(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】電子レンジ用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20221017BHJP
A47J 27/00 20060101ALN20221017BHJP
【FI】
B65D81/34 W
A47J27/00 107
(21)【出願番号】P 2018142070
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 由夫
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-016906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0208614(US,A1)
【文献】特開平09-132279(JP,A)
【文献】特開2017-178430(JP,A)
【文献】実開昭52-142242(JP,U)
【文献】国際公開第2014/172163(WO,A1)
【文献】特開2011-178469(JP,A)
【文献】特開昭56-32261(JP,A)
【文献】特開2009-35276(JP,A)
【文献】特表2013-516216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部
、及び開口部から外方に延設されたフランジ部を有
し、隔壁により区画される複数の加熱室及び電磁遮蔽室を含む容器本体と、
前記電磁遮蔽室に収容される遮蔽容器と、
複数の開口孔が形成されて
前記遮蔽容器と対向する上方位置に配置され
るとともに前記遮蔽容器の側壁の上端部と当接する電磁遮蔽層を有し、
前記フランジ部に熱融着されることにより前記開口部を封止する
フィルム状の蓋部と、
を備えることを特徴とする電子レンジ用容器。
【請求項2】
前記開口孔は、複数行に配設されて、隣接する行の前記開口孔同士が交互にずれるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用容器。
【請求項3】
隣接する前記開口孔の間隔は、前記開口孔の内径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子レンジ用容器。
【請求項4】
前記開口部の外周縁の上面に前記蓋部と融着するリブ状の熱融着部を備え、
前記電磁遮蔽室と異なる他の収容室と隣接する位置に、前記熱融着部と前記蓋部との剥離強度を低くした蒸気排出部が形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項
3の何れか
一項に記載の電子レンジ用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内容物を電子レンジで加熱可能な弁当等の容器が提案されている。弁当の内容物には、温めて食すことに適した物(例えばご飯等)と温めて食すことに適さない物(例えばフルーツ等)が含まれる場合がある。弁当容器内の一部を加熱しないようにした技術として、例えば、特許文献1の電磁遮蔽容器が開示されている。この電磁遮蔽容器は、弁当用の容器の一部に収容される。電磁遮蔽容器は、本体の内側又は外側に電磁遮蔽部材を設け、蓋部にマイクロ波を遮蔽すると共に、中身が見える程度の大きさの孔を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、電磁遮蔽容器の本体を覆う蓋部を、容器全体の蓋部とは別体で設けているため、包装工程が煩雑となる場合がある。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、簡易な構成で内容物の一部を加熱しない電子レンジ用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子レンジ用容器は、電磁遮蔽室を含んで開口部を有する容器本体と、複数の開口孔が形成されて前記電磁遮蔽室に対向配置された電磁遮蔽層を有し、前記開口部を封止する蓋部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成で内容物の一部を加熱しない電子レンジ用容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る容器の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る容器本体を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る
図2の容器本体の開口部付近におけるIII-III断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る電磁遮蔽室の構成の一部を示す図であり、(a)は遮蔽容器及び電磁遮蔽層の斜視図を示し、(b)は遮蔽容器及び電磁遮蔽層の平面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について述べる。
図1は、電子レンジ用の容器10の斜視図である。また
図2は、容器本体20の平面図である。容器10は、容器本体20と、容器本体20を封止する蓋部30とを備える。容器本体20と蓋部30とは樹脂材により形成することができる。
【0010】
容器本体20は、全体が略直方体状に形成され、上部に開口部21を有する。また、容器本体20は、開口部21から外方に延設されたフランジ部22を有する。フランジ部22の外周形状は平面視略長方形である。フランジ部22の四隅の角部はフランジ部22の他の部分よりも幅広の幅広部22Aとして形成される。フランジ部22の上面側には、上方に凸となるリブ状の熱融着部23が形成される。熱融着部23はフランジ部22の全周に亘って形成される。したがって、熱融着部23は、開口部21の外周縁を囲うように配置される。
【0011】
蓋部30は、フランジ部22と略同じ外周形状でありフィルム状に形成される。蓋部30は、容器本体20に内容物を収容して熱融着部23と熱融着されることによって、開口部21を封止する。
図1では、蓋部30の一部を熱融着部23の上面部(
図2に示すハッチング部)から剥離している様子を示している。
【0012】
図3は、
図2の容器本体20の開口部21付近におけるIII-III断面図である。容器本体20のフランジ部22は、外縁側へ向かって徐々に下方へ傾斜している。フランジ部22の傾斜は、全周に亘って形成される。熱融着部23の上面は略水平な平坦面として形成される。
【0013】
図2で、フランジ部22の一つの幅広部22Aにおける熱融着部23は、開封部24と蒸気排出部25とを有して略M字状に形成される。各開封部24は、蒸気排出部25と一部を共通にして蒸気排出部25の両側に形成され、平面視において容器本体20の内側へ向かって拡開する略V字状に形成される。開封部24を設けたことにより、開封部24周辺の蓋部30を上方側へ引っ張ると略V字状に形成した各開封部24の先鋭部に応力が集中し、蓋部30と開封部24とを容易に剥離させることができる。よって、開封部24は、蓋部30の開封操作に対し剥離強度が弱くなるように形成される。
【0014】
蒸気排出部25は、
図2の平面視において容器本体20の外側へ向かって拡開する略V字状に形成される。また、蒸気排出部25の上面は開封部24の先鋭部から下方へ向かって傾斜しており、蒸気排出部25の先鋭部の上面は、熱融着部23の上面及び開封部24の先鋭部の上面よりも低く形成される。蒸気排出部25を設けたことにより、内容物をレンジで加熱すると、容器本体20内の蒸気圧が上昇して蓋部30が容器本体20から離間する力が略V字状に形成した蒸気排出部25の先鋭部に集中し、蓋部30と蒸気排出部25とを容易に剥離させることができる。このように、蒸気排出部25は、容器本体20内の蒸気圧に対し剥離強度が弱くなるように形成される。
【0015】
容器本体20内には複数の隔壁261~263により区画された複数の収容室40が形成される。収容室40としては、加熱室41,42及び電磁遮蔽室43が含まれる。加熱室41及び加熱室42には電子レンジで加熱する内容物が収容され、電磁遮蔽室43には電子レンジで加熱しない内容物が収容される。電磁遮蔽室43は他の収容室40である加熱室41及び加熱室42よりも小さい容積で形成される。
【0016】
隔壁262の高さは隔壁261よりもやや低くすることができ(
図1も参照)、これにより、加熱室41と加熱室42とで蒸気圧が分圧され易くなる。そのため、蓋部30と容器本体20とが蒸気排出部25と異なる箇所の熱融着部23で剥離することを低減することができる。なお、容器本体20内の蒸気圧の上昇により蓋部30と隔壁262との間に間隙が生ずる場合は、隔壁262と隔壁261の高さを略同じとしてもよい。
【0017】
電磁遮蔽室43内には、
図4(a)に示す遮蔽容器50が収容される。遮蔽容器50は、上方に開口部51を有した箱状に形成される。遮蔽容器50の側壁52及び底面53は、電磁遮蔽室43の内面形状に倣った外形で形成される。遮蔽容器50の側壁52及び底面53はアルミニウム等の導電性材料により形成される。遮蔽容器50は、金属材料や金属粉を含有させた導電性材料で形成することができる。または、遮蔽容器50は、樹脂等の基材を有し、基材の内面又は外面に導電体層を印刷、蒸着、貼着等して形成することができる。遮蔽容器50は、導電体層による電磁遮蔽層を、側壁52又は底面53等の一部に設けてもよいし、全体に設けてもよい。
【0018】
蓋部30は、
図3に示すように、基材シート31と、この基材シート31に形成された電磁遮蔽層32(開口孔321の断面は不図示)とを有する。電磁遮蔽層32は、アルミニウム等の導電性材料を印刷、蒸着、貼着等により基材シート31の容器本体20側に設けて形成される。電磁遮蔽層32は、開口部21の内縁22a及び隔壁261,263で囲われた電磁遮蔽室43の開口部の面積より大きく形成される。蓋部30が容器本体20の開口部21を封止した状態では、電磁遮蔽層32は遮蔽容器50と対向する上方位置に開口部51を覆うように配置されて、遮蔽容器50の側壁52の上端部が電磁遮蔽層32と当接することができる。したがって、電磁遮蔽層32と遮蔽容器50とは電気的に接続されて放電を防止でき、電磁遮蔽層32と遮蔽容器50との間隙からのマイクロ波の侵入を防止することができる。
【0019】
図4(b)は遮蔽容器50及び電磁遮蔽層32の平面図である。電磁遮蔽層32は、複数行に配設された円形の開口孔321を有する。開口孔321の一部又は全部は、遮蔽容器50の開口部51上(電磁遮蔽室43の開口部上)の位置に配置される。開口孔321は電子レンジに使用されるマイクロ波の波長よりも十分小さい大きさであり、例えば、マイクロ波の波長が約12cmであるのに対して、開口孔321の形状を内径t1が5mm未満の円形或いは内径t1が1mm程度の円形とすることができる。したがって、開口孔321が形成される位置の基材シート31を透明に形成することで、電磁遮蔽層32は、全体としてマイクロ波を反射可能としながら開口孔321を介して可視光線等の短波長側の光を透過させることができる。よって、使用者は、容器10の外部から電磁遮蔽室43に収容された内容物を視認することができる。また開口孔321を内縁が突出しない円形状としたため、開口孔321の内縁同士で放電することを低減できる。
【0020】
遮蔽容器50の開口部51上に配置された隣接する各開口孔321は、行方向(
図4(b)の平面視左右方向)に略等間隔で配置される。また、開口孔321は、隣接する行の開口孔321同士が行方向に交互にずれて配置される。開口孔321のずれ幅は、行内で隣接する開口孔321の配置間隔の略半分としている。従って、遮蔽容器50の開口部51上に配置された隣接する各開口孔321は、平面視斜め方向にも略等間隔で配置される。各開口孔321の行方向の配置間隔と斜め方向の配置間隔とを同間隔にしてもよい。また、隣接する開口孔321の間隔t2は、開口孔321の内径t1よりも小さく形成される。
図4(b)の例では、電磁遮蔽層32の開口孔321による空隙率は約64%である。よって、電磁遮蔽室43は収容物を容易に視認することができる。また、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、電磁遮蔽層32は、開口孔321の一部が欠けた形状とならないように端部322付近に開口孔321を設けない構成としている。すなわち本実施形態の開口孔321は全て円形の貫通孔である。これにより、開口孔321の内縁に先鋭部が形成されて開口孔321内等で放電することを防止しつつ、開口孔321を略等間隔に設けて電磁遮蔽室43内の外部からの視認性を良くすることができる。
【0021】
なお、
図2に示した電磁遮蔽室43において、隔壁261及び隔壁263の上面に熱融着部23と連設されるリブ状の熱融着部を設けて、蓋部30の対向面(例えば
図3の基材シート31の内面)と熱融着させる構成としてもよい。これにより、加熱室41及び加熱室42の蒸気圧が上昇しても蓋部30が膨らんで電磁遮蔽層32と遮蔽容器50との間に間隙が生じることを防ぐことができ、マイクロ波や加熱室41,42からの水蒸気の侵入を防止して内容物の温度上昇を低減することができる。
【0022】
また、本実施形態では、容器本体20と別体の遮蔽容器50を電磁遮蔽室43に収容させる例について示したが、容器本体20の一部である電磁遮蔽室43の底面及び側面の一部又は全部に印刷、蒸着、貼着等により電磁遮蔽層を設けて、遮蔽容器50を省略する構成としてもよい。
【0023】
また、電磁遮蔽層32及び遮蔽容器50は、内部に電位差が生じにくいように十分な厚みや幅を持たせて形成することができる。また、本実施形態の電磁遮蔽層32と遮蔽容器50で囲われる外形形状は、略直方体状とした例を示したが、突出する各角部をR面取り状に形成して全体的に丸みを持たせた六面体形状としたり、真球状や楕円球状の球形状にして、電磁遮蔽層32や遮蔽容器50内に電位差が生じても表面同士の短絡を低減する構成としてもよい。
【0024】
また、本実施形態では、各収容室40を区画する隔壁261~263を容器本体20と一体に形成される例について説明したが、容器本体20内を区画する別体の容器を、容器本体20内に配置させて、加熱室42及び電磁遮蔽室43を形成してもよい。別体の容器は、容器本体20のフランジ部22の熱融着部23内側に位置する内縁22a上(
図3参照)に係合させることができる。
【0025】
以上、本実施形態では、複数の開口孔321が形成されて電磁遮蔽室43に対向して設けられる電磁遮蔽層32を有する蓋部30により、開口部21を封止する構成としたため、簡易な構成で内容物の一部を加熱しない電子レンジ用の容器10とすることができる。また、電磁遮蔽室43は、容器本体20の端に配置したため、周囲の加熱室41,42から生じた蒸気圧による電磁遮蔽層32と電磁遮蔽室43との離間を低減することができる。
【0026】
また、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
10 容器 20 容器本体
21 開口部 22 フランジ部
22A 幅広部 22a 内縁
23 熱融着部 24 開封部
25 蒸気排出部 30 蓋部
31 基材シート 32 電磁遮蔽層
40 収容室 41 加熱室
42 加熱室 43 電磁遮蔽室
50 遮蔽容器 51 開口部
52 側壁 53 底面
261 隔壁 262 隔壁
263 隔壁 321 開口孔
322 端部
t1 内径 t2 間隔