(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】抗Tim-3抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221014BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221014BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221014BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221014BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221014BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20221014BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20221014BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221014BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 T
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/14
A61P31/18
C12N15/13
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021175867
(22)【出願日】2021-10-27
(62)【分割の表示】P 2019511565の分割
【原出願日】2017-08-25
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/096924
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514164650
【氏名又は名称】ベイジーン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン トン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ リュウ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ チー
(72)【発明者】
【氏名】ポン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー カン
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/071448(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/117002(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/000619(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
A61K 39/00-39/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌若しくは腫瘍又は感染症の治療に使用するための医薬の調製のための、ヒトTim-3に結合することが可能なヒト化抗体の使用であって、
前記抗体が、
配列ID番号3のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号26のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号27のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、
使用。
【請求項2】
(i)配列ID番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(ii)配列ID番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、
請求項1に記載の
使用。
【請求項3】
Fab、F(ab’)2、Fv、又は単鎖Fv(ScFv)である、請求項1に記載の
使用。
【請求項4】
IgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はそれらの変異体のサブクラスの重鎖定常領域、及びカッパ若しくはラムダ又はそれらの変異体の軽鎖定常領域を含む、請求項1に記載の
使用。
【請求項5】
IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のサブクラスの変異型重鎖定常領域を含み、該変異型重鎖定常領域が効果器機能の減少又は排除をもたらす、請求項
4に記載の
使用。
【請求項6】
前記効果器機能が抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC(Antibody-Dependent Cell-Mediated Cytotoxicity))又は補体依存性細胞傷害(CDC(Complement-Dependent Cytotoxicity))である、請求項
5に記載の
使用。
【請求項7】
ヒトIgG1の重鎖定常領域又はその変異体を含む、請求項
4に記載の
使用。
【請求項8】
前記ヒトIgG1の変異型重鎖定常領域がE
233P、L
234A、L
235A、L
236A及びP
329Aからなる群より選択される1つ以上の突然変異を含む、請求項
7に記載の
使用。
【請求項9】
前記変異型ヒトIgG1重鎖定常領域が配列ID番号21のアミノ酸配列、及びヒトIgG1カッパ軽鎖定常領域を含む、請求項
8に記載の
使用。
【請求項10】
前記癌が肺癌、肝臓癌、胃癌、子宮頸癌、黒色腫、腎臓癌、乳癌、大腸癌、白血病、リンパ腫、卵巣癌、頭頸部癌、又は癌の転移性病変から選択される、請求項
1~9のいずれかに記載の
使用。
【請求項11】
前記抗体が第2の治療薬又は処置との組み合わせで投与され、該第2の治療薬又は処置が化学療法、標的療法、腫瘍溶解薬、細胞傷害剤、免疫療法、サイトカイン、外科的処置、放射線処置、共刺激性分子の活性化剤、阻害性分子の阻害剤、ワクチン、又は細胞性免疫療法から選択される、請求項
1~9のいずれかに記載の
使用。
【請求項12】
前記抗体がPD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG-3、CEACAM-1、CEACAM-5、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、又はTGFRから選択される免疫チェックポイント分子の阻害剤との組み合わせで投与される、請求項
1~9のいずれかに記載の
使用。
【請求項13】
前記抗体が抗PD-1mAb、317-4B6又は317-4B6/IgG4mt10との組み合わせで投与される、請求項
1~9のいずれかに記載の
使用。
【請求項14】
前記感染症がHIV感染及びHCV感染から選択される慢性的なウイルス感染症である、請求項
1~9のいずれかに記載の
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書はT細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(Tim-3)に特異的に結合する抗体を開示する。
【背景技術】
【0002】
T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(Tim-3、HAVCR2、又はCD366)は、33KDタイプのI膜貫通糖タンパク質であり、慢性ウイルス感染及び免疫監視からの腫瘍エスケープの両方におけるT細胞の消耗の増大において重要な役割を果たすT細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン含有類に含まれるものである(Monney et al.、2002 Nature 415:536-541;Sanchez-Fueyo A, et al.、2003 Nat Immunol. 4: 1093-101; Sabatos CA, et al.、2003 Nat Immunol. 4: 1102-10;Anderson et al.、2006 Curr Opin Immunol. 18: 665-669)。Tim-3をコーディングする遺伝子及びcDNAはマウス及びヒトにおいてクローン化され、特徴付けがなされている(Monney et al.、2002 Nature 415: 536-541;McIntire et al.、2001 Nat. Immunol. 2: 1109-1116)。成熟したヒトのTim-3は280のアミノ酸残基を含む(NCBI accession number: NP_116171.3)。それの細胞外ドメインはアミノ酸残基1~181から成り、膜貫通ドメイン及び細胞質C末端鎖は残基182~280を含む。免疫受容体チロシン系阻害性モチーフ(ITIM(Immunoreceptor Tyrosine-Based Inhibitory Motif))及びチロシンスイッチモチーフ(ITSM(Immunoreceptor Tyrosine Switch Motif))等の、細胞質ドメインで見つかる既知の阻害性シグナル伝達モチーフ存在しない。
【0003】
Tim-3は最初にTh1細胞で特定された。その後の研究によって、T細胞に加えて、Tim-3もNK細胞、マクロファージ、DC、及びマスト細胞等の他の種類の免疫細胞において発現されることが示された(Hastings et al.、2009 Eur J Immunol 39: 2492-2501;Anderson et al.、2007 Science 318: 1141-1143;Phong BL, et al.、2015 J Exp Med. pii: jem. 20150388)。Tim-3が他のヒト組織で発現することはほとんどない。T細胞では、Tim-3の発現はTCR/CD3活性化を介して明白に調節されている(Hastings et al.、2009 Eur J Immunol 39: 2492-2501)。さらに、(IL-2、IL-7、IL-15及びIL-21等の)一般的なγ鎖サイトカインもまた、PI-3キナーゼに依存した様式でTim-3発現を増加させる(Mujib S, et al.、2012 J Immunol. 188:3745-56)。多くの場合、腫瘍微小環境(TME(Tumor Microenvironment))においてT細胞は、PD-1、Lag-3及びTigit等の他の「チェックポイント」の阻害性免疫受容体と同時発現する。(Fourcade J, et al.、2010 J Exp Med. 207:2175-86;Gros A, et al.、2014 J Clin Invest. 124: 2246-59)。
【0004】
現在までに、2つの主要なTim-3リガンド(Tim-3L)と考えられているガレクチン-9及びホスファチジルセリン(PtdSer)を含む、複数のTim-3リガンドが報告されている(Anderson AC、2012 Curr Opin Immunol. 24:213-6)。Tim-3LのTim-3受容体への結合は、T細胞の活性化を阻害する細胞内シグナル伝達を誘発し、細胞増殖の減少、IL-2及びIFN-γ分泌をもたらす(Dekruyff et al.、2010 J. Immunol. 184:1918-1930;Zhu et al.、2005 Nat. Immunol. 6: 1245-1252)。T細胞におけるTim-3シグナル伝達の詳細なメカニズムは依然としてほとんどわかっていない。Tim-3がTCRと相互作用すると、免疫学的シナプスのために取り入れられ、SrcキナーゼLckを隔離することにより、それのシグナル伝達、特にNFATシグナル伝達経路を阻害することが複数の研究によって示されている(Tomkowicz B, et al.、2015 PLoS One 10: e0140694;Clayton KL, et al.、2014 J. Immunol. 192: 782-91)。
【0005】
癌及びウイルス感染において、Tim-3シグナル伝達の活性化は免疫細胞機能不全を促進し、癌の成長又はウイルス感染の増大につながる。肺癌(Zhuang X, et al.、Am J Clin Pathol 2012 137: 978-985)、肝臓癌(Li H, et al.、Hepatology 2012 56: 1342-1351)、胃癌(Jiang et al.、PLoS One 2013 8: e81799)、腎臓癌(Komohara et al.、Cancer Immunol Res. 2015 3: 999-1000)、乳癌(Heon EK, et al.、2015 Biochem Biophys Res Commun. 464: 360-6)、結腸癌(Xu et al.、Oncotarget 2015)、メラニン細胞癌(Gros A, et al.、2014 J Clin Invest. 2014 124: 2246-2259)、及び子宮頸癌(Cao et al.、PLoS One 2013 8: e53834)等の多くの種類の癌において、腫瘍浸潤リンパ球(TILs(Tumor-Infiltrating Lymphocytes))、マクロファージ、及び腫瘍細胞におけるTim-3発現のアップレギュレーションが報告されている。これらの癌におけるTim-3の発現の増加は患者の生存転帰に対する予後不良と関連付けられている。Tim-3シグナル伝達のアップレギュレーションは癌に対する免疫寛容においてだけでなく、慢性的なウイルス感染に対しても重要な役割を果たす。HIV及びHCVの感染中、T細胞のTim-3の発現は健康な人と比較して著しく高く、ウイルスの量及び疾患の進行と明らかな関連がある(Jones RB, et al.、2008 J Exp Med. 205: 2763-79;Sakhdari A, et al.、2012 PLoS One 7: e40146;Golden-Mason L, et al.、2009 J Virol. 83: 9122-30;2012 Moorman JP, et al.、J Immunol. 189: 755-66)。さらに、Tim-3受容体を単独で、又はPD-1/PD-L1遮断と組み合わせて遮断すると、生体外と生体内の両方において機能的に「消耗した」T細胞を救済することができる。(Dietze KK, et al.、2013 PLoS Pathog 9: e1003798;Golden-Mason L, et al.、2009 J Virol. 83: 9122-30)。したがって、治療薬によるTim-3シグナル伝達の調節は、T細胞、NK細胞、及びマクロファージ(Mφ)等の免疫細胞を寛容状態から救済し、腫瘍又は慢性的なウイルス感染を根絶するための効率的な免疫反応を誘発するだろう。
【0006】
いくつかの抗体は細胞の表面上のそれの標的に結合すると内在化することができることが報告されている(Hurwitz E, et al.、1995、Proc Natl Acad Sci USA 92: 3353-7;Poul MA, et al.、2000、J Mol Biol. 301: 1149-61;Fischer E, et al.、2012、Clin Cancer Res. 18: 6208-18)。抗体により誘発された受容体のとり込みは、細胞表面上の受容体の下方調節及び受容体依存のシグナル伝達の阻害をもたらす(Liu L, et al.、2014、Clin Cancer Res. 20: 6059-70)。抗体の内在化は受容体の表面の発現を減少させるので、通常、持続的な内在化は受容体の抗体にとって望ましい。
【0007】
したがって、Tim-3受容体に対して高い親和性及び特異性を有し、好ましくは、さらにTim-3受容体の持続的な内在化をもたらす抗Tim-3抗体が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本明細書は高い親和性及び特異性でTim-3に結合する抗体分子を開示する。詳細には、本明細書に開示された抗Tim-3抗体はTim-3受容体の持続的又は耐久性のある内在化をもたらす。本明細書はまた、抗体分子をコーディングする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、及び抗体分子の作製方法を提供する。本明細書はまた、抗体分子を含む医薬組成物を提供する。本明細書に開示される抗Tim-3抗体分子は、免疫障害、癌、感染症、クローン病、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS(Systemic Inflammatory Response Syndrome))、及び糸球体腎炎等の、Tim-3によって媒介される細胞内シグナル伝達による免疫細胞の抑制に関連付けられる疾患を治療、予防、及び/又は診断するために、単独で、又は他の薬剤若しくは治療法と組み合わせて使用することができる。したがって、本明細書は、抗Tim-3抗体分子を使用して上記の多様な障害又は疾患を治療するための組成物及び方法を開示し、また、上記の多様な障害又は疾患を治療するための医薬品の製造における抗Tim-3抗体分子の使用を提供する。
【0009】
特定の態様において、本開示は、配列ID番号3~8、又は26~27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体のアミノ酸配列を含む、少なくとも1、2、3、4、5、又は6つの相補性決定領域(CDR’s(Complementarity Determining Regions))を含む、ヒトのTim-3に結合することが可能な抗Tim-3抗体を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は配列ID番号3~5又は26又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH(heavy chain variable region))からの、少なくとも1、2又は3つのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は配列ID番号6~8又は27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL(light chain variable region))からの、少なくとも1、2又は3つのCDRを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は配列ID番号3~8、又は26~27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体のアミノ酸配列を含む重鎖又は軽鎖可変領域からの、少なくとも1、2、3、4、5、又は6つのCDRを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は配列ID番号3~8、又は26~27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体のアミノ酸配列を含む重鎖又は軽鎖可変領域からの6つのCDRを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号3、4、5、又は26又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体から選択される、1、2又は3つのCDRアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は
(b)配列ID番号6、7、8、又は27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体から選択される、1、2又は3つのCDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号3又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号4又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号8又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
(b)配列ID番号3又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号26又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号8又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
(c)配列ID番号3又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号4又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、又は
(d)配列ID番号3又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号26又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号3のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号4のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号8のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、又は
(b)配列ID番号3のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号26のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号27のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体はヒト化した抗体分子である。
【0017】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体はヒト化したモノクローナル抗体(mAb(Monoclonal Antibody))分子である。
【0018】
いくつかの実施形態において、抗体は、配列ID番号9、17、28又は40のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列ID番号9、17又は28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、配列ID番号11、19、30又は36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(b)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(c)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(d)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(e)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(f)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(g)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(h)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(i)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(j)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(k)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(l)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(m)配列ID番号40のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(n)配列ID番号40のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(o)配列ID番号40のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、又は
(p)配列ID番号40のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(b)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(c)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(d)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(e)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(f)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(g)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(h)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(i)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(j)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(k)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、又は
(l)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(b)配列ID番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(c)配列ID番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(d)配列ID番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(e)配列ID番号40のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(b)配列ID番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(c)配列ID番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(d)配列ID番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、配列ID番号13、22又は32のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、配列ID番号15、24、34又は38のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号13のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号15のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(b)配列ID番号13のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号24のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(c)配列ID番号13のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号34のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(d)配列ID番号13のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号38のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(e)配列ID番号22のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号15のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(f)配列ID番号22のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号24のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(g)配列ID番号22のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号34のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(h)配列ID番号22のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号38のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(i)配列ID番号32のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号15のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(j)配列ID番号32のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号24のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(k)配列ID番号32のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号34のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、又は
(l)配列ID番号32のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号38のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号13のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖、
(b)配列ID番号22のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖、
(c)配列ID番号32のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(d)配列ID番号32のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号24の位置1にアスパラギン酸からグルタミン酸への突然変異を有する軽鎖、
(b)配列ID番号24の位置4にロイシンからメチオニンへの突然変異を有する軽鎖、
(c)配列ID番号24の位置62にバリンからイソロイシンへの突然変異を有する軽鎖、
(d)配列ID番号24の位置74にアスパラギン酸からグルタミン酸への突然変異を有する軽鎖、
(e)配列ID番号24の位置96にメチオニンからロイシンへの突然変異を有する軽鎖、
(f)配列ID番号22の位置59にフェニルアラニンからチロシンへの突然変異を有する重鎖、
(g)配列ID番号22の位置60にプロリンからバリンへの突然変異を有する重鎖、
(h)配列ID番号22の位置77にセリンからスレオニンへの突然変異を有する重鎖、及び
(i)配列ID番号22の位置78にシステインからロイシンへの突然変異を有する重鎖のうちの1つ以上を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体はFab、F(ab’)2、Fv、又は単鎖Fv(ScFv)である。
【0028】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はそれらの変異体のサブクラスの重鎖定常領域、及びカッパ若しくはラムダ又はそれらの変異体の軽鎖定常領域を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は配列ID番号21のアミノ酸配列を含む変異型ヒトIgG1重鎖定常領域、及びヒトカッパ軽鎖定常領域を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は単離型又は組換え型である。
【0031】
特定の態様において、本開示は少なくとも本明細書に記載される抗体分子の少なくとも1つ、及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物、例えば、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は抗Tim-3抗体と1つ以上の他の薬剤、例えば治療薬又は他の抗体分子との組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は標識又は治療薬に結合される。
【0032】
特定の態様において、本開示はまた、被験者の免疫反応を刺激する方法を提供する。この方法は、本明細書に記載の抗体(例えば、治療的に有効な量の抗Tim-3抗体分子)を単独で、又は1つ以上の薬剤又は処置と組み合わせて被験者に投与することを含む。
【0033】
特定の態様において、本開示はまた、被験者の癌又は腫瘍を治療する(例えば、癌又は腫瘍の進行を減少させる、抑制する、又は遅らせる等のうちの1つ以上を行う)方法を提供する。この方法は、本明細書に記載の抗体(例えば、治療的に有効な量の抗Tim-3抗体分子)を単独で、又は1つ以上の薬剤又は処置と組み合わせて被験者に投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は化学療法、標的療法、腫瘍溶解薬、細胞傷害剤、免疫療法、サイトカイン、外科的処置、放射線処置、共刺激性分子の活性化剤、阻害性分子の阻害剤、ワクチン、又は細胞性免疫療法との組み合わせで投与される。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、Lag-3、CEACAM-1、CEACAM-5、VISTA、BTLA、Tigit、LAIR1、CD160、2B4、又はTGFRから選択される免疫チェックポイント分子の阻害剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は(米国特許第8735553号に記載されており、Hu317-4B6、317-4B6/IgG4mt10と名付けられた)抗PD-1mAb、317-4B6との組み合わせで投与される。
【0034】
特定の実施形態において、癌は、肺癌、肝臓癌、胃癌、子宮頸癌、黒色腫、腎臓癌、乳癌、大腸癌、白血病、リンパ腫、卵巣癌、頭頸部癌、又は癌の転移性病変を含むが、これらに限定されるものではない。
【0035】
他の態様において、本開示は、単独で、又は1つ以上の薬剤若しくは処置と組み合わせて、本明細書に記載の抗Tim-3抗体の治療的に有効な量を被験者に投与することを含む、感染症を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、感染症はHIV感染及びHCV感染から選択される慢性的なウイルス感染症である。
【0036】
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載の多様な障害又は疾患を治療するための薬剤の製造における抗Tim-3抗体分子の使用を提供する。
【0037】
本明細書に記載の抗Tim-3抗体分子は、免疫細胞におけるTim-3を媒介とした細胞のシグナル伝達を阻害し、免疫細胞を再活性化し、免疫を増強させることができる、効果器機能と物理化学的性質の特別な組を示す。そして、変更された重鎖定常領域を有する全長を有する(すなわち、省略されていない)ヒトIgG1の形式のmAbは、効果器機能に関して特有の特徴の組を有する。抗Tim-3mAbもまた、ヒト抗体分子との非常に類似な様式でヒト化した。さらに、抗Tim-3抗体は抗PD-1抗体と相乗作用し、生体内でT細胞を活性化し、腫瘍増殖を減少させることができる。それによって、本明細書に開示される抗Tim-3抗体は、免疫寛容又は「消耗」と機械的に関連付けられる癌、ウイルス感染、及び他のヒトの疾患の治療において治療的有用性を有するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】Tim-3-mIgG2a(上段)及びTim-3-huIgG1(下段)の概略図を示し、ここでLはリンカーであり、NはN末端であり、CはC末端である。
【
図2B】抗Tim-3抗体の系統樹を示している。
図2Aは抗Tim-3抗体重鎖可変(Vh)領域の系統樹を示し、
図2Bは抗Tim-3抗体軽鎖可変(Vl)領域の系統樹を示している。DNASTARのMegalignソフトウェアを使用して、合計で23個のTim-3のVh及び20個のVκ配列を整列させた。系統樹に、配列の相同性が示された。
【
図3】ELISAにおけるhu425-2E-1及びhu425-2F-1のTim-3結合親和性とhu425-1-1の結合親和性との比較を示している。
【
図4】ELISAにおけるmAb1G5及びAb2000のTim-3結合親和性及びhu425-2-3bの結合親和性示している。
【
図5】抗Tim-3抗体hu425-2-3bによるTim-3媒介食作用の抑制を示している。
【
図6】一次ヒトPBMCにおける、ch425及びhu425-1-1を含む抗Tim-3抗体によるIFN-γ分泌の活性化を示している。
【
図7】抗Tim-3抗体hu425-2-3bによるCMVに特異的なヒトT細胞の活性化を示している。
【
図8A】抗Tim-3抗体hu425-2-3bがNK細胞を媒介とした細胞傷害性を促進することを示している。
【
図8B】抗Tim-3抗体hu425-2-3bがNK細胞を媒介とした細胞傷害性を促進することを示している。
【
図9】抗Tim-3抗体hu425-2-3bがTim-3受容体の表面の発現を低下させることを示している。
【
図10】抗Tim-3抗体のTim-3受容体(hu425-2-3b、Ab1及びAb2)の内在化を示している。
【
図11】単独で、又は抗PD-1抗体hu317-4B6との組み合わせで、抗Tim-3抗体hu425-2-3bがMLRにおけるIFN-γ分泌を増強することを示している。
【
図12A】抗Tim-3抗体hu425-2-3bがADCC(Antibody-Dependent Cell-Mediated Cytotoxicity)(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)及びCDC(Complement Dependent Cytotoxicity)(相補依存性細胞傷害)を誘発しなかったことを示している。
【
図12B】抗Tim-3抗体hu425-2-3bがADCC及びCDCを誘発しなかったことを示している。
【
図13】ヒトA431同種異系異種移植片モデルにおける抗Tim-3抗体ch425、抗PD-1抗体hu317-4B6、及びそれらの組み合わせの抗腫瘍効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
【0040】
本明細書の他の箇所で具体的に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0041】
文脈的に明確に指定しない限り、添付の特許請求の範囲を含む本明細書で使用される「1つ」及び「その」等の単語の単数形は、それらの対応する複数のものも含む。
【0042】
文脈的に明確に指定しない限り、用語「又は」は用語「及び/又は」を意味するために使用され、それと互換的に使用される。
【0043】
文脈的に明確に指定しない限り、本明細書及びそれに続く特許請求の範囲を通して、用語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形は記載のアミノ酸配列、DNA配列、工程、又はそれの群の包含を意味するものであり、他のアミノ酸配列、DNA配列、工程を排除するものではない。本明細書において、用語「含む(comprising)」は用語「含む(containing)」、「含む(including)」又は「有する(having)」で置き換えることができる。
【0044】
用語「Tim-3」は多様な哺乳類のアイソフォーム、例えば、ヒトTim-3、ヒトTim-3の種相同体、及びTim-3内の少なくとも1つのエピトープを含む類似体を含む。そして、ヒトTim-3等のTim-3のアミノ酸配列、及びそれをコーディングするヌクレオチド配列は当技術分野において公知である。
【0045】
本明細書における「投与」、「投与する」、「治療する」及び「治療」という用語が動物、ヒト、実験の被験者、細胞、組織、器官、又は生物学的流体に適用される場合、それらは外因性薬剤、治療薬、診断薬、又は成分の動物、ヒト、被験者、細胞、組織、器官、又は生物学的流体への接触を意味する。細胞の処理は試薬と細胞との接触、及び流体が細胞と接触している状態での試薬と該流体との接触を含む。「投与」及び「治療」という用語はまた、例えば、試薬、診断、結合化合物、又は他の細胞による生体内及び生体外治療を意味する。本明細書における「被験者」という用語は全ての生物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳類(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)、最も好ましくはヒトを含む。
【0046】
抗体又は抗体分子
本明細書は高い親和性及び特異性でTim-3に結合する抗体分子を開示する。
【0047】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、配列ID番号3~8、又は26~27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体のアミノ酸配列を含む、少なくとも1、2、3、4、5、又は6つの相補性決定領域を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は配列ID番号3~5又は26又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)からの、少なくとも1、2又は3つのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は配列ID番号6~8又は27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)からの、少なくとも1、2又は3つのCDRを含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は配列ID番号3~8、又は26~27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体のアミノ酸配列を含む重鎖又は軽鎖可変領域からの、少なくとも1、2、3、4、5、又は6つのCDRを含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は配列ID番号3~8、又は26~27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体のアミノ酸配列を含む重鎖又は軽鎖可変領域からの6つのCDRを含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号3、4、5、又は26又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体から選択される、1、2又は3つのCDRアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は
(b)配列ID番号6、7、8、又は27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれらの変異体から選択される、1、2又は3つのCDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号3又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号4又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号8又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
(b)配列ID番号3又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号26又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号8又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
(c)配列ID番号3又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号4又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、又は
(d)配列ID番号3又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号26又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号27又は1つ以上の保存的な置換を含むそれの変異体のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号3のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号4のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号8のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、又は
(b)配列ID番号3のVH-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号26のVH-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号5のVH-CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列ID番号6のVL-CDR1アミノ酸配列、配列ID番号7のVL-CDR2アミノ酸配列、及び配列ID番号27のVL-CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体はヒト化した抗体分子である。
【0055】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体はヒト化したモノクローナル抗体(mAb)である。
【0056】
いくつかの実施形態において、抗体は、配列ID番号9、17、28又は40のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列ID番号9、17又は28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、配列ID番号11、19、30又は36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(b)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(c)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(d)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(e)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(f)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(g)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(h)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(i)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(j)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(k)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(l)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(m)配列ID番号40のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(n)配列ID番号40のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(o)配列ID番号40のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、又は
(p)配列ID番号40のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(b)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(c)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(d)配列ID番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(e)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(f)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(g)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(h)配列ID番号17のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(i)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(j)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、
(k)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、又は
(l)配列ID番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(b)配列ID番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(c)配列ID番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(d)配列ID番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(e)配列ID番号40のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(b)配列ID番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(c)配列ID番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(d)配列ID番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列ID番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、配列ID番号13、22又は32のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、配列ID番号15、24、34又は38のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号13のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号15のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(b)配列ID番号13のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号24のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(c)配列ID番号13のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号34のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(d)配列ID番号13のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号38のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(e)配列ID番号22のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号15のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(f)配列ID番号22のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号24のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(g)配列ID番号22のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号34のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(h)配列ID番号22のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号38のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(i)配列ID番号32のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号15のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(j)配列ID番号32のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号24のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、
(k)配列ID番号32のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号34のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖、又は
(l)配列ID番号32のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖、及び配列ID番号38のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖を含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号13のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖、
(b)配列ID番号22のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖、
(c)配列ID番号32のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(d)配列ID番号32のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、
(a)配列ID番号24の位置1にアスパラギン酸からグルタミン酸への突然変異を有する軽鎖、
(b)配列ID番号24の位置4にロイシンからメチオニンへの突然変異を有する軽鎖、
(c)配列ID番号24の位置62にバリンからイソロイシンへの突然変異を有する軽鎖、
(d)配列ID番号24の位置74にアスパラギン酸からグルタミン酸への突然変異を有する軽鎖、
(e)配列ID番号24の位置96にメチオニンからロイシンへの突然変異を有する軽鎖、
(f)配列ID番号22の位置59にフェニルアラニンからチロシンへの突然変異を有する重鎖、
(g)配列ID番号22の位置60にプロリンからバリンへの突然変異を有する重鎖、
(h)配列ID番号22の位置77にセリンからスレオニンへの突然変異を有する重鎖、及び
(i)配列ID番号22の位置78にシステインからロイシンへの突然変異を有する重鎖のうちの1つ以上を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体はFab、F(ab’)2、Fv、又は単鎖Fv(ScFv)である。
【0066】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はそれらの変異体のサブクラスの重鎖定常領域、及びカッパ若しくはラムダ又はそれらの変異体の軽鎖定常領域を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のサブクラスの変異型重鎖定常領域を含み、該変異型重鎖定常領域は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC(Antibody-Dependent Cell-Mediated Cytotoxicity))又は補体依存性細胞傷害(CDC(Complement-Dependent Cytotoxicity))等の効果器機能の減少又は排除をもたらす。
【0068】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体はヒトIgG1の重鎖定常領域又はその変異体を含む。より好ましい実施形態において、抗Tim-3抗体はE233P、L234A、L235A、L236A及びP329Aからなる群より選択される1つ以上の突然変異を含むヒトIgG1の変異型重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は配列ID番号21のアミノ酸配列を含む変異型ヒトIgG1重鎖定常領域、及びヒトカッパ軽鎖定常領域を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は単離型又は組換え型である。
【0070】
いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は少なくとも1つの抗原結合部位、又は少なくとも可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗Tim-3抗体は本明細書に記載の抗体からの抗原結合フラグメントを含む。
【0071】
本明細書において、用語「抗体」は最も広い意味で使用され、具体的には、(全長を有するモノクローナル抗体を含む)抗体、及びTim-3、PD-1等の、抗原を認識する抗体フラグメントを含む。抗体は通常、単一特異的であるが、特異的、異種特異的、又は多重特異的として記載されてもよい。抗体分子は特異的結合部位によって、特異的抗原決定基又は抗原のエピトープに結合する。
【0072】
本明細書において、用語「モノクローナル抗体」又は「mAb」又は「Mab」は、実質的に同種の抗体の集団を意味する。すなわち、それに含まれる抗体分子が、それに少量存在する自然に生じる可能な突然変異を除いて、アミノ酸配列において同一である集団を意味する。一方、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は通常、それらの可変領域、特にそれらの相補性決定領域(CDR)に異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を含み、多くの場合、それらは異なるエピトープに対して特異的である。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に同種の集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。モノクローナル抗体(mAb)は当業者に周知の方法によって取得することができる。例えば、Kohler G et al.、Nature 1975 256: 495-497;米国特許第4376110号;Ausubel FM et al.、CURRENT ROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY 1992;Harlow E et al.、ANTIBODIES: A LABORATORY ANUAL、Cold spring Harbor Laboratory 1988;及び Colligan JE et al.、CURRENT PROTOCOLS N IMMUNOLOGY 1993を参照。本明細書に開示されたmAbはIgG、IgM、IgD、IgE、IgA、及びそれらの任意サブクラスを含む、任意の免疫グロブリンクラスのものであってもよい。mAbを製造するハイブリドーマは生体内で培養されてもよいし、生体外で培養されてもよい。高い力価を有するmAbを以下の方法で、生体内製造で取得することができる。すなわち、個々のハイブリドーマからの細胞をプリスティンプライム化Balb/cマウス等の、マウスに腹腔内注射し、高濃度で所望のmAbを含む腹水液を製造することができる。アイソタイプIgM又はIgGのMAbは、当業者に周知のコラムクロマトグラフィー法を使用して、上記の腹水液又は培養物の上清から精製されてもよい。
【0073】
一般に、基本的な抗体構造単位は四量体を含む。各四量体はポリペプチド鎖の2つの同一の組を含み、各組は1つの「軽鎖」(約25kDa)及び1つの「重鎖」(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部は抗原認識に本質的に関与する約100~110以上のアミノ酸の可変領域を含む。重鎖のカルボキシ末端部は、効果器機能に本質的に関与する定常領域を規定してもよい。通常、ヒト軽鎖はカッパ及びラムダ軽鎖として分類される。さらに、ヒト重鎖は、一般に、α、δ、ε、γ又はμとして分類され、それぞれ、抗体のアイソタイプをIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMとして規定する。軽鎖及び重鎖内で、可変領域及び定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、重鎖はさらに、約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。
【0074】
各重鎖/軽鎖(VL/VH)の組の可変領域は抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、完全な状態の抗体は2つの結合部位を有する。二官能性又は二重特異性抗体を除くと、上記の2つの結合部位は通常、同一である。
【0075】
通常、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域は、比較的保存されたフレームワーク領域(FR(framework regions))の間に配置されている、「相補性決定領域(CDR)」とも呼ばれる3つの超可変領域を含む。CDRは通常、フレームワーク領域によって整列され、特定のエピトープへの結合を可能にする。一般に、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、N末端からC末端に向かって、FR-1(又はFR1)、CDR-1(又はCDR1)、FR-2(FR2)、CDR-2(CDR2)、FR-3(又はFR3)、CDR-3(CDR3)、及びFR-4(又はFR4)を含む。一般に、各ドメインへのアミノ酸の割り当ては「Sequences of Proteins of Immunological Interest」Kabat, et al.、National Institutes of Health、Bethesda、Md.; 5<m>ed.; NIH Publ. No. 91-3242 (1991); Kabat (1978) Adv. Prot. Chem. 32: 1-75; Kabat, et al.、(1977) J. Biol. Chem. 252: 6609-6616; Chothia、et al、(1987) J Mol. Biol. 196: 901-917 or Chothia、et al、(1989) Nature 342: 878-883の定義に従っている。
【0076】
用語「超可変領域」は抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は「CDR」(すなわち、軽鎖可変領域中のVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3、並びに重鎖可変領域中のVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3)からのアミノ酸残基を含む。Kabat et al. (1991)「Sequences of Proteins of Immunological Interest」5th Ed. Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(抗体のCDR領域を配列により規定)を参照。また、Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196: 901-917(抗体のCDR領域を構造により規定)を参照。本明細書において、用語「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書でCDR残基として規定される超可変領域残基以外の可変領域残基を意味する。
【0077】
特に明示されない限り、「抗体フラグメント」又は「抗原結合フラグメント」は抗体の抗原結合フラグメントを意味する。すなわち、全長を有する抗体によって結合される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメント、例えば1つ以上のCDR領域を保持するフラグメントを意味する。抗原結合フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント;二特異性抗体;線形抗体;単鎖Fv(ScFv)等の単鎖抗体分子;抗体フラグメントから形成された単一ドメイン抗体及び多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
特異性を有する特定の標的タンパク質に結合する抗体はまた、特定の標的タンパク質に特異的に結合するとも記載される。これは、抗体が他のタンパク質に比べ該標的へ優先的に結合を示すことを意味するが、この特異性は絶対的な結合特異性を必要とするものではない。例えば偽陽性等の望ましくない結果を生じることなく、抗体の結合がサンプル中の標的タンパク質の存在を決定する場合、該抗体はその意図した標的に対して「特異的」であると見なされる。本発明において有用な抗体又はそれの結合フラグメントは、非標的タンパク質の親和性の少なくとも2倍以上、好ましくは少なくとも10倍以上、より好ましくは少なくとも20倍以上、最も好ましくは少なくとも100倍以上の親和性で標的タンパク質に結合する。本明細書において、抗体が成熟ヒトTim-3分子のアミノ酸配列等の、任意のアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合し、その配列を欠くタンパク質に結合しない場合、該抗体は該配列を含むポリペプチドに特異的に結合すると記載される。
【0079】
本明細書において、用語「ヒト抗体」はヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を意味する。ヒト抗体がマウス、マウス細胞、又はマウス細胞に由来するハイブリドーマで製造された場合、該ヒト抗体はマウス糖鎖を含む可能性がある。同様に、「マウス抗体」又は「ラット抗体」は、それぞれマウス又はラットの免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を意味する。
【0080】
用語「ヒト化抗体」は、ヒト抗体に加え、非ヒト抗体(例えば、マウス抗体)からの配列を含む抗体の形態を意味する。そのような抗体は非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む。一般に、ヒト化抗体は少なくとも1つ、典型的には2つの可変領域の実質的に全てを含み、超可変ループの全て又は実質的に全ては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てはヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含むだろう。ヒト化抗体を親のげっ歯類の抗体と区別するために必要である場合、抗体クローンの名称に接頭後「hum」、「hu」、「Hu」又は「h」を加える。一般に、げっ歯類の抗体のヒト化された形態は親のげっ歯類の抗体と同一のCDR配列を含むが、親和性を高めるため、ヒト化抗体の安定性を高めるため、又は他の理由のために特定のアミノ酸置換を含んでもよい。
【0081】
本明細書において、用語「癌」又は「腫瘍」は、通常、無秩序な細胞増殖によって特徴付けられる哺乳類における生理学的状態を意味又は表現する。癌の例としては、(小細胞肺癌又は非小細胞肺癌を含む)肺癌、副腎癌、肝臓癌、胃癌、子宮頸癌、黒色腫、腎臓癌、乳癌、大腸癌、白血病、膀胱癌、骨肉腫、脳腫瘍、子宮内膜癌、頭頸部癌、リンパ腫、卵巣癌、皮膚癌、甲状腺腫瘍、又は癌の転移性病変が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
用語「CDR」は、特に明示されない限り、Kabatの番号付システムを使用して規定された、免疫グロブリン可変領域における相補性決定領域を意味する。
【0083】
医薬組成物及び用具(キット)
いくつかの態様において、本開示は組成物、例えば、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と共に調剤される、本明細書に記載の抗Tim-3抗体を含む薬学的に許容可能な組成物を提供する。本明細書において、用語「薬学的に許容可能な賦形剤」は生理学的に適合性のある全ての溶媒、分散媒、等張及び吸収遅延剤等を含む。賦形剤は静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、直腸投与、脊髄投与、又は(注射又は注入等による)経皮投与に適している。
【0084】
本明細書の組成物は多様な形態を有してもよい。これらの形態は、例えば、(注射可能溶液や注入用溶液等の)液体溶液、分散液又は懸濁液、リポソーム、及び坐剤等の、液体、半固体、及び固体剤の形態を含む。適切な形態は意図した投与の様式及び治療用途によって異なる。典型的な適切な組成物は注射可能溶液又は注入用溶液の形態である。1つの適切な投与様式は非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。いくつかの実施形態において、抗体は静脈内注入又は注射によって投与される。特定の実施形態において、抗体は筋肉内注射又は皮下注射によって投与される。
【0085】
本明細書において、用語「治療的に有効な量」は、疾病又は疾患若しくは障害の臨床症状の少なくとも1つを治療するために被験者に投与する場合に、そのような疾患、障害、又は症状に対する治療を行うのに十分である抗体の量を意味する。「治療的に有効な量」は、抗体、疾患、障害、及び/又は疾患若しくは障害の症状、疾患、障害、及び/又は疾患若しくは障害の症状の重症度、治療を受ける被験者の年齢、及び/又は治療を受ける被験者の体重によって変えられてもよい。任意の例における適切な量は当業者に明白であるか、又はありきたりの実験によって決定されてもよい。併用療法の場合、「治療的に有効な量」は疾患、障害、又は状態の効果的な治療のための目的の組み合わせに対する総量を意味する。
【0086】
「被験者」は霊長類等の哺乳類、好ましくはヒト等のより高等な霊長類(例えば、本明細書に記載の疾患を有する、又は疾患を有する可能性のある患者)である。
【実施例】
【0087】
実施例1 抗Tim-3モノクローナル抗体の作製
従来のハイブリドーマ技術(de StGroth and Sheidegger、1980、J Immunol Methods 35: 1;Mechetner、2007、Methods Mol Biol 378: 1)に基づいて、複数のマウス抗Tim-3モノクローナル抗体(mAb)を作製した。さらなる特徴付けのために、酵素結合免疫吸着分析(ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay))及び蛍光活性化細胞選別(FACS(Fluorescence-Activated Cell Sorting))分析において高い結合活性を有するmAbを選択した。
【0088】
免疫化及び結合分析のためのTim-3組換え型タンパク質
全長を有するヒトTim-3をコーディングするcDNA(配列ID番号1)をGenBank配列(受入れ番号:AF450242.1)に基づいて合成した。Tim-3(配列ID番号2)のアミノ酸(AA)1~202から成る細胞外ドメイン(ECD(Extracellular Domain))のコーディング領域をPCR増幅し、それぞれ2つの組換え型融合タンパク質発現プラスミドTim-3-mIgG2a及びTim-3-huIgG1となる、マウスIgG2a(GenBank受入れ番号:CAC20702)のFc領域又はヒトIgG1重鎖(UniProtKB/Swiss-Prot受入れ番号:P01857)のFc領域のいずれかにC末端が融合した状態の、pcDNA3.1ベースの発現ベクター(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)にクローン化した。
図1はTim-3融合タンパク質の概略図を示している。組換え型融合タンパク質の製造のために、Tim-3-mIgG2a及びTim-3-huIgG1プラスミドをHEK293ベースの(自作の)哺乳類細胞発現系に一時的にトランスフェクションし、回転式震盪器を備えたCO
2培養器で5~7日間培養した。組換え型タンパク質を含む上清を回収し、遠心分離により清澄化した。Tim-3-mIgG2a及びTim-3-huIgG1は、Protein G Sepharose Fast Flowコラム(Cat. No.: 17061805, GE Life Sciences)を用いて精製した。Tim-3-mIgG2a及びTim-3-huIgG1タンパク質の両方をリン酸緩衝食塩水(PBS(Phosphate Buffered Saline))で透析し、少な目のアリコートを-80℃の冷凍庫に保存した。
【0089】
安定した発現細胞株
全長を有するヒトTim-3(huTim-3)又はサルTim-3(mkTim-3、ZYAGEから入手可能な遺伝子、Cat. No.: KD-702)を発現する安定な細胞株を確立するために、Tim-3遺伝子をレトロウイルスベクターpFB-Neo(Cat. No.: 217561, Agilent, USA)にクローン化した。従来のプロトコル(Zhang T, et al.、2005、Blood 106: 1544-51)に従って、デュアルトロピックレトロウイルスベクターを作製した。huTim-3及びmkTim-3を含むベクターをそれぞれ、HuT78及びNK92MI細胞(ATCC、Manassas、VA、USA)に形質導入し、細胞株HuT78/huTim-3及びNK92MI/mkTim-3を作製した。G418を含む10%FBSを含む完全なRPMI1640培地での培養及びFACS結合分析により高発現細胞株を選択した。
【0090】
免疫化、ハイブリドーマ融合、及びクローニング
8~12週齢のBalb/cマウス(HFK BIOSCIENCE CO.、LTD、Beijing、China)を10μgのTim-3-mIgG2a及び水溶性佐剤(Cat. No.: KX0210041、KangBiQuan、Beijing、China)を含む、100μlの抗原溶液で腹腔内(i.p.)免疫処置した。3週間後に、上述の処置を繰り返した。2回目の免疫処置の2週間後、ELISA及びFACSによってマウス血清のTim-3結合を評価した。血清スクリーニングの10日後に、最大の抗Tim-3抗体血清力価を有するマウスを50μgのTim-3-mIgG2aで腹腔内追加免疫処置した。追加免疫処置の3日後、脾細胞を単離し、標準的な技術(Colligan JE, et al.、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY、1993)を用いてマウス骨髄腫細胞株、SP2/0細胞(ATCC)に融合させた。
【0091】
ELISAとFACSによる抗体のTim-3結合活性の評価
ハイブリドーマクローンの上清を、最初に、改良を加えた、「Methods in Molecular Biology (2007) 378: 33-52」に記載されたELISAによって選別した。簡単に言うと、Tim-3-huIgG1タンパク質を96ウェルプレートに塗布した。進展のためにHRP結合抗マウスIgG抗体(Cat. No.: 7076S、Cell Signaling Technology、USA)と基板(Cat. No.: 00-4201-56、eBioscience、USA)を使用し、プレート読取り装置(SpectraMax Paradigm、Molecular Devices、USA)を用いて450nmの波長の吸光度信号を測定した。ELISAが陽性のクローンを、FACSにより、上記のHuT78/huTim-3又はNK92mi/mkTim-3細胞のいずれかを用いてさらに検証した。Tim-3発現細胞(105細胞/ウェル)をELISA陽性ハイブリドーマ上清と共に培養し、その後にAlexaFluro-647で標識付けされたヤギ抗マウスIgG抗体(Cat. No.:A0473、Beyotime Biotechnology、China)と結合させた。フローサイトメーター(Guava easyCyte 8HT、Merck-Millipore、USA)を用いて細胞の蛍光を定量した。
【0092】
ヒト免疫細胞ベースの分析において良好な機能的活性を有する抗体を同定するために、ELISA及びFACS選別の両方で陽性シグナルを示したハイブリドーマからの馴化培地に対して機能性分析を実施した(以下を参照)。所望の機能的活性を有する抗体をさらにサブクローン化し、特徴付けを行った。
【0093】
無血清又は低血清培地へのハイブリドーマのサブクローニング及び適合
ELISA、FACS、及び(実施例7及び8に記載されている)機能性分析によって選別した後、陽性のハイブリドーマクローンを限界希釈法によりサブクローン化した。機能性分析によって確認された最良の抗体サブクローンを、3%FBSを含むCDM4MAb培地(Cat. No.: SH30801.02、Hyclone、USA)での増殖に適合させた。
【0094】
モノクローナル抗体の発現及び精製
ハイブリドーマ細胞をCDM4MAb培地(Cat. No.: SH30801.02、Hyclone)で培養し、37℃で5~7日間、CO2培養器で培養した。馴化培地を遠心分離によって回収し、精製の前に0.22μmの膜を通過させることによって濾過した。マウス抗体含有上清を、製造元の説明書に従って、ProteinAカラム(Cat. No.: 17127901、GE Life Sciences)に適用及び結合させた。上述の処置により、通常、90%を超える純度の抗体を産出した。凝集物を除去するために、ProteinA親和性精製抗体をPBSで透析するか、又はHiLoad16/60Superdex200カラム(Cat. No.: 17531801、GE Life Sciences)を用いてさらに精製した。タンパク質の濃度は、280nmで吸光度を測定することによって決定した。最終的な抗体調製物をアリコートに分けて-80℃の冷凍庫で保存した。
【0095】
実施例2 Tim-3抗体のクローニング及び配列分析
製造元の説明書に基づいて、UltrapureRNAキット(Cat. No.: 74104、QIAGEN、Germany)を用いて全RNAを調製するためにマウスハイブリドーマ細胞を回収した。Invitrogenから入手可能なcDNA合成キット(Cat. No.: 18080-051)を用いて、第1鎖cDNAを合成し、PCRキット(Cat. No.: CW0686、CWBio、Beijing, China)を用いてマウスmAbのVh及びVk遺伝子のPCR増幅を実施した。過去に報告された配列(Brocks et al.、2001 Mol Med 7: 461)に基づいて、重鎖可変領域(Vh)及びカッパ軽鎖可変領域(Vk)の抗体cDNAクローニングに使用するためのオリゴプライマーを合成した。そして、PCR産物をpEASY-Bluntクローニングベクター(Cat. No.: CB101-02、TransGen、China)にサブクローニングし、配列決定した。Vh及びVk領域のアミノ酸配列はDNA配列の結果から推定した。
【0096】
配列同一性を比較することによってマウスmAbを分析し、配列類似性に基づいて分類した(
図2)。カバット(WuとKabat、1970、J. Exp. Med. 132: 211-250)及びIMGT(Lefranc、1999、Nucleic Acids Research 27: 209-212)システムに基づいて、配列の注釈及びインターネットベースの配列分析(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/index.html)により、相補的決定基領域(CDR)を規定した。表1に、代表的な最良のクローンmu425(Vh及びVK)のアミノ酸配列を列挙する(配列ID番号9及び11)。表2に、mu425のCDR配列を列挙する(配列ID番号3~8)。
【0097】
表1 mu425のVH及びVK領域のアミノ酸配列
【表2】
【0098】
表2 mu425のVH及びVK領域のCDR配列(アミノ酸)
【表3】
【0099】
実施例3 SPRによる精製されたマウス抗Tim-3抗体の親和性の測定
BIAcoreTMT-200(GE Life Sciences)を用いて、ELISA及びFACSにおいて高い結合活性を有するTim-3抗体、並びに(実施例7及び8に記載されている)細胞ベースの分析における有力な機能性活性を有するTim-3抗体をSPR分析により、それらの結合の反応速度論について特徴付けた。簡単に言うと、抗ヒトIgG抗体を活性化CM5バイオセンサーチップ(Cat. No.: BR100530、GE Life Sciences)に固定化した。ヒトFcでタグ付けされたTim-3IgVドメインをチップ表面上に流し、抗ヒトIgG抗体によって捕捉した。そして、精製されたマウス抗体の段階希釈溶液(0.36nM~90nM)をチップ表面上に流し、一対一ラングミュア(Langmuir)結合モデル(BIA Evaluation Software、GE Life Sciences)を使用して会合速度(Kon)と解離速度(Koff)を計算するために表面プラズモン共振信号の変化を分析した。平衡解離定数(KD)を比Koff/Konとして計算した。表3に、mu425、mu44、mu225、及びmu411を含む最良のmAbの結合親和性の特性を示す。
【0100】
表3 SPRによるハイブリドーマ抗体結合親和性の比較
【表4】
【0101】
実施例4 マウス抗ヒトTim-3mAb、mu425のヒト化
mAbのヒト化及び工学的操作
mu425のヒト化のために、IMGTのウェッブサイト(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/index.html)及びNCBIのウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)のヒト免疫グロブリン遺伝子データベースをブラストすることによって、mu425可変領域のcDNA配列との高い相同性を共有する配列を探すためにヒト生殖系列のIgG遺伝子を調べた。高頻度でヒト抗体レパートリに存在し(Glanville, 2009, PNAS 106: 20216-20221)、mu425と高い相同性を有するヒトIGVH及びIGVK遺伝子をヒト化のための鋳型として選択した。ヒト化の前に、mu425の重鎖及び軽鎖の可変領域を、ヒトIgG1mf(配列ID番号21)と名付けられた変更されたヒトIgG1定常領域及びヒカッパ定常領域に、それぞれ融合した。IgG1mf(配列ID番号21)は、野生型ヒトIgG1と比較して、突然変異E233P、L234A、L235A、L236A及びP329A(アミノ酸の番号付けはEUシステムに基づく)の組み合わせを含むIgG1突然変異体である。
【0102】
ヒト化をCDRグラフティング(Methods in Molecular Biology、Vol 248: Antibody Engineering、Methods and Protocols、Humana Press)により実施し、ヒト化抗体(hu425s)をヒトIgG1フォーマットで工学的操作した。ヒト化の最初の回では、フレームワーク領域のマウスからヒトアミノ酸残基への突然変異を疑似3D構造によって誘導し、CDRの極限構造を維持するために構造的に重要なマウスフレームワーク残基はヒト化抗体425、hu425-1-1の第1バージョンにおいて保持された(重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は配列ID番号22及び24に設定)。詳細には、mu425のVkのCDRを、4つのマウスフレームワーク残基(D1、L4、V62及びD74)を保持した状態で、ヒト生殖系列可変遺伝子IGVK3-15のフレームワークにグラフティングした(軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列ID番号19に設定)。mu425のVhのCDRを、1つのマウスフレームワーク(C78)残基を保持した状態で、ヒト生殖系列可変遺伝子IGVH3-7のフレームワークにグラフティングした(重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列ID番号17に設定)。
【0103】
適合が容易なサブクローニング部位を有する、IgG1mf(配列ID番号21)と名付けられたヒトIgG1変異体及びカッパ鎖の定常領域をそれぞれ含む、自作の発現ベクターを用いて、全長を有するヒト抗体のフォーマットとしてHu425-1-1を構築した。293G細胞への上記2つの構築物の共トランスフェクション及びProteinAカラム(Cat. No.: 17543802、GE Life Sciences)を用いた精製によって、hu425-1-1抗体の発現及び調製を成し遂げた。精製された抗体をPBS中で0.5~5mg/mLに濃縮し、アリコートに分けて-80℃の冷凍庫で保存した。
【0104】
hu425-1-1の鋳型に基づき、Vkのフレームワーク領域の残留マウス残基を、VkにD1E、L4M、V62I及びD74Eを含む、対応するヒト生殖系列残基に変換する、複数の単一突然変異体を作製した。得られたhu425-1-2a(D1E)、hu425-1-2b(L4M)、hu425-1-2c(V62I)及びhu425-1-2d(D74E)は全て、hu425-1-1と同様の結合活性及び機能性活性を有した。重鎖のヒト化のレベルをさらに改善するために、残留残基C78及びH-CDR2のC末端部(Kabatの定義)をマウス配列から対応するヒト生殖系列残基に変更した。3つのヒト化抗体の詳細は、hu425-2A-1(VhのF59Y)、hu425-2B-1(VhのP60V)及びhu425-2C-1(VhのC78L)であった。ヒト化した突然変異は全て、特定の位置に突然変異を含むプライマー及び部位指定突然変異誘発キット(Cat. No. FM111-02、TransGen、Beijing, China)を用いて作製した。所望の突然変異は配列分析により確認した。これらのhu425変異抗体を、上述した結合分析及び機能性分析により試験した。hu425-1-1と比較すると、hu425-2B-1は大幅に減少した結合親和性及び機能性を有した(データは省略)のに対し、hu425ヒト化変異体の残りのバージョンはhu425-1-1と同様の結合活性及び機能性活性を有した。
【0105】
ヒトにおける治療的使用のための分子レベルの生化学的及び生物物理学的特性を改善するために、CDRとフレームワーク領域に突然変異を導入することによってHu425抗体をさらに工学的操作した。機能性活性を維持しながら、アミノ酸組成、熱安定性(Tm)、表面疎水性、及び等電子点(pIs)を検討事項とした。
【0106】
これらをまとめると、上述の突然変異処理により、ヒト化モノクローナル抗体の2つの適切に工学的操作されたバージョン、すなわち、hu425-2-2(重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列ID番号28及び30に設定)とhu425-2-3b(重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列ID番号28及び36に設定)が得られ、詳細に特徴付けられた。hu425-2-2及びhu425-2-3bは両方とも、H-CDR2(配列ID番号26)及びL-CDR3(配列ID番号27)に突然変異を含む。以下の表4及び表5に、重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列及びhu425-2-2及びhu425-2-3bの6つのCDRを列挙する。これらの結果は、hu425-2-3b及びhu425-2-2の両方が結合親和性及びTim-3によって媒介される下流のシグナル伝達の阻害等の機能的活性において非常に類似していることを示している。
【0107】
表4 hu425-2-2及びhu425-2-3bのVH及びVK領域のアミノ酸配列
【表5】
【0108】
表5 hu425-2-2及びhu425-2-3bのVH及びVK領域のCDR配列
(アミノ酸)
【表6】
【0109】
親和性の決定のために、PierceFab準備キット(Cat. No. 44985、ThermoFisher Scientific)を使用して、hu425のmAbの系列に由来のFabを準備し、表面プラズモン共振(SPR(Surface Plasmon Resonance))技術に基づく親和性分析に使用した。表6は、抗Tim-3Fab抗体のSPR決定結合特性の結果をまとめたものである。hu425-2-2とhu425-2-3bのFabは非常に類似した結合特性有し、平均解離定数はそれぞれ、0.419nMと0.361nMであり、それらはhu425-1-1のものに近い。
【0110】
表6 SPRによるhu425のFab結合親和性の比較
【表7】
*ch425はヒトIgG1mf/マウスカッパ定常領域に融合したmu425可変領域から構成されている(重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は配列ID番号13及び15に設定)。
**NA:利用不可
上記に示したヒト化抗体の全てはまた、健康なドナーから単離した一次ヒト免疫細胞の
機能的活性に対して確認を行った(実施例8に記載)。
【0111】
実施例5 SPRによる抗Tim-3抗体の親和性の比較
S228P突然変異を有するヒトIgG4のフォーマットで、Hu425-2-3b及び2つの既知のTim-3抗体、Ab1(配列ID番号:40の重鎖可変領域、及び配列ID番号:41の軽鎖可変領域)及びAb2(配列ID番号:42の重鎖可変領域、及び配列ID番号:43の軽鎖可変領域)を生成し、BIAcoreTMT-200(GE Life Sciences)を使用して、SPR分析により、それらの結合の反応速度論について特性付けを行った。
【0112】
簡単に言うと、抗ヒトFab抗体を、活性化CM5バイオセンサーチップ(Cat.: BR100530、GE Life Sciences)上に固定化した。抗Tim-3をチップ表面上に流し、抗ヒトFab抗体によって捕捉した。そして、Tim-3の段階希釈溶液(0.12nM~30nM)Tim-3をチップ表面上に流し、一対一ラングミュア結合モデル(BIA Evaluation Software、GE Life Sciences)を使用して会合速度(Kon)と解離速度(Koff)を計算するために表面プラズモン共振信号の変化を分析した。平衡解離定数(KD)を比Koff/Konとして計算した。Hu425-2-3b、Ab1、及びAb2は同
等の結合親和性を示した。抗体、特に、hu425-2-3bは、ナノモラーKDと用量
依存的にTim-3に結合する。
【0113】
表7 SPRによる抗Tim-3の結合親和性の比較
【表8】
【0114】
実施例6 mu425/hu425のCDRのTim-3結合への寄与
ヒト化の処理中、hu425-1-1からの単一のアミノ酸の突然変異を有する複数の変異体が作製された。
図3からわかるように、そのような突然変異の変異体のうちの2つはTim-3への結合をほぼ完全に無効化したが、各々は重鎖のCDR3に、中立の(化学的に類似の)アミノ酸置換、D102E(該mAbをhu425-2E-1は名付けられた)及びG103A(hu425-2F-1と名付けられた)のみを有する。これらの研究結果は、mu425ヒト化抗体中の重鎖のCDR3がTim-3結合機能性に大きく寄与しているという考えを裏付けた。
【0115】
一方、mu425/hu425の軽鎖のCDR1及びCDR2は、マウス生殖系列遺伝子IGKV3-1と同一であった。いくつかのマウス抗体もまた、Ab2000(米国特許第7989597号)及びmAb1G5(米国特許第7563874号)等の、それらの軽鎖可変領域に同一のマウス生殖系列CDR1及びCDR2配列を含むことがわかった。これらの抗体がTim-3にも結合できるかどうかを調べた。この目的のために、Ab2000及び1G5をヒトIgG1mfのフォーマットで作製し、ELISAによりTim-3-mIg結合について評価した。
図4に示すように、hu425-2-3bとは対照的に、Ab2000及び1G5のいずれも、Tim-3結合シグナルを生成することができなかった。それゆえ、マウス生殖細胞系遺伝子IGKV3-1のCDR1及びCDR2はTim-3結合に対して十分ではない。
【0116】
Tim-3結合に対するCDRの寄与をさらに評価するために、抗体hu425-2-3b及び抗体Ab1の重鎖及び軽鎖を互いに交換することにより、2つのハイブリッド抗体を作製した。hu425-2-3b及びAb1は両方ともマウス由来の抗Tim-3であり、それらはマウス生殖細胞系IGKV3-1のものと同一のL-CDR1及びL-CDR2を共有する。ハイブリッド抗体425HC/Ab1LCを作製するためにhu425-2-3bの重鎖及びAb1の軽鎖を同時発現させるとともに、Ab1の重鎖及びhu425-2-3bの軽鎖の同時発現によってハイブリッド抗体Ab1HC/425LCを調製した。ハイブリッド抗体の結合活性は、BioLayer干渉計(ForteBio Octet)によって分析した。ハイブリッド抗体をタンパク質Aのチップで捕捉した後、BLI結合信号分析のためにTim-3-his溶液に浸した。Ab1HC/425LCがTim-3結合能力を保持していたのに対し、捕捉された425HC/Ab1LCは有意な結合シグナルを生成しなかったことが観察された。これは、hu425-2-3bのLC-CDR3がそれのTim3への結合に必要であるが、それのL-CDR1及びL-CDR2はTim3結合に対して十分ではないか、又はTim3への結合には必要でないことを示唆した。
【0117】
実施例7 抗Tim-3抗体によるTim-3媒介食作用の遮断
Tim-3は、それのIgVドメインを介してホスファチジルセリン(PtdSer)に結合し、アポトーシス細胞の食作用を媒介することが示されている(DeKruyff et al.、J. Immunol、2010、184:1918-1930;Nakayama et al.、Blood、2009、113: 3821-3830)。PtdSerは、正常な哺乳類細胞において原形質膜の内側の小葉に閉じ込められているが、アポトーシス細胞の外側の表面に露出するリン脂質である。PtdSerは、免疫反応を妨げることによって腫瘍の微小環境における免疫抑制に関与している(Fadok et al., J Clin Invest, 1998, 101: 890-898;Frey et al., Semin Immunopathol., 2011, 33: 497-516)。抗Tim-3抗体の生体内投与は、アポトーシス細胞のクリアランスの減少、局所的な炎症の増加、及び免疫寛容の中断をもたらし、PtdSer-Tim-3軸が生体内での免疫抑制に関与していることを示唆している(Chabtini et al.、J. Immunol 190: 88-96、2013;Nakayama et al.、Blood 113: 3821-30、2009)。
【0118】
抗Tim-3抗体がTim-3によって媒介される食作用を遮断することができるかどうかを判定するために、センサ及び機能的読出し細胞株、THP-1/Tim-3、すなわち、全長を有するTim-3遺伝子に安定的にトランスフェクションしたTHP-1(ATCC、ヒト単球細胞株)を使用して、細胞ベースの分析を確立した。この分析において、HuT78(ATCC)を、2%エタノールで一晩処理し、続いて製造元の指示に従ってCFSE色素(Invitrogen、1μM)で標識付けすることによって限定的なアポトーシスを起こさせた。そして、THP-1/Tim-3細胞を、抗Tim-3ヒト化抗体の存在下で6時間、CFSE標識アポトーシスHuT78細胞と共培養した。Tim-3媒介食作用は、(CD3
-集団にゲートされた)全THP-1/Tim-3細胞に対するCFSE
+THP-1/Tim-3の割合として決定した。
図5に示すように、hu425-2-3bは、THP-1/Tim-3細胞によるアポトーシスHuT78細胞の食作用を用量依存的に阻害した。
【0119】
実施例8 T細胞エンゲージャー発現腫瘍細胞と共培養した一次ヒトPBMCにおける抗Tim-3抗体によるIFN-γ分泌の活性化
Tim-3及びPD-1の両方が、T細胞の消耗を誘発するために機能する活性化T細胞に発現した阻害性受容体であることが報告されている(Anderson AC. et al.、2016、Immunity 44:989-1004)。癌患者からのTim-3+CD4及びCD8T細胞は、実際には、Tim-3-T細胞に比べ、はるかに少ないTh1サイトカイン、IFN-γを分泌する(Arai Y. et al.、2012、Yonago Acta medica 55: 1-9;Xu B, et al.、2015、Oncotarget 6: 20592-603)。
【0120】
ヒトPBMCにおける抗CD3mAbのOKT3活性化T細胞を用いて、Tim-3及び抗Tim-3抗体の機能を調べた。Histopaque-1077(Cat. No.: 10771、Sigma)を用いた密度勾配遠心分離プロトコルを用いて、健康なドナーから末梢血単核細胞(PBMCs(Peripheral Blood Mononuclear Cells))を単離した。分析の三日前に、PBMCを40ng/mLの抗CD3mAb、OKT3(Cat. No.: 16-0037、eBioscience、USA)で刺激し、効果器細胞として使用されるCD3
+T細胞を増幅した。A549/OS8と名付けられた標的細胞は、米国特許第8735553号に記載されている方法に基づいて、T細胞エンゲージャー(OS8)で安定にトランスフェクションされた肺癌細胞株A549(ATCC)であった。OS8は、N末端ドメインに抗ヒトCD3mAb、OKT3のscFvを含み、それはTCR/CD3複合体と直接相互作用し、T細胞を活性化する。効果器細胞であるPBMCを、マイトマイシン-Cで簡易的に処理したA549/OS8標的細胞と共培養して、TCR/CD3複合体との接触で起こる、活性化T細胞の腫瘍細胞に対する応答を模倣した。分析は、96ウェルの平底プレートで抗Tim-3抗体の存在下又は非存在下で実施した。15~18時間の共培養の後、培養物の上清を、Ready-Set-Go!ELISAキット(Cat. No.: 88-7316、eBiosciences)を用いたELISAによって、IFN-γのレベルについて分析した。
図6に示すように、A549/OS8標的細胞を効果器細胞と共培養した場合、抗Tim-3抗体(ch425及びhu425-1-1)は効果器細胞におけるIFN-γ分泌の増加を誘発した。
【0121】
実施例9 抗Tim-3抗体によるCMV特異性ヒトT細胞の活性化
ヒトCMVのPP65ペプチド(NLVPMVATV、495-503、HLA-A2.1-制限)(Boeckh M、Boeckh M and Geballe AP、2011、J Clin Invest. 121: 1673-80)を認識する天然由来のT細胞を用いて、Tim-3抗体の機能性活性をさらに評価した。簡単に言うと、最初に、抗HLA-A2mAbを用いて、FACSにより、健康なドナーからのPBMCを選別した。そして、10%FBSを含む完全なRPMI中でPP65ペプチド(純度98%超、GL Biochem(Shanghai)により合成)を用いて、HLA-A2+PBMCを1週間擬態した。
【0122】
標的細胞株A549/A2.1は、HLA-A2.1の安定なトランスフェクションにより確立された。マイトマイシン-c(100μg/ml)処理及びpp65ペプチド(5μg/ml)パルスの30分後に、A549/A2.1細胞(10
4)を、抗Tim-3抗体又は対照抗体の存在下又は非存在下で、96ウェルプレートで、pp65で感作した同数のPBMCと一晩、共培養した。培養物の上清のIFN-γをELISAにより決定した。全ての条件に対して、3回ずつ行った。
図7に示すように、hu425-2-3bはpp65に特異的なT細胞が細胞培養物の上清中にIFN-γを分泌するのを促進する。
【0123】
実施例10 抗Tim-3抗体はNK細胞媒介細胞傷害性を増強した
Tim-3は、比較的高いレベルでナチュラルキラー(NK)細胞上に構成的に発現されることが知られている(Ndhlovu LC, et al.、2012、Blood 119: 3734-43; da Silva IP, et al.、2014、Cancer Immunol Res. 2: 410-22)。黒色腫では、NK細胞でのTim-3の発現の高さは、腫瘍の進行した病期及び予後不良と関連していることがわかっている。加えて、NK細胞の機能は、Tim-3活性によって影響されると考えられている(da Silva IP, et al.、2014、Cancer Immunol Res. 2: 410-22)。
【0124】
ヒト化抗Tim-3抗体がNK細胞によって媒介される細胞傷害性を促進するかどうかを確認するために、MiltenyiBiotec(Germany)から入手可能なNK細胞単離キットを使用して、製造元の指示に従って、健康なドナーのPBMCから一次NK細胞を単離した。ヒトIL-2(1000U/ml)で1日刺激した後、抗Tim-3抗体、ブレフェルジンA、及び抗CD107a-APC(eBioscience)の存在下、37℃で、NK細胞を5時間、K562細胞と共培養した。CD3
-CD56
+NK細胞上のCD107aの発現をフローサイトメトリーにより定量した。その結果、抗Tim-3抗体hu425-2-3bが、平均蛍光強度(MFI(Mean Fluorescence Intensity))及び細胞数の割合によって測定されるCD107aの発現を増大させることが示された(
図8)。
【0125】
実施例11 抗Tim-3抗体はTim-3受容体の表面発現を減少させた
hu425-2-3b含有Tim-3の内在化の可能性に取り組むために、最初に、健康なドナーからのNK細胞を完全RPMI1640培地中で、hu425-2-3b(10μg/mL)と共に、37℃又は4℃で1時間、培養した。Tim-3受容体の表面発現は、非競合Tim-3Ab、mu420(自作)で染色し、続いてヤギ抗マウスIgG-APC(Biolegend)で染色することによって決定した。
図9に示すように、37℃で、hu425-2-3bは、陰性対照のヒトIgG処理細胞と比較して、Tim-3表面発現の大幅な減少を引き起こした。これは短期間における明らかな温度依存性を示したので、上述の減少は抗Tim-3抗体誘発受容体の内在化によるものであった可能性が高い。これらの結果は、おそらくTim-3の内在化により、hu4-25-2-3bがTim-3受容体のダウンレギュレーションを誘発したことを明白に実証している。Tim-3の内在化を誘発することによって、hu425-2-3bがTim-3と(ガレクチン-9及びPtdSer等の)それの複数のリガンドとの相互作用を減少させると予想される。
【0126】
実施例12 抗Tim-3抗体は内在化率の上昇を呈した
抗体の内在化をさらに調べるために、Tim-3発現NK細胞株(NK92MI/huTim-3)を用いて、異なる時点(1、3、5及び18時間)において抗Tim-3抗体によって誘発される内在化を判定した。簡単に言うと、37℃又は4℃で、hu425-2-3b、Ab1、及びAb2を含む抗Tim-3抗体(10μg/ml)をNK92MI/huTim-3(5×10
4)と共に18時間、培養した。Tim-3受容体の表面発現は、ヤギ抗ヒトIgG-FITCで染色することによって決定した。内在化の割合%は、4℃での発現レベルと比較した、37℃でのTim-3の表面発現の減少(%)として計算した。
図10に示されるように、短い培養(1~5時間)中に、hu425-2-3bは、Ab1及びAb2と同程度のTim-3の内在化を誘発した。これは、18時間の培養後にAb1及びAb2の両方よりも大幅に持続的な内在化を実証し、hu425-2-3bによるTim-3の内在化の持続的な活性を示唆した。
【0127】
実施例13 ヒト化抗Tim-3mAbは、単独で又はPD-1mAbとの組み合わせで免疫細胞を刺激する。
進行した腫瘍及び慢性的なウイルス感染を有する患者における「機能不全」腫瘍の抗原特異性CD8+T細胞において、免疫阻害性受容体PD-1及びTim-3がアップレギュレートされたことが報告されている(Fourcade J, et al.、2010、J Exp Med. 207: 2175-86;Thommen DS, et al.、2015、Cancer Immunol Res. 3: 1344-55;Jin HT, et al.、2010、Proc Natl Acad Sci USA. 107: 14733-8)。PD-1及びTim-3受容体の両方の同時遮断は、ワクチンによって誘発されるNY-ESO-1特異性CD8+T細胞を増大することができる(Fourcade J., et al.、2014、Cancer Res. 74: 1045-55)。抗Tim-3及び抗PD-1抗体による潜在的な共刺激効果を特徴付けるために、従来のT細胞応答分析である混合リンパ球反応(MLR(Mixed Lymphocyte Reaction))を設定した。簡単に言うと、「刺激因子PBMC」をマイトマイシン-c(100μg/ml、Sigma)で前処理し、抗Tim-3を加えた10%AB血清(Sigma)及び/又は抗PD-1mAb、317-4B6(hu317-4B6、317-4B6/IgG4mt10と名付けられた、米国特許第8735553号に記載)を含む完全RPMI1640培地で、一対一の比率で異なるドナーの「応答PBMC」と共培養した。この反応は、96ウェル平底プレートで4日間行い、各条件について3通りのデータポイント設定を用いた。細胞培養物の上清中のIFN-γ分泌を読出しとして分析した。
【0128】
これらの結果は、hu425-2-3bがMLR用量依存的に、IFN-γ製造を大幅に増強することを示した。hu425-2-3bと317-4B6(50ng/ml)との組み合わせは、hu425-2-3b又は抗PD-1抗体だけの場合に比べて、IFN-γ生成のより大きな増加をもたらし、抗Tim-3mAbの抗PD-1モノクローナル抗体との共刺激効果を実証している(
図11)。
【0129】
抗Tim-3mAb、hu425-2-3b又は抗PD-1Ab、hu317-4b6(50ng/ml)を加えたhu425-2-3bのいずれかの存在下で、96ウェル平底プレートで、マイトマイシン-Cで前処理された「刺激PBMC」を「応答PBMC」と4日間、共培養した。上清中のIFN-γをELISAにより決定した。全ての条件に対して、3回ずつ行った。結果は平均+SDで示した。
【0130】
実施例14 Hu425-2-3bはADCC及びCDCの効果器機能を有さなかった
ADCC及びCDCを誘発するhu425-2-3bの能力を、以下に記載するように生体内分析を用いて決定した。IgG1mf(配列ID番号21)は、突然変異E233P、L234A、L235A、L236A及びP329A(アミノ酸の番号付けはEUシステムに基づく)の組合せを含むIgG1突然変異体である。これらの突然変異は、C1qと同様に全てのFcγRへのFcの結合を排除するように設計されている。
【0131】
ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)
hu425-2-3bがADCCを誘発できるかどうかを判定するために、従来のADCC分析を設定した。分析効果器細胞株、NK92MI/CD16V細胞は、CD16
V158(V158対立遺伝子)及びFcRγcDNAを含む発現プラスミドを同時形質導入することによってNK92MI細胞(ATCC)から生成した。Tim-3発現T細胞株、HuT78/Tim-3を標的細胞として使用した。効果器細胞(4×10
4)を、hu425-2-3b抗体又は対照抗体と、陽性対照抗MHC-1A、B、C(Biolegend)又は陰性対照のヒトIgGのいずれかの存在下で5時間、同数の標的細胞と共培養した。細胞傷害性は、CytoTox96非放射性細胞傷害性分析キット(Promega、Madison, WI)を用いて乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出分析により決定した。詳細な溶解は以下の式により決定した。
【数1】
【0132】
これらの結果は、hu425-2-3bが陰性対照と同じ基底レベルのADCCを有するのに対して、抗MHC-IA、B、Cが用量依存的にADCCを誘発することを立証した(
図12A)。
【0133】
CDC(補体依存性細胞傷害)
hu425-2-3bがCDCを引き起こすかどうかは、予め活性化されたヒトPBMC及び健康なドナーからの新鮮な自己血清を用いて判定した。CDCによる細胞溶解は、Celltiter-glo分析キット(Promega、Beijing, China)によって決定した。簡単に言うと、健康なドナーからのPBMCをPHA(10μg/ml、Sigma)で3日間、予備活性化し、そして自己血清(15%)を加えたRPMI1640及びhu425-2-3b又は対照抗体(0.04-30μg/mL)で、37℃で一晩培養した。CDCによる細胞死は、反応終了時の細胞溶解後に生存細胞から放出されるATPの減少に基づいて分析した。抗MHC-IA、B、Cを陽性対照として使用した。96ウェル蛍光計(PHERA Star FS、BMG LABTECH)を使用して蛍光読取りを行い、相対蛍光単位(RFU(Relative Fluorescence Unit))読取りからCDC活性を以下のように計算した:%CDC活性=[(RFU試験-RFUバックグラウンド)/(全細胞溶解時のRFU-RFUバックグラウンド)]×100。これらの実験結果は、hu425-2-3bが、2人の異なるドナーから単離されたPBMCを有する検出可能なCDCを有さないことを実証した。一方、陽性対照抗体、抗MHC-Iは有意なCDC活性を誘発した(
図12B)。
【0134】
これらの結果は、hu425-2-3bが最適な物理化学的特性を維持しながら、ADCC及びCDC効果器機能を排除することを示した。
【0135】
実施例15 抗PD-1抗体と組み合わせた抗Tim-3抗体はマウス異種移植癌モデル
における腫瘍増殖を阻害する
免疫不全マウスにヒト癌細胞と同種異系のPBMCを移植した異種移植癌モデルにより、Tim-3抗体の潜在的な抗癌活性を抗PD-1抗体との組み合わせで評価した。簡単に言うと、腫瘍の植え付けの前に、NOD/SCIDマウスをシクロホスファミド(150mg/kg)で2日間、前処理した。ヒトPBMCを健康な有志者の末梢血から単離し、マトリゲル(Matrigel)中のA431類表皮癌細胞(Cat. No. CRL-1555、ATCC)と混合し、動物に皮下注射した。0日目から開始して、動物(マウス)を無作為に1群あたり5~10匹のマウスの割合で4群に割り当てた。マウスを週1回(QW)の割合で4週間、ビヒクル(PBS)と共に、5mg/kgの抗Tim-3mAbキメラ425(ch425)、抗PD-1抗体317-4B6(1mg/kg)、又は併用療法(1mg/kgの317-4B6を加えた5mg/kgのch425)を腹腔内(i.p.)注射した。個々のマウスの腫瘍サイズを週2回記録し、マウスを試験期間中、毒性の臨床徴候について毎日、観察した。腫瘍体積は、式:[D×(d2)]/2を用いて計算した。ここで、Dは腫瘍の長径を表し、dは短径を表す。全ての動物実験は、Beigene動物飼育使用手順(Beigene Animal Care and Use Procedure)に従って実施した。
【0136】
図13に示すように、5mg/kgの用量でch425の単独での処理は腫瘍増殖にほとんど又は全く影響を与えなかった。1mg/kgの用量の317-4B6は統計的に有意でない(P>0.05)腫瘍成長の遅延の傾向を示した。しかしながら、ch425及び317-4B6との併用治療は有意な相乗効果を示し、ビヒクル治療群と比較して腫瘍増殖を60%以上抑制した。
【0137】
これらの結果は、317-4B6とch425との併用療法が実施例11に記載の生体内データと一致した、生体内癌モデルにおけるマウスの腫瘍増殖を阻害するために、ヒト免疫細胞を活性化できることを示している。
【0138】
この出願は、2016年8月26日に出願された国際出願第PCT/CN2016/096924号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【配列表】