囲を制約条件とし、および、前記ターゲットパラメータの最適化をターゲットとすることにより、前記動作パラメータの推奨値の組を探し出すように構成された最適化探索部と、
を備えた、適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のためのシステム。
【請求項2】
前記適応的調整部が、
前記パラメータ空間変換器による前記空間変換を行うために、前記動作パラメータのグループ関係に応じて前記動作パラメータをフィルタリングするように構成されたパラメータフィルタ
をさらに備えた、請求項1に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のためのシステム。
【請求項3】
前記動作パラメータが、前記動作パラメータの交互作用効果に応じて、複数のグループに分類される、請求項2に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のためのシステム。
【請求項4】
前記パラメータフィルタが、前記ターゲットパラメータに対する前記グループの相関に応じて、前記グループをフィルタリングする、請求項3に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のためのシステム。
【請求項5】
前記パラメータフィルタが、グループラッソ正則化アルゴリズム、スパースグループラッソアルゴリズム、ベイズグループラッソアルゴリズム、複合絶対ペナルティアルゴリズム、またはグループ最小角回帰選択アルゴリズムにより、前記動作パラメータをフィルタリングする、請求項2に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のためのシステム。
【請求項6】
前記パラメータ空間変換器は、前記動作パラメータの交互作用効果を低減し、および、前記ターゲットパラメータに対する前記動作パラメータの識別度を増加させるために前記空間変換を行う、請求項1に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のためのシステム。
【請求項7】
前記パラメータ空間変換器が、部分的最小二乗回帰アルゴリズムまたは主成分分析(PCA)アルゴリズムにより、前記空間変換を行う、請求項1に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のためのシステム。
【請求項8】
前記探索範囲定義器は、前記複数組の前記実行値に応じてガウス過程モデルを取得し、前記ガウス過程モデルに応じて正確な範囲を確保し、および、期待改善量(EI)関数に応じて、前記正確な範囲において前記パラメータ探索範囲を定義する、請求項1に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のためのシステム。
【請求項9】
前記推奨値の組は、制約付きベイズ最適化アルゴリズムにより、探し出される、請求項1に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のためのシステム。
【請求項10】
複数の動作パラメータとターゲットパラメータとの複数組の実行値を取得するステップと、
前記複数組の前記実行値に応じて、前記動作パラメータのパラメータ空間に対して空間変換を行うステップと、
前記複数組の前記実行値に応じて、変換されたパラメータ空間においてパラメータ探索範囲を定義するステップと、
前記パラメータ探索範囲を制約条件とし、および、前記ターゲットパラメータの最適化をターゲットとすることにより、前記動作パラメータの推奨値の組を探し出すステップと
を備えた、適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のための方法。
【請求項11】
前記空間変換を行うために前記動作パラメータのグループ関係に応じて前記動作パラメータをフィルタリングするステップ
をさらに備える、請求項10に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のための方法。
【請求項12】
前記動作パラメータをフィルタリングするステップにおいて、前記動作パラメータが、前記動作パラメータの交互作用効果に応じて、複数のグループに分類される、請求項11に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のための方法。
【請求項13】
前記動作パラメータをフィルタリングするステップにおいて、前記グループが、前記ターゲットパラメータに対する前記グループの相関に応じてフィルタリングされる、請求項12に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のための方法。
【請求項14】
前記動作パラメータが、グループラッソ正則化アルゴリズム、スパースグループラッソアルゴリズム、ベイズグループラッソアルゴリズム、複合絶対ペナルティアルゴリズム、またはグループ最小角回帰選択アルゴリズムによりフィルタリングされる、請求項11に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のための方法。
【請求項15】
前記動作パラメータの前記パラメータ空間に対して前記空間変換を行うステップにおいて、前記空間変換は、前記動作パラメータの交互作用効果を低減し、および、前記ターゲットパラメータに対する、前記動作パラメータの識別度を増加させるように行われる、請求項10に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のための方法。
【請求項16】
前記動作パラメータの前記パラメータ空間に対して前記空間変換を行うステップにおいて、前記空間変換は、部分的最小二乗回帰アルゴリズム、または主成分分析(PCA)アルゴリズムによって行われる、請求項10に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のための方法。
【請求項17】
前記変換されたパラメータ空間において前記パラメータ探索範囲を定義するステップにおいて、ガウス過程モデルが前記複数組の前記実行値に応じて取得され、正確な範囲が前記ガウス過程モデルに応じて確保され、および、前記正確な範囲において前記パラメータ探索範囲が、期待改善量(EI)関数に応じて定義される、請求項10に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のための方法。
【請求項18】
前記動作パラメータの前記推奨値の組を探し出すステップにおいて、前記推奨値の組が、制約付きベイズ最適化アルゴリズムにより探し出される、請求項10に記載の適応的探索空間を用いたパラメータ最適化のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、適応的探索空間(adaptive search space)を用いた、パラメータ最適化(parameter optimization)のためのシステムおよび方法、ならびにそれを用いたユーザインターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
産業界では、ターゲットパラメータ(target parameter)を最適化するために動作パラメータ(operating parameters)の推奨値(recommended values)の組を探索する必要がある。たとえば、台湾特許出願公開第201019137号公報には、製造パラメータ探索方法が開示されている。動作パラメータの高い交互作用効果(interaction effect)のため、効果的なパラメータ探索範囲(parameter search range)を定義するのは容易ではない。定義されたパラメータ探索範囲が狭すぎる場合、最適でない局所解(non-optimal local solution)に収束し得る。定義されたパラメータ探索範囲が広すぎる場合、最適解(optimal solution)に収束し得るためには、試行回数が極めて大きくなければならない。多くの業界は、少ないプロセス機器および非常に高価な材料を有している。試行回数が多すぎる場合、製品の納期に影響を及ぼすのみならず、多くの費用の浪費をもたらす。
【0003】
したがって、交互作用効果の高い動作パラメータの場合、研究者は、パラメータ最適化の速度を加速させるために、効果的なパラメータ探索範囲をどのようにして定義するかを積極的に研究している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、適応的探索空間を用いた、パラメータ最適化のためのシステムおよび方法、ならびにそれを用いたユーザインターフェースに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、適応的探索空間を用いた、パラメータ最適化のためのシステムが提供される。システムは、データ取得部(data acquisition unit)、適応的調整部(adaptive adjustment unit)、および最適化探索部(optimization search unit)を含む。適応的調整部は、パラメータ空間変換器(parameter space transformer)、および探索範囲定義器(search range definer)を含む。データ取得部は、複数の動作パラメータ(operating parameters)とターゲットパラメータ(target parameter)との複数組の実行値(executed values)を取得するように構成される。パラメータ空間変換器は、複数組の実行値に応じて、動作パラメータのパラメータ空間(parameter space)に対して空間変換(space transformation)を行うように構成される。探索範囲定義器は、複数組の実行値に応じて、変換されたパラメータ空間においてパラメータ探索範囲(parameter search range)を定義するように構成される。最適化探索部は、パラメータ探索範囲を制約条件(limiting condition)とし、および、ターゲットパラメータの最適化をターゲットとすることにより、動作パラメータの推奨値(recommended values)の組を探し出すように構成される。
【0006】
別の実施形態によれば、適応的探索空間を用いた、パラメータ最適化のための方法が提供される。方法は以下のステップを含む。複数の動作パラメータとターゲットパラメータとの複数組の実行値が取得される。複数組の実行値に応じて、動作パラメータのパラメータ空間に対して空間変換が行われる。複数組の実行値に応じて、変換されたパラメータ空間においてパラメータ探索範囲が定義される。パラメータ探索範囲を制約条件とし、および、ターゲットパラメータの最適化をターゲットとすることにより、動作パラメータの推奨値の組が探し出される。
【0007】
代替的な実施形態によれば、ユーザインターフェース(user interface)が提供される。ユーザインターフェースは、フィルタリングウィンドウ(filtering window)、パラメータ探索範囲ウィンドウ(parameter search range window)、および推奨値ウィンドウ(recommended value window)を含む。分類ウィンドウ(classifying window)は、複数の動作パラメータの複数のグループを示すように構成される。フィルタリングウィンドウは、動作パラメータをフィルタリングした結果を示すように構成される。パラメータ探索範囲ウィンドウは、パラメータ探索範囲を示すように構成される。推奨値ウィンドウは、動作パラメータの推奨値の組を示すように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】適応的探索空間を用いたパラメータ最適化システムのブロック図を示す。
図2】異なるパラメータ探索範囲の例を示す。
図3】実施形態による、適応的探索空間を用いたパラメータ最適化方法のフローチャートを示す。
図4】実施形態によるステップS110の概略図を示す。
図5】ステップS121の概略図を示す。
図6】ステップS122の概略図を示す。
図7】実施形態による、変換された成分のガウス過程モデルを示す。
図8】変換された成分の期待改善量(EI)関数を示す。
図9】実施形態による、実行値範囲およびパラメータ探索範囲を示す。
図10】プロセスを2回実行することによって取得された2つのパラメータ探索範囲を示す。
図11】従来のベイズ最適化フィルタリング(FBO)技術および本技術に基づいた、パラメータ最適化の比較を示す。
図12】ユーザインターフェースの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、説明の目的のために、数多くの具体的な詳細が、開示された実施形態の徹底的な理解を提供するために記載されている。しかし、これらの具体的な詳細なしで1つまたは複数の実施形態を実施することができることが明らかになるであろう。他の場合には、図面を簡略化するために、周知の構造および装置を概略的に示している。
【0010】
適応的探索空間を用いたパラメータ最適化システム(parameter optimization system)100のブロック図を示す図1を参照されたい。パラメータ最適化システム100は、データ取得部110、適応的調整部120、最適化探索部130、およびユーザインターフェース140を含む。適応的調整部120は、パラメータフィルタ(parameter filter)121、パラメータ空間変換器(parameter space transformer)122、および探索範囲定義器(search range definer)123を含む。データ取得部110、適応的調整部120、パラメータフィルタ121、パラメータ空間変換器122、探索範囲定義器123、および/または最適化探索部130は、たとえば、回路、チップ、回路基板、またはプログラムコードを記憶する記憶装置である。ユーザインターフェース140はたとえば、表示画面、入出力装置、またはスマートフォンである。パラメータ最適化システム100は、歩留まりなどのターゲットパラメータを最適化するために、プロセス機器(process equipment)900(または製造ライン)の、圧力、温度、および流量などのいくつかの動作パラメータを最適化するために使用される。最適化プロセスでは、適応的調整部120のパラメータ空間変換器122はパラメータ空間変換を行い、適応的調整部120の探索範囲定義器123は、最適化プロセスの効率を改善するために、好適なパラメータ探索範囲を定義する。異なるパラメータ探索範囲Ra、Rb、Rcの例を示す図2を参照されたい。図2の左側に示すように、従来のパラメータ探索範囲Raは範囲全体に固定され、および最適解(四角い点)に収束するためには、かなりの試行回数を要する。図2の右側に示すように、この実施形態では、反復中に、パラメータ探索範囲は、動的に調整され(たとえば、パラメータ探索範囲Rbは、複数の反復後、パラメータ探索範囲Rcに調整され)、それほど多くない試行回数で最適解(optimal solution)(四角い点)に速やかに収束することが可能である。以下は、各構成部分の動作を詳細に説明するためのフローチャートである。
【0011】
実施形態による、適応的探索空間を用いたパラメータ最適化方法のフローチャートを示す図3を参照されたい。ステップS110では、データ取得部110は、複数の動作パラメータとターゲットパラメータとの複数組の実行値を取得する。たとえば、実施形態によるステップS110の概略図を示す図4を参照されたい。プロセス機器900はたとえば、3つの動作パラメータx1、x2、x3、および1つのターゲットパラメータyを有する。たとえば、動作パラメータx1は流量であり、動作パラメータx2は温度であり、動作パラメータx3は圧力である。ターゲットパラメータyはたとえば、歩留まり(yield)である。動作パラメータの数は3に限定されず、動作パラメータの数は2であってもよいし、または3よりも大きくてもよい。その後のステップは、動作パラメータx1、x2、x3、およびターゲットパラメータyを例とすることにより、説明しているが、この実施形態が動作パラメータの数を限定するものでないことは強調しなければならない。動作パラメータx1、x2、x3、およびターゲットパラメータy(図1に示す)の実行値DTのいくつかの組をたとえば、表1に示す。反復プロセスにおいて試行された実行値が含まれることになる限り、実行値の組の数は、3に限定されるものでなく、その後の最適化プロセスは最適解に向けて進行し得るように増加し続けていく。
【表1】
【0012】
【0013】
グループラッソ回帰アルゴリズム(group lasso regression algorithm)に加えて、パラメータフィルタ121は、スパースグループラッソアルゴリズム(Sparse Group Lasso algorithm)、ベイズグループラッソアルゴリズム(Bayesian Group Lasso algorithm)、複合絶対ペナルティアルゴリズム(Composite Absolute Penalty algorithm)、またはグループ最小角回帰選択アルゴリズム(Group Least Angle Regression Selection algorithm)を使用して、これらの動作パラメータx1、x2、x3をフィルタリングすることも可能である。
【0014】
さらに、各グループにおける動作パラメータの数は、1または2に限定されず(3以上であり得る)。さらに、各グループにおける動作パラメータの数は同じでなくてよい。
【0015】
このステップでは、動作パラメータx1、x2、x3が交互作用効果に応じて分類されるので、互いに影響を及ぼすことが容易な動作パラメータx2およびx3が併せて考慮されることが可能であり、および、動作パラメータx2、x3の交互作用効果は、その後の空間変換によって低減され得る。さらに、グループG1およびG2は、ターゲットパラメータyに対する相関が最も大きいグループG2が残されるように、ターゲットパラメータyに対する相関に応じてフィルタリングされるので、最適化プロセスがより速やかに収束され得る。
【0016】
その後、ステップS122では、パラメータ空間変換器122は、実行値DT(図1に示す)の組に応じて、動作パラメータx2、x3のパラメータ空間に対して空間変換を行う。ステップS122の概略図を示す図6を参照されたい。たとえば、図6中の実線座標軸は、元のパラメータ空間(original parameter space)の動作パラメータx2、x3である。図6中の点線座標軸は、変換されたパラメータ空間の変換された成分comp1、comp2である。パラメータ空間変換器122は、たとえば、部分的最小二乗回帰アルゴリズム(Partial Least Squares regression algorithm)により、空間変換を行う。以下の式(1)に示すように、部分的最小二乗回帰アルゴリズムでは、Xは、動作パラメータx2、x3を記録する行列(matrix)であり、Sは変換された成分comp1およびcomp2を記録する行列であり、wは変換行列(transformation matrix)である。
【数1】
【0017】
部分的最小二乗回帰アルゴリズムでは、主に、wを取得することが必要であるので、変換された成分comp1および変換された成分comp2は、ターゲットパラメータyに対して最大の相関、すなわち以下の式(2)を有する。
【数2】
【0018】
変換された成分comp1と変換された成分comp2との間には直交関係が存在し、これは、パラメータの交互作用効果を低減することが可能である。変換された成分comp1および変換された成分comp2は、元の動作パラメータx2、x3の変動を維持することが可能であり、ターゲットパラメータyに対する識別度(recognition)を改善することも可能である。
【0019】
変換された成分comp1、comp2と動作パラメータx2、x3との間の関係は以下の通りである。
【数3】
【0020】
上記式(3)は、以下の式(4)、(5)としても表すことが可能である。
【数4】
【数5】
【0021】
以下の表2および3に示すように、表2は動作パラメータx2、x3である。空間変換後、表3の変換された成分comp1、comp2が取得され得る。
【表2】
【表3】
【0022】
上述した部分的最小二乗回帰アルゴリズムに加えて、パラメータ空間変換器122は、主成分分析(Principal Component Analysis)(PCA)アルゴリズムにより、空間変換を行うことも可能である。
【0023】
次いで、ステップS123では、適応的調整部120の探索範囲定義器123は、実行値DT(図1に示す)の組に応じて、変換されたパラメータ空間において、パラメータ探索範囲RG(図1に示す)を定義する。このステップは以下の手順を含む。実施形態による、変換された成分comp1のガウス過程モデル(Gaussian process model)GP1を示す図7を参照されたい。図7に示すように、探索範囲定義器123は、実行値DTの組に応じて、変換された成分comp1のガウス過程モデルGP1を取得する。ガウス過程モデルGP1は不正確さ(inaccuracy)を示す。実行値DTの組により近いほど、不正確さはより低くなる。実行値DTの組から遠くなるほど、不正確さは高くなる。
【0024】
次いで、探索範囲定義器123は、ガウス過程モデルGP1により、-15~25などの正確な範囲A1を確保する(reserves)。
【0025】
次いで、変換された成分comp1の期待改善量(EI:Expected Improvement)関数C1を示す図8を参照されたい。EI関数C1では、縦軸は期待改善量(EI)であり、横軸は、変換された成分comp1の正確な範囲(accurate range)である。探索範囲定義器123は次いで、期待改善量値に基づいて、正確な範囲A1において探索範囲R11を定義する。図8に示すように、実行値DTの組が位置している、0.40~2.30の範囲内に、変換された成分comp1がある場合、期待改善量値は0である。変換された成分comp1を0.40から-2.50に移動させた場合、期待改善量値は0.62に、大きく増加させることが可能である。変換された成分comp1を2.3から25に移動させた場合、期待改善量値はわずかに、0.004にしか、増加させることができない。より大きな改善量を得るためには、変換された成分comp1を負の方向に移動させればよいことが分かり得る。したがって、探索範囲定義器123は、探索範囲R11として、-2.50~0.40の範囲内で、変換された成分comp1を定義することが可能であり、これは、以下の式(6)である。
【数6】
【0026】
同様に、同様の方法で、探索範囲定義器123は、探索範囲R12(図9に示す)として、0.19~0.95の区間内で、変換された成分comp2を定義することが可能である。
【数7】
【0027】
実施形態による、実行値範囲R0およびパラメータ探索範囲R1を示す図9を参照されたい。実行値DTの組は、点P1、点P2、および点P3を含む。点P1、点P2、および点P3は、実行値範囲R0内に位置している。探索範囲定義器123はさらに、パラメータ探索範囲R1を形成するために、実行値範囲R0に基づいて、変換された成分comp1において探索範囲R11を定義し、および、変換された成分comp2において探索範囲R12を定義する。パラメータ探索範囲R1は、最適解に向かう収束の確率がかなり高い範囲である。
【0028】
その後、ステップS130において、最適化探索部130は、パラメータ探索範囲R1を制約条件とし、および、ターゲットパラメータyの最適化を、図9中の点P4などの推奨値RVの組を探索するためのターゲットとする(推奨値RVの組が図1に示される)。たとえば、最適化探索部123は、以下の式(8)に示すように、制約付きベイズ最適化アルゴリズム(Constrained Bayesian optimization algorithm)により、動作パラメータx1、x2、x3の推奨値RVの組を探索することが可能である。
【数8】
【0029】
動作パラメータx1、x2、およびx3の推奨値RVの組は、取得された後、対応するターゲットパラメータyを取得するために、プロセス機器900(または製造ライン)に提供され得る。最適解の探索が収束していない場合、この値の組を、実行値DT(図1に示す)の組に加え、およびステップS110、S121、S122、S123、S130を再び実行する。再び実行するプロセスにおいて、ステップS121のグループ化結果およびフィルタリング結果は、変更されてもよいし、または同じであってもよい。ステップS122およびS123では、空間変換を行うための動作パラメータ、およびパラメータ探索範囲を定義するための動作パラメータも、変更されてもよいし、または、変更されなくてもよい。
【0030】
プロセスを2回実行することによって取得されたパラメータ探索範囲R1およびパラメータ探索範囲R2を示す図10を参照されたい。図10に示すように、最初の、実行値DTの組は、点P1、点P2、および点P3である。点P1、点P2、および点P3は、実行値範囲R0内に位置している。プロセスが一度実行された後、パラメータ探索範囲R1が取得され、および、パラメータ探索範囲R1内で点P4が推奨される。プロセスが2度目に実行された後、パラメータ探索範囲R2が取得され(動作パラメータx2、x3がステップS121において選択され)、および、パラメータ探索範囲R2内で点P5が推奨される。図10の例では、第1の実行プロセスおよび第2の実行プロセスの両方において、動作パラメータx2、x3が選択されるので、パラメータ探索範囲R1およびパラメータ探索範囲R2は同じグラフ上に描かれ得る。第1の実行プロセスおよび第2の実行プロセスの両方において、動作パラメータx2およびx3が選択されない場合、パラメータ探索範囲R1およびパラメータ探索範囲R2は同じグラフ上にプロットされ得ない。
【0031】
別の実施形態では、上記ステップS121は省略することが可能であり、および、動作パラメータx1、x2、x3はすべて、パラメータ探索範囲の調整対象として使用される。
【0032】
従来のベイズ最適化フィルタリング(FBO)技術および本技術に基づく、パラメータ最適化の比較を示す図11を参照されたい。研究者はまず、実行値DTの同じ組により、FBO技術および本技術を実行した。図11から、最適化プロセス中のFBO技術の推奨値の組が随所に散らばっており、および、最適解に収束するにはかなりの数の反復を要することが分かり得る。本技術を実行することにより、パラメータ探索範囲R6は、パラメータ探索範囲R7を介して探索範囲R8に調整され、および、最適解が速やかに探索される。
【0033】
研究者は、同じ実験条件下で、本技術をいくつかの他の従来の技術と比較し、および、表4に示すように、最適解に収束した反復数を整理した。第1の方法は従来のベイズ最適化(BO)技術であり、第2の方法はPCA-BO技術であり、第3の方法はFBO技術であり、第4の方法は、ステップS121が省略された本技術であり、および、第5の手法は、ステップS121が省略されていない本技術である。
【表4】
【0034】
明らかに、実験条件にかかわらず、本技術は、最適解に速やかに収束することが可能である。
【0035】
【0036】
上記実施形態により、パラメータ探索範囲は、空間変換技術により、適応的に調整され得、あまり多くない試行回数で、最適解に速やかに収束することが可能である。さらに、動作パラメータが多すぎる場合、空間変換を行うために、および、パラメータ探索範囲を定義するために動作パラメータの一部が選択され、パラメータ最適化の効率を改善することが可能である。
【0037】
開示された実施形態に対して種々の修正および変形を行い得ることは当業者には明らかであろう。明細書および実施例が例示的なものであるにすぎないと考えられ、本開示の真の範囲が、以下の複数の請求項、およびそれらの同等物によって示されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12