(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】消火設備用管継手
(51)【国際特許分類】
A62C 35/68 20060101AFI20221017BHJP
F16L 23/12 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
A62C35/68
F16L23/12
(21)【出願番号】P 2018208536
(22)【出願日】2018-11-06
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000199186
【氏名又は名称】千住スプリンクラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 亮太郎
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-223297(JP,A)
【文献】特開2018-050653(JP,A)
【文献】特開2004-197828(JP,A)
【文献】特開2017-180887(JP,A)
【文献】実開平4-014974(JP,U)
【文献】特開2007-247170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/68
F16L 23/12
F16L 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状であり、開口が供給配管と接続される本体と、
本体の側面に設置された接続口と、
接続口に着脱される枝管と、
本体の開口を除いた外部を覆い、接続口に対応して欠如部が設けられたブラケットにより構成されており、
接続口に枝管の先端を挿通した状態のとき、枝管の側面に設置された鍔部が本体とブラケットの間に挟持されることを特徴とする消火設備用管継手。
【請求項2】
ブラケットは本体に対してネジ構造により固定される請求項1記載の消火設備用管継手。
【請求項3】
本体の底面には牝ネジが設置されており、ブラケットを挿通したボルトを牝ネジに螺合させた請求項1または請求項2記載の消火設備用管継手。
【請求項4】
ブラケットの欠如部にはリブが設置されている請求項1~請求項3何れか1項記載の消火設備用管継手。
【請求項5】
本体の開口はハウジング継手により供給配管と接続される請求項1~請求項4何れか1項記載の消火設備用管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備用の管継手の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー設備はビルやショッピングセンター等に設置されており、火災を消すための水を貯蔵する貯水槽と、水を散布するスプリンクラーヘッド、貯水槽とスプリンクラーヘッドを接続する消火設備配管、貯水槽の水をスプリンクラーヘッドへ送水するためのポンプ等の設備から構成されている。消火設備配管の内部には加圧された水が充填されている。
【0003】
スプリンクラーヘッドは主に天井面や、倉庫等の天井が無い建物では屋根の直下等の高い位置に設置される。そのため貯水槽からスプリンクラーヘッドに水を送る消火設備配管は室内の高い位置に設置されるので、作業者は高所作業車に乗って高い位置に移動して、尚且つ上を向きながら配管部材を接続する作業を行う。ゆえに消火設備配管の施工は足元が不安定な高所での作業となっており作業者の負担が大きいものであった。
【0004】
消火設備配管は、貯水槽へと続いている主配管を多口継手により分岐させ、金属製のフレキシブル配管や樹脂管等の可撓管を介してスプリンクラーヘッドと接続されている。可撓管と多口継手の接続部の口径サイズは16A~25Aが主に用いられ、接続構造は管用テーパーネジ構造となっており、ネジ部にシールテープを巻いた後、所定のトルクをかけて螺合させることでネジ山の間にシールテープが食い込んでシール性が得られる。
【0005】
しかしながら上記の作業について、作業に不慣れな者が行うと施工不良により漏れが生じてしまうことがある。漏れた箇所は作業のやり直しとなり作業効率が低下する要因となっていた。また上記の作業において、所定のトルクをかけて螺合させるために専用工具を用いる必要があった。より具体的に説明すると、専用工具として金属製のレンチやスパナが用いられており、この金属製の重い工具を使用して頭上に設置された多口継手へ可撓管を接続する作業は、作業者の負担が大きいものであった。
【0006】
近年においては、ネジを用いない迅速管継手(例えば、特許文献1参照)を用いることで作業の効率化および作業者の負担を軽減することができる。しかしながら上記の継手を用いて、接合不良によって管が継手から外れてしまった場合には、大量の水が室内に放出されて水損被害が生じるおそれがある。ゆえに、前述のネジ接続構造を用いたほうが施工不良における水損リスクが少ないとの考え方もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、消火設備配管の施工作業において作業者の負荷を軽減するとともに作業時間が短縮できる消火設備管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の消火設備用管継手を提供する。
すなわち、有底筒状であり、開口が供給配管と接続される本体と、本体の側面に設置された接続口と、接続口に着脱される枝管と、本体の開口を除いた外部を覆い、接続口に対応して欠如部が設けられたブラケットにより構成され、接続口に枝管の先端を挿通した状態のとき、枝管の側面に設置された鍔部が本体とブラケットの間に挟持される消火設備用管継手である。
【0010】
本発明では、複数の接続口を備えた管継手本体において、本体とブラケットで枝管を挟んで支持し、ブラケットを本体に固定設置する構造とした。また、従来では接続口毎に枝管をネジ接続していたが、ブラケットを用いて複数の枝管を一括して本体に固定接続できる構造とした。これにより、複数の枝管の固定を1つのブラケットで行えるので作業の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば消火設備配管の施工作業において作業者の負荷を軽減するとともに作業時間が短縮できる消火設備管継手を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の消火設備用管継手が接続された配管の状態図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を
図1~
図5を参照して説明する。本発明の消火設備用管継手T1(以下、継手T1とする)を消火設備配管に接続した状態を
図1に示す。継手T1は、上端が供給配管Pと接続しており、周面に複数の可撓管F(枝管3)が接続されている。可撓管Fの末端にはスプリンクラーヘッドSが接続されており、スプリンクラーヘッドSは下端が天井ボードCから室内側に露出するように設置されている。
【0014】
継手T1は、本体1とブラケット2を有している。本体1は有底筒状をしており上端が開口11となっている。開口11の内周面には供給配管Pと接続するために牝ネジ12が形成されている。側面は枝管3が接続される接続口13が複数設置されている。本実施形態では接続口13が4箇所に設けられている。
【0015】
接続口13の内周面は枝管3に設置されたシール部材32が接触するシール面となっている。接続口13の端面14は平面状に形成されており、端面14は後述する枝管3の鍔部33との当接面となっている。
【0016】
本体1において、開口11と対向する底面には牝ネジ15が形成されている。牝ネジ15にはブラケット2を本体1に固定設置するためのボルト16が螺入される。
【0017】
ブラケット2は箱型をしており、本体1を内部に収容する。
図3に示すようにブラケット2の上面は開口となっており、ここから本体1をブラケット2の内部へ収容可能である。ブラケット2の底面にはボルト16が挿通される穴21を有している。
【0018】
図4に示すように、ブラケット2の側面には前述の端面14と対向する4つの平面22を有している。各平面22には枝管3との干渉を避けるためのU字型の欠如部23が形成されている。欠如部23の端は外側に拡張されておりリブ24を形成している。欠如部23の内側は枝管3の鍔部33との当接面となっている。
【0019】
枝管3は、可撓管Fとその一端に設置された筒状のコネクター31を備えている。可撓管Fは金属製のフレキシブル配管または樹脂管から構成され、一端に設置されたコネクター31が接続口13と接続され、他端にスプリンクラーヘッドSが接続されている。コネクター31は可撓管Fが金属製のフレキシブル配管の場合は溶接やカシメにより接合され、樹脂管の場合には融着等により接合される。
【0020】
コネクター31の外周面にはシール部材32が設置されている。シール部材32はOリングのような環状止水部材であり、本体1の接続口13の内周面と接触して継手T1内部の流体が漏れないようにしている。シール部材32はコネクター31の先端側に設置されており、シール部材32に隣接して鍔部33が形成されている。
【0021】
鍔部33の外径は欠如部23の幅Wよりも大きい。鍔部33は前述のように、一方の平面が接続口13の端面14と対向して配置され、他方の平面がブラケット2の平面22と対向して配置される。
図2のように接続口13に枝管3が接続された状態において、鍔部33は端面14または平面22のどちらか一方と接触している。
【0022】
コネクター31において、鍔部33と可撓管Fとの間は直管部34となっている。直管部34の外径は欠如部23の幅Wよりも僅かに小さく形成されている。直管部34の長さ寸法は、欠如部23のリブ24の厚さ寸法と同じか、これよりも長く構成されている。
【0023】
続いて、本発明の継手T1に枝管3を接続する手順を説明する。
【0024】
先ず、本体1の開口11を室内空間の上部に設置されている供給配管Pにねじ込んで接続させる。続いて本体1の接続口13に枝管3のコネクター31を挿入する。このとき鍔部33が接続口13の端面14に接するまでコネクター31を押しこむ。
【0025】
全ての開口13にコネクター31を接続させたら、本体1にブラケット2を取り付ける。本体1を底面側からブラケット2の内部に収容させる。このとき、枝管3の位置と欠如部23の位置を対応させて挿通させる。欠如部23の内周にはコネクター31の直管部34が収容され、鍔部33は欠如部23付近の平面22と接触あるいは近接して配置される。この状態において、鍔部33が端面14と平面22によって挟持される。
【0026】
続いてボルト16を本体1の牝ネジ15に締結させる。ボルト15によりブラケット2は本体1に固定設置される。以上により接続作業を完了する。尚、取外す際の手順は上記に説明した手順と逆の手順により行うことができる。
【0027】
本発明の実施形態は、上記に限定されるものではなく、例えば供給配管Pとの接続構造をネジ構造からハウジング継手Hに替えてもよい(
図5参照)。ハウジング継手Hを用いることで、本体1と供給配管Pとの接続作業を省力化することができる。また、接続口13の全てに可撓管Fを接続しない場合、例えば3箇所に可撓管Fを接続して1箇所は使用しない場合は、可撓管Fを接続しない箇所に内部の穴を塞いだコネクター31を接続して構成できる。
【符号の説明】
【0028】
1 本体
2 ブラケット
3 枝管
11 開口
13 接続口
14 端面
16 ボルト
21 穴
22 平面
23 欠如部
24 リブ
31 コネクター
33 鍔部
F 可撓管
H ハウジング継手
P 供給配管
S スプリンクラーヘッド
T1 継手