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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】搬送物検知システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20120101AFI20221014BHJP
【FI】
G06Q10/08 306
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021116159
(22)【出願日】2021-07-14
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】316007779
【氏名又は名称】ジック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】浴 辰也
(72)【発明者】
【氏名】横溝 圭
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/033524(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/051507(WO,A1)
【文献】特開2001-074855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグを有する搬送物を検知するための搬送物検知システムであって、
レーザー光を出射するレーザー出射部、前記レーザー光の照射方向を連続的に変更して前記レーザー光で所定の検知領域を含む空間内を走査するようにする走査部、及び前記レーザー光の反射光を受光する受光部を有し、前記反射光に基づいて前記検知領域内の搬送物の位置を検知するためのLiDARセンサと、
前記検知領域内にあるRFIDタグの情報を読み取るRFIDリーダと、
前記LiDARセンサが検知した前記搬送物の位置の変化に基づいて前記搬送物の移動方向を判定し、前記RFIDリーダで読み取った前記搬送物のRFIDタグの情報と前記移動方向とを関連付ける演算部と、
を備える、搬送物検知システム。
【請求項2】
前記LiDARセンサによって前記検知領域内に搬送物があることを検知している間に、前記RFIDリーダによる前記RFIDタグの読み取りを行なうようにする、請求項1に記載の搬送物検知システム。
【請求項3】
前記検知領域が、搬送物の想定される動線に沿った方向での一方の側に位置する方向判定領域を含み、
前記演算部は、前記搬送物が前記検知領域にあること、及び前記搬送物が前記検知領域内において前記方向判定領域にあることを判定し、前記搬送物が前記方向判定領域を通過するタイミングに基づいて、前記移動方向を特定するようにされた、請求項1または2に記載の搬送物検知システム。
【請求項4】
前記方向判定領域は、前記検知領域の前記一方の側の境界に隣接して位置し、
前記演算部は、前記搬送物が前記検知領域に入ってから第1時間後の第1時点及び前記搬送物が前記検知領域を出る第2時間前の第2時点で、前記搬送物が前記方向判定領域にあったかを判定し、前記搬送物が前記第1時点では前記方向判定領域になく前記第2時点では前記方向判定領域にあった場合には前記移動方向が前記一方の側に向かう第1方向であると判断し、前記搬送物が前記第1時点では前記方向判定領域にあり前記第2時点では前記方向判定領域になかった場合には前記移動方向が前記第1方向とは逆の第2方向であると判断するようにされた、請求項3に記載の搬送物検知システム。
【請求項5】
前記演算部は、前記搬送物が前記検知領域に入ってから前記方向判定領域に入るまでの間の第1経過時間と、前記搬送物が前記方向判定領域を出てから前記検知領域を出るまでの間の第2経過時間とを比較し、前記第1経過時間が前記第2経過時間よりも長い場合には前記移動方向が前記一方の側に向かう第1方向であると判断し、前記第1経過時間が前記第2経過時間よりも短い場合には前記移動方向が前記第1方向とは逆の第2方向であると判断するようにされた、請求項3に記載の搬送物検知システム。
【請求項6】
前記検知領域が、複数の方向判定領域を含み、
前記演算部は、前記搬送物が前記検知領域にあること及び前記搬送物が前記検知領域内においてどの方向判定領域内にあるかを判定し、前記搬送物が前記複数の方向判定領域をどのような順番で通過したかを求めることにより前記移動方向を特定するようにされた、請求項1または2に記載の搬送物検知システム。
【請求項7】
前記複数の方向判定領域には、搬送物の想定される1つ又は複数の動線の一方の側における前記検知領域の境界に隣接して位置する方向判定領域と、他方の側における前記検知領域の境界に隣接して位置する方向判定領域とが少なくとも含まれ、
前記演算部は、前記搬送物が前記検知領域に入ってから第1時間後の第1時点及び前記搬送物が前記検知領域を出る第2時間前の第2時点で、前記搬送物がどの方向判定領域にあったかを判定し、前記搬送物の前記移動方向が前記第1時点で位置していた方向判定領域から前記第2時点で位置していた方向判定領域に向かう方向であると判断するようにされた、請求項6に記載の搬送物検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物検知システムに関し、より詳細にはRFID(Radio Frequency Identifier)タグを有する搬送物を検知するための搬送物検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工場内での物の移動や倉庫での物の入庫及び出庫を管理するために、搬送物にその搬送物の情報が格納されたRFIDタグを付しておいて、所定の領域を通過する際にそのRFIDタグの情報をRFIDリーダで読み取ることにより、どの搬送物がその領域を通過したのかを検知することが行なわれている。工場内において搬送物の移動方向が決まっている場合や、倉庫において搬送物の入口と出口が別にある場合などは、搬送物が通過する方向が予め分かっているため、搬送物の移動方向を特定する必要はなく、RFIDリーダでRFIDタグの情報を読み取るだけで搬送物の管理を行なうことができる。しかしながら、例えば倉庫において入庫と出庫が行なわれる通路が共通している場合など、搬送物の移動方向が予め決まっていない場合には、RFIDリーダでRFIDタグの情報を単に読み取るだけでは、搬送物がその領域をどの方向に通過したのかを検知することができず、搬送物の管理を十分に行えないことがある。
【0003】
そのような問題を解決するために、例えば特許文献1においては、2つのRFIDアンテナを相互に干渉しないように離して設置して、2つのRFIDアンテナがRFIDタグを検知する時系列により搬送物がどちらのRFIDアンテナの側からどちらのRFIDアンテナの側に移動したのかを判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-8678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2つのRFIDアンテナを相互に干渉しないようにするためには比較的に大きく離れた位置に配置する必要があり、搬送物を検知するために広い場所が要求される。これにより、設置できる場所が限られる。
【0006】
そこで本発明は、上述の従来技術における上記問題を解決することができる、RFIDタグを有する搬送物を検知するための搬送物検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
RFIDタグを有する搬送物を検知するための搬送物検知システムであって、
レーザー光を出射するレーザー出射部、前記レーザー光の照射方向を連続的に変更して前記レーザー光で所定の検知領域を含む空間内を走査するようにする走査部、及び前記レーザー光の反射光を受光する受光部を有し、前記反射光に基づいて前記検知領域内の搬送物の位置を検知するためのLiDARセンサと、
前記検知領域内にあるRFIDタグの情報を読み取るRFIDリーダと、
前記LiDARセンサが検知した前記搬送物の位置の変化に基づいて前記搬送物の移動方向を判定し、前記RFIDリーダで読み取った前記搬送物のRFIDタグの情報と前記移動方向とを関連付ける演算部と、
を備える、搬送物検知システムを提供する。
【0008】
当該搬送物検知システムにおいては、LiDARセンサを利用して搬送物の移動方向を検知するとともに、RFIDリーダによってその搬送物に付されたRFIDタグの情報を読み取ることにより、どのような搬送物がどの方向に搬送されたのかを検出することが可能となる。また、当該搬送物検知システムは、上述の2つのRFIDアンテナを利用した従来のシステムのようにアンテナの相互干渉の問題が生じないため、比較的に狭い場所においても適用することが可能となる。
【0009】
また、前記LiDARセンサによって前記検知領域内に搬送物があることを検知している間に、前記RFIDリーダによる前記RFIDタグの読み取りを行なうようにすることができる。これにより、RFIDリーダによる読み取りを行なう期間を限定することができる。
【0010】
さらには、前記検知領域が、搬送物の想定される動線に沿った方向での一方の側に位置する方向判定領域を含み、
前記演算部は、前記搬送物が前記検知領域にあること、及び前記搬送物が前記検知領域内において前記方向判定領域にあることを判定し、前記搬送物が前記方向判定領域を通過するタイミングに基づいて、前記移動方向を特定するようにすることができる。
【0011】
具体的には、
前記方向判定領域は、前記検知領域の前記一方の側の境界に隣接して位置し、
前記演算部は、前記搬送物が前記検知領域に入ってから第1時間後の第1時点及び前記搬送物が前記検知領域を出る第2時間前の第2時点で、前記搬送物が前記方向判定領域にあったかを判定し、前記搬送物が前記第1時点では前記方向判定領域になく前記第2時点では前記方向判定領域にあった場合には前記移動方向が前記一方の側に向かう第1方向であると判断し、前記搬送物が前記第1時点では前記方向判定領域にあり前記第2時点では前記方向判定領域になかった場合には前記移動方向が前記第1方向とは逆の第2方向であると判断するようにすることができる。
【0012】
または、前記演算部は、前記搬送物が前記検知領域に入ってから前記方向判定領域に入るまでの間の第1経過時間と、前記搬送物が前記方向判定領域を出てから前記検知領域を出るまでの間の第2経過時間とを比較し、前記第1経過時間が前記第2経過時間よりも長い場合には前記移動方向が前記一方の側に向かう第1方向であると判断し、前記第1経過時間が前記第2経過時間よりも短い場合には前記移動方向が前記第1方向とは逆の第2方向であると判断するようにすることができる。
【0013】
さらには、
前記検知領域が、複数の方向判定領域を含み、
前記演算部は、前記搬送物が前記検知領域にあること及び前記搬送物が前記検知領域内においてどの方向判定領域内にあるかを判定し、前記搬送物が前記複数の方向判定領域をどのような順番で通過したかを求めることにより前記移動方向を特定するようにすることができる。
【0014】
この場合には、
前記複数の方向判定領域には、搬送物の想定される1つ又は複数の動線の一方の側における前記検知領域の境界に隣接して位置する方向判定領域と、他方の側における前記検知領域の境界に隣接して位置する方向判定領域とが少なくとも含まれ、
前記演算部は、前記搬送物が前記検知領域に入ってから第1時間後の第1時点及び前記搬送物が前記検知領域を出る第2時間前の第2時点で、前記搬送物がどの方向判定領域にあったかを判定し、前記搬送物の前記移動方向が前記第1時点で位置していた方向判定領域から前記第2時点で位置していた方向判定領域に向かう方向であると判断するようにすることができる。
【0015】
複数の方向判定領域を設定することにより、搬送物が複数の動線に沿ってより複雑に移動することが想定される場合でも、搬送物の移動方向を特定することが可能となる。
【0016】
以下、本発明に係る搬送物検知システムの実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送物検知システムを示す図である。
図2図1の搬送物検知システムの機能ブロック図である。
図3図1の搬送物検知システムのLiDARセンサの構成を示す図である。
図4】搬送物が第1方向に移動したときの、コントローラによる移動方向検知のタイムチャートを示す図である。
図5】搬送物が第2方向に移動したときの、コントローラによる移動方向検知のタイムチャートを示す図である。
図6】別の方法による、搬送物が第1方向に移動したときの、移動方向検知のタイムチャートを示す図である。
図7】別の方法による、搬送物が第2方向に移動したときの、移動方向検知のタイムチャートを示す図である。
図8】検知領域内に複数の方向判定領域を設定した、搬送物検知システムを示す図である。
図9図8の搬送物検知システムにおける、搬送物が第1方向に移動したときの、移動方向検知のタイムチャートを示す図である。
図10図8の搬送物検知システムにおける、搬送物が第2方向に移動したときの、移動方向検知のタイムチャートを示す図である。
図11】搬送物検知システムを丁字路通路に適用した状態を示す図である。
図12図11の搬送物検知システムにおける、コントローラによる移動方向検知のタイムチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る搬送物検知システム1は、図1及び図2に示すように、通路Aを通過する搬送物Oを検知するためのLiDAR(Light Detection And ranging)センサ10と、搬送物Oに付されたRFIDタグPの情報を読み取るRFIDリーダ12と、LiDARセンサ10及びRFIDリーダ12に接続されたコントローラ(演算部)14とを備える。
【0019】
図3に示すように、LiDARセンサ10は、その内部に、計測用のレーザー光Lをパルス状に出射するレーザー出射部20と、レーザー光Lを反射して外部の空間内を走査するようにする走査部22と、空間内で物体に当たったレーザー光Lの反射光Rを受光する受光部24とを有する。走査部22は、回転駆動される回転台26と、その上に取り付けられたミラー28と、回転台26の回転位置を検出するためのエンコーダ30とを有する。ミラー28は、回転台26とともに回転駆動されて、反射したレーザー光Lの照射方向を水平面内で連続的に変更する。これにより外部空間内に照射されるレーザー光Lは、図1に示すような扇形状に走査されることになる。外部空間においてレーザー光Lが物体に当たると、レーザー光Lは反射してその一部の反射光RがLiDARセンサ10内に戻り、ミラー28を介して受光部24に集光される。LiDARセンサ10は、レーザー出射部20がレーザー光Lを出射してから受光部24が反射光Rを受光するまでの時間に基づいてそのレーザー光Lが照射された物体までの距離を測定するとともに、そのときの走査部22の回転方向位置からレーザー光Lが放射された方向を特定してその物体の方向を特定する。レーザー光Lを空間内で走査しながら測定を行なうことにより空間内の水平面内での物体の位置を示す2次元の点群データが得られる。LiDARセンサ10はこの点群データをコントローラ14に送信する。
【0020】
コントローラ14は、LiDARセンサ10から受信した点群データに基づいて、通路Aを通過する搬送物Oの位置を特定して、その移動方向を判定する。具体的には、コントローラ14は、レーザー光Lが照射される領域B内に所定の検知領域C(図1)を設定し、この検知領域C内に搬送物Oが侵入したことを点群データから判断する。検知領域C内に搬送物Oが侵入したことを検知した場合には、図4及び図5に示すように、コントローラ14の制御プログラム内において第1フラグがONになる。コントローラ14はさらに、検知領域C内において搬送物Oの想定される動線Mに沿った方向での一方の側に位置する方向判定領域Dを設定し、この方向判定領域Dに搬送物Oが侵入したことを点群データから判断する。当該実施形態では搬送物Oは図1において上下方向に延びる通路Aに沿って移動することが想定されているため、想定される動線Mは図で見て上下方向となり、方向判定領域Dは検知領域C内の下方側に設定されている。方向判定領域D内に搬送物Oが侵入したことを検知した場合には、図4及び図5に示すように第2フラグがONになる。搬送物Oが検知領域C及び方向判定領域Dから出ると、第1フラグ及び第2フラグはそれぞれOFFになる。第1フラグ及び第2フラグがともにOFFになると、コントローラ14は、第1フラグがONになってから第1時間後の第1時点T1における第2フラグの状態と、第2フラグがOFFになる第2時間前の第2時点T2における第2フラグの状態とを求める。
【0021】
搬送物Oが検知領域Cを図で見て下方に向かって通過した場合には、図4に示すように、第1時点T1において第2フラグはOFFであり、第2時点T2において第2フラグはONになっている。また、搬送物Oが通路Aを図で見て上方に向かって通過した場合には、図5に示すように、第1時点T1において第2フラグはONとなっており、第2時点T2において第2フラグはOFFになっている。コントローラ14は、第1時点T1と第2時点T2における第2フラグの状態を確認し、第1時点T1では第2フラグがOFFであり第2時点T2では第2フラグがONであった場合(図4)には搬送物Oの移動方向が図で見て下方に向かう第1方向であったと判断し、第1時点T1では第2フラグがONであり第2時点T2では第2フラグがOFFであった場合(図5)には搬送物Oの移動方向が第1方向とは逆の上方に向かう第2方向であったと判断する。なお、第1時点T1と第2時点T2における第2フラグの状態が同じであった場合には、搬送物Oが途中で引き返したことが想定され、検知領域を一方の側から他方の側に通過していないと考えられるため、コントローラはそれを示すエラー信号を発する。このようにしてコントローラ14は、搬送物Oがどのタイミングで方向判定領域Dを通過するかに基づいて、搬送物Oの移動方向を特定する。
【0022】
またコントローラ14は、第1フラグがONになったときに、タグ読み取り信号をONにする。タグ読み取り信号はRFIDリーダ12に送信され、信号を受信したRFIDリーダ12はRFIDタグPの読み取りを開始する。コントローラ14は、第1フラグがOFFになったときに、タグ読み取り信号をOFFにする。タグ読み取り信号がOFFになるとRFIDリーダ12はRFIDタグPの読み取りを終了し、読み取ったRFIDタグPの情報をコントローラ14に送信する。コントローラ14は、上述のようにして検知した搬送物Oの移動方向とRFIDタグの情報とを関連付けて保存する。なお、コントローラ14は、搬送物Oの移動方向とRFIDタグの情報とを他の外部装置に送信するようになっていてもよい。
【0023】
コントローラ14は、LiDARセンサ10から受信した点群データから検知領域C内に侵入した物体の大きさや形状を求めて、その物体が検知対象となる搬送物Oであるのかを判断するようになっている。コントローラ14は、検知領域C内で検知した物体が対象となる搬送物Oではないと判断したときには第1フラグをONにしない。これにより、例えば検知領域に人が入った時などに、それを誤って搬送物Oであると誤検知することを防止できる。
【0024】
コントローラ14は、次のようにして搬送物Oの移動方向を特定することもできる。すなわち、図6及び図7に示すように、第1フラグがONになってから第2フラグがONになるまでの第1経過時間U1と、第2フラグがOFFになってから第1フラグがOFFになるまでの第2経過時間U2とを求めて第1経過時間U1と第2経過時間U2とを比較し、第1経過時間U1の方が長い場合には搬送物Oの移動方向が図で見て下方に向かう第1方向であったと判断し(図6)、第1経過時間U1の方が短い場合には搬送物Oの移動方向が第1方向とは逆の上方に向かう第2方向であったと判断する(図7)ようにすることもできる。
【0025】
またコントローラ14は、図8に示すように、検知領域C内に第1の方向判定領域D1と第2の方向判定領域D2とを設定することもできる。第1の方向判定領域D1は、搬送物Oの想定される動線Mの一方の側(図で見て上方側)における検知領域Cの境界に隣接して位置し、第2の方向判定領域D2は、動線Mの他方の側(図で見て下方側)における検知領域Cの境界に隣接して位置する。この場合には、コントローラ14は、搬送物Oが検知領域Cを通過する際に第1の方向判定領域D1と第2の方向判定領域D2をどのような順番で通過したかを判定することにより、搬送物Oの移動方向を特定する。別の言い方をすれば、搬送物Oが検知領域Cに入ってから最初に入った方向判定領域と検知領域Cを出る前に最後に入っていた方向判定領域を特定することにより搬送物Oの移動方向を特定する。具体的にはコントローラ14は、図9及び図10に示すように、第1の方向判定領域D1内に搬送物Oが侵入したことを検知した場合には第2フラグをONにし、第2の方向判定領域D2内に搬送物Oが侵入したことを検知した場合には第3フラグをONにする。コントローラ14は、第1フラグがONになってから第1時間後の第1時点T1と第1フラグがOFFになる第2時間前の第2時点T2とにおける第2フラグ及び第3フラグの状態を確認する。第1時点T1で第2フラグがONであり第2時点T2で第3フラグがONの場合には搬送物の移動方向が図で見て下方に向かう第1方向であったと判断する(図9)。また、第1時点T1で第3フラグがONであり第2時点T2で第2フラグがONであった場合には、搬送物の移動方向は第1方向とは逆の上方に向かう第2方向であったと判断する(図10)。
【0026】
図11に示すように、通路A’が丁字路である場合には、検知領域Cはそれに合せて図示のような形状に設定することができる。この通路A’においては、複数の動線M1、M2、M3が想定される。検知領域C内には、各動線M1、M2、M3の両側において検知領域の境界に隣接するようにして第1の方向判定領域D1、第2の方向判定領域D2、及び第3の方向判定領域D3がそれぞれ配置されている。コントローラ14は、第1の方向判定領域D1内に搬送物Oが侵入したことを検知した場合には第2フラグをONにし、第2の方向判定領域D2内に搬送物が侵入したことを検知した場合には第3フラグをONにし、第3の方向判定領域D3内に搬送物Oが侵入したことを検知した場合には第4フラグをONにする。コントローラ14は、上述の場合と同様にして第1時点T1と第2時点T2における第2フラグ、第3フラグ、及び第4フラグの状態を確認して、搬送物Oがどの動線に沿ってどの向きに移動したのかを特定する。コントローラ14は例えば図12に示すように第1時点T1で第2フラグがONであり第2時点T2で第4フラグがONの場合には、搬送物Oは動線M2に沿って第1の方向判定領域D1から第3の方向判定領域D3に向かう方向に移動したと判断する。また例えば、第1時点T1で第4フラグがONであり第2時点T2で第3フラグがONの場合には、搬送物Oは動線M3に沿って第3の方向判定領域D3から第2の方向判定領域D2に向かう方向に移動したと判断する。なお、方向判定領域は搬送物の想定される動線に合せて任意の位置に任意の数を配置することができる。例えば、通路が十字路である場合には、4つの方向判定領域を設定するようにしてもよい。
【0027】
当該搬送物検知システム1においては、LiDARセンサ10により搬送物Oの移動方向を検知するとともに、RFIDリーダ12によってその搬送物Oに付されたRFIDタグPの情報を読み取ることにより、どのような搬送物Oがどの方向に搬送されたのかを検出するようになっている。2つのRFIDアンテナによるRFIDタグの検出の時間差を利用する従来のシステムにおいては、2つのRFIDアンテナを相互に干渉しないように大きく離して配置する必要があり搬送物の移動方向を検出するために必要となる領域が比較的に広くなるが、当該搬送物検知システム1においては、移動方向をLiDARセンサ10により検出するようにしているため比較的に狭い領域で移動方向の検知とRFIDタグPの読み取りを行なうことができる。また、LiDARセンサ10で検知可能な領域B内に検知領域Cを必要最小限の大きさで設けることにより、検知領域C以外での物や人の移動に影響されることなくなり、搬送物Oの誤検知の可能性を低減することが可能となる。
【0028】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、検知領域は搬送物が通過する通路や場所に合わせて任意に設定することができ、LiDARセンサで検知可能な範囲の全体としたり、複数の分離した領域としたりすることもできる。またLiDARセンサを、高さ方向に並んだ複数のレーザー光を照射して3次元の点群データを取得するようにしたものとして、物体の3次元形状に基づいて搬送物の検知を行なうようにしてもよい。3次元データを利用することで検知領域に侵入した物体が対象となる搬送物であるのかをより正確に判断することが可能となる。また、方向判定領域を設けずに、LiDARセンサの点群データから搬送物の位置の変化を直接求めてその移動方向を判定するようにすることもできる。RFIDリーダによるRFIDタグの読み取りは、搬送物が検知領域に入ったときにではなく、別のタイミングで行なうようにしてもよい。例えばLiDARセンサの検知領域内に読み取り開始領域を設け、搬送物がその読み取り開始領域に入ったときにRFIDタグの読み取りを行なうようにしてもよい。さらには、演算部は、LiDARセンサまたはRFIDリーダに内蔵されたものとしてもよいし、搬送物の移動方向を判定する機能はLiDARセンサの演算部が担い、搬送物の移動方向の情報とRFIDタグの情報を紐付けて保存する機能はRFIDリーダの演算部が担うようにするなど、上述のコントローラの機能をLiDARセンサとRFIDリーダとに分散して実装するようにしてもよい。上述のRFIDリーダはアンテナを内蔵したものであるが、1つまたは複数のアンテナを外付けするようにしてもよい。アンテナを複数配置することにより、検知領域内でのRFIDタグの読み取りをより確実なものとすることが期待できる。
【符号の説明】
【0029】
1 搬送物検知システム
10 LiDARセンサ
12 RFIDリーダ
14 コントローラ(演算部)
20 レーザー出射部
22 走査部
24 受光部
26 回転台
28 ミラー
30 エンコーダ
A、A’ 通路
B 領域
C 検知領域
D 方向判定領域
D1 第1の方向判定領域
D2 第2の方向判定領域
D3 第3の方向判定領域
L レーザー光
M、M1、M2、M3 動線
O 搬送物
P RFIDタグ
R 反射光
【要約】
【課題】RFIDタグを有する搬送物のタグ情報を取得しつつ搬送物の移動方向を
検知できるようにした搬送物検知システムを提供する。
【解決手段】搬送物検知システム1は、LiDARセンサ10と、RFIDリーダ12と、コントローラとを備える。LiDARセンサ10は、レーザー光を出射するレーザー出射部、レーザー光の照射方向を連続的に変更してレーザー光で所定の検知領域を含む空間内を走査するようにする走査部、及びレーザー光の反射光を受光する受光部を有し、反射光に基づいて検知領域C内の搬送物Oの位置を検知する。コントローラ14は、LiDARセンサ10が検知した搬送物Oの位置の変化に基づいて搬送物Oの移動方向を判定し、RFIDリーダ12で読み取った搬送物OのRFIDタグPの情報と移動方向とを関連付ける。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12