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特許7158541充填補助具、貫通路形成装置、防火区画構造、及び、防火区画構造を構築する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】充填補助具、貫通路形成装置、防火区画構造、及び、防火区画構造を構築する方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20221014BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20221014BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20221014BHJP
   F16L 5/10 20060101ALI20221014BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20221014BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
E04B1/94 F
F16L5/04
F16L5/02 F
F16L5/10
A62C3/16 B
H02G3/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021122099
(22)【出願日】2021-07-27
(62)【分割の表示】P 2017112577の分割
【原出願日】2017-06-07
(65)【公開番号】P2021181745
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 真也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佳志
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189954(JP,A)
【文献】登録実用新案第3119045(JP,U)
【文献】特開2016-194202(JP,A)
【文献】特開2016-187398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
F16L 5/00
F16L 5/02
F16L 5/04
F16L 5/10
A62C 3/16
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁材に穿設された貫通孔の内周面と、前記貫通孔に内挿される筒体の外周面との間隙に所定量の不燃性もしくは難燃性材料又は熱膨張性材料からなる充填材を充填することを補助する充填補助具であって、
それぞれが前記筒体の長手方向の第1および第2の所定位置で前記筒体の外周面に長手方向への移動が抑えられた状態に貼着される一対の環状体からなり、
前記環状体には、前記貫通孔のそれぞれの開口端から前記間隙に充填される充填材を受け止めるように構成された当接部が設けられ、所定の耐火性能を満たすように前記一対の環状体の各々の前記当接部と前記貫通孔のそれぞれの開口端との間にそれぞれ前記充填材の充填空間が定められることを特徴とする充填補助具。
【請求項2】
前記環状体は、前記筒体の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有し、前記環状体の原形状において、前記環状体の外径が前記貫通孔の径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の充填補助具。
【請求項3】
前記環状体は、前記筒体に巻かれる帯体からなることを特徴とする請求項1または2に記載の充填補助具。
【請求項4】
壁材の貫通孔に設置され、配線・配管材の貫通路を形成するための貫通路形成装置であって、
配線・配管材を内挿する筒体と、
前記貫通孔のそれぞれの開口端から所定距離で離隔する位置で前記筒体の外周面から径方向外方に環状に突出する一対の環状体と、を備え、
前記貫通孔の内周面と、前記貫通孔に内挿される前記筒体の外周面との間隙に所定量の充填材が充填されるように構成され、
前記一対の環状体は、前記筒体の長手方向への移動が抑えられた状態に前記筒体に貼着され、
前記環状体には、前記貫通孔の開口端から前記間隙に充填される充填材を受け止める当接部が設けられ、所定の耐火性能が満たされるように前記一対の環状体の各々の前記当接部と前記貫通孔のそれぞれの開口端との間にそれぞれ前記充填材の充填空間が定められることを特徴とする貫通路形成装置。
【請求項5】
前記環状体は、前記筒体の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有し、前記環状体の原形状において、前記環状体の外径が前記貫通孔の径よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の貫通路形成装置。
【請求項6】
前記環状体は、前記筒体に巻かれた帯体からなることを特徴とする請求項4または5に記載の貫通路形成装置。
【請求項7】
配線・配管材を配設可能な建築物の防火区画構造であって、
貫通孔が穿設された耐火用の壁材と、
前記貫通孔内に配置され、配線・配管材を内挿する筒体と、
前記貫通孔のそれぞれの開口端から所定距離で離隔した位置で前記筒体の外周面から径方向外方に環状に突出し、前記筒体の外周面に長手方向への移動が抑えられた状態に貼着された一対の環状体と、
前記貫通孔のそれぞれの開口端において、前記貫通孔の内周面と、前記筒体の外周面との間隙に充填された所定量の不燃性もしくは難燃性材料又は熱膨張性材料からなる充填材と、を備え、
前記環状体には、前記間隙に充填された前記充填材に当接した当接部が設けられ、所定の耐火性能が満たされるように前記一対の環状体の各々の前記当接部と前記貫通孔のそれぞれの開口端との間にそれぞれ充填空間が定められ、前記充填空間が前記充填材で満たされていることを特徴とする防火区画構造。
【請求項8】
耐火用の壁材に穿設された貫通孔に配線・配管材を配設可能な防火区画構造を構築する方法であって、
配線・配管材を内挿する筒体と、それぞれが、前記筒体の長手方向の第1および第2の所定位置に、長手方向に移動しないように貼着され、前記筒体の外周面から径方向外方に環状に突出し、前記貫通孔のそれぞれの開口端から前記間隙に充填される充填材を受け止める当接部を有する一対の環状体とを備える貫通路形成装置を準備する工程と、
前記貫通孔に前記貫通路形成装置を挿入する工程と、
前記一対の環状体の各々を前記貫通孔のそれぞれの開口端から所定距離で離隔した位置まで移動させ、前記一対の環状体の各々の前記当接部と前記貫通孔のそれぞれの開口端との間に、所定の耐火性能を満たす適量の不燃性もしくは難燃性材料又は熱膨張性材料からなる充填材を収容する充填空間をそれぞれ形成する工程と、
前記貫通孔の内周面と前記筒体の外周面との間隙に前記貫通孔の開口端から前記環状体の前記当接部に当接するまで充填し、所定の耐火性能が満たされるように前記充填空間を前記充填材で満たす工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記環状体は、前記筒体の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有するとともに原形状において前記貫通孔の径よりも大きい外径を有しており、
前記環状体を径方向内方に圧縮変形させた状態で前記貫通孔に前記貫通路形成装置を挿入することを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線・配管材を内挿する壁材の貫通孔に充填材を充填することを補助する充填補助具、壁材の貫通孔に配線・配管材の貫通路を形成する貫通路形成装置、壁材の貫通孔に配線・配管材を配設可能な防火区画構造、及び、該防火区画構造を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の防火区画用の壁材に配線・配管材を貫通して配設する際、該壁材に貫通孔を穿設し、その貫通孔内に配線・配管材を配設する。このような防火区画壁構造では、貫通孔内に防火措置を施すことが求められている。すなわち、防火区画用の壁材を挟んだ一方の壁表側の空間で火災等が発生したとき、貫通孔を介して他方側の空間に一方側で発生した火炎、煙、有毒ガス等が流入することを阻止すべく、該貫通孔が閉塞されなければならない。そして、火災時に貫通孔と配線・配管材との間を防火措置する特許文献1のような防火構造が提案されている。
【0003】
特許文献1は、防火区画体の貫通路に設置される筒状のスリーブを備える耐火構造を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。耐火構造(1)は、貫通路(8)を備える中空壁からなる区画体(2)と、区画体(2)の貫通路(8)に設置されて、配管や配線を挿通するために使用される筒状の鋼製のスリーブ(3)と、スリーブ(3)に配管や配線が挿通されていない状態において、スリーブ(3)の両端の開口のうち、少なくとも一方の開口を覆う耐火性シート(5)とを備える。そして、貫通路(8)の躯体面とスリーブ3の外周面との間に耐火性シール材(4)が充填される。このシール材(4)として、熱膨張性黒鉛等の熱膨張成分、リン化合物、無機充填材等を含む熱膨張性樹脂組成物の成形体)や、耐火性パテ等が使用される。熱膨張性耐火樹脂組成物からなる粘土状充填材やペースト状充填材は火災等の熱にさらされたときに膨張して断熱作用を示すことから好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-194202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の耐火構造では、該耐火構造を構築すべくスリーブ(以下、筒体)と貫通路(以下、貫通孔)の内周面との間隙に耐火性シール材(以下、充填材)を充填する際、作業者が充填した充填材の分量を目視で把握することが容易でないので、適当な充填量の充填材を間隙に充填することが困難であった。そして、これに伴い、以下のいくつかの問題点が生じ得る。例えば、対象が中空壁である場合、作業者が貫通孔の正面から充填材を間隙に充填する際、正面から貫通孔内部及び中空空間を目視することができない。そのため、充填材を貫通孔内周面と筒体外周面の間隙に押し込むときに、その目分量を誤って、充填材を貫通孔の内周面に留めることができずに充填材を中空壁の中空空間に落下させてしまう虞があった。これに対し、作業者が充填材の中空空間への落下を防ぐべく、充填材の量を抑えると、充填材の量が不足して所望の耐火性能を満たさない虞があった。一方で、対象が中実壁である場合であっても同様に、作業者が貫通孔の正面から充填材を間隙に充填する際、正面から貫通孔内部を目視することができないことから、間隙へ誤った充填量で充填材を充填してしまう虞があった。例えば、所望の耐火性能を満たすのに貫通孔開口から所定距離で充填材を充填すればよいにも関わらず、耐火性能を下回らないように所定距離を越えて充填材が押し込まれ、充填材を必要以上に消費してしまう虞があった。これに対し、作業者が充填材の消費を抑えると、充填材の量が不足して所望の耐火性能を満たさない虞があった。してがって、従来の耐火構造や耐火措置方法では、所定の耐火性能を満たすべく、過不足ない充填量の充填材を間隙に充填することが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、筒体外周面と貫通孔内周面との間隙に適当な充填量で充填材を充填することを可能とする充填補助具、貫通路形成装置、防火区画構造及び防火区画構造を構築する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態の充填補助具は、壁材に穿設された貫通孔の内周面と、前記貫通孔に内挿される筒体の外周面との間隙に所定量の充填材を充填することを補助する充填補助具であって、
前記筒体の長手方向の所定位置で前記筒体の外周面に装着される環状体からなり、
前記環状体には、前記貫通孔の開口端から前記間隙に充填される充填材を受け止めるように構成された当接部が設けられ、所定の耐火性能を満たすように前記当接部と前記開口端との間に前記充填材の充填空間が定められることを特徴とする。
【0008】
本発明のさらなる形態の充填補助具は、上記形態の充填補助具において、前記環状体は、前記筒体の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有し、前記環状体の原形状において、前記環状体の外径が前記貫通孔の径よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
本発明のさらなる形態の充填補助具は、上記形態の充填補助具において、前記環状体は、前記筒体に巻かれる帯体からなることを特徴とする。
【0010】
本発明のさらなる形態の充填補助具は、上記形態の充填補助具において、前記環状体は、前記筒体の外周面に貼着されることを特徴とする。
【0011】
本発明の一形態の貫通路形成装置は、壁材の貫通孔に設置され、配線・配管材の貫通路を形成するための貫通路形成装置であって、
配線・配管材を内挿する筒体と、
前記貫通孔の開口端から所定距離で離隔する位置で前記筒体の外周面から径方向外方に環状に突出する環状体と、を備え、
前記貫通孔の内周面と、前記貫通孔に内挿される前記筒体の外周面との間隙に所定量の充填材が充填されるように構成され、
前記環状体には、前記貫通孔の開口端から前記間隙に充填される充填材を受け止める当接部が設けられ、所定の耐火性能が満たされるように前記当接部と前記開口端との間に前記充填材の充填空間が定められることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらなる形態の貫通路形成装置は、上記形態の貫通路形成装置において、前記環状体は、前記筒体の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有し、前記環状体の原形状において、前記環状体の外径が前記貫通孔の径よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
本発明のさらなる形態の貫通路形成装置は、上記形態の貫通路形成装置において、前記環状体は、前記筒体に巻かれた帯体からなることを特徴とする。
【0014】
本発明のさらなる形態の貫通路形成装置は、上記形態の貫通路形成装置において、前記環状体は、前記筒体の外周面に貼着されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の一形態の防火区画構造は、配線・配管材を配設可能な建築物の防火区画構造であって、
貫通孔が穿設された耐火用の壁材と、
前記貫通孔内に配置され、配線・配管材を内挿する筒体と、
前記貫通孔の開口端から所定距離で離隔した位置で前記筒体の外周面から径方向外方に環状に突出する環状体と、
前記貫通孔の内周面と、前記筒体の外周面との間隙に充填された所定量の充填材と、を備え、
前記環状体には、前記間隙に充填された前記充填材に当接した当接部が設けられ、所定の耐火性能が満たされるように前記当接部と前記貫通孔の開口端との間に充填空間が定められ、前記充填空間が前記充填材で満たされていることを特徴とする。
【0016】
本発明のさらなる形態の防火区画構造は、上記形態の防火区画構造において、前記環状体は、前記筒体の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有し、前記環状体の原形状において、前記環状体の外径が前記貫通孔の径よりも大きい。
【0017】
本発明のさらなる形態の防火区画構造は、上記形態の防火区画構造において、前記壁材は、一対の壁からなる中空壁であり、前記環状体が前記一対の壁の間の空間に配置され、前記環状体の当接部が前記充填材とともに前記貫通孔の周縁に少なくとも部分的に当接していることを特徴とする。
【0018】
本発明のさらなる形態の防火区画構造は、上記形態の防火区画構造において、前記壁材は、中実壁であり、前記中実壁の内部で前記当接部と前記貫通孔の開口端との間に充填空間が定められていることを特徴とする。
【0019】
本発明の一形態の方法は、耐火用の壁材に穿設された貫通孔に配線・配管材を配設可能な防火区画構造を構築する方法であって、
配線・配管材を内挿する筒体と、前記筒体の長手方向の所定位置で前記筒体の外周面から径方向外方に環状に突出する環状体とを備える貫通路形成装置を準備する工程と、
前記環状体を径方向内方に圧縮変形させた状態で前記貫通孔に前記貫通路形成装置を挿入する工程と、
前記環状体を前記貫通孔の開口端から所定距離で離隔した位置まで移動させ、所定の耐火性能を満たす適量の充填材を収容する充填空間を形成する工程と、
前記貫通孔の内周面と前記筒体の外周面との間隙に前記貫通孔の開口端から前記環状体の当接部に当接するまで充填し、所定の耐火性能が満たされるように前記充填空間を前記充填材で満たす工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明のさらなる形態の方法は、上記形態の方法において、前記環状体は、前記筒体の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有するとともに原形状において前記貫通孔の径よりも大きい外径を有しており、前記環状体を径方向内方に圧縮変形させた状態で前記貫通孔に前記貫通路形成装置を挿入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一形態の充填補助具によれば、筒体の外周面に装着される環状体は、貫通孔の開口端から奥へと押し込まれる充填材を受け止めるように構成された当接部を備える。そして、環状体が筒体に装着される長手方向の位置に基づいて、当接部と貫通孔開口端との間に、所定の耐火性能を満たす適量(体積)の充填材を収容する充填空間が定められる。すなわち、作業者が貫通孔の開口端から間隙に充填材を充填して充填量が所定量に達すると、奥側の充填材が当接部に係止され、充填材が当接部より奥側に入り込むことが防止されることから、作業者がこれ以上充填することができなくなる。これにより、当接部と開口端との間に定められた所定の容積の充填空間が過不足なく適当な量の充填材で満たされ、所望の耐火性能が実現される。
【0022】
本発明のさらなる形態の充填補助具によれば、上記発明の効果に加えて、環状体が筒体の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有し、且つ、環状体の原形状において、環状体の外径が貫通孔の径よりも大きい。これにより、充填補助具を中実壁の貫通孔内に設置する場合、環状体を貫通孔に圧縮変形した状態で配置し、環状体の外周面を貫通孔の内周面に密着させることができる。また、充填補助具を中空壁の中空空間に配置する場合には、環状体の原形状において環状体の外径が貫通孔の径よりも大きいので、環状体の端面を貫通孔の周縁に当接させることができる。すなわち、当接部が間隙に充填される充填材をより確実に受け止めることが可能である。
【0023】
本発明のさらなる形態の充填補助具によれば、上記発明の効果に加えて、環状体が帯体からなることにより、様々なサイズの筒体に対応することが可能である。
【0024】
本発明のさらなる形態の充填補助具によれば、上記発明の効果に加えて、環状体が筒体の外周面に貼着されることにより、充填補助具を筒体に容易に装着することができる。
【0025】
本発明の一形態の貫通路形成装置によれば、筒体の外周面から径方向外方に環状体が突出形成され、該環状体は、貫通孔の開口端から奥へと押し込まれる充填材を受け止めるように構成された当接部を備える。また、貫通路形成装置を貫通孔に対して設置した際、貫通孔の開口端から長手方向に所定距離で離隔するように、筒体の長手方向の所定位置に環状体が形成されている。そして、当接部と貫通孔開口端との間に、所定の耐火性能を満たす適量(体積)の充填材を収容する充填空間が定められる。すなわち、作業者が貫通孔の開口端から間隙に充填材を充填して充填量が所定量に達すると、奥側の充填材が当接部に係止され、充填材が当接部より奥側に入り込むことが防止されることから、作業者がこれ以上充填することができなくなる。これにより、当接部と開口端との間に定められた所定の容積の充填空間が過不足なく適当な量の充填材で満たされ、所望の耐火性能が実現される。
【0026】
本発明のさらなる形態の貫通路形成装置によれば、上記発明の効果に加えて、環状体が筒体の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有し、且つ、環状体の原形状において、環状体の外径が貫通孔の径よりも大きい。これにより、貫通路形成装置を中実壁の貫通孔内に設置する場合、環状体を貫通孔に圧縮変形した状態で配置し、環状体の外周面を貫通孔の内周面に密着させることができる。また、貫通路形成装置を中空壁の中空空間に配置する場合には、環状体の原形状において環状体の外径が貫通孔の径よりも大きいので、環状体の端面を貫通孔の周縁に当接させることができる。すなわち、当接部が間隙に充填される充填材をより確実に受け止めることが可能である。
【0027】
本発明のさらなる形態の貫通路形成装置によれば、上記発明の効果に加えて、環状体が帯体からなることにより、貫通路形成装置を構成する際、様々なサイズの筒体に対応することが可能である。
【0028】
本発明のさらなる形態の貫通路形成装置によれば、上記発明の効果に加えて、環状体が筒体の外周面に貼着されることにより、貫通路形成装置を構成する際、環状体を筒体に容易に装着することができる。
【0029】
本発明の一形態の防火区画構造によれば、筒体の外周面から径方向外方に環状体が突出形成され、該環状体は、貫通孔の開口端から奥へと押し込まれた充填材に当接する当接部を備える。そして、貫通孔の開口端から所定距離で離隔した位置に環状体が形成され、当接部と貫通孔開口端との間に、所定の耐火性能を満たす適量(体積)の充填材を収容した充填空間が定められている。すなわち、防火区画構造を構築する際、作業者が貫通孔の開口端から間隙に充填材を充填して充填量が所定量に達すると、奥側の充填材が当接部に係止され、充填材が当接部より奥側に入り込むことが防止されることから、作業者がこれ以上充填することができなくなる。これにより、当接部と開口端との間に定められた充填空間が過不足なく適当な量の充填材で満たされ、所望の耐火性能が実現された。さらに、防火区画構造において、当接部が充填材を堰止めるように作用することから、充填材の位置がずれて、耐火性能が事後的に低下することが抑えられる。
【0030】
本発明のさらなる形態の防火区画構造によれば、上記発明の効果に加えて、環状体が筒体の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有し、且つ、環状体の原形状において、環状体の外径が貫通孔の径よりも大きい。これにより、貫通孔の開口端から所定距離で離隔した位置が壁材の中実部分であった場合、環状体を貫通孔に圧縮変形した状態で配置し、環状体の外周面を貫通孔の内周面に密着させることができる。また、貫通孔の開口端から所定距離で離隔した位置が壁材の中空空間であった場合、環状体の原形状において環状体の外径が貫通孔の径よりも大きいので、環状体の端面を貫通孔の周縁に当接させることができる。すなわち、当接部が間隙に充填される充填材をより確実に受け止めることが可能である。
【0031】
本発明のさらなる形態の防火区画構造によれば、上記発明の効果に加えて、中空壁を備える防火区画構造において、充填材が中空空間に落ちることなく、当接部と開口端との間に定められた充填空間が過不足なく適当な量の充填材で満たされ、所望の耐火性能が実現された。
【0032】
本発明のさらなる形態の防火区画構造によれば、上記発明の効果に加えて、中実壁を備える防火区画構造において、当接部と開口端との間に定められた充填空間が過不足なく適当な量の充填材で満たされ、所望の耐火性能が実現された。
【0033】
本発明の一形態の防火区画構造を構築する方法によれば、筒体の外周面から径方向外方に環状体が突出形成され、該環状体は、貫通孔の開口端から奥へと押し込まれた充填材に当接する当接部を備える。そして、環状体を貫通孔の開口端から所定距離で離隔した位置まで移動させることにより、当接部と貫通孔開口端との間に、所定の耐火性能を満たす適量(体積)の充填材を収容する充填空間が形成される。すなわち、作業者が貫通孔の開口端から間隙に充填材を充填して充填量が所定量に達すると、奥側の充填材が当接部に係止され、充填材が当接部より奥側に入り込むことが防止されることから、作業者がこれ以上充填することができなくなる。これにより、当接部と開口端との間に定められた充填空間を過不足なく適当な量の充填材で満たすことができ、所望の耐火性能を実現した防火区画構造を構築することが可能である。
【0034】
本発明のさらなる形態の方法によれば、上記発明の効果に加えて、環状体が筒体の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有し、且つ、環状体の原形状において、環状体の外径が貫通孔の径よりも大きい。これにより、充填補助具を中実壁の貫通孔内に設置する場合、環状体を貫通孔に圧縮変形した状態で配置し、環状体の外周面を貫通孔の内周面に密着させることができる。また、充填補助具を中空壁の中空空間に配置する場合には、環状体の原形状において環状体の外径が貫通孔の径よりも大きいので、環状体の端面を貫通孔の周縁に当接させることができる。すなわち、当接部が間隙に充填される充填材をより確実に受け止めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態(第1実施形態)の貫通路形成装置の概略斜視図。
図2図1の貫通路形成装置の(a)正面図、(b)側面図及び(c)A-A断面図。
図3】本発明の一実施形態の防火区画構造(充填材を図示せず)の概略斜視図。
図4図3の防火区画構造の(a)正面図及び(b)B-B断面図。
図5図3の防火区画構造を構成する方法の各工程を示す概略図。
図6図1の貫通路形成装置を用いた本発明の別実施形態の防火区画構造の(a)正面図及び(b)C-C断面図。
図7図1の貫通路形成装置を用いた本発明の別実施形態の防火区画構造の(a)正面図及び(b)D-D断面図。
図8】本発明の一実施形態(第2実施形態)の貫通路形成装置の概略斜視図。
図9図8の貫通路形成装置の(a)正面図、(b)側面図、及び(c)E-E断面図。
図10】本発明の一実施形態の防火区画構造(充填材を図示せず)の概略斜視図。
図11図10の防火区画構造の(a)正面図及び(b)F-F断面図。
図12図10の防火区画構造を構成する方法の各工程を示す概略図。
図13図8の貫通路形成装置を用いた本発明の別実施形態の防火区画構造の(a)正面図及び(b)G-G断面図。
図14図8の貫通路形成装置を用いた本発明の別実施形態の防火区画構造の(a)正面図及び(b)H-H断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0037】
[第1実施形態]
本発明の一実施形態の貫通路形成装置100は、防火区画構造10(図3図4参照)において、壁材11に穿設された貫通孔12に設置され、配線・配管材が通過するための貫通路を形成することに用いられる。図1及び図2を参照して、本実施形態の貫通路形成装置100及び充填補助具(環状体111)について説明する。図1は、貫通路形成装置100の正面側又は背面側から見た概略斜視図である。図2(a)~(c)は、貫通路形成装置100の正面図、側面図及びA-A縦断面図である。
【0038】
図1及び図2に示すとおり、貫通路形成装置100は、配線・配管材を内挿する筒体101、及び、該筒体101に装着された充填補助具としての一対の環状体111を備える。後述するとおり、貫通路形成装置100は、貫通孔12内周面と、貫通孔12に内挿される筒体101外周面との間隙Sに所定量の充填材121が充填されるように構成されている。
【0039】
筒体101は、長手方向に一様な径で延びる中空円筒管である。筒体101は、所定の耐火性を発揮するように鋼材等の金属製からなる。該筒体101は、両端に開口102を有し、1又は複数の配線・配管材を内挿可能な内径を有している。また、該筒体101の長さは、壁材11に穿孔された貫通孔12の長さよりも少なくとも大きいとともに、該筒体101の外径は、貫通孔12の内径よりも小さく構成されている。
【0040】
各環状体111は、筒体101の長手方向に所定幅(厚み)を有する円環(リング)形状を有し、円周面を形成する外周面及び内周面を有する。また、各環状体111の外周面及び内周面を連結する側面の一方に当接部112が形成されている。該当接部(又は当接面)112は、筒体101の軸に垂直な平面を有し、貫通孔12の開口端を臨むように形成されている。すなわち、当接部112は、後述するとおり、貫通孔12の開口端から間隙Sに充填される充填材121を受け止めるように構成されている。
【0041】
また、環状体111は、圧縮変形可能なクッション性を有する材料で形成されている。具体的には、本実施形態では、環状体111は、ポリエチレン、ウレタン等の合成樹脂からなる発泡体(スポンジ)からなる。特には、環状体111は、弾性変形するゴムなどを比べて、その体積が縮小するように変形するクッション性を有しているので、外力に対してその形状を自在に変形し、狭い間隙Sにも容易に入り込むことができる。また、本実施形態では、発泡体は非熱膨張性・非耐火性である。しかしながら、発泡体に膨張黒鉛を分散させて熱膨張性を持たせたり、不燃性、難燃性を持たせてもよい。環状体111の内径は、筒体101の外径とほぼ等しいか、又は、それよりも僅かに小さく、その内周面が筒体101の外周面に隙間なく付着している。他方、環状体111の外径は、防火区画構造10の壁材11の貫通孔12の径よりも大きく構成されている。そして、環状体111の幅は、貫通孔12の開口端から間隙に充填される充填材121を受け止め可能な強度を有するように定められた。
【0042】
なお、環状体111は、内周面に接着層を有する長尺の帯体が筒体101に巻き付くことによって形成されている。そして、環状体111は、内周面(接着層)を介して筒体101の外周面に一体的に貼着されている。すなわち、帯体の長さを調整することで、様々なサイズの筒体に対応することが可能であるとともに、貼着により該帯体を筒体に容易に装着することができる。
【0043】
貫通路形成装置100において、一対の環状体111が筒体101の外周面の長手方向の一部の領域を占めるように形成されている。各環状体111は、筒体101の長手方向の所定位置で筒体101の外周面から径方向外方にフランジ状に突出している。一対の環状体111において、当接部112は、互いに対向する面ではなく、筒体101の開口101側に向いた面として定められる。また、環状体111の筒体101における長手方向の位置は、貫通路形成装置100を貫通孔12に設置した際、各当接部112が貫通孔12の各開口端から所定距離d(図4(b)参照)で離隔する位置にくるように定められている。そして、貫通孔12開口端から当接部112までの所定距離dは、充填材121で満たされる充填空間の容積を決定する。換言すると、防火区画構造10において、所定の耐火性能(耐火基準)を満たすのに必要な充填材121の量(体積)に基づいて所定距離dが決定され、所定距離dに基づいて筒体101の長手方向における環状体111の取着位置(又は当接部114間の距離)が決定された。
【0044】
すなわち、環状体111は、壁材11に穿設された貫通孔12内周面と、貫通孔12に内挿される筒体101外周面との間隙Sに所定量の充填材121を充填することを補助する充填補助具として形成された。換言すると、充填補助具は、筒体101の長手方向の所定位置で筒体101外周面に装着される環状体111からなり、環状体111には、貫通孔12の開口端から間隙Sに充填される充填材121を受け止めるように構成された当接部112が設けられ、所定の耐火性能を満たすように当接部112と開口端との間に充填材121の充填空間が定められる。
【0045】
続いて、図3及び図4を参照して、本実施形態の充填補助具及び貫通路形成装置100によって構築された防火区画構造10について説明する。当該防火区画構造10は、配線・配管材を壁材11を隔てた両空間を貫通するように配設可能に構成されている。図3は、防火区画構造10(充填材を図示せず)の概略斜視図である。図4(a)、(b)は、防火区画構造10の正面図及びB-B断面図である。
【0046】
図3及び図4に示すとおり、本実施形態の防火区画構造10は、貫通孔12が穿設された耐火用の壁材11と、該貫通孔12内に設置された貫通路形成装置100と、貫通孔12内周面と筒体101外周面との間隙Sに充填された所定量の充填材121とを備える。本実施形態では、壁材11は、各々に壁孔12-1,12-2が穿孔された一対の壁11-1,11-2からなる中空壁である。各壁11-1,11-2は、壁表側に壁表面を有し、壁11-1,11-2間の中空空間側に壁裏面を有している。そして、壁11-1,11-2に穿設された一対の壁孔12-1,12-2が連通して貫通孔12を形成している。ここで、中空空間に貫通孔12の仮想の内周面が形成されていると解釈されてもよい。
【0047】
防火区画構造10では、その両端が壁表面から突出するように筒体101が貫通孔12内に配置され、配線・配管材を内挿可能である。本実施形態では、筒体101の中心軸と貫通孔12の中心とが合致するように筒体101が貫通孔12内に配置されている。そして、環状体111が筒体101の外周面から径方向外方に環状に突出し、壁材11の中空空間に位置している。各環状体111は、壁11-1,11-2の壁裏面に隣接又は近接配置されている。環状体111の外径は、貫通孔12の径よりも大きいので、環状体111が貫通孔12外周を越えて径方向外側に延在している。図4(b)に示すように、環状体111の当接部112が各壁11-1,11-2の壁裏面(壁孔12-1,12-2周縁)に当接していることが好ましい。
【0048】
図4(b)に示すとおり、筒体101外周面と貫通孔12内周面との間に間隙Sが形成されている。当該間隙Sにおいて、充填材121が貫通孔12内周面及び環状体111の当接部112に当接するように、貫通孔12の開口端と各環状体111の当接部112との間に適量の充填材121で満たされた充填空間が形成されている。つまり、所定の耐火性能を満たすように該間隙Sに形成された充填空間に充填材121が過不足なく充填されている。すなわち、充填空間の容積が貫通孔12開口端と当接部112との間の距離d(または、当接部112の位置)によって決定され、当該充填空間の容積が所定の耐火性能を満たすのに必要な充填材の体積に相当する。換言すると、一対の環状体111の当接部112間の距離は、貫通孔12の長さ(壁材11の両壁表面間の距離)から2dを差し引いたものと等しい。
【0049】
当該防火区画構造10において、当接部112が充填材121に当接しているので、当接部112が充填材121を堰止めるように作用し、充填材121が壁材11の中空空間に落下することが抑えられている。その結果として、防火区画構造10は、所定の耐火性能を満たし、火災時に筒体101と貫通孔12内周面との間隙から火炎や煙などが通過することが防止される。
【0050】
なお、充填材121は、不燃性のシール材からなる。例えば、充填材121は、不燃パテ、ロックウール、グラスウール、モルタル等の不燃性又は難燃性材料から選択され得る。あるいは、充填材121は、パテ又は粘土状の熱膨張性耐熱シール材であり、高熱(例えば300℃以上)に曝されると体積が加熱前の2倍以上に膨張する膨張材(膨張黒鉛)等を混合した材料であってもよい。
【0051】
また、所定の耐火性能(基準)とは、「建築基準法施工令第129条の2の5第1項第七号ハ」の規定に適合するものとして国土交通大臣から認定を受けた耐火性能をいう。具体的には、「建築基準法施工令第129条の2の5第1項第七号ハ」によれば、「防火区画等を貫通する管に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後二十分間(第百十二条第一項から第四項まで、同条第五項(同条第六項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第七項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)、同条第八項(同条第六項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第七項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)若しくは同条第十三項の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は第百十三条第一項の防火壁にあつては一時間、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁にあつては四十五分間)防火区画等の加熱側の反対側に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものであること。」と定められている。すなわち、耐火試験において、防火区画構造10を貫通する配線・配管材に火熱が加えられた場合に、少なくとも加熱開始後20分(対象によっては、45分、1時間)は、間隙Sに亀裂その他の損傷を生じさせないように充填材121の量が決定された。
【0052】
続いて、図5を参照して、防火区画構造10を構築する方法について説明する。まず、筒体101に環状体111が装着された貫通路形成装置100を準備する。次いで、環状体111を径方向内方に圧縮変形させた状態で貫通孔12に貫通路形成装置100を挿入する。具体的には、図5(a)に示されているとおり、壁材11に穿設された貫通孔12に筒体101を端部から挿入すると、貫通孔12の開口縁に(より大径の)環状体111が当接し、筒体101の径方向内方に環状体111が圧縮変形しつつ貫通孔12内を奥に進んでいく。このとき、環状体111が発泡体からなるので、貫通孔12内周面の形状に合うように容易に圧縮変形する。
【0053】
そして、手前側の環状体111を貫通孔12の開口端から所定距離dで離隔した位置まで移動させ、所定の耐火性能を満たす適量の充填材121を収容する充填空間を形成する。そして、各環状体111の当接部112と貫通孔12開口端との距離がdとなる。具体的には、一対の壁11-1,11-2の間の中空空間に一対の環状体111の両方を配置する位置まで、筒体101を貫通孔12に差し込み、各環状体111の当接部112を原形に復帰させて壁孔12-1,12-2の周縁に当接させる。これにより、貫通孔12開口端と当接部112との間に所定の容積の充填空間を形成することができる。
【0054】
続いて、図5(b)に示すとおり、貫通孔12内周面と筒体101外周面との間隙Sに貫通孔12の開口端から環状体111の当接部112に当接するまで充填し、所定の耐火性能が満たされるように充填空間を充填材121で満たす。当該工程において、作業者は、間隙Sに部分的に充填された充填材121の量を壁表面側から目視で確認することは困難である。しかし、作業者が充填材121を貫通孔12の開口端から間隙Sに所定量詰め込むと、環状体111の当接部112が充填材121を受け止めて、充填材121をこれ以上充填することができなくなる。仮に、環状体111が存在しなければ、詰め込む充填材121の量が多いと、充填材121が壁材11の中空空間に落ちてしまい、充填材121が無駄になる虞がある。あるいは、詰め込む充填材121の量が少なくなって、作業者が事後的に目視で確認することもできず、実際は所定の耐火性能を得られていない虞がある。これに対し、当該工程では、環状体111(当接部112)が充填材121を受け止めるので、過不足ない適量の充填材121を用いて、充填空間を適量の充填材121で満たすことができる。
【0055】
その結果、図4の防火区画構造10が構築される。図示しないが、該防火区画構造10の筒体101の内側に配線・配管材を挿通し、該配線・配管材の外周面と筒体101の内周面との間に熱膨張性耐火材等の耐火部材を充填又は配置することにより、配線・配管材を配設した状態で壁材11を介した空間を防火措置することができる。
【0056】
本実施形態の貫通路形成装置100は、上記実施形態に限定されず、他の構造の壁材や他の配置形態等で使用することも可能である。換言すれば、本発明の防火区画構造は、同一の貫通路形成装置100で他の形態をとり得る。
【0057】
例えば、図6の防火区画構造10’では、壁材11’が中空壁でなく中実壁で構成され、貫通路形成装置100が貫通孔12’内に配置されている。図6の形態では、筒体101外周面と貫通孔12’内周面との間隙Sが、壁材11’の貫通孔12’の両開口端の間で延在している。また、図6(b)に示すように、環状体111が径方向内方に圧縮変形し、その外周面が貫通孔12内周面に密着している。そして、環状体111の当接部112(開口端を向く面)が充填材121に当接している。間隙Sにおいて、貫通孔12の各開口端と各当接部112との間に充填材121で満たされた充填空間が形成されている。他方、間隙Sにおいて、一対の環状体111間(当接部112の反対面間)には、充填空間が形成されず、空隙が形成されている。すなわち、防火区画構造10’では、当接部112が開口端から充填された充填材121を受け止めていることから、所定の耐火性能を満たす過不足ない適量の充填材121が間隙Sに充填されている。仮に、環状体111が存在しなければ、作業者が充填材121の充填量を目視で確認することができないので、所定の耐火性能を満たす過不足ない適量の充填材121を間隙Sに充填することが困難となる。例えば、間隙Sの空隙が大きくなって所定の耐火性能を達成することができなくなり、あるいは、間隙Sの空隙が小さくなって充填材121を無駄に使いすぎるといったことが起こり得る。よって、防火区画構造10’において、間隙Sに適量の充填材121が過不足なく充填されている。
【0058】
また、図7の防火区画構造10”は、貫通孔12”の中心と貫通路形成装置100の筒体101の中心軸とが偏心するように構築されたものである。そのため、貫通孔12”周縁と当接部112との間で部分的に隙間が生じ、貫通孔12”が当接部112によって完全に覆われていない。防火区画構造10”においても同様に、間隙Sにおける当接部112と貫通孔12”の開口端との間に充填材121の充填空間が形成される。すなわち、当接部112が貫通孔12”を完全に覆っていなくとも、充填時に充填材121を当接部112が受け止めることができる。よって、防火区画構造10”において、間隙Sに適量の充填材121が過不足なく充填されている。
【0059】
以下、本発明に係る一実施形態の貫通路形成装置100(充填補助具111)の作用効果について説明する。
【0060】
本実施形態の貫通路形成装置100によれば、筒体101の外周面から径方向外方に環状体111が突出形成され、該環状体111は、貫通孔12、12’の開口端から奥へと押し込まれる充填材121を受け止めるように構成された当接部112を備える。環状体111が筒体101の径方向内方に圧縮変形可能なクッション性を有し、且つ、環状体111の原形状において、環状体111の外径が貫通孔12、12’の径よりも大きい。また、貫通路形成装置100を貫通孔12、12’に対して設置した際、貫通孔12、12’の開口端から長手方向に所定距離dで離隔するように、筒体101の長手方向の所定位置に環状体111が形成されている。そして、当接部112と貫通孔12、12’開口端との間に、所定の耐火性能を満たす適量(体積)の充填材121を収容する充填空間が定められる。貫通路形成装置100の環状体111を中空壁(壁材11)の中空空間に配置する場合には、環状体の原形状において環状体の外径が貫通孔の径よりも大きいので、環状体の端面を貫通孔の周縁に当接させることができる。また、貫通路形成装置100を中実壁(壁材11’)の貫通孔12’内に設置する場合、環状体111を貫通孔12’に圧縮変形した状態で配置し、環状体111の外周面を貫通孔12’の内周面に密着させることができる。すなわち、作業者が貫通孔12,12’の開口端から間隙Sに充填材121を充填して充填量が所定量に達すると、奥側の充填材121が当接部112に係止され、充填材121が当接部112より奥側に入り込むことが防止されることから、作業者がこれ以上充填することができなくなる。これにより、当接部112と貫通孔12、12’開口端との間に定められた充填空間が過不足なく適当な量の充填材で満たされ、所望の耐火性能が実現される。
【0061】
[第2実施形態]
図8及び図9に示すとおり、貫通路形成装置200は、配線・配管材を内挿する筒体201と、該筒体201に装着された充填補助具としての1体の環状体211を備える。貫通路形成装置200は、貫通孔22内周面と、貫通孔22に内挿される筒体201外周面との間隙Sに所定量の充填材221が充填されるように構成されている。第2実施形態の貫通路形成装置200は、環状体211の形態において第1実施形態と相違しており、その他の構成は共通している。よって、ここでは、共通する構成の説明を省略する。
【0062】
環状体211は、筒体201の長手方向に所定幅(厚み)を有する円環(リング)形状を有し、円周面を形成する外周面及び内周面を有する。また、環状体211の外周面及び内周面を連結する側面の両方に当接部212が形成されている。該当接部(又は当接面)212は、筒体201の軸に垂直な平面を有し、貫通孔22の開口端を臨むように形成されている。すなわち、当接部212は、後述するとおり、貫通孔22の開口端から間隙Sに充填される充填材221を受け止めるように構成されている。なお、環状体211及び充填材221の材質は、第1実施形態と同様であってもよい。
【0063】
環状体211の内径は、筒体201の外径とほぼ等しいか、又は、それよりも僅かに小さく、その内周面が筒体201の外周面に隙間なく付着するように構成されている。他方、環状体211の外径は、防火区画構造20の壁材21の貫通孔22の径よりも大きく構成されている。そして、環状体211の(筒体201の長手方向の)幅は、貫通孔22の開口端から間隙に充填される充填材221を受け止め可能な強度を有するように定められた。また、環状体211の幅は、貫通孔22の両開口端側に、所定の耐火性能を満たす量の充填材221を収容可能な容積を有する充填空間を形成し得るように定められた。具体的には、図11(b)に示すように、貫通孔12開口端と当接部212との距離をdとするべく、貫通孔12の穿孔長さ(壁材21の厚み)から2dを差し引いた長さが環状体211の幅として定められた。
【0064】
なお、環状体211は、その内周面に接着層を有する長尺の帯体が筒体201に巻き付くことによって形成されている。そして、環状体211は、内周面212(接着層)を介して筒体201の外周面に一体的に貼着されている。
【0065】
貫通路形成装置200において、一体の環状体21が筒体201の外周面の長手方向の一部の領域を占めるように形成されている。各環状体211は、筒体201の長手方向の所定位置(当接部212が貫通孔22の各開口端から所定距離dで離隔する位置)で筒体201の外周面から径方向外方にフランジ状に突出している。本実施形態では、筒体201の長手方向の略中央領域で、環状体211内周面が筒体201外周面に接着剤によって接着されている。また、当接部212と筒体201端部までの距離は、貫通路形成装置200を貫通孔22に設置した状態における貫通孔22開口端から当接部212までの距離dよりも大きい。
【0066】
すなわち、環状体211は、壁材21に穿設された貫通孔22内周面と、貫通孔22に内挿される筒体201外周面との間隙Sに所定量の充填材221を充填することを補助する充填補助具として形成された。換言すると、充填補助具は、筒体201の長手方向の所定位置で筒体201外周面に装着される環状体211からなり、環状体211には、貫通孔22の開口端から間隙Sに充填される充填材221を受け止めるように構成された当接部212が設けられ、所定の耐火性能を満たすように当接部212と開口端との間に充填材221の充填空間が定められる。
【0067】
続いて、図10及び図11を参照して、本実施形態の充填補助具及び貫通路形成装置200によって構築された防火区画構造20について説明する。図10は、防火区画構造20(充填材を図示せず)の概略斜視図である。図11(a)、(b)は、防火区画構造20の正面図及びE-E断面図である。
【0068】
図10及び図11に示すとおり、本実施形態の防火区画構造20は、貫通孔22が穿設された耐火用の壁材21と、該貫通孔22内に設置された貫通路形成装置200と、貫通孔22の内周面と、筒体201の外周面との間隙Sに充填された所定量の充填材221とを備える。本実施形態では、壁材21は、貫通孔22が穿孔された一枚の中実壁である。
【0069】
防火区画構造20では、その両端が壁表面から突出するように筒体201が貫通孔22内に配置され、配線・配管材を内挿可能な状態にある。本実施形態では、筒体201の中心軸と貫通孔22の中心とが合致するように筒体201が貫通孔22内に配置されている。そして、環状体211が筒体201の外周面から径方向外方に環状に突出し、壁材21の厚み方向の略中央に位置している。環状体211の外径は、貫通孔22の径よりも大きいので、環状体211が径方向内方に圧縮変形し、その外周面が貫通孔22内周面に密着している。
【0070】
図11に示すとおり、筒体201外周面と貫通孔22内周面との間に間隙Sが形成されている。当該間隙Sにおいて、充填材221が貫通孔22内周面及び環状体211の当接部212に当接するように、貫通孔22の開口端と各環状体211の当接部212との間に適量の充填材221で満たされた充填空間が形成されている。つまり、所定の耐火性能を満たすように該間隙Sに形成された充填空間に充填材221が過不足なく充填されている。すなわち、充填空間の容積が貫通孔22開口端と当接部212との間の距離d(または、当接部212の位置)によって決定され、当該充填空間の容積が所定の耐火性能を満たすのに必要な充填材221の体積に相当する。
【0071】
防火区画構造20において、当接部212が充填材221に当接しているので、当接部212が充填材221を堰止めるように作用し、充填材221が貫通孔22内でずれることが抑えられている。その結果として、防火区画構造20は、所定の耐火性能を満たし、火災時に筒体201と貫通孔22内周面との間隙から火炎や煙などが通過することが防止される。
【0072】
続いて、図12を参照して、防火区画構造20を構築する方法について説明する。まず、筒体201に環状体211が装着された貫通路形成装置200を準備する。次いで、環状体211を径方向内方に圧縮変形させた状態で貫通孔22に貫通路形成装置200を挿入する。具体的には、図12(a)に示されているとおり、壁材21に穿設された貫通孔22に筒体201を端部から挿入すると、貫通孔22の開口縁に(より大径の)環状体211が当接し、筒体201の径方向内方に環状体211が圧縮変形しつつ貫通孔22内を奥に進んでいく。このとき、環状体211が発泡体からなるので、貫通孔22内周面の形状に合うように容易に圧縮変形する。
【0073】
そして、環状体211を貫通孔22の開口端から所定距離dで離隔した位置まで移動させ、所定の耐火性能を満たす適量の充填材221を収容する充填空間を形成する。具体的には、貫通路形成装置200を貫通孔22に挿通する際、貫通孔22開口端と当接部212との距離が、予め定められた所定の距離dとなるまで、筒体201を貫通孔22に押し込む。一方の貫通孔22開口端からの当接部212までの距離がdとなると、他方の貫通孔22開口端からの当接部212までの距離もdとなるように、環状体211の長手方向の幅が定められている。これにより、貫通孔22開口端と当接部212との間に所定の容積の充填空間を形成することができる。
【0074】
続いて、図12(b)に示すとおり、貫通孔22の内周面と筒体201の外周面との間隙Sに貫通孔22の開口端から環状体211の当接部212に当接するまで充填し、所定の耐火性能が満たされるように充填空間を充填材221で満たす。当該工程において、作業者は、間隙Sに部分的に充填された充填材221の量を壁表面側から目視で確認することは困難である。しかし、作業者が充填材221を貫通孔22の開口端から間隙Sに所定量詰め込むと、環状体211の当接部212が充填材201を受け止めて、充填材221をこれ以上充填することができなくなる。仮に、環状体211が存在しなければ、詰め込む充填材221の量が多くなりすぎて、充填材221が無駄になる虞がある。あるいは、詰め込む充填材221の量が少なくなって、作業者が事後的に目視で確認することもできず、実際は所定の耐火性能を得られていない虞がある。これに対し、当該工程では、環状体211(当接部212)が充填材201を受け止めるので、過不足ない適量の充填材221を用いて、充填空間を適量の充填材221で満たすことができる。
【0075】
その結果、図10の防火区画構造20が構築される。図示しないが、該防火区画構造20の筒体201の内側に配線・配管材を挿通し、該配線・配管材の外周面と筒体201の内周面との間に熱膨張性耐火材等の耐火部材を充填又は配置することにより、配線・配管材を配設した状態で壁材21を介した空間を防火措置することができる。
【0076】
本実施形態の貫通路形成装置200は、上記実施形態に限定されず、他の構造の壁材や他の配置形態等で使用することも可能である。換言すれば、本発明の防火区画構造は、同一の貫通路形成装置200で他の形態をとり得る。
【0077】
例えば、図13の防火区画構造20’では、壁材21’が中実壁でなく中空壁で構成され、貫通路形成装置200が貫通孔22内に配置されている。図13の形態では、壁材21’を構成する一対の壁21’-1,21’-2の間の中空空間に環状体211が配置されている。環状体211は、中空空間で圧縮形態から原形状に復帰しており、各当接部212が各壁21’-1,21’-2の壁裏面の壁孔22’-1,22’-2周縁に当接している。そして、環状体211の当接部212(開口端を向く面)が充填材221に当接している。間隙Sにおいて、貫通孔22の各開口端と各当接部212との間に充填材221で満たされた充填空間が形成されている。すなわち、防火区画構造20’では、当接部212が開口端から充填された充填材221を受け止めていることから、所定の耐火性能を満たす過不足ない適量の充填材221が間隙Sに充填されている。仮に、環状体211が存在しなければ、詰め込む充填材221の量が多いと、充填材221が壁材21’の中空空間に落ちてしまい、充填材221が無駄になる虞がある。あるいは、詰め込む充填材221の量が少なくなって、作業者が事後的に目視で確認することもできず、実際は所定の耐火性能を得られていない虞がある。これに対し、防火区画構造20’において、間隙Sに適量の充填材221が過不足なく充填されている。
【0078】
また、図14の防火区画構造20”は、貫通孔22”の中心と貫通路形成装置200の筒体201の中心軸とが偏心するように構築されたものである。そのため、貫通孔22”周縁と当接部212との間で部分的に隙間が生じ、貫通孔22”が当接部212によって完全に覆われていない。防火区画構造20”においても同様に、間隙Sにおける当接部212と貫通孔22”の開口端との間に充填材221の充填空間が形成される。すなわち、当接部212が貫通孔22”を完全に覆っていなくとも、充填時に充填材221を当接部212が受け止めることができる。よって、防火区画構造20”において、間隙Sに適量の充填材221が過不足なく充填されている。
【0079】
すなわち、本発明に係る一実施形態の貫通路形成装置200は、上記第1実施形態の貫通路形成装置100と同様の作用効果を奏し得る。
【0080】
[変形例]
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。
【0081】
(1)上記実施形態では、貫通孔の内周、筒体の外周、及び、環状体の外周が円形で構成されたが、本発明は上記形態に限定されない。例えば、貫通孔の内周、筒体の外周、及び、環状体の外周の全て又は一部が、円形のかわりに、楕円形、長円形、多角形などであってもよい。また、上記実施形態では、筒体は長手方向に一様の径で構成されているが、その径が変化するように形成されてもよい。すなわち、本発明の技術的範囲に含まれる限り、その形状寸法が当業者によって適宜修正され得ることは言うまでもない。
【0082】
(2)上記実施形態では、環状体が筒体の外面に接着されているが、本発明は上記形態に限定されない。例えば、環状体の内周を筒体の外周よりも小さくし、外側に拡がるように拡張変形した状態で環状体が筒体に装着されてもよい。この場合、環状体が原形への弾性復帰力によって筒体に吸着し、環状体内周面と筒体外周面との間の摩擦力によって、環状体が長手方向に移動することが抑えられる。
【0083】
(3)上記実施形態では、一対の壁からなる中空壁の場合、各壁の厚み全体(各壁孔の間隙全体)に亘って充填空間が形成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各壁が十分に厚い場合、壁孔に環状体の一部が圧縮された状態で配置され、各壁の厚みの一部に充填空間が形成されてもよい。あるいは、各壁が薄い場合、環状体の当接部が各壁の壁裏面と離隔して配置され、一対の壁間の中空空間にまで充填材が充填されてもよい。この場合、中空空間に仮想の貫通孔の内周面が形成され、中空空間にも間隙が存在しているとみなす。
【0084】
(4)上記実施形態では、環状体はスポンジ様発泡体からなるが、一般的に発泡体と比べてクッション性のないゴムや硬質の部材であってもよい。しかしながら、当該変形例の環状体は、上記実施形態の発泡体からなる環状体と比べて、貫通孔内周面との密着性や、取り扱い易さ(貫通孔への配置容易性)の点で後塵を拝する。
【0085】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0086】
10,20 防火区画構造
11,21 壁材
12,22 貫通孔
100,200 貫通路形成装置
101,201 筒体
102,202 開口
111,211 環状体(充填補助具)
112,212 当接部
121,212 充填材
S 間隙
d 貫通孔開口端と当接部との間の距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14