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▶ 尾崎 重之の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】リトラクター
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
A61B17/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021176703
(22)【出願日】2021-10-28
(62)【分割の表示】P 2021120837の分割
【原出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2022151542
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2021048684
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507320502
【氏名又は名称】尾崎 重之
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 重之
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0270307(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/02
17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材であって、
短手方向の中央部分が凹むように湾曲しており、
表面から裏面に貫通した穴であって、糸を通すための複数の第1穴と、前記複数の第1穴より直径が大きい、心筋保護液を注入するカニューレを挿入するための第2穴とを有し、
バルサルバ洞を含む大動脈内の領域に挿入され、
表面から前記複数の第1穴のうちの一つを通って裏面に貫通し、前記大動脈の内側から外側へ貫通した前記糸の一端側と、表面から前記複数の第1穴のうち前記一端側が通った穴とは異なる穴を通って裏面に貫通し、前記大動脈の内側から外側へ貫通した前記糸の他端側が引かれると、前記大動脈を径方向に拡張する
大動脈弁形成術に用いられるリトラクター。
【請求項2】
前記板状部材は、長手方向の一端に向かって、前記凹んでいる方向とは反対の方向に反っている部分を有する
請求項1記載のリトラクター。
【請求項3】
血液を吸い取るための通路が内部に形成され、
前記血液を前記通路内に取り込むための穴と、
前記通路と接続され、前記板状部材の側面から突出し、前記通路内の血液を吸引するチューブを接続するための接続部と
をさらに有する
請求項1または2に記載のリトラクター。
【請求項4】
胸壁の外から前記リトラクターを牽引するための糸を通すための第3穴を更に有し、
長手方向の一端部がフック形状となっている
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のリトラクター。
【請求項5】
把持部を更に有する
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のリトラクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リトラクターに関する。
【背景技術】
【0002】
血管を支持する器具として、例えば特許文献1に開示された血管支持具がある。この血管支持具は、一対の腕部の先端に形成された針部を血管に刺し、腕部を開閉することにより針部の間にある切開口を広げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-125976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大動脈弁形成術を行う場合、大動脈を径方向に広げる必要がある。特許文献1に開示された血管支持具は、血管において血管が伸びる方向に切開した部分を広げることができるものの、大動脈の断面を径方向に広げた状態で維持するのには適していない。
【0005】
本発明は、大動脈を径方向に広げた状態を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、環状で径方向に複数の切込みが上面に形成された環状部と、前記環状部を支持する支持部とを備え、前記環状部の内周より内側に大動脈が位置するように配置され、前記大動脈内に配置されたリトラクターに掛かり、前記大動脈の内壁側から外壁側に貫通した糸を前記切込みで固定するホルダーを提供する。
【0007】
本発明においては、前記複数の切込みは、周方向に予め定められた間隔で形成されている構成としてもよい。
【0008】
本発明においては、前記環状部は、前記支持部に対して着脱可能である構成としてもよい。
【0009】
本発明においては、前記環状部は、円弧形状である構成としてもよい。
【0010】
本発明は、板状で表面から裏面に貫通する複数の穴を有し、大動脈内に挿入され、表面から前記複数の穴のうちの一つを通って裏面に貫通し、前記大動脈の内側から外側へ貫通した糸の一端側と、表面から前記複数の穴のうち前記一端側が通った穴とは異なる穴を通って裏面に貫通し、前記大動脈の内側から外側へ貫通した前記糸の他端側が引かれると、
前記大動脈を径方向に拡張するリトラクターを提供する。
【0011】
本発明においては、前記リトラクターは、表面から裏面に貫通し、前記複数の穴より直径が大きい穴が形成されている構成としてもよい。
前記リトラクターは、胸壁の外から前記リトラクターを牽引するための糸を通すための穴を更に有してもよい。
前記リトラクターは、先端部がフック形状となっていてもよい。
前記リトラクターは、把持部を更に有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大動脈を径方向に広げた状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るホルダー1の斜視図。
図2】ホルダー1の上面図。
図3】ホルダー1の側面図。
図4】第1部品P1の上面図。
図5】第1部品P1の正面図。
図6】第1部品P1の側面図。
図7図4のA-A線断面図。
図8】第2部品P2の上面図。
図9】第2部品P2の正面図。
図10】第2部品P2の側面図。
図11図8のB-B線断面図。
図12】リトラクターR1の斜視図。
図13】リトラクターR1の正面図。
図14】リトラクターR1の上面図。
図15】リトラクターR1の側面図。
図16】切断された上行大動脈BVを上から見たときの模式図。
図17】切断された上行大動脈BVを内壁側から見たときの模式図。
図18】上行大動脈BVを上行大動脈BVの延伸方向に切断した断面の模式図。
図19】リトラクターR2の斜視図。
図20】リトラクターR2の正面図。
図21】リトラクターR2の上面図。
図22】リトラクターR2の側面図。
図23】リトラクターR3の側面図。
図24】リトラクターR4の下面図。
図25】リトラクターR5を示す図。
図26】リトラクターR6を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るホルダー1の斜視図、図2は、ホルダー1の上面図、図3は、ホルダー1の側面図である。ホルダー1は、大動脈弁形成術において大動脈を径方向に広げるための外科手術器具である。本実施形態に係るホルダー1は、第1部品P1と第2部品P2で構成されている。
【0015】
図4は、第1部品P1の上面図、図5は、第1部品P1の正面図、図6は、第1部品P1の側面図、図7は、図4のA-A線断面図である。本実施形態に係る第1部品P1の素材は、例えば、外科手術器具に好適な金属材料である。なお、第1部品P1の素材は、金属材料に限定されるものではなく、例えば合成樹脂であってもよい。
【0016】
第1部品P1は、上方から見て環状の環状部101、上方から見て半円形の基部102、基部102から上方に延びる軸部103で構成されている。環状部101は、上方から見て円弧の形状であり、上面側に溝104が形成されている。本実施形態においては、環状部101の内径は60mmであり、環状部101の外径は80mmとなっているが、内径および外形は、これらの寸法に限定されるものではなく、他の寸法であってもよい。また、環状部101においては、円弧形状の中心角は300°となっているが、この角度に限定されるものではなく、他の中心角であってもよい。環状部101の上下方向の厚さは、本実施形態では5mmとなっているが、5mm未満または5mmを超える厚さであってもよい。環状部101の径方向の幅は、本実施形態では10mmとなっているが、10mm未満または10mmを超える幅であってもよい。
【0017】
溝104は、環状部101の周方向に沿って環状部101の周方向の一端から他端に至り、断面は、台形の形状となっている。基部102は、環状部101の外周面側に形成されており、上面から見て半円の形状に形成されている。軸部103は、基部102の上面に対して予め定められた角度をなして上方に形成された円柱形状の軸である。
【0018】
図8は、第2部品P2の上面図、図9は、第2部品P2の正面図、図10は、第2部品P2の側面図、図11は、図4のB-B線断面図である。本実施形態に係る第2部品P2の素材は、弾性を有する合成樹脂である。なお、第2部品P2の素材は、合成樹脂に限定されるものではなく、例えばゴムであってもよい。また、第2部品P2の素材は、粘着性を有する素材であってもよい。
【0019】
第2部品P2は、上方から見て円弧の形状であり、断面が台形形状であって溝104に嵌まる下部201と、下部201の上に形成されて径方向に複数の切込み203が形成された上部202で構成されている。本実施形態においては、第2部品P2の内径は60mmであり、第2部品P2の外径は80mmとなっているが、内径および外形は、これらの寸法に限定されるものではなく、他の寸法であってもよい。また、第2部品P2においては、円弧形状の中心角は300°となっているが、この角度に限定されるものではなく、
他の中心角であってもよい。第2部品P2の上下方向の厚さは、本実施形態では8.6mmとなっているが、8.6mm未満または8.6mmを超える厚さであってもよい。第2部品P2の径方向の幅は、本実施形態では10mmとなっているが、10mm未満または10mmを超える幅であってもよい。上部202は、曲面の部分は、半径5mmの曲面であり、上面の平坦部分の径方向の幅は4mmとなっている。第2部品P2のこれらの寸法は、一例であり、他の寸法であってもよい。
【0020】
複数の切込み203は、上部202の表面から予め定められた深さであり、外科手術に用いる糸を挟んで固定する。切込み203は、周方向の幅が0.2mmとなっているが、
0.2mmに限定されるものではなく、他の寸法であってもよい。また、本実施形態では第2部品P2の周方向の一端に最も近い切込み203から中心に引いた仮想線と他端に最も近い切込み203から中心に引いた仮想線がなす角度は、100°であり、他の切込み203は、中心に向かって仮想線を引いた場合、隣り合う仮想線とのなす角度が26°となっている。複数の切込み203は、周方向に等間隔で形成されるのが好ましいが、周方向に等間隔で形成されていなくてもよい。また、複数の切込み203の数は、図に示した11個に限定されるものではなく、11個未満または12個以上であってもよい。
【0021】
下部201を溝104に嵌めることにより、第2部品P2は、第1部品P1に保持される。第1部品P1および第2部品P2で構成されているホルダー1において、環状部101および第2部品P2は、本発明に係る環状部の一例であり、基部102および軸部103は、本発明に係る支持部の一例である。
【0022】
図12は、本発明の一実施形態に係るリトラクターR1の斜視図、図13は、リトラクターR1の正面図、図14は、リトラクターR1の上面図、図15は、リトラクターR1の側面図である。リトラクターR1の素材は、例えば、外科手術器具に好適な金属材料である。なお、リトラクターR1の素材は、金属材料に限定されるものではなく、例えば合成樹脂であってもよい。
【0023】
リトラクターR1は、板状であり、図13に示すように短手方向の中央部分が凹むように湾曲している。リトラクターR1は、表面から裏面に貫通した穴301が行列で複数形成されている。なお、図示したリトラクターR1においては、穴301の数は、6個となっているが、6個未満または7個以上であってもよい。また、図示したリトラクターR1においては、穴301は3行2列で形成されているが、2列以上であれば他の行列で配置されていてもよい。
【0024】
次に、ホルダー1およびリトラクターR1の使用方法について、図16図18を用いて説明する。図16は、切断された上行大動脈BVを上から見たときの模式図である。図17は、切断された上行大動脈BVを内壁側から見たときの模式図である。図18は、上行大動脈BVを上行大動脈BVの延伸方向に切断した断面の模式図である。
【0025】
術者は、図16に示すように、切断された上行大動脈BVがホルダー1の第2部品P2の内周より内側に位置するようにホルダー1を配置し、軸部103をフレキシブルアームで固定する。軸部103は、術者から見て手前側ではなく奥側に位置するのが好ましい。
次に術者は、図16および図17に示すように、左右に並ぶ二つの穴301にリトラクターR1の表面側から手術用の糸THを通す。術者は、図18に示すように、背面側に出た糸THを手術用の針で上行大動脈BVの内壁側から外壁側に貫通させ、上行大動脈BVの外壁側に貫通した糸THを引く。リトラクターR1の表面には糸THが掛かっているため、術者が糸THを引くとリトラクターR1が上行大動脈BVの内壁に接する。図18に示す状態でさらに糸THをホルダー1の側に引くと、糸THにより引かれているリトラクターR1が上行大動脈BVを径方向に広げる。術者は、上行大動脈BVが径方向に広がった状態になると、引いていた糸THを第2部品P2の切込み203に入れ、糸THを固定する。術者は、複数のリトラクターR1で前述したように上行大動脈BVを径方向に広げる。
【0026】
本実施形態によれば、術者は、助手の手を要せずに大動脈を径方向に広げることができる。また、本実施形態によれば、一つのフレキシブルアームでホルダー1を固定するため、複数のフレキシブルアームの先端に装着したアタッチメントで大動脈を径方向に広げる場合と比較すると、術野を広くすることができる。
【0027】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態および以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。
【0028】
上述した実施形態においては、リトラクターR1には同じ形の穴301が行列で形成されているが、リトラクターR1に形成する穴の構成は、実施形態の構成に限定されるものではない。図19は、本発明の変形例に係るリトラクターR2の斜視図。図20は、リトラクターR2の正面図、図21は、リトラクターR2の上面図、図22は、リトラクターR2の側面図である。リトラクターR2の素材は、例えば、外科手術器具に好適な金属材料である。なお、リトラクターR2の素材は、金属材料に限定されるものではなく、例えば合成樹脂であってもよい。リトラクターR2は、2行2列で穴301が形成され、1行目の穴301と2行目の穴301との間に穴302が形成されている。なお、穴302は、2行ではなく1行で形成される構成であってもよい。
【0029】
リトラクターR2を大動脈内に挿入する場合、大動脈の冠動脈口の位置に穴302が位置するように挿入する。穴302は、表面から裏面に貫通しているため、心筋保護液を注入するカニューレをリトラクターR2の表面から穴302に通して冠状動脈口に挿入し、
リトラクターR2を外すことなく心筋保護液を冠状動脈に注入することができる。
【0030】
リトラクターR1およびリトラクターR2は、素材が合成樹脂である場合、透明な素材であってもよい。
【0031】
上述した実施形態においては、ホルダー1は、第1部品P1および第2部品P2で構成されているが、第1部品P1の素材を合成樹脂とし、環状部101の上に上部202を一体成型した構成としてもよい。
【0032】
上述した実施形態においては、環状部101および第2部品P2は上方から見て円弧の形状であるが、円環の形状であってもよい。また、環状部101および第2部品P2は上方から見て多角形の環状や楕円形の環状であってもよい。
【0033】
図23は、本発明の変形例に係るリトラクターR3の側面図である。リトラクターR3は、リトラクターR1の一端が上面側に反った形状となっている。リトラクターR3によれば、リトラクターR3の曲がった部分の裏面側がバルサルバ洞の内壁の曲面部分に接し、リトラクターR3の裏面側をバルサルバ洞の内壁に密着させて大動脈を広げることができる。
【0034】
リトラクターR2については、冠動脈から出た血液を吸い取る通路を内部に有する構成としてもよい。図24は、変形例に係るリトラクターR4の下面図である。リトラクターR2は、穴301と穴302に加えて、穴303、通路304及び接続部305を有する。穴303は、下面側に設けられた穴である。図示したリトラクターR4においては、穴303は、リトラクターR4を貫通していないが、穴303はリトラクターR4を貫通していてもよい。通路304は、リトラクターR4の内部に設けられた通路であり、穴303に通じている。接続部305は、中空でリトラクターR4の側面から突出し、中空部分は外部に開口している。また、接続部305は、断面が円形であり、中空部分が通路304に通じている。リトラクターR4は、大動脈内に位置したときに穴303が穴302より下方であって冠動脈口より下方に位置するように配置される。また、接続部305には、吸引を行うチューブが接続される。大動脈弁形成術の手術中においては、冠動脈内の血液がバルサルバ洞内に流れ出ることがある。リトラクターR4を使用した場合、バルサルバ洞内に流れ出た血液を穴303から通路304内に吸い込み、通路304と接続部305により大動脈の外へ吸い出すことができる。
【0035】
図25は、本発明の他の変形例に係るリトラクターR5の図である。(a)は平面図、
(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)はB-B断面図、(e)はA-A断面図である。リトラクターR5は、S1およびS2を有するプレート状であって、平面視において若干反っていて、右側面視において中央が若干膨らんだ形状である。先端部509は、大動脈の内壁その他の目的の部位に引っ掛けてリトラクターR5を固定するためのフック(折り返し)形状となっている。リトラクターR5は、穴501~504を有する。
【0036】
具体的には、後端部に形成された穴501に糸を通し、直接胸壁に出して胸壁の外から所定の方法で牽引(吊り上げる)をして大動脈弁を径方向に拡張させつつ大動脈弁の視野を確保するためのものである。穴502および穴503は、プレジェット付きの糸を通すものである。当該糸を上行大動脈BVの内壁から外壁へ貫通させることにより、大動脈に対してリトラクターR5が固定される。穴504は、リトラクターR5が配置された状態において、右冠動脈から直接心筋保護液を注入するためのものである。これにより、心筋保護液を注入するためにリトラクターR5を外すといった必要がない。
【0037】
術者は、リトラクターR5を先端部509のほうから体内に挿入し、先端部509を所望の場所に引っかけて大動脈の内壁に固定し、穴501を通した糸を胸壁の外から牽引することにより、大動脈弁を径方向に拡張させつつ大動脈弁の視野を確保する。この際、側面視における中央部若干の膨らみがバルサルバ洞の形状にフィットするようになっている。
なお、リトラクターR5は同時に2つ以上使用することが好ましい。
【0038】
上述したリトラクターR1~R5は、胸骨を切り開く正中切開での手術の時のようにホルダーを体内に挿入することができる場合、そのホルダーに糸を通して固定するという使用方法を採用することができる。これに対し低侵襲心臓手術(例えば肋骨の間を10cm程度の皮切りするもの)においては、ホルダー1を体内に挿入することが出来ない場合が多い。このような場合は、リトラクターR1~R5を、リトラクターにかかった糸を胸壁の外から牽引してもよい。あるいは、リトラクターR1~R5を、周囲を取り囲む心膜に固定してもよい。要するに、リトラクターR1~R5は単独で使用してもよいし、ホルダー1やその他の固定器具とセットで使用してもよいし、その固定方法は問わない。
【0039】
上述した各リトラクターR1~R5において、術者が持つための把持部(持ち手)を設けてもよい。図26は、本発明の他の変形例に係るリトラクターR6を示す。同図(a)は全体の斜視図、同図(b)は先端部の拡大図、同図(c)はB-B断面図、同図(d)はA-A断面図である。リトラクターR6は、図25に示したリトラクターR5から穴504が省略された本体部601と、後端が術者によって把持される把持部602Bと、本体部601と把持部602Bと接続する軸部602Aとを備える。すなわち、リトラクターR6によれば、鉗子等の器具が使う必要がない。また、プレジェットによる固定力の不足を術者が補うことができる。なお、R6において、プレジェットを通すための穴502および503を省略してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…ホルダー、101…環状部、102…基部、103…軸部、104…溝、201…下部、202…上部、203…切込み、301…穴、302…穴、303…穴、304…通路、305…接続部、P1…第1部品、P2…第2部品、R1、R2、R3、R4、R5、R6…リトラクター、TH…糸、BV…上行大動脈、501、502、503、504・・・穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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