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特許7158554学習用データセット生成システム、学習済みモデルの作成方法、地震応答予測装置、学習用データセット生成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】学習用データセット生成システム、学習済みモデルの作成方法、地震応答予測装置、学習用データセット生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20221014BHJP
   G06F 30/27 20200101ALI20221014BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20221014BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20221014BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20221014BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/27
G06F30/20
E04H9/02 ESW
G06F119:14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021177352
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2022-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 崇
(72)【発明者】
【氏名】市川 康
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 友貴
(72)【発明者】
【氏名】竹内 徹
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-33822(JP,A)
【文献】特開2020-102157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主架構モデルの各層の質量情報と前記各層の層剛性情報と前記各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ前記主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する学習用データセット生成システムであって、
主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を入力する入力部と、
前記入力部で入力される前記質量情報及び前記層剛性情報に基づき、主架構モデルを構築する構築部と、
前記構築部で構築される前記主架構モデルの前記各層に配置されるダンパーモデルを選択する選択部と、
前記構築部で構築される前記主架構モデルと前記選択部で選択される前記ダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算する計算部と、
前記入力部で入力される前記質量情報及び前記層剛性情報と前記選択部で選択される前記ダンパーモデルの前記剛性情報とが学習データとして含まれ且つ前記計算部で計算される前記地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する生成部と
を備える、学習用データセット生成システム。
【請求項2】
前記入力部は、前記主架構モデルの全層の一部の層に対応する層剛性情報を入力し、
前記構築部は、前記一部の層に対応する前記層剛性情報を用いて線形補間することによって前記一部以外の層に対応する前記層剛性情報を求め、求めた前記一部以外の層に対応する前記層剛性情報と前記入力部で入力される前記質量情報及び前記層剛性情報とに基づき、前記主架構モデルを構築する、
請求項1に記載の学習用データセット生成システム。
【請求項3】
前記選択部は、前記主架構モデルの全層の一部の層に対応するダンパーモデルを選択し、
前記計算部は、前記一部の層に対応する前記ダンパーモデルの前記剛性情報を用いて線形補間を行うことによって前記一部以外の層に対応するダンパーモデルの剛性情報を求め、求めた前記剛性情報と前記選択部で選択される前記ダンパーモデルの前記剛性情報と前記構築部で構築される前記主架構モデルの前記各層の前記層剛性情報とを用いる解析により、前記地震応答情報を計算する、
請求項1又は請求項2に記載の学習用データセット生成システム。
【請求項4】
主架構の層数を判定する主架構判定部
を更に備え、
前記一部の層の数は、前記主架構判定部の判定結果に応じて異なる、
請求項2又は請求項3に記載の学習用データセット生成システム。
【請求項5】
主架構の層数を判定する主架構判定部
を更に備え、
前記構築部が構築する前記主架構モデルの層数及び個数と、前記選択部が選択する前記ダンパーモデルの前記剛性情報とは、前記主架構判定部の判定結果に応じて異なる、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の学習用データセット生成システム。
【請求項6】
前記教師データは、1~3次固有周期と、最大層間変形角と、平均層間変形角と、層間変形角の標準偏差と、層間変形角の集中率と、最大応答加速度と、ベースシアと、転倒モーメントと、ダンパー最大塑性率と、ダンパー容量との少なくとも一つを含む、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の学習用データセット生成システム。
【請求項7】
前記ダンパーモデルは、オイルダンパーのモデル、滑り支承装置のモデル、及び座屈拘束ブレースのモデルのいずれかを含む、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の学習用データセット生成システム。
【請求項8】
前記計算部は、前記主架構モデルと前記ダンパーモデルとを用いて応答スペクトル法によって解析することによって、前記地震応答情報を計算する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の学習用データセット生成システム。
【請求項9】
前記選択部が選択する前記ダンパーモデルが滑り支承装置であるか否かを判別するモデル判別部、
を更に備え、
前記計算部は、前記モデル判別部が滑り支承装置であると判別した場合には時刻歴応答解析によって前記地震応答情報を計算し、前記モデル判別部が滑り支承装置ではないと判別した場合には応答スペクトル法によって前記地震応答情報を計算する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の学習用データセット生成システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の学習用データセット生成システムで生成される前記学習用データセットを用いて機械学習を行うことによって学習済みモデルを作成する学習済みモデルの作成方法。
【請求項11】
主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得する取得部と、
前記各層に配置される複数のダンパーモデルを決定する決定部と、
請求項10に記載の学習済みモデルの作成方法で作成される学習済みモデルを用い、前記取得部が取得する前記質量情報及び前記層剛性情報と前記決定部が決定する複数の前記ダンパーモデルとに対応する地震応答情報を出力する処理部と、
前記地震応答情報に関する第1選別条件を設定する設定部と、
前記処理部が出力する前記地震応答情報から前記設定部が設定した前記第1選別条件に合致する地震応答情報を抽出する抽出部と
を備える、地震応答予測装置。
【請求項12】
前記取得部は、前記主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、前記ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とを取得し、
前記地震応答予測装置は、
前記取得部が取得した前記高さを特定する情報と前記ダンパーの前記取り付き角度を特定する情報とに基づき、前記ダンパーのコストを算出する算出部
を備え、
前記設定部は、前記コストに関する第2選別条件を設定し、
前記抽出部は、前記処理部が出力する前記地震応答情報と前記算出部が算出した前記ダンパーの前記コストから、前記設定部が設定した前記第1選別条件及び前記第2選別条件に合致する地震応答情報と前記ダンパーのコストとを抽出する、
請求項11に記載の地震応答予測装置。
【請求項13】
前記抽出部が抽出する前記地震応答情報と前記コストとを、前記設定部に設定された前記第1選別条件と前記第2選別条件とともに、表示部に表示させる表示制御部
を更に備える、請求項12に記載の地震応答予測装置。
【請求項14】
主架構モデルの各層の質量情報と前記各層の層剛性情報と前記各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ前記主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する学習用データセット生成システムが実行する学習用データセット生成方法であって、
主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得するステップと、
取得する前記ステップで取得した前記質量情報及び前記層剛性情報に基づき、前記主架構モデルを構築するステップと、
構築する前記ステップで構築される前記主架構モデルの前記各層に配置されるダンパーモデルを選択するステップと、
構築する前記ステップで構築される前記主架構モデルと選択する前記ステップで選択される前記ダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算するステップと、
入力する前記ステップで入力される前記質量情報及び前記層剛性情報と選択する前記ステップで選択される前記ダンパーモデルの前記剛性情報とが前記学習データとして含まれ且つ計算する前記ステップで計算される前記地震応答情報が前記教師データとして含まれる学習用データセットを生成するステップと
を有する、学習用データセット生成方法。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の学習用データセット生成システムとして機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習用データセット生成システム、学習済みモデルの作成方法、地震応答予測装置、学習用データセット生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震発生による振動を熱エネルギーに変える制震装置や、地震発生による振動を吸収・分散させる免震装置など、建物自体を振動させない技術や装置の開発が進んでいる。地震によって建物などが振動する現象は、地震応答と呼ばれる。
地震などの横揺れによって住宅などの建築物が変形するとき、各階の床と真上または真下の床との、水平方向における変形の角度を層間変形角という。建築基準法では、高さ13m超または軒の高さ9m超の木造特殊建築物をはじめとする特定建築物に関しては、「層間変形角が1/200以内であること」、木造在来工法など地震力による構造耐力上、主要な部分の変形によって建築物の部分に著しい損傷が生ずるおそれのない場合には、「層間変形角が1/120以内であること」と定めている。
層間変形角などの様々な評価軸に基づいて、建築物の構造設計が行われる。具体的には、経験則で数パターンのダンパー配置を検討し、数パターンのダンパー配置の中から適したパターンを採用する。
【0003】
建築物の構造設計に関して、制振部材の数と配置位置を精度良く決定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、設計シミュレーション装置は、建造物の特性値を算定する特性値算定手段と、所定の地震波を与えた時に建造物の設計目標を満足する必要減衰量を算定する必要減衰量算定手段と、必要減衰量に基づいて建造物に必要な制振部材数を算定する制振部材数算定手段と、制振装置数算定手段により算定された数の制振部材を建造物のどの位置に配置するかを決定する制振部材配置位置決定手段と、制振部材配置位置決定手段により決定した配置位置により建造物の偏心率が適正な値になるか否かを判定する偏心率判定手段とを備えて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-59221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
経験則で検討した数パターンのダンパー配置の中から適したパターンを採用する場合には、より良いパターンを逃している可能性がある。また、経験則で検討した数パターンのダンパー配置の中から適したパターンを採用する場合には、一通りでもダンパー配置を検討するのに時間を要するため、数パターンのダンパー配置を検討し、地震応答の結果を比較することは時間がかかりすぎる。
仮に、機械学習を使用してダンパー配置のパターンを導出する場合には、学習用データセットを使用して学習済モデルを作成する。
【0006】
本発明の目的は、ダンパー配置のパターンを導出するための機械学習において、学習済モデルを作成するための学習用データセットを作成する学習用データセット生成システム、学習済みモデルの作成方法、地震応答予測装置、学習用データセット生成方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係る学習用データセット生成システムは、主架構モデルの各層の質量情報と前記各層の層剛性情報と前記各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ前記主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する学習用データセット生成システムであって、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得する入力部と、前記入力部で取得される前記質量情報及び前記層剛性情報に基づき、主架構モデルを構築する構築部と、前記構築部で構築される前記主架構モデルの前記各層に配置されるダンパーモデルを選択する選択部と、前記構築部で構築される前記主架構モデルと前記選択部で選択される前記ダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算する計算部と、前記入力部で入力される前記質量情報及び前記層剛性情報と前記選択部で選択される前記ダンパーモデルの前記剛性情報とが学習データとして含まれ且つ前記計算部で計算される前記地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを、生成する生成部とを備える、学習用データセット生成システムである。
【0008】
この発明によれば、学習用データセット生成システムは、主架構モデルの各層の質量情報と各層の層剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する。学習用データセット生成システムは、質量情報及び層剛性情報を取得し、取得した質量情報及び層剛性情報に基づき、主架構モデルを構築する。学習用データセット生成システムは、構築した主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルを選択する。学習用データセット生成システムは、構築した主架構モデルと選択したダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算する。学習用データセット生成システムは、入力した質量情報及び層剛性情報と、選択したダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ計算した地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する。
このように構成することによって、学習用データセット生成システムは、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報に基づき、主架構モデルを構築し、構築した主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルを選択でき、構築した主架構モデルと選択したダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算できるため、質量情報及び層剛性情報と、選択したダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ計算した地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成できる。
【0009】
(2)本発明の一態様に係る学習用データセット生成システムは、上記(1)に係る学習用データセット生成システムであって、前記入力部は、前記主架構モデルの全層の一部の層に対応する層剛性情報を入力し、前記構築部は、前記一部の層に対応する前記層剛性情報を用いて線形補間することによって前記一部以外の層に対応する前記層剛性情報を求め、求めた前記一部以外の層に対応する前記層剛性情報と前記入力部で取得される前記質量情報及び前記層剛性情報とに基づき、前記主架構モデルを構築する。
【0010】
この場合、学習用データセット生成システムが取得する層剛性情報は、全層の一部の層に対応する層剛性情報である。学習用データセット生成システムは、一部の層に対応する層剛性情報を用いて線形補間することによって一部以外の層に対応する層剛性情報を求め、求めた層剛性情報と取得した質量情報及び層剛性情報とに基づき、主架構モデルを構築する。
このように構成することによって、一部の層に対応する層剛性情報を用いて線形補間することによって一部以外の層に対応する層剛性情報を求めることができるため、全層の一部の層に対応する層剛性情報を取得することによって、求めた層剛性情報と取得した質量情報及び層剛性情報とに基づき、主架構モデルを構築できる。
【0011】
(3)本発明の一態様に係る学習用データセット生成システムは、上記(1)又は上記(2)に記載の学習用データセット生成システムであって、前記選択部は、前記主架構モデルの全層の一部の層に対応するダンパーモデルを選択し、前記計算部は、前記一部の層に対応する前記ダンパーモデルの前記剛性情報を用いて線形補間を行うことによって前記一部以外の層に対応するダンパーモデルの剛性情報を求め、求めた前記剛性情報と前記選択部で選択される前記ダンパーモデルの前記剛性情報と前記構築部で構築される前記主架構モデルの前記各層の前記層剛性情報とを用いる解析により、前記地震応答情報を計算する。
【0012】
この場合、学習用データセット生成システムが選択するダンパーモデルは、主架構モデルの全層の一部の層に対応するダンパーモデルである。学習用データセット生成システムは、一部の層に対応するダンパーモデルの剛性情報を用いて線形補間を行うことによって一部以外の層に対応するダンパーモデルの剛性情報を求める。学習用データセット生成システムは、求めた剛性情報と選択したダンパーモデルの剛性情報と構築した主架構モデルの各層の層剛性情報とを用いて解析することによって地震応答情報を計算する。
このように構成することによって、学習用データセット生成システムは、一部の層に対応するダンパーモデルの剛性情報を用いて線形補間することによって一部以外の層に対応するダンパーモデルの剛性情報を求めることができる。このため、学習用データセット生成システムは、求めた剛性情報と選択したダンパーモデルの剛性情報と構築した主架構モデルの各層の層剛性情報とを用いて解析することによって地震応答情報を計算できる。
【0013】
(4)本発明の一態様に係る学習用データセット生成システムは、上記(2)又は上記(3)に記載の学習用データセット生成システムであって、主架構の層数を判定する主架構判定部を更に備え、前記一部の層の数は、前記主架構判定部の判定結果に応じて異なる。
【0014】
この場合、学習用データセット生成システムは、主架構が低層の主架構と高層の主架構とのいずれであるかなどの主架構の層数を判定する。一部の層の数は、主架構判定部の判定結果に応じて異なる。
このように構成することによって、学習用データセット生成システムは、主架構が低層の主架構と高層の主架構とのいずれであるかなどの主架構の層数を判定できるため、判定結果に基づいて、各層の一部の層に対応する層剛性情報を取得し、各層の一部の層に対応するダンパーモデルを選択できる。
【0015】
(5)本発明の一態様に係る学習用データセット生成システムは、上記(1)から上記(4)のいずれか一項に記載の学習用データセット生成システムであって、主架構の層数を判定する主架構判定部を更に備え、前記構築部が構築する前記主架構モデルの層数及び個数と、前記選択部が選択する前記ダンパーモデルの前記剛性情報とは、前記主架構判定部の判定結果に応じて異なる。
【0016】
この場合、学習用データセット生成システムは、主架構が低層の主架構と高層の主架構とのいずれであるかなどの主架構の層数を判定する。学習用データセット生成システムは、構築する主架構モデルの層数及び個数と、選択するダンパーモデルの剛性情報とを、判定結果に応じて異ならせる。
このように構成することによって、学習用データセット生成システムは、主架構が低層の主架構と高層の主架構とのいずれであるかなどの主架構の層数を判定できるため、判定結果に基づいて、主架構モデルの層数及び個数を構築し、ダンパーモデルの剛性情報を選択できる。
【0017】
(6)本発明の一態様に係る学習用データセット生成システムは、上記(1)から上記(5)のいずれか一項に記載の学習用データセット生成システムであって、前記教師データは、1~3次固有周期と、最大層間変形角と、平均層間変形角と、層間変形角の標準偏差と、層間変形角の集中率と、最大応答加速度と、ベースシアと、転倒モーメントと、ダンパー最大塑性率と、ダンパー容量との少なくとも一つを含む。
【0018】
この場合、学習用データセット生成システムは、1~3次固有周期と、最大層間変形角と、平均層間変形角と、層間変形角の標準偏差と、層間変形角の集中率と、最大応答加速度と、ベースシアと、転倒モーメントと、ダンパー最大塑性率と、ダンパー容量との少なくとも一つを含む教師データを生成する。
このように構成することによって、学習用データセット生成システムは、1~3次固有周期と、最大層間変形角と、平均層間変形角と、層間変形角の標準偏差と、層間変形角の集中率と、最大応答加速度と、ベースシアと、転倒モーメントと、ダンパー最大塑性率と、ダンパー容量との少なくとも一つを計算できるため、1~3次固有周期と、最大層間変形角と、平均層間変形角と、層間変形角の標準偏差と、層間変形角の集中率と、最大応答加速度と、ベースシアと、転倒モーメントと、ダンパー最大塑性率と、ダンパー容量との少なくとも一つの地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データを生成できる。
【0019】
(7)本発明の一態様に係る学習用データセット生成システムは、上記(1)から上記(6)のいずれか一項に記載の学習用データセット生成システムであって、前記ダンパーモデルは、オイルダンパーのモデル、滑り支承装置のモデル、及び座屈拘束ブレースのモデルのいずれかを含む。
【0020】
この場合、学習用データセット生成システムは、オイルダンパーのモデル、滑り支承装置のモデル、及び座屈拘束ブレースのモデルのいずれかを含むダンパーモデルを選択する。
このように構成することによって、学習用データセット生成システムは、オイルダンパーのモデル、滑り支承装置のモデル、及び座屈拘束ブレースのモデルのいずれかを含むダンパーモデルを選択できるため、構築した主架構モデルと選択したダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算できる。
【0021】
(8)本発明の一態様に係る学習用データセット生成システムは、上記(1)から上記(7)のいずれか一項に記載の学習用データセット生成システムであって、前記計算部は、前記主架構モデルと前記ダンパーモデルとを用いて応答スペクトル法で解析することによって、前記地震応答情報を計算する。
【0022】
この場合、学習用データセット生成システムは、主架構モデルとダンパーモデルとを用いて応答スペクトル法で解析することによって、地震応答情報を計算する。このように構成することによって、学習用データセット生成システムは、主架構モデルとダンパーモデルとを用いて応答スペクトル法で解析することができるため、地震応答情報を計算できる。
【0023】
(9)本発明の一態様に係る学習用データセット生成システムは、上記(1)から上記(7)のいずれか一項に記載の学習用データセット生成システムであって、前記選択部が選択する前記ダンパーモデルが滑り支承装置であるか否かを判別するモデル判別部を更に備え、前記計算部は、前記モデル判別部が滑り支承装置であると判別した場合には時刻歴応答解析によって前記地震応答情報を計算し、前記モデル判別部が滑り支承装置ではないと判別した場合には応答スペクトル法によって前記地震応答情報を計算する。
【0024】
この場合、学習用データセット生成システムは、選択したダンパーモデルが滑り支承装置であるか否かを判別する。学習用データセット生成システムは、滑り支承装置であると判別した場合には時刻歴応答解析により地震応答情報を計算し、滑り支承装置ではないと判別した場合には応答スペクトル法によって地震応答情報を計算する。
このように構成することによって、学習用データセット生成システムは、選択したダンパーモデルが滑り支承装置であるか否かを判別できる。このため、学習用データセット生成システムは、滑り支承装置であると判別した場合には時刻歴応答解析によって地震応答情報を計算し、滑り支承装置ではないと判別した場合には応答スペクトル法によって地震応答情報を計算できる。
【0025】
(10)本発明の一態様に係る学習済みモデルの作成方法は、上記(1)から上記(9)のいずれかに記載の学習用データセット生成システムで生成される学習用データセットを用いて機械学習を行うことによって学習済みモデルを作成する。
【0026】
この発明によれば、学習済みモデルの作成方法は、上記学習用データセット生成システムで生成される学習用データセットを用いて機械学習を行うことによって学習済みモデルを作成する。このように構成することによって、上記学習用データセット生成システムで生成される学習用データセットを用いて機械学習を行うことができるため、学習済みモデルを作成できる。
【0027】
(11)本発明の一態様に係る地震応答予測装置は、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得する取得部と、前記各層に配置される複数のダンパーモデルを決定する決定部と、上記(10)に記載の学習済みモデルの作成方法で作成される学習済みモデルを用い、前記取得部が取得する前記質量情報及び前記層剛性情報と前記決定部が決定する複数の前記ダンパーモデルとに対応する地震応答情報を出力する処理部と、前記地震応答情報に関する第1選別条件を設定する設定部と、前記処理部が出力する前記地震応答情報から前記設定部が設定した前記第1選別条件に合致する地震応答情報を抽出する抽出部とを備える。
【0028】
この場合、地震応答予測装置は、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得し、各層に配置される複数のダンパーモデルを決定する。地震応答予測装置は、上記学習済みモデルの作成方法で作成される学習済みモデルを用い、取得した質量情報及び層剛性情報と決定した複数のダンパーモデルの各々に対応する地震応答情報を出力する。地震応答予測装置は、地震応答情報に関する第1選別条件を設定し、出力した複数の地震応答情報の中から設定した第1選別条件に合致する地震応答情報を抽出する。
このように構成することによって、地震応答予測装置は、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得し、各層に配置される複数のダンパーモデルを決定できるため、上記学習済みモデルの作成方法で作成される学習済みモデルを用い、取得した質量情報及び層剛性情報と決定した複数のダンパーモデルの各々に対応する地震応答情報を出力できる。さらに地震応答予測装置は、地震応答情報に関する第1選別条件を設定できるため、出力した複数の地震応答情報の中から設定した第1選別条件に合致する地震応答情報を抽出できる。
【0029】
(12)本発明の一態様に係る地震応答予測装置は、上記(11)記載の地震応答予測装置であって、前記取得部は、前記主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、前記ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とを取得し、前記地震応答予測装置は、前記取得部が取得した主架構モデルの各層の前記高さを特定する情報と前記ダンパーの前記取り付き角度を特定する情報とに基づき、前記ダンパーのコストを算出する算出部を備え、前記設定部は、前記コストに関する第2選別条件を設定し、前記抽出部は、前記処理部が出力する前記地震応答情報と前記算出部が算出した前記ダンパーの前記コストの中から、前記設定部が設定した前記第1選別条件と前記第2選別条件とに合致する地震応答情報と前記ダンパーのコストとを抽出する。
【0030】
この場合、地震応答予測装置は、主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とを取得する。地震応答予測装置は、取得した高さを特定する情報とダンパーの取り付き角度を特定する情報とに基づき、ダンパーのコストを算出する。地震応答予測装置は、コストに関する第2選別条件を設定し、出力する地震応答情報と算出したダンパーのコストの中から、設定した第1選別条件及び第2選別条件に合致する地震応答情報とコストとを抽出する。
このように構成することによって、地震応答予測装置は、主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とに基づき、ダンパーのコストを出力できるため、主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とを取得し、取得した主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とに基づき、ダンパーのコストを算出できる。さらに、地震応答予測装置は、コストに関する第2選別条件を設定できるため、出力した地震応答情報及び算出したダンパーのコストの中から、設定した第1選別条件及び第2選別条件に合致する地震応答情報及びコストを抽出できる。
【0031】
(13)本発明の一態様に係る地震応答予測装置は、上記(12)記載の地震応答予測装置であって、前記抽出部が抽出する前記地震応答情報と前記コストとを、前記設定部に設定された前記第1選別条件と第2選別条件とともに、表示部に表示させる表示制御部を更に備える。
【0032】
この場合、地震応答予測装置は、抽出する地震応答情報とコストとを、設定した第1選別条件と第2選別条件とともに、表示部に表示させる。このように構成することによって、地震応答予測装置は、地震応答情報とコストを、第1選別条件と第2選別条件とともに、表示部に表示させることができるため、地震応答情報とコストとを、ユーザーに知らせることができる。
【0033】
(14)本発明の一態様に係る学習用データセット生成方法は、主架構モデルの各層の質量情報と前記各層の層剛性情報と前記各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ前記主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する学習用データセット生成システムが実行する学習用データセット生成方法であって、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得するステップと、取得する前記ステップで取得した前記質量情報及び前記層剛性情報に基づき、前記主架構モデルを構築するステップと、構築する前記ステップで構築される前記主架構モデルの前記各層に配置されるダンパーモデルを選択するステップと、構築する前記ステップで構築される前記主架構モデルと選択する前記ステップで選択される前記ダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算するステップと、入力する前記ステップで入力される前記質量情報及び前記層剛性情報と選択する前記ステップで選択される前記ダンパーモデルの前記剛性情報とが前記学習データとして含まれ且つ計算する前記ステップで計算される前記地震応答情報が前記教師データとして含まれる学習用データセットを生成するステップとを有する、学習用データセット生成方法である。
【0034】
この発明によれば、学習用データセット生成方法は、主架構モデルの各層の質量情報と各層の層剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する学習用データセット生成システムが実行する。
学習用データセット生成方法は、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得するステップを有する。学習用データセット生成方法は、取得した主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報に基づき、主架構モデルを構築するステップと、構築した主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルを選択するステップと、構築した主架構モデルと選択したダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算するステップとを有する。学習用データセット生成方法は、入力した質量情報及び層剛性情報と、選択したダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ計算した地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成するステップとを有する。
このように構成することによって、学習用データセット生成方法は、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報に基づき、主架構モデルを構築でき、構築した主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルを選択でき、構築した主架構モデルと選択したダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算できるため、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と、選択したダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ計算した地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成できる。
【0035】
(15)本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、上記(1)から上記(9)のいずれかに記載の学習用データセット生成システムとして機能させるプログラムである。
【0036】
プログラムは、コンピュータを、上記(1)から上記(9)のいずれかに記載の学習用データセット生成システムとして機能させる。このように構成することによって、コンピュータを、学習用データセット生成システムとして機能させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の実施形態によれば、ダンパー配置のパターンを導出するための機械学習において、学習済モデルを作成するための学習用データセットを作成する学習用データセット生成システム、学習済みモデルの作成方法、地震応答予測装置、学習用データセット生成方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態に係る学習モデル作成装置と地震応答予測装置との一例を説明するための図である。
図2】学習データとテストデータとの一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る地震応答予測装置の動作の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る学習用データセット生成システムの動作の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る学習用データセット生成システムの一例を示す図である。
図6】層数と基準階床面積との関係の一例を示す図である。
図7】層数と床面積あたりの重量との関係の一例を示す図である。
図8】高さ比と層剛性/支持総重量比との関係の例1を示す図である。
図9】高さ比と層剛性/支持総重量比との関係の例2を示す図である。
図10】本実施形態に係る学習モデル作成装置の一例を示す図である。
図11】本実施形態に係る地震応答予測装置の一例を示す図である。
図12】本実施形態に係る学習用データセット生成システムの動作の例1を示すフローチャートである。
図13】本実施形態に係る学習用データセット生成システムの動作の例2を示すフローチャートである。
図14】本実施形態に係る学習用データセット生成システムの動作の例3を示すフローチャートである。
図15】本実施形態に係る学習モデル作成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図16】本実施形態に係る地震応答予測装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図17】実施形態の変形例1に係る学習用データセット生成システムの一例を示す図である。
図18】実施形態の変形例1に係る学習用データセット生成システムの動作の例1を示すフローチャートである。
図19】実施形態の変形例1に係る学習用データセット生成システムの動作の例2を示すフローチャートである。
図20】実施形態の変形例2に係る学習用データセット生成システムを示す図である。
図21】実施形態の変形例3に係る地震応答予測装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、本実施形態の学習用データセット生成システム、学習済みモデルの作成方法、地震応答予測装置、学習用データセット生成方法及びプログラムを、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0040】
(実施形態)
本発明の実施形態に係る学習モデル作成装置と地震応答予測装置との一例について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る学習モデル作成装置と地震応答予測装置との一例を説明するための図である。
学習モデル作成装置は、主架構モデルの各層の質量情報とその各層の層剛性情報とその各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ、且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを使用して機械学習を行うことによって主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と各層に配置される複数のダンパーモデルについて地震応答情報との関係を学習した学習済みモデルを作成する。学習用データセットの一例は、学習用データセット生成システムによって作成される。
地震応答予測装置は、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得し、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と各層に配置される複数のダンパーモデルとの組み合わせと、地震応答情報との関係を学習した学習済みモデルを使用して、取得した主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と決定した各層に配置される複数のダンパーモデルとの組み合わせに基づいて、地震応答情報を出力する。
【0041】
学習モデル作成装置について説明する。学習モデル作成装置は、学習用データセットに基づいて学習データと地震応答との関係を学習する処理と、学習モデルを検証する処理とを行う。
学習用データセットに基づいて学習データと地震応答との関係を学習する処理について説明する。まず、学習用データセット生成システムは、学習モデル作成装置に学習させるための学習用データセットを作成する。学習用データセットは、学習データと教師データとが含まれる。学習データは、コンピュータが学習する際に着目する特徴量を含む。特徴量の一例は、主架構の各階の質量を特定する情報Mと、主架構の各階の剛性を特定する情報Kfと、ダンパーの各階の剛性を特定する情報Kdとである。
図2は、学習データとテストデータとの一例を示す図である。本実施形態では、一例として汎用性能の確認を行うため、複数のデータを、学習データとテストデータとに分割した。複数のデータの分割には、一例としてホールドアウト法を使用した。図2の一例によれば、1000万個のデータが、800万個の学習データと200万個のテストデータとに分割される。さらに、800万個の学習データは、640万個の学習用データと、160万個の評価用データ(検証用データ)とに分割される。図1に戻り説明を続ける。
学習データに含まれる学習用データは、学習モデルに入力される。学習モデルは、入力された学習用データに基づいて地震応答の予測値を出力する。地震応答の予測値と教師データとに基づいて、学習用データが予測値に与える影響を学習することによって、パラメータが更新される。パラメータには、学習モデルの重みとバイアスとが含まれる。
【0042】
学習モデルを検証する処理について説明する。
学習用データセット生成システムは、学習モデル作成装置によって作成された学習モデルを検証するための学習用データセットを作成する。学習用データセットには、評価用データと教師データとが含まれる。評価データは、コンピュータが学習する際に着目する特徴量を含む。特徴量の一例は、主架構の各階の質量を特定する情報Mと、主架構の各階の剛性を特定する情報Kfと、ダンパーの各階の剛性を特定する情報Kdである。
学習データに含まれる評価用データは、学習モデルに入力される。学習モデルは、入力された評価用データに基づいて地震応答の予測値を出力する。地震応答の予測値と教師データとに基づいて学習モデルの検証が行われる。検証に、損失関数と、二乗和平均偏差誤差(RMSE: root-mean-square error)とのいずれか一方又は両方を使用して検証してもよい。
【0043】
評価関数に基づいて、ハイパーパラメータが調整されてもよい。評価関数の一例は、修正済決定係数(R^2)である。ハイパーパラメータは、機械学習アルゴリズムの挙動を制御するパラメータである。特に深層学習では勾配法によって最適化できないパラメータ又は最適化しないパラメータに相当する。例えば、学習率やバッチサイズ、学習イテレーション数などがハイパーパラメータである。また、ニューラルネットワークの層数やチャンネル数などもハイパーパラメータである。更に、そのような数値に加え、学習に使用するMomentum SGD、Adamなどの最適化アルゴリズムの選択もハイパーパラメータである。
ハイパーパラメータの調整は機械学習アルゴリズムが力を発揮するためにほぼ不可欠である。特に、深層学習はハイパーパラメータの数が多い傾向がある上に、ハイパーパラメータの調整が性能を大きく左右すると言われている。ハイパーパラメータを調整することによって、地震応答の予測値の精度を向上できる。
学習モデル作成装置は、学習モデルを検証することによって有効とされた学習モデルを、学習済モデルとして記憶し、出力する。
【0044】
地震応答予測装置について説明する。地震応答予測装置は、テストデータと学習済モデルとに基づいて地震応答の予測値を出力する。
地震応答の予測値を取得するためのテストデータが用意される。テストデータは、コンピュータが学習する際に着目する特徴量を含む。特徴量の一例は、主架構の各階の質量を特定する情報Mと、主架構の各階の剛性を特定する情報Kfとである。テストデータは、ダンパーの各階の剛性を特定する情報Kdとともに学習済モデルに入力される。学習済モデルは、入力されたテストデータとダンパーの各階の剛性を特定する情報Kdとに基づいて地震応答の予測値を出力する。
【0045】
図3は、本実施形態に係る地震応答予測装置の動作の一例を示す図である。
主架構の各階(層)の質量を特定する情報M1からM4と、主架構の各階(層)の剛性を特定する情報Kf1からKf4とが、地震応答予測装置に入力される(1)。
地震応答予測装置は、入力された主架構の各階の質量を特定する情報M1からM4と、主架構の各階の剛性を特定する情報Kf1からKf4とに基づいて主架構モデルを構築する。地震応答予測装置は、構築した主架構モデルの各階に配置されるダンパーモデルを選択し、構築した主架構モデルと選択したダンパーモデルの剛性情報Kd1からKd4に基づいて、複数のダンパー配置データcase1からcaseMを作成する(2)。ダンパーモデルの一例は、オイルダンパーのモデルと、滑り支承装置のモデルと、座屈拘束ブレースのモデルとのいずれかを含む。
オイルダンパーとは、筒状の金属と棒の間に粘り気のある油を注入し、その抵抗力で衝撃を吸収する装置である。滑り支承装置とは、柱の直下に滑り材を入れることで、地震の揺れをなるべく建物に伝えないようにする形の免震装置である。滑り支承装置の一例は、上沓と下沓とこれらの間を摺動するスライダーとを備える球面滑り装置である。座屈拘束ブレースとは、軸方向力を伝達するブレースが座屈しないよう拘束材で補剛したものである。
【0046】
地震応答予測装置は、作成した複数のダンパー配置データcase1からcaseMの各々を学習済モデルへ入力する。学習済モデルは、入力された複数のダンパー配置データcase1からcaseMの各々に対して、地震応答の予測結果case1応答結果からcaseM応答結果を出力する(3)。
地震応答予測装置は、学習済モデルが出力した複数のダンパー配置データcase1からcaseMの各々に対する地震応答の予測結果case1応答結果からcaseM応答結果を取得する。地震応答予測装置は、複数のダンパー配置データcase1からcaseMと、複数のダンパー配置データcase1からcaseMの各々の地震応答の予測結果case1応答結果からcaseM応答結果とを関連付けたテーブルを作成する(4)。
地震応答予測装置は、任意の制約条件に基づいて、作成したテーブルに含まれる複数のダンパー配置データから、制約条件を満たすダンパー配置データを選択する(5)。任意の制約条件の一例は、最大層間変形角に関する制約と、コストに関する制約とである。
【0047】
学習用データセットを作成する処理について説明する。学習用データセットは、学習用データセット生成システムによって作成される。
図4は、本実施形態に係る学習用データセット生成システムの動作の一例を示す図である。
主架構数N(Nは、N>1の整数)の主架構の各々について、主架構の各階(層)の質量を特定する情報M11からM41、・・・、M1NからM4Nと、主架構の各階(層)の剛性を特定する情報Kf11からKf41、・・・、Kf1NからKf4Nとが、学習用データセット生成システムに入力される(1)。
学習用データセット生成システムは、入力された主架構の各階の質量を特定する情報M11からM41、・・・、M1NからM4Nと、主架構の各階の剛性を特定する情報Kf11からKf41、・・・、Kf1NからKf4Nとに基づいて主架構モデルを構築する。学習用データセット生成システムは、構築した主架構モデルの各階(層)に配置されるダンパーモデルを選択し、構築した主架構モデルと選択したダンパーモデルの剛性情報Kd1からKd4に基づいて、複数のダンパー配置データcase1からcaseMを作成する(2)。ダンパー配置データ数Mは、(ダンパーモデルの種類の数^層数)×主架構数Nである。
【0048】
学習用データセット生成システムは、複数のダンパー配置データcase1からcaseMの各々を解析することによって地震応答を計算する。例えば、学習用データセット生成システムは、複数のダンパー配置データcase1からcaseMの各々について、応答スペクトル法などの線形動的解析手法によって地震応答を計算する(4)。応答スペクトル法は、一質点系のモデルの応答スペクトルを用いて多質点系の地震時の応答を推定する方法である。
学習用データセット生成システムは、主架構モデルの各層の質量情報と各層の層剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを取得する。
以下、学習用データセット生成システムの詳細について説明する。
【0049】
(学習用データセット生成システム)
図5は、本実施形態に係る学習用データセット生成システムの一例を示す図である。
本実施形態に係る学習用データセット生成システム100は、主架構モデルの各層の質量情報と各層の層剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する。
学習用データセット生成システム100は、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。学習用データセット生成システム100は、例えば、入力部101と、構築部102と、選択部103と、計算部104と、生成部105と、記憶部106とを備える。
【0050】
入力部101は、インタフェースによって実現される。入力部101には、オフィスビルなどの重層構造物の主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfが入力される。重層構造物の一例は、等価せん断型の質点系でモデル化できる程度の構造物である。
等価せん断型は、各階の変形の全てをせん断変形であるとみなし、せん断ばねとしてモデル化する方法である。等価せん断型は、建物全体の曲げ変形の影響がそれほど大きくない建物、例えば中低層程度の建物や塔状比が小さい建物では比較的精度がよいモデルとなる。
質点系は、二個以上の質点から成る力学系である。質点系の各質点に働く力は、系内の他の質点から受ける内力と系外から受ける外力とに分けられる。内力が作用反作用の法則にしたがう場合には内力の総和および任意の点に関する内力のモーメントの総和はゼロとなり、質量中心の運動および質量中心のまわりの回転運動は外力で決まる。質点は、大きさのない質量のかたまりである。質点は、建築物の振動解析(揺れ方解析)を行う場合に使用する。建築物は複雑であるため、全てをモデル化するのは難しく、質点に置き換える。
【0051】
構築部102は、入力部101に入力された主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfを取得する。構築部102は、取得した主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfに基づいて、一又は複数の主架構モデルを構築(作成)する。
具体的には、構築部102は、予め設定された層数範囲に応じて、新たな主架構モデルの層数nを決定する。主架構モデルの一例は、等価せん断系の質点系モデルである。主架構モデルの層数nの一例は、15から54である。本実施形態では、一例として、主架構モデルが等価せん断系の質点系モデルであり、主架構モデルの層数nが15から54である場合について説明を続ける。
【0052】
構築部102は、基準階面積A[m^2]を計算する。例えば、構築部102は、式(1)に基づいて基準階面積Aを導出する。
A=85×n×(3パターンの計数) (1)
図6は、層数と基準階床面積との関係の一例を示す図である。図6において、横軸は階数nであり、縦軸は基準階床面積A[m^2]である。図6には、3パターンについて層数と基準階床面積との関係が示される。図6に示されるように、層数nと基準床面積Aとの間は、式(1)で近似される。3パターンの計数の一例は、0.4、1.0、1.6である。
【0053】
次に、構築部102は、各層重量Wを計算する。例えば、構築部102は、式(2)に基づいて各層重量Wを導出する。
W=0.8[t/m^2](8.0kN/m^2)×(3パターンの計数) (2)
図7は、層数と床面積あたりの重量との関係の一例を示す図である。図7において、横軸は階数nであり、縦軸は床面積あたり重量[t/m^2]である。図7に示されるように、層数nと床面積あたり重量[t/m^2]との間は相関関係が見られ、建物ごとの平均では、式(2)で近似される。3パターンの計数の一例は、0.7、1.0、1.3である。
【0054】
次に、構築部102は、建物の高さをn(nは、n>1の整数)等分し、n等分された建物の高さの各々に基づいて新たな高さを選択する。構築部102は、選択した新たな高さに対応する層の剛性を導出する。例えば、構築部102は、式(3)に基づいて新たな高さに対応する層の剛性Kiを導出する。
Ki=(3パターンの計数)×ΣWi×Rt×Ai (3)
式(3)においてΣWiは支持総重量であり、Rtは構造特性係数の影響であり、Aiは高さ方向の設計用せん断力比の影響である。3パターンの計数の一例は、0.01、0.02、0.03である。
【0055】
図8は、高さ比と層剛性/支持総重量比との関係の例1を示す図である。図8において横軸は高さ比σであり、縦軸は層剛性Ki/支持総重量ΣWi比である。図8は、高さの最高値を1とした場合のi(iはi>0の整数)層の高さ比σに対する層剛性Ki/i層以上の支持総重量ΣWiとの比である。図8によれば、ばらつきがあるが、層剛性Ki/支持総重量ΣWi比は、概ね4層から15層の低層部で0.01[/mm]~0.04[/mm]、16層から54層の上層部で0.01[/mm]~0.10[/mm]の範囲に分布しているのが分かる。この中には固有周期の差による構造特性係数Rtの影響、及び高さ方向の設計用せん断力比の影響Aiを含んでいる。
【0056】
図9は、高さ比と層剛性/支持総重量比との関係の例2を示す図である。図9において横軸は高さ比σであり、縦軸は層剛性Ki/支持総重量ΣWi比/(Rt・Ai)である。図9は、図8において縦軸をさらに2種地盤に対する構造特性係数Rt(ただし、下限値を0.25とする)及び高さ方向の設計用せん断力比の影響Aiで除した分布である。
図9によれば、上層部ではばらつきがみられるが、概ね0.01~0.03の範囲に集中していることが分かる。なお、構造特性係数Rt、高さ方向の設計用せん断力比の影響Aiを計算するための一次固有周期は階数×4[m]×0.03(鉄骨造)で計算している。これはベースシアC0=0.2の構造特性係数Rtを考慮したAi分布に対し、20mm~7mm(1/200~1/600)の層間変形角に相当する。図5に戻り説明を続ける。
次に、構築部102は、設定された構築(作成)個数の主架構モデルを構築(作成)する。構築部102は、新たな主架構モデルの層の各々に配置されるダンパーモデルの層の剛性を、n等分された建物高さのそれぞれに対応する層の層剛性を用いて線形補完することによって計算する。
【0057】
選択部103は、構築部102が構築した一又は複数の主架構モデルから、新たな主架構モデルを選択する。選択部103は、選択した新たな主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルを選択する。
計算部104は、構築部102が構築(作成)した一又は複数の主架構モデルと、選択部103が選択した新たな主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルとを取得する。計算部104は、取得した一又は複数の主架構モデルと、新たな主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルとを解析することによって地震応答情報を計算する。計算部104は、構築した一又は複数の主架構モデルと選択したダンパーモデルの剛性情報に基づいて、ダンパーモデルを配置した主架構モデルであるダンパー配置データを複数作成する。
具体的には、計算部104は、予め設定されたダンパーモデルの剛性パターンに基づいて、ダンパー剛性の組み合わせを新たに選択する。計算部104は、一又は複数の主架構モデルの各々の層の剛性Kiを構築部102から取得する。計算部104は、取得した主架構モデルの各々の層の剛性Kiに対応する層の主架構ダンパー剛性比Cdiを計算する。計算部104は、新たな主架構モデルの層の主架構ダンパー合成比Cdiを、既に計算することで得られている主架構ダンパー剛性比Cdiを用いて線形補完することによって計算する。計算部104は、ダンパーモデルを選択し、選択したダンパーモデルが配置された主架構モデルを応答スペクトル法で解析することによって地震応答情報を計算する。
地震応答情報の一例は、1~3次固有周期と、最大層間変形角と、平均層間変形角と、層間変形角のばらつき(標準偏差)と、層間変形角の集中率と、最大応答加速度と、ベースシアと、転倒モーメントと、ダンパー最大塑性率と、ダンパー容量との少なくとも一つである。計算部104は、全てのダンパーモデルについて、ダンパーモデルが配置された主架構モデルを応答スペクトル法で解析する。
建物は、1棟ごとに固有の周期を有する。これを固有周期という。固有周期によって、建物に作用する地震力の大きさと、建物の揺れ方とが分かる。
【0058】
生成部105は、計算部104が選択したダンパーモデルと、そのダンパーモデルが配置された主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを作成する。生成部105は、作成した学習用データセットを、記憶部106に記憶させる。
生成部105は、計算部104が選択した全てのダンパーモデルについて、そのダンパーモデルが配置された主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを作成する。生成部105は、作成した学習用データセットを、記憶部106に記憶させる。
【0059】
記憶部106は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などにより実現される。記憶部106には、学習用データセットが記憶される。学習用データセットがクラウド上に記憶されていてもよい。
構築部102、選択部103、計算部104、及び生成部105は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが記憶部106に格納されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。
また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。コンピュータプログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0060】
以下、学習モデル作成装置の詳細について説明する。
(学習モデル作成装置)
図10は、本実施形態に係る学習モデル作成装置の一例を示す図である。
学習モデル作成装置200は、学習用データセットを受け付ける。学習用データセットの一例は、学習用データセット生成システム100によって作成されたものである。学習用データセットには、主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる。学習モデル作成装置200は、受け付けた学習用データセットに基づいて、主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせと主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報との関係を機械学習することによって学習モデル(学習済モデル)を作成する。
【0061】
学習モデル作成装置200は、スマートフォン、携帯端末、又はパーソナルコンピュータ、タブレット端末装置、あるいはその他の情報処理機器として実現される。学習モデル作成装置200は、例えば、入力部210と、受付部220と、処理部230と、出力部240と、記憶部250とを備える。
入力部210は、入力デバイスを備える。入力部210には、学習用データセットが入力される。入力部210は、入力された学習用データセットを取得する。
記憶部250は、HDDやフラッシュメモリ、RAM、ROMなどにより実現される。記憶部250には、プログラムが記憶される。
【0062】
受付部220は、入力部210に入力された学習用データセットを取得し、取得した学習用データセットを受け付ける。
処理部230は、受付部220が受け付けた学習用データセットを取得する。処理部230は、取得した学習用データセットに基づいて、主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせを説明変数、主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報を目的変数として、主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせと主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報との関係を機械学習することによって学習モデル232を作成する。
【0063】
例えば、処理部230は、主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせを入力データ、主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報を教師データとして使用して機械学習する。本実施形態では、学習モデル232の一例として多層パーセプトロン(MLP: Multilayer perceptron)を用いた場合について説明を続ける。多層パーセプトロンは、機械学習において、ニューラルネットワークを使用したアルゴリズムである。多層パーセプトロンは、1層以上の隠れ層が存在し、入力層と出力層を合わせて3つ以上の層を有する。
【0064】
出力部240は、処理部230が作成した学習モデル232を取得する。出力部240は、取得した学習モデル232を学習済モデルとして出力する。
受付部220と、処理部230と、出力部240との全部または一部は、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部250に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。なお、受付部220と、処理部230と、出力部240との全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0065】
(地震応答予測装置)
図11は、本実施形態に係る地震応答予測装置の一例を示す図である。
地震応答予測装置300は、地震応答予測要求を取得する。地震応答予測装置300は、取得した地震応答予測要求に含まれる主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得する。地震応答予測装置300は、取得した主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を受け付ける。地震応答予測装置300は、各層に配置される複数のダンパーモデルを決定する。
地震応答予測装置300は、受け付けた質量情報及び層剛性情報と、決定した各層に配置される複数のダンパーモデルとに対して学習モデルが出力する地震応答情報を取得する。
地震応答予測装置300は、地震応答情報に関する第1選別条件を設定する。地震応答予測装置300は、取得した地震応答情報のうち、第1選別条件に合致するものを抽出する。
地震応答予測装置300は、抽出した第1選別条件に合致する地震応答情報を、第1選別条件を特定する情報と質量情報及び層剛性情報と関連付けて表示する。
なお、第1選別条件は、1~3次固有周期と、最大層間変形角と、平均層間変形角と、層間変形角の標準偏差と、層間変形角の集中率と、最大応答加速度と、ベースシアと、転倒モーメントと、ダンパー最大塑性率と、ダンパー容量との少なくとも一つに関する情報を含んでもよい。
【0066】
地震応答予測装置300は、スマートフォン、携帯端末、又はパーソナルコンピュータ、タブレット端末装置、あるいはその他の情報処理機器として実現される。地震応答予測装置300は、例えば、入力部310と、受付部320と、処理部330と、決定部340と、記憶部350と、設定部360と、抽出部370と、表示制御部380とを備える。
入力部310は、入力デバイスを備える。入力部310には、地震応答予測要求が入力される。入力部310は、入力された地震応答予測要求を取得する。
【0067】
受付部320は、入力部310が取得した地震応答予測要求を取得する。受付部320は、取得した地震応答予測要求に含まれる主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と第1選別条件を特定する情報とを取得し、取得した質量情報及び層剛性情報と第1選別条件を特定する情報とを受け付ける。
決定部340は、主架構モデルの各層に配置される複数のダンパーモデルを決定する。決定部340は、決定した主架構モデルの各層に配置される複数のダンパーモデルの各々の剛性情報を決定する。
記憶部350は、HDDやフラッシュメモリ、RAM、ROMなどにより実現される。記憶部350には、プログラムが記憶される。
処理部330は、受付部320が受け付けた主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と、決定部340が決定した各層に配置される複数のダンパーモデルの各々の剛性情報を特定する情報とを取得する。
処理部330は、学習モデル332を含む。学習モデル332は、学習用データセットに基づいて、主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせを説明変数、主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報を目的変数として、主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせと主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報との関係を機械学習することによって作成されたものである。例えば、学習モデル332は、学習モデル作成装置200によって作成されたものである。
【0068】
処理部330は、取得した主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と主架構モデルの各層に配置される複数のダンパーモデルの各々の剛性を特定する情報とを学習モデル332に入力する。処理部330は、入力した主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と各層に配置される複数のダンパーモデルの各々の剛性を特定する情報とに対して学習モデル332が出力した地震応答情報を取得する。
設定部360は、受付部320が受け付けた第1選別条件を特定する情報を取得し、取得した第1選別条件を特定する情報を設定する。
抽出部370は、処理部330が出力した地震応答情報と、設定部360が設定した第1選別条件を特定する情報とを取得する。抽出部370は、取得した地震応答情報と、第1選別条件を特定する情報とに基づいて一又は複数の地震応答情報のうち、第1選別条件に合致するものを抽出する。
表示制御部380は、抽出部370が抽出した第1選別条件に合致する地震応答情報を取得する。表示制御部380は、取得した第1選別条件に合致する地震応答情報を、第1選別条件を特定する情報と主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と関連付けて、表示部(図示なし)に表示させる。
受付部320と、処理部330と、決定部340と、設定部360と、抽出部370と、表示制御部380との全部または一部は、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部350に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。なお、受付部320と、処理部330と、決定部340と、設定部360と、抽出部370と、表示制御部380との全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0069】
(学習用データセット生成システムの動作)
図12は、本実施形態に係る学習用データセット生成システムの動作の例1を示すフローチャートである。
(ステップS101-1)
学習用データセット生成システム100において、入力部101に重層構造物の主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性(層剛性)を特定する情報Kfが入力される。
(ステップS102-1)
学習用データセット生成システム100において、構築部102は、入力部101に入力された主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfを取得する。構築部102は、取得した主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfに基づいて主架構モデルを構築(作成)する。
(ステップS103-1)
学習用データセット生成システム100において、選択部103は、構築部102が構築した主架構モデルから、新たな主架構モデルを選択する。選択部103は、選択した新たな主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルを選択する。選択部103は、構築した主架構モデルと選択したダンパーモデルの剛性情報に基づいて、ダンパーモデルを配置した主架構モデルであるダンパー配置データを複数作成する。
【0070】
(ステップS104-1)
学習用データセット生成システム100において、計算部104は、構築部102が構築(作成)したダンパーモデルを配置した主架構モデルであるダンパー配置データを複数取得する。計算部104は、取得したダンパー配置データを、応答スペクトル法で解析することによって地震応答情報を計算する。
(ステップS105-1)
学習用データセット生成システム100において、計算部104は、作成済み主架構モデルを全て選択したか否かを判定する。選択していない主架構モデルがある場合には、ステップS103-1に戻る。
(ステップS106-1)
学習用データセット生成システム100において、ステップS105-1で全ての主架構モデルが選択された場合には、生成部105は、計算部104が選択したダンパーモデルと、そのダンパーモデルが配置された主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを作成する。
(ステップS107-1)
学習用データセット生成システム100において、生成部105は、作成した学習用データセットを、記憶部106に記憶させる。
【0071】
図13は、本実施形態に係る学習用データセット生成システムの動作の例2を示すフローチャートである。図13は、図12のステップS102-1の詳細を示す。
(ステップS1021-1)
学習用データセット生成システム100において、構築部102は、予め設定された層数範囲に応じて、新たな主架構モデルの層数nを決定する。
(ステップS1022-1)
学習用データセット生成システム100において、構築部102は、基準階面積Aを計算する。
(ステップS1023-1)
学習用データセット生成システム100において、構築部102は、各層重量Wを計算する。
(ステップS1024-1)
学習用データセット生成システム100において、構築部102は、建物の高さをn(nは、n>1の整数)等分し、n等分された建物の高さの各々の中から新たな高さを選択する。
(ステップS1025-1)
学習用データセット生成システム100において、構築部102は、選択した新たな高さに対応する層の剛性Kiを導出する。
(ステップS1026-1)
学習用データセット生成システム100において、構築部102は、新たな高さを全て選択したか否かを判定する。選択していない高さがある場合、ステップS1024-1に戻る。
(ステップS1027-1)
学習用データセット生成システム100において、構築部102は、全ての高さを選択した場合に、設定された一又は複数の構築(作成)個数の主架構モデルを構築(作成)する。構築部102は、新たな主架構モデルの層の各々に配置されるダンパーモデルの層の剛性を、n等分された建物の高さのそれぞれに対応する層の層剛性を用いて線形補完することによって計算する。
(ステップS1028-1)
学習用データセット生成システム100において、構築部102は、設定された作成個数の主架構モデルを作成したか否かを判定する。設定された作成個数の主架構モデルを作成していない場合にはステップS1021-1に戻る。設定された作成個数の主架構モデルを作成した場合には終了する。
【0072】
図14は、本実施形態に係る学習用データセット生成システムの動作の例3を示すフローチャートである。図14は、図12のステップS104-1の詳細を示す。
(ステップS1041)
学習用データセット生成システム100において、計算部104は、予め設定されたダンパーモデルの剛性パターンに基づいて、ダンパー剛性の組み合わせを新たに選択する。
(ステップS1042)
学習用データセット生成システム100において、計算部104は、選択部103によって選択された主架構モデルの各層の層剛性Kiを構築部102から取得する。
(ステップS1043)
学習用データセット生成システム100において、計算部104は、取得した主架構モデルの各々の層の層剛性Kiに対応する層の主架構ダンパー剛性比Cdiを計算する。
(ステップS1044)
学習用データセット生成システム100において、計算部104は、新たな主架構モデルの層の主架構ダンパー合成比Cdiを、既に計算することで得られている主架構ダンパー剛性比Cdiを用いて線形補完することによって計算する。
(ステップS1045)
学習用データセット生成システム100において、計算部104は、ダンパーモデルを選択し、選択したダンパーモデルが配置された主架構モデルを応答スペクトル法で解析する。
(ステップS1046)
学習用データセット生成システム100において、生成部105は、計算部104が選択したダンパーモデルと、そのダンパーモデルが配置された主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを作成する。生成部105は、作成した学習用データセットを、記憶部106に記憶させる。
(ステップS1047)
学習用データセット生成システム100において、計算部104は、ダンパー剛性の全ての組み合わせを選択したか否かを判定する。選択していないダンパー剛性がある場合には、ステップS1041へ戻る。全てのダンパー剛性の選択が終了している場合には、終了する。
【0073】
図15は、本実施形態に係る学習モデル作成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
(ステップS201)
学習モデル作成装置200において、入力部210には、学習用データセットが入力される。入力部210は、入力された学習用データセットを取得する。
(ステップS202)
学習モデル作成装置200において、受付部220は、入力部210に入力された学習用データセットを取得し、取得した学習用データセットを受け付ける。
(ステップS203)
学習モデル作成装置200において、処理部230は、受付部220が受け付けた学習用データセットを取得する。処理部230は、取得した学習用データセットに基づいて、主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせを説明変数、主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報を目的変数として、主架構モデルの各層の質量情報と各層の剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報との組み合わせと、主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報との関係を機械学習することによって学習モデル232を作成する。
(ステップS204)
学習モデル作成装置200において、出力部240は、処理部230が作成した学習モデル232を取得する。出力部240は、取得した学習モデル232を学習済モデルとして出力する。
【0074】
図16は、本実施形態に係る地震応答予測装置の動作の一例を示すフローチャートである。図16では、地震応答予測要求に、主架構モデルの各層の質量情報と各層の層剛性情報とに加え、層高さを特定する情報と、ダンパーの取り付け角度を特定する情報と、第1選別条件を特定する情報とが含まれる場合について説明する。
(ステップS301)
地震応答予測装置300において、入力部310は、地震応答予測要求を取得する。受付部320は、取得した地震応答予測要求に含まれる主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と、層高さを特定する情報と、ダンパーの取り付け角度を特定する情報と、第1選別条件を特定する情報とを取得し、取得した主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と、層高さを特定する情報と、ダンパーの取り付け角度を特定する情報と、第1選別条件を特定する情報とを受け付ける。
(ステップS302)
地震応答予測装置300において、設定部360は、受付部320が受け付けた第1選別条件を特定する情報を取得し、取得した第1選別条件を特定する情報を設定する。
(ステップS303)
地震応答予測装置300において、決定部340は、主架構モデルの各層に配置される複数のダンパーモデルを決定する。決定部340は、決定した主架構モデルの各層に配置される複数のダンパーモデルの各々の剛性情報を決定する。
(ステップS304)
地震応答予測装置300において、処理部330は、受付部320が受け付けた主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と、決定部340が決定した主架構モデルの各層に配置される複数のダンパーモデルの各々の剛性情報を特定する情報とを取得する。処理部330は、取得した主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と主架構モデルの各層に配置される複数のダンパーモデルの各々の剛性を特定する情報とを学習モデル332に入力する。処理部330は、入力した主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と主架構モデルの各層に配置される複数のダンパーモデルの各々の剛性を特定する情報とに対して学習モデル332が出力した地震応答情報を取得する。
【0075】
(ステップS305)
地震応答予測装置300において、処理部330は、取得した主架構モデルの各層に配置される複数のダンパーモデルの各々の剛性情報の全ての組み合わせについて地震応答情報を取得したか否かを判定する。地震応答を取得していない組み合わせがある場合にはステップS304へ戻る。
(ステップS306)
地震応答予測装置300において、抽出部370は、処理部330が取得した地震応答情報と、設定部360が設定した第1選別条件を特定する情報とを取得する。抽出部370は、取得した地震応答情報と、第1選別条件を特定する情報とに基づいて、一又は複数の地震応答情報のうち、第1選別条件に合致するものを抽出する。
(ステップS307)
地震応答予測装置300において、表示制御部380は、抽出部370が抽出した第1選別条件に合致する地震応答情報を取得する。表示制御部380は、取得した第1選別条件に合致する地震応答情を、第1選別条件を特定する情報と質量情報及び層剛性情報と関連付けて、表示部(図示なし)に表示させる。
【0076】
本実施形態に係る学習用データセット生成システム100によれば、学習用データセット生成システム100は、主架構モデルの各層の質量情報と各層の層剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する。
学習用データセット生成システム100は、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を入力する入力部101と、入力部101で入力される質量情報及び層剛性情報に基づき、主架構モデルを構築する構築部102と、構築部102で構築される主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルを選択する選択部103と、構築部102で構築される主架構モデルと選択部103で選択されるダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算する計算部104と、入力部101で入力される質量情報及び層剛性情報と選択部103で選択されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ計算部104で計算される地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する生成部105とを備える。
【0077】
このように構成することによって、学習用データセット生成システム100は、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報に基づき、主架構モデルを構築し、構築した主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルを選択でき、構築した主架構モデルと選択したダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算できるため、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と、選択したダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ計算した地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成できる。
一般的に学習用データセットの生成が機械学習の約8割の時間を費やすと言われており、そのうえ、機械学習に直接入れられるデータは少ないため、前処理や写真であればアノテーションが必要で作業が煩雑となり、大量の学習用データセットを用意することは非常に難しい。これに対し、本実施形態に係る学習用データセット生成システム100では、統計的な分析に基づいた範囲内で学習用データセットを無限に作成することができるので、大量の学習用データセットを容易に準備できる。そして、準備した学習用データセットを用い、機械学習処理に即座に入れる。
本願発明者らは、通常の建物では局所的にダンパーがないパターンは少ないため、層間を補完することで凡その実体を表現できるという知見を得た。さらに、この知見に基づき、建物の高さをn等分しても、予測精度の高い学習モデルを作成できるという知見も得られた。
【0078】
前述した学習用データセット生成システム100において、入力部101は、主架構モデルの全層の一部の層に対応する層剛性情報を入力し、構築部102は、一部の層に対応する層剛性情報を用いて線形補間することによって一部以外の層に対応する層剛性情報を求め、求めた一部以外の層に対応する層剛性情報と入力部101で入力される質量情報及び層剛性情報とに基づき、主架構モデルを構築する。
このように構成することによって、学習用データセット生成システム100は、一部の層に対応する層剛性情報を用いて線形補間することによって一部以外の層に対応する層剛性情報を求めることができるため、全層の一部の層に対応する層剛性情報を取得することによって、求めた層剛性情報と取得した質量情報及び層剛性情報とに基づき、主架構モデルを構築できる。
【0079】
前述した学習用データセット生成システム100において、選択部103は、主架構モデルの全層の一部の層に対応するダンパーモデルを選択し、計算部104は、一部の層に対応するダンパーモデルの剛性情報を用いて線形補間を行うことによって一部以外の層に対応するダンパーモデルの剛性情報を求め、求めた剛性情報と選択部103で選択されるダンパーモデルの剛性情報と構築部102で構築される主架構モデルの各層の層剛性情報とを用いる解析により、地震応答情報を計算する。
このように構成することによって、学習用データセット生成システム100は、一部の層に対応するダンパーモデルの剛性情報を用いて線形補間することによって一部以外の層に対応するダンパーモデルの剛性情報を求めることができる。このため、学習用データセット生成システム100は、求めた剛性情報と選択したダンパーモデルの剛性情報と構築した主架構モデルの各層の層剛性情報とを用いて解析することによって地震応答情報を計算できる。
【0080】
前述した学習用データセット生成システム100において、教師データは、1~3次固有周期と、最大層間変形角と、平均層間変形角と、層間変形角の標準偏差と、層間変形角の集中率と、最大応答加速度と、ベースシアと、転倒モーメントと、ダンパー最大塑性率と、ダンパー容量との少なくとも一つを含む。
このように構成することによって、学習用データセット生成システム100は、1~3次固有周期と、最大層間変形角と、平均層間変形角と、層間変形角の標準偏差と、層間変形角の集中率と、最大応答加速度と、ベースシアと、転倒モーメントと、ダンパー最大塑性率と、ダンパー容量との少なくとも一つを計算できるため、1~3次固有周期と、最大層間変形角と、平均層間変形角と、層間変形角の標準偏差と、層間変形角の集中率と、最大応答加速度と、ベースシアと、転倒モーメントと、ダンパー最大塑性率と、ダンパー容量との少なくとも一つ地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データを生成できる。
【0081】
前述した学習用データセット生成システム100において、ダンパーモデルは、オイルダンパーのモデル、滑り支承装置のモデル、及び、座屈拘束ブレースのモデルのいずれかを含む。
このように構成することによって、学習用データセット生成システム100は、オイルダンパーのモデル、滑り支承装置のモデル、及び、座屈拘束ブレースのモデルのいずれかを含むダンパーモデルを選択できるため、構築した主架構モデルと選択したダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算できる。
前述した学習用データセット生成システム100において、計算部104は、主架構モデルとダンパーモデルとを用いて応答スペクトルで解析することによって、地震応答情報を計算する。
このように構成することによって、学習用データセット生成システム100は、主架構モデルとダンパーモデルとを用いて応答スペクトル法で解析することができるため、地震応答情報を計算できる。
【0082】
本実施形態に係る学習モデル作成装置200によれば、前述した学習用データセット生成システム100で生成される学習用データセットを用いて機械学習を行うことによって学習済みモデルを作成する。
このように構成することによって、学習モデル作成装置200は、学習用データセット生成システム100で生成される学習用データセットを用いて機械学習を行うことができるため、学習済みモデルを作成できる。
【0083】
本実施形態に係る地震応答予測装置300によれば、地震応答予測装置300は、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得する取得部としての入力部310と、各層に配置される複数のダンパーモデルを決定する決定部340と、学習モデル作成装置200が作成した学習済みモデルを用い、入力部310が取得する質量情報及び層剛性情報と決定部340が決定する複数のダンパーモデルとに対応する地震応答情報を出力する処理部330と、地震応答情報に関する第1選別条件を設定する設定部360と、処理部330が出力する地震応答情報から設定部360が設定した第1選別条件に合致する地震応答情報を抽出する抽出部370とを備える。
このように構成することによって、地震応答予測装置300は、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を取得し、各層に配置される複数のダンパーモデルを決定できるため、学習モデル作成装置200が作成した学習済みモデルを用い、取得した質量情報及び層剛性情報と決定した複数のダンパーモデルの各々に対応する地震応答情報を出力できる。さらに地震応答予測装置は、地震応答情報に関する第1選別条件を設定できるため、出力した複数の地震応答情報の中から設定した第1選別条件に合致する地震応答情報を抽出できる。
【0084】
(実施形態の変形例1)
実施形態の変形例1に係る学習用データセット生成システム100aについて説明する。学習用データセット生成システム100aは、学習用データセット生成システム100において、主架構が低層の主架構及び高層の主架構のいずれであるのかを判定する。学習用データセット生成システム100aは、主架構が低層の主架構及び高層の主架構のいずれであるのかの判定結果に応じて一部の層の数を変更する。
図17は、実施形態の変形例1に係る学習用データセット生成システムの一例を示す図である。
学習用データセット生成システム100aは、主架構モデルの各層の質量情報とその各層の層剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する。
学習用データセット生成システム100aは、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。学習用データセット生成システム100aは、例えば、入力部101と、構築部102aと、選択部103と、計算部104と、生成部105と、記憶部106と、主架構判定部107とを備える。
【0085】
入力部101は、インタフェースによって実現される。入力部101には、オフィスビルなどの重層構造物の主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfが入力される。
主架構判定部107は、入力部101に入力された主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfを取得する。主架構判定部107は、取得した主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfに基づいて、主架構モデルを作成するための事前設定を行う。
例えば、主架構判定部107は、主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfに基づいて、主架構は低層又は高層であるかを判定する。例えば、主架構判定部107は、主架構が4層から15層である場合には低層であると判定し、主架構が15層から54層である場合には高層であると判定する。
構築部102aは、入力部101に入力された主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfを取得する。構築部102aは、主架構判定部107による主架構の層数の判定結果を取得する。構築部102aは取得した主架構の層数の判定結果に基づいて、ダンパーの剛性パターンを設定する。構築部102aは、取得した主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfに基づいて、一又は複数の主架構モデルを構築(作成)する。
【0086】
具体的には、構築部102aは、主架構の層数の判定結果に基づいて、予め設定された層数範囲に応じて、新たな主架構モデルの層数nを決定する。主架構モデルの一例は、等価せん断系の質点系モデルである。主架構モデルの層数nの一例は、主架構の層数の判定結果が低層である場合には4から15であり、主架構の層数の判定結果が高層である場合には15から54である。本実施形態では、一例として、主架構モデルが等価せん断系の質点系モデルであり、主架構モデルの層数nが4から54である場合について説明を続ける。
【0087】
構築部102aは、基準階面積A[m^2]を計算する。例えば、構築部102aは、前述した式(1)に基づいて基準階面積Aを導出する。
次に、構築部102aは、各層重量Wを計算する。例えば、構築部102aは、前述した式(2)に基づいて各層重量Wを導出する。
次に、構築部102aは、主架構の層数の判定結果に基づいて、建物の高さをn(nは、n>1の整数)等分し、n等分された建物の高さの各々に基づいて新たな高さを選択する。例えば、構築部102aは、主架構の層数の判定結果が低層である場合より、主架構の層数の判定結果が高層である場合の方がnの値を大きくする。nの一例は、主架構の層数の判定結果が低層である場合には3であり、主架構の層数の判定結果が高層である場合には4である。
構築部102aは、選択した新たな高さに対応する層の剛性を導出する。例えば、構築部102aは、前述した式(3)に基づいて新たな高さに対応する層の剛性Kiを導出する。
次に、構築部102aは、設定した構築(作成)個数の主架構モデルを構築(作成)する。構築部102aは、新たな主架構モデルの層の各々に配置されるダンパーモデルの層の剛性を、n等分された建物高さのそれぞれに対応する層の層剛性を用いて線形補完することによって計算する。
構築部102a、及び主架構判定部107は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサが記憶部106に格納されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。
また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。コンピュータプログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0088】
(学習用データセット生成システムの動作)
図18は、実施形態の変形例1に係る学習用データセット生成システムの動作の例1を示すフローチャートである。
(ステップS101-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、入力部101に重層構造物の主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfが入力される。
(ステップS102-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、主架構判定部107は、入力部101に入力された主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfを取得する。構築部102aは、入力部101に入力された主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfを取得する。主架構判定部107と、構築部102aとは、取得した主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfに基づいて、主架構モデル作成するための事前設定を行う。
(ステップS103-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、構築部102aは、事前設定に基づいて、主架構モデルを構築(作成)する。
ステップS104-2からS108-2は、図12のステップS103-1からS107-1を適用できるため、ここでの説明は省略する。
【0089】
図19は、実施形態の変形例1に係る学習用データセット生成システムの動作の例2を示すフローチャートである。図19は、図18のステップS102-2の詳細を示す。
(ステップS1021-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、主架構判定部107は、主架構の各層の質量を特定する情報M及び主架構の各層の剛性を特定する情報Kfに基づいて、主架構は低層又は高層であるかを判定する。
(ステップS1022-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、構築部102aは、主架構判定部107による主架構の層数の判定結果を取得する。構築部102aは取得した主架構の層数の判定結果に基づいて、低層の場合には低層の場合のダンパーの剛性パターンに設定する。例えば、構築部102aは取得した主架構の層数の判定結果に基づいて、低層の場合にはダンパーの剛性パターンを6パターンに設定する。
(ステップS1023-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、構築部102aは、主架構の層数の判定結果に基づいて予め設定された層数範囲に応じて、新たな主架構モデルの層数nを設定する。例えば、構築部102aは、主架構の層数の判定結果に基づいて予め設定された層数範囲に応じて、新たな主架構モデルの層数nを4から15に設定する。
(ステップS1024-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、構築部102aは、主架構モデルの作成個数を設定する。例えば、構築部102aは、主架構モデルの作成個数を8748個に設定する。
(ステップS1025-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、構築部102aは、建物の高さの等分数nを設定する。例えば、構築部102aは、建物の高さの等分数nを3に設定する。
【0090】
(ステップS1026-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、構築部102aは、主架構判定部107による主架構の層数の判定結果を取得する。構築部102aは取得した主架構の層数の判定結果に基づいて、高層の場合には高層の場合のダンパーの剛性パターンに設定する。例えば、構築部102aは取得した主架構の層数の判定結果に基づいて、高層の場合にはダンパーの剛性パターンを4パターンに設定する。
(ステップS1027-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、構築部102aは、主架構の層数の判定結果に基づいて予め設定された層数範囲に応じて、新たな主架構モデルの層数nを15から54に設定する。例えば、構築部102aは、主架構の層数の判定結果に基づいて予め設定された層数範囲に応じて、新たな主架構モデルの層数nを15から54に設定する。
(ステップS1028-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、構築部102aは、主架構モデルの作成個数を設定する。例えば、構築部102aは、主架構モデルの作成個数を87480個に設定する。
(ステップS1029-2)
学習用データセット生成システム100aにおいて、構築部102aは、建物の高さの等分数nを設定する。例えば、構築部102aは、建物の高さの等分数nを4に設定する。
【0091】
前述した実施形態の変形例1では、学習用データセット生成システム100aが、主架構の層数の判定結果に基づいて、ダンパー剛性パターンと建物高さの等分数とを設定する場合について説明したがこの例に限られない。例えば、学習用データセット生成システム100aは、主架構の層数の判定結果に基づいて、ダンパー剛性パターンと建物高さの等分数とのいずれか一方を設定するようにしてもよい。
前述した実施形態の変形例1では、学習用データセット生成システム100aが、主架構が低層であるか高層であるかを判定し、主架構の層数の判定結果に基づいて、ダンパー剛性パターンと建物の高さの等分数とを設定する場合について説明したがこの例に限られない。例えば、学習用データセット生成システム100aが、主架構が低層であるか中層であるか高層であるかを判定し、主架構の層数の判定結果に基づいて、ダンパー剛性パターンと建物高さの等分数とを設定してもよい。例えば、学習用データセット生成システム100aが、主架構を4種類以上の層範囲に分類し、主架構の層数の分類結果に基づいて、ダンパー剛性パターンと建物高さの等分数とを設定してもよい。
【0092】
実施形態の変形例1に係る学習用データセット生成システム100aによれば、学習用データセット生成システム100aは、前述した学習用データセット生成システム100において、主架構の層数を判定する主架構判定部107を更に備え、一部の層の数は、主架構判定部107の判定結果に応じて異なる。
このように構成することによって、学習用データセット生成システム100aは、主架構が低層の主架構と高層の主架構とのいずれであるかなどの主架構の層数を判定できるため、判定結果に基づいて、各層の一部の層に対応する層剛性情報を取得し、各層の一部の層に対応するダンパーモデルを選択できる。
【0093】
実施形態の変形例1に係る学習用データセット生成システム100aによれば、学習用データセット生成システム100aは、前述した学習用データセット生成システム100において、主架構の層数を判定する主架構判定部107を更に備え、構築部102aが構築する主架構モデルの層数及び個数と、選択部103が選択するダンパーモデルの剛性情報とは、主架構判定部107の判定結果に応じて異なる。
このように構成することによって、学習用データセット生成システム100aは、主架構が低層の主架構と高層の主架構とのいずれであるかなどの主架構の層数を判定できるため、判定結果に基づいて、主架構モデルの層数及び個数を構築し、ダンパーモデルの剛性情報を選択できる。
【0094】
(実施形態の変形例2)
実施形態の変形例2に係る学習用データセット生成システム100bについて説明する。実施形態の変形例2に係る学習用データセット生成システム100bは、学習用データセット生成システム100において、選択したダンパーモデルが滑り支承装置であるか否かを判別する。学習用データセット生成システム100bは、選択したダンパーモデルが滑り支承装置であると判別した場合には時刻歴応答解析により地震応答情報を計算し、選択したダンパーモデルが滑り支承装置ではないと判別した場合には応答スペクトル法により地震応答情報を計算する。
図20は、実施形態の変形例2に係る学習用データセット生成システムを示す図である。
学習用データセット生成システム100bは、主架構モデルの各層の質量情報と各層の層剛性情報と各層に配置されるダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ主架構モデルの地震応答に関する地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する。
学習用データセット生成システム100bは、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。学習用データセット生成システム100bは、例えば、入力部101と、構築部102と、選択部103と、計算部104bと、生成部105と、記憶部106と、モデル判別部108とを備える。
【0095】
モデル判別部108は、選択部103が選択したダンパーモデルを特定する情報を取得する。モデル判別部108は、取得したダンパーモデルを特定する情報に基づいて、選択部103が選択したダンパーモデルが滑り支承装置であるか否かを判別する。
計算部104bは、構築部102が構築(作成)した一又は複数の主架構モデルと、選択部103が選択した新たな主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルと、選択部103が選択したダンパーモデルが滑り支承装置であるか否かの判別結果とを取得する。計算部104bは、取得した判別結果に基づいて、一又は複数の主架構モデルと、新たな主架構モデルとの各層に配置されるダンパーモデルとを解析することによって地震応答情報を計算する。
具体的には、計算部104bは、予め設定されたダンパーモデルの剛性パターンに基づいて、ダンパー剛性の組み合わせを新たに選択する。計算部104bは、一又は複数の主架構モデルの各々の層の剛性Kiを構築部102から取得する。計算部104bは、取得した主架構モデルの各々の層の剛性Kiに対応する層の主架構ダンパー剛性比Cdiを計算する。計算部104bは、新たな主架構モデルの層の主架構ダンパー合成比Cdiを、既に計算することで得られている主架構ダンパー剛性比Cdiを用いて線形補完することによって計算する。
計算部104bは、ダンパーモデルを選択し、選択したダンパーモデルが滑り支承装置である場合にはダンパーモデルが配置された主架構モデルを時刻歴応答解析で解析することによって地震応答情報を計算する。計算部104bは、ダンパーモデルを選択し、選択したダンパーモデルが滑り支承装置でない場合にはダンパーモデルが配置された主架構モデルを応答スペクトル法で解析することによって地震応答情報を計算する。計算部104は、全てのダンパーモデルについて、ダンパーモデルが配置された主架構モデルを時刻歴応答解析又は応答スペクトル法で解析する。
計算部104bと、モデル判別部108との全部または一部は、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部350に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。なお、計算部104bと、モデル判別部108との全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0096】
実施形態の変形例2に係る学習用データセット生成システム100bによれば、学習用データセット生成システム100bは、前述した学習用データセット生成システム100において、選択部103が選択するダンパーモデルが滑り支承装置であるか否かを判別するモデル判別部108を更に備え、計算部104bは、モデル判別部108が滑り支承装置であると判別した場合には時刻歴応答解析によって地震応答情報を計算し、モデル判別部108が滑り支承装置ではないと判別した場合には応答スペクトル法によって地震応答情報を計算する。
このように構成することによって、学習用データセット生成システム100bは、選択したダンパーモデルが滑り支承装置であるか否かを判別できる。このため、学習用データセット生成システム100bは、滑り支承装置であると判別した場合には時刻歴応答解析によって地震応答情報を計算し、滑り支承装置ではないと判別した場合には応答スペクトル法によって地震応答情報を計算できる。
【0097】
(実施形態の変形例3)
実施形態の変形例3に係る地震応答予測装置300aについて説明する。地震応答予測装置300aは、地震応答予測要求を取得する。地震応答予測装置300aは、取得した地震応答予測要求に含まれる主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と、主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とを取得する。地震応答予測装置300aは、取得した主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と、主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とを受け付ける。地震応答予測装置300aは、各層に配置される複数のダンパーモデルを決定する。
【0098】
地震応答予測装置300aは、受け付けた主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と、決定した各層に配置される複数のダンパーモデルとに対して学習モデルが出力する地震応答情報を取得する。
地震応答予測装置300aは、受け付けた主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とに基づいて、ダンパーのコストを算出する。
地震応答予測装置300aは、地震応答情報に関する第1選別条件と、コストに関する第2選別条件とを設定する。地震応答予測装置300aは、取得した地震応答情報のうち、第1選別条件と第2選別条件とに合致するものを抽出する。
地震応答予測装置300aは、抽出した第1選別条件と第2選別条件とに合致する地震応答情報を、第1選別条件と第2選別条件とを特定する情報と質量情報及び層剛性情報と関連付けて表示する。
【0099】
図21は、実施形態の変形例3に係る地震応答予測装置の一例を示す図である。
地震応答予測装置300aは、スマートフォン、携帯端末、又はパーソナルコンピュータ、タブレット端末装置、あるいはその他の情報処理機器として実現される。地震応答予測装置300aは、例えば、入力部310と、受付部320と、処理部330と、決定部340と、記憶部350と、設定部360aと、抽出部370aと、表示制御部380aと、算出部390とを備える。
【0100】
受付部320は、入力部310が取得した地震応答予測要求を取得する。受付部320は、取得した地震応答予測要求に含まれる主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と主架構モデルの各層の高さを特定する情報とダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報と第1選別条件を特定する情報と第2選別条件を特定する情報とを取得し、取得した主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報と主架構モデルの各層の高さを特定する情報とダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報と第1選別条件を特定する情報と第2選別条件を特定する情報とを受け付ける。
設定部360aは、受付部320が受け付けた第1選別条件を特定する情報と第2選別条件を特定する情報とを取得し、取得した第1選別条件を特定する情報と第2選別条件を特定する情報とを設定する。
算出部390は、受付部320が受け付けた主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とに基づいて、ダンパーのコストを算出する。
【0101】
抽出部370aは、処理部330が出力した地震応答情報と、設定部360aが設定した第1選別条件を特定する情報と第2選別条件を特定する情報とを取得する。抽出部370aは、取得した地震応答情報と、第1選別条件を特定する情報と第2選別条件を特定する情報とに基づいて、一又は複数の地震応答情報のうち、第1選別条件と第2選別条件とに合致するものを抽出する。
表示制御部380aは、抽出部370aが抽出した第1選別条件と第2選別条件とに合致する地震応答情報を取得する。表示制御部380aは、取得した第1選別条件と第2選別条件とに合致する地震応答情報を、第1選別条件を特定する情報と第2選別条件を特定する情報と質量情報及び層剛性情報と関連付けて、表示部(図示なし)に表示させる。
設定部360aと、抽出部370aと、表示制御部380aと、算出部390との全部または一部は、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部350に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。なお、設定部360aと、抽出部370aと、表示制御部380aと、算出部390との全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0102】
前述した実施形態の変形例2では、地震応答予測装置300aが、第1選別条件と第2選別条件とに合致する地震応答情報を取得する場合について説明したが、この例に限られない。例えば、地震応答予測装置300aが、3個以上の選別条件に合致する地震応答情報を取得してもよい。
実施形態の変形例3に係る地震応答予測装置300aによれば、地震応答予測装置300aは、前述した地震応答予測装置300において、受付部320は、主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とを受け付け、地震応答予測装置300aは、受付部320が受け付けた主架構モデルの各層の高さを特定する情報とダンパーの取り付き角度を特定する情報とに基づき、ダンパーのコストを算出する算出部を備え、設定部360aは、コストに関する第2選別条件を設定し、抽出部370aは、処理部330が出力する地震応答情報と算出部390が算出するダンパーのコストの中から、設定部360aが設定した第1選別条件と第2選別条件とに合致する地震応答情報とダンパーのコストとを抽出する。
【0103】
このように構成することによって、地震応答予測装置は、主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とに基づき、ダンパーのコストを出力できるため、主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報を取得し、取得した主架構モデルの各層の高さを特定する情報と、ダンパーモデルに対応するダンパーの取り付き角度を特定する情報とに基づき、ダンパーのコストを算出できる。
さらに、地震応答予測装置は、コストに関する第2選別条件を設定できるため、出力した地震応答情報及び算出したダンパーのコストの中から、設定した第1選別条件及び第2選別条件に合致する地震応答情報及びコストを抽出できる。
【0104】
前述した地震応答予測装置300において、抽出部370aが抽出する地震応答情報とコストとを、設定部360aが設定した第1選別条件と第2選別条件とともに、表示部に表示させる表示制御部380aを更に備える。
このように構成することによって、地震応答予測装置は、地震応答情報及びコストを、第1選別条件及び第2選別条件とともに、表示部に表示させることができるため、地震応答情報及びコストを、ユーザーに知らせることができる。
【0105】
以上、実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合せを行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0106】
なお、上述した学習用データセット生成システム100、学習モデル作成装置200、地震応答予測装置300、学習用データセット生成システム100a、学習用データセット生成システム100b、地震応答予測装置300aは、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、各機能ブロックの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録する。この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、CPUが実行することで実現してもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROMなどの可搬媒体のことをいう。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記憶装置を含む。
【0107】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、短時間の間、動的にプログラムを保持するものを含んでいてもよい。短時間の間、動的にプログラムを保持するものは、例えば、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線である。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、サーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。また、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上記プログラムは、プログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。プログラマブルロジックデバイスは、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)である。
【0108】
なお、上述の学習用データセット生成システム100、学習モデル作成装置200、地震応答予測装置300、学習用データセット生成システム100a、学習用データセット生成システム100b、地震応答予測装置300aは内部にコンピュータを有している。そして、上述した学習用データセット生成システム100、学習モデル作成装置200、地震応答予測装置300、学習用データセット生成システム100a、学習用データセット生成システム100b、地震応答予測装置300aの各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどをいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0109】
100、100a、100b 学習用データセット生成システム
101 入力部
102、102a 構築部
103 選択部
104、104b 計算部
105 生成部
106 記憶部
108 モデル判別部
200 学習モデル作成装置
210 入力部
220 受付部
230 処理部
232 学習モデル
240 出力部
250 記憶部
300、300a 地震応答予測装置
310 入力部
320 受付部
330 処理部
332 学習モデル
340 決定部
350 記憶部
360、360a 設定部
370、370a 抽出部
380、380a 表示制御部
390 算出部
【要約】
【課題】ダンパー配置のパターンを導出するための機械学習において、学習済モデルを作成するための学習用データセットを作成する学習用データセット生成システム、学習済みモデルの作成方法、地震応答予測装置、学習用データセット生成方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】学習用データセット生成システムは、主架構モデルの各層の質量情報及び層剛性情報を入力する入力部と、質量情報及び層剛性情報に基づき、主架構モデルを構築する構築部と、主架構モデルの各層に配置されるダンパーモデルを選択する選択部と、主架構モデルとダンパーモデルとを用いる解析により、地震応答情報を計算する計算部と、質量情報及び層剛性情報とダンパーモデルの剛性情報とが学習データとして含まれ且つ地震応答情報が教師データとして含まれる学習用データセットを生成する生成部とを備える。
【選択図】図1
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